タイトル: | 特許公報(B2)_保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物 |
出願番号: | 2008558142 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 33/20,A61P 31/12,A61K 9/08,A61K 47/02 |
福田 俊昭 安部 幸治 柴田 高 JP 4598130 特許公報(B2) 20101001 2008558142 20080215 保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物 大幸薬品株式会社 391003392 南条 雅裕 100113376 瀬田 あや子 100132942 福田 俊昭 安部 幸治 柴田 高 JP 2007036469 20070216 20101215 A61K 33/20 20060101AFI20101125BHJP A61P 31/12 20060101ALI20101125BHJP A61K 9/08 20060101ALI20101125BHJP A61K 47/02 20060101ALI20101125BHJP JPA61K33/20A61P31/12A61K9/08A61K47/02 A61K 33/00-33/44 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 米国特許第06200557(US,B1) 特開平11−278808(JP,A) Chen,Y.S.,et al,Applied and Environmental Microbiology,1990年,Vol.56, No.5,pp 1363-1366 Li,J.W.,et al,Water Research,2004年,Vol.38,pp 1514-1519 医薬品添加物事典,株式会社薬事日報社,1994年,第1版,第150,151,246,247,355頁 3 JP2008052493 20080215 WO2008099911 20080821 13 20100409 岡山 太一郎 本発明は、保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物(以下単に「抗ウイルス組成物」ともいう)に関する。詳しくは溶存二酸化塩素を含有する薬剤において、保存期間中の二酸化塩素の薬理活性が変動することなく、また長期間の保存により溶存二酸化塩素が少しずつ二酸化塩素ガスとして抜け出てしまっても二酸化塩素の濃度が低下せず、長期間にわたる抗ウイルス活性を信頼性高く保有する抗ウイルス組成物に関する。 周知のように二酸化塩素ガスは強力な酸化剤であるので、その酸化作用により滅菌したり、悪臭成分を分解させることが知られ、殺菌剤・臭剤等に使用される。かかる二酸化塩素ガスは、水の容積の20倍量が水に溶解し、褐色の水溶液となる。その取り扱いの観点から水溶液の形態で用いることが望まれる。 二酸化塩素水溶液は、空気に触れると二酸化塩素ガスを急激に発生させる。そのため、二酸化塩素ガスを過酸化炭酸ナトリウム水溶液に溶解させ、亜塩素酸ナトリウムを主成分としたアルカリ性(pH9)に保持した水溶液、いわゆる安定化二酸化塩素水溶液とすることによって、安定性を維持しつつ二酸化塩素ガスを持続的に発生させることが提案されている(特許文献1参照)。 しかし、安定化二酸化塩素水溶液をアルカリ性に保持した状態では殺菌・消臭等の作用を発現させる遊離の二酸化塩素ガスの発生量が極めて少ないために薬理活性が低く、十分な殺菌・消臭等の効果を達成することは難しかった。 そこで、安定化二酸化塩素水溶液の薬理活性を高めるべく、使用直前に酸を添加してそのpHを7以下に調整して二酸化塩素ガスを発生させていた。 しかし、使用直前に酸を添加する手法では、当該安定化二酸化塩素水溶液の薬理活性を高めるために手間が掛かり、そのための器具や設備等を必要とするため経済的不利益を招くという問題があった。また、二酸化塩素ガスは酸の添加後に急激に発生するため、安定化二酸化塩素水溶液の薬理活性の持続性は期待できない上に、当該薬理活性が一定とならず、場合によっては極めて高いレベルに達することもあった。そのため、動物、特にヒトへの影響や安全性が懸念されていた。 これら問題を解決するため、亜塩素酸塩にクエン酸などの有機酸を加えたものを溶存二酸化塩素液剤に混合し、これにより、二酸化塩素濃度を長期間、略一定に維持させるといった提案がなされた(特許文献2参照)。この手法では、急激に二酸化炭素ガスが発生することはないため、二酸化塩素濃度を長期間一定に保持して所望の薬理活性を持続できる。しかも溶存二酸化塩素が少しずつ二酸化塩素ガスとして放出され続けた場合であっても、二酸化塩素濃度を略一定の範囲内に保持させることができる。特開昭61−181532号公報特許第3110724号公報 本発明者は、上記したように保存安定性が改善され、濃度コントロールが可能となったからこそ人体にも安全に使用できる二酸化塩素液剤の新たな臨床的な用途・適用を見い出すべく鋭意研究したところ、当該二酸化塩素液剤が、皮膚粘膜感染ウイルスなど広範囲のウイルスに対して不活性化効果をもつといった驚くべき発見をし、しかも長期間保存した(例えば容器に1年間保存した)後の液剤でも優れた効力(ウイルス不活性化力)が維持され続けることを発見し、そして本発明に至った。 従って、本発明は、保存安定性に優れた二酸化塩素液剤を使用した広域抗ウイルス薬剤組成物を提供するものである。 上記目的を達成するための本発明の保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物の第一特徴構成は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤からなる点にある。 本発明の保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物の第二特徴構成は、前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記pH調整剤を緩衝性のある無機酸またはその塩とした点にある。 本発明の保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物の第三特徴構成は、前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記pH調整剤をリン酸またはその塩とした点にある。 本発明の保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物の第四特徴構成は、前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記pH調整剤をリン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物とした点にある。 本発明の抗ウイルス組成物は、広い範囲のウイルスに対して不活性化効果を有し、また二酸化塩素を含有しながらも保存安定性に優れていることから、長期間保存したあとでもそのウイルス不活性化効果が持続する。は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するインフルエンザウイルス不活性化効果を示したグラフを示す図であり、は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するノロウイルス(代替ネコカリシウイルス)不活性化効果を示したグラフを示す図であり、は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するコクサッキーウイルスB5不活性化効果を示したグラフ((a)は感作時間を1分とした場合、(b)は濃度を10ppmとした場合)を示す図であり、は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するエイズウイルス不活性化効果を示したグラフを示す図であり、は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するB型肝炎ウイルス不活性化効果を示したグラフを示す図であり、は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するイヌパルボウイルス不活性化効果を示したグラフを示す図であり、は、本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物に関するロタウイルス不活性化効果を示したグラフを示す図である。 以下、本発明の一実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。 本発明の保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤からなる。 (対象とするウイルス) 本発明の抗ウイルス組成物によって不活性化できるウイルスとしては、例えばインフルエンザウイルス(A型、B型、C型)、鳥インフルエンザウイルス、ノロウイルス(ネコカリシウイルス)、ヒトパピローマウイルス(尖圭コンジローマの病原体であるヒト乳頭種ウイルス、HPV)、コクサッキーウイルス(手足口病、無菌性髄膜炎、夏かぜ、熱性疾患、麻痺や気道性疾患の病原体)、エイズウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス、イヌパルボウイルス、ロタウイルス、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1))、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2))、HHV−3(水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV))、HHV−5(サイトメガロウイルス(CMV))、眼科領域のウイルス(咽頭結膜熱(プール熱)や流行性角結膜炎(はやり目):アデノウイルス、急性出血性結膜炎:エンテロウイルス)など、幅広く挙げることができる。 (亜塩素酸塩) 本発明で使用できる亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられる。亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。特に、入手が容易という理由のみならず、二酸化塩素の薬理活性の持続性の点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。 (pH調整剤) 本発明で使用し得るpH調整剤としては、有機酸またはその塩、無機酸またはその塩が挙げられる。有機酸またはその塩としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、グルタル酸、及びこれらの塩が挙げられる。 無機酸としては、リン酸、ホウ酸、メタリン酸、ピロリン酸、スルファミン酸などが挙げられる。無機酸の塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物などが挙げられる。 特に、保存安定性に優れ、それ故、長期保存後の抗ウイルス不活性化力にも優れているという点で、無機酸としてリン酸またはその塩を使用することが好ましく、リン酸二水素ナトリウムを使用することがさらに好ましい。 尚、pH調整剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。10%溶液のpHが4.5〜6.5となる酸の使用が好ましく、5.5〜6.0となる酸の使用がさらに好ましい。 (二酸化塩素液剤の調製例) 純粋二酸化塩素液剤は、例えば、次のように製造される。すなわち、(a)亜塩素酸塩を水に溶解して2000〜180000ppmの亜塩素酸塩水溶液を調製し、(b)二酸化塩素ガスを水中にバブリングして溶解することにより100〜2900ppmの二酸化塩素水溶液を調製し、そして、(c)亜塩素酸塩を水に溶解して2000〜180000ppmの亜塩素酸塩水溶液を調製した後、この溶液に、その1000ml当たり、pH調整剤0.5〜100gを溶解してpH調整剤を含有する亜塩素酸塩水溶液を調製する。 次に、前記(a)の亜塩素酸水溶液5.0〜990ml、好ましくは50〜300ml、前記(b)の二酸化塩素水溶液5.0〜990ml、好ましくは50〜800ml及び前記(c)のpH調整剤を含有する亜塩素酸水溶液5.0〜990ml、好ましくは50〜400mlを混合し室温で十分に攪拌して純粋二酸化塩素液剤とする。 尚、本明細書における「純粋二酸化炭素」とは、二酸化塩素が二酸化塩素ガスとして存在するものを意味する。純粋二酸化塩素液剤の最終的なpHは4.5〜6.5とすることが好ましい。この範囲から外れると保存安定性が低下し、保存中の薬理活性が変動したり、例えば2年後といった長期保存後の薬理活性が弱くなる可能性がある。本発明において純粋二酸化塩素液剤のさらに好ましいpH範囲は、5.5〜6.0である。〔別実施形態1〕 上述の実施形態において、pH調整剤を用いない場合、酸性を示す界面活性剤を使用することができる。 このとき、保存安定性に優れた広域抗ウイルス薬剤組成物は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及び酸性を示す界面活性剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤からなる。 この場合に使用できる亜塩素酸塩は上記実施形態と同様であるが、二酸化塩素の薬理活性の持続性の点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。 界面活性剤は、純粋二酸化塩素液剤のpHを4.5〜6.5とするものが好ましく、5.5〜6.0とするものがさらに好ましい。 酸性を示す界面活性剤として、特に限定するものではないが、例えば、リン酸エステル塩系界面活性剤(ポリオキシエチレンリン酸エステル、アルキルリン酸エステル塩など)、スルホン酸塩系界面活性剤(ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルまたはアルキルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩など)、硫酸エステル塩系界面活性剤(アルキルまたはアルキルベンゼン硫酸塩、オキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩など)、カルボン酸塩系界面活性剤(アルキルスルホコハク酸塩など)が挙げられる。 また、市販されているショ糖脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、プロピレングリコール及びエタノールよりなる混合界面活性剤[ショクセンSE(三菱化学フーズ社製)]を使用することもできる。 上記界面活性剤においては、二酸化塩素の薬理活性の持続性の点から、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、プロピレングリコール及びエタノールよりなる混合界面活性剤が好ましい。〔別実施形態2〕 上述の実施形態において、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤を含有する純粋二酸化塩素液剤は、高吸水性樹脂と混合してゲル状組成物とすることができる。 この場合に使用できる亜塩素酸塩は上記実施形態と同様であるが、二酸化塩素の薬理活性の持続性の点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。pH調整剤についても上記実施形態と同様であるが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物が好ましい。 高吸水性樹脂としては、デンプン系吸水性樹脂(デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト共重合体などのグラフト化デンプン系高吸水性樹脂など)、セルロース系吸水性樹脂(セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体、架橋カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系高吸水性樹脂、紙や布をリン酸エステル化したもの、布をカルボキシメチル化したものなど)、及び合成ポリマー系吸水性樹脂(架橋ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系高吸水性樹脂、架橋ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート架橋体などのアクリル系高吸水性樹脂、架橋ポリエチレンオキシド系高吸水性樹脂など)が挙げられる。 市販されているものとしては、例えば、デンプン/ポリアクリル酸系樹脂[アクアリック(日本触媒社製、粉末)、サンウエット(三洋化成社製、粉末)]、架橋ポリアクリル酸系樹脂[アラソーブ(荒川化学社製、粉末)、ワンダーゲル(花王社製、粉末)、アクアキープ(住友精化社製、粉末)、ダイアウエット(三菱油化社製、粉末)]、イソブチレン/マレイン酸系樹脂[KIゲル(クラレ社製、粉末)]、及び、ポバール/ポリアクリル酸塩系樹脂[スミカゲル(住友化学社製、粉末)]などがあり、これらの使用も本発明を妨げるものではない。 高吸水性樹脂と混合してゲル状組成物とする場合は、例えば、上記のように調製された純粋二酸化塩素液剤50〜99重量%を高吸収性樹脂(粉末)1.0〜50重量%に添加し、これらを室温で十分に攪拌して製造される。このような「ゲル状組成物」は、例えば、少なくとも一方に開口部を有する容器(特開昭61−40803号公報)に充填して一般用途に供することができるが、合成繊維を構成繊維とする紙または不織布により形成された容器であって、該容器の周縁が合成繊維の熱融着または合成樹脂接着剤によりシールされた容器中に充填して一般用途に供することもできる。前記合成繊維は、例えばポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など従来公知の熱可塑性合成繊維である。このような合成繊維を構成繊維とする紙または不織布により形成された容器は、「ゲル状組成物」の付着による目詰まりを防止しつつ、「ゲル状組成物」から二酸化塩素を持続的に気化させることができる。〔別実施形態3〕 上述の実施形態において、pH調整剤を用いない場合には、酸性を示す高吸水性樹脂を使用し、この樹脂に溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩を含有させてゲル状組成物とすることができる。 この場合に使用できる亜塩素酸塩は上記実施形態と同様であるが、二酸化塩素の薬理活性の持続性の点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。 高吸水性樹脂は、純粋二酸化塩素液剤のpHを4.5〜6.5とするものが好ましく、5.5〜6.0とするものがさらに好ましい。 このような酸性を示す高吸水性樹脂としては、市販されている部分ナトリウム塩架橋ポリアクリル酸系樹脂[アクアリック(日本触媒社製)]が用いられるが、これによって限定されない。〔別実施形態4〕 上述の実施形態において、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤を含有する純粋二酸化塩素液剤を泡剤と混合して発泡性組成物とすることができる。 この場合に使用できる亜塩素酸塩は上記実施形態と同様であるが、二酸化塩素の薬理活性の持続性の点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。pH調整剤についても上記実施形態と同様であるが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物が好ましい。 前記泡剤は、界面活性剤及び泡安定剤で構成されるか、または、界面活性剤、泡安定剤及びエアゾール噴射剤で構成される。 前記界面活性剤は、例えば、(1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤、(2)脂肪酸第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、(3)カルボキシベタイン型両性界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等のノニオン系界面活性剤、(5)フッ素系界面活性剤、あるいは(6)サポニンなどが挙げられるが、これらによって限定されるものではない。 前記泡安定剤は、例えば、(7)上記アニオン系界面活性剤にモノまたはジエタノールアミンを添加したもの、(8)上記ノニオン系界面活性剤に長鎖アルコールまたはアルキルスルホキシドを添加したもの、或いは(9)流動パラフインなどが挙げられるが、これらによって限定されるものではない。 前記エアゾール噴射剤は、例えば、液化天然ガス(LPG)、液化ブタン、ジメチルエーテル等の低毒性性の高圧ガスなどが挙げられるが、これらによって限定されるものではない。 泡剤を含ませて発泡性組成物とする場合は、例えば密閉容器内において、上記のように調製された純粋二酸化塩素液剤1.0〜20重量%に発泡剤5.0〜20重量%及び界面活性剤60〜95重量%を添加し、これらを室温で十分に攪拌することにより製造される。このような「発泡性組成物」は、例えばトリガー式泡形成容器、ポンプ式泡形成容器等に封入して供される。〔実施例〕 実施例1(薬剤Aの調製) 次のようにして二酸化塩素液剤を調製した。すなわち、二酸化塩素ガス2000ppm溶存水250mlに水680mlと亜塩素酸ナトリウム25%溶液80mlを加えて撹拌し、次にこの溶液のpHが5.5〜6.0となる量のリン酸二水素ナトリウムを加えて撹拌して、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムからなる二酸化塩素液剤1000mlを得た。 実施例2(薬剤Bの調製) リン酸二水素ナトリウム(緩衝性のある無機酸の塩)の代わりに有機酸であるクエン酸を使用したという以外は実施例1と同様にして比較対照用の二酸化塩素液剤を調製した。 抗ウイルス試験(8ヶ月保存後の抗ウイルス不活性化試験) 抗ウイルス試験に供する二酸化塩素液剤(薬剤A、薬剤B)は、各濃度に調製後、合成樹脂製の容器に8ヶ月間放置したものを使用した。すなわち、実施例1および実施例2で得た二酸塩素液剤を直径2cmの開口部を持つ容器に入れ、ねじ蓋を閉じた状態で8ヶ月間、室温にて放置した。そして、この液剤に関する抗ウイルス活性効果を調べた。比較対照用として、次亜塩素酸ナトリウム(薬剤C)、安定化二酸化塩素(亜塩素酸ナトリウム)(薬剤D)、並びにポビドンヨード(薬剤E)を用いた。なお、これら薬剤C〜Eは8ヶ月間保存せず、購入後すぐのものを試験に供した。これら使用した薬剤を表1にまとめる。 (1)抗ウイルス試験(インフルエンザウイルス) 各薬剤(表1参照)にインフルエンザウイルス(A/ New Caledonia(H1N1))株を加え、各感作時間経過後、チオ硫酸ナトリウム溶液にて薬剤を中和し、10倍希釈列を作成した。当該10倍希釈列液をマイクロプレート(96穴)にて、37℃、5%CO2の条件下で3日間培養した宿主細胞(MDCK細胞(イヌ腎上皮由来株化細胞))に接種し、5日間培養した。ウイルスによる細胞変性効果(CPE)を指標としてTCID50(50% Tissue Culture Infective Dose)(log10)を算出し、薬剤の抗ウイルス活性効果を評価した。ウイルス対照は薬剤の代わりに蒸留水で希釈を行ったものを使用した。結果を図1に示す。 図1からも明らかなように、本発明の抗ウイルス組成物は、保存8ヶ月後であってもインフルエンザウイルスに対して顕著な不活性化効果を示し、濃度1ppm、感作時間15秒の効果は、次亜塩素酸ナトリウムより1000倍以上であった。 本発明の抗ウイルス組成物は、pH調整剤を構成成分としているが、このpH調整剤として有機酸を使用するよりも無機酸(リン酸二水素ナトリウム)を使用することにより、ウイルス不活性化効果が飛躍的に(顕著に)向上することもわかる。 (2)抗ウイルス試験(ノロウイルス) ノロウイルス代替ウイルスであるネコカリシウイルスFCV−F4株に各薬剤を加え、宿主細胞のCRFK細胞(ネコ腎由来株化細胞)を用い、抗ウイルス試験(1)と同様の手技にて試験し、ウイルスによる細胞変性効果(CPE)を指標としてTCID50(log10)を算出し、薬剤の抗ウイルス活性効果を評価した。結果を図2に示す。 図2から明らかなように、本発明の抗ウイルス組成物は、保存8ヶ月後であってもノロウイルス代替ウイルスであるネコカリシウイルスに対して顕著な不活性化効果を示し、濃度10ppm、感作時間15秒の抗ネコカリシウイルス活性は、ポビドンヨードのそれよりも100万倍であった。この抗ネコカリシウイルス活性の差は3分後にも変化がなかった。 (3)抗ウイルス試験(コクサッキーウイルスB5) コクサッキーウイルスB5(手足口病)に各薬剤を加え、宿主細胞のLLCMK2細胞を用い、抗ウイルス試験(1)と同様の手技にて試験し、ウイルスによる細胞変性効果(CPE)を指標としてTCID50(log10)を算出し、薬剤の抗ウイルス活性効果を評価した。結果を図3(a),(b)に示す。 図3(a),(b)からも明らかなように、本発明の抗ウイルス組成物は、コクサッキーウイルスB5(手足口病)に対して顕著な不活性化効果を示し、濃度10ppm、感作時間1分間で次亜塩素酸ナトリウムより32倍、2分間で100倍の効果があった。 (4)抗ウイルス試験(HIV) HIV(LAV株)に各薬剤を加え、宿主細胞のMT−4細胞を用い、従来公知のウイルス感染試験に従い、抗ウイルス試験(1)と同様の手技にて試験し、ウイルスによる細胞変性効果(CPE)を指標としてTCID50(log10)を算出し、薬剤の抗ウイルス活性効果を評価した。結果を図4に示す。 図4からも明らかなように、本発明の抗ウイルス組成物は、HIV(LAV株)に対して顕著な不活性化効果を示し、濃度10ppm、感作時間1分間で次亜塩素酸ナトリウムより、100倍以上(検出限界以下)の効果があった。 (5)抗ウイルス試験(ヒトB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)) ヒトB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に各薬剤を加え、1,2,3,4日間感作後、チオ硫酸ナトリウム溶液にて薬剤を中和し、化学発光免疫測定法「アーキテクト・HBsAg(ダイナボット(株)製)」を用い、HBsAg力価を測定した。薬剤の抗HBsAg活性を評価した。結果を図5に示す。 図5からも明らかなように、本発明の抗ウイルス組成物は、HBsAgに対して顕著な抗HBsAg活性を示した。未処理群では54IU/mLであった抗原価が、濃度100ppm、感作時間1日間で1IU/mL、2日間で0.2IU/mL、3日間で0.1IU/mL、4日間で検出限界以下まで抗HBsAg活性が見られたが、同濃度(100ppm)の次亜塩素酸ナトリウムでは、1日間で50IU/mL、2日間で51IU/mL、3日間で51IU/mL、4日間で49IU/mLと抗HBsAg活性が見られなかった。 (6)抗ウイルス試験(イヌパルボウイルス<CPV(Y−1)>) イヌパルボウイルス<CPV(Y−1)>に各薬剤を加え、宿主細胞のCRFK細胞(ネコ腎由来株化細胞)を用い、抗ウイルス試験(1)と同様の手技にて試験し、7日間培養した。その培養液について、ブタ赤血球凝集反応法を用い、赤血球凝集が認められた試験液をCPV感染と見なし、TCID50を求めた。結果を図6に示す(細胞変性効果(CPE)の観察が困難な為、本試験法を採用した)。 本発明の抗ウイルス組成物は、CPVに対する抗ウイルス活性は10ppm、120秒、180秒で99.99%以上の低下、100ppmでは15秒以内で99.99%以上の感染価の低下が見られ、共に検出限界以下になった。 次亜塩素酸ナトリウム溶液は10ppm、180秒で100TCID50の感染価が残存したが、100ppm、120秒で99.99%以上の感染価低下が見られ、検出限界以下になった。安定化二酸化塩素溶液では100ppm、180秒においても感染価低下は見られなかった。 本発明の抗ウイルス組成物は次亜塩素酸ナトリウム溶液に対し、約10倍の抗ウイルス活性を示した。 (7)抗ウイルス試験(ロタウイルス) 最終濃度1ppmとなるように薬剤を調製し、これをヒトロタウイルス(Wa株)に混合した。15〜180秒後、MA−104細胞に接種して常法に従って培養した。そして、蛍光抗体法を用い、ウイルス増殖が認められた細胞の数、すなわちFITC蛍光陽性の細胞数を数え、平均値(N=4)を求め、これに希釈倍数を乗じて算出した。ウイルス増殖抑制効果の算出はそれぞれの薬剤濃度及び処理時間について、無処理ウイルス増殖細胞数に対する薬剤処理ウイルスの増殖細胞数の比率(%)で示した。結果を図7に示す。 本発明の抗ウイルス組成物は10.0ppmおよび1.0 ppmでロタウイルスを15秒間処理することにより、ウイルス増殖は未処理ウイルスのそれぞれ0.3%以下および2.1%に低下した。また、0.1ppm、30秒及び0.01ppm、60秒処理により、それぞれ8.4%および16.4%以下に低下した。 (8)抗ウイルス試験(ヒトパピローマウイルス) 尖圭コンジローム(Condyloma acuminatun)(原因ウイルスは、ヒトパピローマウイルス)に感染したと診断された男性の患部に対し、本発明の抗ウイルス組成物(濃度100ppm)を1日3回、適量を塗布した。塗布した1日後、患部における白色硬結が赤色硬結に変化し、2日後には縮小、3日後にはカサブタ様になり消失した。 (考察) 上述したように、本発明の抗ウイルス組成物は、保存8ヶ月後であっても広い範囲のウイルスに対して不活性化効果があることがわかる。しかも、低濃度で有効なため、人体、特に皮膚粘膜への悪影響(刺激など)も最小限に抑えることができ、皮膚粘膜ウイルス感染症の治療薬など臨床的にも好適に使用できる。なお、本発明の抗ウイルス組成物を調製する際に用いるpH調整剤として有機酸を使用するよりも無機酸またはその塩を使用する方が、ウイルス不活性化効果が高いことも上記試験結果によりわかる。 さらに以下のように付け加える。すなわち、本発明の抗ウイルス組成物において、溶存二酸化塩素濃度を長期間一定に保持でき、前記抗ウイルス組成物から二酸化塩素が少しずつガスとして放出され続けても(あるいは積極的に二酸化塩素ガスを放出し続けても)、該抗ウイルス組成物における二酸化塩素濃度を略一定の範囲内に保持させることができるといった優れた保存安定性が得られる。ここでいう「少しずつガスとして放出され続ける」なる意味は、例えば搬送中あるいは保存中、閉蓋していても二酸化塩素がガスとして自然に抜け出てしまうことを意味し、「積極的に二酸化塩素ガスを放出し続ける」なる意味は、抗ウイルス作用を期待すべく気相中にガスを放出させることを意味する。 緩衝性のある無機酸またはその塩として、リン酸またはその塩を使用した場合にあっては、その他の無機酸や有機酸を使用する場合と比べ、保存安定性がさらに向上し(保存安定期間がさらに延長され)、また保存中における液性(pH)の経時的な揺れ(変動)も小さくなるといった作用効果を奏する。 また、数ある無機酸またはその塩のうち、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物を選択し、これを亜塩素酸ナトリウムと組み合わせて用いることにより、亜塩素酸ナトリウムが二酸化塩素に変わる反応の過剰な進行が極めて起こり難くなるため、自然分解や容器の蓋部分あるいは容器の壁面からの放散によって失われる二酸化塩素のみが亜塩素酸ナトリウム由来の亜塩素酸イオンから補充されるというガス平衡状態が保たれる。このように、亜塩素酸ナトリウムの不要な消耗が抑制され、亜塩素酸ナトリウムが効率的に消費されるので、保存安定性がさらに向上し(延長され)、また保存中における二酸化塩素濃度の経時的な揺れ(変動)がさらに小さくなる(濃度の低下のみならず、濃度の上昇も抑制される)ので好適である。また、この抗ウイルス組成物における、亜塩素酸ナトリウムから塩素原子を長期に亘って補給するメカニズムは、当該抗ウイルス組成物を塗布、噴霧あるいは放散した空間や被対象物上でも発現する。これは、抗ウイルス組成物を塗布、噴霧あるいは放散した後の抗ウイルス効果が長く続くという優れた持続効果を使用者にもたらす。 本発明の広域抗ウイルス薬剤組成物は、種々のウイルスを不活性化するために利用することができる。 溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤からなることを特徴とする広域抗ウイルス薬剤組成物であって、当該溶存二酸化塩素ガスが当該亜塩素酸塩とは別に調製されたものであり、かつ、前記pH調整剤が、リン酸またはその塩であることを特徴とする、保存安定性に優れた薬剤組成物。 溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及びpH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤からなることを特徴とする広域抗ウイルス薬剤組成物であって、前記pH調整剤が、リン酸またはその塩であることを特徴とする保存安定性に優れた薬剤組成物(但し、当該溶存二酸化塩素ガスが、単に亜塩素酸塩溶液に酸を加える反応により発生した二酸化塩素が溶存したにすぎないもののみからなる薬剤組成物を除く。)。 請求項1又は2のいずれか1項に記載の薬剤組成物であって、前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムであり、前記リン酸またはその塩が、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムの混合物であることを特徴とする薬剤組成物。