生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_コンクリートの膨張予測方法
出願番号:2009093967
年次:2010
IPC分類:G01N 33/38


特許情報キャッシュ

宮川 豊章 山本 貴士 野島 昭二 長田 光司 小野 聖久 宮原 茂禎 大脇 英司 丸屋 剛 JP 2010243397 公開特許公報(A) 20101028 2009093967 20090408 コンクリートの膨張予測方法 東日本高速道路株式会社 505398941 中日本高速道路株式会社 505398952 西日本高速道路株式会社 505398963 大成建設株式会社 000206211 磯野 道造 100064414 多田 悦夫 100111545 町田 能章 100129067 宮川 豊章 山本 貴士 野島 昭二 長田 光司 小野 聖久 宮原 茂禎 大脇 英司 丸屋 剛 G01N 33/38 20060101AFI20101001BHJP JPG01N33/38 3 1 OL 9 本発明は、コンクリートの膨張予測方法に関する。 アルカリ骨材反応は、コンクリート中の骨材とセメント中のアルカリ成分との反応により骨材が膨張し、長い年月の間にコンクリート構造物に徐々にひび割れを発生させる現象である。 コンクリート構造物の劣化の進行を予測することは、コンクリート構造物の維持管理の面において重要である。 そのため、アルカリ骨材反応が生じたコンクリート構造物について、今後のさらなる膨張の有無を予測するために、このコンクリート構造物から採取したコンクリートコアについて促進膨張試験を行うことで残存膨張量(今後の膨張量)を測定する方法が、一般的に行われている。 また、特許文献1には、コンクリート構造物から採取したコンクリートコアを測定して得られたコンクリートの膨張率と、コンクリートコアの細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度との相関関係にしたがって、アルカリシリカ反応により劣化したコンクリート構造物の今後の劣化の進行を予測する方法が開示されている。 さらに、特許文献2には、コンクリートコア中の縦波弾性波の伝播速度から、アルカリ骨材反応の進行状況を判定する方法が開示されている。特開2001−99833号公報特開2008−128846号公報 ところが、前記従来の予測方法では、今後の膨張の有無しか判断することができず、構造物の構築後から調査時点までの間の劣化の進行具合を把握することはできなかった。 また、促進試験により算出されたデータのため、このデータに基づいて供用環境における劣化の進行を予測するのは困難であった。 また、特許文献1に記載の予測方法は、コンクリートコアから細孔溶液を抽出するために使用する特殊な装置を使用するため、設備投資に費用が嵩み、高価であった。 また、コンクリート構造物の劣化が今後進行するか否かを判断することができるものの、コンクリート構造物の構築後から調査時点までの間の劣化の進行具合を把握することはできず、また、将来の任意の時期における膨張の進行具合を判断することはできなかった。 さらに、特許文献2に記載の予測方法は、弾性波を発生させ、受信するために使用する装置が高価であった。 また、コンクリート構造物の劣化の有無や将来劣化が進行するか否かを判断することができるものの、コンクリート構造物の構築後から調査時点までの間の劣化の進行具合を把握することはできず、今後の劣化の進行具合を判断することはできなかった。 本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、アルカリ骨材反応により劣化した構造物について、現状での膨張量および今後の任意の時期における膨張の進行具合の予測を簡易かつ安価に行うことを可能としたコンクリートの膨張予測方法を提案することを課題とする。 前記課題を解決するために、本発明のコンクリートの膨張予測方法は、コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体を少なくとも1本採取するとともに、前記コンクリート構造物の劣化部から第二のコンクリート試験体を少なくとも1本採取する試験体採取工程と、前記第一のコンクリート試験体および前記第二のコンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、各コンクリート試験体について、促進膨張率の経時変化を取得する試験工程と、前記第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化をS字関数に近似する膨張曲線作成工程と、前記第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た試験データを修正して前記S字関数にフィッティングするフィッティング工程と、を備え、促進膨張率の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下での膨張率とみなし、促進材齢の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下での材齢とみなして今後の膨張率の予測を行うことを特徴としている。 かかるコンクリートの膨張予測方法によれば、調査時点での膨張量を把握することができ、かつ、終局膨張量も把握することができる。また、これらの調査時点での膨張量と終局膨張量により、今後の任意の時期における膨張量を予測することができる。 さらに、特殊な機器や設備を要することなく、高精度に予測することが可能なため、安価である。 また、前記コンクリートの膨張予測方法においては、前記コンクリート構造物の供用期間を前記促進材齢の修正量で除算することにより促進倍率を算出し、当該促進倍率を用いて促進材齢を供用環境下での材齢に換算してもよい。 かかるコンクリートの膨張予測方法によれば、算出された促進倍率を利用して供用環境下における任意の膨張率になるまでの期間や任意の期間経過後の膨張率の予測を簡易に行うことが可能となる。 また、前記コンクリートの膨張予測方法において、前記膨張曲線の漸近する値を終局膨張率とし、構造物構築後からの膨張量の予測に利用してもよい。 本発明のコンクリートの膨張予測方法によれば、アルカリ骨材反応により劣化したコンクリート構造物について、現状での膨張量および今後の任意の時期における膨張の進行具合の予測を簡易かつ安価に行うことが可能となる。本発明の好適な実施の形態に係るコンクリートの膨張予測方法の手順を示すフローチャート図である。(a)〜(c)は図1のコンクリートの膨張予測方法の各段階を示すグラフ図である。(a)〜(b)は図1のコンクリートの膨張予測方法の各段階を示すグラフ図である。 本発明のコンクリートの膨張予測方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。 本実施形態では、アルカリ骨材反応により劣化が生じた既存のコンクリート構造物について、劣化部分の現時点での膨張量と今後の膨張の進行を予測する場合について説明する。 本実施形態に係るコンクリートの膨張予測方法は、図1に示すように、試験体採取工程S1と、試験工程S2と、膨張曲線作成工程S3と、フィッティング工程S4と、促進倍率算出工程S5を備えている。 試験体採取工程S1は、コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体を少なくとも1本採取するとともに、コンクリート構造物の劣化部から第二のコンクリート試験体を少なくとも1本採取する工程である。 第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体(以下、「第一のコンクリート試験体」と「第二のコンクリート試験体」とを区別しない場合は、単に「コンクリート試験体」と称する場合がある。)は、コンクリート構造物にコア抜きを行うことで採取された円柱状の試験体である。第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体は、材料および配合が同一のコンクリートから採取することが基本であり、可能な限り同一の打設ブロックから採取するのが好ましい。 本実施形態では、第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体として、それぞれ1本ずつ採取する場合について説明するが、各コンクリート試験体の本数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、各コンクリート試験体の形状(直径や長さ等)は、試験工程S2において行われる促進膨張試験方法やコア抜き方法等に応じて適宜設定すればよく、限定されるものではない。 試験工程S2は、試験体採取工程S1において採取された第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、各コンクリート試験体について、促進膨張率の経時変化を取得する工程である。 本実施形態では、促進膨張試験として、カナダ法の促進条件(80℃−1mol/L NaOH溶液に浸漬)を採用し、各コンクリート試験体のアルカリ骨材反応を促進させ、適宜な促進材齢における促進膨張率を測定する。 なお、促進膨張試験方法は前記の試験方法に限定されるものではなく、例えばデンマーク法やJISA 1804に規定される方法の試験期間を延長して採用する等、適宜公知の試験方法から選定して行えばよい。 第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体の促進膨張試験結果(促進膨張率の経時変化)は、図2(a)に示すように、促進材齢をX軸、促進膨張率をY軸とした座標上にプロットする。ここで、図2(a)において、符号1は第一のコンクリート試験体(健全部)の促進膨張率の経時変化、符合2は、第二のコンクリート試験体(劣化部)の促進膨張率の経時変化である。 膨張曲線作成工程S3は、試験工程S2において採取した第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化1をS字関数に近似する工程である。 本実施形態では、経時変化1をS字関数に近似したのち、図2(b)に示すように、膨張曲線Bとして、座標上に表示する。 膨張曲線Bは、第一のコンクリート試験体の促進膨張率の経時変化1を、式1に示すS字関数に近似してa〜eおよびtに関する最適値を求め、図2(b)に示すように、1本のS字曲線で近似することにより作成される。 なお、試験工程S2において、複数の第一のコンクリート試験体について促進膨張試験を実施した場合には、全試験結果をまとめて一つの座標上にプロットしてS字関数に近似した後、1本の膨張曲線Bを作成し、促進膨張挙動を表現してもよい。 フィッティング工程S4は、第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た膨張率の経時変化を修正(移動)してS字関数(膨張曲線B)にフィッティングする工程である。 本実施形態では、図2(c)に示すように、試験工程S2において採取された第二のコンクリート試験体の膨張率の経時変化2のプロット群を膨張曲線Bに向けて移動させることによりフィッティングする。 フィッティングは、経時変化2のプロット群が膨張曲線B(S字曲線)に近づくように経時変化2のプロット群の原点を移動させることにより行う。 同一のコンクリートは、同一の条件では同一の膨張曲線となるため、第一のコンクリート試験体と第二のコンクリート試験体との膨張曲線は、原点をずらすことで互いに略一致する。 なお、第二のコンクリート試験体について、複数のプロット群がある場合には、各プロット群を膨張曲線Bにフィッティングする。また、本実施形態では、座標上で第二のコンクリート試験体の膨張率の経時変化2のプロット群の位置をずらすことによりフィッティングを行ったが、第二のコンクリート試験体の膨張率の経時変化2についてS字関数を算出し、当該S字関数を膨張曲線Bに一致させてもよい。 フィッティング作業が終了したら、図3(a)に示すように、第二のコンクリート試験体の原点の移動量(修正量)を軸ごとに求める。 そして、促進膨張率軸方向の移動量B0を調査時点まで(供用期間中)に劣化部のコンクリートが膨張していた量(調査時点における第二のコンクリート試験体の膨張率)とし、促進材齢軸方向の移動量T1を供用期間を促進試験の環境下に換算した時間(調査時点における第二のコンクリート試験体の促進材齢)とみなす。 また、膨張曲線(S字曲線)の漸近する値を終局膨張率BEとする。 なお、調査時点における第二のコンクリート試験体の膨張率B0は、式2により算出することができる。 また、終局膨張率BEは、式3により算出することができる。 促進倍率算出工程S5は、膨張曲線Bを供用環境下に置換する促進倍率αを算出する工程である。 促進倍率αは、コンクリート構造物の供用期間を原点の時間軸方向の移動量T1で除算することにより算出する(式4参照)。 促進倍率αを利用することにより、供用環境下における任意の膨張率になるまでの時間や、供用環境下における任意の時期の膨張率の算出をすることができる。 つまり、図3(b)に示すように、促進材齢0において膨張率0のコンクリート試験体が促進膨張率BAに到達する促進材齢をT2とすると、供用環境下で膨張率BAに達するまでの時間は促進試験時間T2に促進倍率αを乗ずることより算出できる。また、任意の供用環境下の時間T4での膨張率は、時間T4に対応する促進材齢T3(時間T4/促進倍率α)を算出し、当該促進材齢T3に対応する促進膨張率BBから求めることができる。 以上、本発明のコンクリートの膨張予測方法によれば、供用環境と促進試験環境の時間の相関を得ることができるため、促進試験のデータを、供用環境に置き換えた場合に利用することが可能となる。 そのため、調査時点での劣化の進行具合(膨張量)を把握することが可能となる。また、コンクリート構造物の今後の膨張量を任意の時間で予測することが可能となる。さらに、終局膨張量を得ることが可能となる。 そして、このような将来の膨張量の進行具合の的確に把握することにより、最適なコンクリート構造物の補修時期の設定や補修方法の選定を行うことが可能となる。 以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。 例えば、前記実施形態では、図面上においてプロット群を移動させることによりフィッティングを行ったが、フィッティングの手段は限定されるものではなく、例えば表計算により算出するなど、適宜公知の手段により行えばよい。 1 第1のコンクリート試験体の膨張率の経時変化 2 第2のコンクリート試験体の膨張率の経時変化 B 膨張曲線 コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体を少なくとも1本採取するとともに、前記コンクリート構造物の劣化部から第二のコンクリート試験体を少なくとも1本採取する試験体採取工程と、 前記第一のコンクリート試験体および前記第二のコンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、各コンクリート試験体について、促進膨張率の経時変化を取得する試験工程と、 前記第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化をS字関数に近似する膨張曲線作成工程と、 前記第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た促進膨張率および促進材齢を修正して前記S字関数にフィッティングするフィッティング工程と、を備え、 促進膨張率の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下における膨張率とみなし、促進材齢の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下における材齢とみなして今後の膨張率の予測を行うことを特徴とするコンクリートの膨張予測方法。 前記コンクリート構造物の供用期間を前記促進材齢の修正量で除算することにより促進倍率を算出し、当該促進倍率を用いて促進材齢を供用環境下での材齢に換算することを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートの膨張予測方法。 前記膨張曲線の漸近する値を終局膨張率とすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコンクリートの膨張予測方法。 【課題】コンクリート構造物の現状での膨張量および今後の任意の時期における膨張の進行具合の予測を行うコンクリートの膨張予測方法を提案する。【解決手段】コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体、劣化部から第二のコンクリート試験体を採取し、各コンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、促進膨張率の経時変化を取得する。第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化をS字関数に近似した後、第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た促進膨張率および促進材齢を修正してS字関数にフィッティングし、促進膨張率の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下における膨張率とみなし、促進材齢の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下における材齢とみなして今後の膨張率の予測を行う。【選択図】図1


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特許公報(B2)_コンクリートの膨張予測方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_コンクリートの膨張予測方法
出願番号:2009093967
年次:2013
IPC分類:G01N 33/38


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宮川 豊章 山本 貴士 野島 昭二 長田 光司 小野 聖久 宮原 茂禎 大脇 英司 丸屋 剛 JP 5336909 特許公報(B2) 20130809 2009093967 20090408 コンクリートの膨張予測方法 東日本高速道路株式会社 505398941 中日本高速道路株式会社 505398952 西日本高速道路株式会社 505398963 大成建設株式会社 000206211 磯野 道造 100064414 多田 悦夫 100111545 町田 能章 100129067 宮川 豊章 山本 貴士 野島 昭二 長田 光司 小野 聖久 宮原 茂禎 大脇 英司 丸屋 剛 20131106 G01N 33/38 20060101AFI20131017BHJP JPG01N33/38 G01N 33/38 JSTPlus(JDreamIII) 特開2006−010420(JP,A) 特開2001−099833(JP,A) 特開2008−128846(JP,A) 森寛晃,外,ASRを生じた構造物の劣化診断への衝撃弾性波法の適用に関する検討,太平洋セメント研究報告,2005年12月25日,P.22−38 MULTON Stephane, SELLIER Alain, CYR Martin ,Chemo-mechanical modeling for prediction of alkali silica reaction (ASR) expansion ,Cem Concr Res,2009年,Vol.39,No.6 ,Page.490-500 3 2010243397 20101028 9 20111124 草川 貴史 本発明は、コンクリートの膨張予測方法に関する。 アルカリ骨材反応は、コンクリート中の骨材とセメント中のアルカリ成分との反応により骨材が膨張し、長い年月の間にコンクリート構造物に徐々にひび割れを発生させる現象である。 コンクリート構造物の劣化の進行を予測することは、コンクリート構造物の維持管理の面において重要である。 そのため、アルカリ骨材反応が生じたコンクリート構造物について、今後のさらなる膨張の有無を予測するために、このコンクリート構造物から採取したコンクリートコアについて促進膨張試験を行うことで残存膨張量(今後の膨張量)を測定する方法が、一般的に行われている。 また、特許文献1には、コンクリート構造物から採取したコンクリートコアを測定して得られたコンクリートの膨張率と、コンクリートコアの細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度との相関関係にしたがって、アルカリシリカ反応により劣化したコンクリート構造物の今後の劣化の進行を予測する方法が開示されている。 さらに、特許文献2には、コンクリートコア中の縦波弾性波の伝播速度から、アルカリ骨材反応の進行状況を判定する方法が開示されている。特開2001−99833号公報特開2008−128846号公報 ところが、前記従来の予測方法では、今後の膨張の有無しか判断することができず、構造物の構築後から調査時点までの間の劣化の進行具合を把握することはできなかった。 また、促進試験により算出されたデータのため、このデータに基づいて供用環境における劣化の進行を予測するのは困難であった。 また、特許文献1に記載の予測方法は、コンクリートコアから細孔溶液を抽出するために使用する特殊な装置を使用するため、設備投資に費用が嵩み、高価であった。 また、コンクリート構造物の劣化が今後進行するか否かを判断することができるものの、コンクリート構造物の構築後から調査時点までの間の劣化の進行具合を把握することはできず、また、将来の任意の時期における膨張の進行具合を判断することはできなかった。 さらに、特許文献2に記載の予測方法は、弾性波を発生させ、受信するために使用する装置が高価であった。 また、コンクリート構造物の劣化の有無や将来劣化が進行するか否かを判断することができるものの、コンクリート構造物の構築後から調査時点までの間の劣化の進行具合を把握することはできず、今後の劣化の進行具合を判断することはできなかった。 本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、アルカリ骨材反応により劣化した構造物について、現状での膨張量および今後の任意の時期における膨張の進行具合の予測を簡易かつ安価に行うことを可能としたコンクリートの膨張予測方法を提案することを課題とする。 前記課題を解決するために、本発明のコンクリートの膨張予測方法は、コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体を少なくとも1本採取するとともに、前記コンクリート構造物の劣化部から第二のコンクリート試験体を少なくとも1本採取する試験体採取工程と、前記第一のコンクリート試験体および前記第二のコンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、各コンクリート試験体について、促進膨張率の経時変化を取得する試験工程と、前記第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化をS字関数に近似する膨張曲線作成工程と、前記第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た試験データを修正して前記S字関数にフィッティングするフィッティング工程と、を備え、促進膨張率の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下での膨張率とみなし、促進材齢の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下での材齢とみなして今後の膨張率の予測を行うことを特徴としている。 かかるコンクリートの膨張予測方法によれば、調査時点での膨張量を把握することができ、かつ、終局膨張量も把握することができる。また、これらの調査時点での膨張量と終局膨張量により、今後の任意の時期における膨張量を予測することができる。 さらに、特殊な機器や設備を要することなく、高精度に予測することが可能なため、安価である。 また、前記コンクリートの膨張予測方法においては、前記コンクリート構造物の供用期間を前記促進材齢の修正量で除算することにより促進倍率を算出し、当該促進倍率を用いて促進材齢を供用環境下での材齢に換算してもよい。 かかるコンクリートの膨張予測方法によれば、算出された促進倍率を利用して供用環境下における任意の膨張率になるまでの期間や任意の期間経過後の膨張率の予測を簡易に行うことが可能となる。 また、前記コンクリートの膨張予測方法において、前記膨張曲線の漸近する値を終局膨張率とし、構造物構築後からの膨張量の予測に利用してもよい。 本発明のコンクリートの膨張予測方法によれば、アルカリ骨材反応により劣化したコンクリート構造物について、現状での膨張量および今後の任意の時期における膨張の進行具合の予測を簡易かつ安価に行うことが可能となる。本発明の好適な実施の形態に係るコンクリートの膨張予測方法の手順を示すフローチャート図である。(a)〜(c)は図1のコンクリートの膨張予測方法の各段階を示すグラフ図である。(a)〜(b)は図1のコンクリートの膨張予測方法の各段階を示すグラフ図である。 本発明のコンクリートの膨張予測方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。 本実施形態では、アルカリ骨材反応により劣化が生じた既存のコンクリート構造物について、劣化部分の現時点での膨張量と今後の膨張の進行を予測する場合について説明する。 本実施形態に係るコンクリートの膨張予測方法は、図1に示すように、試験体採取工程S1と、試験工程S2と、膨張曲線作成工程S3と、フィッティング工程S4と、促進倍率算出工程S5を備えている。 試験体採取工程S1は、コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体を少なくとも1本採取するとともに、コンクリート構造物の劣化部から第二のコンクリート試験体を少なくとも1本採取する工程である。 第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体(以下、「第一のコンクリート試験体」と「第二のコンクリート試験体」とを区別しない場合は、単に「コンクリート試験体」と称する場合がある。)は、コンクリート構造物にコア抜きを行うことで採取された円柱状の試験体である。第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体は、材料および配合が同一のコンクリートから採取することが基本であり、可能な限り同一の打設ブロックから採取するのが好ましい。 本実施形態では、第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体として、それぞれ1本ずつ採取する場合について説明するが、各コンクリート試験体の本数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、各コンクリート試験体の形状(直径や長さ等)は、試験工程S2において行われる促進膨張試験方法やコア抜き方法等に応じて適宜設定すればよく、限定されるものではない。 試験工程S2は、試験体採取工程S1において採取された第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、各コンクリート試験体について、促進膨張率の経時変化を取得する工程である。 本実施形態では、促進膨張試験として、カナダ法の促進条件(80℃−1mol/L NaOH溶液に浸漬)を採用し、各コンクリート試験体のアルカリ骨材反応を促進させ、適宜な促進材齢における促進膨張率を測定する。 なお、促進膨張試験方法は前記の試験方法に限定されるものではなく、例えばデンマーク法やJISA 1804に規定される方法の試験期間を延長して採用する等、適宜公知の試験方法から選定して行えばよい。 第一のコンクリート試験体および第二のコンクリート試験体の促進膨張試験結果(促進膨張率の経時変化)は、図2(a)に示すように、促進材齢をX軸、促進膨張率をY軸とした座標上にプロットする。ここで、図2(a)において、符号1は第一のコンクリート試験体(健全部)の促進膨張率の経時変化、符合2は、第二のコンクリート試験体(劣化部)の促進膨張率の経時変化である。 膨張曲線作成工程S3は、試験工程S2において採取した第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化1をS字関数に近似する工程である。 本実施形態では、経時変化1をS字関数に近似したのち、図2(b)に示すように、膨張曲線Bとして、座標上に表示する。 膨張曲線Bは、第一のコンクリート試験体の促進膨張率の経時変化1を、式1に示すS字関数に近似してa〜eおよびtに関する最適値を求め、図2(b)に示すように、1本のS字曲線で近似することにより作成される。 なお、試験工程S2において、複数の第一のコンクリート試験体について促進膨張試験を実施した場合には、全試験結果をまとめて一つの座標上にプロットしてS字関数に近似した後、1本の膨張曲線Bを作成し、促進膨張挙動を表現してもよい。 フィッティング工程S4は、第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た膨張率の経時変化を修正(移動)してS字関数(膨張曲線B)にフィッティングする工程である。 本実施形態では、図2(c)に示すように、試験工程S2において採取された第二のコンクリート試験体の膨張率の経時変化2のプロット群を膨張曲線Bに向けて移動させることによりフィッティングする。 フィッティングは、経時変化2のプロット群が膨張曲線B(S字曲線)に近づくように経時変化2のプロット群の原点を移動させることにより行う。 同一のコンクリートは、同一の条件では同一の膨張曲線となるため、第一のコンクリート試験体と第二のコンクリート試験体との膨張曲線は、原点をずらすことで互いに略一致する。 なお、第二のコンクリート試験体について、複数のプロット群がある場合には、各プロット群を膨張曲線Bにフィッティングする。また、本実施形態では、座標上で第二のコンクリート試験体の膨張率の経時変化2のプロット群の位置をずらすことによりフィッティングを行ったが、第二のコンクリート試験体の膨張率の経時変化2についてS字関数を算出し、当該S字関数を膨張曲線Bに一致させてもよい。 フィッティング作業が終了したら、図3(a)に示すように、第二のコンクリート試験体の原点の移動量(修正量)を軸ごとに求める。 そして、促進膨張率軸方向の移動量B0を調査時点まで(供用期間中)に劣化部のコンクリートが膨張していた量(調査時点における第二のコンクリート試験体の膨張率)とし、促進材齢軸方向の移動量T1を供用期間を促進試験の環境下に換算した時間(調査時点における第二のコンクリート試験体の促進材齢)とみなす。 また、膨張曲線(S字曲線)の漸近する値を終局膨張率BEとする。 なお、調査時点における第二のコンクリート試験体の膨張率B0は、式2により算出することができる。 また、終局膨張率BEは、式3により算出することができる。 促進倍率算出工程S5は、膨張曲線Bを供用環境下に置換する促進倍率αを算出する工程である。 促進倍率αは、コンクリート構造物の供用期間を原点の時間軸方向の移動量T1で除算することにより算出する(式4参照)。 促進倍率αを利用することにより、供用環境下における任意の膨張率になるまでの時間や、供用環境下における任意の時期の膨張率の算出をすることができる。 つまり、図3(b)に示すように、促進材齢0において膨張率0のコンクリート試験体が促進膨張率BAに到達する促進材齢をT2とすると、供用環境下で膨張率BAに達するまでの時間は促進試験時間T2に促進倍率αを乗ずることより算出できる。また、任意の供用環境下の時間T4での膨張率は、時間T4に対応する促進材齢T3(時間T4/促進倍率α)を算出し、当該促進材齢T3に対応する促進膨張率BBから求めることができる。 以上、本発明のコンクリートの膨張予測方法によれば、供用環境と促進試験環境の時間の相関を得ることができるため、促進試験のデータを、供用環境に置き換えた場合に利用することが可能となる。 そのため、調査時点での劣化の進行具合(膨張量)を把握することが可能となる。また、コンクリート構造物の今後の膨張量を任意の時間で予測することが可能となる。さらに、終局膨張量を得ることが可能となる。 そして、このような将来の膨張量の進行具合の的確に把握することにより、最適なコンクリート構造物の補修時期の設定や補修方法の選定を行うことが可能となる。 以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。 例えば、前記実施形態では、図面上においてプロット群を移動させることによりフィッティングを行ったが、フィッティングの手段は限定されるものではなく、例えば表計算により算出するなど、適宜公知の手段により行えばよい。 1 第1のコンクリート試験体の膨張率の経時変化 2 第2のコンクリート試験体の膨張率の経時変化 B 膨張曲線 コンクリート構造物の健全部から第一のコンクリート試験体を少なくとも1本採取するとともに、前記コンクリート構造物の劣化部から第二のコンクリート試験体を少なくとも1本採取する試験体採取工程と、 前記第一のコンクリート試験体および前記第二のコンクリート試験体についてそれぞれ促進膨張試験を実施し、各コンクリート試験体について、促進膨張率の経時変化を取得する試験工程と、 前記第一のコンクリート試験体についての促進膨張率の経時変化をS字関数に近似する膨張曲線作成工程と、 前記第二のコンクリート試験体に対する促進膨張試験で得た促進膨張率および促進材齢を修正して前記S字関数にフィッティングするフィッティング工程と、を備え、 促進膨張率の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下における膨張率とみなし、促進材齢の修正量を調査時点における第二のコンクリート試験体の促進環境下における材齢とみなして今後の膨張率の予測を行うことを特徴とするコンクリートの膨張予測方法。 前記コンクリート構造物の供用期間を前記促進材齢の修正量で除算することにより促進倍率を算出し、当該促進倍率を用いて促進材齢を供用環境下での材齢に換算することを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートの膨張予測方法。 前記膨張曲線の漸近する値を終局膨張率とすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコンクリートの膨張予測方法。


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