タイトル: | 公開特許公報(A)_撹拌装置 |
出願番号: | 2009187196 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12M 1/02 |
石井 浩介 JP 2011036189 公開特許公報(A) 20110224 2009187196 20090812 撹拌装置 株式会社IHI 000000099 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 石井 浩介 C12M 1/02 20060101AFI20110128BHJP JPC12M1/02 A 2 2 OL 7 4B029 4B029AA02 4B029BB01 4B029CC01 4B029DB02 4B029DF08 本発明は、細胞培養槽に用いられる撹拌装置に関する。 混合槽での混合操作は、化学工業等において重要な操作の一つである。すなわち、食品、化粧品、医薬、製薬、塗料等の現場では、反応・抽出・吸収・混合などの種々の処理において、混合操作が活用されている。例えば、混合操作の1つとして、バイオリアクタ等の動物細胞培養槽では、槽内に供給した酸素供給源である気泡及び栄養源等を均一に混合する為に、槽内を撹拌することが行われている。 例えば、このような動物細胞培養槽として、下記特許文献1には、比較的簡単な構造の翼により液体と気泡の混合を良好にし、さらに、気泡径を従来よりも微細化することによって、気液接触面積を増加して、気泡から液中への酸素の移動量を高め、溶存酸素濃度量を大きくできる培養槽が開示されている。 このような動物細胞培養槽では、特に培養槽が大きくなり、鉛直方向の高さが高くなると、槽内をより均一に混合するために、撹拌によって培養槽内に大きな軸流を生じさせることで高い混合度を得る必要がある。また、一般に密度差のある材料を均一に混合したい場合に、これら材料は、その密度差によって上下に分離し易いため、やはり撹拌によって混合槽内に大きな軸流を生じさせる必要がある。特に、固液混合の場合では、密度差が大きくなって固形分が沈降し易いため、撹拌により軸流を生じさせ、この軸流によって槽内を鉛直方向に撹拌することが一層必要になる。 そして、混合槽では、高い混合度を得る為に、撹拌装置として高性能のものを用いる必要がある。特に、動物細胞培養槽では、撹拌装置の撹拌翼によって生じるせん断力によって動物細胞が破壊/死滅してしまう為に、撹拌効率とせん断力とのバランスを量る必要がある。このような撹拌装置として、従来ではエレファントイヤー型と呼ばれる特殊な形状の撹拌翼を用いた撹拌装置が知られている。エレファントイヤー型の撹拌翼とは、比較的大きな形状であり、低回転数で高い混合性能を得ることができる。また、その他に、パドル型及びプロペラ型等の撹拌翼が知られている。特開2003−000222号公報 ところで、上記従来技術におけるバイオリアクタ等の細胞培養槽では、撹拌翼の回転によって内部の培地及び培地に含まれる細胞を撹拌することによって、細胞を増殖させる。しかしながら、この時の回転数が低いと細胞増殖の効率が落ちるが、回転数が高すぎるとせん断力によって細胞が傷ついてしまうことで増殖が妨げられてしまう。その為に、上述したように、撹拌翼としてパドル型及びエレファントイヤー型等の様々な形状の中から適切な撹拌羽根を選択することで、撹拌効率とせん断力とのバランスを量っていた。 しかし、更なる細胞培養槽の大型化によって、更に大きな軸流を発生させなければならない場合に、高回転することで、大きなせん断渦が発生してしまっていた。そして、当該せん断渦が原因で生じるせん断力で細胞が傷ついてしまうことによって、培養効率が低下してしまっている。 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりもせん断力を抑制することができる撹拌装置を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、本発明では、撹拌装置に係る第1の解決手段として、細胞培養槽内に配設され、撹拌翼によって撹拌する撹拌装置であって、可撓性を有し、前記撹拌翼の縁辺に所定の間隔を空けて並列するように取り付けられたせん断力抑制突起部を具備し、前記せん断力抑制突起部が、撹拌翼の回転によって撓ることで、撹拌翼の回転によって生じるせん断力を抑制するという手段を採用する。 本発明では、撹拌装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記せん断力抑制突起部の表面は、曲面によって構成されているという手段を採用する。 本発明によれば、撹拌装置が、細胞培養槽内に配設され、撹拌翼によって撹拌する撹拌装置であって、可撓性を有し、撹拌翼の縁辺に所定の間隔を空けて並列するように取り付けられたせん断力抑制突起部を具備し、せん断力抑制突起部が、撹拌翼の回転によって撓ることで、撹拌翼の回転によって生じるせん断力を抑制する。 すなわち、撹拌装置では、撹拌翼の縁辺近傍にせん断渦が生じるが、せん断力抑制突起部によって撹拌翼の縁辺近傍のせん断渦の流速が緩和される。このように、撹拌装置では、せん断渦の流速を緩和することによって、せん断力により細胞が破壊/死滅してしまうことを抑制することができる為に、細胞の培養効率を向上することができる。本発明の一実施形態に係る撹拌装置Aを備えた動物細胞培養槽Sの一例を示す断面図である。本発明の一実施形態に係る撹拌装置Aの撹拌部2の拡大斜視図である。 以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、動物細胞培養槽に配設され、動物細胞培養槽内の培養液を撹拌する撹拌装置に関する。 まず、本実施形態に係る撹拌装置Aを備えた動物細胞培養槽Sの概略構成について、図1を参照して、説明する。図1は、本実施形態に係る撹拌装置Aを備えた動物細胞培養槽Sの一例を示す断面図である。なお、図面では、各部材の認識を容易にするため、各部材の縮尺を適宜変更している。 動物細胞培養槽Sは、例えば医薬抗体の生成に用いられるものであり、微生物、動/植物、あるいはそれらの細胞から単離した酵素などの種々の生体触媒を用いることによって、動物細胞の培養を行うものである。すなわち、この動物細胞培養槽Sは、培養液L中に酸素供給源である気泡や栄養源等を供給しつつ、動物細胞の培養を行うものである。 このような動物細胞培養槽Sは、気泡や栄養源などを均一に混合させる為に、図1に示すように、撹拌装置A、培養槽11、散気手段12及び邪魔板13を備えている。 撹拌装置Aは、図1に示すように回転駆動軸1、撹拌部2及び回転駆動手段3を備えている。 回転駆動軸1は、円柱状部材であり、下端部(一端側)に撹拌部2が固定されている。また、回転駆動軸1には、撹拌部2が取り付けられた一端部とは逆の一端部側に、ギア等のリンク機構を介してモータ等から構成される回転駆動手段3が接続されている。そして、回転駆動軸1は、回転駆動手段3により回転駆動させられ、自身の回転に伴って撹拌部2を回転駆動する。 撹拌部2は、回転駆動軸1の下端部に取り付け固定されたものであり、回転駆動軸1に外挿してこれに固定される取付筒2aと、取付筒2aの外周面に固定された複数(例えば4つ)のパドル翼2b(撹拌翼)とからなるものである。取付筒2aには回り止め(図示せず)が設けられており、さらにこの取付筒2aの下側はキャップ2cによって固定されている。 このような構成によって撹拌部2は、回転駆動軸1に一体に固定され、回転駆動軸1と伴に回転するようになっている。撹拌部2は、回転駆動軸1と直交する面上を回転することによって生じる軸流が回転駆動軸1の下方に向けて生じるよう設計され、配設されたものである。 さらに、撹拌部2には、図2に示すように、パドル翼2bの縁辺の側辺に所定の間隔を空けて並列するように複数のせん断力抑制突起部2dが取り付けられている。図2は、本実施形態に係る撹拌装置Aの撹拌部2の拡大斜視図である。なお、図2における矢印が、撹拌部2の回転方向Rを示している。 このせん断力抑制突起部2dは、可撓性を有すると共に糸程の細さを有する極細部材によって構成されている。なお、せん断力抑制突起部2dは、せん断力を抑制する為に、表面が曲面によって構成されていることが好ましい。 回転駆動手段3は、モータ等から構成されており、ギア等のリンク機構を介して回転駆動軸1に接続している。そして、回転駆動手段3は、予め設定されている回転数で回転駆動軸1を回転させるようになっている。 このような構成からなる撹拌装置Aは、図1に示すように回転駆動軸1が鉛直方向に沿って配置されるよう、動物細胞培養槽S内において立てて配置され、その上端側が動物細胞培養槽Sの培養槽11に回転自在に保持固定されている。また、撹拌部2は、動物細胞培養槽Sの底部に配置されている。 培養槽11は、有底かつ円筒状の容器であり、内部に培養液Lを貯留するものである。この培養槽11は、図示しない軸受けによって回転自在に回転駆動軸1を保持固定し、内壁の底面に散気手段12が取り付けれ、さらに内壁の側面に邪魔板13が取り付けられている。なお、上記培養液Lは、培養対象となる細胞を含むと共に当該細胞を培養する上で必要となる気泡(酸素供給源)及び栄養源を含むものである。 散気手段12は、このような培養槽11内の下部に設けられ、気泡G(酸素供給源)を培養槽11内へ供給するものであり、リングスパージャー12a及び気体供給機12bを備えている。リングスパージャー12aは、中空でありかつ多数の開口が表面に形成された円盤状部材から構成されており、気体供給機12bから供給された空気を気泡Gとして上記開口から噴射する。 気体供給機12bは、空気をリングスパージャー12aに供給するポンプである。この散気手段12は、気体供給機12bから供給された空気をリングスパージャー12aの開口から噴射することによって、酸素を含む気泡Gを培養槽11内の培養液Lへ供給する。 邪魔板13は、培養槽11の内壁の側面の4箇所に垂直方向に延在するように設けられた帯状平板である。すなわち、この邪魔板13は、培養槽11の内壁において回転駆動軸1を中心として互いに90°の角度に相当する位置(4箇所)に、垂直方向に延在するよう設けられている。このような邪魔板13の下端は、撹拌部2の多少下側となる位置に設定され、また邪魔板13の上端は、培養液Lの喫水よりも多少上側となる位置に設定されている。 動物細胞培養槽Sでは、邪魔板13を培養槽11の内壁の側面に取り付けることによって、軸流に直交する回転流が邪魔板13に衝突する為に、培養槽11の内壁へ回転流が直接衝突した際に内壁を伝って培養液Lの外(上方)へ気泡Gが放出されてしまうことを抑制することができる。 次に、このように構成された動物細胞培養槽Sの動作について、詳しく説明する。なお、本実施形態の動物細胞培養槽Sは、不図示の制御部を備えている。そして、特に断りがない限り、当該制御部が、主体者として以下の動作を制御する。 動物細胞培養槽Sでは、散気手段12及び栄養源供給手段(図示略)によって培養液L中に気泡(酸素供給源)及び栄養源等を供給する。そして、動物細胞培養槽Sでは、散気手段12による気泡G(酸素供給源)の供給及び栄養源供給手段による栄養源の供給に並行して、撹拌装置Aを駆動させる。すなわち、撹拌装置Aにおいて、回転駆動手段3を駆動することで、回転駆動軸1を介して撹拌部2を回転させる。 すると、撹拌部2は、パドル翼2bが回転駆動軸1と直交する面上を回転することによって、回転駆動軸1の鉛直下方に向けて流れる軸流を発生させる。そして、動物細胞培養槽Sの培養槽11内の軸流は、撹拌部2から鉛直下方に向けて流れた後に、培養槽11の内壁の底面に衝突することで内壁面に沿って鉛直方向上方に向かって流れる。動物細胞培養槽Sの培養槽11では、この軸流による培養液Lの流れの循環によって、酸素を含む気泡G及び栄養源を培養液Lへ均一に混合する。 そして、撹拌部2では、回転によってパドル翼2bの縁辺近傍にせん断渦が生じるが、せん断力抑制突起部2dによってパドル翼2bの縁辺の側辺近傍のせん断渦の流速が緩和される。すなわち、撹拌部2の回転によってパドル翼2bに培養液Lが衝突後に、パドル翼2bの後ろへ培養液Lが流れることによって生じる渦の流速が、パドル翼2bの縁辺の側辺に取り付けられたせん断力抑制突起部2dが撓ることによって、緩和される。このように、撹拌装置Aでは、せん断渦の流速を緩和することによって、パドル翼2bの縁辺の側辺近傍のせん断力を抑制することができる。 以上のような本実施形態の撹拌装置Aでは、撹拌部2のパドル翼2bの縁辺の側辺に所定の間隔を空けて並列するように複数のせん断力抑制突起部2dが取り付けられている。そして、撹拌装置Aでは、回転によってパドル翼2bの縁辺近傍にせん断渦が生じるが、せん断力抑制突起部2dによってパドル翼2bの縁辺の側辺近傍のせん断渦の流速が緩和される。このように、撹拌装置Aでは、せん断渦の流速を緩和することによって、せん断力により細胞が破壊/死滅してしまうことを抑制することができる為に、細胞の培養効率を向上することができる。 以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。(1)上記実施形態では、パドル翼2bにせん断力抑制突起部2dを取り付けたが、本発明は、これに限定されない。 例えば、撹拌装置Aの撹拌部2が、撹拌翼としてパドル翼2bではなく、プロペラ翼が撹拌翼として取り付けられている場合には、当該プロペラ翼の縁辺にせん断力抑制突起部を取り付けるようにしてもよい。また、上記パドル翼2b及びプロペラ翼以外の、ディスクタービン翼及びエレファントイヤー翼を有する攪拌装置に本発明を適用するようにしてもよい。すななわ、本発明は、形状に関係なく、あらゆる攪拌装置に適用することが可能である。(2)上記実施形態では、せん断力抑制突起部2dを糸程の細さを有する極細部材によって構成したが、本発明はこれに限定されない。 例えば、せん断力抑制突起部2dは、極細部材のように極細でなくても、可撓性を有する部材であれば、撹拌翼の面に沿って面積を有する部材であってもよい。なお、この際も、できるだけせん断力抑制突起部2dの表面は、曲面によって構成されることが好ましい。(3)上記実施形態では、撹拌部2のパドル翼2bの縁辺の側辺にせん断力抑制突起部2dを取り付けたが、本発明はこれに限定されない。 例えば、パドル翼2bの縁辺の上辺及び下辺にせん断力抑制突起部2dを取り付けるようにしてもよい。すなわち、本発明は、撹拌翼の縁辺のいずれにせん断力抑制突起部2dを取り付けるようにしてもよい。 S…動物細胞培養槽、A…撹拌装置、1…回転駆動軸、2…撹拌部、2a…取付筒、2b…パドル翼、2c…キャップ、2d…せん断力抑制突起部、3…回転駆動手段、11…培養槽、12…散気手段、12a…リングスパージャー、12b…気体供給機、13…邪魔板 細胞培養槽内に配設され、撹拌翼の回転によって撹拌する撹拌装置であって、 可撓性を有し、前記撹拌翼の縁辺に所定の間隔を空けて並列するように取り付けられたせん断力抑制突起部を具備し、 前記せん断力抑制突起部が、撹拌翼の回転によって撓ることで、撹拌翼の回転によって生じるせん断力を抑制することを特徴とする撹拌装置。 前記せん断力抑制突起部の表面は、曲面によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。 【課題】従来よりもせん断力を抑制することができる撹拌装置を提供することを目的とする。【解決手段】撹拌装置が、細胞培養槽内に配設され、撹拌翼によって撹拌する撹拌装置であって、可撓性を有し、撹拌翼の縁辺に所定の間隔を空けて並列するように取り付けられたせん断力抑制突起部を具備し、せん断力抑制突起部が、撹拌翼の回転によって撓ることで、撹拌翼の回転によって生じるせん断力を抑制する。【選択図】図2