生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_血液分離剤
出願番号:2009193679
年次:2011
IPC分類:G01N 33/48


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鈴木 賢 田口 哲朗 佐藤 重雄 JP 2011043488 公開特許公報(A) 20110303 2009193679 20090824 血液分離剤 ニプロ株式会社 000135036 豊国製油株式会社 591138441 西木 信夫 100117101 松田 朋浩 100120318 鈴木 賢 田口 哲朗 佐藤 重雄 G01N 33/48 20060101AFI20110204BHJP JPG01N33/48 D 4 1 OL 9 2G045 2G045BA08 2G045CA25 2G045HB13 2G045HB15 本発明は、血液中に含まれる各成分の比重の違いを利用して血液を遠心分離する際に用いられる血液分離剤に関する。 従来より、血液分離剤として、ベースポリマーにチキソトロピー付与剤を添加したものが知られている。このような血液分離剤が、予め採血管の底に注入された採血器具が知られている。採血された血液が満たされた採血管が遠心分離されると、遠心力によって血液分離剤が流動状態となり、その比重によって、血清成分又は血漿成分と血球成分との間に血液分離剤が浮上する。遠心分離が終了すると、浮上した血液分離剤が静止状態となって、血清成分又は血漿成分と血球成分との間の隔壁を形成する。これにより、採血管内において、血清成分又は血漿成分と血球成分とが血液分離剤によって分離される。 前述されたチキソトロピー付与剤には、シリカなどの無機物質の微粉末や、有機ゲル化剤が用いられている。一般に、チキソトロピー付与剤として無機物質を用いた場合には、その比重の大きさから、ベースポリマーと混合したときに、血液分離剤としての適当な比重及び粘度の範囲内に調整することが難しく、また、経時変化によってベースポリマーから無機物質が分離しやすいという問題がある。一方、チキソトロピー付与剤として有機ゲル化剤を用いた場合には、粘度のバラツキが大きいことから、血液分離剤としての性能が不安定になることや、経時的に粘度特性が変化するという問題がある。 前述されたようなチキソトロピー付与剤が有する問題を解決するために、脂肪酸アミドをチキソトロピー付与剤として用いることが提案されている(特許文献1,2,3)。特許第2550232号公報特許第2582191号公報特許第3063799号公報 しかしながら、従来のチキソトロピー付与剤は、高温環境下で保管されたり、加温されたりすると、粘度特性が変化したり、ゲル状態が変化したりするという問題がある。例えば、夏季における保管や熱帯地域を通過する輸送において、血液分離剤が高温環境下におかれることが予測される。また、採血管に血液分離剤を注入する作業の効率を高めるために、血液分離剤を加温して粘度を下げることが想定される。このような高温環境下の保管や加温によって、血液分離剤が静止状態から流動状態となり、再び静止状態に回復する過程における粘度の変化、すなわち粘度特性が変化するおそれがある。血液分離剤の粘度特性が変化すると、遠心分離において血清成分又は血漿成分と血球成分との間に血液分離剤が浮上する速度や、血清成分又は血漿成分と血球成分との間における血液分離剤の隔壁の強度などが変化して、製造時の所望の性能が発揮されない。 また、血液分離剤のゲル状態が変化すると、採血管が横倒しされたり、逆さにされたりしたときに、採血管の底部にある血液分離剤が蓋側へ流れ出すおそれがある。血液分離剤が、採血管において血液が注入される箇所より蓋側へ流れ出ると、遠心分離が行われても、血液分離剤の一部が血清成分又は血漿成分と血球成分との間に移動せずに蓋側に残ることがある。また、採血管の蓋に血液分離剤が付着すると、採血針へ血液分離剤が進入したり、採血者の手に血液分離剤が付着したりするという問題がある。 本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温環境下におかれた後も、粘度特性やゲル状態が変化し難い血液分離剤を提供することにある。 (1) 本発明に係る血液分離剤は、脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有するものである。 (2) 上記血液分離剤は、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであることが好ましい。 (3) また、上記血液分離剤は、60℃で2週間保存した後、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであることが好ましい。 (4) また、上記脂肪酸ポリアミドオリゴマーの分子量が1,200〜2,000であることが好ましい。 本発明に係る血液分離剤は、チキソトロピー付与剤として脂肪酸ポリアミドオリゴマーが用いられているので、高温環境下におかれた後も、粘度特性やゲル状態が変化し難いという利点を有する。実施例1に係る血液分離剤の粘度特性を示すグラフである。比較例1に係る血液分離剤の粘度特性を示すグラフである。 本発明に係る血液分離剤は、脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有するものである。 血液分離剤とは、ガラス製やPET製の採血管に底部に注入されるゲル状態の物質であり、採血管に採取された血液と共に遠心分離されると、その比重によって、血清成分又は血漿成分と血球成分との間に浮上して、血清成分又は血漿成分と血球成分との間の隔壁を形成するものである。 血液分離剤は、ベースポリマー及びチキソトロピー付与剤を主成分とする。ベースポリマーとは、血液分離剤の大半を占めるゲル状材料である。ゲル状材料としては、例えば、シリコーンオイル、塩素化ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリエステル系共重合体、α−オレフィンとマレイン酸ジエステルの共重合体などが挙げられるが、血液分離剤として機能する比重を有するものであれば、特に限定されない。ゲル状材料としての好ましい比重は、25℃において1.035〜1.055である。 チキソトロピー付与剤とは、血液分離剤にチキソトロピー性を付与する物質である。チキソトロピー性とは、静止状態では高い粘度を有し、ある一定以上の外力が加えられると低い粘度となって流動状態となり、かかる外力が消失すると次第に静止状態の高い粘度に回復する性質をいう。 本発明におけるチキソトロピー付与剤は脂肪酸ポリアミドオリゴマーである。本発明においては、脂肪酸ポリアミドオリゴマーとして、C2〜C6(炭素数が2〜6)の脂肪族ジアミンと、C6〜C12の脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好適に用いられる。脂肪族ポリアミドオリゴマーの分子量は、好ましくは600〜3,000であり、より好ましくは1,200〜2,000である。 前述された脂肪酸ポリアミドオリゴマーは、ベースポリマー100重量部に対して、0.5〜4重量部添加されることが好ましく、特に好ましくは、1〜3重量部である。この範囲とすることによって、後述される粘度特性が発揮されて、血液の分離性能、保存安定性に優れた血液分離剤が得られる。ベースポリマーに対する脂肪酸ポリアミドオリゴマーの配合量が上記範囲より少ないと、血液分離剤の粘度が低くなり、保存時の液流れや血液分離剤により形成される隔壁の強度が不足するおそれがある。また、ベースポリマーに対する脂肪酸ポリアミドオリゴマーの配合量が上記範囲より多いと、粘度が高くなりすぎて、血液分離剤の浮上性が悪くなる。 本発明に係る血液分離剤における好ましいチキソトロピー性は、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである。 ここで、sec−1(1/秒)という単位は、例えば,E型(コーンロータ型)回転粘度計などで粘度を測定する際のずり速度(速度/距離)である。ここで、ロータ回転数(rpm)をN、ロータの円錐角(rad) をφとすると、ずり速度は、2πN/60×1/φで表される。例えば、ロータ円錐角3°=π/60radのものを使用した場合、ずり速度(sec−1)は2Nであるから、0.5rpmにおけるずり速度が1sec−1となる。 血液分離剤の粘度(cP)は、各ずり速度において変化するので、各ずり速度における粘度として表される。例えば、ずり速度が1sec−1から10sec−1まで段階的に上げられた後に、10sec−1から1sec−1まで段階的に下げられる粘度測定系においては、ずり速度が上げられる場合の1sec−1における粘度が、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度(cP)と定義される。また、ずり速度が10sec−1における粘度が、流動状態のずり速度10sec−1における粘度と定義される。また、ずり速度が下げられる場合の1sec−1における粘度が、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度(cP)と定義される。 25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が上記範囲を超えると、遠心分離が行われたときに血液分離剤の浮上性が悪くなり、上記範囲を下回ると、保存の際に血液分離剤が採血管の底部から蓋側へ流れ出すという問題が生じ易くなる。 25℃において、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が上記範囲を上回ると、遠心分離が行われたときに血液分離剤の浮上性が悪くなり、隔壁の形成が不十分となる。 25℃において、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が上記範囲を下回ると、隔壁が不安定にあるという問題が生じ易くなる。 本発明に係る血液分離剤の好ましい保存安定性は、60℃で2週間保存した後、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである。つまり、60℃で2週間保存した後でも、保存前と同程度の粘度となることが好ましい。 60℃で2週間保存した後、25℃における静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が上記範囲を超えると、遠心分離が行われたときに血液分離剤の浮上性が悪くなり、上記範囲を下回ると、保存の際に血液分離剤が採血管の底部から蓋側へ流れ出すという問題が生じ易くなる。 また、本発明に係る血液分離剤は、好適には、60℃で1週間以上保存した後、25℃で、ずり速度を10sec−1まで段階的に上げて静止状態から流動状態に変化させ、そこからずり速度を段階的に下げて流動状態から静止状態に変化させたときに、ずり速度が上げられる際の1sec−1における粘度(V1)と、ずり速度が下げられる際の1sec−1における粘度(V2)の差(V2−V1)が、30,000cP以下であることが好ましくは、より好ましくは5,000cP以下である。 以下、本発明の実施例を説明する。なお、本実施例は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施例を変更できることは言うまでもない。[実施例1] セバシン酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールと1,2−プロパンジオールとの共重合体(豊国製油株式会社製:商品名HVP−2)をベースポリマーとして用い、このベースポリマー100重量部に、脂肪酸ポリアミドオリゴマー(豊国製油株式会社製:商品名H500AW、平均分子量:1,600)2重量部を配合して血液分離剤を得た。[比較例1] セバシン酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールと1,2−プロパンジオールとの共重合体(豊国製油株式会社製:商品名HVP−2)をベースポリマーとして用い、このベースポリマー100重量部に、ステアリン酸アミド2重量部を配合して血液分離剤を得た。[粘度特性の加温経時変化測定試験] 実施例1及び比較例1に係る各血液分離剤を60±2℃で保管して、0,1,2,3,4週間目において粘度特性を測定した。粘度特性の測定は、E型粘度計(東機産業社製:コーン角度3°、直径28mm、温度25℃)を用いて、ずり速度を、1sec−1×5分間、2sec−1×5分間、5sec−1×5分間、10sec−1×5分間、5sec−1×5分間、2sec−1×5分間、1sec−1×5分間に順次変化させながら、各ずり速度における粘度(cP)を測定することにより行った。その結果を表1,2及び図1,2にそれぞれ示す。[横倒し保存における加温経時変化測定試験] 実施例1及び比較例1に係る各血液分離剤1.2gを、内径13mmのPET製採血管に分注し、採血管を横倒し(底部と開口部とを結ぶ軸線を水平にした状態)にして、50±2℃で保管し、1,2,3,4,5週間目において血液分離剤が横流れした距離を計測した。その結果を表3に示す。[逆さ保存における加温経時変化測定試験] 実施例1及び比較例1に係る各血液分離剤1.2gを、内径13mmのPET製採血管に分注し、採血管を逆さ(底部を上側、開口部を下側として、これらを結ぶ軸線を鉛直にした状態)にして、50±2℃で保管し、1,2,3,4,5週間目において血液分離剤が下方へ流れ出した距離を計測した。その結果を表4に示す。[評価] 表1及び図1に示されるように、実施例1に係る血液分離剤は、5週間経過後における各ずり速度における粘度がほとんど変化していなかったのに対して、表2及び図2に示されるように、比較例1に係る血液分離剤は、日数が経過するにつれて各ずり速度における粘度が上昇し、特に、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度、及び流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が大きく上昇した。これにより、実施例1に係る血液分離剤は、比較例1に係る血液分離剤より、加温保存における粘度特性の経時変化がきわめて少ないことが確認された。 表3,4に示されるように、実施例1に係る血液分離剤は、1週間経過後における横及び下方へ流れ出した距離が短く、その距離は、5週間経過まで緩やかに上昇しているものの、比較例1に係る血液分離剤における1週間経過における横及び下方へ流れ出した距離よりも十分に短かった。これにより、実施例1に係る血液分離剤は、比較例1に係る血液分離剤より、加温保存におけるゲル状態が良好に維持されることが確認された。 脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有する血液分離剤。 25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである請求項1に記載の血液分離剤。 60℃で2週間保存した後、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである請求項2に記載の血液分離剤。 上記脂肪酸ポリアミドオリゴマーの分子量が1,200〜2,000である請求項1から3のいずれかに記載の血液分離剤。 【課題】高温環境下におかれた後も、粘度特性やゲル状態が変化し難い血液分離剤を提供する。【解決手段】本発明に係る血液分離剤は、脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有するものである。この血液分離剤は、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである。【選択図】図1


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特許公報(B2)_血液分離剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_血液分離剤
出願番号:2009193679
年次:2013
IPC分類:G01N 33/48


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鈴木 賢 田口 哲朗 佐藤 重雄 JP 5155969 特許公報(B2) 20121214 2009193679 20090824 血液分離剤 ニプロ株式会社 000135036 豊国製油株式会社 591138441 西木 信夫 100117101 松田 朋浩 100120318 鈴木 賢 田口 哲朗 佐藤 重雄 20130306 G01N 33/48 20060101AFI20130214BHJP JPG01N33/48 D G01N 33/48 特開平5−107245(JP,A) 特表2011−503543(JP,A) 特開2002−22735(JP,A) 特開平5−2015(JP,A) 特許第2550232(JP,B2) 特許第3063799(JP,B2) 4 2011043488 20110303 9 20120621 三木 隆 本発明は、血液中に含まれる各成分の比重の違いを利用して血液を遠心分離する際に用いられる血液分離剤に関する。 従来より、血液分離剤として、ベースポリマーにチキソトロピー付与剤を添加したものが知られている。このような血液分離剤が、予め採血管の底に注入された採血器具が知られている。採血された血液が満たされた採血管が遠心分離されると、遠心力によって血液分離剤が流動状態となり、その比重によって、血清成分又は血漿成分と血球成分との間に血液分離剤が浮上する。遠心分離が終了すると、浮上した血液分離剤が静止状態となって、血清成分又は血漿成分と血球成分との間の隔壁を形成する。これにより、採血管内において、血清成分又は血漿成分と血球成分とが血液分離剤によって分離される。 前述されたチキソトロピー付与剤には、シリカなどの無機物質の微粉末や、有機ゲル化剤が用いられている。一般に、チキソトロピー付与剤として無機物質を用いた場合には、その比重の大きさから、ベースポリマーと混合したときに、血液分離剤としての適当な比重及び粘度の範囲内に調整することが難しく、また、経時変化によってベースポリマーから無機物質が分離しやすいという問題がある。一方、チキソトロピー付与剤として有機ゲル化剤を用いた場合には、粘度のバラツキが大きいことから、血液分離剤としての性能が不安定になることや、経時的に粘度特性が変化するという問題がある。 前述されたようなチキソトロピー付与剤が有する問題を解決するために、脂肪酸アミドをチキソトロピー付与剤として用いることが提案されている(特許文献1,2,3)。特許第2550232号公報特許第2582191号公報特許第3063799号公報 しかしながら、従来のチキソトロピー付与剤は、高温環境下で保管されたり、加温されたりすると、粘度特性が変化したり、ゲル状態が変化したりするという問題がある。例えば、夏季における保管や熱帯地域を通過する輸送において、血液分離剤が高温環境下におかれることが予測される。また、採血管に血液分離剤を注入する作業の効率を高めるために、血液分離剤を加温して粘度を下げることが想定される。このような高温環境下の保管や加温によって、血液分離剤が静止状態から流動状態となり、再び静止状態に回復する過程における粘度の変化、すなわち粘度特性が変化するおそれがある。血液分離剤の粘度特性が変化すると、遠心分離において血清成分又は血漿成分と血球成分との間に血液分離剤が浮上する速度や、血清成分又は血漿成分と血球成分との間における血液分離剤の隔壁の強度などが変化して、製造時の所望の性能が発揮されない。 また、血液分離剤のゲル状態が変化すると、採血管が横倒しされたり、逆さにされたりしたときに、採血管の底部にある血液分離剤が蓋側へ流れ出すおそれがある。血液分離剤が、採血管において血液が注入される箇所より蓋側へ流れ出ると、遠心分離が行われても、血液分離剤の一部が血清成分又は血漿成分と血球成分との間に移動せずに蓋側に残ることがある。また、採血管の蓋に血液分離剤が付着すると、採血針へ血液分離剤が進入したり、採血者の手に血液分離剤が付着したりするという問題がある。 本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温環境下におかれた後も、粘度特性やゲル状態が変化し難い血液分離剤を提供することにある。 (1) 本発明に係る血液分離剤は、脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有するものである。 (2) 上記血液分離剤は、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであることが好ましい。 (3) また、上記血液分離剤は、60℃で2週間保存した後、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであることが好ましい。 (4) また、上記脂肪酸ポリアミドオリゴマーの分子量が1,200〜2,000であることが好ましい。 本発明に係る血液分離剤は、チキソトロピー付与剤として脂肪酸ポリアミドオリゴマーが用いられているので、高温環境下におかれた後も、粘度特性やゲル状態が変化し難いという利点を有する。実施例1に係る血液分離剤の粘度特性を示すグラフである。比較例1に係る血液分離剤の粘度特性を示すグラフである。 本発明に係る血液分離剤は、脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有するものである。 血液分離剤とは、ガラス製やPET製の採血管に底部に注入されるゲル状態の物質であり、採血管に採取された血液と共に遠心分離されると、その比重によって、血清成分又は血漿成分と血球成分との間に浮上して、血清成分又は血漿成分と血球成分との間の隔壁を形成するものである。 血液分離剤は、ベースポリマー及びチキソトロピー付与剤を主成分とする。ベースポリマーとは、血液分離剤の大半を占めるゲル状材料である。ゲル状材料としては、例えば、シリコーンオイル、塩素化ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリエステル系共重合体、α−オレフィンとマレイン酸ジエステルの共重合体などが挙げられるが、血液分離剤として機能する比重を有するものであれば、特に限定されない。ゲル状材料としての好ましい比重は、25℃において1.035〜1.055である。 チキソトロピー付与剤とは、血液分離剤にチキソトロピー性を付与する物質である。チキソトロピー性とは、静止状態では高い粘度を有し、ある一定以上の外力が加えられると低い粘度となって流動状態となり、かかる外力が消失すると次第に静止状態の高い粘度に回復する性質をいう。 本発明におけるチキソトロピー付与剤は脂肪酸ポリアミドオリゴマーである。本発明においては、脂肪酸ポリアミドオリゴマーとして、C2〜C6(炭素数が2〜6)の脂肪族ジアミンと、C6〜C12の脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好適に用いられる。脂肪族ポリアミドオリゴマーの分子量は、好ましくは600〜3,000であり、より好ましくは1,200〜2,000である。 前述された脂肪酸ポリアミドオリゴマーは、ベースポリマー100重量部に対して、0.5〜4重量部添加されることが好ましく、特に好ましくは、1〜3重量部である。この範囲とすることによって、後述される粘度特性が発揮されて、血液の分離性能、保存安定性に優れた血液分離剤が得られる。ベースポリマーに対する脂肪酸ポリアミドオリゴマーの配合量が上記範囲より少ないと、血液分離剤の粘度が低くなり、保存時の液流れや血液分離剤により形成される隔壁の強度が不足するおそれがある。また、ベースポリマーに対する脂肪酸ポリアミドオリゴマーの配合量が上記範囲より多いと、粘度が高くなりすぎて、血液分離剤の浮上性が悪くなる。 本発明に係る血液分離剤における好ましいチキソトロピー性は、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである。 ここで、sec−1(1/秒)という単位は、例えば,E型(コーンロータ型)回転粘度計などで粘度を測定する際のずり速度(速度/距離)である。ここで、ロータ回転数(rpm)をN、ロータの円錐角(rad) をφとすると、ずり速度は、2πN/60×1/φで表される。例えば、ロータ円錐角3°=π/60radのものを使用した場合、ずり速度(sec−1)は2Nであるから、0.5rpmにおけるずり速度が1sec−1となる。 血液分離剤の粘度(cP)は、各ずり速度において変化するので、各ずり速度における粘度として表される。例えば、ずり速度が1sec−1から10sec−1まで段階的に上げられた後に、10sec−1から1sec−1まで段階的に下げられる粘度測定系においては、ずり速度が上げられる場合の1sec−1における粘度が、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度(cP)と定義される。また、ずり速度が10sec−1における粘度が、流動状態のずり速度10sec−1における粘度と定義される。また、ずり速度が下げられる場合の1sec−1における粘度が、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度(cP)と定義される。 25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が上記範囲を超えると、遠心分離が行われたときに血液分離剤の浮上性が悪くなり、上記範囲を下回ると、保存の際に血液分離剤が採血管の底部から蓋側へ流れ出すという問題が生じ易くなる。 25℃において、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が上記範囲を上回ると、遠心分離が行われたときに血液分離剤の浮上性が悪くなり、隔壁の形成が不十分となる。 25℃において、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が上記範囲を下回ると、隔壁が不安定にあるという問題が生じ易くなる。 本発明に係る血液分離剤の好ましい保存安定性は、60℃で2週間保存した後、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである。つまり、60℃で2週間保存した後でも、保存前と同程度の粘度となることが好ましい。 60℃で2週間保存した後、25℃における静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が上記範囲を超えると、遠心分離が行われたときに血液分離剤の浮上性が悪くなり、上記範囲を下回ると、保存の際に血液分離剤が採血管の底部から蓋側へ流れ出すという問題が生じ易くなる。 また、本発明に係る血液分離剤は、好適には、60℃で1週間以上保存した後、25℃で、ずり速度を10sec−1まで段階的に上げて静止状態から流動状態に変化させ、そこからずり速度を段階的に下げて流動状態から静止状態に変化させたときに、ずり速度が上げられる際の1sec−1における粘度(V1)と、ずり速度が下げられる際の1sec−1における粘度(V2)の差(V2−V1)が、30,000cP以下であることが好ましくは、より好ましくは5,000cP以下である。 以下、本発明の実施例を説明する。なお、本実施例は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施例を変更できることは言うまでもない。[実施例1] セバシン酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールと1,2−プロパンジオールとの共重合体(豊国製油株式会社製:商品名HVP−2)をベースポリマーとして用い、このベースポリマー100重量部に、脂肪酸ポリアミドオリゴマー(豊国製油株式会社製:商品名H500AW、平均分子量:1,600)2重量部を配合して血液分離剤を得た。[比較例1] セバシン酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールと1,2−プロパンジオールとの共重合体(豊国製油株式会社製:商品名HVP−2)をベースポリマーとして用い、このベースポリマー100重量部に、ステアリン酸アミド2重量部を配合して血液分離剤を得た。[粘度特性の加温経時変化測定試験] 実施例1及び比較例1に係る各血液分離剤を60±2℃で保管して、0,1,2,3,4週間目において粘度特性を測定した。粘度特性の測定は、E型粘度計(東機産業社製:コーン角度3°、直径28mm、温度25℃)を用いて、ずり速度を、1sec−1×5分間、2sec−1×5分間、5sec−1×5分間、10sec−1×5分間、5sec−1×5分間、2sec−1×5分間、1sec−1×5分間に順次変化させながら、各ずり速度における粘度(cP)を測定することにより行った。その結果を表1,2及び図1,2にそれぞれ示す。[横倒し保存における加温経時変化測定試験] 実施例1及び比較例1に係る各血液分離剤1.2gを、内径13mmのPET製採血管に分注し、採血管を横倒し(底部と開口部とを結ぶ軸線を水平にした状態)にして、50±2℃で保管し、1,2,3,4,5週間目において血液分離剤が横流れした距離を計測した。その結果を表3に示す。[逆さ保存における加温経時変化測定試験] 実施例1及び比較例1に係る各血液分離剤1.2gを、内径13mmのPET製採血管に分注し、採血管を逆さ(底部を上側、開口部を下側として、これらを結ぶ軸線を鉛直にした状態)にして、50±2℃で保管し、1,2,3,4,5週間目において血液分離剤が下方へ流れ出した距離を計測した。その結果を表4に示す。[評価] 表1及び図1に示されるように、実施例1に係る血液分離剤は、5週間経過後における各ずり速度における粘度がほとんど変化していなかったのに対して、表2及び図2に示されるように、比較例1に係る血液分離剤は、日数が経過するにつれて各ずり速度における粘度が上昇し、特に、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度、及び流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が大きく上昇した。これにより、実施例1に係る血液分離剤は、比較例1に係る血液分離剤より、加温保存における粘度特性の経時変化がきわめて少ないことが確認された。 表3,4に示されるように、実施例1に係る血液分離剤は、1週間経過後における横及び下方へ流れ出した距離が短く、その距離は、5週間経過まで緩やかに上昇しているものの、比較例1に係る血液分離剤における1週間経過における横及び下方へ流れ出した距離よりも十分に短かった。これにより、実施例1に係る血液分離剤は、比較例1に係る血液分離剤より、加温保存におけるゲル状態が良好に維持されることが確認された。 脂肪酸ポリアミドオリゴマーをチキソトロピー性付与剤として含有する血液分離剤。 25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPであり、流動状態のずり速度10sec−1における粘度が120,000cP以下であり、流動状態から静止状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである請求項1に記載の血液分離剤。 60℃で2週間保存した後、25℃において、静止状態から流動状態に変化する際のずり速度1sec−1における粘度が130,000〜300,000cPである請求項2に記載の血液分離剤。 上記脂肪酸ポリアミドオリゴマーの分子量が1,200〜2,000である請求項1から3のいずれかに記載の血液分離剤。


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