タイトル: | 特許公報(B2)_抗FGF23抗体及びそれを含む医薬組成物 |
出願番号: | 2008558165 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07K 16/22,C12N 5/10,A61K 39/395,A61P 3/00,A61P 3/02,A61P 19/08,A61P 19/10,A61P 5/18,C12N 15/09,C12N 15/02,C12P 21/08 |
山崎 雄司 浦川 到 吉田 均 青野 友紀子 山下 武美 島田 孝志 長谷川 尚 JP 4800396 特許公報(B2) 20110812 2008558165 20080214 抗FGF23抗体及びそれを含む医薬組成物 協和発酵キリン株式会社 000001029 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 山崎 雄司 浦川 到 吉田 均 青野 友紀子 山下 武美 島田 孝志 長谷川 尚 JP 2007034018 20070214 20111026 C07K 16/22 20060101AFI20111006BHJP C12N 5/10 20060101ALI20111006BHJP A61K 39/395 20060101ALI20111006BHJP A61P 3/00 20060101ALI20111006BHJP A61P 3/02 20060101ALI20111006BHJP A61P 19/08 20060101ALI20111006BHJP A61P 19/10 20060101ALI20111006BHJP A61P 5/18 20060101ALI20111006BHJP C12N 15/09 20060101ALN20111006BHJP C12N 15/02 20060101ALN20111006BHJP C12P 21/08 20060101ALN20111006BHJP JPC07K16/22C12N5/00 102A61K39/395 NA61P3/00A61P3/02A61P19/08A61P19/10A61P5/18C12N15/00 AC12N15/00 CC12P21/08 C12N 15/00 -15/90 C07K 1/00 -19/00 A61K 39/395 A61P 3/00 A61P 3/02 A61P 5/18 A61P 19/08 A61P 19/10 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CAplus(STN) JSTPlus(JDreamII) 国際公開第2003/057733(WO,A1) 国際公開第2002/088358(WO,A2) 島田孝志,FGF23 とリン代謝,日本骨代謝学会学術集会プログラム抄録集,2005年 6月20日,Vol.23,p.121 青野友紀子他,Hyp マウスの低リン血症及びくる病に対する抗FGF23 中和抗体の改善作用,日本骨代謝学会学術集会プログラム抄録集,2004年 8月,Vol.22,p.137 11 IPOD FERM BP-10772 JP2008052918 20080214 WO2008099969 20080821 80 20110210 小金井 悟 本発明はFGF23抗原に特異的に結合する抗FGF23抗体に関する。さらに本発明は、抗FGF23抗体を有効成分とする、FGF23過剰産生に若しくは他の原因に起因するミネラル代謝性疾患に対する予防又は治療剤、特に低リン血症性クル病・骨軟化症治療剤に関する。 線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor)は、最初に線維芽細胞株NIH3T3の増殖を刺激する物質としてウシの下垂体より精製された。以降、種々の組織より類似の蛋白質が同定されており、それら一群の物質はポリペプチドファミリー(FGFファミリー)を形成している。現在までのところ、FGFファミリーに属するものとして脊椎動物において22種の蛋白質が同定されている。これらの蛋白質の生物活性としては、線維芽細胞増殖活性だけでなく中胚葉や神経外胚葉の増殖や血管新生作用、発生段階における肢芽形成など多岐にわたる作用が知られている。FGFはその遺伝子の発現部位、発現時期についても多様であり、発生段階や成人における特定部位においてのみ発現しているというものも多い。FGFの受容体をコードする遺伝子としてはFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4の少なくとも4種が知られており、またFGFR1、FGFR2、FGFR3においてはスプライシングの違いにより細胞外ドメインの異なる受容体蛋白質がそれぞれにおいて存在することが知られている。また、ヘパリンやヘパラン硫酸プロテオグリカンがFGFやFGF受容体と相互作用することにより作用を調節することが知られている。また、構造的類似性よりFGFファミリーに属するが、その生物活性や受容体結合性等について、ほとんど解明されていないものも多い。このようなFGFファミリーの特徴については、総説としてまとめられている(非特許文献1を参照)。 FGF23(一般的にFGF−23と表されることもある)は、FGF15との相同性を利用したデータベース検索とPCR法にて最初にマウスよりクローニングされ、さらにマウスFGF23の配列相同性を利用してヒトFGF23がクローニングされた蛋白質であり、ヒトのFGF23は251アミノ酸残基のポリペプチドからなる。また、分泌シグナル配列として24番目までのアミノ末端側配列が分泌時に切断されることが予想されている(非特許文献2を参照)。続いて常染色体優性低リン血症性クル病・骨軟化症(Autosomal dominant hypophosphatemic rickets/osteomalachia:以下ADHRという)の研究において、ADHR患者における変異遺伝子領域を絞り込み、責任遺伝子の同定を進めるなかで、ADHR患者のFGF23の遺伝子にミスセンス変異が特徴的に見出された(非特許文献3を参照)。この発見により生体内におけるFGF23の生理的重要性が強く示唆された。一方、FGF23の生物活性を決定づけたのは低リン血症性クル病、骨軟化症のひとつである腫瘍性骨軟化症の研究であった。この疾患では、疾患の責任腫瘍が液性の疾患惹起因子を分泌産生し、この疾患惹起因子の作用により低リン血症、骨軟化症等の病態に陥ることが考えられていた。 この責任腫瘍が産生する疾患惹起因子の探索において、腫瘍に高発現する遺伝子としてFGF23がクローニングされ、さらにこの因子を投与することにより、低リン血症や骨軟化症が再現されることが示された(非特許文献4及び特許文献1を参照)。この研究により、FGF23が生体内のリンやカルシウムに関連する代謝調節に関わることが示されるとともに、生体内を循環して作用を発現する全身性因子として作用することが示唆された。さらにその後の研究において、実際に腫瘍性骨軟化症患者血中のFGF23濃度が健常人に比較して高値であることも示された(非特許文献5及び6を参照)。 また、ADHRや腫瘍性骨軟化症と臨床的所見において類似した様態を呈する疾患としてX染色体連鎖低リン血症性クル病(X−linked hypophosphatemic rickets、以下XLHという)が知られているが、この病態においても血中のFGF23濃度は高値となっていることが示された(非特許文献5及び6を参照)。 すなわちこれまで原因不明であった腫瘍性骨軟化症、XLHなどで観察されるビタミンD抵抗性クル病・骨軟化症の分泌性の疾患原因因子がFGF23であるということが示された。さらに、fibrous dysplasia、McCune−Albright syndrome、常染色体劣性低リン血症性クル病など他のミネラル代謝性疾患においても血中のFGF23濃度の高値と低リン血症やクル病・骨軟化症との関係が報告されている(非特許文献7〜9を参照)。 以上の報告により、生体内のFGF23過剰状態は低リン血症やそれに伴うクル病・骨軟化症などを誘導することが示された。さらに慢性腎不全高リン血症においても血清FGF23の異常高値が報告されており、過剰なFGF23が腎不全時におけるミネラル代謝性疾患などの一部に関わっている可能性も示唆されている(非特許文献10及び11を参照)。 これらのFGF23の過剰が原因となり誘導される疾患において、FGF23作用の抑制あるいはFGF23の除去が疾患の治療方法となりうることが考えられる。これまでに、FGF23の作用を抑制するものとして、抗FGF23マウスモノクローナル抗体の報告がある(特許文献2を参照)。この報告において使用されている抗FGF23マウスモノクローナル抗体2C3B及び3C1Eは正常マウスに投与すると内在性のマウスFGF23の機能を阻害し、腎からのリン排泄を抑制し、腎におけるビタミンD代謝酵素の発現を変動させることにより、結果的に血清中のリン濃度及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD(以下1,25Dという)濃度を上昇させることが示されている。さらに、血清中のFGF23濃度が高値であり、かつ低リン血症と骨の伸長障害や石灰化障害を呈するXLHのモデルマウスであるHypマウスへの抗FGF23マウスモノクローナル抗体の反復投与を行った結果、Hypマウスにおいて血中リン濃度の上昇を認め、かつ骨の伸長障害と石灰化障害が改善された。この結果より、FGF23過剰疾患に対する薬剤として、FGF23作用抑制抗体の使用が適切であると考えられた。しかしながら本報告によって使用された2C3Bや3C1E抗体はマウス由来の抗体である。ヒト宿主によって外来物として認識されるマウス抗体は、いわゆる「ヒト抗マウス抗体」すなわち「HAMA」応答を惹起し、重篤な副作用を示す場合がある(非特許文献12を参照)。 このような問題を回避するためのアプローチのひとつとしてキメラ抗体が開発された(特許文献3及び4を参照)。キメラ抗体は、2つ又はそれ以上の種由来の抗体の一部(マウス抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域など)を含む。このようなキメラ抗体の利点は元のマウス抗体の性質である抗原への結合性などの特徴は保持することであるが、一方で依然として「ヒト抗キメラ抗体」すなわち「HACA」応答を惹起する(非特許文献13を参照)。 さらに、置換された抗体の一部のみが相補性決定領域(すなわち「CDR」)である組換え抗体が開発された(特許文献5及び6を参照)。CDR移植技術を使用してマウスCDR、ヒト可変部フレームワーク及び定常領域からなる抗体(すなわち「ヒト化抗体」)が産生されている(非特許文献14を参照)。このような方法を用いて、マウス抗体をヒト抗体の配列に置換させることにより、2C3B抗体などの抗FGF23マウス抗体をヒト化することが知られている。しかしながら、ヒト化した場合、抗原へのアフィニティが下がるなどの可能性がある。 また、XLHなどにおける低リン血症性クル病の現状の治療においてはビタミンD製剤に加えリン酸を間歇的に経口投与する方法が主流であるが、一回あたりの投与量及び一日あたりの投与回数の多さから患者に対し多大な負担を強いる状況であることも問題となっている。そのため、患者やその家族の負担を減らす意味でも、投与間隔を延ばせるような持続性のある血清リン濃度、血清1,25D濃度上昇作用を示す低リン血症治療薬が望まれている。国際公開第WO02/14504号パンフレット国際公開第WO03/057733号パンフレット欧州特許出願公開第120694号明細書欧州特許出願公開第125023号明細書英国特許第GB2188638A号明細書米国特許第5585089号明細書Ornitz,D.et al.,Genome biology,2:3005.1−3005.12,2001Yamashita,T.et al.,Biochem.Biophy.Res.Commun.,277:494−498,2000White,K.E.et al.,Nature Genet.,26:345−348,2000Shimada,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,98:6500−6505,2001Yamazaki,Y.et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.,87:4957−4960,2002.Jonsson,K.B.,et al.,N.Engl.J.Med.,348:1656−1663,2003Riminucci,M.et al.,J.Clin.Invest.,112:683−692,2003Yamamoto,T.et al.,J.Bone Miner.Metab.,23:231−237,2005Lorenz−Depiereux,B.et al.,Nat.Genet.,38:1248−1250,2006Gupta,A.et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.,89:4489−4492,2004Larsson,T.et al.,Kidney Int.,64:2272−2279,2003Van Kroonenbergh,M.J.et al.,Nucl.Med.Commun.9:919−930,1988Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.,170:2153−2157,1989Riechmann,L.et al.,Nature,332:323−327,1988 本発明の目的は、FGF23に対するヒト抗体、並びに該抗体を用いてFGF23の作用を抑制することにより予防又は治療が可能な疾患に対するより副作用が少ない予防又は治療剤などの医薬組成物を提供することにある。 さらに本発明の目的は、低リン血症治療薬として用いることが出来る抗FGF23抗体であって、既存の抗FGF23抗体に比べ、単回の投与で、より血清リン濃度、血清1,25D濃度の持続的な上昇作用を有する抗体並びに、該抗体を用いてFGF23が関連する疾患の予防又は治療剤などの医薬組成物を提供することにある。 現在の低リン血症性クル病の治療方法としてはビタミンD製剤と共にリン酸を一日に数度、間歇的に経口投与する方法が主流であるが、一回あたりの投与量及び一日あたりの投与回数の多さから患者に対し多大な負担を強いる状況であることが問題となっている。本発明において取得された抗FGF23ヒトモノクローナル抗体、C10抗体はより持続的な血中リン濃度上昇及び1,25D上昇作用すなわち強力なFGF23中和活性を有することを示している。本研究におけるC10抗体の単回の投与において、血清リン濃度、血清1,25D濃度の持続的な上昇作用が観察されたことは、低リン血症治療薬として現状の治療に比して、C10抗体は顕著な優位性を有する治療である可能性が示唆された。 すなわち、本発明は以下の通りである。[1] ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP−10772)が産生する抗体の重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域を有する、ヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[2] ヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片であって、配列番号12の20番目のQから136番目のSで示される重鎖アミノ酸配列及び/又は配列番号14の23番目のAから128番目のKで示される軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[3] 重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含むヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片であって、重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号12の20番目のQから136番目のSで示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号14の23番目のAから128番目のKで示されるヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[4] ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP−10772)より産生されるヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[5] ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP−10772)が産生する抗体が結合するヒトFGF23上のエピトープの全部または一部に結合する抗体またはその機能的断片。[6] 上記[3]の重鎖可変領域が、配列番号40のアミノ酸配列で示される相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)1、配列番号41のアミノ酸配列で示されるCDR2、および配列番号42のアミノ酸配列で示されるCDR3のいずれか又は全てを含むものであるヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[7] 上記[3]の軽鎖可変領域が、配列番号43のアミノ酸配列で示されるCDR1、配列番号44のアミノ酸配列で示されるCDR2、および配列番号45のアミノ酸配列で示されるCDR3のいずれか又は全てを含むものであるヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[8] 重鎖可変領域が、配列番号40のアミノ酸配列で示されるCDR1、配列番号41のアミノ酸配列で示されるCDR2、および配列番号42のアミノ酸配列で示されるCDR3のいずれか又は全てを含むものであり、軽鎖可変領域が、配列番号43のアミノ酸配列で示されるCDR1、配列番号44のアミノ酸配列で示されるCDR2、および配列番号45のアミノ酸配列で示されるCDR3のいずれか又は全てを含むものであるヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[9] 機能的断片がFab、Fab’、F(ab’)2、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、二量体化V領域(diabody)、一本鎖Fv(scFv)及びCDRからなる群から選択されるペプチド断片である[1]〜[8]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[10] [1]〜[8]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片であって、その重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖及び/又は軽鎖を含むヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片。[11] 抗体のクラスがIgG、IgA、IgE又はIgMである[1]〜[10]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体。[12] 抗体のサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である[11]のヒトFGF23に対する抗体。[13] [1]〜[12]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む、医薬組成物。[14] [1]〜[12]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む、FGF23のリン代謝及び/又はビタミンD代謝を調節し得る医薬組成物。[15] [1]〜[12]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む、ミネラル代謝異常を伴う疾患の予防又は治療用医薬組成物。[16] ミネラル代謝異常を伴う疾患が、腫瘍性骨軟化症、ADHR、XLH、fibrousdysplasia、McCune−Albright syndrome及び常染色体劣性低リン血症からなる群から選択される、[15]の医薬組成物。[17] [1]〜[12]のいずれかのヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む、骨粗鬆症、クル病、高カルシウム血症、低カルシウム血症、異所性石灰化、骨硬化症、パジェット病、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症及び掻痒からなる群から選択される疾患の予防又は治療用医薬組成物。[18] ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP−10772)。[19] 配列番号11に示される塩基配列の58番目のCから408番目のAで示される塩基配列にコードされる重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸。[20] 配列番号13に示される塩基配列の67番目のGから384番目のAで示される塩基配列にコードされる軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸。[21] [19]又は[20]の核酸を含むベクター。[22] [21]のベクターを含む宿主細胞。[23] [22]の宿主細胞を培養し、ヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片を発現させる工程を含む、ヒトFGF23に対する抗体又はその機能的断片の製造方法。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2007−34018号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。 図1は、C10発現ベクターの構築過程を模式的に表した図である。 図2は、N5KG1_C10_LHにおける抗体遺伝子重鎖の塩基配列(配列番号30)及びアミノ酸配列(配列番号31)を示す。図中、四角で囲ったアミノ酸配列は分泌シグナル配列(リーダー配列)を示す。 図3は、N5KG1_C10_LHにおける抗体遺伝子軽鎖の塩基配列(配列番号32)及びアミノ酸配列(配列番号33)を示す。図中、四角で囲ったアミノ酸配列は分泌シグナル配列(リーダー配列)を示す。 図4は、C10発現ベクターの構造を示した図である。 図5Aは、精製した全長ヒトFGF23蛋白質を2C3B抗体若しくはC10抗体を固相抗体とし、3C1E抗体を検出抗体としたサンドイッチELISAで検出した測定結果を表した図である。 図5Bは、カニクイザルFGF23発現細胞上清を2C3B抗体若しくはC10抗体を固相抗体とし、3C1E抗体を検出抗体としたサンドイッチELISAで検出した測定結果を表した図である。 図6は、媒体、2C3B抗体又はC10抗体を投与したカニクイザルの血清リン濃度を経時的に測定したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。またStudent’s t−testを用いて同日時の媒体投与群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.05)が観察された測定値に関しては、グラフ上に*を付加した。 図7は、媒体投与5日目のカニクイザルの血清リン濃度を基準とした、2C3B抗体又はC10抗体の投与後5日目のカニクイザルの血清リン濃度の上昇値を示したグラフである。 図8は、媒体、2C3B抗体又はC10抗体を投与したカニクイザルの血清1,25D濃度を経時的に測定したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。またStudent’s t−testを用いて同日時の媒体投与群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.05)が観察された測定値に関しては、グラフ上に*を付加した。 図9は、強制発現していない細胞の培養上清(コントロール)、ヒト及びカニクイザルFGF23発現細胞培養上清をC15抗体を用いてウエスタンブロット法により検出した写真である。 図10は、pPSs FGF23ベクターの構造を示した図である。 図11は、pUS FGF23 KIベクターの構造を示した図である。 図12は、薬剤耐性遺伝子(loxp−neor)がターゲティングされたアレル構造、ヒトFGF23(−SP)+薬剤耐性遺伝子(loxpv−puror)がpUS hFGF23 KIベクターを用いてターゲティングされたアレル構造、薬剤耐性遺伝子(loxp−neor,loxpv−puror)が除去されたアレル構造及びサザン解析用プローブの位置を示す。図中に記載された用語の詳細な説明は以下の通り。hFGF23(−SP):固有のシグナルペプチドコード領域を持たないヒトFGF23遺伝子、Cκ:マウスIgκ遺伝子定常領域、loxpv−puro:loxP配列の一部mutant配列であるloxPV配列をその両端に持つピューロマイシン耐性遺伝子、loxp−neor:loxP配列をその両端に持つネオマイシン耐性遺伝子、Ck3’ probe:hFGF23(−SP)+loxpv−puror遺伝子導入及びloxpv−puror遺伝子除去クローン選別用サザンブロット解析プローブ、3’KO−probe:loxp−neor遺伝子導入及び除去クローン選別用サザンブロット解析プローブ、E:EcoRI制限酵素サイト。 図13は、コントロール抗体又はC10抗体投与7日前の血清FGF23濃度を示したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。またStudent’s t−testを用いてWTマウス群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察された群に関しては、グラフ上に***を付加した。 図14は、コントロール抗体又はC10抗体投与7日前及び初回投与3日後の血清リン濃度を示したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。また同一日内でStudent’s t−testを用いてWTマウス群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察された群に関しては、グラフ上に***を付加した。さらに、同一日内でhFGF23KIマウスコントロール抗体投与群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察されたhFGF23KIマウスC10抗体投与群に関しては、グラフ上に###を付加した。 図15は、コントロール抗体又はC10抗体の5回目投与1日後の血清リン濃度を示したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。またStudent’s t−testを用いてWTマウス群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察された群に関しては、グラフ上に***を付加した。さらに、hFGF23KIマウスコントロール抗体投与群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察されたhFGF23KIマウスC10抗体投与群に関しては、グラフ上に###を付加した。 図16は、コントロール抗体又はC10抗体の4回目投与1日後の握力を示したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。またStudent’s t−testを用いてWTマウス群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察された群に関しては、グラフ上に***を付加した。さらに、hFGF23KIマウスコントロール抗体投与群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察されたhFGF23KIマウスC10抗体投与群に関しては、グラフ上に###を付加した。 図17は、コントロール抗体又はC10抗体の5回目投与1日後に解剖し採取したマウスの大腿骨をVillanueva−Goldner法で組織染色した像を示した写真である。 図18は、コントロール抗体又はC10抗体の5回目投与1日後に解剖し採取した脛骨の乾燥重量に対する灰重量の割合を示したグラフである。測定値は平均値+/−標準誤差で示した。またStudent’s t−testを用いてWTマウス群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察された群に関しては、グラフ上に***を付加した。さらに、hFGF23KIマウスコントロール抗体投与群と有意差検定を行った結果、有意な差(p<0.001)が観察されたhFGF23KIマウスC10抗体投与群に関しては、グラフ上に###を付加した。 以下、本発明で用いる語句の意味を明らかにすることにより、本発明を詳細に説明する。I.本発明の抗体1.抗FGF23抗体及びその機能的断片 本発明の抗体は、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのひとつであるFGF23に対する抗体である。 本発明における「FGF23に対する抗体」とは、FGF23若しくはその一部と結合する抗体、FGF23若しくはその一部と反応性を有する抗体、又はFGF23若しくはその一部を認識する抗体である。FGF23に対する抗体を抗FGF23抗体と呼ぶこともある。本発明において、抗体とは、イムノグロブリンを構成する重鎖可変領域及び重鎖定常領域、並びに軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む全ての領域が、イムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。ここで、FGF23の一部とは、配列番号4で表わされるFGF23の全長アミノ酸配列の一部アミノ酸配列であって、連続したアミノ酸配列からなるFGF23の断片ペプチドをいう。好ましくは配列番号12の20番目のQから136番目のSからなるアミノ酸配列、及び/又は配列番号14の23番目のAから128番目のKからなるアミノ酸配列を含む抗体であり、さらに好ましくは、ハイブリドーマC10が産生する抗体である。配列番号12はFGF23に対する抗体の重鎖可変領域のリーダー配列を含むアミノ酸配列であり、配列番号12の20番目のQから136番目のSからなるアミノ酸配列は、リーダー配列部分を除いた成熟体部分のアミノ酸配列である。また、配列番号14はFGF23に対する抗体の軽鎖可変領域のリーダー配列を含むアミノ酸配列であり、配列番号14の23番目のAから128番目のKからなるアミノ酸配列は、リーダー配列部分を除いた成熟体部分のアミノ酸配列である。抗体のクラスとしてはイムノグロブリンG(IgG)、同A(IgA)、同E(IgE)及び同M(IgM)が用いられるが、好ましくはIgGである。更にIgGのサブクラスとしては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が用いられるが、好ましくはIgG1、IgG2及びIgG4であり、更に好ましくはIgG1である。 本願発明の抗体には、新規な相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)アミノ酸配列を含有する抗FGF23抗体又も包含される。 抗体の可変領域内にはCDRが存在し、この部分が抗原認識の特異性を担っている。可変領域のCDR以外の部分は、CDRの構造を保持する役割を有し、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖のC末端側には定常領域が存在し、それぞれ重鎖定常領域(CH)、軽鎖定常領域(CL)と呼ばれる。 重鎖可変領域中には、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。重鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて重鎖相補性決定領域と呼ぶ。軽鎖可変領域中にも同様に、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。軽鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて軽鎖相補性決定領域と呼ぶ。これらのCDRはシーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest),US Dept.He alth and Human Services,(1991)などを用いて決定することができる。 本願発明の抗体として、好ましくは、重鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号40、CDR2が配列番号41、CDR3が配列番号42の少なくともいずれか一つ若しくは全てを有するものである。また、軽鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号43、CDR2が配列番号44、CDR3が配列番号45の少なくともいずれか一つ若しくは全てを有するものである。より好ましくは、重鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号40、CDR2が配列番号41、CDR3が配列番号42を有し、軽鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号43、CDR2が配列番号44、CDR3が配列番号45を有するFGF23に結合する抗体である 本発明の抗体のCDR配列は必ずしも限定されないが、好ましくは配列番号40から45に示されるCDR配列のうち、いずれか1つ以上、好ましくは重鎖の3つ、より好ましくは6つのCDRを含有する抗体である。CDR以外のアミノ酸配列は特に限定されず、CDR以外のアミノ酸配列が他の抗体、特に、他種の抗体由来である、いわゆるCDR移植抗体が本発明の抗体に包含される。この内、CDR以外のアミノ酸配列がヒト由来であるヒト化抗体又はヒト抗体が好ましく、必要に応じてFRに1ないし数個のアミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/または挿入を伴っていてもよい。ヒト化抗体又はヒト抗体の作製方法は公知の方法を用いることができる。 「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するもの、すなわち抗原への結合能、抗原への反応性又は抗原の認識能を保持したものを意味し、Fv、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、一本鎖Fv(scFv)、及びこれらの重合体等が挙げられる。具体的にはFab、Fab’、F(ab’)2、scFv、diabody、dsFv及びCDRを含むペプチドなどがあげられる[D.J.King.,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd]。 Fabは、FGF23と結合する抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、重鎖(H鎖)のアミノ末端側約半分と軽鎖(L鎖)全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。 本発明のFabは、FGF23と結合する抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。又は、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。 F(ab’)2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものより大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。 本発明のF(ab’)2は、本発明のFGF23と結合する抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。又は、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。 Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。 本発明のFab’は、本発明のFGF23に結合するF(ab’)2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。又は、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することができる。 scFvは、1本の重鎖可変領域(以下、VHと表記する)と1本の軽鎖可変領域(以下、VLと表記する)とを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VL又はVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。 本発明のscFvは、本発明のFGF23と結合する抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。 diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。 本発明のdiabodyは、本発明のFGF23と結合する抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。 dsFvは、VH及びVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering,7:697−704,1994)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。 本発明のdsFvは、本発明のFGF23と結合する抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。 CDRを含むペプチドは、VH又はVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接又は適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。 本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のFGF23と結合する抗体のVH及びVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。 また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。 さらに、「機能的断片」は、抗体の断片であって抗原(FGF23)と結合しうる断片である。好ましくは「機能的断片」が配列番号12の20番目のQから136番目のSからなるアミノ酸配列、及び/又は配列番号14の23番目のAから128番目のKからなるアミノ酸配列を含むFGF23と結合しうる断片である。好ましくは「機能的断片」が配列番号40から45に示されるCDRの少なくとも一つ又は全てを有しFGF23と結合しうる断片である。さらに好ましくは「機能的断片」がハイブリドーマC10が産生する抗体の可変領域由来のものであって、FGF23と結合しうる断片である。 本発明の抗体は、本発明のFGF23に対する抗体又は抗体の機能的断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的あるいは遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。 本発明の抗体の誘導体は、本発明のFGF23に対する抗体若しくは抗体の機能的断片のH鎖(重鎖)あるいはL鎖(軽鎖)のアミノ末端側あるいはカルボキシ末端側、抗体若しくは抗体の機能的断片中の適当な置換基又は側鎖、さらには抗体又は抗体の機能的断片中の糖鎖などに放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的手法(抗体工学入門、金光修著、地人書館、1994)等により結合させることにより製造することができる。 また、蛋白質を結合させた抗体の誘導体は、本発明のFGF23に対する抗体及び抗体の機能的断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質をコードするDNAを連結させて発現用ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させることにより製造することができる。 放射性同位元素としては、131I、125Iなどがあげられ、例えば、クロラミンT法などにより抗体に結合させることができる。 低分子の薬剤としては、ナイトロジェン・マスタード、サイクロフォスファミドなどのアルキル化剤、5−フルオロウラシル、メソトレキセートなどの代謝拮抗剤、ダウノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗生物質、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンのような植物アルカロイド、タモキシフェン、デキサメタソンなどのホルモン剤等の抗癌剤(臨床腫瘍学、日本臨床腫瘍研究会編、癌と化学療法社、1996);ハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミン等の免疫調節剤;サイクロフォスファミド、アザチオプリン等の免疫抑制剤;マレイン酸クロルフェニラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤(炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社、1982)等があげられる。これらの低分子の薬剤と抗体の結合は公知の方法により行なうことができる。例えば、ダウノマイシンと抗体を結合させる方法としては、グルタールアルデヒドを介してダウノマイシンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルボジイミドを介してダウノマイシンのアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などがあげられる。これらの低分子の薬剤を抗体に結合させることにより、低分子薬剤が有する機能を有する抗体の誘導体が得られる。 高分子の薬剤としては、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどがあげられる。これらの高分子化合物を抗体又は抗体の機能的断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的あるいは生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失、抗体産生の抑制、などの効果が期待される(バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店、1993)。例えば、PEGと抗体を結合させる方法としては、PEG化修飾試薬と反応させる方法などがあげられる(バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店、1993)。PEG化修飾試薬としては、リジンのε−アミノ基の修飾剤(特昭61−178926号公報)、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基の修飾剤(特昭56−23587号公報)、アルギニンのグアニジノ基の修飾剤(特平2−117920号公報)などがあげられる。 蛋白質と結合した抗体は、融合抗体として得ることができる。すなわち、抗体又は抗体の機能的断片をコードするcDNAに特定の蛋白質をコードするcDNAを連結させ、特定の蛋白質と抗体との融合蛋白質をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物あるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、前記特定の蛋白質と結合した融合抗体を製造することができる。 本発明のFGF23に対する抗体又は抗体の機能的断片について、ELISA(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)等の免疫学的手法により、あるいはバイオセンサービアコアで測定される結合解離定数(Journal of Immunological Methods,145:229−240,1991)、及びklotho発現細胞を用いたヒトFGF23刺激によるEarly growth response gene−1のプロモーター活性化に対する阻害活性(Nature,444:770−774,2006)などを測定することにより、ヒトFGF23に対する結合活性、ヒトFGF23の機能を阻害する活性を評価することができる。 本発明で「ヒト抗体」とは、ヒト由来の抗体遺伝子の発現産物である抗体を意味する。ヒト抗体は、後述のようにヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、例えば、国際公開第WO02/43478号パンフレットに記載されている。 本発明の抗体としては、例えば、後述の実施例に記載される、C10ハイブリドーマにより産生される抗体(C10抗体)を挙げることができる。C10ハイブリドーマは、2007年2月2日付で独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号 FERM BP−10772(識別のための表示:C10)としてブタペスト条約に基づき国際寄託されている。 本発明の抗体又は機能的断片には、抗体又は機能的断片を構成する重鎖及び/又は軽鎖の各々のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖及び/又は軽鎖を含むモノクローナル抗体又はその機能的断片も包含される。ここで、「1又は数個」の「数個」とは9個以下、好ましくは5個以下、さらに好ましくは3個以下、特に好ましくは2個である。前記のようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより本発明の抗体又は機能的断片のアミノ酸配列中に導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)を用いて定法により導入することができる[Proc Natl Acad Sci USA.,81:5662−5666,1984]。本発明の抗体は、いずれのイムノグロブリンクラス及びアイソタイプを有する抗体をも包含する。 本発明のFGF23に対する抗体は、下記のような製造方法によって製造することができる。すなわち、例えば、FGF23、その一部又はその一部と抗原の抗原性を高めるための適当なキャリア物質(例えば、牛血清アルブミン等)との結合物を、必要に応じて免疫賦活剤(フロインドの完全又は不完全アジュバント等)とともに、ヒト抗体産生トランスジェニックマウスなどの非ヒト哺乳動物に免疫する。FGF23は、天然のFGF23もリコンビナントFGF23も用いることもできる。あるいは、FGF23をコードする遺伝子を発現ベクターに導入し、動物内でFGF23蛋白質を発現させることによって免疫感作を行うこともできる。モノクローナル抗体は、免疫感作動物から得た抗体産生細胞と、自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)を融合することにより得られるハイブリドーマを培養し、免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって取得することができる。 本発明の抗体は、当業者に周知である遺伝子工学的改変(例えば、欧州特許EP314161号公報を参照のこと)により異なるサブクラスのものに変換されたものも包含する。すなわち、本発明の抗体の可変領域をコードするDNAを用いて遺伝子工学的手法を用いて元のサブクラスとは異なるサブクラスの抗体を得ることができる。2.本発明の抗体の製造 モノクローナル抗体の製造は、下記の工程を包含する。すなわち、(1)免疫原として使用する抗原蛋白質若しくは抗原蛋白質発現ベクターの調製、(2)抗原を動物体内に注入し、若しくは抗原を動物体内で発現させることにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓等の摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、(3)骨髄腫細胞(ミエローマ)の調製、(4)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、(5)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、(6)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、(7)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育、そして(8)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性及びその認識特異性の検定、又は標識試薬としての特性の検定、等である。 以下、抗FGF23モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもできる。(1)抗原の精製 抗原としては、遺伝子組換え技術を用いてFGF23をコードするDNA配列を好適な発現プラスミドに組み込み、大腸菌や動物細胞等の宿主内外で生産したのち精製したFGF23蛋白質を使用できる。ヒトFGF23の蛋白質の一次構造は公知である[GenBank accession No.AAG09917、配列番号4]ので、当業者に周知の方法により、FGF23のアミノ酸配列から部分ペプチドを化学合成し、これを抗原として使用することもできる。(2)抗体産生細胞の調製工程 (1)で得られた抗原と、フロインドの完全若しくは不完全アジュバント、又はカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物としては、ヒト由来の抗体を産生する能力を有するトランスジェニックマウスが最も好適に用いられるが、そのようなマウスは富塚らの文献[Tomizuka.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.,97:722−727,2000]に記載されている。 マウス免疫の際の免疫原投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射、足蹠注射などいずれでもよいが、腹腔内注射、足蹠注射又は静脈内注射が好ましい。 免疫は、一回、又は、適当な間隔で複数回繰返し行えばよい。その後、免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給源として用いれば、以後の操作の効率を高めることができる。一般的には、最終免疫後3〜5日後の動物由来の抗体産生細胞を、後の細胞融合に用いることが好ましい。 ここで用いられる抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(以下、「RIA法」という)、固相酵素免疫定量法(以下、「ELISA法」という)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法など種々の公知技術があげられるが、検出感度、迅速性、正確性、及び操作の自動化の可能性などの観点から、RIA法又はELISA法がより好適である。 本発明における抗体価の測定は、例えばELISA法によれば、以下に記載するような手順により行うことができる。まず、ヒト抗体に対する抗原をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係な蛋白質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)により覆い、該表面を洗浄後、一次抗体として段階希釈した試料(例えばヒト由来の抗体を産生する能力を有するトランスジェニックマウスの血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗FGF23抗体を結合させる。さらに二次抗体として酵素標識されたヒト抗体に対する抗体を加えてヒト抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定することにより、抗体価を算出する。(3)ミエローマの調製工程 ミエローマとしては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ又はヒト等の哺乳動物に由来する自己抗体産生能のない細胞を用いることができるが、一般的にはマウスから得られた株化細胞、例えば8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)ミエローマ株P3X63Ag8U.1(P3−U1)[Yelton,D.E.et al.Current Topics in Microbiology and Immunology,81:1−7,1978]、P3/NSI/1−Ag4−1(NS−1)[Kohler,G.et al.European J.Immunology,6:511−519,1976]、Sp2/O−Ag14(SP2/O)[Shulman,M.et al.Nature,276:269−270,1978]、P3X63Ag8.653(653)[Kearney,J.F.et al.J.Immunology,123:1548−1550,1979]、P3X63Ag8(X63)[Horibata,K.and Harris,A.W.Nature,256:495−497,1975]などを用いることが好ましい。これらの細胞株は、適当な培地、例えば8−アザグアニン培地[グルタミン、2−メルカプトエタノール、ゲンタマイシン及びウシ胎児血清(以下、ウシ胎児血清を「FCS」という)を加えたRPMI−1640培地にさらに8−アザグアニンを加えた培地]、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;以下、「IMDM」という)、又はダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;以下、「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地(例えば、10%FCSを含むDMEM培地)で継代培養し、融合当日に2×107以上の細胞数を確保しておく。(4)細胞融合 抗体産生細胞は、形質細胞、及びその前駆細胞であるリンパ球であり、これは個体のいずれの部位から得てもよく、一般には脾臓、リンパ節、骨髄、扁桃、末梢血、又はこれらを適宜組み合わせたもの等から得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。 最終免疫後、所定の抗体価が得られたマウスから抗体産生細胞が存在する部位、例えば脾臓を摘出し、抗体産生細胞である脾細胞を調製する。次いで、脾細胞とミエローマを融合させればよい。この脾細胞と工程(3)で得られたミエローマを融合させる手段として現在最も一般的に行われているのは、細胞毒性が比較的少なく融合操作も簡単な、ポリエチレングリコールを用いる方法である。この方法は、例えば以下の手順よりなる。 脾細胞とミエローマとを無血清培地(例えば、DMEM)、又はリン酸緩衝生理食塩液(以下、「PBS」という)でよく洗浄し、脾細胞とミエローマの細胞数の比が5:1〜10:1程度になるように混合し、遠心分離する。上清を除去し、沈澱した細胞群をよくほぐした後、撹拌しながら1mLの50%(w/v)ポリエチレングリコール(分子量1000〜4000)を含む無血清培地を滴下する。その後、10mLの無血清培地をゆっくりと加えた後遠心分離する。再び上清を捨て、沈澱した細胞を適量のヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(以下「HAT」という)液及びヒトインターロイキン−6(以下、「IL−6」という)を含む正常培地(以下、「HAT培地」という)中に懸濁して培養用プレート(以下、「プレート」という)の各ウェルに分注し、5%炭酸ガス存在下、37℃で2週間程度培養する。途中適宜HAT培地を補う。(5)ハイブリドーマ群の選択 上記ミエローマ細胞が、8−アザグアニン耐性株である場合、すなわち、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株である場合、融合しなかった該ミエローマ細胞、及びミエローマ細胞どうしの融合細胞は、HAT含有培地中では生存できない。一方、抗体産生細胞どうしの融合細胞、あるいは、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマは生存することができるが、抗体産生細胞どうしの融合細胞には寿命がある。従って、HAT含有培地中での培養を続けることによって、抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合細胞であるハイブリドーマのみが生き残り、結果的にハイブリドーマを選択することができる。 コロニー状に生育してきたハイブリドーマについて、HAT培地からアミノプテリンを除いた培地(以下、「HT培地」という)への培地交換を行う。以後、培養上清の一部を採取し、例えば、ELISA法により抗FGF23抗体価を測定する。 以上、8−アザグアニン耐性の細胞株を用いる方法を例示したが、その他の細胞株もハイブリドーマの選択方法に応じて使用することができ、その場合使用する培地組成も変化する。(6)クローニング工程 (2)の抗体価測定方法と同様の方法で抗体価を測定することにより、特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移しクローニングを行う。このクローニング法としては、プレートの1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈して培養する限界希釈法、軟寒天培地中で培養しコロニーを回収する軟寒天法、マイクロマニュピレーターによって1個ずつの細胞を取り出し培養する方法、セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」などが挙げられるが、限界希釈法が簡便であり、よく用いられる。 抗体価の認められたウェルについて、例えば限界希釈法によるクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体価の認められたものを抗FGF23モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。(7)ハイブリドーマ培養によるモノクローナル抗体の調製 クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養する。大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、スピナー培養、あるいはホローファイバーシステム等を用いた培養で行われる。この大量培養における上清を、ゲルろ過等、当業者に周知の方法を用いて精製することにより、抗FGF23モノクローナル抗体を得ることができる。また、同系統のマウス(例えばBALB/c)若しくはnu/nuマウス、ラット、モルモット、ハムスター又はウサギ等の腹腔内で該ハイブリドーマを増殖させることにより、抗FGF23モノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。精製の簡便な方法としては、市販のモノクローナル抗体精製キット(例えば、MAbTrap GIIキット;GEヘルスケア バイオサイエンス社)等を利用することもできる。 かくして得られるモノクローナル抗体は、FGF23に対して高い抗原特異性を有する。 又はハイブリドーマ等の抗体産生細胞からヒトモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(例えば哺乳類細胞細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を調製することもできる(Delves,P.J.,ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES.,1997 WILEY、Shepherd,P.and Dean C.,Monoclonal Antibodies.,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS,Goding,J.W.,Monoclonal Antibodies:principles and practice.,1993 ACADEMIC PRESS)。 本発明は、本発明の抗体を産生するハイブリドーマが保有する抗体の遺伝子配列を含む核酸、特に後述の本発明のハイブリドーマの産生する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の核酸も包含する。ここで、核酸にはDNA及びRNAが含まれる。さらに、本発明は上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の核酸からシグナル配列をコードする領域を除いた成熟体部分の核酸も包含する。また、本発明の核酸は、上述の核酸以外に、本発明の抗体のアミノ酸配列及び当該抗体の抗体重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸に対応するコドンを有する核酸も包含する。 ハイブリドーマからモノクローナル抗体をコードする遺伝子を調製するには、モノクローナル抗体のL鎖V領域、L鎖C領域、H鎖V領域及びH鎖C領域をそれぞれコードするDNAをPCR法等により調製する方法が採用される。この際、プライマーとしては、抗FGF23抗体遺伝子又はアミノ酸配列から設計したオリゴDNAを使用することができ、鋳型としてはハイブリドーマから調製したDNAを使用することができる。これらのDNAを1つの適当なベクターに組み込み、これを宿主に導入して発現させるか、あるいはこれらのDNAをそれぞれ適当なベクターに組み込み、共発現させる。 ベクターとしては、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。プラスミドDNAとしては、大腸菌、枯草菌又は酵母由来のプラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージが挙げられる。 形質転換に使用する宿主としては、目的の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。 宿主への遺伝子の導入方法は公知であり、任意の方法(例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等)が挙げられる。また、後述の動物に遺伝子を導入する方法としては、マイクロインジェクション法、ES細胞にエレクトロポレーションやリポフェクション法を使用して遺伝子を導入する方法、核移植法などが挙げられる。 本発明において、抗FGF23抗体は、形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。ここで、「培養物」とは、(a)培養上清、(b)培養細胞若しくは培養菌体又はその破砕物、並びに(c)形質転換体の分泌物のいずれをも意味するものである。形質転換体を培養するには、使用する宿主に適した培地を用い、静置培養法、ローラーボトルによる培養法などが採用される。 培養後、目的抗体が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより抗体を採取する。また、目的抗体が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、蛋白質の単離精製に用いられる各種クロマトグラフィーを用いた一般的な生化学的方法を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から目的の抗体を単離精製することができる。 さらに、トランスジェニック動物作製技術を用いて、目的抗体の遺伝子が内在性遺伝子に組み込まれた動物宿主、例えばトランスジェニックウシ、トランスジェニックヤギ、トランスジェニックヒツジ又はトランスジェニックブタを作製し、そのトランスジェニック動物から分泌されるミルク中からその抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である(Wright,G.,et al.Bio/Technology 9:830−834,1991)。ハイブリドーマをインビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的及び培養方法等の種々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持及び保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地、あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。(8)モノクローナル抗体の検定 かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスの決定は以下のように行うことができる。まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、又はRIA法が挙げられる。オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。一方、ELISA法又はRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることにより、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。 さらに、蛋白質の定量は、フォーリンロウリー法、及び280nmにおける吸光度[1.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/mL]より算出する方法等により行うことができる。 モノクローナル抗体の認識エピトープの同定(エピトープマッピング)は以下のようにして行うことができる。まず、モノクローナル抗体の認識する分子の様々な部分構造を作製する。部分構造の作製にあたっては、公知のオリゴペプチド合成技術を用いてその分子の様々な部分ペプチドを作成する方法、遺伝子組換え技術を用いて目的の部分ペプチドをコードするDNA配列を好適な発現プラスミドに組み込み、大腸菌等の宿主内外で生産する方法等があるが、上記目的のためには両者を組み合わせて用いるのが一般的である。例えば、抗原蛋白質のカルボキシ末端又はアミノ末端から適当な長さで順次短くした一連のポリペプチドを当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製した後、それらに対するモノクローナル抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定する。 その後、さらに細かく、その対応部分のオリゴペプチド、又は該ペプチドの変異体等を、当業者に周知のオリゴペプチド合成技術を用いて種々合成し、本発明の予防又は治療剤が有効成分として含有するモノクローナル抗体のそれらペプチドに対する結合性を調べるか、又は該モノクローナル抗体と抗原との結合に対するペプチドの競合阻害活性を調べることによりエピトープを限定する。多種のオリゴペプチドを得るための簡便な方法として、市販のキット(例えば、SPOTsキット(ジェノシス・バイオテクノロジーズ社)、マルチピン合成法を用いた一連のマルチピン・ペプチド合成キット(カイロン社)等)を利用することもできる。(9)抗体断片の作製 抗体断片は、上記(7)に記載の抗体を元に遺伝子工学的手法あるいは蛋白質化学的手法により、作製することができる。 遺伝子工学的手法としては、目的の抗体断片をコードする遺伝子を構築し、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌などの適当な宿主を用いて発現、精製を行うなどの方法があげられる。 蛋白質化学的手法としては、ペプシン、パパインなどの蛋白質分解酵素を用いた部位特異的切断、精製などの方法があげられる。 抗体断片としては、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、diabody、dsFv、CDRを含むペプチドなどがあげられる。以下にそれぞれの抗体断片の作製方法を詳述する。(i)Fabの作製 Fabは、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素パパインで処理することにより、作製することができる。パパインの処理後は、元の抗体がプロテインA結合性を有するIgGサブクラスであれば、プロテインAカラムに通すことで、IgG分子やFc断片と分離し、均一なFabとして回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,1995)。プロテインA結合性を持たないIgGサブクラスの抗体の場合は、イオン交換クロマトグラフィーにより、Fabは低塩濃度で溶出される画分中に回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,1995)。また、Fabは遺伝子工学的には、多くは大腸菌を用いて、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(7)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab発現用ベクターにクローニングし、Fab発現ベクターを作製することができる。Fab発現用ベクターとしては、Fab用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pIT106(Science,240:1041−1043,1988)などがあげられる。Fab発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズマ層にFabを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFabとすることができ、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、培養上清中に活性を持ったFabが漏出する。リフォールディング後あるいは培養上清からは、抗原を結合させたカラムを用いることにより、均一なFabを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Guide,W.H.Freeman and Company,1992)。(ii)F(ab’)2の作製 F(ab’)2は、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理することにより、作製することができる。ペプシンの処理後は、Fabと同様の精製操作により、均一なF(ab’)2として回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,Academic Press,1995)。また、下記(iii)に記載のFab’をo−PDMやビスマレイミドヘキサンなどのようなマレイミドで処理し、チオエーテル結合させる方法や、DTNB[5,5’−dithiobis(2−nitrobenzoic acid)]で処理し、S−S結合させる方法によっても作製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。(iii)Fab’の作製 Fab’は、上記(ii)に記載のF(ab’)2をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、Fab’は遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(7)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab’発現用ベクターにクローニングし、Fab’発現ベクターを作製することができる。Fab’発現用ベクターとしては、Fab’用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pAK19(BIO/TECHNOLOGY,10:163−167,1992)などがあげられる。Fab’発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズマ層にFab’を生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFab’とすることができ、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収させることができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、プロテインGカラムなどを用いることにより、均一なFab’を精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。(iv)scFvの作製 scFvは遺伝子工学的には、ファージ又は大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(7)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、scFv発現用ベクターにクローニングし、scFv発現ベクターを作製することができる。scFv発現用ベクターとしては、scFvのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(GEヘルスケア バイオサイエンス社)、pHFA(Human Antibodies & Hybridomas,5:48−56,1994)などがあげられる。scFv発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、ヘルパーファージを感染させることで、ファージ表面にscFvがファージ表面蛋白質と融合した形で発現するファージを得ることができる。また、scFv発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズマ層にscFvを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるscFvとすることができ、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。(v)diabodyの作製 diabodyは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(7)に記載の抗体のVHとVLをリンカーがコードするアミノ酸残基が8残基以下となるように連結したDNAを作製し、diabody発現用ベクターにクローニングし、diabody発現ベクターを作製することができる。diabody発現用ベクターとしては、diabodyのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(GE ヘルスケア バイオサイエンス社)、pHFA(Human Antibodies Hybridomas,5,48,1994)などがあげられる。diabody発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズマ層にdiabodyを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdiabodyとすることができ、また、ペリプラズマ層に発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。(vi)dsFvの作製 dsFvは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。まず、上記(ii)、(iv)及び(v)に記載の抗体のVH及びVLをコードするDNAの適当な位置に変異を導入し、コードするアミノ酸残基がシステインに置換されたDNAを作製する。作製した各DNAをdsFv発現用ベクターにクローニングし、VH及びVLの発現ベクターを作製することができる。dsFv発現用ベクターとしては、dsFv用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pULI9(Protein Engineering,7:697−704,1994)などがあげられる。VH及びVLの発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズマ層に生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズマ層からVH及びVLを得、混合し、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdsFvとすることができる。リフォールディング後は、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過などにより、さらに精製することができる(Protein Engineering,7:697−704,1994)。(vii)CDRペプチドの作製 CDRを含むペプチドは、Fmoc法あるいはtBoc法等の化学合成法によって作製することができる。また、CDRを含むペプチドをコードするDNAを作製し、作製したDNAを適当な発現用ベクターにクローニングし、CDRペプチド発現ベクターを作製することができる。発現用ベクターとしては、CDRペプチドをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pLEX(Invitrogen社)、pAX4a+(Invitrogen社))などがあげられる。発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズマ層に生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズマ層からCDRペプチドを得、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過などにより、精製することができる(Protein Engineering,7:697−704,1994)。3.本発明の抗体又は機能的断片の性質 本発明の抗体又は機能的断片は下記のいずれかの特性を有する。(a)FGF23結合試験;FGF23蛋白質の配列番号4の25番目から251番目のアミノ酸残基を有する全長物に結合する。(b)インビトロ試験;FGF23の作用を検出できるようなアッセイにおいてFGF23の作用を抑制する。FGF23の作用をインビトロで検出する方法の一例としては、klotho発現細胞を用いたヒトFGF23刺激によるEarly growth response gene−1のプロモーター活性化(Nature,444:770−774,2006)があげられる。(c)インビボ試験;ヒトに投与したときに内在性のFGF23の作用を阻害し、血清リン濃度及び血清1,25D濃度を上昇させる。血清リン濃度及び血清1,25D濃度の上昇程度は既存の抗体である2C3B抗体(国際公開第WO03/057733号パンフレットで開示したFGF23蛋白質に対するマウスモノクローナル抗体、受託番号FERM BP−7838のハイブリドーマが産生する抗FGF23抗体)に比較して大きく、また血清リン濃度及び血清1,25D濃度の上昇期間も長い。例えば、カニクイザルに投与した場合、上昇した血清リン濃度の持続期間は、2C3B抗体の約3倍以上、好ましくは約5倍であり、上昇した血清1,25D濃度の持続期間は、2C3B抗体の約1.5倍以上、好ましくは約2.5倍である。 本発明は、さらに本発明のFGF23に対する抗体のアミノ酸配列をコードする核酸をも包含する。核酸はDNAであっても、RNAであってもよい。本発明の核酸は、好ましくはハイブリドーマC10が産生する抗体のアミノ酸配列をコードする核酸である。例えば、配列番号11に示される塩基配列の58番目のCから408番目のAで示される塩基配列にコードされる重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸が挙げられる。さらに、配列番号13に示される塩基配列の67番目のGから384番目のAで示される塩基配列にコードされる軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸が挙げられる。II.医薬組成物 本発明のヒト抗FGF23抗体又はその機能的断片を含有する医薬組成物である製剤もまた、本発明の範囲内に含まれる。このような製剤は、好ましくは、抗体又は機能的断片に加えて、生理学的に許容され得る希釈剤又はキャリアを含んでおり、他の抗体又は抗生物質のような他の薬剤との混合物であってもよい。適切なキャリアには、生理的食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコース液、及び緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、抗体は凍結乾燥(フリーズドライ)し、必要とされるときに上記のような緩衝水溶液を添加することにより再構成して使用してもよい。投与経路は経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内及び静脈内などの非経口投与をあげることができ、望ましくは静脈内投与である。投与形態としては、種々の形態で投与することができ、それらの形態としては噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。 乳剤及びシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類;p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤;ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。 カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤;デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤;ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤;脂肪酸エステルなどの界面活性剤;グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。 注射剤は、水、ショ糖、ソルビトール、キシロース、トレハロース、果糖などの糖類;マンニトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコール;リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グルタミン酸緩衝液などの緩衝液;脂肪酸エステルなどの界面活性剤などを添加剤として用いることができる。 非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射剤の場合は、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。使用する際に適当な担体、例えば発熱物質不含の滅菌した水で再溶解させる粉体であってもよい。これらの剤形は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射等が挙げられる。また、その投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。 座剤はカカオ脂、水素化脂肪又はカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤は本発明の抗体又は抗体の機能的断片そのものを用いて調製することもでき、あるいは受容者(患者)の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ前記抗体又は抗体の機能的断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせるための担体などを用いて調製される。 担体として具体的には乳糖、グリセリンなどが例示される。前記抗体又は抗体の機能的断片の性質や用いる担体の性質に応じて、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。 その投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜1000mgであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg〜1000mgを皮下注射、筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。 本発明は、本発明の抗体若しくはその機能的断片又はそれらを含む医薬組成物を用いた下記の疾患の予防又は治療法をも包含し、さらに本発明は本発明の抗体又はその機能的断片の下記の疾患の予防又は治療剤の製造への使用をも包含する。 本発明の抗体又はその機能的断片により予防・治療が可能な疾患はFGF23の過剰作用が示されている腫瘍性骨軟化症、ADHR、XLH、fibrous dysplasia、McCune−Albright syndrome及び常染色体劣性低リン血症などのミネラル代謝異常を伴う疾患があげられる。さらに、これらの疾患に対して認められる低リン血症、骨石灰化不全、骨痛、筋力低下、骨格の変形、成長障害、低1,25D血症などについて改善効果が期待される。またFGF23が生理的条件下で重要な役割を果たしていることから、FGF23のリン代謝調節、ビタミンD代謝調節を介したカルシウム代謝調節作用を本発明の抗体又はその機能的断片が制御することによって骨粗鬆症、クル病(低リン血症性クル病、ビタミンD抵抗性クル病を含む)、高カルシウム血症、低カルシウム血症、異所性石灰化、骨硬化症、パジェット病、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症及び掻痒等の、ミネラル代謝やビタミンD代謝の異常に起因する疾患に対して治療的及び予防的に用いることができる。さらに、腎不全において血中のFGF23濃度の上昇が報告されていることから、腎性骨異栄養症、透析骨症、尿細管機能障害等に代表される腎不全や腎不全時人工透析に合併する疾患に対しても治療的及び予防的に用いることができる。一方で1,25Dは上述したカルシウムなどのミネラル代謝のみならず、細胞増殖抑制能、細胞分化促進能なども報告されていることから、本発明の抗体又はその機能的断片により1,25Dによって増殖や分化などの制御を受ける細胞に起因する疾患に対して治療的及び予防的に用いることができる。 また、腫瘍性骨軟化症においては腫瘍がFGF23を過剰産生して病態を惹起させていることが知られているが、本抗体に放射性同位元素等の放射性物質若しくは低分子の薬剤等の各種毒素など治療試薬を結合させたものを用いることにより、本抗体がFGF23過剰産生腫瘍に集積し、腫瘍の退縮を誘導することも考えられる。III.製剤例 本発明の抗体又はその機能的断片を含む製剤は、水又は水以外の薬理学的に許容し得る溶液に溶解した無菌性溶液又は懸濁液のアンプルとして使用に供される。また、無菌粉末製剤(本発明の分子を凍結乾燥するのが好ましい)をアンプルに充填しておき、使用時に薬理学的に許容し得る溶液で希釈して用いてもよい。 以下、実施例を以て本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がその実施例に記載される態様のみに限定されるものではない。実施例1 組換え体ヒトFGF23発現ベクターの作製(1) ヒトFGF23H蛋白質発現ベクターの構築 ヒトFGF23をコードするcDNAは、腫瘍性骨軟化症の責任腫瘍のヒトcDNAライブラリーを鋳型とし、F1EcoRIプライマー(配列番号1)とLHisNotプライマー(配列番号2)とLA−Taq DNA polymeraseを用いて96℃で1分間保温した後、96℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒からなる工程を1サイクルとした35サイクルのPCRを実施することにより増幅した。F1EcoRIプライマーはヒトFGF23をコードする塩基配列のさらに5‘側上流に存在する配列にアニールし、その増幅断片のヒトFGF23をコードする領域の5’側にEcoRI制限酵素部位を付加する。LHisNotプライマーはヒトFGF23をコードする配列の終始コドンの5‘側の配列とアニールする配列とHis6−tag配列(His−His−His−His−His−His)をコードする配列に続く終始コドンとNotI制限酵素配列を含む。その結果、増幅断片はヒトFGF23蛋白質のカルボキシ末端にHis6−tag配列を付加したものをコードすることになり、その下流にNotI制限酵素部位を有する。この増幅断片をEcoRIとNotIで消化し、同様にEcoRIとNotIで消化した動物細胞発現ベクターであるpcDNA3.1Zeo(Invitrogen社)と連結した。このように作製した発現ベクターをクローニングし、塩基配列を決定して目的のHis6−tag配列が付加されたヒトFGF23蛋白質をコードしていることを確認した。このベクターをpcDNA/hFGF23Hと称す。(2) ヒトFGF23蛋白質発現ベクターの構築 pcDNA/hFGF23Hを鋳型としてF1EcoRIプライマーとLNotプライマー(配列番号3)とLA−Taq DNA polymeraseを用いて94℃で1分間保温した後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分からなる工程を1サイクルとした25サイクルのPCRを実施することにより増幅した。反応終了後、ヒトFGF23をコードする断片をEcoRIとNotIで消化したのち精製した。これを、動物細胞発現ベクターであるpEAK8(Edge Biosystem社)に分子内リボゾームエントリー配列(IRES)と増強型緑色蛍光蛋白質(EGFP)を連結したpEAK8/IRES/EGFPベクターのEcoRIとNotI制限酵素部位に挿入してクローニングした。取得したプラスミドの塩基配列を決定し、ヒトFGF23蛋白質をコードしていることを確認した。このベクターをpEAK8/IRES/EGFP/hFGF23と称す。(実施例2)組換え体ヒトFGF23蛋白質及び組換え体変異ヒトFGF23H蛋白質の発現(1)pcDNA/hFGF23Hをベクター中のアンピシリン耐性遺伝子内にあるFspI制限酵素部位で切断して直鎖化し、精製した。CHO Ras clone−1細胞(Shirahata,S.,et al.Biosci Biotech Biochem,59:345−347,1995)と混和してGene Pulser II(Bio Rad社)を用いて電気穿孔法にて細胞への遺伝子導入を行った。この細胞を10%FCSを含むMEMα培養液(Gibco BRL社)で24時間培養したのち、終濃度0.5mg/mlとなるようにZeocin(Invitrogen社)を添加して1週間培養した。接着し増殖した細胞をトリプシンで遊離して、終濃度0.3mg/mlのZeocin存在下で限界希釈法によるクローニングを行い、クローン化細胞を複数得た。これらの細胞の中でヒトFGF23H蛋白質を最もよく発現する細胞をウエスタンブロッティングにて同定した。各クローン化細胞の培養上清を採取して、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動を行ったのち、PVDF膜(Millipore社)に蛋白質を転写し、抗His−tag(カルボキシ末)抗体(Invitrogen社)とECL発光システム(GEヘルスケア バイオサイセンス社)を用いて約32kDa付近のFGF−23H蛋白質に由来するシグナルを検出した。その結果、#20と称すクローンにおいて最も高い発現が認められ、これをCHO−OST311Hと命名して2000年8月11日付けで独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託した(受託番号:FERM BP−7273)。本明細書では、CHO−OST311HをCHO−hFGF23Hと称する。(2)ヒトFGF23発現細胞の取得 pEAK8/IRES/EGFP/hFGF23ベクターのCHO Ras clone−1細胞への導入は膜融合脂質を用いた遺伝子導入法により行った。CHO Ras clone−1細胞を6−well plateに底面の約60%を細胞が覆う程度に培養する。そして培養液を除去し、血清を含まないMEMα培養液を1ml添加する。導入するベクター2.5μgと10μlのTransfectam(登録商標)(Promega社)をそれぞれ50μlの血清を含まないMEMα培養液と混和して、両者を混合して10分間静置したのち、両者を混合して予め準備しておいた6−well plateに添加した。2時間培養した後、このDNAを含む培養液を除去して10%のFCSを含む培養液に置換して終夜培養した。翌日、終濃度が5μg/mlとなるようにPuromycin(Sigma社)を添加して、薬剤耐性細胞を選択した。このようにして得られた薬剤耐性細胞は限界希釈法にてクローン化を行った。さらにウエスタンブロットにより目的の蛋白質を最もよく発現する細胞株を取得した。この細胞をCHO−hFGF23と称す。(3) 組換え体ヒトFGF23蛋白質の動物細胞での発現と検出 CHO−hFGF23Hの培養上清中の組換え体をカルボキシ末端のHis6−tag配列に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングにて検出すると、約32kDaのバンドと約10kDaのバンドが認められた。この二つのバンドをゲルから切り出し、アミノ末端側のアミノ酸配列を決定したところ、分子量の大きい約32kDaのバンドは配列番号4の25番目からのアミノ酸配列が検出され、ヒトFGF23蛋白質から分泌過程でシグナル配列が除去されたものと考えられた。一方、分子量の小さいバンドからは配列番号4の180番目からのアミノ酸配列が確認され、179番目と180番目の間での切断により生じたカルボキシ末端側断片であることが判明した。また、ヒトFGF23のアミノ末端側を認識するポリクローナル抗体を用いて検出することで、179番目よりアミノ末端側の配列を持つと考えられるポリペプチド(アミノ末端側断片)の存在も認められた(国際公開第WO02/14504号パンフレット)。 同様にHis6−tag配列の付加されていないCHO−hFGF23の培養上清においても、179番目と180番目のアミノ酸残基の間で切断されることを確かめた(国際公開第WO02/14504号パンフレット)。そこで、切断を受けない活性体と思われる配列番号4の25番目から251番目の全長ヒトFGF23蛋白質(FGF23全長体と呼ぶことがある)を、アミノ末端又はカルボキシ末端側断片と分離して精製する目的で以下の操作を行った。(4)組換え体全長ヒトFGF23蛋白質の精製 CHO−hFGF23の培養上清をポアサイズが0.2μmのメンブレンであるSuperCap(登録商標)(Pall Gelman Laboratory社)でろ過し、ろ過された溶液をSP−Sepharose FF(GEヘルスケア バイオサイセンス社)に通した。カラムとの親和性が弱い物質を50mMのリン酸ナトリウム緩衝液,pH6.7で洗浄、溶出させた。この画分に179番目と180番目の間で切断されて生じたカルボキシ末端側の断片が含まれていた。カラム保持された蛋白を0から0.7MまでのNaCl濃度勾配で溶出させたところ、約0.3MのNaClで溶出される画分に全長ヒトFGF23蛋白質が認められた。次に金属アフィニティカラムであるTalon Superflow(登録商標)(Clontech社)に吸着させたのち、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液,pH6.7で洗浄したのち、Imidazoleの濃度を変化させて添加し全長ヒトFGF23蛋白質を溶出精製した。さらに、目的の蛋白質を含む画分をSP Sepharose FFカラムに吸着、溶出させて精製した。(実施例3)ヒト抗体産生マウス(KMマウス)の作製 ヒトモノクローナル抗体作製のための完全ヒト抗体を産生するマウスは内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体の遺伝的背景を有しており、かつ、ヒトIg重鎖遺伝子座を含む14番染色体断片(SC20)及びヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を同時に保持する。このマウスはヒトIg重鎖遺伝子座を持つ系統Aのマウスと、ヒトIgκ鎖トランスジーンを持つ系統Bのマウスとの交配により作製された。系統Aは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、子孫伝達可能な14番染色体断片(SC20)を保持するマウス系統であり、例えば富塚らの報告[Tomizuka.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.,97:722−727,2000]に記載されている。また、系統Bは内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、ヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を保持するマウス系統(トランスジェニックマウス)であり、例えばFishwildらの報告[Nat Biotechnol.,14:845−851,1996]に記載されている。 系統Aの雄マウスと系統Bの雌マウス、あるいは系統Aの雌マウスと系統Bの雄マウスの交配により得られた、血清中にヒトIg重鎖及びκ軽鎖が同時に検出される個体[Ishida&Lonberg,IBC‘s 11th Antibody Engineering,Abstract 2000]を、以下の免疫実験に用いた。なお、上記ヒト抗体産生マウスは、契約を結ぶことによって、キリンファーマ株式会社より入手可能である。(実施例4) ヒトFGF23に対するヒトモノクローナル抗体の作製(1)ヒトFGF23に対するヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの取得 本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発行 1991)等に記載されるような一般的方法に従って調製した。免疫原としては、実施例2で調製した全長ヒトFGF23蛋白質を用いた。被免疫動物は、実施例3で作製したヒト免疫グロブリンを産生するヒト抗体産生マウスを用いた。 まずFGF23に対するヒトモノクローナル抗体の調製を目的として、ヒト抗体産生マウスに、実施例2で作製した精製全長ヒトFGF23蛋白質を腹腔内にRIBIアジュバント(コリクサ社)と混合して、マウスあたり20μgを初回免疫した。初回免疫と同様に精製FGF23とRIBIアジュバントを2週間間隔で免疫し、計3回免疫した。5個体のマウスに免疫し、3回目の免疫後に採血し、血清中のFGF23に対するヒトIgG抗体の存在を、後述する酵素標識免疫吸着アッセイ(ELISA)法によって確認した。国際公開第WO03/057733号パンフレットで開示したFGF23蛋白質に対するマウスモノクローナル抗体3C1E抗体(受託番号FERM BP−7839のハイブリドーマが産生する抗FGF23抗体)を用いて固相化したFGF23を用いたELISAにおいて最も高い値を示した血清のマウスを選んで、以下に述べる脾臓の取得3日前に、全長ヒトFGF23蛋白質20μg/マウス個体を尾静脈投与した。 免疫されたマウスから脾臓を外科的に取得し、350mg/mL炭酸水素ナトリウム、50単位/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシンを含む無血清DMEM培地(Invitrogen社(以下「無血清DMEM培地」という)10mL中に入れ、メッシュ(セルストレイナー:ファルコン社)上でスパーテルを用いてつぶした。メッシュを通過した細胞懸濁液を遠心して細胞を沈澱させた後、この細胞を無血清DMEM培地で2回洗浄してから、無血清DMEM培地に懸濁して細胞数を測定した。一方、10%FCS(シグマ社)を含むDMEM培地(Invitrogen社)(以下、「血清入りDMEM培地」という)にて、37℃、5%炭酸ガス存在下で細胞濃度が1×106細胞/mLを越えないように培養したミエローマ細胞SP2/0(ATCC No.CRL−1581)を同様に無血清DMEM培地で洗浄し、無血清DMEM培地に懸濁して細胞数を測定した。回収した脾臓細胞の懸濁液とマウスミエローマ懸濁液とを細胞数5:1で混合し、遠心後、上清を完全に除去した。このペレットに、融合剤として50%(w/v)ポリエチレングリコール1500(ベーリンガーマンハイム社)1mLを、ピペットの先でペレットを撹拌しながらゆっくり添加した後、予め37℃に加温しておいた無血清DMEM培地1mLを2回に分けてゆっくり添加し、さらに7mLの無血清DMEM培地を添加した。遠心後、上清を除去して得られた融合細胞を、以下に記載する限界希釈法によるスクリーニングに供した。ハイブリドーマの選択は、10%FCS、IL−6(10ng/mL)(又は10%ハイブリドーマクローニングファクター(以下「HCF」という。:バイオベース社))及びヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、チミジン(T)(以下、「HAT」という。:シグマ社)を含有するDMEM培地中で培養することにより行った。さらに、HT(シグマ社)、10%FCS、10%HCFを含有するDMEM培地を用いて限界希釈法によりシングルクローンにした。培養は、96穴マイクロタイタープレート(ベクトンディッキンソン社)中で行った。抗FGF23ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンの選択(スクリーニング)及び各々のハイブリドーマが産生するヒトモノクローナル抗体の特徴付けは、後述する酵素標識免疫吸着アッセイ(ELISA)により行った。その結果、ヒト免疫グロブリンγ鎖(hIgγ)及びヒト免疫グロブリン軽鎖κを有し、かつヒトFGF23に特異的な反応性を有するヒトモノクローナル抗体を産生する多数のハイブリドーマを得た。得られた多数のハイブリドーマから、FGF23蛋白質を認識する抗体を産生するハイブリドーマとして特に2つのクローン(C10及びC15)を得た。なお、本実施例を含め以下のいずれの実施例中においては、各々の本発明の抗FGF23ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンは記号を用いて命名した。また、当該記号の前後に「抗体」を付したものは、ハイブリドーマにより産生される抗体、又は当該ハイブリドーマから単離された抗体遺伝子(全長あるいは可変領域)を保持する宿主細胞により生産された組換え抗体を意味する。また文脈上明らかな範囲において、ハイブリドーマクローンの名称が抗体の名称をあらわす場合がある。ハイブリドーマクローンC10は、2007年2月2日付で独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号 FERM BP−10772(識別のための表示:C10)として寄託されている。(2)ハイブリドーマ上清からのC10及びC15抗体の精製 実施例4(1)で得られたC10及びC15ハイブリドーマはウシインシュリン(5μg/ml、Invitrogen社)、ヒトトランスフェリン(5μg/ml、Invitrogen社)、エタノールアミン(0.01mM、シグマ社)、亜セレン酸ナトリウム(2.5×10−5mM、シグマ社)、1%Low IgG Fetal Bovine Serum(ハイクローン社)含有eRDF培地(極東製薬社)に馴化した。フラスコにて培養し、培養上清を回収した。培養上清をProtein G Fast Flow gel(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用い、吸着緩衝液としてPBS(−)、溶出緩衝液として0.1Mグリシン緩衝液(pH2.8)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は1M Tris(pH9.0)を添加してpH7.2付近に調整した。調製された抗体溶液は、Sephadex G25脱塩カラム(NAPカラム;GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いてPBSに置換し、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX−GV(Millipore社)でろ過滅菌し、精製C10及びC15抗体を得た。精製抗体の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mLを1.40Dとして算出した。(実施例5) C10抗体をコードする抗体遺伝子の取得と配列の決定(1)C10抗体のcDNA合成 C10ハイブリドーマで発現するヒト抗体重鎖、及び軽鎖の抗体の可変領域を含むDNA断片を取得するために、ヒト抗体重鎖、及び軽鎖の各々の定常領域に特異的なプライマーを用いた5’RACE(5’rapid amplification of cDNA ends)法によるクローニングを行なった。具体的には、BD SMART RACE cDNA Amplification Kit(ベクトン・ディキンソン・バイオサイエンス・クローンテック社)を用い、添付の説明書にしたがって実施した。 cDNA合成の材料としては、C10ハイブリドーマにRNA抽出用試薬であるISOGEN(ニッポンジーン社)を添加し、取扱説明書にしたがってTotal RNA 15μgを精製した。精製したtotal RNAより各約1μgを鋳型として用いて、1st strand cDNAを作製した。RNA以外の試薬、及び、酵素類はBD SMART RACE cDNA Amplification Kit付属のものを使用した。1st strand cDNAの合成は、 Total RNA 1μg/3μl 5’CDS 1μl SMART Oligo 1μl 上記組成の反応液を70℃で2分間インキュベートした後、 5×Buffer 2μl DTT 1μl dNTP mix 1μl PowerScript Reverse Transcriptase 1μlを加え42℃で1.5時間インキュベートした。 さらに、50μlのTricine−EDTA Bufferを加えた後、72℃で7分間インキュベートし、1st strand cDNAを取得した。(2)PCRによる重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の増幅と塩基配列の確認(2)−1;PCRによる重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の増幅 C10抗体をコードする遺伝子のcDNAを増幅するために、ヒト抗体特異的配列を有する3’プライマー(具体的な配列は後述)とBD SMART RACE cDNA Amplification Kitで合成されたcDNAの5’末端に付加された配列に特異的にハイブリダイズする5’プライマー(Universal primer A mix)をPCR用のプライマーセットとして、またPCR用酵素としてKOD−Plus−DNAポリメラーゼ(トーヨーボー社)を用いて、下記の反応液を調製してPCRに供した。 sterile H2O 28μl 1st strand cDNA 2.5μl KOD−Plus−buffer(10X) 5μl dNTP Mix(2mM) 5μl MgSO4(25mM) 2μl KOD−Plus−(1unit/μl) 1μl Universal primer A mix(UPM)(10X) 5μl Gene specific primers(GSP)(10μM) 1.5μl Total volume 50μl 重鎖遺伝子の増幅反応には、SMART RACE cDNA Amplification Kit付属のUPMプライマーとIgG1pプライマー(配列番号5)を用い、他方、軽鎖遺伝子の増幅にはUPMプライマーとhk−2(配列番号6)プライマーの各セットを使用した。 また反応温度条件は次のとおりである。94℃/30秒間、72℃/3分間のサイクルを5回反復、94℃/30秒間、70℃/30秒間、72℃/3分間のサイクルを5回反復、94℃/30秒間、68℃/30秒間、72℃/3分間のサイクルを25回反復した。 さらに、この反応液2μlにTricine−EDTA Buffer98μlを加えて希釈したもの5μlを鋳型とし、第二(ネスト)PCRを実施した。PCR反応溶液の組成を次に示す。 sterile H2O 30μl 第一PCR反応液(50倍希釈) 5μl KOD−Plus−buffer(10X) 5μl dNTP Mix(2mM) 5μl MgSO4(25mM) 2μl KOD−Plus−(1unit/μl) 1μl Nested Universal primer A(NUP;10μM) 1μl Gene specific primers(GSP)(10μM) 1μl Total volume 50μl 上記反応のプライマーセットとして、重鎖遺伝子増幅用の場合は、NUPプライマー(SMART RACE cDNA amplification Kit 付属;ベクトン・ディキンソン・バイオサイエンス・クローンテック社)とhh2プライマー(配列番号7)を使用して、また、軽鎖遺伝子の増幅の場合は、NUPプライマーとhk−5プライマー(配列番号8)を用いた。反応温度条件としては、94℃の初期温度で1分間の後、94℃/5秒間、68℃/10秒及び72℃/3分間のサイクルを20回反復、最後に72℃/7分間の加熱を行なった。(2)−2;抗体遺伝子の塩基配列決定 増幅した重鎖PCR断片(以下HV[C]と記載:H鎖の5’非翻訳領域−リーダー配列、可変領域(HV)及び定常領域の一部([C])より構成される)、及び、軽鎖のPCR増幅断片(以下LV[C]と記載:L鎖の5’非翻訳領域−リーダー配列、可変領域(LV)及び定常領域の一部([C])より構成される)は、エタノール沈殿で回収した後、アガロースゲル電気泳動で回収し、メンブランを用いるDNA精製キットであるQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)にて精製した。精製したHV[C]増幅断片あるいはLV[C]増幅断片は、それぞれZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)のPCR 4 Blunt−TOPOベクターにサブクローニングを行い、得られたクローンのプラスミドDNAについてインサートDNAの塩基配列を解析した。DNA塩基配列決定のためにプライマーとして、M13−20FW(配列番号9)及びM13RV(配列番号10)を用いた。C10抗体の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA塩基配列、並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。 また、PCR 4 Blunt−TOPOベクターにサブクローニングしたC10抗体の遺伝子配列には、ヒト抗体配列の定常領域も一部クローニングされてくることから、その領域についてもDNA塩基配列を解析した。その結果、KabatらによるEUインデックスにより示される重鎖定常領域の118番目から191番目のアミノ酸残基をコードする配列が確認でき、その領域においてヒトIgG1のアミノ酸配列と完全に一致し、C10抗体のサブクラスはIgG1であることが判明した。さらに同様な方法を用いて、C15抗体をコードする抗体遺伝子の取得と配列の決定も行った。(実施例6) 組換えC10抗体発現ベクターの構築 C10抗体発現ベクターの作製(図1に工程図を示す) 取得したC10抗体のLV[C]鎖を含むプラスミドDNAを鋳型として、末端に連結のための制限酵素部位(5’末側BglII、3’末側BsiWI)を付加するようにデザインしたプライマー、C10_L5_Bgl(配列番号15)及びC10_L3_Bsi(配列番号16)を用いて、C10抗体のLV(軽鎖のリーダー配列+可変領域)のDNAをKOD−Plus−DNAポリメラーゼによるPCRで増幅した。反応温度条件としては、94℃の初期温度で1分間の加熱後、94℃/5秒間と68℃/45秒間のサイクルを35回反復し、最後に72℃/7分間の加熱を行なった。増幅されたDNA断片を制限酵素BglIIとBsiWIで消化して、アガロースゲル電気泳動で約400bpのDNAを回収し精製した。他方、ベクターであるN5KG1−Val Larkベクター(IDEC Pharmaceuticals,N5KG1(US patent 6001358)の改変ベクター)については同様に制限酵素BglII、BsiWI処理を順次行った後、脱リン酸化処理としてAlkaline Phosphatase(E.coli C75)(宝酒造社)にて処理した後に、アガロースゲル電気泳動とDNA精製キットで約9kb弱のDNAを回収した。これら2つの断片をT4 DNA ligaseを用いてライゲーションして、大腸菌DH10Bへ導入して形質転換体を得た。インサートDNAを含む形質転換体のプラスミドDNAについてDNA塩基配列を解析して、N5KG1−Val LarkにC10抗体のLVがN5KG1−Val Larkのヒト抗体軽鎖定常領域をコードする5’上流にin−frameに挿入されたプラスミドDNA、N5KG1_C10_Lvを取得した。引き続いて、LVが挿入されたプラスミドベクター(N5KG1_C10_Lv)にC10抗体のHV(重鎖のリーダー配列+可変領域)の挿入を行なった。pCR4Blunt−TOPOベクターにサブクローニングしたC10抗体のHV[C]を含むプラスミドDNAを鋳型として、末端に連結のための制限酵素部位(5’末側SalI、3’末側NheI)を付加するようにデザインしたプライマー、C10_H5_Sal(配列番号17)及びC10_H3_Nhe(配列番号18)を用いて、HVをPCRで増幅した。反応温度条件としては、94℃の初期温度で1分間の加熱後、94℃/5秒間と68℃/45秒間のサイクルを35回反復し、最後に72℃/7分間の加熱を行なった。精製したHVの増幅DNA断片をpCR4Blunt−TOPOベクターにサブクローニングを行い、得られたクローンのプラスミドDNAについてインサートDNAの塩基配列を解析した。DNA塩基配列決定のためにプライマーとして、上記のM13−20FW及びM13RVを用いた。サブクローンについて挿入部分のDNA塩基配列解析を行い、鋳型としたHVと相違がなく、また、プライマー部分もデザインどおりの配列を有するプラスミドDNA(TOPO_C10_Hv)を選択した。そのDNAを制限酵素SalIとNheIで消化して、アガロースゲル電気泳動で約420bpのDNAを回収し精製し、同様に制限酵素処理(SalIとNheI)と脱リン酸化処理したN5KG1_C10_LvのDNA(約9kb)にT4 DNA ligaseを用いてライゲーションした後、大腸菌DH10Bへ導入して得られた形質転換体より、目的のプラスミドDNAを選択した。こうして得られた抗体発現プラスミドDNA、N5KG1_C10_LH(クローン#1)の大量精製を行い、L鎖全領域とH鎖全領域、及び、その挿入部位周辺のDNA塩基配列にクローニング工程での変異がないことを確認(図2、及び図3)した。DNA塩基配列の確認には、さらに配列番号19〜25の各プライマーを使用した。完成したC10抗体発現ベクターの簡単なマップを図4に示した。さらに同様な方法を用いて、組換えC15抗体発現ベクターの構築を行った。(実施例7) 組換えC10抗体の調製 構築したC10抗体発現ベクターを宿主細胞に導入して、C10抗体発現細胞を作製した。発現のための宿主細胞には、dihydrofolate reductase(DHFR)欠損のCHO DG44細胞(以下CHO細胞と表記、IDEC Pharmaceuticals社)を無血清培地であるEX−CELL 325−PF培地(2mM glutamine、100units/ml penicillin、100μg/ml streptomycin、hypoxanthine and thymidine(HT)サプリメント(1:100)(Invitrogen社)を含有。JRH社)に馴化した細胞株を用いた。宿主細胞へのベクターの導入はエレクトロポレーションにより実施した。エレクトロポレーションはC10抗体発現ベクター約2μgを制限酵素AscIで線状化し、BioRad Electroporatorをもちいて350V、500μFの条件で、4×106個のCHO細胞に遺伝子を導入し、96well culture plateに播種した。ベクターの導入処理後、G418を添加して培養を継続した。コロニーを確認した後、抗体発現株を選別した。選択したCHO細胞株をEX−CELL325−PF培地(2mM glutamine、100units/ml penicillin、100μg/ml streptomycin、hypoxanthine and thymidine(HT)サプリメント(1:100)(Invitrogen社)を含有)で5%CO2条件下で培養した。培養上清をMabselect Protein Aカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社)に吸着後、PBSで洗浄して、20mMクエン酸−Na、50mM NaCl(pH3.4)バッファーで溶出した。溶出液は50mM Phosphate−Na,pH7.0にて中和した。イオン交換水にて、約1.5倍に希釈してConductivityを4.0ms/cm以下に調製した。次に、Q−Sepharose(Hitrap Q HP、GEヘルスケア バイオサイエンス社)と、SP−Sepharose(HiTrap SP FF、GEヘルスケア バイオサイエンス社)を連結したカラムに、サンプルをチャージして吸着し、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)にて洗浄後、PBS(−)にて溶出した。調製された抗体溶液は、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX−GV(Millipore社)でろ過滅菌した。精製したC10抗体の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mLを1.4ODとして算出した。また、同様な方法で、組換えC15抗体の調製を行った。(実施例8)カニクイザルFGF23蛋白質発現ベクターの構築カニクイザルFGF23蛋白質発現ベクターの構築 カニクイザルのEDTA添加静脈血にPBS(−)で懸濁した5% Dextran T−2000(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を2対1の割合で混和し、赤血球を沈殿させた後に上清をリンパ球分離液(Ficoll−Paque)(GEヘルスケア バイオサイエンス社)に重層し、遠心することによりリンパ球画分を得た。得られたリンパ球をISOGEN−LS(ニッポンジーン社)に懸濁し、添付のプロトコルに従いカニクイザルリンパ球総RNAを得た。このカニクイザルリンパ球総RNAよりFirst Strand cDNA Synthesis Kit(Invitrogen社)を用いて添付のプロトコルに従いカニクイザルリンパ球cDNAライブラリーを作製した。カニクイザルFGF23をコードするcDNAは、カニクイザルリンパ球cDNAライブラリーを鋳型とし、monkeyFGF23FWプライマー(配列番号26)とmonkeyFGF23RVプライマー(配列番号27)とKOD plus DNA polymerase(東洋紡社)を用いて94℃で5分間保温した後、94℃で20秒、55℃で30秒、72℃で50秒からなる工程を1サイクルとした45サイクルのPCRを実施することにより増幅した。monkeyFGF23FWプライマーはヒトFGF23をコードする塩基配列の5’側上流に存在する配列にアニールし、その増幅断片のFGF23をコードする領域の5’側にEcoRI制限酵素部位を付加する。monkeyFGF23RVプライマーはヒトFGF23をコードする配列の終始コドンを含む配列にアニールする配列とNotI制限酵素配列を含む。この増幅断片をEcoRIとNotIで消化し,発現ベクターであるpEAK8(Edge Biosystem社)に分子内リボゾームエントリー配列(IRES)と増強型緑色蛍光蛋白質(EGFP)を連結したpEAK8/IRES/EGFPベクターのEcoRIとNotI制限酵素部位に挿入してクローニングした。取得したプラスミドの塩基配列を決定し、カニクイザルFGF23蛋白質をコードしていることを確認した。このベクターをpEAK8/IRES/EGFP/monkeyFGF23と称す。また、本実施例によって得られたカニクイザルFGF23の核酸配列及びアミノ酸配列を配列番号28及び29にそれぞれ記載する。(2) カニクイザルFGF23発現細胞上清の作製 pEAK8/IRES/EGFP/monkeyFGF23をPEAK rapid細胞(Edge Biosystem社)にリン酸カルシウム法により一過性に導入し、その発現培養上清を得た。(実施例9)カニクイザルFGF23へのC10抗体の結合性の検証 C10抗体がヒトFGF23のみならずカニクイザルFGF23に同様に結合することをサンドイッチELISAを用いた以下の方法で調べた。実施例4で作製したC10抗体、2C3B抗体及びヒトIgG1コントロール抗体を50mM NaHCO3の溶液に5μg/mlの濃度に希釈し、ELISA用96穴マイクロプレート(Maxisorp(登録商標)、Nunc社)の各ウェルに加え、4℃で12時間インキュベートし、C10抗体、2C3B抗体及び対照としてヒトIgG1コントロール抗体をマイクロプレートに吸着させた。次にこの溶液を除去し、各ウェルにブロッキング試薬(SuperBlock(登録商標)Blocking Buffer、PIERCE社)を加え室温で30分間インキュベートしたのち、各ウェルを0.1%のTween20を含有するTris−buffered saline(T−TBS)で2回洗浄した。このように抗FGF23抗体をコーティングしたマイクロプレートの各ウェルに、実施例2で精製した全長ヒトFGF23蛋白質又は実施例8で作製したカニクイザルFGF23発現細胞上清を適当な濃度に希釈して各ウェルに加え、固相化抗体と2時間反応させた後、各ウェルを、0.1%のTween20を含有するTris−buffered saline(T−TBS)で2回洗浄した。次いで、各ウェルにビオチン標識した3μg/mLの3C1E抗体を室温下で1.5時間インキュベートし、固相化抗体に結合したヒト又はカニクイザルFGF23にビオチン標識した3C1E抗体を結合させた。T−TBSで洗浄後、さらに、5000倍に希釈したHorseraddish peroxidase標識ストレプトアビジン(DAKO社)を1時間反応させた後、T−TBSで3回洗浄した。次にテトラメチルベンジジン(DAKO社)を含む基質緩衝液を各ウェルに加え、室温下で30分間インキュベートした。次いで、0.5M硫酸を各ウェルに加え、反応を止めた。参照波長を570nmとして波長450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(MTP−300、コロナ電気社)で測定した。ヒト全長FGF23蛋白質及びカニクイザルFGF23発現培養上清を同様に公比3倍で希釈したときの反応性を比較した。このときの結果を図5A及びBに示す。図5Aの結果から明らかなようにC10抗体又は2C3B抗体を固相化したとき、ヒト全長FGF23蛋白質への反応性は同程度である。この条件で、カニクイザルFGF23発現培養上清の希釈系列に対する反応性に関して、C10抗体と2C3B抗体に大きな違いは観察されない(図5B)。すなわち、C10抗体は2C3B抗体と同様にヒト及びカニクイザルFGF23と結合性を有することが証明された。(実施例10)C10抗体と2C3B抗体の正常カニクイザルの血中リン濃度及び血中1α,25ジヒドロキシビタミンD濃度に対する作用の比較 FGF23はマウスにおいて腎臓からリンを排泄し、血清リン濃度を減少させ、また腎臓におけるビタミンD活性化酵素を阻害し血中1α,25−ジヒドロキシビタミンD濃度(以下1,25Dという)を減少させる作用をもつ(国際公開第WO02/14504号パンフレット)。2C3B抗体などFGF23に対して抑制作用すなわち中和活性を有するような抗体を正常マウスに投与すると、内在性のFGF23の作用が抑制され、血清リン濃度及び血清1,25D濃度が上昇することが示されている(国際公開第WO03/057733号パンフレット)。よってFGF23に対する中和活性を有する抗体はFGF23過剰に由来する腫瘍性骨軟化症、XLHなどを含むヒトの疾患において治療効果を有することが強く示唆される。そこで、本研究において取得されたヒト抗体であるC10抗体の生体内でのFGF23中和活性を検討した。特に、ヒトでの薬理効果を期待することからげっ歯類などに比較して、進化上ヒトに近い動物種であるサルの内在性FGF23の機能を抑制し、その血清リン濃度及び血清1,25D濃度の上昇を指標として、中和活性能を測定した。C10抗体の比較対照として、マウス抗体である2C3B抗体を用いて実験を行った。 C10抗体と2C3B抗体の血清リン濃度上昇作用を、無処置の正常カニクイザルを用いて以下の方法で比較した。C10抗体は実施例4で作製したものを用いた。実験動物には、雌性カニクイザル、2〜3歳、体重2〜4kgを媒体投与群、2C3B抗体投与群は群3頭ずつ、C10抗体を投与した群は4頭使用した。C10抗体及び2C3B抗体は、それぞれPBS(−)で3mg/mLの濃度に調製し、投与液とした。陰性対照には、媒体であるPBS(−)を用いた。C10抗体及び2C3B抗体は、それぞれ3mg/kgとなるように1mL/kgの容量で上腕橈側皮静脈より1mL/分の流速で単回投与した。血清リン濃度はLタイプワコー無機リン(和光純薬工業社)試薬を用いて日立自動分析装置7180(日立製作所社)で測定した。血清1,25D濃度は1,25(OH)2D RIAキット「TFB」(Immunodiagnostic Systems社)を用いて測定した。測定は抗体投与後、0.5、1、2、3、5、7、10、14、21、28、35、42、49日目にそれぞれ行なった。データは平均値+/−標準誤差で示した。各抗体投与後の経時的採血による血清リン濃度の10日目までの推移を図6に示す。PBS(−)投与群では、血清リン濃度は試験期間を通してほぼ一定の濃度であったのに対し、C10抗体投与群及び2C3B抗体投与群では、投与前及びPBS(−)投与群と比較して、明らかな血清リン濃度の上昇が認められた。C10抗体投与群及び2C3B抗体投与群とも、最も高い血清リン濃度が認められた時期は、ともに抗体投与後5日目であり、このときの血清リン濃度は、PBS(−)投与群、2C3B抗体投与群及びC10抗体投与群でそれぞれ5.28mg/dl、8.10mg/dl、9.59mg/dlであった。この抗体投与後5日目の2C3B抗体投与群とC10抗体投与群の血清リン濃度について同時期のPBS(−)投与群の血清リン濃度からの上昇値を比較すると、2C3B投与群の血清リン濃度が2.82mg/dlであるのに対し、C10抗体投与群では4.31mg/dlであり、C10抗体は2C3B抗体に比べ約1.5倍以上血清リン濃度を高く誘導した(図7)。このように、C10抗体投与群の血清リン濃度上昇作用は、2C3B抗体投与群に比較して、顕著に高かった。また、2C3B抗体投与群の血清リン濃度は、投与後10日目でPBS(−)の血清リン濃度と同等の値になっていたが、C10抗体投与群の血清リン濃度(8.76mg/dl)は依然として2C3B抗体投与群の最高値(8.10mg/dl)よりも高い値を維持していた(図6)。さらに、C10抗体による血清リン濃度の上昇の持続期間は2C3B抗体によるものよりもはるかに長く、PBS(−)投与群との有意差を有する上昇期間が2C3Bで7日間であったのに対し、C10抗体では驚くべきことに35日間と持続期間が約5倍も長くなった。同様に、抗体投与後の1,25D濃度に関しても、2C3B抗体に比較して、C10抗体は顕著な上昇及びその持続期間の延長を示した(図8)。この結果は、既存のFGF23中和抗体である2C3B抗体と比較して、カニクイザルにおいて、C10抗体はより強力な血清リン濃度上昇及び血清1,25D上昇作用を有する、すなわち強力なFGF23中和活性を有することを示している。現在、XLHなどにおける低リン血症性クル病の現状の治療においては一日に複数回のリンやビタミンD製剤の大量の投与を行い、かろうじて正常域のリン濃度に保つ治療が行われている。頻回の服用のコンプライアンスも悪いという報告もある。本研究におけるC10抗体の単回の投与において、血清リン濃度、血清1,25D濃度の持続的な上昇作用が観察されたことは、低リン血症治療薬として現状の治療に比して、C10抗体は顕著な優位性を有する治療である可能性が示唆された。(実施例11) C15抗体のヒト及びカニクイザルFGF23への反応性の確認 実施例1で作製したpEAK8/IRES/EGFP/hFGF23又は実施例8で作製したpEAK8/IRES/EGFP/monkeyFGF23をPEAK rapid細胞(Edge Biosystem社)にリン酸カルシウム法により一過性に遺伝子導入した。導入から3日目に、各培養上清を回収し、一次抗体として、実施例13で作製したC15抗体を用い、ウエスタンブロットを行った(図9)。その結果、C15はカニクイザルFGF23もヒトFGF23と同様に結合することが示された。(実施例12)C10抗体とC15抗体の正常カニクイザルの血中リン濃度及び血中1α,25ジヒドロキシビタミンD濃度に対する作用の比較 実施例11によってC15抗体がC10抗体と同様に、ヒト及びカニクイザルFGF23組換え蛋白に対し結合活性を有することを示された。そこで、C10抗体及びC15抗体について、正常カニクイザルに投与することにより、生体内でのFGF23中和活性を比較した。カニクイザル内在性FGF23に対する中和活性の評価は、血清リン濃度上昇を指標として実施した。C10抗体又はC15抗体は実施例7で作製したものを用いた。実験動物には、2〜3歳、体重2〜3kgの正常カニクイザルを使用し、1群あたりオス2頭、メス1頭の計3頭とした。希釈媒体にはPBS(−)を使用し、C10抗体は1mg/mL及び3mg/mL、C15抗体は3mg/mLの濃度となるように調製した。C10抗体は投与量が1mg/kg及び3mg/kgとなるように、またC15抗体は3mg/kgとなるように、1mL/kgの容量で伏在静脈より約1mL/分の流速で単回投与した。血清リン濃度はLタイプワコー無機リン(和光純薬工業社)試薬を用いて日立自動分析装置7180(日立製作所社)で測定した。採血は、抗体投与前、及び投与1、3、5、7、10、14、21及び28日後に実施し、すべての採血ポイントについて血清リン濃度の測定を行なった。C10抗体1mg/kg群、C10抗体3mg/kg群及びC15抗体3mg/kg群の抗体投与前の血清リン濃度は、それぞれ5.37、5.70及び5.58mg/dLであり、群間の差はなかった。投与後、すべてのカニクイザルで、血清リン濃度の上昇が認められ、C10抗体のみならずC15抗体もカニクイザル内在性FGF23に対し中和活性を有することが示された。C10抗体1mg/kg群、C10抗体3mg/kg群及びC15抗体3mg/kg群のそれぞれの血清リン濃度は投与3日後で、9.03、9.10及び8.64mg/dLであった。この時、C10抗体1mg/kg群及びC15抗体3mg/kg群の血清リン濃度は最高値を示した。一方で、C10抗体3mg/kg群の血清リン濃度はさらに上昇し投与5日後に最大値を示し、その値は9.75mg/dLであった。投与前後の血清リン濃度の最大上昇幅は、C10抗体1mg/kg群、C10抗体3mg/kg群及びC15抗体3mg/kg群でそれぞれ3.67、4.65及び3.06mg/dLとなった。この結果より、3mg/kgの同用量においては、C10抗体がC15抗体に比べて、血清リン濃度上昇作用が強いことが示されただけでなく、驚くべきことに、1mg/kgの用量のC10抗体は3mg/kgのC15抗体よりも血中リン濃度を上昇させた。次に、投与前に比べて血清リン濃度が上昇している期間を比べた。その結果、C10抗体1mg/kg群、C10抗体3mg/kg群及びC15抗体3mg/kg群でそれぞれ14、28及び7日間となった。この結果より、3mg/kgの同用量においては、C10抗体がC15抗体に比べて、血清リン濃度上昇作用を持続することが示されただけでなく、驚くべきことに、1mg/kgの用量のC10抗体は3mg/kgのC15抗体よりも血中リン濃度を長期に渡り高値に維持した。以上の結果より、C10抗体はC10抗体と同時に取得したC15抗体に比べてカニクイザルにおける血清リン濃度上昇作用及び血清リン上昇持続作用が強いことが明らかになった。すなわち、C10抗体はC15抗体に比べてカニクイザルFGF23に対する中和活性が顕著に強いことが明らかになった。(実施例13)ヒトFGF23 DNA断片(シグナル配列無し)の作製 KOD−plus−DNAポリメラーゼ(トーヨーボー社)を用い添付文書にしたがって反応液を調製し、50μl反応液中にFGF23(−SP)FWプライマー(配列番号34)とFGF23(−SP)RVプライマー(配列番号35)を各15pmol、鋳型としてヒトFGF23−cDNA(開始コドンから終止コドンを含む756bp配列番号36)を添加し、94℃3分保温した後、98℃15秒、63℃15秒及び68℃2分30秒を1サイクルとして30サイクル増幅し、72℃3分保温した。得られた684bpの増幅断片を0.8%ゲルで分離回収した。回収されたゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用い添付文書にしたがって増幅断片を回収した。回収されたPCR増幅断片をFseI(ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン社)で酵素消化し、QIAquick PCR Purification Kit(キアゲン社)を用い添付文書にしたがって酵素処理断片を回収した。その結果、ヒトFGF23のシグナル配列を含まないmature体部分に相当する部分DNA断片を得た。(実施例14)pPSs FGF23ベクターの構築 国際公開第WO2006/78072パンフレットの実施例1−8記載のpPSs5.5をSfoI及びFseIで消化後、大腸菌由来アルカリフォスファターゼを用いて末端脱リン酸化したものに、実施例13で作製したヒトFGF23を含むDNA断片を挿入した後、DH5αに導入した。得られた形質転換体よりDNAを調製し、連結部分の塩基配列を確認して、pPSs FGF23ベクター(図10)を取得した。(実施例15)pUS FGF23 KIベクターの構築 国際公開第WO 2006/78072号パンフレットの実施例43−1で作製されたpCkloxPVΔPをSalI及びFseIで酵素消化後、大腸菌C75由来アルカリフォスファターゼを用いて末端脱リン酸化したものに、上記実施例14のpPSs FGF23ベクターをSalI及びFseIで酵素消化し、0.8%アガロースゲルより分離回収された約1.5kbの断片を挿入した後、それを大腸菌XL10−Gold Ultracompetent Cells(STRATAGENE社)に導入した。得られた形質転換体よりDNAを調製し、連結部分の塩基配列を確認して、pUS FGF23 KIベクター(図11)を取得した。 以下にpUS FGF23 KIベクターヒトFGF23発現ユニットの開始コドンから終止コドンまでのポリヌクレオチド配列(FGF23シグナル配列)を、イントロン領域を含んだマウスIgκシグナル配列〔配列番号38の下線部分〕に置換し、その下流にFGF23 mature体配列を含む985bp、配列番号38)、及び該cDNAがコードするアミノ酸配列(247アミノ酸、下線の部分はマウスIgκシグナル配列を示す、配列番号39)を示す。イントロン領域を含んだマウスIgκシグナル配列情報はGenBankより取得したMUSIGKVR1(アクセッション番号K02159)をもとに、その上流のゲノム配列をUCSCマウスゲノムデータベースより取得した。(実施例16)エレクトロポレーション用pUS FGF23 KIベクターの調製 pUS FGF23 KIベクター60μgを、スペルミジン添加(1mM pH7.0シグマアルドリッチジャパン社)バッファー(ロシュ・ダイアグノスティックス社、制限酵素用Hバッファー)を用い、NotI(タカラバイオ社)を用いて37℃で5時間消化し、フェノール/クロロホルム抽出後、2.5倍容量の100%エタノール、及び0.1倍容量の3M酢酸ナトリウムを加え、−20℃で16時間保存した。NotIで一本鎖化されたベクターを遠心して回収後、70%エタノールを加えて滅菌した。クリーンベンチ内で70%エタノールを除き、1時間風乾させた。0.5μg/μLのDNA溶液となるようにHBS溶液を加え、1時間室温で保存し、エレクトロポレーション用pUS FGF23 KIベクターの調製を行なった。(実施例17)pUS FGF23 KIベクターとRSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞株を用いたPL FGF23マウスES細胞株の取得 ヒトFGF23−cDNAが相同組換えにより免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子下流に挿入されたPL FGF23マウスES細胞株取得のため、実施例16で示された方法に従い、制限酵素NotIで線状化されたpUS FGF23 KIベクターを、確立されている方法(相沢慎一、バイオマニュアルシリーズ8、ジーンターゲティング、羊土社、1995)に従ってRSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞へ導入した。国際公開第WO 2006/78072号パンフレットの実施例10に記載された方法でRSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞は取得された。 RSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞の培養法は、記載の方法(相沢慎一、前記)に従い、栄養細胞はマイトマイシンC(シグマアルドリッチジャパン社)処理したG418耐性初代培養細胞(インビトロジェン社より購入)を用いた。まず、増殖させたRSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞をトリプシン処理し、3×107個/mlとなるようにHBSに懸濁してから、0.5mlの細胞懸濁液を10μgのベクターDNAと混和し、ジーンパルサーキュベット(電極距離:0.4cm、バイオ・ラッド ラボラトリーズ社)にてエレクトロポレーションを行った(容量:960μF、電圧:250V、室温)。エレクトロポレーションした細胞を10mlのES培地(相沢慎一、前記)に懸濁し、あらかじめフィーダー細胞を播種した100mm組織培養用プラスチックシャーレ(ファルコン、ベクトン・ディッキンソン社)1枚に播種した。36時間後に0.8μg/mlのピューロマイシン(シグマアルドリッチジャパン社)を含むES培地と置き換えた。7日後に生じたコロニーをピックアップし、それぞれを24穴プレートでコンフルーエントになるまで増殖させ、その2/3を0.2mlの保存用培地(FBS+10%DMSO、シグマアルドリッチジャパン社)に懸濁し、−80℃にて保存した。残りの1/3は12穴ゼラチンコートプレートに播種し、2日間培養して106〜107個の細胞からゲノムDNAをPuregene DNA Isolation Kits(キアゲン社)により調製した。これらのピューロマイシン耐性RSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞ゲノムDNAを制限酵素EcoRI(タカラバイオ社)で消化し、アガロースゲル電気泳動で分離した。続いてサザンブロットを行い、WO 00/10383号パンフレット(実施例48参照)に記載の発明で使用された、Ig軽鎖Jκ−CκゲノムDNAの3’端のDNA断片(XhoI〜EcoRI、約1.4kb、WO 00/10383号パンフレット 図5)Ck3’probeをプローブとして相同組換え体を検出した。野生型RSエレメント・ターゲティング・マウスES細胞ではEcoRI消化により、1本のバンド(15.1kb)が検出された。相同組換え体においては、このバンドに加えてその下部に新たなバンド(12.8kb)が出ることが予想される(図12)が、ピューロマイシン耐性株においてこの新たなバンドが確認された。すなわち、これらのクローンは一方のアレルの免疫グロブリンκ鎖遺伝子下流にヒトFGF23−cDNAが挿入されたものである。(実施例18)PL FGF23マウスES細胞株より薬剤耐性遺伝子を除去したUS FGF23マウスES細胞株の取得 PL FGF23マウスES細胞株より2種の薬剤耐性遺伝子(Puror,Neor)を除去したUS FGF23遺伝子導入ES細胞株取得のため、pCAGGS−Creベクター(Sunagaら、Mol Reprod Dev.,46:109−113,1997)を確立されている方法(相沢慎一、バイオマニュアルシリーズ8、ジーンターゲティング、羊土社、1995)に従ってPL FGF23マウスES細胞へ導入した。 PL FGF23マウスES細胞の培養法は、記載の方法(相沢慎一、前記)に従い、栄養細胞はマイトマイシンC(シグマアルドリッチジャパン社)処理したG418耐性初代培養細胞(インビトロジェン社より購入)を用いた。まず、増殖させたPL FGF23マウスES細胞をトリプシン処理し、3×107個/mlとなるようにHBSに懸濁してから、0.5mlの細胞懸濁液を10μgのベクターDNAと混和し、ジーンパルサーキュベット(電極距離:0.4cm、バイオ・ラッドラボラトリーズ社)にてエレクトロポレーションを行った(容量:960μF、電圧:250V、室温)。エレクトロポレーションした細胞を10mlのES培地(相沢慎一、前記)に懸濁し、それより2.5ml分を、あらかじめフィーダー細胞を播種した60mm組織培養用プラスチックシャーレ(ファルコン、ベクトン・ディッキンソン社)1枚に播種した。30時間後にES細胞1000個をあらかじめフィーダー細胞を播種した100mm組織培養用プラスチックシャーレ(ファルコン、ベクトン・ディッキンソン社)1枚に播種した。6日後に生じたコロニーをピックアップし、それぞれを24穴プレートでコンフルーエントになるまで増殖させ、その2/3を0.2mlの保存用培地(FBS+10%DMSO、シグマアルドリッチジャパン社)に懸濁し、−80℃にて保存した。残りの1/3は12穴ゼラチンコートプレートに播種し、2日間培養して106〜107個の細胞からゲノムDNAをPuregene DNA Isolation Kits(キアゲン社)により調製した。これらマウスES細胞ゲノムDNAを制限酵素EcoRI(タカラバイオ社)で消化し、アガロースゲル電気泳動で分離した。続いてサザンブロットを行い、WO 00/10383号パンフレット(実施例48参照)に記載の発明で使用された、Ig軽鎖Jκ−CκゲノムDNAの3’端のDNA断片(xhoI〜EcoRI、約1.4kb、WO 00/10383号パンフレット 図5)Ck3’probeをプローブとしてloxPV配列で挟まれたPuror遺伝子のみが除去されたES細胞株を検出した。Puror遺伝子を保持したES細胞ではEcoRI消化により、2本のバンド(15.1kbと12.8kb)が検出され、Puror遺伝子のみが除去されたES細胞株ではEcoRI消化により、2本のバンド(15.1kbと10.9kb)が検出された(図12)。また、上記と同様の操作で得られたサザンブロット膜を用い、国際公開第WO 2006/78072号パンフレットの実施例9で示された方法により調製された3’KO−probeをプローブとしてloxP配列で挟まれたNeor遺伝子のみが除去されたES細胞株を検出した。Neor遺伝子を保持したES細胞ではEcoRI消化により、2本のバンド(7.4Kと5.7K)が検出され、Neor遺伝子のみが除去されたES細胞株ではEcoRI消化により、2本のバンド(5.7Kと4.6K)が検出された(図12)。これらの結果から、PL FGF23マウスES細胞株より2種の薬剤耐性遺伝子(Puror,Neor)が同時に除去されたES細胞株(US FGF23マウスES細胞株)が得られた。(実施例19)US FGF23マウスES細胞株及びBリンパ球欠損マウス系統由来宿主胚を用いたUS FGF23 KIキメラマウスの作製 免疫グロブリンμ鎖遺伝子ノックアウトのホモ接合体においては、機能的なBリンパ球が欠損し、抗体が産生されない(Kitamuraら,Nature,350:423−426,1991)。清浄な環境で飼育した上記ホモ接合体の雌雄個体の交配により得られる胚を本実施例で行うキメラマウス作製の際の宿主として利用した。この場合、キメラマウスにおいて機能的なBリンパ球は、大部分が注入したES細胞に由来する。本実施例では富塚らの報告(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:722−7,2000)に記載された免疫グロブリンμ鎖遺伝子ノックアウトマウスについてMCH(ICR)(日本クレア社)系統への戻し交配を3回以上行った個体を宿主胚調製用として用いた。 上記実施例18で得られ、免疫グロブリンκ鎖遺伝子下流にヒトFGF23−cDNAが挿入されていることが確認されたUS FGF23マウスES細胞株を凍結ストックより立ち上げ、それらを、上記免疫グロブリンμ鎖ノックアウトマウスホモ接合体の雌雄マウスの交配により得られた8細胞期胚に、それぞれ胚1つあたり8〜10個注入した。ES培地(相沢慎一、バイオマニュアルシリーズ8、ジーンターゲティング、羊土社、1995)で一晩培養して胚盤胞まで発生させた後、偽妊娠処理後2.5日の仮親MCH(ICR)マウス(日本クレア社)の子宮に、片側の子宮あたりそれぞれ約10個のインジェクション胚を移植した。実施例18のUS FGF23マウスES細胞株を用いて作製されたインジェクション胚を移植した結果、子キメラマウスが誕生した。キメラ個体は、毛色において、宿主胚由来の白色の中にES細胞由来の野生色(濃茶)が認められるかどうかによって判定される。誕生した子キメラマウスのうち毛色に明らかに野生色の部分のある、すなわちES細胞の貢献の認められる個体が得られた。これらの結果より、免疫グロブリンκ鎖遺伝子下流にヒトFGF23−cDNAが挿入されているUS FGF23マウスES細胞株はキメラ形成能を保持している、すなわちマウス個体の正常組織に分化する能力を保持していることが示された。また、実施例21で後述するように、US FGF23 KIキメラマウスは血中FGF23濃度が高値であり、低リン血症性クル病様の所見を示す病態モデル動物として使用することが可能であった。(実施例20)コントロールキメラマウスの作製 国際公開第WO 2006/78072号パンフレットの実施例11記載の方法に従い作製されたヒトFGF23−cDNAを含め機能遺伝子が挿入されていないキメラマウスは後述する実施例21のUS FGF23 KIキメラマウスへのC10抗体投与実験において、コントロールキメラマウス個体(WTマウス)として用いられた。(実施例21) US FGF23 KIキメラマウスを用いたC10抗体の病態改善効果の検証 実施例10及び12において、C10抗体が2C3B抗体やC15抗体に比べ顕著に正常カニクイザルの内在性FGF23の作用を抑制し、その血清リン濃度及び血清1,25D濃度を上昇させることを示した。ヒトFGF23に対する中和活性を有する抗体は、FGF23過剰に由来する腫瘍性骨軟化症、XLHなどを含む低リン血症性くる病・骨軟化症などのヒト疾患において治療効果を有することが強く示唆される。本研究において取得されたC10抗体によるヒトFGF23過剰に由来する病態の改善効果について検討するために、実施例19で作製したUS FGF23 KIキメラマウス(以下hFGF23KIマウス)を用いて実験を行った。病態動物としてhFGF23 KIマウスを12匹、その比較対象として同週齢の正常コントロールマウス(WTマウス、実施例20で作製)6匹を実験に使用した。7週齢の時点で、hFGF23 KIマウスの血清を採血しFGF23(FGF−23 ELISA KIT、カイノス社)及びリンの血清濃度をそれぞれ測定した。WTマウスに比して、hFGF23 KIマウスにおいては顕著に血清FGF23濃度が上昇していることが示された(WTマウス;n=6、163pg/mL hFGF23KIマウス;n=12、1467pg/mL)。この結果より、hFGF23 KIマウスへのヒトFGF23遺伝子導入は正確に行われ、さらにhFGF23 KIマウス血中に外来性のヒトFGF23が過剰に存在していることが示された。さらに、WTマウスに比して、hFGF23 KIマウスにおいては血清リン濃度が顕著に低下していることが示され(WTマウス;n=6、5.82mg/dL hFGF23KIマウス;n=12、2.62mg/dL)、hFGF23 KIマウスにおいては過剰なヒトFGF23作用により、低リン血症が誘導されていることが示された。このとき、hFGF23 KIマウス12匹をFGF23濃度が均等になるように、それぞれC10抗体又はコントロールIgG1投与群の6匹ずつ2群に分けた(図13)。次に、8週齢から、C10抗体又はアイソタイプコントロール用の精製ヒトIgG1(コントロール抗体)を30mg/kgの用量で静脈内に週1回の頻度で5回反復投与した。初回投与前及び投与3日後にマウスより採血し、血清を取得した。四肢握力の測定は、4回目投与の24時間後に齋藤式マウス用握力測定装置(GRIP STRENGTH METER,MK−380S 室町機械)を用いて実施した。四肢握力の評価は、マウスを測定用グリッド(網)に掴まらせ、尾を手で水平に引き、動物が引かれた力に耐え切れずにグリッドを離すまでの最大の力(握力)を指標に実施した。骨評価については、5回目投与の24時間後に、麻酔下において心採血により屠殺後、大腿骨及び頸骨を採取し、70%エタノールで固定した。血清リン濃度は、初回投与前、初回投与の3日後及び5回目投与の24時間後の血清を用いて測定した。大腿骨は、非脱灰樹脂包埋後にVillanueva−Goldner染色し、組織学的評価を実施した。頸骨は、灰化によりミネラル含量を測定した。 その結果、hFGF23KIマウスのコントロール抗体投与群では血清リン濃度は群分け時及び屠殺時共に、WTマウスのコントロール抗体投与群に比して有意に低値を示し、持続的な低リン血症状態であることが確認された(図14)。一方、hFGF23KIマウスにC10抗体を投与した群では血清リン濃度は3日後にWTマウスのコントロール抗体投与群と同レベルまで上昇することが確認された(図14)。また、C10抗体の5回目投与後の血清リン濃度もWTマウスのコントロール抗体投与群と同レベルであり、5回の投与後でもC10抗体投与による血清リン上昇作用は維持されていることが示された(図15)。 低リン血症患者の症例として、骨格筋の筋力低下が臨床的に報告されている[Baker and Worthley,Crit Care Resusc.,4:307−315,2000]。本試験においても、hFGF23KIマウスは有意な低リン血症を呈していることから、筋力の低下が予想される。そこで、筋力の低下の指標として前述の方法で四肢握力を測定し、各群間で比較した。その結果、hFGF23KIマウスのコントロール抗体投与群の握力はWTマウスのコントロール抗体投与群に比して有意に低値を示し、この病態モデルマウスにおいても、筋力の低下が観察された(図16)。これに対し、hFGF23KIマウスのC10抗体投与群では握力の有意な改善効果も認められた(図16)。 次に、大腿骨の硬組織標本をVillanueva−Goldner法で組織染色し、観察すると、コントロール抗体を投与したWTマウスに比してコントロール抗体を投与したhFGF23KIマウスには多量の類骨(図17で赤色で示される)が確認されることから石灰化障害が引き起こされていることが示唆された。これはクル病に特徴的な症状として広く知られている。これに対し、C10抗体を投与したhFGF23KIマウスでは、類骨が減っていることが確認され、類骨が石灰化骨(図17で緑色で示される)に置き換わっていることが予想された。この結果から、FGF23過剰によって誘導された骨の石灰化障害をC10抗体は改善することが示唆された。そこで、頸骨を灰化しミネラル含量を測定し、各群間で比較した。hFGF23KIマウスのコントロール抗体投与群の頸骨のミネラル含量はWTマウスのコントロール抗体投与群に比して有意に低下していた(図18)。これに対し、hFGF23KIマウスのC10投与群ではミネラル含量が改善していることが確認された(図18)。以上の結果から、hFGF23KIマウスにおいて、C10抗体投与は生体内で過剰に作用しているヒトFGF23作用を中和し、低リン血症、筋力低下、骨石灰化障害などの低リン血症性クル病のさまざまな症状を改善することが確認された。すなわちC10抗体は、FGF23が関与するヒトのさまざま疾患の有効な治療薬となることが示された。 本発明のFGF23に対する抗体であるC10抗体は、公知のFGF23に対する抗体に比べ、in vivoでの血清リン濃度を持続的に上昇させる活性及び/又は血清1,25D濃度を持続的に上昇させる活性が高く、FGF23の過剰作用が原因となり得る疾患、又はFGF23の作用を調節することにより病態の改善が見込まれる疾患の予防及び治療剤として顕著な効果をもって使用することができる。配列番号1〜3、5〜27、30〜33、40〜45 合成 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。[配列表] ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP-10772)が産生する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と同一のアミノ酸配列を含む、ヒトFGF23に対する単離された抗体。 配列番号12の20番目のアミノ酸から配列番号12の136番目のアミノ酸で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14の23番目のアミノ酸から配列番号14の128番目のアミノ酸で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ヒトFGF23に対する単離された抗体。 重鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号40、CDR2が配列番号41、CDR3が配列番号42を有し、軽鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号43、CDR2が配列番号44、CDR3が配列番号45を有する、ヒトFGF23に対する単離された抗体。 ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP-10772)により産生されるヒトFGF23に対する単離された抗体。 抗体のクラスがIgG、IgA、IgE及びIgMからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載のヒトFGF23に対する単離された抗体。 IgG抗体のサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択される、請求項5記載のヒトFGF23に対する単離された抗体。 請求項1から6のいずれか1項に記載のヒトFGF23に対する単離された抗体を有効成分として含む、医薬組成物。 ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP-10772)。 ハイブリドーマC10(受託番号 FERM BP-10772)が産生する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と同一のアミノ酸配列を含み、サブクラスがIgG1である、ヒトFGF23に対する単離された抗体。 配列番号12の20番目のアミノ酸から配列番号12の136番目のアミノ酸で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14の23番目のアミノ酸から配列番号14の128番目のアミノ酸で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、サブクラスがIgG1である、ヒトFGF23に対する単離された抗体。 重鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号40、CDR2が配列番号41、CDR3が配列番号42を有し、軽鎖相補性決定領域として、CDR1が配列番号43、CDR2が配列番号44、CDR3が配列番号45を有し、サブクラスがIgG1である、ヒトFGF23に対する単離された抗体。