生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_耐塩性増粘剤及びそれを配合した化粧料
出願番号:2009046445
年次:2010
IPC分類:A61K 8/73,A61K 8/368,A61K 8/67,A61Q 1/00,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

上野 則夫 岡 隆史 森 雄一郎 JP 2010202522 公開特許公報(A) 20100916 2009046445 20090227 耐塩性増粘剤及びそれを配合した化粧料 株式会社資生堂 000001959 牛木 護 100080089 吉田 正義 100137800 小合 宗一 100125081 上野 則夫 岡 隆史 森 雄一郎 A61K 8/73 20060101AFI20100820BHJP A61K 8/368 20060101ALI20100820BHJP A61K 8/67 20060101ALI20100820BHJP A61Q 1/00 20060101ALI20100820BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20100820BHJP JPA61K8/73A61K8/368A61K8/67A61Q1/00A61Q19/00 5 OL 13 4C083 4C083AC471 4C083AC472 4C083AD331 4C083AD332 4C083AD641 4C083AD642 4C083CC02 4C083CC11 4C083DD41 4C083FF01 本発明は、新規な増粘剤及びこれを含む化粧料に関し、具体的には、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーを含む耐塩性増粘剤と、該増粘剤を含む化粧料とに関する。 化粧料の使い心地を向上させ、高級感を付与する目的で、化粧料に増粘剤を配合する場合がある。しかし、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウムのような化粧料に従来から配合されてきた増粘剤は、塩又は薬剤の存在下で粘弾性が低下する。 化粧料には、保湿剤、脱色剤、アミノ酸、ビタミンとして種々の塩が配合される場合がある。そこで化粧料の分野で利用するために、これらの塩の存在下でも粘弾性を失わない、耐塩性を有する増粘剤を開発する必要がある。 ヒアルロン酸溶液は粘弾性を有するため増粘剤として使用される場合があるが、ヒアルロン酸溶液は曳糸性を示すので、化粧料の使い心地の面で問題がある。また、ヒアルロン酸溶液は該溶液中の塩濃度が高くなると粘性が低下する。特許文献1に記載の架橋ヒアルロン酸ゲルは架橋率が低く、かつ、優れた粘弾性を示す。しかし、架橋ヒアルロン酸ゲルは一定の体積寸法を保つ性質があるので、例えば体内に注入される組織増大物質のような用途には利用できるが、そのままでは化粧料用の増粘剤としては用いることはできない。国際公開WO2006/051950公報 架橋ヒアルロン酸ゲルを利用して、化粧料に配合される可能性のある塩又は薬剤の濃度において十分な粘弾性を発揮することができる新規な耐塩性増粘剤を開発する必要がある。 本発明は架橋ヒアルロン酸ゲルを含む増粘剤を提供する。前記架橋ヒアルロン酸ゲルの製造方法は、ヒアルロン酸、架橋剤及び水を含む混合物を酸又はアルカリ条件下で攪拌混合するステップと、(2)前記混合物の架橋反応を行うステップと、(3)前記混合物を破砕し、スラリーにするステップとを含む。 本発明の増粘剤において、前記架橋ヒアルロン酸ゲルの製造方法は、ステップ(2)とステップ(3)との間に、前記混合物を浸漬液に浸漬し、膨潤させるステップを含む場合がある。 本発明の増粘剤において、前記架橋剤は、ジビニルスルホン、1,4−ブタンジオール・ジグリシジルエーテル及びエチレングリコール・ジグリシジルエーテルからなる群から選択される場合がある。 本発明は、本発明の増粘剤を含む化粧料を提供する。 本発明の化粧料は、4−メトキシサリチル酸カリウム塩及び/又はアスコルビン酸−2−グルコシドを含む場合がある。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフ。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの膨潤率と塩濃度との関係を示すグラフ。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフ。1%のヒアルロン酸溶液の貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフ。1%のシンタレンL溶液の貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフ。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの貯蔵弾性率(G’)を示す棒グラフ。1%のヒアルロン酸及びシンタレンL溶液の貯蔵弾性率(G’)を示す棒グラフ。0.2%のヒアルロン酸及びシンタレンL溶液かの貯蔵弾性率(G’)を示す棒グラフ。 本明細書において「増粘剤」とは、化粧料、食品、飲料、医薬品等の製品に粘弾性を付与する目的で、該組成物に配合される組成物をいう。 本明細書において「耐塩性」とは、増粘剤を含む溶液中の塩濃度を、化粧料に配合されることがある範囲内で増加させても、該溶液の粘弾性が低下しにくい性質をいう。 本明細書において「曳糸性」とは、溶液の一部を取り分けるときに溶液の表面が切断せずに糸状に伸びる性質をいう。 本発明で使用されるヒアルロン酸は、例えば、鶏冠等の動物組織からの単離抽出法、微生物を用いた発酵法により得ることができる。また、本発明のヒアルロン酸として、バイオヒアロ12(株式会社資生堂)、ヒアルロン酸(株式会社紀文フードケミファ)等のような市販のヒアルロン酸を用いることができる。本発明のヒアルロン酸の分子量は特に限定されないが、10万以上であることが好ましく、50万〜300万程度であることがより好ましい。 本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法で使用されるヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の誘導体及び/又は塩を含む。本明細書においてヒアルロン酸の誘導体は、ヒアルロン酸が、そのヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基において、エステル基、エーテル基、アセチル基、アミド基、アセタール基、ケタール基等の原子団と共有結合したものをいう。本明細書においてヒアルロン酸及びその誘導体の塩は、ヒアルロン酸及びその誘導体の金属塩、アミン塩等を含む。前記金属塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩のようなアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を含む場合がある。前記アミン塩は、トリエチルアミン塩、ベンジルアミン塩等を含む場合がある。 本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法において、ヒアルロン酸は、例えば5〜20w/v%、好ましくは10〜20w/v%という濃度で混合物中に含まれる場合がある。 本発明においてヒアルロン酸ゲルの架橋剤として、ヒアルロン酸分子の有するヒドロキシル基、カルボキシル基、アセトアミド基といった反応性官能基と反応して共有結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する多官能基性化合物を用いることができる。本発明で使用される架橋剤は、具体的には、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,5−ヘキサジエンジエポキシド等のようなアルキルジエポキシ体と、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオール・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル等のようなジグリシジルエーテル体と、ジビニルスルホンと、エピクロルヒドリンとを含む。好ましくは前記架橋剤は、ジビニルスルホン、1,4−ブタンジオール・ジグリシジルエーテル、エチレングリコール・ジグリシジルエーテルからなる群から選択される。前記架橋剤は、より好ましくはジビニルスルホンである。本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法においては、2種類以上の架橋剤を組み合わせて使用することもできる。 本発明におけるヒアルロン酸ゲルの架橋剤の濃度は、例えば0.02〜1w/v%、好ましくは0.05〜0.5w/v%、あるいは、例えば0.02〜2w/w%の場合がある。 本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法において、酸又はアルカリ条件とは、架橋反応時におけるヒアルロン酸の反応性を高める目的で設定される本発明の混合物のpH条件であって、酸性条件としてはpH1〜5の条件、アルカリ性条件としてはpH10〜14の条件をいう。本発明のヒアルロン酸、架橋剤及び水を含む混合物は、塩酸、硫酸等のような酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のような塩基、あるいは、リン酸塩、4級アンモニウム塩等の適当な緩衝剤を使用して、pH1〜5又はpH10〜14の条件下で攪拌混合され、架橋反応に供される。 本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法における撹拌は、該混合物中のヒアルロン酸を物理的に切断することなく撹拌する方法により行なわれる場合がある。具体的には、前記撹拌する方法は、自転−公転式混合装置による撹拌、パン生地練り装置又はもちつき装置による撹拌、ヒトの手で揉むことによる撹拌等を含む。前記自転−公転式混合装置は、例えば特開昭61−290946号公報等に記載の装置を使用することができる。 本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法のステップ(2)における架橋反応は、ステップ(1)で攪拌混合された混合物を成形し、3ないし24時間室温で静置することにより実行される場合がある。前記混合物の成形は、事前に作製した型に前記ゲル状混合物を押し込むことにより行なわれる場合、ヒトの手で前記ゲル状混合物を適宜成形することにより行なわれる場合等がある。 本発明の架橋ヒアルロン酸ゲルを製造する方法のステップ(3)における破砕は、破砕されるゲルの重量や体積に応じて、業務用又は研究開発用粉砕機を使用して実施される場合がある。 本明細書において「化粧料」とは、身体を清潔にしたり、外見を美しくしたりする目的で、皮膚への塗布、散布等を行うもので、作用の緩和なものをいう。本発明の化粧料は、基礎化粧料、メイクアップ化粧料、薬用化粧料、トイレタリー製品等を含む。 また、本発明の化粧料は、例えば、油脂類、保湿剤、美白剤、色素、香料、栄養素、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の薬剤を含む場合がある。前記美白剤には4−メトキシサリチル酸カリウム塩が含まれ、前記栄養素及び酸化防止剤にはアスコルビン酸−2−グルコシドが含まれる。 本明細書において「浸漬液」とは、架橋反応後の本発明の混合物を浸漬することにより、架橋ヒアルロン酸ゲルを洗浄し、かつ、膨潤させるための液体である。前記浸漬液は、生理食塩水及び等張リン酸緩衝液を含むがこれらに限定されない。前記浸漬液は、本発明の化粧料の有効塩又は薬剤をさらに含む場合がある。 以下の実施例によって本発明について詳細な説明を行なうが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 1.架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの耐塩性の検討 1−1.方法 (架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの調製) 0.1N NaOH水溶液4.95mLと、ジメチルスルホキシドで16.67倍に希釈したジビニルスルホン溶液50μL(ジビニルスルホンとして3μL)とを、直径65mmの小型ガラス乳鉢に添加してよく撹拌し、0.8gのヒアルロン酸(バイオヒアロ12(株式会社資生堂))をさらに添加した。乳棒にて上述の混合物を撹拌し、半透明のゲル状混合物を得た。前記ゲル状混合物を滅菌ポリエチレン袋(長さ100mm、幅70mm)の底部に入れた後、棒状(長さ約70mm、直径約10mm)に成形した。これを室温で4時間静置し、架橋反応を行なわせ、棒状ゲルを得た。棒状ゲルをポリエチレン袋より取り出し、重量を測定し,1Lの滅菌生理食塩水中に浸漬し24時間静置した。その後、棒状ゲルを1Lの等張リン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し室温で5日間静置し,棒状ゲルの洗浄と膨潤を行った。5日間の洗浄及び膨潤工程の後の膨潤した棒状ゲルの重量を測定した。該棒状ゲルを4個の断片に分割し、それぞれのゲル断片の重量(分割直後断片重量)を測定してから、それぞれ0%、0.9%、1.8%、2.7%のNaClを含むリン酸緩衝液に浸漬し2日間静置し、それぞれのゲル断片の重量(膨潤後断片重量)を測定した。その後、前記ゲル断片を破砕して架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーを得た。一連の作業は、微生物汚染を回避するために滅菌器具及び滅菌試薬を用い、ゲル調製操作はクリーンベンチ内で実施した。 (膨潤率の算出) 前記架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのそれぞれについて前記膨潤後断片重量を前記分割直後断片重量で除算した結果の百分率がそれぞれのNaCl濃度のリン酸緩衝液に浸漬したゲル断片の膨潤率である。 (粘弾性の測定) 取得した架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーについて、粘弾性の測定を実施した。粘弾性の測定は、レオメーター(Rheolyst AR1000−N:TA Instruments)を用いて実施した。25°C、周波数0.1Hz〜10Hzの条件で、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の測定を行った。以下で粘弾性の測定結果を表示するときは、周波数1HzにおけるG’を用いた。 1−2.結果 上述の手順で調製することができた架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー(ロット3041)の理論上の最終ヒアルロン酸濃度は約2.5w/w%であった。異なる濃度(0%、0.9%、1.8%、2.7%)のNaClを含む架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの粘弾性及び膨潤率を測定した結果を図1及び2に示す。 図1は、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー(ロット3041)の貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフである。NaClを含まない架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は約1000Paであったが、0.9%のNaClを含む架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は2000Paを超え、NaClを含むとG’は約2倍に増大した。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は、NaClの濃度が0.9%を超えて増加しても大きな変化を示さなかった。この結果から、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは、塩濃度が増加しても粘弾性が大きな変化を示さず、耐塩性が高いことがわかった。 図2は、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー(ロット3041)の膨潤率と塩濃度との関係を示すグラフである。NaClを含まない架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの膨潤率は約160%であったが、0.9%のNaClを含む架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの膨潤率は約100%となり、NaClを含むゲルスラリーの膨潤率はやや低下した。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの膨潤率は、NaClの濃度が0.9%を超えて増加しても大きな変化を示さなかった。 2.架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー、ヒアルロン酸溶液及びシンタレンL溶液の耐塩性の検討 2−1.方法 異なる濃度(0%、0.9%、1.8%、2.7%)のNaClを含む架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは、ヒアルロン酸の添加量を0.5gとした以外は実施例1に記載の方法に従い調製した。得られた架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー(ロット3042a)の理論上の最終ヒアルロン酸濃度は約1.1w/w%であった。また比較例として、異なる濃度(0%、0.9%、1.8%、2.7%)のNaClを含む1%のヒアルロン酸溶液と、異なる濃度(0%、0.9%、1.8%、2.7%)のNaClを含む1%のシンタレンL(和光純薬工業株式会社)溶液とを定法に従い調製した。調製された架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー、ヒアルロン酸溶液及びシンタレンL溶液について、実施例1に記載の方法に従い粘弾性の測定を実施した。 2−2.結果 図3は、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー(ロット3042a)の貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフである。NaClを含まない架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は約40Paであったが、0.9%のNaClを含む架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は約140Paとなり、NaClを含むとG’は約3倍に増大した。また、この約140Paという値は、0.9%のNaClを含む1%のヒアルロン酸及びシンタレンL溶液のG’と比較して、それぞれ30倍以上及び2倍以上の値であった。(図4及び5を参照せよ。)また、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は、塩濃度が0.9%を超えて増加しても大きな変化を示さなかった。 図4は、1%のヒアルロン酸溶液の貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフである。NaClを含まないヒアルロン酸溶液のG’は約6Paであったが、0.9%のNaClを含むヒアルロン酸溶液のG’は約4Paとなり、NaClを含むとG’はやや低下した。ヒアルロン酸溶液のG’は、塩濃度が0.9%を超えて増加するのに伴い低下した。 図5は、1%のシンタレンL溶液の貯蔵弾性率(G’)と塩濃度との関係を示すグラフである。NaClを含まないシンタレンL溶液のG’は約70Paであったが、0.9%のNaClを含むシンタレンL溶液のG’は約60Paとなり、NaClを含むとG’は低下した。シンタレンL溶液のG’は、塩濃度が0.9%を超えて増加するのに伴い低下した。 図3〜5に示された結果から、ヒアルロン酸溶液及びシンタレンL溶液は耐塩性が低いが、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは、同濃度の塩を含むヒアルロン酸溶液又はシンタレンL溶液と比較して高い粘弾性を示すとともに、塩濃度が増加しても粘弾性が大きな変化を示さず、耐塩性が高いことがわかった。 3.架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーと、ヒアルロン酸溶液と、シンタレンL溶液との耐塩性及び薬剤耐性の検討 化粧品等に汎用される成分の例として、4−メトキシサリチル酸カリウム塩(4MSK)及びアスコルビン酸−2−グルコシド(AA2G)を含む増粘剤の粘弾性について検討した。 3−1.方法 2%の4MSK、2%のAA2G又は0.9%のNaClを含むか、これらのいずれも含まない架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーを調製した。その調製方法については、ヒアルロン酸の添加量を0.4gとしたこと、及び、棒状のゲルを4個に分割した後、0%又は0.9%のNaClか、2%の4MSKか、2%のAA2Gかを含むリン酸緩衝液に浸漬し2日間静置したことを除いて、実施例1に記載の方法に従った。得られた架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの理論上の最終ヒアルロン酸濃度は約1.1w/w%であった。比較例として、2%の4MSK、2%のAA2G又は0.9%のNaClを含むか、これらのいずれも含まない、ヒアルロン酸又はシンタレンLの1%又は0.2%溶液を調製した。調製された架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー、ヒアルロン酸溶液及びシンタレンL溶液について、実施例1に記載の方法に従い粘弾性の測定を実施した。 3−2.結果 図6は、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの貯蔵弾性率(G’)を示す棒グラフである。2%の4MSK、2%のAA2G、0.9%のNaClを含む架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は、それぞれ約90Pa、約80Pa、約60Paであったが、前記成分のいずれも含まない架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーのG’は約20Paとなり、塩又は薬剤の存在下ではG’が増大した。 図7は、1%のヒアルロン酸又はシンタレンL溶液の貯蔵弾性率(G’)を示す棒グラフである。2%の4MSK又はAA2Gを含む1%のヒアルロン酸溶液のG’はいずれも約30Paであったが、前記成分のいずれも含まない1%のヒアルロン酸溶液のG’は約40Paとなり、塩又は薬剤を含むとG’はやや低下した。また、2%の4MSK又はAA2Gを含む1%のシンタレンL溶液のG’はいずれも約60Paであったが、前記成分のいずれも含まない1%のシンタレンL溶液のG’は約80Paとなり、塩又は薬剤の存在下ではG’はやや低下した。 図8は、0.2%のヒアルロン酸又はシンタレンL溶液の貯蔵弾性率(G’)を示す棒グラフである。2%の4MSK又はAA2Gを含む0.2%のヒアルロン酸溶液のG’はいずれも0.1Paを下回ったが、前記成分のいずれも含まない0.2%のヒアルロン酸溶液のG’は約0.5Paで、塩又は薬剤の存在下ではG’は著しく低下した。また、2%の4MSK及びAA2Gを含む0.2%のシンタレンL溶液のG’はそれぞれ約1.5Pa及び約0.5Paであったが、前記成分のいずれも含まない0.2%のシンタレンL溶液のG’は3Paを超える値となり、塩又は薬剤の存在下ではG’は著しく低下した。 図6〜8に示された結果より、ヒアルロン酸溶液及びシンタレンL溶液は、塩又は薬剤の存在下では粘弾性が低下し、耐塩性及び薬剤耐性が低いことがわかった。また、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは、塩又は薬剤の存在下でも粘弾性が低下せず、耐塩性及び薬剤耐性が高いことがわかった。 4.架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー及びヒアルロン酸溶液の曳糸性の検討 実施例1〜3で調製した架橋ヒアルロン酸ゲルスラリー及びヒアルロン酸溶液の曳糸性について、実施例1〜3の作業工程中に目視により評価した。その結果、ヒアルロン酸溶液は曳糸性を有したが、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは曳糸性を有しなかった。 架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは、同濃度の塩を含むヒアルロン酸溶液又はシンタレンL溶液と比較して非常に高い粘弾性を示した。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーの粘弾性は塩又は薬剤の濃度が増加しても大きな変化を示さなかったことから、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは耐塩性及び薬剤耐性を有する。また、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーはヒアルロン酸溶液と異なり、曳糸性がなかった。よって、架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーは耐塩性のある増粘剤として利用することができる。架橋ヒアルロン酸ゲルスラリーを含む増粘剤を化粧品処方に用いることにより使い心地の良い製品を提供できることが期待される。 (1)ヒアルロン酸、架橋剤及び水を含む混合物を酸又はアルカリ条件下で攪拌混合するステップと、(2)前記混合物の架橋反応を行うステップと、(3)前記混合物を破砕し、スラリーにするステップとを含む方法により製造される架橋ヒアルロン酸ゲルからなることを特徴とする、増粘剤。 前記方法は、ステップ(2)とステップ(3)との間に、前記混合物を膨潤させるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤。 前記架橋剤は、ジビニルスルホン、1,4−ブタンジオール・ジグリシジルエーテル及びエチレングリコール・ジグリシジルエーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の増粘剤。 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の増粘剤を含むことを特徴とする、化粧料。 4−メトキシサリチル酸カリウム塩及び/又はアスコルビン酸−2−グルコシドを含むことを特徴とする、請求項4に記載の化粧料。 【課題】架橋ヒアルロン酸ゲルを利用して、化粧料に配合される可能性のある塩又は薬剤の濃度において十分な粘弾性を発揮することができる新規な耐塩性増粘剤を開発する。【解決手段】本発明は架橋ヒアルロン酸ゲルを含む増粘剤を提供する。前記架橋ヒアルロン酸ゲルの製造方法は、(1)ヒアルロン酸、架橋剤及び水を含む混合物を酸又はアルカリ条件下で攪拌混合するステップと、(2)前記混合物の架橋反応を行うステップと、(3)前記混合物を破砕し、スラリーにするステップとを含む。【選択図】なし


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