タイトル: | 特許公報(B2)_生体組織の近赤外線損傷の防止剤及びそれを用いた製品 |
出願番号: | 2008557534 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 8/27,A61K 8/29,A61K 33/24,A61K 33/30,A61K 45/00,A61P 17/16,A61Q 17/04,C09K 3/00,G02C 7/10,C09D 5/00 |
田中 洋平 松尾 清 JP 4406040 特許公報(B2) 20091113 2008557534 20080729 生体組織の近赤外線損傷の防止剤及びそれを用いた製品 田中 洋平 507256016 松尾 清 594001764 小宮 良雄 100088306 大西 浩之 100126343 田中 洋平 松尾 清 JP 2007197592 20070730 20100127 A61K 8/27 20060101AFI20100107BHJP A61K 8/29 20060101ALI20100107BHJP A61K 33/24 20060101ALI20100107BHJP A61K 33/30 20060101ALI20100107BHJP A61K 45/00 20060101ALI20100107BHJP A61P 17/16 20060101ALI20100107BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20100107BHJP C09K 3/00 20060101ALI20100107BHJP G02C 7/10 20060101ALI20100107BHJP C09D 5/00 20060101ALI20100107BHJP JPA61K8/27A61K8/29A61K33/24A61K33/30A61K45/00A61P17/16A61Q17/04C09K3/00G02C7/10C09D5/00 A61K 8、A61K 33、A61K 45、A61P 17、A61Q、C09D、C09K 3、G02C 7 特開2004−331509(JP,A) 特開平07−328421(JP,A) 特開2005−097754(JP,A) 特開2007−308395(JP,A) Meldrum R.A. et al.,Nanoscale spatial induction of ultraviolet photoproducts in cellular DNA by three-photon near-infrared absorption,EMBO reports,Vol.4, No.12,pp.1144-1149,(2003) 山本健司,近赤外線遮蔽用酸化チタンの開発,コンバーテック,2004年7月号,pp.95-97 9 JP2008063558 20080729 WO2009017104 20090205 18 20081216 福井 美穂 本発明は、太陽光や人工光線のうち近赤外線の曝露による人体等の生体の皮膚やそれよりも深部にある生体深部組織の損傷の防止剤、及びそれを用い、近赤外線によって惹き起こされる生体組織の形態変化・機能低下・老化や疾患を、防止するために用いられる生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品に関するものである。 皮膚等の正常な細胞・組織は、太陽光等のなかでも特に紫外線に曝されると、その高いエネルギーの所為で、紅斑、DNA損傷、生体防御機構であるメラニン色素の沈着を惹き起こして、損傷され易い。炎天下で太陽光に過剰に曝されたとき、メラニン色素で紫外線を防御しきれず、その紫外線が、皮膚癌をはじめとする各種皮膚疾患、皮膚の老化を促進する。そこで、紫外線対策のため、紫外線防止剤を含む化粧品やサングラスや窓ガラス用貼付フィルムなど、様々な製品が汎用されている。 一方、近赤外線は、ヘモグロビン、ミオグロビンに強く吸収されるから、特に皮膚、筋肉、内臓、脳、骨をはじめとする血管成分の多い組織に吸収される。この性質を利用して、近赤外線が手指動脈認証、脳の血流測定などに、用いられている。さらに近赤外線が水分に強く吸収されるから、その照射により真皮を過熱し収縮させて弛んだ皮膚を引き締める皮膚若返りのような美容などにも、用いられている。 このような赤外線とりわけ近赤外線は、少量の曝露で無害であり、多量の曝露でも生体の皮膚表面近傍での熱感を伴うだけで健康上、全く問題がないと考えられていた。しかも、生体の皮膚よりも深部の組織への影響が考慮されたことはなかった。 このような赤外線を遮断して、皮膚表面での熱感を防いだり、皮膚の日焼けや老化現象としてのしわやたるみなどの障害を防止したりする化粧料として、例えば特許文献1に薄片状酸化チタンを含有するものが開示されている。 本発明者は、近赤外線により生体組織が損傷されるという知見を得た。この知見によれば、皮膚の正常な細胞・組織が、炎天下で太陽光中の熱エネルギーの約50%を占める赤外線特に近赤外線に過剰に曝されたときに、その皮膚で急性反応による生体防御機構が働く。即ち近赤外線は、ヘモグロビンに強く吸収される性質があるので、生体の皮膚が近赤外線に曝されると、その皮膚表層の血管が拡張し、ヘモグロビンを集め、発赤、紅斑を生じ、その結果、皮膚が赤くなり、そのことにより一層近赤外線が皮膚表層のヘモグロビンに吸収され、皮下組織の損傷が、最小限に抑えられる。さらに過剰な近赤外線に曝されると、近赤外線が水に強く吸収される性質があるので、血管透過性が亢進し、真皮乳頭層より浸出液を貯留させ、水泡を形成して、近赤外線を吸収する結果、皮下組織の損傷が、抑えられる。 さらに、比較的弱く曝露されただけで、それが皮膚を透過し、皮膚のみならず、それより深部の皮下組織、筋肉、内臓、骨、脳など血管成分の多い人体組織に不可逆的に重大な損傷を惹き起こしたり、老化を促進したりしているということも、初めて見出した。 このことから、近赤外線に起因する熱を皮膚表面で遮断して断熱したり、さらに皮膚に曝される紫外線を遮蔽したりするだけでは、皮膚下の様々な組織が近赤外線で損傷されてしまうのを十分に防止できない。特開昭62−149613号公報 本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、近赤外線が皮膚のみならず皮膚の組織よりも深部の組織に到達することを阻害し、近赤外線によりそれらの組織の損傷を防止したり、それに起因する様々な疾病の発症・進行や老化の促進を防止したりする生体組織の近赤外線損傷の防止剤、即ち生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤、及びそれを用いた製品を提供することを目的とする。 前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤は、生体の皮膚に暴露される770〜2500nmの近赤外線を吸収、反射、又は散乱させるもので、一次粒子粒径を10〜20nmとし横径を10〜20nmで縦径を50〜70nmとする紡錘形状の酸化チタン粉末と一次粒子粒径を20〜30nmとする酸化亜鉛粉末との金属酸化物粉末を含む近赤外線透過遮蔽剤が含有されていることにより、前記皮膚よりも深部の組織が前記近赤外線で損傷されることを防止することを特徴とする。 請求項2に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤は、請求項1に記載されたもので、前記近赤外線透過遮蔽剤が、金属粉末;金属酸化物箔片;金属炭化物;金属窒化物;金属ホウ化物;金属窒化物、金属ホウ化物又は金属炭化物で被覆された金属粉末;金属酸化物で被覆された樹脂粉末;鉱物粉末;セラミックス;樹脂;オニウム塩化合物;アゾ化合物;アントラキノン化合物;アンフラ化合物;シアニン化合物;金属錯体化合物;スクアリリウム化合物;ナフタロシアニン化合物;フタロシアニン化合物;ポリエン化合物;及びポリメチン化合物から選ばれる少なくとも一種類を含んでいることを特徴とする。 請求項3に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤は、請求項1に記載されたもので、前記近赤外線透過遮蔽剤が、3〜45重量%含有されていることを特徴とする。 請求項4に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤は、請求項1に記載されたもので、前記近赤外線透過遮蔽剤が、前記酸化チタン粉末と前記酸化亜鉛粉末との前記金属酸化物粉末のみからなることを特徴とする。 この生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤は、前記酸化チタン粉末の3〜25重量%と、前記酸化亜鉛粉末の5〜20重量%とを、含有している。 請求項5に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品は、請求項1に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤が、基材の少なくとも一部に塗布、吸着、接着、貼付、若しくは含有されている部材を有しており、又は媒体に含有された薬剤であることを特徴とする。 請求項6に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品は、請求項6に記載されたもので、前記生体組織の近赤外線損傷の防止剤が、該基材中又は該媒体に重量比で0.0001〜99.9%含有されていることを特徴とする。 請求項7に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品は、請求項6に記載されたもので、前記基材が、紙、織布、不織布、木材板、皮革、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板、ガラス板、及び/又は金属板であり、該媒体が、水、有機溶媒、ゲル、ゾル、粉末、及び/又はバインダであることを特徴とする。 請求項8に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品は、請求項6に記載されたもので、前記部材を有し、衣類、調度品、プロテクター、装身具、フィルタ、建材、外装材、内装材、若しくは装飾具であり、又は前記薬剤であって、化粧品、皮膚用外用剤、若しくは塗料であることを特徴とする。 請求項9に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品は、請求項6に記載されたもので、前記近赤外線の曝露による前記生体若しくは前記組織の老化、それの形態変化、それの機能低下、疾患発症、又は疾患悪化の何れかの防止に用いられることを特徴とする。 本発明の生体組織の近赤外線損傷の防止剤は、皮膚の表皮のみならずそれより深部の真皮、筋肉、内臓、脳、骨など血管組織成分が多い生体組織が近赤外線の曝露により損傷されるのを、防止することができる。このような近赤外線損傷の防止剤を使用することにより、低侵襲で最大かつ確実にその効果を引き出すことが可能であるため、この防止剤を有する生体組織の近赤外線損傷の防止製品は、近赤外線長期曝露に起因する疾病の予防や悪化の防止や治療に、有効である。 この生体組織の近赤外線損傷の防止剤やそれを用いた生体組織の近赤外線損傷の防止製品は、組成成分として人の皮膚に有害な物質が使われておらず、また紫外線吸収剤を含んでいないから、人の皮膚に長期間、繰返して、使用しても安全である。 しかも、近赤外線と、併せて紫外線も遮断するから、生体組織の損傷の防止にとりわけ有用である。近赤外線の照射の有無と、照射の強弱とが違うラットの皮膚・皮下組織、筋層・棘突起、筋組織の光学顕微鏡写真である。近赤外線の照射の有無、照射の強弱、皮下への生理食塩水注入の有無が違うラットの棘突起内部の骨髄を主として示す光学顕微鏡写真である。近赤外線の照射の有無が違うラットの皮膚組織と筋組織とを示す光学顕微鏡写真である。近赤外線の照射の有無が違うラットの棘突起内部の骨髄を示す拡大した光学顕微鏡写真である。本発明を適用する生体組織の近赤外線損傷の防止剤と、本発明を適用外の生体組織の近赤外線損傷の防止剤との近赤外線の透過と反射とを測定する方法の概略図である。本発明を適用する生体組織の近赤外線損傷の防止剤と、本発明を適用外の生体組織の近赤外線損傷の防止剤との近赤外線の透過率を測定した図である。本発明を適用する生体組織の近赤外線損傷の防止剤と、本発明を適用外の生体組織の近赤外線損傷の防止剤との近赤外線の背面リファレンス反射率を測定した図である。本発明を適用する生体組織の近赤外線損傷の防止剤と、本発明を適用外の生体組織の近赤外線損傷の防止剤との近赤外線の背面ダーク反射率を測定した図である。符号の説明 11は投光、12(1)・(2)はスライドガラス、13は試料、14は照射光、15は反射光、16はリファレンス板である。発明を実施するための好ましい形態 以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。 本発明の生体組織の近赤外線損傷の防止剤の一例は、近赤外線透過遮蔽剤と、必要に応じ賦形剤や溶媒・分散媒質と共に配合して、混練したものである。 近赤外線透過遮蔽剤は、 アルミニウム粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、白金粉末、ステンレス鋼粉末、金属粉末や、脂肪酸・油脂・ロウ・脂肪族炭化水素・シリコーンオイル・シリコーン樹脂・ポリスチレン樹脂・ポリエチレン樹脂・アクリル樹脂・エポキシ樹脂・若しくは金属水酸化物やキレート化剤等で被覆又は浸漬処理されたこれら金属粉末、金属塩で被覆されたこれら金属粉末、金属酸化物で被覆された着色アルミニウム粉末で例示される金属粉末; ルチル型若しくはアナタース型の酸化チタン粉末、チッ化チタン含有酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、酸化鉄粉末、酸化バナジウム粉末、酸化クロム粉末、酸化マンガン粉末、酸化コバルト粉末、酸化ガリウム粉末、酸化ジルコニウム粉末、酸化インジウム粉末、酸化スズ粉末、酸化ハフニウム粉末、酸化ルテニウム粉末、酸化セリウム、それらの混合物やその焼結体や金属ドープ体、ガラス粉末のような半金属酸化物粉末で例示される金属酸化物粉末; 箔片状酸化チタン、箔片状酸化ジルコニウムのような金属酸化物薄片; アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、ニオブ、ケイ素、ホウ素及びチタンの何れか金属の炭化物で例示される金属炭化物; アルミニウム、クロム、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タンタル、ハフニウム、バナジウム、及びニオブの何れかの金属の窒化物、酸化金属で表面被覆されたこれら金属の窒化物で例示される金属窒化物; タンタル、タングステン、ジルコニウム、クロム、ニオブ、ランタン、プラセオジウム、ネオジウム、セリウム、イットリウム、チタン、モリブデン、及びホウ素の何れかの金属のホウ化物で例示される金属ホウ化物; 前記のような金属酸化物で被覆された樹脂粉末; タルク、セリサイト、カオリン、白雲母のような鉱物、又はアルミニウムで被覆されたこれら鉱物で例示される鉱物粉末; セラミックス; 微粒子酸化ジルコニウムを付着させたポリアミド樹脂で例示される樹脂; ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、インドリニウム化合物、キノリウム化合物で例示されるオニウム塩化合物; アゾ化合物; アントラキノン化合物; アンフラ化合物; シアニン化合物; ジチオールニッケル錯体化合物のようなジチオール錯体化合物やニッケル錯体化合物で例示される金属錯体化合物; スクアリリウム化合物; フタロシアニン化合物; ポリエン化合物若しくはポリメチン化合物が挙げられる。これらを、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。 近赤外線透過遮蔽剤は、前記の無機系化合物であっても有機系化合物であっても、同様な近赤外線透過遮蔽性を奏する。 中でも、近赤外線透過遮蔽剤が、金属酸化物粉末を含むものであると、特に好ましい。金属酸化物粉末は、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、酸化インジウム粉末が挙げられる。金属でドープされた金属酸化物粉末、例えば金属酸化物半導体である錫ドープ酸化インジウムであってもよい。近赤外線透過遮蔽剤が、金属酸化物粉末である場合、酸化チタン粉末の3〜25重量%と、酸化亜鉛粉末の5〜20重量%とからなることが好ましい。酸化チタン粉末及び/又は酸化亜鉛粉末のような金属酸化物粉末は、近赤外線の遮断効率を高めるために、0.1〜100μm好ましくは1〜10μmの被膜で特殊コーティングされていてもよい。そのコーティングは、例えば1重量%以下のシリコーン樹脂のような樹脂、ポリオール等で被膜を形成したり、アルミニウムやケイ素やチタンや亜鉛を含む無機塩やそれらの水酸化物で浸漬して被膜を形成したり、必要に応じてさらに酸又はアルカリを加えて中和したりさらに焼結して酸化被膜を形成したりしたものが挙げられる。酸化チタン粉末や酸化亜鉛粉末のような金属酸化物粉末は、平均粒径0.1〜400μmであってもよく、粒状又は薄片状のものであってもよい。酸化チタンや酸化亜鉛は日本薬局方収載のものが挙げられる。 酸化チタン粉末や酸化亜鉛粉末のような金属酸化物は、用量が多いほど近赤外線の遮蔽効果が高くなる。前記範囲を下回ると、その遮断効果が弱くなり過ぎて、生体組織の近赤外線損傷の防止剤である皮膚外用剤として、十分な効能が得られない。一方、前記範囲を超えると、皮膚外用剤の成分分離や混合不良のため、皮膚外用剤を調製し難くなる。酸化亜鉛は、皮膚のタンパク質と結合して皮膜を形成して、消炎、皮膚保護作用を発揮するが、その一方で浸出液を吸収し皮膚を乾燥させてしまう働きがあるため、皮膚外用剤を乾燥肌の人へ使用する場合には、酸化亜鉛の量を少なくすることが好ましい。 本発明の生体組織の近赤外線損傷の防止製品の一態様は、近赤外線損傷の防止剤を基材の少なくとも一部に持つ部材を有するというものである。このような製品は、近赤外線損傷の防止剤が、近赤外線を吸収、反射、又は散乱させて、皮膚及びそれより深部の人体組織の損傷を防止したり、その形態変化を防止したり、機能低下を防止したりして、人体組織の老化を予防するものである。基材は、紙、織布、不織布、木材板、皮革、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板、ガラス板、金属板が挙げられるが、中でも樹脂フィルム、樹脂シート、ガラス板が好ましい。近赤外線損傷の防止剤が基材に、混練され、溶解され、分散され、塗布され、吸着され、接着され、貼付され、又は含有されていてもよい。この基材により、フィルタを形成していてもよい。この製品の具体的一例は、ガラス製基材に近赤外線損傷の防止剤を含有するレンズ部材を有する眼鏡やサングラスである。またこの製品の別な具体例は、帽子、衣服、マフラー、下着、肌着、手袋のような衣類;かさ、日傘のような調度品;ヘルメット、ゴーグル、マスクのようなプロテクター;かつらのような装身具;窓ガラスのような建材;自動車や電車等の外装材や内装材;カーテンのような装飾具が挙げられる。 生体組織の近赤外線損傷の防止製品の別な一態様は、近赤外線損傷の防止剤を媒体に含有された薬剤、例えば化粧品や皮膚外用剤である。媒体は、水、有機溶媒、ゲル、ゾル、バインダが挙げられる。近赤外線損傷の防止剤が、媒体に配合され、添加され、又は混入されて、含有されている。 化粧品や皮膚外用剤として、シャンプー、リンス、ヘアーコンディショニング、ヘアートリートメント、ヘアスプレー、ヘアワックス、ヘアジェル、ウォーターグリース、セットローション、カラーローション、ヘアトニック、ヘアリキッド、ポマード、ヘアクリーム、ヘアブロー、枝毛コート、ヘアオイル、ヘアーカラー剤、白髪染め、ヘアマニキュア、育毛剤、洗顔料、クレンジングフォーム、洗粉、洗顔パウダー、クレンジングローション、クレンジングジェル、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングオイル、クレンジングマスク、化粧水、柔軟化粧水、収れん化粧水、洗浄用化粧水、多層式化粧水、乳液、エモリエントローション、モイスチャーローション、ミルキーローション、ナリシングローション、ナリシングミルク、サンプロテクト、サンプロテクター、UVケアミルク、サンスクリーン、メーキャップローション、メーキャップクリーム、ハンドローション、ハンドクリーム、ボディーローション、ボディークリーム、エモリエントクリーム、モイスチャークリーム、栄養クリーム、ベースクリーム、プレメーキャップクリーム、サンスクリーンクリーム、サンタンクリーム、除毛クリーム、デオドラントクリーム、シェービングクリーム、石鹸、化粧石鹸、薬用石鹸、液状石鹸、ひげそり石鹸、合成石鹸、パック、マスク、エッセンス、保湿エッセンス、美白エッセンス、紫外線防止エッセンス、美容液、基礎化粧品;白粉、打粉類、ファンデーション類、口紅類、リップクリーム、リップグロス、頬紅類、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、眉墨、アイブロー、ネイルエナメル、エナメルリムーバー、ネイルトリートメント、防臭化粧品、虫除けスプレー、軟膏剤、貼付剤、ローション剤、塗料が挙げられる。 化粧品や皮膚外用剤の薬剤には、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、乳化剤、溶剤、油剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、安定化剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、引きしめ剤、収斂剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、抗菌剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、ピーリング剤、制汗剤、清涼剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、泡消剤を、1種又は複数種含有していてもよい。 化粧品や皮膚外用剤の薬剤には、通常用いられる賦形剤・担持剤のような添加剤や溶剤、例えば、オリーブ油、グリセリン、動物性又は植物性の脂肪、ロウ、パラフィン、でん粉、長鎖脂肪酸やその塩、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、水等を含有していてもよい。 化粧品や皮膚外用剤の薬剤は、エアゾール剤、液剤、軟膏剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤であってもよい。その形状は、液状、ペースト状、クリーム状、ゲル状、ミスト状であってもよい。 化粧品や皮膚外用剤の薬剤は、より具体的には、粉体成分として、酸化チタン粉末(3〜25重量%)や酸化亜鉛粉末(5〜20重量%)のような近赤外線透過遮断剤(3〜45重量%)、油相成分として、セチルジメチコンコポリオールやPEG−10ジメチコン(PEG−10は平均繰返数10のポリエチレングリコール)で例示されるジメチコン類のような各種乳化剤(夫々1重量%)、フェニルトリメチコンのような消泡剤(1重量%)、油相成分として、シクロペンタンシロキサン類(15.5重量%)やトリメチルシロキシケイ酸(5重量%)のようなシリコーン油(5〜42%)、エモリエント剤でもある安息香酸アルキル(アルキル炭素数C12〜15)、その他植物性油やスクワランや脂肪酸アルキルエステル類のような各種油剤(1〜5重量%)、水相成分として、フェノキシエタノール(0.3〜1重量%)やグリセリン(0〜10重量%)や1,3−ブチレングリコール(0〜10重量%)や各種動植物エキス(最大1重量%)や各種ビタミン類(最大1重量%)、酸類・アルカリ類・pH調整剤のような塩類(適量)、及び溶剤としてイオン交換水やRO水や蒸留水のような精製水(残余)が、配合されて含有されたものである。近赤外線透過遮断剤以外の成分は、分散性や皮膚塗布性を考慮して適宜増減することができる。 近赤外線は、皮膚、皮下組織だけでなく、骨も、また脳も、通り抜けるので、長期間の曝露で、脳を萎縮させ痴呆を惹き起こしたり、神経を脱髄させたり、血管の多い組織の多くを激しく損傷して変性したり、遺伝子を傷つけたり、腫瘍化したりする可能性がある。そのため、この皮膚外用剤を用いると、脳血管疾患、脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆、脱髄疾患、パーキンソン病をはじめとする変性疾患、網膜症をはじめとする眼科疾患、皮膚科疾患、血管腫、血管肉腫をはじめとする血管性病変、SLE、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎をはじめとする膠原病、血液・造血器疾患、感染症、免疫病、アレルギー性疾患、消化管・腹壁・腹膜疾患、肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓疾患、心臓・脈管疾患、内分泌・代謝・栄養疾患、腎臓・泌尿器疾患、呼吸器・胸壁・縦隔疾患、神経・精神・運動器疾患の夫々の疾患で、近赤外線暴露により血管を多く含む組織、臓器が損傷されることが、防止される。 さらに、皮膚外用剤を用いると、特に前記疾患で予防効果を奏する。 そのため、この皮膚外用剤は、近赤外線暴露によって生じる生体の防御反応をトリガーとして発症したり悪化したりする疾患の予防薬や治療薬としての薬効を示す。 この皮膚外用剤は、前記の様々な疾患の予防方法・治療方法に用いられる。 先ず、以下に、本発明を完成するに至った医学的研究結果を詳細に説明する。 皮膚を透過して真皮、皮下組織を加熱し得るほど極めて透過性・吸収性の高い近赤外線が、真皮のみならず、皮膚より深部の組織、例えば筋肉、内臓、脳、骨など血管成分の多い組織、体内のすべての組織を不可逆的に損傷する可能性について検討した。 近赤外線照射には、真皮を過熱して収縮させてしわ・たるみを引き締める治療、若返り医療に用いられる近赤外線治療器Titan(キュテラ株式会社製:商品名)を使用した。この治療器は、水分によく吸収される1.1〜1.8μmの波長の近赤外線を照射できるものである。 組織学的研究のために、背部を剃毛した無痛下のラットを7群に分けた。近赤外線の照射出力を20J/cm2(弱照射)と40J/cm2(強照射)との2段階の強度とする3群ずつに分け、さらにその強度毎に照射回数を1回、2回、3回とする各群に分けた。その照射間隔は、1週間とした。 それらのラットの背部に近赤外線を照射した。筋層、棘突起を含めつつ皮膚・皮下組織を、照射直後、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヵ月後に、夫々採取した。採取した組織検体を、採取直後にホルマリンと無水エタノールで固定した。 検体の染色は、細胞核を青紫色に染め、細胞質、結合組織、赤血球などを赤く染めるヘマトキシリン・エオジン染色(以下HE染色)、膠原線維と筋線維とを染め分けるAZAN染色、及びアポトーシスの組織化学的同定法とされDNA断片化を証明するTUNEL法により、行った。 なお、残りの1群を近赤外線非照射のコントロール群とした。 図1は、近赤外線の照射の有無と、照射の強弱とが違うラットの皮膚・皮下組織、筋層・棘突起、筋組織の光学顕微鏡写真である。 図1(a-1)は、近赤外線非照射のコントロール群の正常ラットの皮膚・皮下組織、及び筋層、棘突起を、HE染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、角質層は厚く、表皮は凹凸が激しいことが分かる。真皮の膠原線維には、隙間が多く認められる。真皮の深層に、肉様膜、疎性結合組織、骨膜、皮質骨が認められ、棘突起の両側に筋体が認められる。棘突起の内部に、非常に密に紫色に染まっている骨髄細胞が認められる。 図1(a-2)は、40J/cm2の近赤外線を1回照射後、1ヶ月経過したラットの皮膚・皮下組織を、HE染色した結果を示す写真である。脂腺、汗腺、毛根の皮膚付属器の減少や消失が認められる。 図1(b-1)は、近赤外線非照射のコントロール群の正常ラットの皮膚組織を、AZAN染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、角質層、表皮は、凹凸が激しい。脂腺など皮膚付属器が多く認められる。真皮には膠原線維の隙間が多く認められる。 図1(b-2)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射後、1.5ヶ月経過したラットの皮膚組織を、AZAN染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、角質層、表皮が滑らかになり、しわが消失している。真皮に広範囲に小血管の増生、真皮上層に非常に高密度に束状の膠原線維の増殖が、認められる。 図1(b-3)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射後、1週間経過したラットの筋組織を、AZAN染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、筋組織の萎縮・変性を認める。 図2は、近赤外線の照射の有無、照射の強弱、皮下への生理食塩水注入の有無が違うラットの棘突起内部を主として示す光学顕微鏡写真である。 図2(a-1)は、近赤外線非照射のコントロール群の正常ラットの棘突起内部を、HE染色した結果を示す強拡大の写真である。この写真から明らかなように、非常に密に紫色に染まっている骨髄細胞、ピンク色に染まったしっかりとした骨梁が、認められる。 図2(a-2)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射直後のラットの棘突起内部を、HE染色した結果を示す強拡大の写真である。この写真から明らかなように、密に紫色に染まっている骨髄細胞が著明に減少し、白い空泡に見える脂肪変性が広範囲に認められる。 図2(a-3)は、20J/cm2の近赤外線を3回照射後、1ヶ月経過したラットの棘突起内部を、HE染色した結果を示す強拡大の写真である。この写真と同図(a-2)の写真とから明らかなように、密に紫色に染まっている骨髄細胞の減少は、40J/cm2照射時に比べて軽度であり、白い空泡にみえる脂肪変性も、40J/cm2照射時に比べて軽度である。 図2(a-4)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射後、1ヶ月経過したラットの棘突起内部をHE染色した結果を示す強拡大写真である。この写真と同図(a-2)の写真とから明らかなように、非常に密に紫色に染まっている骨髄細胞が減少し、白い空泡にみえる脂肪変性が広範囲に認められ、照射直後の状態と比較して、明らかな回復が認められない。 図2(b-1)は、皮下に生理食塩水を注入後に40J/cm2の近赤外線を3回照射した直後のラットの皮膚・皮下組織、筋層、棘突起を、HE染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、密に紫色に染まっている骨髄細胞の減少も、白い空泡にみえる脂肪変性も、生理食塩水を注入しないで照射した場合に比べてきわめて軽度である。これは近赤外線が水に非常に吸収されやすいことから、皮下より深層への損傷を最小限に抑えることができたものと推測される。 図2(b-2)は、皮下に生理食塩水を注入後に40J/cm2の近赤外線を3回照射した直後のラットの棘突起内部をHE染色した結果を示す強拡大の写真である。この写真から明らかなように、密に紫色に染まっている骨髄細胞の減少も、白い空泡にみえる脂肪変性も、生理食塩水を注入しないで照射した場合に比べてきわめて軽度である。 図3は、近赤外線の照射の有無が違うラットの皮膚組織と筋組織とを示す光学顕微鏡写真である。 図3(a-1)は、近赤外線非照射のコントロール群の正常ラットの皮膚組織を、TUNEL法で染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、角質層、表皮、真皮に、明らかにアポトーシスを起こしている細胞は、認められない。 図3(b-1)は、近赤外線非照射のコントロール群の正常ラットの筋組織を、TUNEL法で染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、筋層内に明らかにアポトーシスを起こしている細胞は、認められない。 図3(a-2)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射後、1週間経過したラットの皮膚組織を、TUNEL法で染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、真皮内にアポトーシスを起こしている細胞が認められる。 図3(b-2)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射後、1週間経過したラットの筋組織を、TUNEL法で染色した結果を示す写真である。この写真から明らかなように、広範囲の筋層の萎縮・変性だけでなく、アポトーシスを起こしている細胞が非常に多数認められる。 図3(b-3)は、40J/cm2の近赤外線を3回照射後、1週間経過したラットの筋組織を、TUNEL法で染色した結果を、1000倍(光学顕微鏡での最高倍率)の強拡大の写真である。この写真から明らかなように、核内のクロマチンが凝集し、アポトーシスを起こしていることが、認められる。 図4は、近赤外線の照射の有無が違うラットの棘突起内部を示す拡大した光学顕微鏡写真である。 図4(a)は、近赤外線非照射のコントロール群の正常ラットの棘突起内部をTUNEL法で染色した結果を示す強拡大の写真である。この写真から明らかなように、アポトーシスを起こしている骨髄細胞が、少数認められる(矢印)。 図4(b)は、40J/cm2の近赤外線を2回照射後、3週間経過したラットの棘突起内部を、TUNEL法で染色した結果を示す強拡大の写真である。この写真から明らかなように、白い空泡にみえる脂肪変性が広範囲に認められ、アポトーシスを起こしている骨髄細胞が多数認められる(矢印)。 前記の組織学的研究により、近赤外線照射によって、脂腺、汗腺、毛根などの皮膚付属器が減少、消失し、高出力・連続照射では筋細胞が萎縮、変性、アポトーシスを起こすことが、医学的、組織学的に、客観的に証明された。太陽光を長く浴びると、紫外線による皮膚の損傷だけでなく、知らない間に、近赤外線が皮膚を通り抜けて、皮膚、皮下組織、筋肉、内臓、骨、脳など人体のあらゆる組織に重大な損傷を与え,あらゆる意味での老化を促進していると考えられる。 このことは、日光浴を頻繁に行っている人の皮膚の光老化の進行が早く、しかもそれの真皮・皮下組織の萎縮が著しいという臨床的な結果を裏付けるものである。また、太陽光に長時間、長期間曝露されている人、例えば高地に住む人々は、若い頃、皮膚、特に真皮が近赤外線を防御するため比較的厚くなっていることや、近赤外線に曝されるとそれにより真皮が加熱され、熱傷のため浮腫を生じる結果、はれぼったい顔になっていることも、説明がつく。一方、皮膚が白く薄い人、例えば白色人種は、近赤外線を皮膚で十分に吸収することができず、筋肉も薄くなっているため、加齢とともに皮膚・皮下組織が垂れやすい傾向にあり、若返りの手術であるフェイスリフトを有色人種と比して圧倒的に多く行っているという事実も、納得できる。実に多くの人が日々、紫外線対策に勤しんでいるが、紫外線遮断だけで皮膚癌や皮膚疾患、皮膚・身体の老化が抑制されることはないのである。 この結果に基づき、生体組織の近赤外線損傷の防止剤であるW/Oタイプの皮膚外用剤、それを用いた生体組織の近赤外線損傷の防止製品である眼鏡を試作した実施例を示す。(実施例1)近赤外線遮断を目的とした皮膚外用剤の試作 近赤外線透過遮断剤として酸化チタン(10重量%)及び酸化亜鉛(5重量%) デカメチルシクロペンタンシロキサン(26重量%) 1,3−ブチレングリコール(10重量%) メチルポリシロキサン(5重量%) ポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(4重量%) フェノキシエタノール(0.4重量%) 精製水(残余)を、混練して、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。この皮膚外用剤は、サンケア指数(SPF;計算値)が、約25である。(実施例2)近赤外線遮断を目的とした皮膚外用剤の試作 近赤外線透過遮断剤として酸化チタン(5重量%)及び酸化亜鉛(20重量%) デカメチルシクロペンタンシロキサン(29重量%) 1,3−ブチレングリコール(8重量%) メチルポリシロキサン(2重量%) ポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(4重量%) フェノキシエタノール(0.4重量%) 精製水(残余)を、混練して、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。この皮膚外用剤は、サンケア指数(SPF;計算値)が、約45である。(実施例3)近赤外線遮断を目的とした皮膚外用剤の試作 近赤外線透過遮断剤として酸化チタン(7重量%)及び酸化亜鉛(15重量%) デカメチルシクロペンタンシロキサン(29重量%) 1,3−ブチレングリコール(8重量%) メチルポリシロキサン(2重量%) ポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(4重量%) フェノキシエタノール(0.4重量%) 精製水(残余)を、混練して、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。この皮膚外用剤は、サンケア指数(計算値)が、約38である。(実施例4)近赤外線遮断を目的とした皮膚外用剤の試作 近赤外線透過遮断剤として酸化チタン(3重量%)及び酸化亜鉛(10重量%) デカメチルシクロペンタンシロキサン(42重量%) 1,3−ブチレングリコール(8重量%) メチルポリシロキサン(2重量%) ポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(2重量%) フェノキシエタノール(0.4重量%) 精製水(残余)を、混練して、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。この皮膚外用剤は、サンケア指数(計算値)が、約22である。 なお、上記実施例で用いた酸化チタンは、一次粒子粒径が10〜20nmで、横径10〜20nm、縦径50〜70nmの紡錘形状のものである。酸化亜鉛は一次粒子粒径が20〜30nmのものである。(比較例)比較のための皮膚外用剤の試作 デカメチルシクロペンタンシロキサン(38重量%) 1,3−ブチレングリコール(10重量%) メチルポリシロキサン(7重量%) フェノキシエタノール(0.4重量%) 精製水(残余)を、混練して、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。 実施例1〜4及び比較例で得られた皮膚外用剤の性能を評価するため、透過率と反射率とについて理化学試験を行った。(透過率の測定) 透過率の測定は紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光社製:商品名)を用いて行った。測定条件は、測定範囲を190〜2500nmとし、バンド幅を可視領域で5nmとし近赤外領域で20nmとし、データ取込間隔を2nmとし、走査速度を1000nm/分とするものである。測定には、近赤外線用スライドガラスを用いた。測定方法は、図5(A)透過率測定を参照して説明すると、以下の通りである。先ず、大気中、全測定波長で透過率を測定し、透過ベースラインを調整した。次いで対照として、2枚のスライドガラス12(1)・(2)を重ね、測定波長光11を照射しその透過光11を分光光度計の分光器で受光して、スライドガラス12(1)・(2)の透過率を測定した。さらに、2枚のスライドガラス12(1)・(2)に皮膚外用剤を試料13として挟み込み、同様にして分光光度計で皮膚外用剤の透過率を測定した。各波長でのスライドガラスの透過率を100%として換算したときの各皮膚外用剤の換算した透過率(%T)を、図6に示す。なお、このスライドガラス12(1)・(2)は紫外領域での測定ができないものであるから、350nm以下のデータを示していない。 この透過率の測定においては、近赤外線透過率が低い皮膚外用剤ほど近赤外線の吸収率、反射率が高いと考えられる。図6から明らかな通り、近赤外線透過遮蔽剤である酸化チタンと酸化亜鉛とを含んでいる実施例1〜4の皮膚外用剤は、それらを含んでいない比較例の皮膚外用剤よりも、約770〜2500nmの近赤外線の透過が、有意に、特に低波長程、顕著に低かった。特に、実施例1の皮膚外用剤は、比較例の皮膚外用剤よりも、最大で約70%も透過率が低下しており、近赤外線の吸収率、反射率が高いと考えられ、近赤外線透過遮蔽剤としてより効果的であると考えられる。(背面リファレンス法による反射率の測定) 反射率の測定は、紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光社製:商品名)を用いて行った。測定条件は、分光光度計に付属の反射リファレンス板を用い、測定範囲を190〜2500nmとし、バンド幅を可視領域で5nmとし近赤外領域で20nmとし、データ取込間隔を2nmとし、走査速度を1000nm/分とした。測定には、近赤外線用スライドガラスを用いた。測定方法は、図5(B)反射測定(反面リファレンス法)を参照して説明すると、以下の通りである。先ず、全測定波長で反射リファレンス板16の反射率を測定し、反射ベースラインを調整した。次いで、対照として、2枚のスライドガラス12(1)・(2)を重ね、測定波長照射光14を投光し、反射光15を受光して反射率を測定した。さらに、2枚のスライドガラス12(1)・(2)に皮膚外用剤を試料13として挟み込み、同様にして分光光度計で皮膚外用剤の反射率を測定した。このとき何れもスライドガラス12(1)・(2)や皮膚外用剤である試料13を透過した光はリファレンス板16で反射する。各波長でのスライドガラス12(1)・(2)の反射率を100%に換算したときの各皮膚外用剤の換算した反射率(%R)を、図7に示す。 背面リファレンス反射測定では、近赤外線透過遮蔽剤を含有している皮膚外用剤を透過した光は、リファレンス板で反射するため、反射率が低い皮膚外用剤ほど、吸収率が高いと考えられる。背面リファレンス反射測定は、赤外線透過遮蔽剤を含有している皮膚外用剤の近赤外線の吸収の度合いを測定するものである。図7から明らかな通り、近赤外線透過遮蔽剤である酸化チタンと酸化亜鉛とを含んでいる実施例1〜4の皮膚外用剤は、それらを含んでいない比較例の皮膚外用剤よりも、約400〜2500nmの近赤外線の反射率が、有意に低く、反射率が低い皮膚外用剤ほど、近赤外線の吸収率が高いと考えられ、近赤外線透過遮蔽性が優れていることが示された。(背面ダーク法による反射率の測定) 反射率の測定は、紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光社製:商品名)を用いて行った。測定条件は、測定範囲を190〜2500nmとし、バンド幅を可視領域で5nmとし近赤外領域で20nmとし、データ取込間隔を2nmとし、走査速度を1000nm/分とした。測定には、近赤外線用スライドガラスを用いた。測定方法は、図5(C)反射測定(反面ダーク法)を参照して説明すると、以下の通りである。先ず、対照として、2枚のスライドガラス12(1)・(2)を重ね、測定波長照射光14を投光し、反射光15を受光して反射率を測定した。さらに、2枚のスライドガラス12(1)・(2)に皮膚外用剤を試料13として挟み込み、同様にして分光光度計で皮膚外用剤の反射率を測定した。このとき何れもスライドガラス12(1)・(2)や皮膚外用剤である試料13を透過した光は受光器側へ戻ってこない。各波長でのスライドガラス12(1)・(2)の反射率を1に換算したときの実施例1〜4、及び比較例の皮膚外用剤の相対反射度を、図8に示す。 背面ダーク反射測定では、赤外線透過遮蔽剤を含有している皮膚外用剤を透過した光は戻らないため、背面ダーク反射の相対値が高いものほど、近赤外線の反射率が高いと考えられる。背面ダーク反射測定は近赤外線透過遮蔽剤の近赤外線の反射の度合いを測定するものである。図8から明らかな通り、近赤外線透過遮蔽剤である酸化チタンと酸化亜鉛とを含んでいる実施例1〜4の皮膚外用剤は、それらを含んでいない比較例の皮膚外用剤よりも、約400〜2500nmの近赤外線の背面ダーク反射の相対値が、有意に高く、相対値が高い皮膚外用剤ほど、近赤外線の反射率が高いと考えられる。従って、近赤外線透過遮蔽剤を含有している実施例の皮膚外用剤は、近赤外線透過遮蔽性が優れていることが示された。 以上のことから、実施例の中でも、実施例1及び2のものが最も近赤外線を反射・吸収していたことから、とりわけ皮膚外用剤として優れていた。(実施例5)近赤外線遮断を目的とした皮膚外用剤の試作 原料として以下のものを下記重量比で用いた。〔粉体原料〕1.酸化チタン分散体(クローダ社製:商品名Solavell CT-100、成分:〔安息香酸アルキル(C12-15)、酸化チタン、ポリヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸Al、アルミナ〕・・・・・酸化チタン量の換算値25%2.酸化亜鉛・・・・・15%3.セチルジメチコンコポリオール(デグサ社製;商品名ABIL EM90)・・・・・1%4.PEG-10ジメチコン(東レ・ダウコーニング社製;商品名SS2910)・・・・・1%5.フェニルトリメチコン(東レ・ダウコーニング社製;商品名SH556)・・・・・1%〔油相原料〕6.シクロペンタシロキサン(東レ・ダウコーニング社製;商品名SH245)・・・・・1%7.トリメチルシロキシケイ酸(東レ・ダウコーニング社製;商品名BY11-018)・・・・・1%〔水相原料〕8.グリセリン・・・・・1%9.ブチレングリコール(BG)・・・・・10%10.フェノキシエタノール・・・・・0.3%11.精製水・・・・・残余上記原料を混合して混練し、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。 皮膚疾患のない健常者10人の片側顔面、上肢に、この皮膚外用剤を二度塗布し、太陽光の下で1時間日光浴をした。皮膚外用剤を塗布した側と塗布していない側とを比較して、この皮膚外用剤の効果を評価した。塗布していない側では被験者の全例で熱感、ほてりを認め、7人に発赤を認めたが、塗布した側では全例において熱感、ほてり、発赤、紅斑、腫脹、水泡など近赤外線曝露による影響と考えられる症状、所見は認められなかった。(実施例6)近赤外線遮断を目的とした皮膚外用剤の試作 実施例5の酸化チタン分散体による酸化チタン量の換算値を20%とし、酸化亜鉛を15%としたこと以外は、実施例5と同様にして、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。その効能は、実施例5の皮膚外用剤と略同様であった。 また、この皮膚用外用剤をラットに塗布し、前記の組織学的検討と同様に近赤外線を照射しても、非照射の場合と同様に、異常を惹き起こさないものである。この皮膚用外用剤によれば、角質層、表皮、真皮、筋層、真皮の膠原線維、棘突起、脂腺等の皮膚付属器、骨髄細胞、骨梁のような皮膚組織・皮下組織・皮膚深部組織を、近赤外線曝露によって損傷することが、抑制され、正常に維持することができる。また、紫外線曝露による損傷も併せて抑制することができる。(実施例7)近赤外線遮断を目的とした眼鏡の試作 近赤外線遮断フィルムは、近赤外線遮断金属酸化物半導体として前記のような錫ドープ酸化インジウムを使用したエコシールドフィルム(インターセプト株式会社製;商品名)を使用した。市販のガラス製、プラスティック製の度のない眼鏡に、この近赤外線遮断フィルムを貼付して眼鏡を作製した。対照として未貼付の眼鏡を用いた。 このフィルムの貼付の有無による眼精疲労の出現に差について、評価した。眼科疾患の既往、視力障害、視野障害を認めない健常者10人に対して、上記の眼鏡をそれぞれ着用して、屋外で太陽を直視しその後の眼精疲労度を評価、検討した。羞明が強い場合は直視せず、太陽の近くを見るものとし、フィルムを貼付した場合としていない場合で同じ位置をみるものとした。眼精疲労は貼付後で全例において貼付していない場合より明らかに軽減した。 なお、近赤外線透過遮蔽剤として、実施例1〜7で酸化チタンや酸化亜鉛や酸化インジウムを用いた例を示したが、それら以外のもので、前記例示された有機系化合物又は無機系化合物であっても、同様の結果が得られる。近赤外線損傷の防止剤は、その他の前記添加剤を含有するものであってもよい。 本発明の生体組織の近赤外線損傷の防止剤は、身につけたり手にしたり身のまわりで使用されたりする日常生活用品に用いられて、太陽光や熱源等から日常的に身体に照射されている近赤外線がその皮膚及びその深部組織を損傷してしまうのを防止するのに有用である。さらにこの防止剤は、近赤外線を病因とする疾患について、発症や進行のメカニズムや病態を解明したり、予防剤・治療剤にして予防や治療したりするために、用いられる。 このような日常生活用品に用いられる生体組織の近赤外線損傷の防止製品は、身体組織の損傷や老化を防ぎ、近赤外線に起因する様々な疾患の発症や進行を防いで医療経済の健全化に資することができる。また近赤外線に起因する様々な疾患の治療に用いていた手術や投薬を削減したり、患者の身体的負担を軽減したりするのに有用である。 生体の皮膚に曝露される770〜2500nmの近赤外線を吸収、反射、又は散乱させるもので、一次粒子粒径を10〜20nmとし横径を10〜20nmで縦径を50〜70nmとする紡錘形状の酸化チタン粉末の3〜25重量%と、一次粒子粒径を20〜30nmとする酸化亜鉛粉末の5〜20重量%との金属酸化物粉末を含む近赤外線透過遮蔽剤が含有されていることにより、前記皮膚よりも深部の組織が前記近赤外線で損傷されることを防止することを特徴とする生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤。 前記近赤外線透過遮蔽剤が、金属粉末;金属酸化物箔片;金属炭化物;金属窒化物;金属ホウ化物;金属窒化物、金属ホウ化物又は金属炭化物で被覆された金属粉末;金属酸化物で被覆された樹脂粉末;鉱物粉末;セラミックス;樹脂;オニウム塩化合物;アゾ化合物;アントラキノン化合物;アンフラ化合物;シアニン化合物;金属錯体化合物;スクアリリウム化合物;ナフタロシアニン化合物;フタロシアニン化合物;ポリエン化合物;及びポリメチン化合物から選ばれる少なくとも一種類を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤。 前記近赤外線透過遮蔽剤が、3〜45重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤。 前記近赤外線透過遮蔽剤が、前記酸化チタン粉末と前記酸化亜鉛粉末との前記金属酸化物粉末のみからなることを特徴とする請求項1に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤。 請求項1に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤が、基材の少なくとも一部に塗布、吸着、接着、貼付、若しくは含有されている部材を有しており、又は媒体に含有された薬剤であることを特徴とする生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品。 前記生体深部組織の近赤外線損傷の防止剤が、該基材中又は該媒体に重量比で0.0001〜99.9%含有されていることを特徴とする請求項5に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品。 前記基材が、紙、織布、不織布、木材板、皮革、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板、ガラス板、及び/又は金属板であり、該媒体が、水、有機溶媒、ゲル、ゾル、粉末、及び/又はバインダであることを特徴とする請求項5に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品。 前記部材を有し、衣類、調度品、プロテクター、装身具、フィルタ、建材、外装材、内装材、若しくは装飾具であり、又は前記薬剤であって、化粧品、皮膚用外用剤、若しくは塗料であることを特徴とする請求項5に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品。 前記近赤外線の曝露による前記生体若しくは前記組織の老化、それの形態変化、それの機能低下、疾患発症、又は疾患悪化の何れかの防止に用いられることを特徴とする請求項5に記載の生体深部組織の近赤外線損傷の防止製品。