生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ELISA法を用いたヒト血清中の抗原特異的なIgG抗体力価測定の標準化法
出願番号:2009087146
年次:2010
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/569,G01N 33/574


特許情報キャッシュ

秋山 靖人 飯塚 明 JP 2010237126 公開特許公報(A) 20101021 2009087146 20090331 ELISA法を用いたヒト血清中の抗原特異的なIgG抗体力価測定の標準化法 静岡県 590002389 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 大▲高▼ とし子 100123168 ▲高▼津 一也 100120086 堀内 真 100131093 秋山 靖人 飯塚 明 G01N 33/53 20060101AFI20100924BHJP G01N 33/543 20060101ALI20100924BHJP G01N 33/569 20060101ALN20100924BHJP G01N 33/574 20060101ALN20100924BHJP JPG01N33/53 NG01N33/543 545G01N33/569 ZG01N33/574 A 2 1 OL 10 (出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 本発明は、生体試料に含まれる抗原特異的なIgG抗体力価を標準化して測定する方法に関する。 以前より担がん患者の血清中には多くのがん抗原(p53、CEA、MUC1など)に対する自家抗体(auto-antibody)の存在を示唆する報告がこれまでになされている(非特許文献1〜3)。特にP53に対する自家抗体の検出は、さまざまな固型がんにおいて報告されておりがん患者での血清マーカーとしての可能性も示唆されている(非特許文献4〜6)。また最近肺がんや前立腺がんにおいて複数のがん抗原に対する自家抗体を組み合わせることにより、がんの血清診断やファージペプチドディスプレイを用いた自家抗体アレイなどの開発も行われており、科学的にも注目されている(非特許文献7、8)。 現在、一般的に用いられている標準化方法では抗原固相化の代わりに抗ヒトIgG抗体をプレートに固相化し、測定する血清中抗原特異的IgGの代わりに標準化ヒトIgGを段階希釈したものを用い測定し標準化に用いている。しかし、この方法ではプレートに固相化した捕獲抗体と検出側の抗体との交差反応により生じるバックグラウンドのため、標準化可能な抗体濃度の範囲に制限がかかるとともに、マニュアル操作では同一プレート上で測定するIgG濃度の高い血清サンプルからのIgGの混入による影響を受けやすく、測定結果の再現性、信頼性が低いものであった。どの抗体価の測定系においても定性的な評価の粋を出ず、具体的な抗体価の定量・標準化する技術が必要とされていた。Regidor PA, et al. Eur J Gynaecol Oncol 17: 192-9, 1996.Ura Y, et al. Cancer Lett 25: 283-95, 1985.Von Mensdorff-PouillyS, et al. TumourBiol 19: 186-95, 1998.Wollenberg B, et al. Anticancer Res 17: 413-8, 1997.Gadducci A, Ferdeghini M, et al. Anticancer Res 18: 3763-5, 1998.Sanchez-Carbayo M, et al. Anticaner Res 19: 3531-7, 1999.Bradford TJ, et al. Urol Oncol 24: 237-42, 2006.Chapman CJ, et al. Thorax 63: 228-33, 2008. 血清中の抗体価測定にダイレクトELISAの系を用いる際、プレート間の差を補正するために対照となる標準化された反応系(検量線等)を同一プレート上に置く必要がある。目的の特定抗原に対し反応するモノクローナルヒト抗体を入手できれば対照としての検量線の作成が可能だが、現状では入手不可能であるため、反応系を模倣した代用の対照標準化反応系が必要になる。本発明の課題は、様々ながん患者を含むヒト血清中に存在するがん抗原、又は感染症を惹起しうる病原体由来の抗原に特異的なIgG抗体価を定量し、標準化するための測定方法を提供することにある。 本標準化方法は検体のIgGを段階希釈するのではなく、捕獲側抗体を段階希釈し、高濃度(飽和量の)ヒトIgGを検体添加の段階で用いることにより捕獲抗体をヒトIgGで飽和させ、検出側抗体との交差反応性、およびIgG混入による影響を無視できるようにしたものである。より具体的には、まず固相化抗原と血清中抗体の複合体を模倣するために、抗原の代わりに固相化された抗ヒト抗体と精製ヒトIgGの反応を用いる。(抗原、抗体の関係性は逆向きになる。)この際、固相化された抗ヒト抗体に精製ヒトIgGの濃度系列物を添加するのではなく、抗ヒト抗体の濃度系列を作製し固相化したものに過剰量の精製ヒトIgGを添加し飽和させた複合体を生成させる。この操作は、後で用いる標識抗ヒト抗体と固相化抗ヒト抗体の交差反応によるバックグラウンドの上昇を避けるためである。プレートウェルへの血清もしくは精製ヒトIgGの添加後は酵素標識抗ヒト抗体、発色基質を測定ウェル、対照ウェルともに同様に加えて反応させ、吸光度を測定する。血清中の抗原特異的抗体が十分に希釈され、O.D.が1を超えない条件下ではサンプル、対照ともに濃度とO.D.が一次式の反応を示すことを実験により確認しており、以下の式で抗体価を相対化することが出来る。血清サンプルO.D.の指数化(指数値)=標準線の傾き(固相化時の抗体の濃度(μg/ml)/O.D.)×(血清 O.D.)×(血清希釈倍率) すなわち本発明は(1)(1a)抗原の代わりに使用する抗ヒト抗体を段階希釈し、抗ヒト抗体の濃度系列を作製して、各々固相化した複数の捕獲側抗体プレートを調製する工程;(1b)抗原タンパク質を固相化した複数の抗原固定プレートを調製する工程;(2a)過剰量(飽和量)のヒトIgGを用いることにより、工程(1b)で調製した捕獲側抗体プレート上の捕獲側抗体をヒトIgGで飽和させ、洗浄してヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(2b)段階希釈したサンプルを、工程(1a)で調製した抗原固定プレートに接触させ、サンプル中の標的抗体を抗原タンパク質と反応させ、洗浄して標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(3a)工程(1b)で使用した抗ヒト抗体とエピトープを異にした抗ヒト抗体を標識した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2a)で調製したヒトIgG−捕獲側抗体複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(3b)工程(3a)で使用した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2b)で調製した標的抗体−抗原複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(4a)工程(3a)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、捕獲側抗体と吸光度との標準曲線を作成する工程;(4b)工程(3b)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、吸光度の測定結果と工程(4a)で作成した標準曲線から、サンプル中の標的抗体の抗体価を定量する工程;を備えた抗原特異的な抗体価の標準化された測定方法や、(2)サンプル中の標的抗体が、血清中に存在するがん抗原又は感染症を惹起しうる病原体由来の抗原に特異的なIgG抗体であることを特徴とする前記(1)記載の測定方法に関する。 本発明の抗体価の測定・標準化法により、適切な抗原タンパクが取得できればすべてのがん抗原や病原体由来の抗原に対する血清抗体価(患者または健常人)を測定評価することが可能となる。これにより抗体価の上昇している症例を選択し、その抗体陽性のB細胞を分離することによりヒト抗体の遺伝子配列の取得が極めて効率的に施行できる可能性がある。またがんや感染症のワクチン療法(ペプチド、樹状細胞その他)における治療効果を判定しうる診断技術(測定キット)として汎用化することも可能となる。以上の結果を検討すると本抗体価測定技術は、バイオサイエンスの発展に寄与しうる優れたツールとなりうる。本発明の、患者の血清に含まれる特定の抗原に対するIgGの力価(抗体価)を測定/標準化する方法の概略を示す図である。この図では、患者の血清に含まれる特定の抗原の例として、CMV−pp65タンパク質を用いている。本発明の方法を確立するために行った条件検討の実験結果を示す図である。A)標準曲線作成用の飽和量のヒトIgG添加量を検討した結果である。固相化抗ヒトIgGウサギ抗体に異なる濃度のヒトIgG標準品を添加し、100μg/mlで飽和することを確認した。B)0〜200ng/mlの固相化抗ヒトIgGウサギ抗体に、100μg/mlのヒトIgG標準品を反応させた結果、得られる吸光度と固相化抗体濃度の間に正の相関が認められることを確認した。ウエスタンブロット法を用いて、メラノーマ患者由来の血清中の抗CMV−pp65抗体を検出した結果を示す図である。図中、「精製CMV−pp65」はバキュロウイルスにて発現させたCMV−pp65タンパク質を、「CMV−pp65発現HF細胞ライセート」は、CMV−pp65タンパク質を発現させたHighFive昆虫細胞の細胞抽出液を示す。本発明の方法を用いて測定可能な血清の希釈倍率を検討した結果を示す図である。本発明の方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人10例の血清中のCMVpp65抗原に対するIgG抗体価を測定した結果を示す図である。本発明の方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人11例の血清中のメラノーマ特異抗原(MAGE1、MAGE2、MAGE3)に対するIgG抗体価を測定した結果を示す図である。本発明の方法を用いて、メラノーマ患者27例における樹状細胞ワクチン前後でのメラノーマ抗原に対するIgG抗体価の変化を測定した結果を示す図である。 本発明の抗原特異的な抗体価の標準化された測定方法としては、(1a)抗原の代わりに使用する抗ヒト抗体を段階希釈し、抗ヒト抗体の濃度系列を作製して、各々固相化した複数の捕獲側抗体プレートを調製する工程;(1b)抗原タンパク質を固相化した複数の抗原固定プレートを調製する工程;(2a)過剰量(飽和量)のヒトIgG標準品を用いることにより、工程(1a)で調製した捕獲側抗体プレート上の捕獲側抗体をヒトIgGで飽和させ、洗浄してヒトIgG標準品−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(2b)段階希釈したサンプルを、工程(1b)で調製した抗原固定プレートに接触させ、サンプル中の標的抗体を抗原タンパク質と反応させ、洗浄して標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(3a)工程(1a)で使用した抗ヒト抗体とエピトープを異にした抗ヒト抗体を標識した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2a)で調製したヒトIgG−捕獲側抗体複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(3b)工程(3a)で使用した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2b)で調製した標的抗体−抗原複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(4a)工程(3a)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、捕獲側抗体と吸光度との標準曲線を作成する工程;(4b)工程(3b)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、吸光度の測定結果と工程(4a)で作成した標準曲線から、サンプル中の標的抗体の抗体価を定量する工程;の工程(1a)〜(4b)を備えた、ELISA(Enzyme Linked Immuno-Sorbent Assay)法であれば特に制限されるものではなく、(1a)及び(1b)の後に、さらにブロッキング工程を含むものであってもよい。本発明に用いるサンプルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、被検者から採取した血液(血清又は血漿)、唾液、組織又は細胞抽出液などを具体的に挙げることができるが、なかでも、血清を用いることが好ましい。 上記抗原としては特に制限されるものではないが、がん抗原ポリペプチド又はがん抗原タンパク質であることが好ましく、例えば、MAGE1、MAGE2、MAGE3等を好適に挙げることができ、上記抗ヒトIgG抗体としては特に制限されるものではなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、異なるエピトープに対する2種類の抗ヒトIgG抗体を、それぞれ捕獲側抗体(固相化抗体)、検出用抗体として用いる必要がある。また、上記ブロッキング工程に用いるブロッキング剤としては、ELISA法において通常用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン、スキムミルク、ゼラチン等を挙げることができ、0.1〜10%ウシ血清アルブミン溶液、0.1〜1%カゼイン溶液として使用することができる。 上記酵素標識ヒトIgG抗体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビオチン標識抗ヒトIgG抗体や、アルカリフォスファターゼ標識ヒトIgG抗体、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒトIgG抗体などを具体的に挙げることができるが、なかでも、HRP標識ヒトIgG抗体であることが好ましい。酵素の基質としては、アルカリフォスファターゼに対する基質としてp−ニトロフェニルリン酸を、HRPに対する基質としてトリメチルベンジジン又はルトフェニレンジアミンを使用することができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。<抗原特異的IgG抗体力価測定の標準化法の確立> がん抗原の一種であるCMV−pp65タンパク質に対するIgGの抗体価を、以下のELISA法により測定し標準化した。1.固相化プレートの作製 抗原タンパク質(CMV−pp65タンパク質)を、PBS又は塩化ナトリウムを1M含むPBSで100ng/mlとなるように希釈し、96穴アッセイプレート(IWAKI社製)の3〜12列に100μl/ウェルずつ分注した。また、上記プレートの1及び2列目には、標準曲線作成のために、PBSで200ng/mlから逐次的2倍希釈した抗ヒトIgGウサギ抗体(Dako cytomation社製)を、100μl/ウェル(96穴プレートの)ずつ分注した。37℃で1時間インキュベートした後、さらに、4度で一晩インキュベートすることによりそれぞれのタンパク質を固相化した。固相化後のプレートを洗浄バッファー(0.05%Tween−20を含むPBS)で3回洗浄した後、200μl/ウェルの飽和バッファー(3%BSAを含むPBS)を分注し、室温で2時間インキュベートすることによりブロッキングした。なお、上記の標準曲線用のヒトIgG添加量については、固相化したウサギ抗ヒトIgG抗体に対して飽和量となる量をあらかじめ検討し、図2Aに示すように100μg/mlで吸光度が飽和することを確認している。2.サンプルの測定 測定検体を、飽和バッファーで1/10から逐次的10倍に希釈し、固相化プレートの3〜12列目(CMV−pp65タンパク質を固相化したウェル)に100μl/ウェルずつ分注した。一方、固相化プレートの1、2列目(抗ヒトIgGウサギ抗体を固相化したウェル)には、100μg/mlに希釈したヒトIgG標準品(SIGMA社製)を100μl/ウェルずつ分注した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、洗浄バッファーで5回洗浄した。続いて、飽和バッファーで1000倍に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ヒトIgGヒツジ抗体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を、全てのウェルに100μl/ウェルずつ加え、室温で1時間インキュベートした。その後、洗浄バッファーで7回洗浄し、基質液(TMB substrate reagent set;BD Biosciences社製)を、全てのウェルに100μl/ウェルずつ加え、37℃で30分間インキュベートした。2M硫酸水溶液を50μl/ウェルずつ添加して発色反応を停止させ、各ウェルの吸光度をプレートリーダー(ImmunoMini NJ-2300;バイオテック社製)を用いて450nmと620nmで測定した。3.データの解析 図2Bに示すように、固相化した抗ヒトIgGウサギ抗体の濃度と、得られた吸光度の間には正の相関が認められた。標準化用に固相化した抗ヒトIgGウサギ抗体濃度希釈系列(≒固定化されたヒトIgG抗体量)と吸光度より一次の近似式を作成し、測定検体の吸光度を式に代入し抗原特異的IgGの抗体価を定量的に算出し、指数化したものをデータとして使用した。<ヒト血清中の特定抗原に対するIgGの抗体価の測定・標準化>1.ヒト血清の採取 メラノーマ患者の臨床検体を用いた研究は、国立がんセンター及び静岡がんセンターの倫理審査委員会において承認済みである。また、採血は、全てのメラノーマ患者及び健常人からインフォームドコンセントを得た上で行った。2.CMV−pp65抗原に対するIgG抗体価測定 まず、患者血清中にCMV−pp65に対するIgGが含まれるかどうかを検討する目的で、患者由来血清を1次抗体に使用したWestern blotting解析を行った。バキュロウイルスにて発現させたCMV−pp65タンパク質、又は、CMV−pp65タンパク質を発現させたHighFive昆虫細胞の細胞抽出液を電気泳動により分画してブロットした後、9例の患者由来血清(M1、M2、M3、M5、M6、M7、M9、M18、MS7)を1次抗体として反応させた。その結果、図3に示すように、4症例(M5、M6、M18、MS7)由来の血清により強い反応シグナルが検出されたことから、これらの血清中にCMV−pp65に特異的な抗体が含まれていることが示された。 次に、実施例1で確立したELISA法に用いる血清の最適希釈濃度を検討する目的で、CMV−pp65タンパク質を固相化したアッセイプレートに、一次抗体として上記の2症例(M18、MS7)由来の血清を、二次抗体としてHRP標識抗ヒトIgGヒツジ抗体を反応させ、吸光度を測定した。図4に結果を示すように、患者血清の希釈倍率は、50〜10000倍で測定が可能であることが明らかとなった。 実施例1で確立した方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人10例の血清中のCMV−pp65抗原に対するIgG抗体価を測定・標準化した。その結果、図5に示すように、カットオフ値を1とするとメラノーマ患者31例中23例で抗体価の上昇を認めた。一方、健常人では、明らかな陽性は10例中4例のみであった。 実施例1で確立した方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人11例の血清中のメラノーマ特異抗原(MAGE1、MAGE2、MAGE3)に対するIgG抗体価を測定・標準化した。各メラノーマ抗原100ng/ml、陰性コントロールとしてGSTタンパク質を使用した。一番上のデータは抗原を固相化しないバックグラウンドの数値を示す。MAGE1及びMAGE2は全長を、MAGE3は部分配列(44−114aa)を有する組換えタンパク質を固相化抗原として使用した。その結果、図6に示すように、カットオフ値を1とすると31例中15例が抗体陽性であった。MAGE2に対する抗体価は、同様に10例、MAGE3に対する抗体価は1例のみが陽性であった。一方で健常人でもこれらの抗原に対する抗体陽性例が数例に認められた。 実施例1で確立した方法を用いて、メラノーマ患者27例における樹状細胞ワクチン前後でのメラノーマ抗原に対するIgG抗体価の推移を測定・標準化した。静岡がんセンター倫理審査委員会にて承認された「悪性黒色腫に対する樹状細胞を用いた腫瘍特異的免疫療法」の臨床試験において、樹状細胞ワクチンの投与をうけたメラノーマ27症例においてワクチン投与前(Pre)、ワクチン4回投与後(Post)、6−8回投与後(Post1)、10回投与後(Post2)の各時期に患者より血清を採取し、実験に用いた。なお、上記樹状細胞ワクチンは、樹状細胞をMAGE1、MAGE2、MAGE3、Tyrosinase等のメラノーマ抗原ペプチドに感作させたものを使用した。図7に示すように、樹状細胞ワクチン投与を受けた転移性メラノーマ患者における、ワクチン投与の前後でのメラノーマ抗原に対する血清中のIgG抗体価を測定した結果、ワクチン投与後にIgG抗体価が2倍以上の増加を認めた症例は、MAGE1で4例、MAGE2で4例、MAGE3で5例、tyrosinaseで7例であった。また、臨床効果(腫瘍の縮小)を認めた症例(MEL001、MEL018)では、すべての抗体価がワクチン後に上昇が認められた。 以下の工程を備えた抗原特異的な抗体価の標準化された測定方法。(1a)抗原の代わりに使用する抗ヒト抗体を段階希釈し、抗ヒト抗体の濃度系列を作製して、各々固相化した複数の捕獲側抗体プレートを調製する工程; (1b)抗原タンパク質を固相化した複数の抗原固定プレートを調製する工程;(2a)過剰量(飽和量)のヒトIgGを用いることにより、工程(1b)で調製した捕獲側抗体プレート上の捕獲側抗体をヒトIgGで飽和させ、洗浄してヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程; (2b)段階希釈したサンプルを、工程(1a)で調製した抗原固定プレートに接触させ、サンプル中の標的抗体を抗原タンパク質と反応させ、洗浄して標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(3a)工程(1b)で使用した抗ヒト抗体とエピトープを異にした抗ヒト抗体を標識した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2a)で調製したヒトIgG−捕獲側抗体複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(3b)工程(3a)で使用した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2b)で調製した標的抗体−抗原複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(4a)工程(3a)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、捕獲側抗体と吸光度との標準曲線を作成する工程;(4b)工程(3b)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、吸光度の測定結果と工程(4a)で作成した標準曲線から、サンプル中の標的抗体の抗体価を定量する工程; サンプル中の標的抗体が、血清中に存在するがん抗原又は感染症を惹起しうる病原体由来の抗原に特異的なIgG抗体であることを特徴とする請求項1記載の測定方法。 【課題】様々ながん患者血清中に存在するがん抗原特異的なIgG抗体価を定量し、標準化するための測定方法を提供すること。【解決手段】本標準化方法は検体のIgGを段階希釈するのではなく、捕獲側抗体を段階希釈し、高濃度(飽和量の)ヒトIgGを検体添加の段階で用いることにより捕獲抗体をヒトIgGで飽和させ、検出側抗体との交差反応性、およびIgG混入による影響を無視できるようにした。まず固相化抗原と血清中抗体の複合体を模倣するために、抗原の代わりに固相化された抗ヒト抗体と精製ヒトIgGの反応を用いる。この際、固相化された抗ヒト抗体に精製ヒトIgGの濃度系列物を添加するのではなく、抗ヒト抗体の濃度系列を作製し固相化したものに過剰量の精製ヒトIgGを添加し飽和させた複合体を生成させる。この操作は、後で用いる酵素標識抗ヒト抗体と固相化抗ヒト抗体の交差反応によるバックグラウンドの上昇を避けるためである。【選択図】図1


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特許公報(B2)_ELISA法を用いたヒト血清中の抗原特異的なIgG抗体力価測定の標準化法

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タイトル:特許公報(B2)_ELISA法を用いたヒト血清中の抗原特異的なIgG抗体力価測定の標準化法
出願番号:2009087146
年次:2014
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/569,G01N 33/574


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秋山 靖人 飯塚 明 JP 5487393 特許公報(B2) 20140307 2009087146 20090331 ELISA法を用いたヒト血清中の抗原特異的なIgG抗体力価測定の標準化法 静岡県 590002389 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 大▲高▼ とし子 100123168 ▲高▼津 一也 100120086 堀内 真 100131093 秋山 靖人 飯塚 明 20140507 G01N 33/53 20060101AFI20140410BHJP G01N 33/543 20060101ALI20140410BHJP G01N 33/569 20060101ALN20140410BHJP G01N 33/574 20060101ALN20140410BHJP JPG01N33/53 NG01N33/543 545G01N33/569 ZG01N33/574 A G01N 33/53−33/577 特開2008−020215(JP,A) 特開2008−164579(JP,A) 特開平04−315052(JP,A) 特開昭63−246670(JP,A) 2 2010237126 20101021 9 20120330 (出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 赤坂 祐樹 本発明は、生体試料に含まれる抗原特異的なIgG抗体力価を標準化して測定する方法に関する。 以前より担がん患者の血清中には多くのがん抗原(p53、CEA、MUC1など)に対する自家抗体(auto-antibody)の存在を示唆する報告がこれまでになされている(非特許文献1〜3)。特にP53に対する自家抗体の検出は、さまざまな固型がんにおいて報告されておりがん患者での血清マーカーとしての可能性も示唆されている(非特許文献4〜6)。また最近肺がんや前立腺がんにおいて複数のがん抗原に対する自家抗体を組み合わせることにより、がんの血清診断やファージペプチドディスプレイを用いた自家抗体アレイなどの開発も行われており、科学的にも注目されている(非特許文献7、8)。 現在、一般的に用いられている標準化方法では抗原固相化の代わりに抗ヒトIgG抗体をプレートに固相化し、測定する血清中抗原特異的IgGの代わりに標準化ヒトIgGを段階希釈したものを用い測定し標準化に用いている。しかし、この方法ではプレートに固相化した捕獲抗体と検出側の抗体との交差反応により生じるバックグラウンドのため、標準化可能な抗体濃度の範囲に制限がかかるとともに、マニュアル操作では同一プレート上で測定するIgG濃度の高い血清サンプルからのIgGの混入による影響を受けやすく、測定結果の再現性、信頼性が低いものであった。どの抗体価の測定系においても定性的な評価の粋を出ず、具体的な抗体価の定量・標準化する技術が必要とされていた。Regidor PA, et al. Eur J Gynaecol Oncol 17: 192-9, 1996.Ura Y, et al. Cancer Lett 25: 283-95, 1985.Von Mensdorff-PouillyS, et al. TumourBiol 19: 186-95, 1998.Wollenberg B, et al. Anticancer Res 17: 413-8, 1997.Gadducci A, Ferdeghini M, et al. Anticancer Res 18: 3763-5, 1998.Sanchez-Carbayo M, et al. Anticaner Res 19: 3531-7, 1999.Bradford TJ, et al. Urol Oncol 24: 237-42, 2006.Chapman CJ, et al. Thorax 63: 228-33, 2008. 血清中の抗体価測定にダイレクトELISAの系を用いる際、プレート間の差を補正するために対照となる標準化された反応系(検量線等)を同一プレート上に置く必要がある。目的の特定抗原に対し反応するモノクローナルヒト抗体を入手できれば対照としての検量線の作成が可能だが、現状では入手不可能であるため、反応系を模倣した代用の対照標準化反応系が必要になる。本発明の課題は、様々ながん患者を含むヒト血清中に存在するがん抗原、又は感染症を惹起しうる病原体由来の抗原に特異的なIgG抗体価を定量し、標準化するための測定方法を提供することにある。 本標準化方法は検体のIgGを段階希釈するのではなく、捕獲側抗体を段階希釈し、高濃度(飽和量の)ヒトIgGを検体添加の段階で用いることにより捕獲抗体をヒトIgGで飽和させ、検出側抗体との交差反応性、およびIgG混入による影響を無視できるようにしたものである。より具体的には、まず固相化抗原と血清中抗体の複合体を模倣するために、抗原の代わりに固相化された抗ヒト抗体と精製ヒトIgGの反応を用いる。(抗原、抗体の関係性は逆向きになる。)この際、固相化された抗ヒト抗体に精製ヒトIgGの濃度系列物を添加するのではなく、抗ヒト抗体の濃度系列を作製し固相化したものに過剰量の精製ヒトIgGを添加し飽和させた複合体を生成させる。この操作は、後で用いる標識抗ヒト抗体と固相化抗ヒト抗体の交差反応によるバックグラウンドの上昇を避けるためである。プレートウェルへの血清もしくは精製ヒトIgGの添加後は酵素標識抗ヒト抗体、発色基質を測定ウェル、対照ウェルともに同様に加えて反応させ、吸光度を測定する。血清中の抗原特異的抗体が十分に希釈され、O.D.が1を超えない条件下ではサンプル、対照ともに濃度とO.D.が一次式の反応を示すことを実験により確認しており、以下の式で抗体価を相対化することが出来る。血清サンプルO.D.の指数化(指数値)=標準線の傾き(固相化時の抗体の濃度(μg/ml)/O.D.)×(血清 O.D.)×(血清希釈倍率) すなわち本発明は(1)(1a)抗原の代わりに使用する抗ヒト抗体を段階希釈し、抗ヒト抗体の濃度系列を作製して、各々固相化した複数の捕獲側抗体プレートを調製する工程;(1b)抗原タンパク質を固相化した複数の抗原固定プレートを調製する工程;(2a)過剰量(飽和量)のヒトIgGを用いることにより、工程(1a)で調製した捕獲側抗体プレート上の捕獲側抗体をヒトIgGで飽和させ、洗浄してヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(2b)段階希釈したサンプルを、工程(1b)で調製した抗原固定プレートに接触させ、サンプル中の標的抗体を抗原タンパク質と反応させ、洗浄して標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(3a)工程(1a)で使用した抗ヒト抗体とエピトープを異にした抗ヒト抗体を標識した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2a)で調製したヒトIgG−捕獲側抗体複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(3b)工程(3a)で使用した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2b)で調製した標的抗体−抗原複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(4a)工程(3a)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、捕獲側抗体と吸光度との標準曲線を作成する工程;(4b)工程(3b)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、吸光度の測定結果と工程(4a)で作成した標準曲線から、サンプル中の標的抗体の抗体価を定量する工程;を備えた抗原特異的な抗体価の標準化された測定方法や、(2)サンプル中の標的抗体が、血清中に存在するがん抗原又は感染症を惹起しうる病原体由来の抗原に特異的なIgG抗体であることを特徴とする前記(1)記載の測定方法に関する。 本発明の抗体価の測定・標準化法により、適切な抗原タンパクが取得できればすべてのがん抗原や病原体由来の抗原に対する血清抗体価(患者または健常人)を測定評価することが可能となる。これにより抗体価の上昇している症例を選択し、その抗体陽性のB細胞を分離することによりヒト抗体の遺伝子配列の取得が極めて効率的に施行できる可能性がある。またがんや感染症のワクチン療法(ペプチド、樹状細胞その他)における治療効果を判定しうる診断技術(測定キット)として汎用化することも可能となる。以上の結果を検討すると本抗体価測定技術は、バイオサイエンスの発展に寄与しうる優れたツールとなりうる。本発明の、患者の血清に含まれる特定の抗原に対するIgGの力価(抗体価)を測定/標準化する方法の概略を示す図である。この図では、患者の血清に含まれる特定の抗原の例として、CMV−pp65タンパク質を用いている。本発明の方法を確立するために行った条件検討の実験結果を示す図である。A)標準曲線作成用の飽和量のヒトIgG添加量を検討した結果である。固相化抗ヒトIgGウサギ抗体に異なる濃度のヒトIgG標準品を添加し、100μg/mlで飽和することを確認した。B)0〜200ng/mlの固相化抗ヒトIgGウサギ抗体に、100μg/mlのヒトIgG標準品を反応させた結果、得られる吸光度と固相化抗体濃度の間に正の相関が認められることを確認した。ウエスタンブロット法を用いて、メラノーマ患者由来の血清中の抗CMV−pp65抗体を検出した結果を示す図である。図中、「精製CMV−pp65」はバキュロウイルスにて発現させたCMV−pp65タンパク質を、「CMV−pp65発現HF細胞ライセート」は、CMV−pp65タンパク質を発現させたHighFive昆虫細胞の細胞抽出液を示す。本発明の方法を用いて測定可能な血清の希釈倍率を検討した結果を示す図である。本発明の方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人10例の血清中のCMVpp65抗原に対するIgG抗体価を測定した結果を示す図である。本発明の方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人11例の血清中のメラノーマ特異抗原(MAGE1、MAGE2、MAGE3)に対するIgG抗体価を測定した結果を示す図である。本発明の方法を用いて、メラノーマ患者27例における樹状細胞ワクチン前後でのメラノーマ抗原に対するIgG抗体価の変化を測定した結果を示す図である。 本発明の抗原特異的な抗体価の標準化された測定方法としては、(1a)抗原の代わりに使用する抗ヒト抗体を段階希釈し、抗ヒト抗体の濃度系列を作製して、各々固相化した複数の捕獲側抗体プレートを調製する工程;(1b)抗原タンパク質を固相化した複数の抗原固定プレートを調製する工程;(2a)過剰量(飽和量)のヒトIgG標準品を用いることにより、工程(1a)で調製した捕獲側抗体プレート上の捕獲側抗体をヒトIgGで飽和させ、洗浄してヒトIgG標準品−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(2b)段階希釈したサンプルを、工程(1b)で調製した抗原固定プレートに接触させ、サンプル中の標的抗体を抗原タンパク質と反応させ、洗浄して標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(3a)工程(1a)で使用した抗ヒト抗体とエピトープを異にした抗ヒト抗体を標識した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2a)で調製したヒトIgG−捕獲側抗体複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(3b)工程(3a)で使用した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2b)で調製した標的抗体−抗原複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(4a)工程(3a)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、捕獲側抗体と吸光度との標準曲線を作成する工程;(4b)工程(3b)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、吸光度の測定結果と工程(4a)で作成した標準曲線から、サンプル中の標的抗体の抗体価を定量する工程;の工程(1a)〜(4b)を備えた、ELISA(Enzyme Linked Immuno-Sorbent Assay)法であれば特に制限されるものではなく、(1a)及び(1b)の後に、さらにブロッキング工程を含むものであってもよい。本発明に用いるサンプルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、被検者から採取した血液(血清又は血漿)、唾液、組織又は細胞抽出液などを具体的に挙げることができるが、なかでも、血清を用いることが好ましい。 上記抗原としては特に制限されるものではないが、がん抗原ポリペプチド又はがん抗原タンパク質であることが好ましく、例えば、MAGE1、MAGE2、MAGE3等を好適に挙げることができ、上記抗ヒトIgG抗体としては特に制限されるものではなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、異なるエピトープに対する2種類の抗ヒトIgG抗体を、それぞれ捕獲側抗体(固相化抗体)、検出用抗体として用いる必要がある。また、上記ブロッキング工程に用いるブロッキング剤としては、ELISA法において通常用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン、スキムミルク、ゼラチン等を挙げることができ、0.1〜10%ウシ血清アルブミン溶液、0.1〜1%カゼイン溶液として使用することができる。 上記酵素標識ヒトIgG抗体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビオチン標識抗ヒトIgG抗体や、アルカリフォスファターゼ標識ヒトIgG抗体、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒトIgG抗体などを具体的に挙げることができるが、なかでも、HRP標識ヒトIgG抗体であることが好ましい。酵素の基質としては、アルカリフォスファターゼに対する基質としてp−ニトロフェニルリン酸を、HRPに対する基質としてトリメチルベンジジン又はルトフェニレンジアミンを使用することができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。<抗原特異的IgG抗体力価測定の標準化法の確立> がん抗原の一種であるCMV−pp65タンパク質に対するIgGの抗体価を、以下のELISA法により測定し標準化した。1.固相化プレートの作製 抗原タンパク質(CMV−pp65タンパク質)を、PBS又は塩化ナトリウムを1M含むPBSで100ng/mlとなるように希釈し、96穴アッセイプレート(IWAKI社製)の3〜12列に100μl/ウェルずつ分注した。また、上記プレートの1及び2列目には、標準曲線作成のために、PBSで200ng/mlから逐次的2倍希釈した抗ヒトIgGウサギ抗体(Dako cytomation社製)を、100μl/ウェル(96穴プレートの)ずつ分注した。37℃で1時間インキュベートした後、さらに、4度で一晩インキュベートすることによりそれぞれのタンパク質を固相化した。固相化後のプレートを洗浄バッファー(0.05%Tween−20を含むPBS)で3回洗浄した後、200μl/ウェルの飽和バッファー(3%BSAを含むPBS)を分注し、室温で2時間インキュベートすることによりブロッキングした。なお、上記の標準曲線用のヒトIgG添加量については、固相化したウサギ抗ヒトIgG抗体に対して飽和量となる量をあらかじめ検討し、図2Aに示すように100μg/mlで吸光度が飽和することを確認している。2.サンプルの測定 測定検体を、飽和バッファーで1/10から逐次的10倍に希釈し、固相化プレートの3〜12列目(CMV−pp65タンパク質を固相化したウェル)に100μl/ウェルずつ分注した。一方、固相化プレートの1、2列目(抗ヒトIgGウサギ抗体を固相化したウェル)には、100μg/mlに希釈したヒトIgG標準品(SIGMA社製)を100μl/ウェルずつ分注した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、洗浄バッファーで5回洗浄した。続いて、飽和バッファーで1000倍に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ヒトIgGヒツジ抗体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を、全てのウェルに100μl/ウェルずつ加え、室温で1時間インキュベートした。その後、洗浄バッファーで7回洗浄し、基質液(TMB substrate reagent set;BD Biosciences社製)を、全てのウェルに100μl/ウェルずつ加え、37℃で30分間インキュベートした。2M硫酸水溶液を50μl/ウェルずつ添加して発色反応を停止させ、各ウェルの吸光度をプレートリーダー(ImmunoMini NJ-2300;バイオテック社製)を用いて450nmと620nmで測定した。3.データの解析 図2Bに示すように、固相化した抗ヒトIgGウサギ抗体の濃度と、得られた吸光度の間には正の相関が認められた。標準化用に固相化した抗ヒトIgGウサギ抗体濃度希釈系列(≒固定化されたヒトIgG抗体量)と吸光度より一次の近似式を作成し、測定検体の吸光度を式に代入し抗原特異的IgGの抗体価を定量的に算出し、指数化したものをデータとして使用した。<ヒト血清中の特定抗原に対するIgGの抗体価の測定・標準化>1.ヒト血清の採取 メラノーマ患者の臨床検体を用いた研究は、国立がんセンター及び静岡がんセンターの倫理審査委員会において承認済みである。また、採血は、全てのメラノーマ患者及び健常人からインフォームドコンセントを得た上で行った。2.CMV−pp65抗原に対するIgG抗体価測定 まず、患者血清中にCMV−pp65に対するIgGが含まれるかどうかを検討する目的で、患者由来血清を1次抗体に使用したWestern blotting解析を行った。バキュロウイルスにて発現させたCMV−pp65タンパク質、又は、CMV−pp65タンパク質を発現させたHighFive昆虫細胞の細胞抽出液を電気泳動により分画してブロットした後、9例の患者由来血清(M1、M2、M3、M5、M6、M7、M9、M18、MS7)を1次抗体として反応させた。その結果、図3に示すように、4症例(M5、M6、M18、MS7)由来の血清により強い反応シグナルが検出されたことから、これらの血清中にCMV−pp65に特異的な抗体が含まれていることが示された。 次に、実施例1で確立したELISA法に用いる血清の最適希釈濃度を検討する目的で、CMV−pp65タンパク質を固相化したアッセイプレートに、一次抗体として上記の2症例(M18、MS7)由来の血清を、二次抗体としてHRP標識抗ヒトIgGヒツジ抗体を反応させ、吸光度を測定した。図4に結果を示すように、患者血清の希釈倍率は、50〜10000倍で測定が可能であることが明らかとなった。 実施例1で確立した方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人10例の血清中のCMV−pp65抗原に対するIgG抗体価を測定・標準化した。その結果、図5に示すように、カットオフ値を1とするとメラノーマ患者31例中23例で抗体価の上昇を認めた。一方、健常人では、明らかな陽性は10例中4例のみであった。 実施例1で確立した方法を用いて、メラノーマ患者31例と健常人11例の血清中のメラノーマ特異抗原(MAGE1、MAGE2、MAGE3)に対するIgG抗体価を測定・標準化した。各メラノーマ抗原100ng/ml、陰性コントロールとしてGSTタンパク質を使用した。一番上のデータは抗原を固相化しないバックグラウンドの数値を示す。MAGE1及びMAGE2は全長を、MAGE3は部分配列(44−114aa)を有する組換えタンパク質を固相化抗原として使用した。その結果、図6に示すように、カットオフ値を1とすると31例中15例が抗体陽性であった。MAGE2に対する抗体価は、同様に10例、MAGE3に対する抗体価は1例のみが陽性であった。一方で健常人でもこれらの抗原に対する抗体陽性例が数例に認められた。 実施例1で確立した方法を用いて、メラノーマ患者27例における樹状細胞ワクチン前後でのメラノーマ抗原に対するIgG抗体価の推移を測定・標準化した。静岡がんセンター倫理審査委員会にて承認された「悪性黒色腫に対する樹状細胞を用いた腫瘍特異的免疫療法」の臨床試験において、樹状細胞ワクチンの投与をうけたメラノーマ27症例においてワクチン投与前(Pre)、ワクチン4回投与後(Post)、6−8回投与後(Post1)、10回投与後(Post2)の各時期に患者より血清を採取し、実験に用いた。なお、上記樹状細胞ワクチンは、樹状細胞をMAGE1、MAGE2、MAGE3、Tyrosinase等のメラノーマ抗原ペプチドに感作させたものを使用した。図7に示すように、樹状細胞ワクチン投与を受けた転移性メラノーマ患者における、ワクチン投与の前後でのメラノーマ抗原に対する血清中のIgG抗体価を測定した結果、ワクチン投与後にIgG抗体価が2倍以上の増加を認めた症例は、MAGE1で4例、MAGE2で4例、MAGE3で5例、tyrosinaseで7例であった。また、臨床効果(腫瘍の縮小)を認めた症例(MEL001、MEL018)では、すべての抗体価がワクチン後に上昇が認められた。 以下の工程を備えた抗原特異的な抗体価の標準化された測定方法。(1a)抗原の代わりに使用する抗ヒト抗体を段階希釈し、抗ヒト抗体の濃度系列を作製して、各々固相化した複数の捕獲側抗体プレートを調製する工程; (1b)抗原タンパク質を固相化した複数の抗原固定プレートを調製する工程;(2a)過剰量(飽和量)のヒトIgGを用いることにより、工程(1a)で調製した捕獲側抗体プレート上の捕獲側抗体をヒトIgGで飽和させ、洗浄してヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程; (2b)段階希釈したサンプルを、工程(1b)で調製した抗原固定プレートに接触させ、サンプル中の標的抗体を抗原タンパク質と反応させ、洗浄して標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(3a)工程(1a)で使用した抗ヒト抗体とエピトープを異にした抗ヒト抗体を標識した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2a)で調製したヒトIgG−捕獲側抗体複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体を調製する工程;(3b)工程(3a)で使用した酵素標識抗ヒト抗体を、工程(2b)で調製した標的抗体−抗原複合体と反応させ、洗浄して酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体を調製する工程;(4a)工程(3a)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−ヒトIgG−捕獲側抗体複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、捕獲側抗体と吸光度との標準曲線を作成する工程;(4b)工程(3b)で調製した酵素標識抗ヒト抗体−標的抗体−抗原複合体に基質を添加して反応後、吸光度を測定し、吸光度の測定結果と工程(4a)で作成した標準曲線から、サンプル中の標的抗体の抗体価を定量する工程; サンプル中の標的抗体が、血清中に存在するがん抗原又は感染症を惹起しうる病原体由来の抗原に特異的なIgG抗体であることを特徴とする請求項1記載の測定方法。


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