タイトル: | 公開特許公報(A)_流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法及びそれに用いられる測定装置 |
出願番号: | 2009174571 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 19/02 |
角田 昌也 JP 2011027593 公開特許公報(A) 20110210 2009174571 20090727 流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法及びそれに用いられる測定装置 住友ゴム工業株式会社 000183233 住友 慎太郎 100104134 角田 昌也 G01N 19/02 20060101AFI20110114BHJP JPG01N19/02 AG01N19/02 B 6 3 OL 15 本発明は、流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法及びそれに用いられる測定装置に関する。 空気入りタイヤのようなゴム製品を製造する場合、ゴム材料を混練して可塑化し、それを押出機で所定形状に押し出し成形することが行われる。混練機や押出機の中では、可塑化された未加硫ゴムは、例えばゴムが流れる流路の壁面と接触して摩擦力を受ける。この摩擦力は、前記壁面近傍でのゴムのせん断速度やせん断応力に大きな影響を与える。このため、可塑化された流動状態のゴムと前記壁面との摩擦特性を調べることは、ゴム流れの改善による生産性の向上を図る上で非常に重要となる。これは、可塑化されて射出される樹脂材料についても同様である。 従来、このような可塑化された未加硫ゴムないし樹脂といった流動性材料の摩擦特性を調べる技術として、下記非特許文献1及び2が提案されている。MELVIN MOONEY著、「EXPLICIT FORMULAS FOR SLIP AND FLUIDITY」Journal of Rheology April 1931加納好昭著「溶融樹脂の管内流動における壁面スリップ −固体界面の影響−」 日本レオロジー学会誌 Vol.25 1997 前記非特許文献1では、流動性材料が円形断面を有する流路(キャピラリー)を通過したときの、流量と圧力損失から、流路の壁面でのせん断応力とスリップ速度とを求める方法が記載されている。具体的には、非特許文献1では下記式(3)が提案されている。 ここで、上記式の符号は次の通りである。 E:単位時間あたりの流動性材料の流量 a:流路の半径 s:壁面でのせん断応力 β:スリップ係数 前記非特許文献1では、流路たるキャピラリーの半径aを変えても、壁面でのせん断応力sは変化しないという仮定に基づいている。そうすると、単位時間あたりの流動性材料の流量Eの変化は、全て壁面でのスリップ(滑り)に起因するということになる。この仮定の下で((E/πa3)/(1/a))を縦軸に、(1/a)を横軸にそれぞれとったグラフを描き、その傾きを求めれば、流動性材料の壁面でのスリップ速度を評価できることになる。 しかしながら、上述のようなグラフを描いても、必ずしも直線が得られるとは限らない。特に、未加硫ゴムのような非ニュートン流体の場合、非特許文献1の方法では予測精度が悪いという問題があった。 また、非特許文献2のものでは、トレーサーを混ぜた溶融樹脂を押出機により押出し、管路の中央に設けたスリットから可視光を照射し、内部を流れる溶融樹脂により散乱された光を側壁に設けた観察窓を通してCCDカメラにより撮影し、樹脂流動解析によって得られる速度分布と一致するスリップ速度を逆同定する方法が記載されている。 しかしながら、非特許文献2の方法は、流動性材料が透明な樹脂でないと、トレーサー樹脂から流速分布を求める事ができない。したがって、カーボンブラック等が配合されるような非透明のタイヤ用配合の未加硫ゴムの場合、この方法を採用することができず、汎用性に劣るという問題がある。 本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を、精度良くかつ簡単に調べることが可能な方法及びそれに用いられる測定装置を提供することを目的としている。 本発明のうち請求項1記載の発明は、可塑化されたゴム又は樹脂を含む流動性材料と、該流動性材料が流れる流路の壁面との摩擦特性を計算する方法であって、前記流動性材料を、同一内径かつ予め定めた解析対象区間で軸方向にのびる前記流路に連続して供給する工程と、前記流路の解析対象区間の上流側の壁面の圧力P0と、前記流路の解析対象区間の下流側の壁面の圧力P1とを測定する工程と、前記圧力の差(P0−P1)から下記式(1)によって解析対象区間の流路の壁面でのせん断応力τwを計算する工程と、該せん断応力と、前記流動性材料の単位時間当たりの流量と、前記流動性材料の粘度特性とを用いて下記式(2)で前記流路の壁面でのスリップ速度を計算する工程とを含むことを特徴とする。 また請求項2記載の発明は、前記流動性材料の粘度特性を、該流動性材料の粘度を、粘度計を用いて測定する工程と、前記測定された粘度を、流動性材料の解析対象区間での流動性材料の温度に、時間−温度換算則を用いて換算する工程とを含んで計算する請求項1記載の流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法である。 また請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載された流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法に用いられる測定装置であって、前記流動性材料を押し出す押出機の吐出側の端部に装着される外筒部と、該外筒部に着脱自在に内挿された内筒部とを含み、前記内筒部は、同一径で軸方向にのびかつ前記押出機から押し出された流動性材料が供給される流路を具え、かつ、前記流路の表面は、前記流動性材料との摩擦特性を測定する解析対象物で形成されるとともに、前記流路の解析対象区間の温度を測定する温度検出手段と、該解析対象区間の圧力を検出する圧力検出手段とを具えることを特徴とする測定装置である。 また請求項4記載の発明は、前記外筒部には、前記内筒部の温度を調節するための流体が流れる調温流路が形成される請求項3記載の測定装置である。 また請求項5記載の発明は、前記外筒部は、軸方向にのびるとともに前記内筒部が挿入される外筒本体と、該外筒本体の押出機側に着脱自在に固着されかつ前記押出機の前記端部に固着されることにより前記押出機から押し出されたを前記内筒部の流路に導入する継ぎ流路を有する接続金具と、前記外筒本体の押出機と反対側の端部である先端側に着脱自在に固着されかつ前記流路を流れる流動性材料を吐出する吐出口を有する蓋部材とを含み、前記内筒部は、前記接続金具及び蓋部材の間で軸方向に押圧されて同心に突き合わされた2つの筒片からなる請求項3又は4記載の測定装置である。 また請求項6記載の発明は、前記各筒片は、前記突き合わされた端面と反対側の端面に、各筒片を前記外筒本体から互いに離間する向きに引き出すための治具を螺着するためのネジ孔を有する請求項5記載の測定装置である。 請求項1に係る方法の発明では、流動性材料と、該流動性材料が流れる流路の壁面との摩擦特性、より具体的には流路の壁面でのスリップ速度を正確に計算できる。従って、複数種類の材料についてスリップ速度を調べ、該スリップ速度が大きい材料を特定して流路に用いることにより、例えば流動性材料の混練、押出しといった工程の生産性を向上させることが可能になる。また、ポリマーに配合されるフィラー(例えばシリカやカーボン)の分散性を向上しうるゴム流路の開発にも役立つ。さらに、本発明によれば、流動性材料の色彩に関わらず、測定することが可能になる。 また、請求項3に係る測定装置では、流動性材料を押し出す押出機の吐出側の端部に装着される外筒部と、該外筒部に着脱自在に挿入された内筒部とを含み、この内筒部は、前記押出機から押し出された流動性材料が流れる同一径で軸方向にのびる流路を具え、かつ、前記流路の表面は、前記流動性材料との摩擦特性を測定する解析対象物で形成される。しかも、この測定装置では、前記流路の解析対象区間の温度を測定する温度検出手段と、該解析対象区間の圧力を検出する圧力検出手段とを具える。従って、押出機側に何らの加工を必要とすることなく、内筒部の流路の壁面と流動性材料とのスリップ速度を計算するのに必要なデータを取得できる。従って、予め種々の材料及び/又は表面加工された内筒部を準備して、これらを交換することにより、簡単に様々な材料の摩擦特性を測定することができる。流動性材料が流れる流路の断面図である。未加硫ゴムの粘度を測定する一例を示す側面図である。未加硫ゴムのせん断速度とせん断粘度との関係を示すグラフである。本発明の方法を実施するための測定装置の断面図である。図1を分解して示す断面図である。本発明の測定装置を用いて得られた結果を示す。本発明の測定装置を用いて得られた結果を示す。 以下、本発明の実施の一形態について、流動性材料として可塑化された未加硫ゴムと、それが流れるゴム流路の壁面との摩擦特性を計算する方法について説明する。 先ず、図1に示されるように、キャピラリーC内をスリップがない状態で流れる未加硫ゴムUについて、任意の半径位置rでの速度の理論解が知られている。例えば、「Transport Phenomena second edition, R. Byron Bird p242-243」には、下記理論解が記載されている。ただし、符号は、次の通りである。 vz:流れ方向の未加硫ゴムの速度 P0:キャピラリーの入口圧力 PL:キャピラリーの出口圧力 m及びn:未加硫ゴムのせん断速度とせん断粘度の関係からPower Lawによって近似したときに決まる係数 r:未加硫ゴムの半径方向の位置 R:キャピラリーの半径 L:キャピラリーの軸方向(z方向)の長さ 発明者らは、上記式に、未加硫ゴムUの壁面Cwでの滑りを考慮した。即ち、未加硫ゴムは、キャピラリーCのゴム流路の壁面Cwで速度vslipのスリップ(滑り)生していると仮定すれば、下記式(5)が成り立つことを知見した。 また、上記式(5)を断面内で積分すると、下式(6)が得られる。 ここで、ρは未加硫ゴムの比重である。 そして上記式(6)を、vslipを求める形式に整理すると、下式(7)が得られる。 なお、式(7)は、未加硫ゴムUの壁面Cwでのせん断応力s=(P0−PL)R/2Lとおくと式(8)で表すことができる。 従って、本発明の方法によれば、もはや非特許文献1のMoonyのように、βをグラフを用いて導き出す必要は無く、理論式によって、未加硫ゴムの比重ρ、粘度のパラメータm及びn、キャピラリーCの半径R、キャピラリーCの解析対象区間の入口圧力P0、出口圧力PL並びに単位時間当たりに流れる未加硫ゴムUの流量qが分かれば、当該キャピラリーCに対する未加硫ゴムUのスリップ速度を簡単に計算することができる。 よって、本発明によれば、種々の条件でスリップ速度を計算して該スリップ速度の大きい材料を特定し、かつ、それをゴム押出機のゴム流路や混練機の壁面に用いることにより、押出し時等の抵抗を減じ、生産性の向上に役立てることができる。また、これとは逆に、ゴムポリマーに配合されるフィラー(例えばシリカやカーボン)の分散性を向上しうるゴム流路の開発にも役立つ。即ち、フィラーを分散させる為には、フィラーにせん断力を作用させる必要があり、このためには上記スリップ速度の小さい材料を選択するのが効果的である。 前記理論式に必要なキャピラリーCの解析対象区間の入口圧力P0、出口圧力PL及び単位時間当たりに流れる未加硫ゴムUの流量qについては、図1に示したように、キャピラリーCに、例えば押出機を用いて未加硫ゴムUを定常状態で連続供給して各種測定を行うことにより容易に得ることができる。また、未加硫ゴムの比重ρについては公知の測定方法にて得るることができる。 さらに、未加硫ゴムUの粘度のパラメータm及びnについては、別途、粘度計を使用し、該未加硫ゴムのせん断速度とせん断粘度との関係を求め、それらにpower law(カーブフィット)を適用してを同定することができる。 未加硫ゴムのせん断速度及び未加硫ゴムのせん断粘度については、例えば、キャピラリー型又はせん断型レオメータの粘度計を用いて測定することができる。 キャピラリー型の粘度計では、一般に、キャピラリーを流れる未加硫ゴムの入口−出口間の圧力損失が、圧力センサー又はロードセルを用いて測定される。そして、下記の式(9)を適用して未加硫ゴムのせん断粘度が計算される。なお、せん断速度は先に示した式(8)により計算できる。ここで、符号は次の通りである。ΔP:圧力損失(P0−PL)r: キャピラリーの半径Q:未加硫ゴムの流量L:キャピラリーの軸方向の長さ なお、この種の測定装置としては、例えば東洋精機社製の「キャピログラフ1D」等を用いることができる。 また、せん断型レオメータの粘度計の場合、図2に示されるように、粘度を測定したい未加硫ゴムUのサンプルkを2枚の円盤j、jの間に挟み、かつ、微小振動させることによってその粘弾性特性が計測される。そして、下記式(10)によってせん断粘度に換算できる。ここで、符号は次の通りである。 η*(ω):せん断粘度 ω:角周波数 G':動的弾性率 G":損失弾性率 γ:せん断速度 なお、この種の測定装置としては、例えばTAインスツルメント社製の「ARES」を挙げることができ、その測定条件の一例は次の通りである。 ひずみ:0.5% 縦荷重:0 周波数:0.1〜100(rad/s) 測定温度:130℃、100℃、80℃、60℃又は40℃ 図3には、上記ARESを使用して得られた未加硫ゴムUのせん断速度とせん断粘度との関係を示し、両者の間にはこのような比例関係が見られる。そして、このようにして得られたせん断速度とせん断粘度との直線関係から、式(11)を用いてカーブフィッティングプログラム等で近似することにより、前記パラメータm及びnを定めることができる。 また、未加硫ゴムUの粘度特性m、n等は温度に依存するため、上記理論式(7)に代入される各パラメータは、同一の温度条件での値である必要がある。従って、キャピラリーを用いて測定された前記圧力P0、PL及び未加硫ゴムUの流量qの温度条件と、前記パラメータm及びnを測定したときの温度条件とが異なる場合には、前記パラメータm及びnを、キャピラリーを流れる未加硫ゴムの温度条件に、公知の時間−温度換算則を用いて換算し、その換算された値を用いれば良い。 次に、未加硫ゴムのスリップ速度を計算するに際して、必要なパラメータを効率良く測定しうる測定装置の実施形態について述べる。 図4には、測定装置1の断面図を示し、該測定装置1は、外筒部2と、該外筒部2に着脱自在に内挿されかつ内部にゴム流路iを形成する内筒部3とを含んで構成される。また、本実施形態の測定装置1は、未加硫ゴムUを押し出す押出機Mの吐出側の端部eに装着されている。 前記外筒部2は、未加硫ゴムUの押出し方向に沿って軸方向にのびるとともに内筒部3が挿入された外筒本体4と、該外筒本体4の押出機側に着脱自在に固着された接続金具5と、外筒本体4の押出機Mと反対側の端部である先端側に着脱自在に固着された蓋部材6とを含んで構成されている。 前記外筒本体4は、軸方向に所定の長さでのびる円筒状の基部4aと、その先端側に形成された前フランジ部4bと、後端側に形成された後フランジ部4cとを一体に含んでいる。 前記基部4aには、内筒部3が挿入される内孔7が連続して形成されている。また、本実施形態では、基部4aに温度検出手段8と、圧力検出手段9とが固着されている。温度検出手段8及び圧力検出手段9は、それぞれ基部4aの半径方向にのびる取付孔10、11にそれぞれ装着されている。 前記温度検出手段8は、公知の温度センサーを用いることができ、例えば熱電対等が好適である。なお、温度検出手段8の検知信号は、図示しない制御装置へと入力される。本実施形態では、解析対象区間A内で等間隔で3つの温度検出手段8が並べて設けられている。なお、温度検出手段8の検知端8aは、内筒部3に設けた透孔21を通ってゴム流路i内に配置されている。より具体的には、検知端8aが内筒部3のゴム流路iの壁面ieと整一してその一部を構成するように配置されている。 また、前記圧力検出手段9は、公知の圧力センサーを用いることができる。本実施形態では、解析対象区間Aの最上流部及び最下流部にそれぞれ各一つの圧力検出手段9i、9oを含んでいる。これらの検知信号も制御装置へと入力される。なお、温度検出手段8と同様、圧力検出手段9の検知端9aも、内筒部3に設けた透孔22を通ってゴム流路iの壁面ieと整一して配置されている。これにより、圧力検出手段9は、ゴム流路iの解析対象区間Aの上流側の圧力P0と、下流側の圧力PLとを測定することができる。 さらに、本実施形態において、外筒部2の基部4aには、内筒部3の温度を調節するための流体が流れる調温流路14が形成されている。本実施形態の調温流路14は、基部4aの円周方向に沿って環状にのびている。そして、この調温流路14には、水、湯又はオイル等の流体が流出入する入口及び出口(図示省略)が設けられ、内部に流体が循環する。また、調温流路14は、基部4aの軸方向に距離を隔てて合計3本形成されている。 本実施形態では、温度検出手段8にて測定された温度に基づき、図示しないポンプを駆動し、各調温流路14に個別に、冷媒又は熱媒となる流体を出入りさせることができる。これにより、流体は、基部4aを介して内筒部3と熱交換を行い、内筒部3の温度を、その軸方向長さに亘って(より好ましくは少なくとも解析対象区間Aに亘って)所望の温度かつ一定に保つことができる。 前記接続金具5は、例えば、略円盤状をなし、本実施形態では、外筒部2の後フランジ部4cにボルト12で一体に固着される。また、接続金具5は、押出機Mの吐出口Mo側のフランジMfにボルト15で固着される。これにより、測定装置1が押出機Mに片持ち状に装着できる。 また、接続金具5の中央には、テーパ状の継ぎ流路13が形成されている。該継ぎ流路13は、押出機Mの吐出口Moと、内筒部3のゴム流入口3iとの間を繋ぐようにのびている。これにより、押出機Mから押し出された未加硫ゴムUは、円滑に内筒部3のゴム流路iへと送給される。さらに、本実施形態の接続金具5には、前記内筒部3の後端側の端面と当接する第1の押圧面5aが形成されている。 前記蓋部材6は、例えば、略円盤状をなし、外筒部2の前フランジ部4bにボルト17で固着されている。また、蓋部材6には、前記内筒部3のゴム流路iの吐出口と同径をなすゴム吐出口6oが形成されている。さらに、蓋部材6の前記ゴム吐出口6oの周りには、内筒部3の先端側の端面と当接する第2の押圧面6aが形成されている。 前記内筒部3は、例えば、円筒状のパイプ材からなり、内部に押出機Mから押し出された未加硫ゴムUが流れるゴム流路iが形成される。該ゴム流路iは、同一径で軸方向にのびる断面円形の内孔によって形成される。 また、ゴム流路iの表面(即ち壁面ie)は、未加硫ゴムUとの摩擦特性を測定する解析対象物で形成される。例えば、この内筒部3の少なくとも前記壁面ieを、解析しようとする解析対象材料(金属材料)及び/又は表面粗さ(塗膜やコーティング等の表面処理の有無)で形成する。なお、種々の解析を行う場合には、前記壁面ieの材料及び/又は表面粗さを異ならせた複数種類の内筒部3を予め準備し、これらを順次交換することにより、それぞれの摩擦特性を測定することができる。 また、本実施形態の内筒部3は、同心かつ軸方向に突き合わされることによって1本の連続した前記ゴム流路iを形成しうる2つの筒片3A、3Bから構成されている。これらの筒片3A、3Bは、接続金具5及び蓋部材6を外筒本体4に固着することにより、軸方向で互いに押圧され、突き合わせ面での隙間などを実質的に無くすことなく連続することができる。 さらに、各筒片3A、3Bには、位置合わせにより、外筒本体4に設けられた取付孔10及び11に連通する前述の透孔21、22が形成されている。これにより、温度検出手段8及び圧力検出手段9は、それぞれ外筒部2及び内筒部3を貫通してゴム流路i内に検知部を臨ませることができる。 本実施形態において、外筒部2と内筒部3との円周方向の相対位置を能率良く位置決めし、取付孔10及び11に透孔21、22を能率良く揃えるために、筒片3A、3Bには、その端部には、軸方向にのびるキー23が一体形成される。他方、外筒部2には、前記キー23と嵌合する凹部24が形成されている。これにより、キー23と凹部24とを合わせて挿入することにより、調整作業などを要することなく、取付孔10及び11に透孔21、22を揃えることができる。従って、内筒部3の交換作業時の位置合わせ挿入が能率化できる。 さらに、本実施形態においては、各筒片3A、3Bには、互いに突き合わされた端面と反対側の端面(即ち、内筒部3の両外端面)に、露出する状態でネジ孔29が設けられている。該ネジ孔29は、本実施形態では、肉厚を膨出させた前記キー23に穿設されている。このようなネジ孔29には、各筒片3A、3Bを外筒本体4から互いに離間する向きに引き出すための治具(図5に示す)を螺着することができ、内筒部3の交換作業をさらにう能率化しうる。 以上のように構成された本実施形態の測定装置1では、図4の状態に組み立てられた後、押出機Mに装着される。次に、押出機Mのスクリュー軸を回転させることにより、未加硫ゴムUが、継ぎ流路13を経て内筒部3のゴム流路iへと連続供給される。なお、内筒部3を流れた未加硫ゴムは、最終的にはゴム吐出口6oから外部に吐出される。 なお、各種の測定は、未加硫ゴムUの流れが安定した後に開始されるのが良い。そして、温度検出手段8によって、解析対象区間Aのゴム流路iの壁面位置での未加硫ゴムの温度が検出される。 この測定では、予め定めた一定の解析温度で行われるのが望ましい。本実施形態では、温度検出手段8によって測定された温度が、上記解析温度よりも高くなると、制御装置は、図示しないポンプを駆動し、前記調温流路節14に冷媒を供給する。これにより、外筒部2を介して内筒部3を冷却制御できる。他方、温度検出手段8によって測定された温度が、解析温度よりも低い場合、制御装置は、ポンプを駆動して調温流路14に熱媒を供給する。これにより、外筒部2を介して内筒部3を加温制御できる。このように、本実施形態の測定装置1では、内筒部3を解析温度に保つことができる。 また、圧力検出手段9i、9oによって、解析対象区間Aの未加硫ゴムUの入口圧力P0及び出口圧力PLをそれぞれ検知できる。 また、異なる材料及び/又は表面粗さのゴム流路を具えた内筒部3で測定を行いたい場合、図5に示されるように、先ず、接続金具5及び蓋部材6が、外筒本体4から取り外される。同様に、温度検出手段8及び圧力検出手段9が外筒部2から抜き取られる。しかる後、内筒部3の各筒片3A、3Bに設けられたネジ孔29に治具J(この例では引き抜き用のグリップとボルトとが示される)を螺着し、該治具Jを両外側に引き抜くことによって、外筒部2から各筒片3A及び3Bを抜き取ることができる。このような分割タイプの内筒部3は、引き抜き長さを小として、交換作業性を能率化しうる。 そして、予め準備された別の内筒部3の各筒片3A、3Bが、外筒部2に挿入され、接続金具5及び蓋部材6が外筒本体4に固着される。これにより、内筒部3が形成される。しかる後、温度検出手段8及び圧力検出手段9が外筒本体4から装着される。 図4に示した測定装置を用いて、下記の条件にて未加硫ゴムと2種類の内筒部との摩擦特性の測定を行った。[内筒部の仕様] 内筒部は、いずれも炭素鋼(S45C)から形成されたパイプ材からなり、一つはゴム流路の壁面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のコーティングを施したもの、もう一つはゴム流路の壁面にSACM645の窒化鋼をコーティングしたものとした。[押出機の流量] また、押出機のゴムの流量については、定常運転を確認した後、18秒間に押し出されたゴムの重量を測定し、これを秒数で除すことにより単位時間あたりの流量を求めた。なお、ゴムの流れ状態等を安定化させるために、測定は、押出機を最低30秒間初期運転させた後に開始した。[ゴム配合] 未加硫ゴムのゴム配合については、内筒部X、Yでともに共通とし、タイヤに用いられる一般的なシリカ配合の黒色のゴム組成物とした。[ゴム温度の測定] ゴム吐出口直ぐのゴムに熱電対を突き刺して10秒後の温度計の目盛りを読み取ることにより測定された。[測定結果] 図6に示されるように、ゴム流路の壁面が低表面自由エネルギーを有するPTFEの内筒部は、SACM645の窒化鋼を窒化したものに比較すると、壁面でのせん断応力は小さく、かつ、スリップ速度が上昇する傾向が見られた。この様に、本発明の方法及び測定装置を使用すれば、各ゴム流路の摩擦特性を数値で定量的に確認、評価することができる。 次に、上記測定装置のゴム流路の内径を3水準(30mm、37.5mm及び45mm)としてせん断応力が変わるようにし、それぞれの条件でスリップ速度を導出した。壁面温度は60℃に設定した。結果は、図7に示されるように、せん断応力とすべり速度の関係を得ることができた。従って、このような結果から、ゴムの押出し時の温度について、最適なスリップ速度を調べるのに役立つ。 以上のように、本実施例の装置を用いると、流動性材料の流路の壁面の材質、表面粗さ、温度、流動性材料の温度等によって、壁面での摩擦特性がどの様に変化するのかを、簡単に実験でかつ定量的に求めることができる。また本実施形態の測定装置では、内筒部の内径を大きく設定できるため、流路の壁面のメッキや表面加工が容易となり、かつ、金属表面の実温度計測や、圧力損失の計測もしやすいという利点を有する。1 測定装置2 外筒部3 内筒部3A、3B 筒片4 外筒本体4a 基部4b 前フランジ部4c 後フランジ部5 接続金具6 蓋部材6o ゴム吐出口7 内孔8 温度検出手段9 圧力検出手段14 調温流路15、17 ボルト29 ネジ孔A 解析対象区間i ゴム流路ie ゴム流路の壁面J 治具M 押出機 可塑化されたゴム又は樹脂を含む流動性材料と、該流動性材料が流れる流路の壁面との摩擦特性を計算する方法であって、 前記流動性材料を、同一内径かつ予め定めた解析対象区間で軸方向にのびる前記流路に連続して供給する工程と、 前記流路の解析対象区間の上流側の壁面の圧力P0と、前記流路の解析対象区間の下流側の壁面の圧力P1とを測定する工程と、 前記圧力の差(P0−P1)から下記式(1)によって解析対象区間の流路の壁面でのせん断応力τwを計算する工程と、 該せん断応力と、前記流動性材料の単位時間当たりの流量と、前記流動性材料の粘度特性とを用いて下記式(2)で前記流路の壁面でのスリップ速度を計算する工程とを含むことを特徴とする流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法。 前記流動性材料の粘度特性を、 該流動性材料の粘度を、粘度計を用いて測定する工程と、 前記測定された粘度を、流動性材料の解析対象区間での流動性材料の温度に、時間−温度換算則を用いて換算する工程とを含んで計算する請求項1記載の流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法。 請求項1又は2に記載された流動性材料と流路の壁面との摩擦特性を計算する方法に用いられる測定装置であって、 前記流動性材料を押し出す押出機の吐出側の端部に装着される外筒部と、該外筒部に着脱自在に内挿された内筒部とを含み、 前記内筒部は、同一径で軸方向にのびかつ前記押出機から押し出された流動性材料が供給される流路を具え、かつ、前記流路の表面は、前記流動性材料との摩擦特性を測定する解析対象物で形成されるとともに、 前記流路の解析対象区間の温度を測定する温度検出手段と、該解析対象区間の圧力を検出する圧力検出手段とを具えることを特徴とする測定装置。 前記外筒部には、前記内筒部の温度を調節するための流体が流れる調温流路が形成される請求項3記載の測定装置。 前記外筒部は、軸方向にのびるとともに前記内筒部が挿入される外筒本体と、 該外筒本体の押出機側に着脱自在に固着されかつ前記押出機の前記端部に固着されることにより前記押出機から押し出されたを前記内筒部の流路に導入する継ぎ流路を有する接続金具と、 前記外筒本体の押出機と反対側の端部である先端側に着脱自在に固着されかつ前記流路を流れる流動性材料を吐出する吐出口を有する蓋部材とを含み、 前記内筒部は、前記接続金具及び蓋部材の間で軸方向に押圧されて同心に突き合わされた2つの筒片からなる請求項3又は4記載の測定装置。 前記各筒片は、前記突き合わされた端面と反対側の端面に、各筒片を前記外筒本体から互いに離間する向きに引き出すための治具を螺着するためのネジ孔を有する請求項5記載の測定装置。 【課題】未加硫ゴムとゴム流路の壁面との摩擦特性を計算する方法及びそれに用いられる測定装置を提供する。【解決手段】未加硫ゴムと、該未加硫ゴムが流れるゴム流路の壁面との摩擦特性を計算する方法であって、ゴム押出機で押し出された未加硫ゴムを、同一内径かつ予め定めた解析対象長さで軸方向にのびるゴム流路に供給するとともに、前記解析対象区間の上流側の流路壁面の圧力P0と、前記解析対象区間の下流側の流路壁面の圧力P1とを測定する工程と、前記圧力の差(P0−P1)から解析対象区間での壁面せん断応力を計算する工程と、該壁面せん断応力と、前記未加硫ゴムの単位時間当たりの流量と、前記未加硫ゴムの粘度特性とを用いてゴム流路の壁面でのスリップ速度を計算する工程とを含むことを特徴とする未加硫ゴムとゴム流路の壁面との摩擦特性を計算する方法である。【選択図】図3