タイトル: | 公開特許公報(A)_高純度ビニルエーテルの製造法 |
出願番号: | 2009076033 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 41/42,C07C 41/08,C07C 43/16,C07C 43/188,C07B 61/00 |
天神林 隆一 木村 一郎 JP 2010229049 公開特許公報(A) 20101014 2009076033 20090326 高純度ビニルエーテルの製造法 丸善石油化学株式会社 000157603 小林 雅人 100091247 天神林 隆一 木村 一郎 C07C 41/42 20060101AFI20100917BHJP C07C 41/08 20060101ALI20100917BHJP C07C 43/16 20060101ALI20100917BHJP C07C 43/188 20060101ALI20100917BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100917BHJP JPC07C41/42C07C41/08C07C43/16C07C43/188C07B61/00 300 8 1 OL 13 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC43 4H006AD11 4H006BA02 4H006BA32 4H006BA66 4H006BA83 4H006BD34 4H006BD60 4H006BD84 4H006GN22 4H006GP01 4H006GP02 4H039CA61 4H039CF10 4H039CF20 本発明はビニルエーテルの製造法に関する。更に詳しくは、アルコールを原料とするビニルエーテルの製造法であって、粗ビニルエーテル中に残存する原料アルコールを効率よく除去することが可能な高純度ビニルエーテルの製造法に関する。 ビニルエーテルは、アセチレンへのアルコールの付加反応、遷移金属錯体等を触媒とするビニルエーテルとアルコールとのエーテル交換反応や、カルボン酸ビニルとアルコールとのビニル交換反応によって製造される。 これらのビニルエーテルの製造方法は、いずれもアルコールを原料とするが、得られた粗ビニルエーテル中に残存する原料アルコールがビニルエーテルと共沸混合物を形成する場合、蒸留によりビニルエーテルを分離・回収することは困難である。 このような問題を解決するために、アルカリ金属塩を添加して共沸を破壊する方法(特許文献1)や、共沸組成が圧力に依存して異なることを利用して、2つの蒸留塔を使用し、圧力の異なる条件下で蒸留を行うことによりアルコールを除去する方法(特許文献2及び3等)が報告されている。 しかしながら、アルカリ金属塩を添加して共沸を破壊する方法には、アルコールとの反応によってアルカリ金属アルコラートが生成し、これが溶液の減少によって蒸留塔底液中に固体として析出するため、プロセスとして使用し難いといった問題がある。 又、2つの蒸留塔を使用し、圧力の異なる条件下で蒸留を行う方法では、第2の蒸留塔内圧力を第1の蒸留塔内圧力より高くすることによって、第1の蒸留塔から留出する共沸混合物よりもアルコール濃度が若干増加した共沸混合物を第2の蒸留塔上部から取り出し、第2の蒸留塔下部からビニルエーテルを回収するが、第2の蒸留塔上部から取り出される共沸混合物の主成分もビニルエーテルであるため、ビニルエーテルの歩留まりが低下するという問題がある。英国特許第787915号特開平10−109952号公報特表2006−527225号公報 本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、ビニルエーテルと未反応の原料アルコールを含む粗ビニルエーテルから、それらが共沸混合物を形成する場合であっても高純度のビニルエーテルを効率よく回収することができ、且つ、ハンドリングがより容易な精製工程を含む高純度ビニルエーテルの製造法を提供することにある。 本発明の発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、微量の酸触媒を用いることにより、ビニルエーテルの重合反応を抑制しながら、粗ビニルエーテル中の未反応の原料アルコールをアセタール化することが可能であり、未反応アルコールをアセタール化することにより、蒸留によって容易に高純度のビニルエーテルを得ることができることを見出し、発明の完成に至った。 即ち本発明は、以下の[1]乃至[8]に記載の発明により、上記課題を解決するものである。[1] 第1工程:一般式(1)R−O−H ・・・(1)(式中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表されるアルコール(I)を、触媒の存在下にビニルエーテル化反応に付し、一般式(2)R−O−CH=CH2 ・・・(2)(式中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表されるビニルエーテル(II)を合成するビニルエーテル合成工程;第2工程:第1工程で得られた反応混合物から触媒を除去し、ビニルエーテル(II)と未反応の原料アルコール(I)を含む粗ビニルエーテルを得る触媒除去工程;第3工程:酸触媒の存在下に、粗ビニルエーテル中に残存する未反応の原料アルコール(I)をビニルエーテル(II)とを反応させて、一般式(3)(式中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表されるアセタール(III)に変換するアセタール化反応工程;及び、第4工程:アセタール(III)を含有する粗ビニルエーテルを蒸留に付して高純度ビニルエーテルを得る精製蒸留工程を含むことを特徴とする高純度ビニルエーテルの製造法。[2] ビニルエーテル化反応が、(A)ビニルエーテルとアルコールとのエーテル交換反応、(B)カルボン酸ビニルとアルコールとのビニル交換反応、又は(C)アセチレンへのアルコールの付加反応から選ばれるいずれかである[1]に記載の高純度ビニルエーテルの製造法。[3] 第2工程が、ビニルエーテル化反応の反応混合物を蒸留に付して触媒を除去し、アルコール(I)とビニルエーテル(II)を含む粗ビニルエーテルを得る工程である[1]又は[2]に記載の高純度ビニルエーテルの製造法。[4] 第2工程が、ビニルエーテル化反応の反応混合物から触媒を除去した後に蒸留に付し、アルコール(I)とビニルエーテル(II)を含む粗ビニルエーテルを得る操作を工程の一部として含む[1]又は[2]に記載の高純度ビニルエーテルの製造法。[5] 第3工程において、アセタール化反応に用いられる酸触媒が無機酸、有機酸又は固体酸触媒である[1]〜[4]のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。[6] 第3工程において、アセタール化反応を0〜80℃の温度範囲で行う[1]〜[5]のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。[7] 第3工程が、アセタール化反応後に酸触媒を中和及び/又は除去する操作を工程の一部として含む[1]〜[6]のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。[8] アセタール(III)に富む塔底液を回収し、アセタール(III)をアルコール(I)とビニルエーテル(II)に変換した後、ビニルエーテル合成原料として合成工程にリサイクルすることを含む[1]〜[7]のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 本発明の製造法によれば、ビニルエーテルと未反応の原料アルコールを含む粗ビニルエーテルにおいて、それらが共沸混合物を形成する場合であっても、未反応の原料アルコールをアセタール化することにより、蒸留によって容易に高純度のビニルエーテルを得ることが可能である。又、蒸留塔底液に含まれるアセタールは、回収してビニルエーテルと原料アルコールとに変換し、ビニルエーテル合成原料としてリサイクルすることが可能であり、ビニルエーテルを効率的に製造することができる。本発明の製造法の一実施形態を示す概略図である。 本発明の一実施形態の概略図を示す図1によって説明する。第1工程(ビニルエーテル合成工程)で得られた未反応の原料アルコール(I)、ビニルエーテル(II)及び触媒を含む反応混合物は、第2工程(触媒除去工程)及び第3工程(アセタール化反応工程)を経て第4工程(蒸留精製工程)に供給され、当該工程において高純度ビニルエーテルが得られる。〔1〕第1工程:ビニルエーテル合成工程 第1工程では、一般式(1)R−O−H ・・・(1)で表されるアルコール(I)を触媒の存在下にビニルエーテル化反応に付し、一般式(2)R−O−CH=CH2 ・・・(2)で表されるビニルエーテル(II)を合成し、これと未反応の原料アルコール(I)及び触媒を含む反応混合物を得る。 一般式(1)及び(2)中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜10の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基である。 脂肪族炭化水素基としては、具体的には例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロヘキシルメチル基、トリシクロデカニルメチル基、1−アダマンチルメチル基等の置換基としてシクロアルキル基を有するアルキル基;アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基等が挙げられる。 脂環式炭化水素基としては、具体的には例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;パーヒドロナフチル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基、ノルボルニル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。 原料として用いられるアルコール(I)としては、具体的には例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、n−へキサノール、n−へプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、2−エチルヘキサノール等の直鎖状又は分枝鎖状の飽和脂肪族アルコール;アリルアルコール、イソプロペニルアルコール、ブテニルアルコール、ペンテニルアルコール、ヘキセニルアルコール、ヘプテニルアルコール、オクテニルアルコール等の直鎖状又は分枝鎖状の不飽和脂肪族アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、トリシクロデカノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール及びシクロヘキサンメタノール等の脂環式アルコール等が挙げられる。 得られるビニルエーテル(II)としては、具体的には例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、イソペンチルビニルエーテル、ネオペンチルビニルエーテル、n−へキシルビニルエーテル、n−へプチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、n−デシルビニルエーテル及び2−エチルヘキシルビニルエーテル等の直鎖状又は分枝鎖状のアルキルビニルエーテル;アリルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ブテニルビニルエーテル、ペンテニルビニルエーテル、ヘキセニルビニルエーテル、ヘプテニルビニルエーテル、オクテニルビニルエーテル等の直鎖状又は分枝鎖状のアルケニルビニルエーテル;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、1−アダマンタンビニルエーテル、2−アダマンタンビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル等の脂環式ビニルエーテル等が挙げられる。 本発明は、これらの中でも特に、一般式(1)で表される原料アルコール(I)と、生成した一般式(2)で表されるビニルエーテル(II)とが共沸混合物を形成する系において、効果的に用いることができる。 一般式(1)で表されるアルコール(I)を原料としてビニルエーテル(II)を得る方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、(A)ビニルエーテルとアルコールとのエーテル交換反応、(B)カルボン酸ビニルとアルコールとのビニル交換反応、及び(C)アセチレンへのアルコールの付加反応等を挙げることができる。 (A)のエーテル交換反応では、遷移金属錯体触媒の存在下に上記アルコール(I)と下記式(4)R1−O−CH=CH2 ・・・(4)(式中、R1は脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表され、目的とするビニルエーテル(II)とは異なるビニルエーテル(IV)を反応させて、ビニルエーテル(II)を得る。 原料となるビニルエーテル(IV)としては、目的とするビニルエーテル(II)に比して安価で入手しやすいものが用いられ、具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等が好ましく用いられる。 遷移金属錯体触媒としては、ビニルエーテル交換反応用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、パラジウム錯体、コバルト錯体等を挙げることができる。パラジウム錯体としては、具体的には、酢酸パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体、塩化パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体等のパラジウムの1,10−フェナントロリン錯体等を挙げることができ、又、コバルト錯体としては、具体的には、Co(CH3COCHCOCH3)2、Co(CH3COCHCOCH3)3、Co(CH3COCHCOCH3)2・2H2O、Co2(CO)8等のコバルトカルボニル錯体等を挙げることができる。 上記(A)のエーテル交換反応においては有機溶媒を使用してもよく、有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。 反応温度は、通常−20〜150℃の範囲であり、反応速度及び副反応抑制の観点から、0〜100℃の範囲が好ましく、20〜50℃の範囲がより好ましい。又、反応時間は、反応条件によって異なるが、通常10分〜48時間程度である。 (B)のビニル交換反応では、遷移金属錯体触媒及び塩基性化合物の存在下に上記アルコール(I)と下記式(5)R2COO−CH=CH2 ・・・(5)(式中、R2は脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示す。)で表されるカルボン酸ビニルエステル(V)を反応させて、ビニルエーテル(II)を得る。 原料となるカルボン酸ビニルエステル(V)としては、具体的には例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。 遷移金属錯体触媒としては、ビニル交換反応用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、イリジウム錯体等を挙げることができる。イリジウム錯体としては、具体的には、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等を挙げることができる。 又、塩基性化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられる。 ビニル交換反応は平衡反応であるため、脱ビニルにより生成したカルボン酸を補足するために塩基性化合物の存在下で行うことが好ましく、更に、カルボン酸と塩基性化合物との反応により副生する水を系外に除去しながら行うことが好ましい。 上記(B)のビニル交換反応においては有機溶媒を使用してもよく、有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。 反応温度は、通常50〜170℃の範囲であり、反応速度及び副反応抑制の観点から、70〜150℃の範囲が好ましく、90〜130℃の範囲がより好ましい。又、反応時間は、反応条件によって異なるが、通常10分〜48時間程度である。 (C)のアセチレンへの付加反応では、アルカリ金属アルコラート触媒の存在下に上記アルコール(I)とアセチレンを反応させて、ビニルエーテル(II)を得る。 アルカリ金属アルコラート触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムの中の1つ又はその混合物と、原料アルコール(I)から合成される化合物であり、アルコール(I)に溶解するものが取り扱い以上好ましい。 反応においては有機溶媒を使用してもよく、有機溶媒としては、原料アルコールと混和し、且つ、アルカリ金属アルコラート触媒を溶解する非プロトン性極性溶媒等が好ましい。具体的には例えば、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含イオウ化合物系溶媒;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル系溶媒等が用いられる。 反応温度は通常80〜200℃の範囲であり、反応速度及び副反応抑制の観点から、100〜180℃の範囲がより好ましい。反応圧力は高いほど反応速度が大きくなるが、アセチレンの分解爆発を防止するためには0.3MPa以下にすることが好ましい。又、反応時間は、反応条件によって異なるが、通常10分〜48時間程度である。 本発明においては、以上の(A)乃至(C)の反応のなかでも、収率が高く原材料が安価で特殊な触媒を必要としない、(C)のアセチレンへの付加反応を採用することが好ましい。〔2〕第2工程:触媒除去工程 第2工程では、ビニルエーテル化反応後の反応混合物から、反応に用いた触媒を除去し、ビニルエーテル(II)と未反応の原料アルコール(I)を含む粗ビニルエーテルを得る。 触媒の除去は、溶媒抽出、蒸留、ろ過等の固液分離(固体触媒又は担持触媒の場合)等公知の方法によって行うことができる。これらの方法の中でも、触媒との分離が容易で、アルコール濃度を減少させることができる点において、蒸留による方法が好ましい。 又、蒸留以外の方法により触媒を除去した場合も、更に蒸留に付して粗ビニルエーテル中のアルコール濃度を減少させることが好ましい。 蒸留に用いる蒸留塔は充填塔、棚段塔、泡鐘塔等の何れであってもよく、蒸留塔の段数は、例えば理論段数1〜100段、好ましくは理論段数5〜50段であり、蒸留時の圧力は、通常0.7〜13.3kPa、好ましくは1.3〜6.7kPaである。〔3〕第3工程:アセタール化反応工程 第3工程では、酸触媒の存在下に、第2工程で得られた粗ビニルエーテル中に残存する未反応の原料アルコール(I)をビニルエーテル(II)と反応させて、一般式(3) 〔式中、Rは上記一般式(1)及び(2)と同義である。〕で表されるアセタール(III)に変換する。 アセタール化反応に用いられる酸触媒としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸等の無機酸;カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸;酸性ゼオライト、ヘテロポリ酸、強酸性イオン交換樹脂等の固体酸触媒等を挙げることができる。 これらの酸触媒の中でも、副反応抑制、特にビニルエーテルの重合反応抑制の点において、リン酸、有機スルホン酸又はスルホン酸基を含有する強酸性イオン交換樹脂等が好ましい。 有機スルホン酸としては、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等の芳香族スルホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸キノリニウム塩等の芳香族スルホン酸塩等が挙げられる。 又、強酸性イオン交換樹脂としては、アンバーリスト15DRY〔商品名、オルガノ(株)社製〕等のスルホン酸型強酸性イオン交換樹脂;アンバーリストMSPS2−1・DRY〔商品名、オルガノ(株)社製〕等のスルホン酸型強酸性イオン交換樹脂とアミン型弱塩基性イオン交換性樹脂の混合物等が挙げられる。 酸触媒の使用量は、用いる酸の種類によって異なるので一概に規定することはできないが、酸触媒として無機酸を使用する場合には粗ビニルエーテルに対して通常0.1〜3000ppmであり、好ましくは0.5〜2000ppmであり、より好ましくは1〜1000ppmである。酸触媒として有機酸を使用する場合には粗ビニルエーテルに対して通常1〜3000ppmであり、好ましくは5〜2000ppmであり、より好ましくは10〜1000ppmである。酸触媒として固体酸触媒を使用する場合は、粗ビニルエーテルに対して通常0.01〜5.0質量%であり、好ましくは0.5〜3.0質量%であり、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。酸触媒の使用量が多すぎるとビニルエーテルの重合反応等の副反応がおこる場合が有り、少なすぎると充分な反応速度が得られない場合がある。 無機酸或いは有機酸は、そのまま、又は適当な溶媒に溶解させて使用することができ、固体酸触媒は、そのまま粗ビニルエーテルに添加してもよいし、カラム等に充填して粗ビニルエーテルを通液してアセタール化させてもよい。 アセタール化反応の温度は、反応速度及び副反応抑制の観点から、0〜80℃の範囲が好ましく、10〜60℃の範囲がより好ましい。又、反応時間は、反応条件によって異なるが、通常10分〜48時間程度である。 尚、アセタール化反応後は、酸触媒が残存すると次工程(蒸留精製工程)において重質物が生成する場合があるので、酸触媒を中和及び/又は除去することが望ましい。 酸触媒として無機酸或いは有機酸を用いた場合は、塩基性化合物を添加して中和することが望ましい。塩基性化合物としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等のアルカリ金属化合物、及び、塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基性化合物は、酸触媒に対して過剰量用いることが好ましい。 塩基性化合物がアルカリ金属化合物である場合は、そのまま、又は適当な溶媒に溶解させて使用することができ、塩基性イオン交換樹脂である場合は、そのまま添加してもよいし、カラム等に充填して粗ビニルエーテルを通液して中和させてもよい。又、中和後の溶液中に固形物や析出物がある場合は、必要に応じてこれをろ過や遠心分離等により固液分離してもよい。 一方、酸触媒として固体酸触媒等固体状の酸触媒を用いた場合は、通常中和操作は不要であり、ろ過や遠心分離等により固液分離する。又、固体酸触媒をカラム等に充填して用いた場合は、分離操作が不要となる。〔4〕第4工程:蒸留精製工程 第4工程では、アセタール(III)を含有する粗ビニルエーテルを蒸留に付して高純度ビニルエーテルを得る。 アセタール(III)とビニルエーテル(II)は、それらの沸点が大きく異なり、共沸混合物を形成しないので蒸留により容易に分離することが可能であり、純度99質量%以上の高純度ビニルエーテルを効率よく得ることができる。 蒸留装置や蒸留方法は特に限定されず、単蒸留でも蒸留段数を設けても構わない。蒸留段数を設ける場合は、通常、理論段数1〜20段、好ましくは理論段数5〜10段である。又、蒸留時の圧力は、通常0.1〜13.3kPa、好ましくは0.1〜6.7kPaである。 目的とする高純度ビニルエーテルは蒸留塔の塔頂から得られ、塔底からはアセタール(III)に富む塔底液を回収される。〔5〕第5工程:アセタール分解工程 第4工程で得られたアセタール(III)に富む塔底液は、必要に応じて回収され、アセタール(III)をアルコール(I)とビニルエーテル(II)に変換した後、ビニルエーテル合成原料として合成工程にリサイクルすることができる。 アセタール(III)をアルコール(I)とビニルエーテル(II)に変換する方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。具体的には、(a)アルカリ又はアルカリ土類金属を担持したシリカ/アルミナ系触媒の存在下に気相で熱分解する方法(例えば、Khim.Prom.48(9)657−660、1972;特開昭48−78109号;特開昭62−87247号等)、(b)酸化マグネシウムを触媒として用いて気相で分解する方法(特開平8−268945号)、(c)貴金属を含有する触媒の存在下に分解する方法(例えば、Ann.,601 81−84,1956;ドイツ公開特許第1957680号;特開昭48−76803号等)、(d)酸触媒を用いて分解する方法(例えば、J.Org.Chem.,38,2910,1973,Helv.Chim.Acta,1158(1967);Bull.Chem.Soc.Jpn.3089(1976);特開平8−277237号等)等が挙げられる。 以下、本発明の方法について実施例を示すが、これらは説明のための例示であって、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。実施例1(高純度2−エチルヘキシルビニルエーテルの製造例I)(ビニルエーテル合成工程及び触媒除去工程) 内容量10Lの反応槽と理論段数10段の蒸留塔を備えた連続反応蒸留装置に、2−エチルヘキサノール4800gと水酸化カリウム500gを量り入れ、120℃で加熱しながら減圧下で脱水してカリウムアルコラート触媒を調製した。次いで、アセチレン(20kPa、103g/h)と2−エチルヘキサノール(557g/h)を連続的に供給して137℃で反応させ、蒸留塔塔頂から粗2−エチルヘキシルビニルエーテル(686g/h、組成:2−エチルヘキシルビニルエーテル90質量%、2−エチルヘキサノール10質量%)を得た。(アセタール化反応工程及び蒸留精製工程) 上記工程で得られた粗2−エチルヘキシルビニルエーテル346.8gを、スターラーチップを備えた500mlの三口フラスコに量り取り、85%リン酸水溶液0.29g(粗ビニルエーテルに対して711ppm)を加え、室温下で60分間攪拌した。反応後の溶液中の2−エチルヘキサノールは0.1質量%以下であり、2−エチルヘキシルビニルエーテルとアセトアルデヒドジ(2−エチルヘキシル)アセタールがそれぞれ、80質量%、20質量%含まれていた。反応溶液に8.8質量%水酸化ナトリウム−メタノール溶液4.94gを加えて中和した後、単蒸留装置を用いて蒸留を行い(内圧:4.6kPa、油浴設定温度:95〜120℃、冷媒設定温度:5℃)、純度99質量%以上の高純度2−エチルヘキシルビニルエーテル245.1gを得た(回収率70.7%)。実施例2(高純度2−エチルヘキシルビニルエーテルの製造例II) 実施例1と同様にして得られた粗2−エチルヘキシルビニルエーテル1507gを、スターラーチップを備えた2L三口フラスコに量り取り、p−トルエンスルホン酸一水和物47.7mg(粗2−エチルヘキシルビニルエーテルに対して31.5ppm)を加え、室温下で10分間攪拌した。反応後の溶液中の2−エチルヘキサノールは0.1質量%以下であり、2−エチルヘキシルビニルエーテルとアセトアルデヒドジ(2−エチルヘキシル)アセタールがそれぞれ、80質量%、20質量%含まれていた。反応溶液に飽和水酸化ナトリウム水溶液47.7mgを加えて中和した後、10段オールダーショウ型蒸留装置を用いて蒸留を行い(内圧:1.3kPa、油浴設定温度:70〜136℃、冷媒設定温度:20℃)、純度99質量%以上の高純度2−エチルヘキシルビニルエーテル1044gを得た(回収率69.3%)。実施例3(高純度2−エチルヘキシルビニルエーテルの製造例III)(ビニルエーテル合成工程及び触媒除去工程) 内容量10Lの反応槽と理論段数10段の蒸留塔を備えた連続反応蒸留装置に、2−エチルヘキサノール5015gと水酸化カリウム500gを量り入れ、120℃で加熱しながら減圧下で脱水してカリウムアルコラート触媒を調製した。次いで、アセチレン(20kPa、65g/h)と2−エチルヘキサノール(361g/h)を連続的に供給して140℃で反応させ、蒸留塔塔頂から粗2−エチルヘキシルビニルエーテル(401g/h、組成:2−エチルヘキシルビニルエーテル94質量%、2−エチルヘキサノール6質量%)を得た。(アセタール化反応工程及び蒸留精製工程) 上記工程で得られた粗2−エチルヘキシルビニルエーテル87.2gとアンバーリスト15DRY0.15g(粗2−エチルヘキシルビニルエーテルに対して0.17質量%)を、スターラーチップを備えた200ml三角フラスコに量り取り、室温下で20分間攪拌した。反応後の溶液中の2−エチルヘキサノールは0.1質量%以下であり、2−エチルヘキシルビニルエーテルとアセトアルデヒドジ(2−エチルヘキシル)アセタールがそれぞれ、88質量%、12質量%含まれていた。ろ過によってアンバーリスト15DRYを除いた後、エバポレーターを用いて蒸留を行い(内圧:0.2kPa、油浴設定温度:50℃、冷媒設定温度:0℃)、純度99質量%以上の高純度2−エチルヘキシルビニルエーテル65.8gを得た(回収率75.5%)。実施例4(高純度シクロヘキシルビニルエーテルの製造例I)(ビニルエーテル合成工程及び触媒除去工程) 内容量10Lの反応槽と理論段数10段の蒸留塔を備えた連続反応蒸留装置に、シクロヘキサノール2500g、溶剤としてトリエチレングリコールジメチルエーテル2500g、水酸化カリウム250gを量り入れ、120℃で加熱しながら窒素バブリングにより脱水してカリウムアルコラート触媒を調製した。次いで、アセチレン(20kPa、138g/h)とシクロヘキサノール(529g/h)を連続的に供給して135℃で反応させ、蒸留塔塔頂から粗シクロヘキシルビニルエーテル(636g/h、組成:シクロヘキシルビニルエーテル95質量%、シクロヘキサノール4質量%、その他の不純物1質量%)を得た。(アセタール化反応工程及び蒸留精製工程) 上記工程で得られた粗シクロヘキシルビニルエーテル268.7gとアンバーリスト15DRY0.71g(粗シクロヘキシルビニルエーテルに対して0.26質量%)を、スターラーチップを備えた500ml三角フラスコに量り取り、室温下で10分間攪拌した。反応後の溶液中のシクロヘキサノールは0.1質量%以下であり、シクロヘキシルビニルエーテルとアセトアルデヒドジシクロヘキシルアセタールがそれぞれ、91質量%、8質量%含まれていた(残部はその他の不純物)。ろ過によってアンバーリスト15DRYを除いた後、エバポレーターを用いて蒸留を行い(内圧:0.1kPa、油浴設定温度:25℃、冷媒設定温度:0℃)、純度99質量%以上の高純度シクロキシルビニルエーテル201.8gを得た(回収率75.1%)。1:ビニルエーテル合成工程2:触媒除去工程3:アセタール化反応工程4:蒸留精製工程5:アセタール分解工程第1工程:一般式(1)R−O−H ・・・(1)(式中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表されるアルコール(I)を、触媒の存在下にビニルエーテル化反応に付し、一般式(2)R−O−CH=CH2 ・・・(2)(式中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表されるビニルエーテル(II)を合成するビニルエーテル合成工程;第2工程:第1工程で得られた反応混合物から触媒を除去し、ビニルエーテル(II)と未反応の原料アルコール(I)を含む粗ビニルエーテルを得る触媒除去工程;第3工程:酸触媒の存在下に、粗ビニルエーテル中に残存する未反応の原料アルコール(I)をビニルエーテル(II)とを反応させて、一般式(3)(式中、Rは脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)で表されるアセタール(III)に変換するアセタール化反応工程;及び、第4工程:アセタール(III)を含有する粗ビニルエーテルを蒸留に付して高純度ビニルエーテルを得る精製蒸留工程を含むことを特徴とする高純度ビニルエーテルの製造法。 ビニルエーテル化反応が、(A)ビニルエーテルとアルコールとのエーテル交換反応、(B)カルボン酸ビニルとアルコールとのビニル交換反応、又は(C)アセチレンへのアルコールの付加反応から選ばれるいずれかである請求項1に記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 第2工程が、ビニルエーテル化反応の反応混合物を蒸留に付して触媒を除去し、アルコール(I)とビニルエーテル(II)を含む粗ビニルエーテルを得る工程である請求項1又は2に記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 第2工程が、ビニルエーテル化反応の反応混合物から触媒を除去した後に蒸留に付し、アルコール(I)とビニルエーテル(II)を含む粗ビニルエーテルを得る操作を工程の一部として含む請求項1又は2に記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 第3工程において、アセタール化反応に用いられる酸触媒が無機酸、有機酸又は固体酸触媒である請求項1〜4のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 第3工程において、アセタール化反応を0〜80℃の温度範囲で行う請求項1〜5のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 第3工程が、アセタール化反応後に酸触媒を中和及び/又は除去する操作を工程の一部として含む請求項1〜6のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 アセタール(III)に富む塔底液を回収し、アセタール(III)をアルコール(I)とビニルエーテル(II)に変換した後、ビニルエーテル合成原料として合成工程にリサイクルすることを含む請求項1〜7のいずれかに記載の高純度ビニルエーテルの製造法。 【課題】ビニルエーテルと未反応の原料アルコールを含む粗ビニルエーテルから、高純度のビニルエーテルを効率よく回収することができるビニルエーテル製造法の提供。【解決手段】一般式R−O−H(Rは脂肪族炭化水素基等)で表されるアルコールを、触媒の存在下にビニルエーテル化反応に付し、一般式R−O−CH=CH2で表されるビニルエーテルを合成し、この反応混合物から触媒を除去し、ビニルエーテルと未反応の原料アルコールを含む粗ビニルエーテルを得た後、酸触媒の存在下に、粗ビニルエーテル中に残存する未反応の原料アルコールをビニルエーテルと反応させて、一般式(3)で表されるアセタールに変換し、さらに、該アセタールを含有する粗ビニルエーテルを蒸留に付して高純度ビニルエーテルを得る。【選択図】図1