タイトル: | 公開特許公報(A)_発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法およびこれを用いた発煙硫酸含浸担体の製造方法 |
出願番号: | 2009043515 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 31/00 |
伊藤 由美子 浜田 剛 伊藤 準一 JP 2010197266 公開特許公報(A) 20100909 2009043515 20090226 発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法およびこれを用いた発煙硫酸含浸担体の製造方法 株式会社住化分析センター 390000686 中山 亨 100113000 坂元 徹 100151909 伊藤 由美子 浜田 剛 伊藤 準一 G01N 31/00 20060101AFI20100813BHJP JPG01N31/00 PG01N31/00 Y 4 OL 12 2G042 2G042AA01 2G042BA08 2G042BB13 2G042FB05 本発明は、発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法およびこれを用いた発煙硫酸含浸担体の製造方法に関するものである。詳細には、ポリ塩化ビフェニル類を含む疎水性試料中のポリ塩化ビフェニル類を定量するに際し、試料の前処理等に使用される発煙硫酸含浸担体中の硫酸および三酸化硫黄の分析方法およびこれを用いた発煙硫酸含浸担体の製造方法に関するものである。トランスなどに使用されている絶縁油などの疎水性試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類 〔以下、PCB類と略称することがある。〕を定量するに際しては、PCB類の定量に妨害となる共存物質を予め除去することが必要であるが、このような共存物質には、カラムクロマトグラフ処理などの通常の処理方法だけでは分離が困難なものもある。このため、非特許文献1〔平成12年12月28日厚生省告示第633号で改正された平成4年7月3日厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」〕に記載された、いわゆる公定法では、疎水性試料を濃硫酸と液−液接触させて処理する操作を繰り返したのちに、共存物質を上記カラムクロマトグラフ処理などの処理方法により除去する方法が開示されており、また、濃硫酸に代えて遊離SO3濃度25質量%の発煙硫酸を用いて疎水性試料を処理する方法も知られている。濃硫酸または発煙硫酸と液−液接触させたのちの疎水性試料は、分液操作により濃硫酸または発煙硫酸から分離され、かかる処理方法により、疎水性試料に含まれる分離困難な妨害物質を除去することができる。しかし、液−液接触させたのちの疎水性試料を濃硫酸または発煙硫酸から分離する操作を繰り返すことは煩雑である。かかる要望より、BET比表面積250m2/g〜450m2/g、細孔容積1.4cm3/g〜2.6cm3/gのシリカゲルに、遊離SO3濃度が5質量%〜40質量%である発煙硫酸が含浸されてなる発煙硫酸含浸シリカゲルを用いる方法が知られている(特許文献1)。 上記特許文献1に開示された方法は、疎水性試料中に含まれるPCB類との分離が困難な妨害物質を作業性よく十分に除去することが可能な優れた方法であるが、発煙硫酸は反応性が高く、短時間で空気中の水分を吸収し硫酸に変化するため、例えば遊離SO3濃度が25質量%の発煙硫酸を使用して発煙硫酸含浸シリカゲルを製造したとしても、使用時点の製品が経時変化によりどの程度の遊離SO3濃度であるかを知ることは品質管理上把握する必要がある。特開2007−248270号公報平成12年12月28日厚生省告示第633号で改正された平成4年7月3日厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」 しかしながらJIS K1321 1994「硫酸」やJIS K8741 1996「発煙硫酸(試薬)」からも明らかな如く、従来公知の測定方法は、測定試料が硫酸と三酸化硫黄のみで構成されていることを前提とした分析法であり、三酸化硫黄は水と反応させて硫酸とした後、全硫酸濃度を測定し、100%を越えた分を算式により三酸化硫黄分として求めるものである。従って本件の如くシリカゲル等の硫酸と三酸化硫黄以外の物質を含有している試料の場合には適用できない。 かかる事情下に鑑み、本発明者等はシリカゲル等の担体の共存下においても、担体に含浸されている硫酸および三酸化硫黄の量を正しく分析できる方法を見出すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、1.以下の手順で分析することを特徴とする発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法を提供するにある。(1)発煙硫酸含浸担体を水に浸漬し担体中の三酸化硫黄を水と反応させ硫酸とし、担体中に予め存在する硫酸と、三酸化硫黄由来の硫酸との合量を測定するステップ(2)発煙硫酸含浸担体を、硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒中に浸漬せしめ、三酸化硫黄と溶媒とが反応後の溶媒中の硫酸含量を測定するステップ(3)(1)で得られた硫酸量と(2)で得られた硫酸量より、発煙硫酸含浸担体中に含有される硫酸と三酸化硫黄の含量を算出するステップ また、本発明は、2.硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し、硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒が、芳香族炭化水素であることを特徴とする上記1.記載の発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法を提供するにある。 また本発明は、3.硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し、硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒がドデシルベンゼンであることを特徴とする上記1.または2.記載の発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法を提供するものである。 加えて本発明は上記1.〜3.のいずれか1つに記載の分析方法で得た発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析結果に基づき、担体に担持させる三酸化硫黄量を調整することを特徴とする発煙硫酸含浸担体の製造方法を提供するものである。 本発明は、担体等の共存下においても、硫酸および三酸化硫黄の量を正しく分析できるため、ポリ塩化ビフェニル類を含む疎水性試料中のポリ塩化ビフェニル類を定量するに際し、試料の前処理等に使用される発煙硫酸含浸担体中の硫酸および三酸化硫黄の量を測定可能としたもので、製品の品質管理に極めて多大の効果を有する。 更に、担体への発煙硫酸の含浸操作から得られた発煙硫酸含浸担体を、通常、ガラス等の水分や空気が非透過性カラムに密封した製品として製造されることより、非透過性カラムに密封するまでの発煙硫酸含浸担体の経時変化を測定し、この測定結果を基に、原材料の仕込み量や作業条件、作業環境等の調整等を行うことにより、より正確に発煙硫酸の含浸量をコントロールした発煙硫酸含浸担体カラムの提供を可能とする。 本発明の分析方法を用いる発煙硫酸含浸担体は、上記した如く、PCB類を含有する疎水性試料よりクロマトグラフやイムノアッセイによりPCB類を定量するに際し、予め試料と接触せしめることにより、疎水性試料中に含まれるPCB類との分離が困難な妨害物質を作業性よく十分に除去することを目的とするものである。適用される疎水性試料は、疎水性の液体試料であって、例えばトランス、コンデンサーなどの電気機器に絶縁、冷却などのために封入されて使用される絶縁油、該絶縁油を分解処理して得られる分解処理油などの油性試料が挙げられる。かかる油性試料は希釈されることなくそのまま用いられてもよいし、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどのような疎水性溶媒で希釈されて用いられてもよい。 また、疎水性試料としては、例えば焼却炉から排出される煤塵、燃え殻、土壌から採取される土質試料などの固形試料、雨水、排水などの水質試料などから、n−ヘキサン、トルエンなどのような疎水性溶媒により抽出されたPCB類を含む疎水性溶液も挙げられる。 固形試料や水質試料から疎水性溶媒によりPCB類を抽出するには、例えば固形試料または水質試料を上記のような疎水性溶媒と接触させればよい。 固形試料または水質試料から疎水性溶媒によりPCB類を抽出することにより得られた疎水性溶媒抽出液は、そのまま疎水性試料として用いてもよいが、通常は、PCB類と共に抽出される他の共存物質を分離するために、n−ヘキサン、トルエンなどの疎水性溶媒抽出液からPCB類を極性有機溶媒でさらに抽出し、得られた極性有機溶媒抽出液からPCB類を疎水性溶媒に転溶させる。かかる極性有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、n−メチルピロリドンなどが挙げられる。極性有機溶媒抽出液から疎水性溶媒に転溶させるには、例えば極性有機溶媒抽出液に水を加えたのち、疎水性溶媒により抽出すればよい。 本発明方法を用いる発煙硫酸含浸担体は、通常担体としてのシリカゲルに発煙硫酸が含浸されてなるものである。 シリカゲルとしては、BET比表面積が250m2/g〜450m2/g、好ましくは250m2/g〜350m2/gである。細孔容積が1.4cm3/g〜2.6cm3/g、好ましくは1.6cm3/g〜2.6cm3/gのものが用いられる。 発煙硫酸は、濃硫酸に三酸化硫黄〔SO3〕ガスを吸収させたものであり、その遊離SO3濃度は、JIS K−1321−1994やJIS K8741 1996に従って測定される。一般に市販されている発煙硫酸の遊離SO3濃度は10質量%〜60質量%であるので、上記で規定される遊離SO3濃度の発煙硫酸は、例えば市販の発煙硫酸に、濃硫酸、すなわちH2SO4濃度98質量%以上の硫酸を加えて希釈する方法、市販の発煙硫酸または濃硫酸に三酸化硫黄ガスを吹き込んで吸収させる方法などにより調製することができる。 発煙硫酸の遊離SO3濃度は、妨害物質を十分に除去しうる点で、5質量%以上、好ましくは15質量%以上であり、PCB類を精度よく定量できる点で、40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。 かかる発煙硫酸のシリカゲルに対する含浸量は、シリカゲルに含浸されて保持されうる量であればよく、通常は、シリカゲルに対して0.5質量倍〜5質量倍であるが、含浸された発煙硫酸がほとんど滲み出さず、また粒子同士が互いに粘着せず、粉末状で流動性の発煙硫酸シリカゲルとなって取り扱いが容易である点で、2.5質量倍以下であることが好ましい。 発煙硫酸含浸シリカゲルのより具体的な使用形態としては、あらかじめ前記発煙硫酸含浸シリカゲルを携帯密封容器に収容しておき、使用時にこれを開封し、該発煙硫酸含浸シリカゲルをカラムに充填し、当該カラムを通過させることにより、該疎水性試料を処理する形態が挙げられる。かかる使用形態によれば、発煙硫酸含浸シリカゲルが携帯密封容器に収容されているために、分析対象となる疎水性試料の採取現場においても容易に前処理し得ることから好ましい。 発煙硫酸含浸シリカゲルが収容される携帯密封容器としては、発煙硫酸に対して不活性であり、当該シリカゲルを密封し得るものが挙げられる。 かかる容器としては、その内面がガラスライニング、フッ素樹脂加工になどによりコーティングされているシリンダー型の密封容器、アンプルなどが挙げられ、入手が容易であり、また軽量で取り扱いが容易である点で、アンプルが好ましい。 アンプルとしては、通常は内容物の確認が容易で、開封が容易である点で、ガラス製のものが用いられる。 密封アンプルは、上記の発煙硫酸含浸シリカゲルがアンプルに密封されてなるものであり、例えば投入口が開いたアンプルに、前記シリカゲルおよび発煙硫酸を投入し、投入口を封止することにより調製することができる。前記シリカゲルおよび発煙硫酸は、あらかじめ混合されていてもよいし、アンプルに投入されたのち、アンプルを振とうすることにより撹拌して混合してもよい。 発煙硫酸含浸シリカゲルの使用に際しては、通常、発煙硫酸含浸シリカゲル密封アンプルを開封し、密封されていた発煙硫酸含浸担体をカラムに充填し用いる。密封されていた発煙硫酸含浸担体をカラムに充填するには、通常の方法でアンプルを開封したのち、内部の発煙硫酸含浸担体をカラムに移し替えればよい。 前記のシリカゲルに、このシリカゲルに対して2.5質量倍以下の上述の発煙硫酸が含浸されてなる発煙硫酸含浸シリカゲルは、流動性の粉末状であるので、アンプルからカラムへの移し替えが容易である点で、好ましい。 シリカゲルへの発煙硫酸の担持(含浸)量は通常製造時に原料としてシリカゲルに接触せしめる仕込み発煙硫酸量と略等しいとして管理するが、発煙硫酸は極めて反応性が高く、大気条件で揮発性に富むことより、実際発煙硫酸含浸シリカゲルとしてシリカゲル担体上に含浸している発煙硫酸を構成する三酸化硫黄と硫酸の量は把握し難い。 本発明方法は、上記方法により製造された発煙硫酸含浸シリカゲルに含浸された発煙硫酸から、以下の手順で分析することにより、硫酸と三酸化硫黄の個々の含量を算出可能としたものである。(1)発煙硫酸含浸担体を水に浸漬し担体中の三酸化硫黄を水と反応させ硫酸とし、担体中に予め存在する硫酸と、三酸化硫黄由来の硫酸との合量を測定するステップ(2)発煙硫酸含浸担体を、硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒中に浸漬せしめ、三酸化硫黄と溶媒とが反応後の溶媒中の硫酸含量を測定するステップ(3)(1)で得られた硫酸量と(2)で得られた硫酸量より、発煙硫酸含浸担体中に含有される硫酸と三酸化硫黄の含量を算出するステップ本発明方法により、シリカゲル担体に実際に含浸された発煙硫酸の量把握、すなわち、三酸化硫黄と硫酸の正確な担持量の把握、更には上記製品の生産を外部に委託する場合の製品検査等に本発明は適用可能である。尚、本発明において発煙硫酸含浸担体中に含浸された硫酸と三酸化硫黄なる表現は、発煙硫酸含浸担体が有する硫酸と三酸化硫黄と同じ意味で用いている。 本発明方法の実施に際し、特に制限されないが、例えば、上記(1)のステップにおいては、容器中に水10mLを入れ、これに試料である発煙硫酸含浸シリカゲル2gを入れて試料中の三酸化硫黄を水と反応させ硫酸とし、最初から含浸されている硫酸との合量を、従来公知の苛性ソーダー水溶液等を用いた中和滴定法により測定する(滴定値A)。処理条件は特に制限されないが、試料が揮発性を有するので密閉機能を有する容器を用い、大気との接触が少ない条件で実施すればよい。 次いで密閉機能を有する容器に「硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒」10mLを入れ、次いで、これに上記で用いたと同じ試料である発煙硫酸シリカゲル2gを浸漬し、該担体に含浸された発煙硫酸を構成する硫酸と三酸化硫黄のうち、三酸化硫黄を該溶媒と反応せしめる(2)。このような溶媒としてはプロピルベンゼン、ドデシルベンゼン、等の芳香族炭化水素が挙げられるが、就中、取り扱いの容易性、コスト等の理由からドデシルベンゼンの使用が推奨される。(2)のステップにおける試料と溶媒の接触(反応)温度や時間は、試料中に存在する三酸化硫黄の略全量が溶媒と反応し硫酸とは異なる反応生成物を形成する条件が選定され、これらは用いる溶媒の種類等により一義的ではないが、通常、反応温度は溶媒の沸点以下、時間は3時間以内、通常1〜2時間の範囲であればよく、最適な反応温度及び時間は簡単な予備実験により容易に決定し得る。ドデシルベンゼンを溶媒として用いる場合には通常、温度約70℃〜90℃、時間約90分〜120分の範囲である。反応後の溶媒は、溶媒中の硫酸量を従来公知の苛性ソーダー水溶液等を用いた中和滴定法により測定する(滴定値B)。 このような方法により測定した滴定値A(試料中の硫酸の合量)から滴定値B(試料中の三酸化硫黄と溶媒の反応生成物を除く硫酸量)を引くことにより、シリカゲルに含浸されている三酸化硫黄の含量がわかるので、シリカゲルに含浸される硫酸と三酸化硫黄の量を個別に知ることができる(ステップ(3))。 ステップ(2)で使用する溶媒は、試料中に存在する三酸化硫黄の略全量と反応し、その反応生成物が従来公知の硫酸の中和滴定操作により、硫酸としてカウントされない物質を呈するものであればよい。溶媒がかかる特性を有するものであるか否かは、該溶媒に発煙硫酸濃度の明確な標準試料(市販の試薬等)を接触・反応せしめ、反応後の溶媒中の硫酸濃度を測定し、別途上記(1)の方法で標準試料の全硫酸量を測定し、単純に(1)の方法で得た全硫酸量より、(2)の方法で得られた硫酸量を引き算することにより三酸化硫黄の量を求めることができるので、その値と標準試料が有する三酸化硫黄の値を比較することにより、試験溶媒が本発明で規定する「硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒」に該当するものであるか否かがわかる。実際に適用する溶媒の選定においては、上記要件に、取り扱いの容易性、安全性、反応時間、コスト等の条件を加味し選択される。 かかるシリカゲル担体に実際に担持された発煙硫酸量を把握することにより、使用原材料のグレードやロット変更時などに、本発明方法で得た分析値を製造条件にフィードバックして担持量を調整したり、密封アンプルを開封しカラムに発煙硫酸含浸シリカゲルを充填させる際に発煙硫酸を加え所望とする担持量に調整する等の、製造方法を提供することもできる。 疎水性試料と発煙硫酸含浸シリカゲルとの接触は、通常、疎水性試料を、カラムに充填された発煙硫酸含浸シリカゲルと接触させることにより行われ、代表的には、疎水性試料を、発煙硫酸含浸シリカゲルが充填されたカラムを通過させることにより行われる。 疎水性試料を発煙硫酸含浸シリカゲルと接触させる際の接触温度は、通常0℃〜50℃程度である。接触時間は、通常1分〜20分程度であり、精度が優れ効率的に測定できる点で、3分〜10分が好ましい。 疎水性試料の粘度によっては、そのままでは発煙硫酸含浸シリカゲルカラムを通過させることが困難な場合もあるが、このような場合には、適宜、疎水性試料を、例えばn−ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの疎水性溶媒で希釈することにより粘度を下げて用いてもよいし、発煙硫酸含浸シリカゲルカラムに疎水性試料を戴置したのち、さらに疎水性溶媒を流下させることにより希釈させながら通過させてもよい。 疎水性溶媒試料は、あらかじめ脱水されていることが好ましい。脱水させるには、例えば脱水剤と接触させればよく、発煙硫酸含浸シリカゲルカラムとして、その上流側にさらに脱水剤を充填した発煙硫酸含浸シリカゲル層と脱水剤層との2層構成のカラムを用い、疎水性試料が、この脱水剤層を通過することにより脱水されてから、発煙硫酸含浸シリカゲル層を通過するように構成してもよいし、発煙硫酸含浸シリカゲルカラムの上流側に脱水剤を充填した脱水剤カラムを接続して、疎水性試料が、脱水剤カラムを通過したのちに、発煙硫酸含浸シリカゲルカラムを通過するように構成してもよい。脱水剤として通常は、無水硫酸ナトリウムなどのような発煙硫酸および濃硫酸に対して不活性な脱水剤が用いられる。 このようにして発煙硫酸含浸シリカゲルと接触したのちの疎水性試料を、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフ処理することにより、妨害物質を除去することができる。シリカゲルカラムクロマトグラフ処理には、通常、カラムにシリカゲルが充填されたシリカゲルカラムが用いられ、通常は、発煙硫酸含浸シリカゲルカラムの下流側に接続されて用いられる。 このような処理操作を施したのちの疎水性試料は、必要に応じて、例えば溶媒留去などの方法により濃縮されてもよい。また、通常は、該疎水性試料からPCB類をジメチルスルホキシド、アセトンなどの極性有機溶媒に転溶させる。極性有機溶媒に転溶させる方法としては、例えば疎水性試料を溶媒留去し、残渣に上記の極性有機溶媒に加えて溶解させる方法が挙げられるが、疎水性試料に残存する他の共存物質のうち、極性有機溶媒に不溶のものをPCB類と分離し、除去できることから、疎水性試料に対して不溶性の極性有機溶媒を加え、疎水性溶媒層と極性有機溶媒層との2層に層分離させたのち、分液により親水性溶媒層を得る方法が好ましく用いられ、分液前に溶媒留去などの方法により疎水性試料を濃縮してから分液してもよい。 なお、上記の処理操作の後、疎水性試料に残存する他の共存物質は、必要に応じて更に、通常のカラムクロマトグラフ法などの精製処理を付することにより、除去することができる。 例えば上記他の共存物質のうち親油性のものは、疎水性試料に含まれるPCB類を極性有機溶媒で抽出し、得られた極性溶媒抽出液を、親油性吸着剤を充填剤とするカラムクロマトグラフ処理することにより、PCB類と分離することができる。極性有機溶媒としては、上記したと同様のものが挙げられる。親油性吸着剤とは、少なくとも表面が油性の物質と親和性のある材料で構成された固形の吸着剤であって、通常は粒状のものが用いられる。かかる親油性吸着剤としては、例えばカラムクロマトグラフ用充填剤、固相抽出用充填剤、逆相液体クロマトグラフィーのカラム充填剤として広く用いられているものが挙げられ、例えばジーエルサイエンス社からカラムクロマト充填剤「C18」、米国ウォーターズ(Waters)社から「SEP−PAK−C18」、「SEP−PAK−tC18」、「SEP−PAK−Vac tC18」などの商品名で市販されているものを用いることができる。 カラムクロマトグラフ処理は、例えば親油性吸着剤を充填したカラムを用い、極性有機溶媒抽出液を流下液として用いることにより行われる。流下後の極性溶媒抽出液は、必要に応じて濃縮してもよい。 親油性吸着剤によりカラムクロマトグラフ処理したのちの極性有機溶媒抽出液に、他の共存物質として親水性のものが含まれる場合には、例えば極性有機溶媒抽出液に含まれるPCB類を疎水性溶媒に転溶させた転溶液を、多層シリカゲルカラムクロマトグラフ処理することにより、PCB類から分離することができる。 極性有機溶媒抽出液に含まれるPCB類を疎水性溶媒に転溶させるには、例えば極性有機溶媒抽出液に水を加えたのち、疎水性溶媒で抽出すればよい。多層シリカゲルカラムクロマトグラフ処理は、例えばカラムに無処理のシリカゲル、水酸化カリウム被覆シリカゲル、硫酸被覆シリカゲルなどのシリカゲル充填剤が充填された多層構成の多層シリカゲルカラムに転溶液を通過させることにより行われる。通過後の転溶液は、溶媒留去などの方法により濃縮してもよい。 かかる前処理を施した後、PCB類と抗体との抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ工程により、PCB類を分析する。 このようなPCB類と抗体との抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ工程は特に制限されるものではなく、適宜公知の方法を採用し得るが、例えば(1)前処理工程で得られるPCB類に、該PCB類に対する1次抗体を過剰量加えて混合することにより、当該1次抗体を抗原抗体反応により該PCB類と結合させたのち、(2)該1次抗体との抗原抗体反応能力を有し、蛍光物質で標識化された標識化2次抗体を過剰量加えて混合し、PCB類の類似化合物であるハプテン抗原が担体に固定化された抗原固定化担体と接触させることにより、上記でPCB類と結合しなかった過剰分の1次抗体を抗原固定化担体のハプテン抗原に結合させると共に、この結合した1次抗体に標識化2次抗体を結合させ、次いで、(3)このようにして1次抗体を介して抗原固定化担体に担持され標識化2次抗体の担持量を求めればよい。 この方法によれば、PCB類の含有量が多い場合には、抗原固定化担体への標識化2次抗体の担持量が少なくなり、PCB類の含有量が少ない場合には、標識化2次抗体の担持量が多くなるので、抗原固定化担体への標識化2次抗体の担持量を求めることにより、PCB類の含有量を求めることができる。標識化2次抗体の担持量は、担持後の抗原固定化担体に紫外線などを照射して蛍光強度を測定する通常の蛍光分析法により求めることができる。 以下、実施例により本発明方法をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。 なお、実施例で用いたシリカゲルのBET比表面積は、MICROMETRICS社製「流動式比表面積自動測定装置 Flow Sorb 2300」を用いて一点法により測定した。 細孔容積は、MICROMETRICS社製社製「自動ポロシメーター オートポアIII 9420」を用いて細孔半径0.001μm〜100μmの範囲の細孔容積として求めた。実施例1[発煙硫酸含浸シリカゲルの調製] BET比表面積252m2/g、細孔容積2.58cm2/gのシリカゲルを150℃で12時間乾燥させた。内容量100mLのバイアル瓶に、このシリカゲル10gを電子天秤で秤量して入れ、遊離SO3濃度25質量%の発煙硫酸〔和光純薬工業社製、試薬一級〕20gを追加したのち素早く密栓し、約90分間振とうして、内容物を十分に混合した。内容物は、互いに固着していない流動性の粉末状であった。 このようにして調製して得た発煙硫酸含浸シリカゲル2gを、一端を溶封した内径5mm、長さ146mmのガラス管に投入し、開口部を溶封して発煙硫酸含浸シリカゲル密封アンプルを作製した。[硫酸の測定 ステップ(1)] 100mLメスフラスコに純水10mLを入れ、メスフラスコ重量を測定した後、上記で得た発煙硫酸含浸シリカゲル密封アンプルの一つをアンプルカッターで切断、開封し、発煙硫酸含浸シリカゲルの全量を素早く先の純水の入った100mLメスフラスコに移し入れ密栓した。密栓後メスフラスコ重量を測定し、緩やかに手で振り、純水に発煙硫酸含浸シリカゲルを分散させ、室温で60分間放置した後に、メスフラスコの標線までアセトン〔和光純薬工業社製,残留農薬・PCB試験用濃縮300〕を添加し、手で振り十分混合した。このようにして得た硫酸溶出液より10mLの硫酸溶出液を200mL容三角フラスコ(あらかじめ純水190mLを入れたもの)に入れ、指示薬としてフェノールフタレイン溶液(5g/L)3滴、滴定液として0.1モル苛性ソーダー水溶液を用い、中和滴定法により硫酸濃度を測定した。その結果を表1に示す。[硫酸の測定 ステップ(2)] 100mLメスフラスコにドデシルベンゼン〔関東化学株式会社製・Cat.No.10780-02〕10mLを入れ、メスフラスコ重量を測定した後、上記で得た発煙硫酸含浸シリカゲル密封アンプルの一つをアンプルカッターで切断、開封し、発煙硫酸含浸シリカゲルの全量を素早く先のドデシルベンゼンの入った100mLメスフラスコに移し入れ密栓した。密栓後メスフラスコ重量を測定し、その後緩やかに手で振り容器中のドデシルベンゼンに発煙硫酸含浸シリカゲルを分散させた。次いで、ウォーターバス中70℃の温度で、時々緩やかに振り混ぜながらメスフラスコ中のドデシルベンゼンと発煙硫酸を90分間反応させた後、メスフラスコの標線までアセトン〔和光純薬工業社製,残留農薬・PCB試験用濃縮300〕を添加し、手で振り十分混合した。このようにして得た上記反応溶液より10mLの反応溶液を200mL容三角フラスコ(あらかじめ純水190mLを入れたもの)に入れ、指示薬としてフェノールフタレイン溶液(5g/L)3滴、滴定液として0.1モル苛性ソーダー水溶液を用い、中和滴定法により硫酸濃度を測定した。その結果を表1に示す。[三酸化硫黄量の算出 ステップ(3)] ステップ(1)で得た硫酸量よりステップ(2)で得た硫酸量を引き、得られた硫酸量をSO3換算した。その結果を表1に示す。 実施例2実施例1の方法において、ステップ(1)における発煙硫酸含浸シリカゲルと水との接触条件を氷冷下で2時間に変更し、ステップ(2)の溶媒としてプロピルベンゼン〔和光純薬工業社製〕を用い反応条件として温度50℃で1時間反応させた以外は、全て実施例1と同様の実験設備、実験条件を用い、発煙硫酸含浸シリカゲル中に含浸された硫酸と三酸化硫黄の量を測定した。その結果を表1に示す。参考例1実施例1において試料として発煙硫酸含浸シリカゲルに代え、市販の発煙硫酸〔和光純薬工業社製・試薬一級、JIS K1321 1994 測定法での三酸化硫黄の値:24.3%〕を用いた以下の実験を行った。[硫酸の測定 ステップ(1)] 100mLメスフラスコに純水10mLを入れ、該メスフラスコ重量を測定した後、上記市販の発煙硫酸1.25gをこの純水の入った100mLメスフラスコに素早く移し入れ密栓した。密栓後メスフラスコ重量を測定し、緩やかに手で振り、室温で6時間放置した後に、アセトン〔和光純薬工業社製,残留農薬・PCB試験用濃縮300〕を全容量が100mLになるように添加し、手で振り十分混合した。このようにして得た上記反応溶液より10mLの反応溶液を200mL容三角フラスコ(あらかじめ純水100mLを入れたもの)に入れ、指示薬としてフェノールフタレイン溶液(5g/L)3滴、滴定液として0.1モル苛性ソーダー水溶液を用い、中和滴定法により、硫酸濃度を測定した。その結果を表1に示す。[硫酸の測定 ステップ(2)] 100mLメスフラスコにドデシルベンゼン〔関東化学株式会社製・Cat.No.10780-02〕10mLを入れ、該メスフラスコ重量を測定した後、上記市販の発煙硫酸1.43gを先のドデシルベンゼンの入った100mLメスフラスコに素早く移し入れ密栓した。密栓後メスフラスコ重量を測定し、次いで緩やかに手で振り、ドデシルベンゼンに発煙硫酸を分散させ、ウォーターバス中で70℃の温度で、時々緩やかに振り混ぜながら120分間反応させた後、アセトン〔和光純薬工業社製,残留農薬・PCB試験用濃縮300〕を全容量が100mLになるように添加し、手で振り十分混合した。このようにして得た反応液より10mLの反応液を200mL容三角フラスコ(あらかじめ純水100mLを入れたもの)に入れ、指示薬としてフェノールフタレイン溶液(5g/L)3滴、滴定液として0.1モル苛性ソーダー水溶液を用い、中和滴定法により、硫酸濃度を測定した。その結果を表1に示す。[三酸化硫黄量の算出 ステップ(3)] ステップ(1)で得た硫酸量よりステップ(2)で得た硫酸量を引き、得られた硫酸量をSO3換算した。その結果を表1に示す。実施例1、実施例2及び参考例1の結果からも明らかな如く、本発明方法により得られた分析値は、実施例1及び2で用いた試料が有するSO3の理論値である16.5%近傍にあることから、更には、JIS法で測定可能な試薬を用いた本発明方法による結果と、JIS法での分析結果が近似であることから、本発明の分析方法はシリカゲル担体共存下においても発煙硫酸の含浸量を知る手段として有用な分析方法であることがわかる。表1 本発明によれば、シリカゲル等の担体共存下であっても、担体に含浸されている三酸化硫黄および硫酸量を個別に正確に定量できるので、PCB類を含有する疎水性試料よりガスクロマトグラフやイムノアッセイを用いポリ塩化ビフェニル類を定量する方法において、試料の前処理として用いられる発煙硫酸含浸担体の性能評価が正確にできることより廃棄物処理等の産業分野における利用可能性は極めて大である。 以下の手順で分析することを特徴とする発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法。(1)発煙硫酸含浸担体を水に浸漬し担体中の三酸化硫黄を水と反応させ硫酸とし、担体中に予め存在する硫酸と、三酸化硫黄由来の硫酸との合量を測定するステップ(2)発煙硫酸含浸担体を、硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒中に浸漬せしめ、三酸化硫黄と溶媒とが反応後の溶媒中の硫酸含量を測定するステップ(3)(1)で得られた硫酸量と(2)で得られた硫酸量より、発煙硫酸含浸担体中に含有される硫酸と三酸化硫黄の含量を算出するステップ 硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒が、芳香族炭化水素であることを特徴とする請求項1記載の発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法。硫酸とは反応せず三酸化硫黄のみと反応し硫酸とは異なる反応物を形成する溶媒がドデシルベンゼンであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析方法。 請求項1〜3のいずれか1項記載の分析方法で得た発煙硫酸含浸担体中の硫酸と三酸化硫黄の分析結果に基づき、担体に担持させる三酸化硫黄量を調整することを特徴とする発煙硫酸含浸担体の製造方法。 【課題】発煙硫酸含浸担体に含浸されている硫酸および三酸化硫黄の量を個々に測定し得る分析方法を提供する。【解決手段】試料としての発煙硫酸含浸担体を水に浸漬し担体中の三酸化硫黄を水と反応させ、担体中に予め存在する硫酸と、三酸化硫黄由来の硫酸との合量を測定し(測定値A)、次いで先に用いたものと同一試料を、ドデシルベンゼン溶液中に浸漬せしめ、該溶液と三酸化硫黄を反応せしめた後、その溶液中の硫酸含量を測定し(測定値B)、この測定結果(測定値A−測定値B)から担体に含浸されている硫酸および三酸化硫黄の量を算出する。【選択図】なし