タイトル: | 公開特許公報(A)_発酵材料の糖化方法 |
出願番号: | 2009114047 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12P 19/02,C13K 1/06 |
小田部 エドモンド 荘司 松本 泰國 川上 宏幸 JP 2010041993 公開特許公報(A) 20100225 2009114047 20090509 発酵材料の糖化方法 国立大学法人九州工業大学 504174135 学校法人福岡大学 598015084 前田 純博 100077263 小田部 エドモンド 荘司 松本 泰國 川上 宏幸 JP 2008182116 20080712 C12P 19/02 20060101AFI20100129BHJP C13K 1/06 20060101ALI20100129BHJP JPC12P19/02C13K1/06 3 1 OL 7 4B064 4B064AF02 4B064CA05 4B064CB07 4B064CC30 4B064CD19 4B064CD22 4B064CD30 4B064DA10本発明は、酒類を含む発酵食品を製造する際の原料となる発酵材料の、効果的な糖化方法に関する。酒類、例えば、日本酒(清酒)は、米を原料とし麹(麹菌)と酵母の働きで造られる。麹は、主に米を溶かして糖分や酵母の栄養となる物質を造る。一方、酵母は、酒の主成分であるアルコールを造る。麹又は麹菌は、かびの一種であり、日本の伝統食品である、日本酒、焼酎、味噌、醤油、食酢、漬け物等を製造する際に重要な役割を果たす。麹単独ではアルコール発酵を行うことはできないが、麹は、アミラーゼ(澱粉分解酵素)や、プロテアーゼ、(蛋白分解酵素)や、リパーゼ、(脂肪分解酵素)等の分解酵素を保有しており、発酵食品の製造、特に発酵原料から糖類を生成する糖化工程で重要な役割を演ずる。一方、酵母は、主として糖液中で繁殖して、糖分からアルコールを生成する有用微生物である。酒類の主成分であるアルコールは、アルコール発酵作用を有する酵母によって作られる。アルコール発酵とは、酵母が、グルコース等の糖類を分解しエチルアルコール(エタノール)と二酸化炭素を発生させることによりエネルギーを得る呼吸作用(反応)である。かかる反応は古くから知られ、各種のアルコール、例えば、日本酒の製造に利用される。ところで、酵母、細菌、かび等の微生物を利用した各種の発酵に際し、発酵の促進又は抑制を行うために、反応系に磁界(磁場)を印加することが知られている。例えば、乳酸発酵に際して、乳酸菌の活性を増加させるために、超電導磁石で形成された磁場空間内で、9〜11T(テスラ)の静磁場を25〜35℃で印加する方法(特許文献1参照)、食酢の製造工程において、熟成期間の短縮のため、酢酸発酵の終了した原料に0.01〜10Tのパルス磁場を印加する方法(特許文献2参照)が提案されている。また、酒や食品の品質を改善するために、製品に磁界や電界を作用させる方法(特許文献3参照)、あるいは、酒類を含む加工食品の製造工程において、酵素活性を制御するために、10μT〜100mTの交流磁界又は静磁界を印加する方法(特許文献4参照)、細胞増殖や酵素反応の活性を制御するために、培養槽の外側から2〜100mTの磁場を印加する方法(特許文献5参照)、更に、各種酵母に弱磁界を印加し、発酵時間の短縮や品質の向上を図る方法も提案されている(特許文献6参照)。しかし、特許文献3〜6の方法では、印加される磁界が小さいので、その効果が必ずしも十分には得られない。本発明者は、冷凍機冷却式の超電導マグネットを用いて、従来の銅マグネットや永久磁石では得られなかった強磁場を発生させ、この強磁場の印加の効果について検討してきた。そして、日本酒等のアルコール発酵工程において、酵母に、0.5〜20Tの直流磁界、好ましくは0.5〜10Tの直流磁界を印加することによって、アルコール発酵を制御できること、そして磁場を印加しないものに比べ、酵母の数が少なく、グルコースの量が多く、アルコールの量は少なく、より甘い日本酒が得られることを見出した(特許文献7参照)。特開2005−34040号公報特開2005−117977号公報特開2002−223743号公報特開2005−218437号公報特開平6−70747号公報特開2000−316562号公報特開2007−319005号公報本発明は、前記強磁場の印加技術を麹又は麹菌の糖化工程に適用し、その影響を検討している過程で、酵母のアルコール発酵の場合とは全く異なる、糖化工程に特徴的な新たな効果を見出すことによって完成されたものである。前記のごとく本発明者は、比較的最近開発されてきた冷凍機冷却式超電導マグネットにより、強い磁場を印加することが可能になったことに着目し、この磁場中で麹による発酵材料の糖化を行ったところ、磁場を変化させることによって糖化速度を制御できることを知見した。従って、従来のように温度を変化させなくても、磁場により糖化速度を制御できる可能性がある。本発明の課題は、かかる知見に基づき、麹を用いた発酵材料の糖化工程を、磁場の印加により効果的に制御する方法を提供することにある。本発明は、麹を用いた発酵材料の糖化工程において、麹に、0.5〜20Tの、好ましくは0.5〜10Tの磁場を印加することを特徴とする発酵材料の糖化方法である。そして、かかる糖化工程は、5〜60℃で行うのが好ましく、特に35〜55℃で行うのが好ましい。また、超電導マグネットによって発生せしめられた直流磁場を用いるのが好ましい。本発明では、発酵食品の製造過程又は製造過程の一部である発酵材料の糖化工程中に、麹又は麹菌に、例えば、10T(テスラ)という強磁場を印加することにより、糖化反応を制御するというものである。本発明では、冷凍機冷却式超電導マグネットを用いて、従来よりも格段に高い磁場を印加することを特徴としている。これまで発酵食品の製造過程では、温度を管理することにより、麹にあるアミラーゼ系の酵素が澱粉をグルコースに転換するときの糖化速度を制御してきたが、本発明によると、更に磁場の大きさを変化させることによって、糖化速度を制御することができるようになる。これにより、新しい製造方法や味を創出することができるようになる可能性がある。例えば、日本酒の吟醸酒では、酵母や麹の働きが最も盛んな24〜30℃近辺の温度ではなく、10〜15℃くらいの低温でじっくりと発酵が行われる。これにより、これまでの日本酒では得られなかったフルーティーな香り、いわゆる吟醸香を得ることに成功している。従って、本発明のごとく強磁場下でゆっくりと発酵を行うことによって、吟醸酒に見られるような価値の高い日本酒等が製造できる可能性がある。しかも、例えば、10℃の温度で磁場をかければ、更にゆっくりと発酵させることができる可能性があり、このことは、これまで得られなかった味の創出に繋がる可能性がある。7Tの磁場を印加した場合の、グルコース濃度の時間変化を示す図である。磁場中に置いた場合と対照の場合における糖化速度の差に対する、磁場の影響を示す図である。5Tの磁場を印加した場合の、糖化速度と温度の関係を示す図である。本発明は、発酵材料の糖化工程において、麹に、0.5〜20Tの磁場(磁界)、好ましくは0.5〜10Tの直流磁場を印加することからなる発酵材料の糖化方法である。糖化反応は5〜60℃の範囲で行うのが好ましく、特に35〜55℃の範囲で行うのが好ましい。従って、直流磁場も、同様の温度範囲で印加されるのが好ましい。本発明において発酵材料とは、日本酒、焼酎、味噌、醤油、食酢、漬け物等の発酵食品を製造するための原料である。味噌、醤油、食酢、漬け物等は、基本的に麹による糖化反応によって製造されるが、日本酒、焼酎等の酒類は、麹による糖化と酵母によるアルコール発酵を同時に又は別々に行うことによって製造される。本発明は、いずれの場合にも適用できる。本発明の方法を実施するには、0.5〜20Tの直流磁場を印加するための手段を備えた発酵装置が用いられる。0.5〜20Tの直流磁場を印加するための手段としては、好ましくは、超電導マグネット(電磁石)が用いられる。超電導体は、臨界温度以下に冷却すると、電気抵抗がゼロの超電導状態になるので、これを用いて線材を作り、更にコイルに巻くと損失が非常に少ない超電導マグネットを作ることができる。抵抗がゼロであるので、電流通電中にジュール損失が無く発熱を伴わず、且つ、高い磁場を発生させることができる等の特徴がある。本発明においては、かかる超電導マグネットが用いられる。超電導マグネットに永久電流スイッチという装置を付け、一旦流した電流を超電導の閉回路にすると、超電導マグネットを電源から切り離しても、電流は減少することなく流れ続けるので、一定の磁界を長時間印加し続けることが出来る永久電流モードの超電導マグネットが形成される。電源を接続しているときは、電源電流の変化により磁場が変化するので、超電導マグネットの磁場の精度は必ずしも良くはないが、一旦永久電流モードに移行すると、磁場の安定度は格段に向上するという特徴がある。この様に、永久電流モードでは、長時間に亘って安定度の良い高磁場を保つことができる。本発明においては、かかる永久電流モードの超電導マグネットを用いることもできる。本発明では直流磁場を印加するものであるから、交流磁場を印加する場合とは異なり、ジュール熱の発生がない。直流磁場を印加するに際しては、例えば、10Tの磁場を印加する場合、通常の超電導マグネットでは印加できる範囲が高々数センチの範囲であるから、実用的には、糖化液を、例えば、循環させることによって全体に均一に磁場を印加する必要がある。以下、実施例により本発明を詳述する。試料として腐敗防止処理を施した米麹汁を準備した。蒸留水100mLと麹25gに、トルエン1mLを混合した。トルエンを一緒に入れるのは、作った米麹汁には麹の他にも多くの微生物が存在しているので、それらの増殖と存在を抑制するためである。糖化が行われやすい様に、40℃の温度に設定をした。また磁場は1〜10Tと変化させた。磁場の印加には、冷凍機冷却型の超電導マグネットを利用した。最大10Tの磁界を印加できる冷凍機冷却型超電導マグネット中に、上記100mLの溶液をおおよそ12時間置いて、糖化反応を行った。溶液を入れた容器は、その中心が、ほぼ磁場の中心になるような位置に配置した。温度は40℃に保った。この結果を、磁場を印加しない場合と比較した。糖化反応後、試料は、高速液体クロマトグラフを用いてグルコース濃度を測定した。7Tの磁場を印加した場合の、グルコース濃度の時間変化の結果の例を図1に示した。図1において、縦軸はグルコース濃度(%)を、横軸は時間(hour)を示す。強磁場中における麹汁中のグルコース濃度の時間変化を図1中の●で示し、磁場を印加しない場合を対照(control)(○)として示した。両者を比較すると、磁場の印加により、明らかにグルコース濃度の上昇が抑えられていることが分かる。つまり、グルコース転化の速度を磁場により制御できることが分かる。前記で得られた結果から、磁場中に置いた場合と対照の場合における糖化速度の差を求め、これを縦軸とし、横軸を磁場(T)として、結果を図2に示した。ここで糖化速度は、磁場の影響が安定し始めている2〜6時間のグルコース濃度の変化量から求めた。図2から、5T付近が一番差が大きく、ピークを持つ様な構造となることが分かる。実施例1と同様な試料と超電導マグネットを用いて、磁場を5Tで一定とし、温度を20〜60℃の範囲で変化させて、それぞれ12時間糖化反応を行った。その後、試料は、高速液体クロマトグラフを用いてグルコース濃度を測定した。結果を図3に示した。図3から、糖化反応の温度が高くなるにつれて糖化速度は速くなっていき、約50℃で最大値をとり、更に温度を上げると糖化速度は低下しいくことが分かる。米麹や糖化酵素のアミラーゼが最も活発に活動する温度域は40℃前後であるため、その温度では糖化速度は上がるが、米麹が死滅してしまう温度である約60℃では、糖化速度が低下しているものと思われる。また、図3から、約50℃ぐらいまでは、温度が高いほど磁場印加による糖化速度への影響は大きいことが分かる。これは、温度が高いほど麹菌の活動は活発になるため、麹菌が磁場から受ける効果が大きくなるためであると推察される。麹を用いた発酵材料の糖化工程において、麹に、0.5〜20Tの直流磁場を印加することを特徴とする発酵材料の糖化方法。糖化工程を、5〜60℃で行うことを特徴とする請求項1記載の発酵材料の糖化方法。直流磁場が、超電導マグネットによって発生せしめられたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の発酵材料の糖化方法。 【課題】発酵食品を製造する際の原料となる発酵材料の、効果的な糖化方法を提供する。【解決手段】麹を用いて発酵材料から発酵食品を製造する際の糖化工程において、麹に、0.5〜20Tの、好ましくは0.5〜10Tの磁場を印加することからなる発酵材料の糖化方法。糖化工程は、5〜60℃で行うのが好ましく、また、超電導マグネットによって発生せしめられた直流磁場を用いるのが好ましい。【選択図】図1