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タイトル:公開特許公報(A)_骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法
出願番号:2009123220
年次:2010
IPC分類:C12N 5/07,A61L 27/00


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程 錦雁 袴塚 康治 二宮 郁純 安武 幹智 JP 2010268722 公開特許公報(A) 20101202 2009123220 20090521 骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法 オリンパス株式会社 000000376 旭化成クラレメディカル株式会社 000116806 上田 邦生 100118913 藤田 考晴 100112737 程 錦雁 袴塚 康治 二宮 郁純 安武 幹智 C12N 5/07 20100101AFI20101105BHJP A61L 27/00 20060101ALI20101105BHJP JPC12N5/00 EA61L27/00 VA61L27/00 J 6 1 OL 9 特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月5日 第8回日本再生医療学会総会事務局発行の「日本再生医療学会雑誌 再生医療(2009 Vol.8 Suppl 増刊号)−第8回 日本再生医療学会総会 プログラム・抄録−」に発表 4B065 4C081 4B065AA93X 4B065AC20 4B065BC42 4B065CA60 4C081AB02 4C081CD34 4C081CF022 4C081DA11 4C081DB05 4C081EA11 本発明は、骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法に関するものである。 従来、培養骨を製造する場合に、骨髄液から抽出した単核球細胞を培養する際に、分化誘導剤を添加して培養することにより骨芽細胞に分化させ、得られた骨芽細胞をブロック状のβリン酸三カルシウム多孔体に付着させることとしていた(例えば、特許文献1参照。)。一方、末梢血内にも単核球細胞が存在することが知られているが、末梢血から抽出される単核球細胞は分化誘導剤を添加して培養しても骨芽細胞に分化しない。特開2003−320009号公報 しかしながら、骨髄液内に含有される単核球細胞は微量であるため、十分な骨芽細胞を得るためには、多量の骨髄液を採取しなければならない。骨髄液は腸骨内等に多く存在するが、その採取には腸骨内まで穿刺する必要があり、患者にかかる負担が大きいという不都合がある。これに対して、末梢血内に含有される単核球細胞も微量ではあるが、末梢血の採取は骨髄液の採取と比較して容易であり、末梢血から骨芽細胞を得ることができれば患者にかかる負担を軽減することができる。 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、末梢血から骨芽細胞を製造することができる骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法を提供することを目的としている。 上記目的を達成するために本発明は以下の手段を提供する。 本発明は、人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップと、該抽出ステップにより抽出された単核球細胞と粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップとを含む骨芽細胞の製造方法を提供する。 本発明によれば、末梢血から抽出された単核球細胞に、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末を混合して培養するだけで骨芽細胞を製造することができる。 粒径25μmより小さいβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用する場合には、粒子どうしが凝集して、相対的に単核球細胞とβリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒子との接触頻度が減少し、骨芽細胞への分化が行われず、粒径75μmより大きいβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用する場合には、βリン酸三カルシウム多孔体の気孔内に単核球細胞が入り込み、マクロファージ化され難く、骨芽細胞への分化が行われない。 上記発明においては、βリン酸三カルシウム多孔体が75%以上の気孔率を有することが好ましい。 また、培養ステップにおいて、βリン酸三カルシウム多孔体粉末を培地に対して1〜3重量%の濃度で混合することが好ましい。 また、本発明は、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末からなり、末梢血から抽出された単核球細胞の骨芽細胞への分化を誘導する分化誘導材を提供する。 本発明によれば、末梢血から抽出された単核球細胞に添加して培養することにより、単核球細胞を骨芽細胞に分化させることができる。 上記発明においては、βリン酸三カルシウム多孔体が75%以上の気孔率を有することが好ましい。 また、本発明は、末梢血から抽出した単核球細胞を培養する際に培地に混合する分化誘導材の使用方法を提供する。 本発明によれば、末梢血から抽出された単核球細胞に分化誘導材を培地に混合して培養することにより、単核球細胞を骨芽細胞に分化させることができる。 本発明によれば、末梢血から骨芽細胞を製造することができるという効果を奏する。本発明の一実施形態に係る骨芽細胞の製造方法を示すフローチャートである。図1の製造方法の比較例であって、75μmより大きな粒径のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加した場合の実験結果を示す顕微鏡写真である。図1の製造方法であって、25〜75μmの粒径のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加した場合の実験結果を示す顕微鏡写真である。 以下、本発明の一実施形態に係る骨芽細胞の製造方法について、図面を参照して以下に説明する。 本実施形態に係る骨芽細胞の製造方法は、図1に示されるように、人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップS1と、該抽出ステップS1により抽出された単核球細胞と粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップS2とを含んでいる。 抽出ステップS1は、例えば、フィコール法によって末梢血から単核球細胞を分離する。 フィコール法は、人体から採取した末梢血を生理食塩水で希釈した希釈液を、フィコールパック(Ficoll-paque,Pharmacia)上に重層し、密度勾配遠心分離を行うことで分離された単核球細胞を単離する。そして、単離した単核球細胞層を洗浄するために食塩水あるいは血液なし培地を添加して、単核球細胞と混合する。それを遠心処理した後に、上澄み液を除去する。これにより、末梢血から単核球細胞が分離される。 培養ステップS2は、細胞を培養するための培地、例えば、血清入りのDMEM培地に、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末を混合した培地内に単核球細胞を播種することにより行われる。 本実施形態に係る骨芽細胞の製造方法によれば、培地内に添加された粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末が分化誘導材として機能し、末梢血から採取された単核球細胞を骨芽細胞に分化させることができる。 すなわち、本実施形態に係る骨芽細胞の製造方法によれば、骨髄液のように採取に際して侵襲が高い細胞ソースを使用することなく、末梢血という低侵襲で採取可能な細胞ソースを利用することができる。したがって、患者にかかる負担を大幅に軽減することができる。 ここで、使用するβリン酸三カルシウム多孔体粉末の適正粒径を決定するために以下の実験を行った。 まず、βリン酸三カルシウム多孔体を含む溶液および培地を、以下の条件で調製した。(1)オリンパステルモバイオマテリアル社製βリン酸三カルシウム多孔体で気孔率75%、粒径を25μm以下、25〜75μm、75〜105μmの3種類を準備し、それぞれの粒径のβリン酸三カルシウム多孔体1gに対してリン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mLを混合して溶液を調製し、4℃で保存した。(2)培地には、F−12培地: DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium :GIBCO社製)を使用し、ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン100ng/mL、アンフォテリシン250ng/mLを添加した。(3)血清として、10%FBS(Fetal Bovine Serum)を使用した。(4)末梢血液の細胞分離はフィコール(Ficoll)法を用いた。 ヘパリンを入れたシリンジで成人健常ドナーから静脈血を採血し、得られた血液を生理食塩水で1:1に希釈した。希釈血液にフィコールパック(Ficoll-Paque)を1:1(20mL:20mL)で重層した。そして、密度勾配遠心分離(30G,1400rpm、30分)を室温で行い、遠心後、単核球細胞層を単離した。単離された単核球細胞層を洗浄するために食塩水あるいは血液なし培地を、食塩水あるいは培地:単核球細胞層=35mL:15mLの割合で混合し、よく攪拌した。その後、混合した細胞を計数し、それを遠心操作(28G,1200rpm、5分)後、上澄み液を除去した。食塩水あるいは培地を添加し、細胞密度を2×106/mLとなるように調製した。(5)血清入りの培地を入れ37℃のインキュベータ内で約15分静置した。(6)(1)で調整したβリン酸三カルシウム多孔体溶液を、添加濃度5μL/ウェルで添加した。(7)播種密度は細胞密度2×106/mLの溶液を100μL/ウェル/24マイクロプレートとなるように蒔いた。(8)さらに培地を1mL/ウェル/24マイクロプレートとなるように添加した。(9)添加後、マイクロプレートを振動させる。(10)0〜2時間経過後の状態を顕微鏡で観察し、下記の結果を得た。 βリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒径が75μm以上の粒子になると、そのβリン酸三カルシウム多孔体の気孔内に細胞が入り込み、マクロファージ化して貪食する働きが行われ難い(図2参照。)。 一方、βリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒径が25μm以下の粒子になると粒子どうしが凝集し、相対的に細胞とβリン酸三カルシウム多孔体の接触頻度が減少した。 これに対して、βリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒径が25〜75μmの範囲である場合には、そのような不都合がなく骨芽細胞への分化が確認された(図3参照。)。 次に、上記の実験により有効であることが確認された25〜75μmの粒径範囲のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用した培養試験の実施例について説明する。<細胞処理〜培養> まず、濃度1000U/mLのヘパリンナトリウム(ニプロファーマ(株))を最終濃度が5000U/Lとなるよう健常人新鮮血液100mLに添加した。 次いで、リンパ球分離溶液(ナカライテスク(株))15mL上に上記血液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS(−))(ナカライテスク(株))で約2倍希釈した血液30mLを重層し、室温で400Gにて30分間遠心後(遠心機:LC−100,(株)TOMY精工)、中間の単核球層を採取した。 採取した単核球層をPBS(−)で約2倍に希釈後、室温で250Gにて5分間遠心し上清を吸引除去した。 次に、10%仔牛血清を含むDMEM培地(HI FBS:16140, GIBCO社、DMEM:11885,GIBCO社)を約2mL添加後細胞をほぐし、室温で250Gにて10分間遠心後、上清を吸引除去した。 そして、10%仔牛血清を含むDMEM培地を約1mL添加後、血球計数装置(SF−3000, Sysmex(株)社)にて細胞数を測定し、単核球数が2×107/mLになるよう10%仔牛血清を含むDMEM培地を加えて単核球浮遊液を調製した。 上記単核球浮遊液をHuman Fibronectin Cellware 24−Well Plate(BD Biosciences社)に0.5mL/ウェル添加後、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末(オリンパステルモバイオマテリアル(株)社)をPBS(−)で200ミリグラム/mLに調製した懸濁液を50μL/ウェル添加後、CO2インキュベータ(型式:F370,サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)社)にて5週間培養した。培地交換は2〜3回/週行った。<培養後の細胞処理> まず、5週間培養後、培養上清を吸引除去し、室温のPBS(−)0.5mL/ウェルで2回洗浄した。 そして、20%ギ酸(和光純薬(株))を0.5mL/ウェル加え、CELL SCRAPER(IWAKI社)で細胞を剥離させてマイクロチューブに回収した。 この後に、氷上で超音波発生機(Handy Sonic:UR-20P,(株)TOMY精工社)のプローブを回収液に浸漬し、60秒間超音波にて細胞破砕を行った。 4℃にて20000Gで10分間遠心後、上清0.45mLを採取した。 NAP−5 columns(GE Healthcare社)にTEバッファー(10mM Tris-HCl, 1mM EDTA、invitrogen社)9mL/columnを用いて平衡化し、上記上清0.45mLを添加した。 さらに、Gla-Type Osteocalcin(Gla-OC)EIA Kit(Precoated)(タカラバイオ(株)社)添付のSample Diluent 0.5mLを添加後、カラムからの溶出液を採取した。 採取した溶出液を−80℃ディープフリーザにて一晩凍結させた後に、真空凍結乾燥機(FZ-Compact,LABCONCO社)で約8時間完全に乾燥させた。<オステオカルシンの測定> 乾燥後の検体にGla-Type Osteocalcin(Gla-OC)EIA Kit(Precoated)(タカラバイオ(株)社)添付のSample diluentを0.25mL添加後溶解させた。 そして、Gla-Type Osteocalcin“Gla-OC”EIA Kit“Precoated”(タカラバイオ(株)社)にてオステオカルシンの定量を行った。 比較例1として、単核球浮遊液にβリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加しない以外は上記実施例と同じ方法で行った。 比較例2として、上記培養試験で用いた10%仔牛血清を含むDMEM培地に最終濃度が100nM Dexamethasone(SIGMA社)、10mM Glycerol 2−phosphate disodium salt hydrate(SIGMA社)、50mM L-Ascorbic acid 2−phosphate sesquimagnesium salt hydrate(SIGMA社)となるように調製した培地を用いた以外は比較例1と同じ方法で行った。 実施例の結果、ヒト末梢血から分離した単核球細胞をβリン酸三カルシウム多孔体粉末と共培養した結果、0.46ng/cm2のオステオカルシンが産生されたことが確認された。 一方、βリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加しない比較例1およびβリン酸三カルシウム多孔体粉末および分化誘導剤を添加した培地で培養した比較例2のいずれにおいても、オステオカルシンの産生は確認されなかった。 このことから、ヒト末梢血から分離した単核球細胞は、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末を混合した培地内で培養することにより、骨芽細胞に分化誘導することができ、骨芽細胞を製造することができることがわかった。 すなわち、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末は、ヒト末梢血から分離した単核球細胞の骨芽細胞への分化誘導材として使用することができることがわかった。 なお、本実施形態においては、気孔率75%のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用したが、これに代えて、75%より大きい気孔率を有するものを使用してもよい。このようにすることで、βリン酸三カルシウム多孔体粉末の培地への溶出を容易にし、単核球細胞の骨芽細胞への分化をさらに効果的に誘導することができるという利点がある。 S1 抽出ステップ S2 培養ステップ 人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップと、 該抽出ステップにより抽出された単核球細胞と粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップとを含む骨芽細胞の製造方法。 βリン酸三カルシウム多孔体が75%以上の気孔率を有する請求項1に記載の骨芽細胞の製造方法。 培養ステップにおいて、βリン酸三カルシウム多孔体粉末を培地に対して1〜3重量%の濃度で混合する請求項1または請求項2に記載の骨芽細胞の製造方法。 粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末からなり、末梢血から抽出された単核球細胞の骨芽細胞への分化を誘導する分化誘導材。 βリン酸三カルシウム多孔体が75%以上の気孔率を有する請求項4に記載の分化誘導材。 末梢血から抽出した単核球細胞を培養する際に培地に混合する請求項4または請求項5に記載の分化誘導材の使用方法。 【課題】末梢血から骨芽細胞を製造する。【解決手段】人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップS1と、該抽出ステップS1により抽出された単核球細胞と粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップS2とを含む骨芽細胞の製造方法を提供する。粒子どうしの凝集を抑制して、単核球細胞とβリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒子との接触頻度を増大させるとともに、βリン酸三カルシウム多孔体の気孔内への球細胞の入り込みを防止して、マクロファージ化を抑え、骨芽細胞への分化を促すことができる。【選択図】図1


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特許公報(B2)_骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法

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タイトル:特許公報(B2)_骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法
出願番号:2009123220
年次:2014
IPC分類:C12N 5/0786,C12N 5/07,A61L 27/00


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程 錦雁 袴塚 康治 二宮 郁純 安武 幹智 JP 5502367 特許公報(B2) 20140320 2009123220 20090521 骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法 オリンパス株式会社 000000376 旭化成メディカル株式会社 507365204 上田 邦生 100118913 藤田 考晴 100112737 程 錦雁 袴塚 康治 二宮 郁純 安武 幹智 20140528 C12N 5/0786 20100101AFI20140501BHJP C12N 5/07 20100101ALI20140501BHJP A61L 27/00 20060101ALI20140501BHJP JPC12N5/00 202NC12N5/00 202ZA61L27/00 FA61L27/00 GA61L27/00 VA61L27/00 J C12N 5/00−5/28 A61L 27/00−27/60 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/WPIX(STN) Key Eng. Mater.,2007年,Vol.330-332,p.1087-1090 4 2010268722 20101202 8 20120508 特許法第30条第1項適用 平成21年2月5日 第8回日本再生医療学会総会事務局発行の「日本再生医療学会雑誌 再生医療(2009 Vol.8 Suppl 増刊号)−第8回 日本再生医療学会総会 プログラム・抄録−」に発表 水落 登希子 本発明は、骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法に関するものである。 従来、培養骨を製造する場合に、骨髄液から抽出した単核球細胞を培養する際に、分化誘導剤を添加して培養することにより骨芽細胞に分化させ、得られた骨芽細胞をブロック状のβリン酸三カルシウム多孔体に付着させることとしていた(例えば、特許文献1参照。)。一方、末梢血内にも単核球細胞が存在することが知られているが、末梢血から抽出される単核球細胞は分化誘導剤を添加して培養しても骨芽細胞に分化しない。特開2003−320009号公報 しかしながら、骨髄液内に含有される単核球細胞は微量であるため、十分な骨芽細胞を得るためには、多量の骨髄液を採取しなければならない。骨髄液は腸骨内等に多く存在するが、その採取には腸骨内まで穿刺する必要があり、患者にかかる負担が大きいという不都合がある。これに対して、末梢血内に含有される単核球細胞も微量ではあるが、末梢血の採取は骨髄液の採取と比較して容易であり、末梢血から骨芽細胞を得ることができれば患者にかかる負担を軽減することができる。 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、末梢血から骨芽細胞を製造することができる骨芽細胞の製造方法、分化誘導材とその使用方法を提供することを目的としている。 上記目的を達成するために本発明は以下の手段を提供する。 本発明は、人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップと、該抽出ステップにより抽出された単核球細胞と75%以上の気孔率を有する粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップとを含む骨芽細胞の製造方法を提供する。 本発明によれば、末梢血から抽出された単核球細胞に、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末を混合して培養するだけで骨芽細胞を製造することができる。 粒径25μmより小さいβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用する場合には、粒子どうしが凝集して、相対的に単核球細胞とβリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒子との接触頻度が減少し、骨芽細胞への分化が行われず、粒径75μmより大きいβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用する場合には、βリン酸三カルシウム多孔体の気孔内に単核球細胞が入り込み、マクロファージ化され難く、骨芽細胞への分化が行われない。 上記発明においては、培養ステップにおいて、βリン酸三カルシウム多孔体粉末を培地に対して1〜3重量%の濃度で混合することが好ましい。 また、本発明は、75%以上の気孔率を有する粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末からなり、末梢血から抽出された単核球細胞の骨芽細胞への分化を誘導する分化誘導材を提供する。 本発明によれば、末梢血から抽出された単核球細胞に添加して培養することにより、単核球細胞を骨芽細胞に分化させることができる。 また、本発明は、末梢血から抽出した単核球細胞を培養する際に培地に混合する分化誘導材の使用方法を提供する。 本発明によれば、末梢血から抽出された単核球細胞に分化誘導材を培地に混合して培養することにより、単核球細胞を骨芽細胞に分化させることができる。 本発明によれば、末梢血から骨芽細胞を製造することができるという効果を奏する。本発明の一実施形態に係る骨芽細胞の製造方法を示すフローチャートである。図1の製造方法の比較例であって、75μmより大きな粒径のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加した場合の実験結果を示す顕微鏡写真である。図1の製造方法であって、25〜75μmの粒径のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加した場合の実験結果を示す顕微鏡写真である。 以下、本発明の一実施形態に係る骨芽細胞の製造方法について、図面を参照して以下に説明する。 本実施形態に係る骨芽細胞の製造方法は、図1に示されるように、人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップS1と、該抽出ステップS1により抽出された単核球細胞と粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップS2とを含んでいる。 抽出ステップS1は、例えば、フィコール法によって末梢血から単核球細胞を分離する。 フィコール法は、人体から採取した末梢血を生理食塩水で希釈した希釈液を、フィコールパック(Ficoll-paque,Pharmacia)上に重層し、密度勾配遠心分離を行うことで分離された単核球細胞を単離する。そして、単離した単核球細胞層を洗浄するために食塩水あるいは血液なし培地を添加して、単核球細胞と混合する。それを遠心処理した後に、上澄み液を除去する。これにより、末梢血から単核球細胞が分離される。 培養ステップS2は、細胞を培養するための培地、例えば、血清入りのDMEM培地に、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末を混合した培地内に単核球細胞を播種することにより行われる。 本実施形態に係る骨芽細胞の製造方法によれば、培地内に添加された粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末が分化誘導材として機能し、末梢血から採取された単核球細胞を骨芽細胞に分化させることができる。 すなわち、本実施形態に係る骨芽細胞の製造方法によれば、骨髄液のように採取に際して侵襲が高い細胞ソースを使用することなく、末梢血という低侵襲で採取可能な細胞ソースを利用することができる。したがって、患者にかかる負担を大幅に軽減することができる。 ここで、使用するβリン酸三カルシウム多孔体粉末の適正粒径を決定するために以下の実験を行った。 まず、βリン酸三カルシウム多孔体を含む溶液および培地を、以下の条件で調製した。(1)オリンパステルモバイオマテリアル社製βリン酸三カルシウム多孔体で気孔率75%、粒径を25μm以下、25〜75μm、75〜105μmの3種類を準備し、それぞれの粒径のβリン酸三カルシウム多孔体1gに対してリン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mLを混合して溶液を調製し、4℃で保存した。(2)培地には、F−12培地: DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium :GIBCO社製)を使用し、ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン100ng/mL、アンフォテリシン250ng/mLを添加した。(3)血清として、10%FBS(Fetal Bovine Serum)を使用した。(4)末梢血液の細胞分離はフィコール(Ficoll)法を用いた。 ヘパリンを入れたシリンジで成人健常ドナーから静脈血を採血し、得られた血液を生理食塩水で1:1に希釈した。希釈血液にフィコールパック(Ficoll-Paque)を1:1(20mL:20mL)で重層した。そして、密度勾配遠心分離(30G,1400rpm、30分)を室温で行い、遠心後、単核球細胞層を単離した。単離された単核球細胞層を洗浄するために食塩水あるいは血液なし培地を、食塩水あるいは培地:単核球細胞層=35mL:15mLの割合で混合し、よく攪拌した。その後、混合した細胞を計数し、それを遠心操作(28G,1200rpm、5分)後、上澄み液を除去した。食塩水あるいは培地を添加し、細胞密度を2×106/mLとなるように調製した。(5)血清入りの培地を入れ37℃のインキュベータ内で約15分静置した。(6)(1)で調整したβリン酸三カルシウム多孔体溶液を、添加濃度5μL/ウェルで添加した。(7)播種密度は細胞密度2×106/mLの溶液を100μL/ウェル/24マイクロプレートとなるように蒔いた。(8)さらに培地を1mL/ウェル/24マイクロプレートとなるように添加した。(9)添加後、マイクロプレートを振動させる。(10)0〜2時間経過後の状態を顕微鏡で観察し、下記の結果を得た。 βリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒径が75μm以上の粒子になると、そのβリン酸三カルシウム多孔体の気孔内に細胞が入り込み、マクロファージ化して貪食する働きが行われ難い(図2参照。)。 一方、βリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒径が25μm以下の粒子になると粒子どうしが凝集し、相対的に細胞とβリン酸三カルシウム多孔体の接触頻度が減少した。 これに対して、βリン酸三カルシウム多孔体粉末の粒径が25〜75μmの範囲である場合には、そのような不都合がなく骨芽細胞への分化が確認された(図3参照。)。 次に、上記の実験により有効であることが確認された25〜75μmの粒径範囲のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用した培養試験の実施例について説明する。<細胞処理〜培養> まず、濃度1000U/mLのヘパリンナトリウム(ニプロファーマ(株))を最終濃度が5000U/Lとなるよう健常人新鮮血液100mLに添加した。 次いで、リンパ球分離溶液(ナカライテスク(株))15mL上に上記血液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS(−))(ナカライテスク(株))で約2倍希釈した血液30mLを重層し、室温で400Gにて30分間遠心後(遠心機:LC−100,(株)TOMY精工)、中間の単核球層を採取した。 採取した単核球層をPBS(−)で約2倍に希釈後、室温で250Gにて5分間遠心し上清を吸引除去した。 次に、10%仔牛血清を含むDMEM培地(HI FBS:16140, GIBCO社、DMEM:11885,GIBCO社)を約2mL添加後細胞をほぐし、室温で250Gにて10分間遠心後、上清を吸引除去した。 そして、10%仔牛血清を含むDMEM培地を約1mL添加後、血球計数装置(SF−3000, Sysmex(株)社)にて細胞数を測定し、単核球数が2×107/mLになるよう10%仔牛血清を含むDMEM培地を加えて単核球浮遊液を調製した。 上記単核球浮遊液をHuman Fibronectin Cellware 24−Well Plate(BD Biosciences社)に0.5mL/ウェル添加後、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末(オリンパステルモバイオマテリアル(株)社)をPBS(−)で200ミリグラム/mLに調製した懸濁液を50μL/ウェル添加後、CO2インキュベータ(型式:F370,サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)社)にて5週間培養した。培地交換は2〜3回/週行った。<培養後の細胞処理> まず、5週間培養後、培養上清を吸引除去し、室温のPBS(−)0.5mL/ウェルで2回洗浄した。 そして、20%ギ酸(和光純薬(株))を0.5mL/ウェル加え、CELL SCRAPER(IWAKI社)で細胞を剥離させてマイクロチューブに回収した。 この後に、氷上で超音波発生機(Handy Sonic:UR-20P,(株)TOMY精工社)のプローブを回収液に浸漬し、60秒間超音波にて細胞破砕を行った。 4℃にて20000Gで10分間遠心後、上清0.45mLを採取した。 NAP−5 columns(GE Healthcare社)にTEバッファー(10mM Tris-HCl, 1mM EDTA、invitrogen社)9mL/columnを用いて平衡化し、上記上清0.45mLを添加した。 さらに、Gla-Type Osteocalcin(Gla-OC)EIA Kit(Precoated)(タカラバイオ(株)社)添付のSample Diluent 0.5mLを添加後、カラムからの溶出液を採取した。 採取した溶出液を−80℃ディープフリーザにて一晩凍結させた後に、真空凍結乾燥機(FZ-Compact,LABCONCO社)で約8時間完全に乾燥させた。<オステオカルシンの測定> 乾燥後の検体にGla-Type Osteocalcin(Gla-OC)EIA Kit(Precoated)(タカラバイオ(株)社)添付のSample diluentを0.25mL添加後溶解させた。 そして、Gla-Type Osteocalcin“Gla-OC”EIA Kit“Precoated”(タカラバイオ(株)社)にてオステオカルシンの定量を行った。 比較例1として、単核球浮遊液にβリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加しない以外は上記実施例と同じ方法で行った。 比較例2として、上記培養試験で用いた10%仔牛血清を含むDMEM培地に最終濃度が100nM Dexamethasone(SIGMA社)、10mM Glycerol 2−phosphate disodium salt hydrate(SIGMA社)、50mM L-Ascorbic acid 2−phosphate sesquimagnesium salt hydrate(SIGMA社)となるように調製した培地を用いた以外は比較例1と同じ方法で行った。 実施例の結果、ヒト末梢血から分離した単核球細胞をβリン酸三カルシウム多孔体粉末と共培養した結果、0.46ng/cm2のオステオカルシンが産生されたことが確認された。 一方、βリン酸三カルシウム多孔体粉末を添加しない比較例1およびβリン酸三カルシウム多孔体粉末および分化誘導剤を添加した培地で培養した比較例2のいずれにおいても、オステオカルシンの産生は確認されなかった。 このことから、ヒト末梢血から分離した単核球細胞は、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末を混合した培地内で培養することにより、骨芽細胞に分化誘導することができ、骨芽細胞を製造することができることがわかった。 すなわち、粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末は、ヒト末梢血から分離した単核球細胞の骨芽細胞への分化誘導材として使用することができることがわかった。 なお、本実施形態においては、気孔率75%のβリン酸三カルシウム多孔体粉末を使用したが、これに代えて、75%より大きい気孔率を有するものを使用してもよい。このようにすることで、βリン酸三カルシウム多孔体粉末の培地への溶出を容易にし、単核球細胞の骨芽細胞への分化をさらに効果的に誘導することができるという利点がある。 S1 抽出ステップ S2 培養ステップ 人体から採取された末梢血から単核球細胞を抽出する抽出ステップと、 該抽出ステップにより抽出された単核球細胞と75%以上の気孔率を有する粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末とを混合して培養する培養ステップとを含む骨芽細胞の製造方法。 培養ステップにおいて、βリン酸三カルシウム多孔体粉末を培地に対して1〜3重量%の濃度で混合する請求項1に記載の骨芽細胞の製造方法。 75%以上の気孔率を有する粒径25〜75μmのβリン酸三カルシウム多孔体粉末からなり、末梢血から抽出された単核球細胞の骨芽細胞への分化を誘導する分化誘導材。 末梢血から抽出した単核球細胞を培養する際に培地に混合する請求項3に記載の分化誘導材の使用方法。


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