タイトル: | 公開特許公報(A)_金属粉末表面の水酸基の定量方法 |
出願番号: | 2009085688 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 21/35 |
冨士田 公彦 黒河 幸子 JP 2010237051 公開特許公報(A) 20101021 2009085688 20090331 金属粉末表面の水酸基の定量方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 冨士田 公彦 黒河 幸子 G01N 21/35 20060101AFI20100924BHJP JPG01N21/35 Z 5 4 OL 8 2G059 2G059AA01 2G059BB09 2G059CC02 2G059DD15 2G059EE01 2G059EE12 2G059EE17 2G059GG01 2G059HH01 2G059JJ01 2G059KK01 2G059NN01 本発明は、各種電子材料あるいは機能性磁石材料などに幅広く利用される各種金属粉末や複合金属について、粉末性状に影響を与える表面官能基としての水酸基を定量的に把握する方法に関する。 各種電子材料や機能性磁石などに利用される導電材料や磁石粉末には、主に、Ag、Cu、Ni、Pd、Fe、Ceあるいは複合金属などの金属粉末が用いられている。近年、それぞれの分野で利用される金属粉末は機能性を向上させるために、粉末自体の粒子径がナノスケールまで微粉化されるようになってきている。また、このナノスケールの金属粉末の製造方法には多種多様な方法があるが、製造コストを低減する観点から湿式法で製造した製品が主流となっている。 湿式法で製造した金属粉末は、製造工程で使用される還元剤、各種添加剤、残留原料あるいは副生成物が洗浄処理を行っても表面に残留する場合があり、このような場合には金属粉末の性状が変化し、これら金属粉末を加工する場合の温度や圧力等の操作条件に影響を与える。 また、粉末表面に残留した物質によって粉末自体が塩基性に偏る場合がある。このような場合には、金属粉末表面が大気中の水分と反応して水酸化物を生じる。これら水酸化物の原因となる、製造工程で使用される薬剤等の金属表面の残留量は、管理が難しく、製造ロット毎にばらつく場合も少なくない。 したがって、これらの金属粉末表面に生成した水酸化物を定量的に把握し、製造ロット毎のばらつきを把握することが重要である。 金属粉末表面の水酸化物の定量に関し、X線光電子分光法で観測する方法あるいはレーザーラマン法を用いて観測する方法などが適用されてきたが、これらの方法では、大気中の水分のスペクトルが粉末表面の水酸基のスペクトルと重なるため、粉末表面の水酸基を観測することができない。 一方、非特許文献1には、試料を加熱することで、表面に吸着する水分などを除去し、大気雰囲気で赤外吸収スペクトルを得る方法が記載されているが、大気雰囲気で測定しており、加熱時に雰囲気中の水分と反応する恐れがあることや金属粉末自体を測定している例もなく、得られたスペクトルを比表面積で補正することなども行っていないため正確な定量は困難である。錦田晃一・西尾悦雄著、「チャートで見るFT−IR」株式会社講談社、1990年6月20日発行、p.88〜89 本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、各種金属粉末製品の金属粉末表面の状態を比較するために、金属粉末表面の水酸基を定量的に把握する方法を提供することにある。 本発明に係る金属粉末表面に存在する水酸基を定量する方法は、金属粉末の水酸基の吸収波長における吸光度を測定することを特徴とする。 前記金属粉末の比表面積によって、前記の吸光度を補正することが好ましい。吸光度測定試料室における光源から検出器までの全測定光路は6.67kPa以下の減圧状態とすることが好ましい。 前記金属粉末は、Fe、Cu、Ni、Co、Al、Cr、Mn、Ag、Pd、Pb、Li、Zr、Au、Ptならびにこれらの元素を含む複合金属であることが好ましい。 吸光度の測定において使用する検出器は、TGS検出器、MCT検出器、PAS検出器、LiTaO3検出器、PbSe検出器、InSb検出器およびInGaAs検出器のいずれか一つを使用することが好ましい。 本発明の金属粉末表面の水酸基の定量方法は、赤外分光分析装置内の全ての測定光路を6.67kPa以下の減圧状態にしているため、測定の妨害となる大気中の水分や炭酸ガスの影響を受けることがなく、金属粉末に吸着した水分の影響も受けることがない。したがって、金属粉末表面の水酸基を正確に測定することができるため、この水酸基の原因物質となる薬剤の洗浄の程度が把握でき、安定した品質の金属粉末を提供することができる。異なるNi粉末のラマンスペクトル異なるNi粉末のXPSスペクトル大気圧状態下におけるNi粉末のIRスペクトル圧力条件6.67kPaにおけるNi粉末のIRスペクトル 金属粉末表面の水酸基の定量方法の例として、レーザーラマン分光測定、X線光電子分光測定について説明する。1.レーザーラマン測定 図1に異なるNi粉末のラマンスペクトルを示す。 水酸基のラマン線は、3620cm-1の位置に鋭いピークを示すことが知られているが、図1におけるスペクトルではこのようなピークは観察されていない。2.X線光電子分光測定 図2に異なるNi粉末のXPSスペクトルを示す。水酸基は855.6eVの位置に鋭いピークを示すことが知れられているが、この近傍で855.7eVに存在する炭酸基のピーク、854.3eVに存在するNiOのピークと重なるため、水酸基を選択的に測定することは困難である。次に、本発明における赤外分光測定について説明する。3.赤外分光測定3.1 測定方法 本発明の金属粉末表面の水酸基の定量に適用できる装置は、試料室を含む全ての測定光路が減圧状態を維持できる装置を用い、拡散反射セルが取り付け可能な装置を用いる。 測定光路を大気圧状態にしてNi粉末を測定したスペクトルを図3に、測定光路を6,67kPa以下にして同じNi粉末を測定したスペクトルを図4に示す。 図3に示す大気圧下における測定では、3400cm-1にブロードなピークが現われているが、6.67kPa以下の圧力条件である図4では水酸基特有の3620cm-1の位置に鋭いピークが現われおり、水酸基を定量できることがわかる。 上記測定光路の圧力は、6.67kPa以下まで減圧することが望ましく、それを超えた圧力である場合には測定光路上に存在する水分や炭酸ガスが妨害し、正確な定量値が得られない。また、検出器にはTGS検出器、MCT検出器、PAS検出器、LiTaO3検出器、PbSe検出器、InSb検出器およびInGaAs検出器などの検出器を用いることができる。3.2.測定対象粉末測定対象とする金属粉末は、Fe、Cu、Ni、Co、Al、Cr、Mn、Ag、Pd、PbLi、Zr、Au、Ptならびにこれらの元素を含む複合金属を適用することが可能であるが、赤外線を反射する粉末であれば特に限定されるものではない。3.3.定量方法金属粉末表面の水酸基が与える赤外吸収スペクトルの吸光度を金属粉末の比表面積で補正し、水酸基を定量する。 以下に本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例において、金属粉末表面の水酸基の定量評価は以下のようにして行った。・赤外分光測定 赤外分光光度計は日本分光社製(IR680Plus(V)型)を用い、アタッチメントには拡散反射率測定装置を取り付け、測定条件として分解能:4cm−1、積算回数:256回、検出器:MCT、アパーテャー:2.5mm、バックグラウンド:鏡面、系内圧力:表1に示す条件)で測定した。・レーザーラマン分光測定 レーザーラマン分光光度計はサーモエレクトロン社製(顕微レーザーラマンAlmagaXRA型)を用い、次の条件(レーザー波長:532nm、レーザー出力レベル:10%、サンプル露光時間:50回、バックグラウンド露光時間:16回、アパーチャー:100μm)で測定した。・X線光電子分光測定 X線光電子分光光度計はVG Seientific社製(ESCALAB220i−XL型)を用い、次の条件(線源:Al−Kα、測定領域:600μmφ、印加電圧:9kV、電流:15mA、真空度:1.0×10-9hPa)で測定した。・比表面積測定比表面積測定装置は島津製作所製(トライスター3000型)を用い、次の条件(測定範囲:0.4〜100nm、導入ガス:窒素)で測定した。(実施例1) 異なる4種類のNi粉末を用い、別々に拡散反射セルに投入し、試料室内を1.33kPaまで減圧した後、TGS検出器を用いNi粉末表面の水酸基を赤外分光測定し、水酸基の吸光度を測定した。得られた水酸基の吸光度を比表面積で補正して、Ni粉末の水酸基を定量した。その結果を表1に示す。(実施例2) 1種類のNi粉末を用い、系内圧力を1.33kPa、2.67kPa、および6.67kPaにしたこと以外は実施例1と同様に測定を行い、水酸基を定量した。その結果を表1に示す。(実施例3) 金属粉末をCu、Fe、Co、Al、Li、Pb、Cr、Zr、Mn、Ag、Pd、Au、Pt およびAuとAgの混合粉末にしたこと以外は実施例1と同様に測定を行い、各種粉末の水酸基を定量した。その結果を表1に示す。(実施例4) 1種類のNi粉末を用い、検出器をMCT検出器、PAS検出器、LiTaO3検出器、PbSe検出器、InSb検出器、InGaAs検出器にしたこと以外は実施例1と同様に行い、同一粉末の水酸基を定量した。その結果を表1に示す。比較例 比較例において、金属粉末表面の水酸基の定量評価として行った赤外分光測定、レーザーラマン分光測定、X線光電子分光測定は前記実施例と同じ方法である。(比較例1) 1種類のNi粉末を用い、系内圧力を13.3kPaにしたこと以外は実施例1と同様に測定を行い、水酸基を定量した。その結果を表1に示す。(比較例2) 4種類のNi粉末をレーザーラマン分光分析装置で測定した。その結果を表1に示す。(比較例3) 3種類のNi粉末をX線光電子分光分析装置で測定した。その結果を表1に示す。(評価) 実施例1および2に見られるとおり、本発明に係る測定を行うことにより、Ni粉末の水酸基を定量的に比較することができる。この結果は、本発明に係る測定を室温かつ6.67kPaの圧力下で測定したことによって得られたものである。 また、金属粉末の種類を変えた実施例3でも、この測定方法を利用すれば、表面に存在する水酸基を定量的に把握できると考えられる。 さらに、検出器を変えた実施例4においても、同一金属粉末はほぼ同等の吸光度を与えていることから、汎用的に利用されているいずれの検出器でも対応可能であることが分かる。金属粉末の水酸基の吸収波長における吸光度を測定することにより、金属粉末表面に存在する水酸基を定量する方法。前記金属粉末の比表面積によって、前記の吸光度を補正することを特徴とする請求項1に記載の金属粉末表面に存在する水酸基の定量方法。前記金属粉末の水酸基の吸収波長における吸光度の測定を行うにあたり、吸光度測定試料室における光源から検出器までの全測定光路が6.67kPa以下の減圧状態であることを特徴とする請求項1記載の金属粉末表面に存在する水酸基定量方法。前記金属粉末が、Fe、Cu、Ni、Co、Al、Cr、Mn、Ag、Pd、Pb、Li、Zr、Au、Ptならびにこれらの元素を含む複合金属であることを特徴とする請求項1記載の金属粉末表面に存在する水酸基の定量方法。前記金属粉末の水酸基の吸収波長における吸光度の測定において使用する検出器は、TGS検出器、MCT検出器、PAS検出器、LiTaO3検出器、PbSe検出器、InSb検出器およびInGaAs検出器のいずれか一つを使用することを特徴とする請求項1記載の金属粉末表面に存在する水酸基の定量方法。 【課題】金属粉末表面に存在する水酸基の定量方法を提供する。【解決手段】金属粉末をフーリエ変換赤外分光光度計用の拡散反射セルに挿入し、前記分光光度計内の試料室に設置する。試料室を含む全ての測定光路を圧力条件6.67kPa以下に保持することで、測定光路上に存在する水分と炭酸ガスの影響を除去する。この後、赤外吸収スペクトルを測定し、水酸基に対応する波長における吸光度を求める。この求められた吸光度を金属粉末の比表面積当りの値として評価することで、金属粉末の表面に存在する水酸基の定量を行う。【選択図】図4