タイトル: | 公開特許公報(A)_水素化エステルの製造方法 |
出願番号: | 2009013465 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 67/303,B01J 23/755,B01J 23/44,B01J 27/236,C07C 69/16,C07B 61/00 |
宇都宮 賢 淺川 香織 服部 英次 山下 亮 西村 誠二郎 JP 2010168321 公開特許公報(A) 20100805 2009013465 20090123 水素化エステルの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 宇都宮 賢 淺川 香織 服部 英次 山下 亮 西村 誠二郎 C07C 67/303 20060101AFI20100709BHJP B01J 23/755 20060101ALI20100709BHJP B01J 23/44 20060101ALI20100709BHJP B01J 27/236 20060101ALI20100709BHJP C07C 69/16 20060101ALI20100709BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100709BHJP JPC07C67/303B01J23/74 321ZB01J23/44 ZB01J27/236 ZC07C69/16C07B61/00 300 7 OL 9 4G169 4H006 4H039 4G169AA03 4G169AA08 4G169AA09 4G169BA08B 4G169BA09B 4G169BA47A 4G169BA47C 4G169BB16B 4G169BC01A 4G169BC01C 4G169BC02B 4G169BC29A 4G169BC65A 4G169BC68B 4G169BC69A 4G169BC72B 4G169CB02 4G169CB62 4G169CB75 4G169DA05 4G169FA01 4G169FB27 4G169FC02 4G169FC04 4G169FC09 4H006AA02 4H006AC48 4H006BA21 4H006BA25 4H006BA55 4H006BA81 4H006BA85 4H006KA30 4H039CA66 4H039CB10 本発明は、水素化エステルの製造方法に関し、より詳細には、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを、固体触媒を用いて水素化を行い、1,4−ジアセトキシブタンを製造する方法に関する。 1,4−ジアセトキシブタンは1,4−ブタンジオール製造における重要中間体である。1,4−ブタンジオールは様々なポリマーやテトラヒドロフランなどの原料として有用な物質である。これまでに多くの製造法が提案され、例えば、パラジウム固体触媒、又はロジウム固体触媒を用いたブタジエンのジアセトキシ化反応により、不飽和エステルの一種である1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの製造する方法が報告されている(特許文献1及び特許文献2)。1,4−ジアセトキシ−2−ブテンは触媒の存在下で水素化することにより、対応する水素化エステルである1,4−ジアセトキシブタンを得ることができ、得られた1,4−ジアセトキシブタンを加水分解することにより、1,4−ブタンジオールへと変換できる。1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを水素化して、1,4−ジアセトキシブタンを製造する際に、副生物として酢酸ブチルなどが含まれるため、加水分解によって得られる1,4−ブタンジオールの収率が低下するという問題があった。 このため、例えば、酢酸のアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属の存在下に1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの水素化を行うことで、酢酸ブチルなどの副生物の生成量を低減できることが報告されている(特許文献3)。しかしながら、この方法だと、反応後液に金属を常に含有することから、コストの増大だけでなく、水素化の後工程での金属類残渣を原因とした閉塞、プラント設備の汚れが発生し、工業的に有利な方法ではなかった。特開平8−3110号公報特開平11−71326号公報米国特許4544767号 明細書 本発明の課題は、反応液中に金属を含有することなく、酢酸ブチルなどの副生物の生成量を抑制して、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの水素化を行い、収率を向上し、且つ閉塞や汚れ懸念の無い、より効率の高い1,4−ジアセトキシブタンの製造方法を提供することである。 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ブタジエンのジアセトキシ化反応では、得られる1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを含む液を水素化する際、事前に塩基溶液と接触させた触媒を用いて反応を実施すれば、酢酸ブチル副生量を削減し、1,4−ジアセトキシブタン選択率を向上することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明の要旨は下記(1)〜(7)に存する。(1)遷移金属を含む触媒の存在下、不飽和エステルを水素化して、対応する水素化エステルを製造するにあたり、該触媒が、予め無機塩基と接触させたものであることを特徴とする水素化エステルの製造方法。(2) 前記触媒を無機塩基と接触させた後に、水と接触させることを特徴とする(1)に記載の水素化エステルの製造方法。(3) 前記触媒と接触させた水のpHが6.0〜10.0であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の水素化エステルの製造方法。(4) 前記無機塩基が、アルカリ金属を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。(5)前記無機塩基が当該無機塩基を含む溶液であり、そのpHが7.5以上12.0以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。(6) 前記遷移金属が、第8族〜第10族の遷移金属であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。(7)前記不飽和エステルが、ジアセトキシ不飽和エステルであり、前記対応する水素化エステルが、ジアセトキシ飽和エステルであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。 本発明により、ブタジエンのジアセトキシ化反応により得られる1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを含む液を水素化し、1,4−ジアセトキシブタンを1,4−ブタンジオール製造の中間体として製造する方法において、酢酸ブチル副生量が少なく、高い収率で1,4−ジアセトキシブタンを得る工業的に有利な1,4−ジアセトキシブタンの製造方法を提供することができる。 以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。以下、その詳細について説明する。 本発明は、遷移金属を含む触媒の存在下、不飽和エステルを水素化して、対応する水素化エステルを製造するにあたり、該触媒が、予め無機塩基と接触させたものを用いる、或いは、水素化反応を行う前に、該触媒と無機塩基を接触させることで、金属残渣による設備の閉塞や汚れを低減でき、しかも、酢酸ブチルなどの副生物の生成量を抑制し、高い収率で生成物の水素化エステルを得ることができる。この理由は必ずしも明確ではないが、次のように推測できる。即ち、水素化反応で使用する触媒の電子状態が無機塩基との接触により改善される、あるいは予め無機塩基と触媒を接触させておくことで、触媒表面の酸点が低減される、あるいはその両方の要因によるものと考えられる。 本発明において、不飽和エステルは、化合物中の隣接する炭素原子間で2重結合、又は3重結合を有するエステル類であればよく、化合物中の隣接する炭素原子間で2重結合、又は3重結合を有するエステル類であれば、特に限定されない。好ましくは、隣接する炭素原子間で2重結合を有するエステル類であり、特に好ましくは、ジアセトキシ不飽和エステルである。具体的には、1−アセトキシ−2−プロペン、1−アセトキシ−1−プロペン、1−アセトキシ−1−ブテン、1−アセトキシ−2−ブテン、1−アセトキシ−3−ブテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1−アセトキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−アセトキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アセトキシ−1−ヒドロキシ−1−ブテンなどのジアセトキシ不飽和エステルが挙げられ、トランス体、シス体、あるいはその混合物のいずれも使用することができる。このうち、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1−アセトキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−アセトキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アセトキシ−1−ヒドロキシ−1−ブテンが好ましく、特に1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1−アセトキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテンが好ましい。 本発明の不飽和エステルは、ヒドロキシ基、アルコキシル基、アリーロキシ基、アリール基、エーテル基、ホルミル基、アミノ基、アミド基、カルボニル基などの置換基を有していてもよい。なお、置換基は通常、分子量が300程度以下のものを用いる。 本発明により製造される水素化エステルとしては、例えば、アセトキシプロパン、アセトキシブタン、1,4−ジアセトキシブタン、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタン、1,2−ジアセトキシブタン、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン、2−アセトキシ−1−ヒドロキシブタンなどのジアセトキシ飽和エステルが挙げられ、好ましくは、1,4−ジアセトキシブタン、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタンである。 本発明の触媒としては、不飽和エステルを水素化して水素化エステルを生成できるものであれば、特に限定されないが、通常は、遷移金属を含む触媒が用いられる。遷移金属の原料としては、遷移金属そのもの、又は遷移金属化合物のどちらでも使用可能である。遷移金属としては、第8族〜第10族の遷移金属が好ましい。具体的には、パラジウム、ニッケル、プラチナ、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、コバルトが挙げられ、中でも、水素化活性という理由から、好ましくは、パラジウム、ニッケル、プラチナ、ロジウムであり、更に好ましくは、パラジウム、ニッケルである。遷移金属は一種類で用いても、二種以上を併用してもよい。 また、これらの遷移金属は、そのまま用いても、または担体に担持させた状態で用いてもよい。担体に担持させる場合には、例えば、シリカ、アルミナ、活性炭、珪藻土等を用いることができる。担体への遷移金属の担持量としては、担体の重量に対する遷移金属自体の重量として、0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜60重量%、更に好ましくは0.2〜50重量%の範囲である。この重量が大きいほど、活性が高く反応器容量あるいは触媒使用量の低減という利点があり、低いほど金属使用量を削減して単位重量あたりの触媒を安価に製造できるという利点がある。 本発明における水素化反応は、通常、液相中で反応をおこなう。液相状態としては均一系であっても多相分離していてもスラリー状であっても構わない。 本発明で用いる無機塩基は、塩基性を示す無機物であれば特に限定はされないが、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物であり、より好ましくはアルカリ金属である。更に好ましくはナトリウムである。無機塩基として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いる場合は、触媒と接触させる形態としては、金属そのものであっても、金属化合物であってもよい。金属化合物としては、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩、金属ホウサン塩、金属リン酸塩などが使用可能であり、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどであり、特に好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムである。なお、これらは1種類でも、2種以上を併用してもよい。 また、本発明における無機塩基は、無機塩基含む溶液として触媒と接触させてもよい。この溶液の溶媒としては、水、アルコール、エーテル類、エステル類、有機酸類など、無機塩基を溶解することができる溶媒であれば、特に限定されるものではないが、中でも、水、アルコールが好ましく、更に好ましくは水である。無機塩基を含む溶液中の無機塩基濃度は0.0001〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%であり、更に好ましくは1〜10重量%である。この濃度が低すぎると、その効果発現のために多量の無機塩基溶液の使用が必要となり、濃度が高すぎた場合には、取り扱い時の危険性の増大、あるいはコスト増加となってしまう。また、無機塩基を含む溶液のpHとしては、通常は7.0以上14.0以下であるが、好ましくは、7.5以上12.0以下であり、更に好ましくは、8.0以上10.0以下である。 本発明において、触媒を無機塩基と接触させる形式としては、回分、半回分、連続方式のいずれの形式でも可能であるが、好ましくは回分、または連続方式である。連続方式の中でも、特に好ましくは、固定床反応器形式での接触である。 接触時の温度は特に限定されるものではないが、無機塩基溶液の融点以上、沸点未満で実施することが好ましく、より好ましくは−20〜200℃であり、特に好ましくは10〜100℃の範囲である。また、触媒と無機塩基とを接触させる時間は、通常、10秒〜72時間であり、好ましくは1分〜24時間、更に好ましくは10分〜4時間である。この時間が長くなるほど、単位時間当たりの触媒処理量である生産性は低下するが無機塩基処理の効果は大きくなる傾向にあり、短くなるほど、生産性は向上するが、無機塩基の効果は低減する傾向にある。 また、触媒と無機塩基とを接触させた後に、更に水と接触させることが好ましい。これにより、触媒に付着した無機塩基類を除去し、プラント系内での無機塩基金属に起因する閉塞、汚れなど更に抑制することができる。 触媒と水とを接触させる方法としては、触媒と接触させた後の水のpHが所望のpHとなるまで水と接触させる方法があり、例えば、ある量の水と触媒とを接触させ、何度か新しい水を交換しつつ触媒との接触を繰り返す方法(回分式)、又は触媒に対して連続的に新しい水を供給して触媒と接触ないしは通液させる方法(連続式)などが挙げられる。 また、その際の、触媒と接触させた後の水のpH値としては、5.0〜10.0であり、好ましくは、6.0〜9.0であり、更に好ましくは、6.0〜8.0である。この値が大きくなるほど、生産性は向上するが、塩基が触媒に残存していることを示し、水素化反応で使用した場合に無機塩基由来の金属が流出し、プロセスの汚れ要因となる傾向にあり、一方で小さくなるほど、触媒中に無駄な無機塩基金属が残存していないことを示すが、より多くの排水を排出して処理コストが増大するとなる傾向となる。また、このpHの値の測定は公知の方法で測定可能であるが、通常は市販のpH計あるいはpH試験紙の方法が用いられる。 反応温度は好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃、更に好ましくは40〜120℃の範囲である。この温度が高すぎると、触媒劣化が促進されてしまう。 水素化における水素圧力はゲージ圧力で0.1〜100MPaの範囲で問題なく、好ましくは0.5〜10MPa、更に好ましくは1〜6MPaの範囲である。この圧力が低すぎると、反応速度が遅く生産性が低下する。圧力が高すぎた場合には反応器材質の多量使用、コンプレッサー負荷が増大し、建設費が大幅に増加してしまう。 水素化反応の反応形式は固定床、トリクルベッド、懸濁床、多管式など種々の一般的な水素化用反応器の全てが使用可能であるが、好ましくは固定床反応器ならびにトリクルベッド反応器のいずれかである。この反応器は一機、あるいは複数機使用することが可能である。 なお、本発明における不飽和エステルが1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの場合、例えば、酢酸、および酸素の存在下に、ブタジエンのジアセトキシ化反応を行い、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを製造することができる。最も一般的には、パラジウム系触媒の存在下、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させてジアセトキシ不飽和エステルである1,4−ジアセトキシ−2−ブテン及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを得ることができる。また、それらジアセトキシ不飽和エステルの加水分解物である1−ヒドロキシ−4−アセトキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン、4−ヒドロキシ−3−アセトキシ−1−ブテンなども併せて生成する。ブタジエンのジアセトキシ化反応に用いる触媒としては、ブタジエンを1,4−ジアセトキシ−2−ブテンに変換する能力を有する触媒であれば特に限定されないが、好ましくは第8族〜第10族の遷移金属を含有する触媒である。第8族〜第10族の遷移金属の中でも、特に好ましくはパラジウムである。第8族〜第10族の遷移金属を含有する触媒は、遷移金属またはその塩からなり、助触媒としてビスマス、セレン、アンチモン、テルル、銅などの金属またはその塩の使用が好ましく、特に好ましくはテルルである。テルルを助触媒として用いた場合、遷移金属−テルル合金を活性種とする触媒が好ましいが、この遷移金属の中でもパラジウムを用いることが更に好ましい。パラジウムとテルルの組み合わせが好ましい理由は、触媒活性の高さ、及びジアセトキシアリル化合物選択率の高さである。第8族〜第10族の遷移金属を含有する触媒は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、活性炭、グラファイトなどの担体に担持させて使用することが好ましく、特に好ましくは強度的に優れているためにシリカである。担体の物性として多孔質が好ましく、特にその平均細孔直径が1nm〜100nmである多孔質が好ましい。担体付触媒の場合、第8族〜第10族の遷移金属は通常0.1〜20重量%、他の助触媒金属は0.01〜30重量%の範囲で選定される。この値が小さすぎると、触媒活性の低下によるコスト競争力が低下し、またこの値が大きすぎると、触媒コストの甚大化による競争力が低下してしまう。 上記のジアセトキシ化反応は空気、または酸素富加された空気、窒素など不活性ガスで希釈された空気または酸素、あるいは酸素雰囲気下で行なうことが好ましく、酸素濃度は1vol%〜100vol%の範囲で差し支えなく、より好ましくは2vol%〜50vol%であり、特に好ましくは3vol%〜40vol%である。酸素濃度が低すぎると反応速度が低下し、長大な反応器が必要となり、また酸素濃度が高すぎると、爆発、火災などプロセスの危険性が増大する。本反応は気相、液相のいずれでも行なうことができる。反応温度は0℃〜300℃の範囲であり、好ましくは10℃〜250℃、より好ましくは30℃〜150℃の範囲である。反応温度が低すぎると反応速度が低下し、長大な反応器が必要となり、また反応温度が高すぎると、爆発、火災などプロセスの危険性が増大する。反応圧力は大気圧〜50MPaの範囲が好ましく、より好ましくは大気圧〜30MPa、特に好ましくは1MPa〜15MPaである。ジアセトキシ化反応を液相にて行なう場合には、反応に使用する溶媒は反応原料を溶解するものであれば特に制限は無いが、水、または酢酸等のカルボン酸、あるいはブタジエンなど反応原料そのもの、あるいはジアセトキシアリル化合物など生成物そのものが好ましい。またヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トリグライムなどのエーテル類、酢酸エチル、酪酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、1,4−ブタンジオールなどのアルコール類なども使用可能である。原料となる共役ジエン類と触媒との重量比は100000000〜1の範囲が好ましく、より好ましくは50000000〜10の範囲であり、特に好ましくは20000000〜100である。重量比が多すぎると反応速度は不充分となり、長大な反応器が必要となりプロセス競争力を失い、またこの重量比が小さ過ぎると触媒コストが増大し、プロセス競争力を失う。 上述した製法等により得られた1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを含む液は、ブタジエンのジアセトキシ化反応液そのもの、あるいはブタジエンのジアセトキシ化反応液から蒸留などにより、溶媒、未反応ブタジエン、高沸点副生物などを一部あるいは全量除去した1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを含む液を意味する。 この1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを含む液は次いで触媒により水素化され、1,4−ジアセトキシブタンを含む液を得て、その後加水分解、蒸留などによる精製を経て、製品1,4−ブタンジオールへと変換される。本発明は本水素化工程での選択率を向上するものである。 無機塩基と触媒を接触させた後、その触媒を用いて1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの水素化を行う際には、無溶媒、あるいは溶媒存在下の両方が可能であるが、好ましくは無溶媒、あるいは溶媒が1,4−ジアセトキシブタン、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタン、1,4−ブタンジオール、1,2−ジアセトキシブタンなどの水素化生成物、テトラヒドロフラン、ブチルエーテルなどのエーテル類、ブタノールなどのアルコール類、酢酸ブチルなどのエステル類であり、特に好ましくは1,4−ジアセトキシブタンを溶媒としたプロセスである。溶媒を使用する際の、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを含む液の溶媒に対する割合は、0.1〜100重量%の範囲で可能であり、好ましくは、1〜50重量%、更に好ましくは2〜20重量%の範囲である。この濃度が低すぎると、溶媒の再利用に伴う溶媒循環量が大きくなってしまい、その循環に必要なコストが増大してしまう。また濃度が高すぎた場合には、水素化で生成する反応熱が大きく、反応器内温度を制御するのが困難となってしまう。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、分析は内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。その際、内部標準としてn−ドデカンを使用した。<製造例1> 金属としてニッケル、担体として珪藻土を用い、ニッケルを珪藻土に対して15重量%の組成で担持した触媒500mLと炭酸水素ナトリウム3重量%の水溶液100g(pH=9.5)をポリ容器に入れ、25℃で容器の振とうを1時間で10回繰り返し、24時間接触させた。ふるいで微粉を除去した触媒をガラス管に充填し、1L/時間の流量で触媒に対して、連続的に脱塩水を室温で通液した。通液後の脱塩水のpHが7以下になるまで連続的に脱塩水を通液した。洗浄後の触媒をガラス製フラスコに充填し、3Torrに減圧し、80℃で12時間乾燥した。<製造例2> 金属としてパラジウム、担体として活性炭を用い、パラジウムを活性炭に対して1重量%の組成で担持した触媒500mLと炭酸水素ナトリウム3重量%の水溶液100g(pH=9.5)をポリ容器に入れ、25℃で容器の振とうを1時間で10回繰り返し、24時間接触させた。ふるいで微粉を除去した触媒をガラス管に充填し、1L/時間の流量で触媒に対して、連続的に脱塩水を室温で通液した。通液後の脱塩水のpHが7以下になるまで連続的に脱塩水を通液した。洗浄後の触媒をガラス製フラスコに充填し、3Torrに減圧し、80℃で12時間乾燥した。<実施例1> 製造例1で得たニッケル/珪藻土触媒4.0gと1,4−ジアセトキシ−2−ブテン:500gをステンレス製のオートクレーブに充填し、100℃に昇温後、水素ガスを導入してゲージ圧で3MPaに昇圧し、100℃で加熱攪拌を8時間行なった。反応後の液を、ドデカンを内部標準として使用して、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.7%、1,4−ジアセトキシブタンの選択率は96.0%であった。反応後液の酢酸ブチルの含有濃度は2.5重量%であった。<比較例1> 実施例1において、製造例1で得た触媒を用いる代わりに、金属としてニッケル、担体として珪藻土を用い、ニッケルを珪藻土に15重量%の組成で担持したニッケル/珪藻土触媒(製造例1において、炭酸水素ナトリウムとの接触がない触媒)を用いた以外は、全て同様に実施した。反応後の液を、ドデカンを内部標準として使用して、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%、1,4−ジアセトキシブタンの選択率は91.0%であった。反応後液の酢酸ブチルの含有濃度は5.5重量%であった。<実施例2> 製造例2で得たパラジウム/活性炭触媒4.0gと1,4−ジアセトキシ−2−ブテン:50gと1,4−ジアセトキシブタン:450gの混合液500gをステンレス製のオートクレーブに充填し、50℃に昇温後、水素ガスを導入してゲージ圧で2MPaに昇圧し、50℃で加熱攪拌を2時間行なった。反応後の液を、ドデカンを内部標準として使用して、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は100%、1,4−ジアセトキシブタンの選択率は96.5%であった。反応後の酢酸ブチルの選択率は2.0%であった。<比較例2> 実施例2において、製造例2で得た触媒を用いる代わりに、金属としてパラジウム、担体として活性炭を用い、パラジウムを活性炭に対して1重量%の組成で担持した触媒(製造例2において、炭酸水素ナトリウムとの接触がない触媒)を使用したこと以外は全て実施例2と同様に実施した。反応後の液を、ドデカンを内部標準として使用して、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は100%、1,4−ジアセトキシブタンの選択率は93.2%であった。反応後の酢酸ブチルの選択率は4.2%であった。 遷移金属を含む触媒の存在下、不飽和エステルを水素化して、対応する水素化エステルを製造するにあたり、該触媒が、予め無機塩基と接触させたものであることを特徴とする水素化エステルの製造方法。 前記触媒を無機塩基と接触させた後に、水と接触させることを特徴とする請求項1に記載の水素化エステルの製造方法。 前記触媒と接触させた水のpHが6.0〜10.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素化エステルの製造方法。 前記無機塩基が、アルカリ金属を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。 前記無機塩基が当該無機塩基を含む溶液であり、そのpHが7.5以上12.0以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。 前記遷移金属が、第8族〜第10族の遷移金属であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。 前記不飽和エステルが、ジアセトキシ不飽和エステルであり、前記対応する水素化エステルが、ジアセトキシ飽和エステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水素化エステルの製造方法。 【課題】 反応液中に金属を含有することなく、酢酸ブチルなどの副生物の生成量を抑制して、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの水素化を行い、収率を向上し、且つ閉塞や汚れ懸念の無い、より効率の高い1,4−ジアセトキシブタンの製造方法を提供する。【解決手段】 遷移金属を含む触媒の存在下、不飽和エステルを水素化して、対応する水素化エステルを製造するにあたり、該触媒が、予め無機塩基と接触させたものであることを特徴とする水素化エステルの製造方法。【選択図】 なし