タイトル: | 公表特許公報(A)_滴定酸度の低減と、歯およびその他の骨の変性の予防 |
出願番号: | 2008557369 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A23L 1/30,A61K 31/661,A61K 31/047,A61P 19/10,A61P 1/02,A23L 2/52 |
シャムスディン アブルカラム エム フォン フラウンホッファー ジョセフ エイ JP 2009536517 公表特許公報(A) 20091015 2008557369 20070302 滴定酸度の低減と、歯およびその他の骨の変性の予防 アイピー−6 リサーチ インコーポレイテッド 508196209 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 平山 孝二 100114007 小竹 理絵 100132447 シャムスディン アブルカラム エム フォン フラウンホッファー ジョセフ エイ US 60/778,108 20060302 US 11/712,512 20070301 A23L 1/30 20060101AFI20090918BHJP A61K 31/661 20060101ALI20090918BHJP A61K 31/047 20060101ALI20090918BHJP A61P 19/10 20060101ALI20090918BHJP A61P 1/02 20060101ALI20090918BHJP A23L 2/52 20060101ALI20090918BHJP JPA23L1/30 ZA61K31/661A61K31/047A61P19/10A61P1/02A23L2/00 F AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2007005261 20070302 WO2007103110 20070913 15 20081104 1.ウィンドウズ 4B017 4B018 4C086 4C206 4B017LC03 4B017LE10 4B017LK04 4B017LL09 4B017LP15 4B018LB01 4B018LB08 4B018LB09 4B018MD27 4B018ME05 4B018ME09 4B018ME14 4B018MF02 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA34 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA67 4C086ZA97 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA05 4C206MA02 4C206MA04 4C206MA72 4C206NA14 4C206ZA67 4C206ZA97発明の詳細な説明発明の分野本発明は、食料品および飲料の滴定酸度(TA)を低減させる方法および組成物、ならびに歯およびその他の骨の腐食、浸食、変性の治療と予防に用いられる方法および組成物に関する。発明の背景清涼飲料水は、米国においては非常に巨大なビジネスであり、売り上げは、年間640億ドルに急速に近づきつつあり、年間成長率は30%である。過去50年間で、米国における清涼飲料水(炭酸飲料水、フルーツジュース、およびスポーツ飲料を含む)の消費は500%増加した。米国人によって消費される飲料のおよそ28%は炭酸飲料水であり、1日平均およそ1.5〜2.0個の12オンスの缶が消費されている(年間およそ54ガロンに相当する)。低カロリー清涼飲料水は、一般的な飲料の売上高の24%を占め、27年間で16%増加している。文献には、分解またはキレート化による歯牙浸食、硬組織の不可逆性の損失の蔓延の増加に関して多く論じられており、この増加が清涼飲料水の頻繁かつ継続的な消費に関連があることを文献は示している。過去20年間で、児童および青少年の清涼飲料水の消費が最も増加していると報告されている。この傾向は、一つには学校における清涼飲料水の自動販売機の普及に起因している。しかし、これらの知見は、英国、アイルランド、アイスランド、サウジアラビア、およびニュージーランドに関して報告されている清涼飲料水の消費と、それに関連する歯牙浸食の蔓延と類似している。浸食は、歯のエナメル質に著しい損傷を与える。飲料の潜在的な酸性度は、それらの消費に起因する歯牙浸食の主な要因である。文献は、単に飲料のpHだけではなく、総酸および滴定酸性レベルが水素イオンと歯の表面の間の相互作用の有効性を決定することを示している。唾液の最適なpHは、6.5〜7.5であり、虫歯発生のpH閾値は5.5である。口腔は、pHが5.5を下回際に、正常な状態に戻ることがあるが、pHの値が低下した状態に長く曝露された後、または最適なpHと閾値を下回る状態が頻繁に繰り返された後は、エナメル質の脱灰は、さらに速い傾向がある。炭酸化作用は、それ自体は歯牙浸食において重要な要素ではない。飲料からの浸食は、曝露時間および温度によってだけでなく、酸の種類、そのカルシウムキレート特性、および飲料のエナメル質上に保持される傾向によって決定される。多くの清涼飲料水は、1つ以上の食品用酸味料を含んでおり、リン酸およびクエン酸は最も一般的であるが、他の有機酸(例えば、リンゴ酸および酒石酸)も存在していることがある。これらの多塩基酸は、それらが有するカルシウムキレート能によって歯のエナメル質にとって高い浸食性を持ちうる。さらに、多塩基酸は非常に効果的な緩衝剤であり、著しく希釈されたとしてもpHを閾値より下に維持できる。清涼飲料水の消費によるエナメル質の浸食は、頻繁に文献で取り扱われているものの、平均的な消費者が入手できる非常に多種類の清涼飲料水の相対的な攻撃性に関するデータは限られているように思われる。コーラ系飲料に比べて、非コーラ飲料およびアイスティー缶飲料の歯のエナメル質に対する攻撃性は非常に強く、これは清涼飲料水のpHに単純に帰することのできない効果である。大部分の飲料のpHは、2.4〜3.4である(すなわち、虫歯の閾値pH5.5を大きく下回る)ため、エナメル質の分解の促進は、所望の口当たりをもたらす、非コーラ飲料に含まれる添加物による可能性が最も高い。エナジードリンクまたはスポーツ飲料の消費の急速な増加は上記で説明した。一研究によって、スポーツ飲料が有する脱灰作用は高いことが示された一方、別の研究では、歯牙浸食とスポーツ飲料の使用の間に関連は認められなかった。A.虫歯一般的な飲料の大部分に、様々な酸味料が風味料として含まれていることは既知であり、科学文献は、これらの飲料が、歯の硬組織(歯のエナメル質、象牙質、およびセメント質)の主成分であるヒドロキシアパタイトを攻撃しうることをはっきりと示している。最近の報告では、図1に示したエナメル質の分解速度が示すように、コーラ系の飲料よりも柑橘類含有飲料のほうが歯のエナメル質に対してより深刻な損傷を与えていることが示された。柑橘類含有飲料においてエナメル質の分解速度が大きい原因は、飲料中に存在するクエン酸(ならびに類似の低分子量有機酸)の緩衝能である可能性がある。結果として、飲料による歯牙浸食の主な要因は潜在的な酸性度、すなわち、総酸性度または滴定酸性度である。滴定酸度は、飲料のpHではなく、歯の表面と反応しうる酸性分子(プロトン化分子および非プロトン化分子の両方)の総数を測定するため、酸の総含有量は、浸食リスクのより正確な予測因子になる可能性がある。そうした清涼飲料水中に存在するクエン酸は、歯の修復材、ならびに、歯列不整の矯正に使用される、弾性チェーンにも有害な影響を与えることが示されている。B.その他の骨の変性骨粗しょう症は、骨吸収の増加と、正常な骨形成、または骨形成の低下によって特徴付けられる、骨単位の骨量の全身性かつ進行性の減少であり、骨の脆弱化につながり、腰、手首、背骨の骨折リスクが増加する。米国では、1000万人近い人々が、骨粗しょう症を発症している。それ以外の1800万人では、骨量が低下しており、骨粗しょう症の発症リスクが高まる。骨粗しょう症患者の80%は女性である。51歳以上の人々のうち、女性の2人に1人、男性の8人に1人が、生涯のうちに骨粗しょう症関連骨折を経験すると予測されている。骨粗しょう症誘発性骨折は社会にとって非常に大きな問題である。股関節骨折(hip fracture)は、ほぼ日常的に起こる、入院につながる最も深刻な骨折であり、約20%のケースで命取りになる。股関節骨折患者の約2分の1には回復不能の障害が残り、骨折率は年齢とともに急激に増加する。50歳女性の生涯の骨折リスクは約40%であり、この数字は冠状動脈性心疾患のリスクとそれほど変わらない。50歳女性が股関節骨折により死亡する生涯リスクは2.8%であり、乳癌による死亡リスクに匹敵する。1990年には、全世界の股関節骨折単独の数は170万件であり、人口統計上の変化に伴い、この数字は2050年までに、600万件まで増加すると予想されている。これは医師が診療中に最も多く目にする骨の疾患である。2000年には、ヨーロッパにおける骨粗しょう症性骨折の数は推定379万件であり、そのうち89万件は股関節骨折であった(179,000件の股関節骨折が男性、711,000件が女性)。直接費の合計は317億ユーロであり、2050年にはヨーロッパの人口統計上の変化予想に基づいて767億ユーロに跳ね上がると予想されている。米国はというと、米国における2005年の骨粗しょう症に続発する骨折の総直接費の概算は170億ドルである。骨は一見生命を有しないように見えるかもしれないが、絶えず分解され、破骨細胞と呼ばれる細胞によって吸収されると同時に、骨芽細胞と呼ばれる細胞によって、構築される、または再構成されており、生きた組織である。我々が骨を得るまたは失うかどうかを決定するのは、これらの細胞間のバランスである。小児期および青年期において、骨の形成が優勢である。骨長および周囲長は年齢とともに増加し、成人早期において骨量のピークが得られると終了する。20歳以降の男性で骨吸収が優勢となり、骨のミネラル含有量は10年間に約4%低下する。一方で、女性では、閉経までミネラル含有量のピークが維持される傾向にある。その後は、骨のミネラル含有量は、10年間で約15%の割合で低下する。故に、女性は閉経後に急速な割合で骨のミネラルを失う傾向がある。C.IP6およびイノシトールイノシトールおよびIP6の両方は、細胞の過剰かつ制御不能な増殖速度を正常化させることにより、またナチュラルキラー(NK)細胞活性を高めることにより、癌の制御において非常に重要な抗酸化物質である。参照することにより、全ての目的のために本書に組み込まれる、米国特許第5,082,833号を参照されたい。さらに、IP6およびイノシトールを併用すると、病的カルシウム沈着や腎臓結石の形成の予防、上昇した血清コレステロール値の低下、病的血小板活性の減少など、ヒトの健康に著しい相乗効果が認められる。経口投与されたIP6およびイノシトールは、イノシトール、IP6、そしてその他のIP6のリン酸化体、例えば、IP5,4,3,2,1として、胃ですばやく吸収され、各種組織、臓器、そして尿や唾液をはじめとした体液に急速に拡散する。IP6は、胃での吸収速度と同じ速さで皮膚からも吸収される。発明の概要本発明は、全般的には、イノシトールリン酸組成物を食料品または飲料に添加し、これにより食料品または飲料の滴定酸度を低下させる工程を含む方法に関する。本発明はまた、全般的にはイノシトール六リン酸およびイノシトールを含む組成物に関し、イノシトール六リン酸およびイノシトールの合計量は、そうした治療を必要とする対象における歯牙浸食または骨粗しょう症の進行を阻止する、または遅延させるのに十分である。本発明はさらに、全般的にはイノシトールとともに、またはそれを用いずにイノシトール六リン酸を含む医薬組成物を骨粗しょう症の進行を阻止する、遅延させる、または抑制するのに十分な量で哺乳動物に投与する工程を含む方法に関する。発明の詳細な説明以下に示す本発明において、本願の発明者らは、イノシトール六リン酸(IP6)、および/またはその他のイノシトール誘導体、例えば、イノシトール一リン酸(IP1)、イノシトール二リン酸(IP2)、イノシトール三リン酸(IP3)、イノシトール四リン酸(IP4)、およびイノシトール五リン酸(IP5)は、ヒドロキシアパタイト(すなわち、歯のエナメル質)の浸食の原因となる主要パラメータである、滴定酸性度を低下させる能力を有することを示す。IP6およびイノシトールは、胃やその他の粘膜、ならびに皮膚から急速に吸収され、各種組織や唾液をはじめとする体液に拡散されることが示されている。従って、イノシトールとその塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびカルシウム−マグネシウム)および誘導体を、滴定酸度を低下させるために、さらに虫歯、歯の浸食、および骨の変性を阻止し治療するための用途で食料品および飲料に添加することができる。食料品および飲料は、ヒトまたは哺乳動物が食物、飲料、菓子、調味料として用いる任意の物質と定義される。さらに、飲料は、液状物質または組成物であってもよく、これに限定されないが、水、コーラ系、フルーツ系、柑橘系品種を含む清涼飲料水、ルートビール、ジンジャーエール、フルーツおよび野菜ジュース、アルコール飲料、炭酸飲料、カフェイン入り飲料、乳製品、栄養ドリンク、スポーツ飲料、エナジードリンク、ダイエットまたは低カロリー飲料が含まれる。飲料の例には、以下の商標名で市販されているものが含まれる。A&Wルートビール(商標)(A&Wルートビールの名前で販売される炭酸飲料)、Bart’sルートビール (商標)(Bart’sルートビールの名前で販売される炭酸飲料)、カナダドライジンジャーエール(商標)(カナダドライジンジャーエールの名前で販売される炭酸飲料)、コカコーラ(商標)(コカコーラの名前で販売される炭酸飲料)、ダイエットコーク(商標)(ダイエットコークの名前で販売される炭酸飲料)、ペプシ(商標)(ペプシの名前で販売される炭酸飲料)、ダイエットペプシ(商標)(ダイエットペプシの名前で販売される炭酸飲料)、ドクター・ペッパー(商標)(ドクター・ペッパーの名前で販売される炭酸飲料)、フレスカ(商標)(フレスカの名前で販売される炭酸飲料)、ゲータレード(商標)(ゲータレードの名前で販売される非炭酸飲料)、マウンテンデュー(商標)(マウンテンデューの名前で販売される炭酸飲料)、ダイエットマウンテンデュー(商標)(ダイエットマウンテンデューの名前で販売される炭酸飲料)、レッドブル(商標)(レッドブルの名前で販売される炭酸飲料)、スプライト(商標)(スプライトの名前で販売される炭酸飲料)、ダイエットスプライト(商標)(ダイエットスプライトの名前で販売される炭酸飲料)、ならびに任意の炭酸飲料または非炭酸飲料または液。「食料品」は、消費するための組成物の準備に用いることのできる、任意の物質、材料、または栄養素として定義されてもよい。本発明の一実施形態では、イノシトールリン酸組成物は、1〜6個のリン酸基を有するイノシトールリン酸を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、イノシトールリン酸組成物はイノシトールリン酸塩を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、イノシトールリン酸塩は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、カルシウム−マグネシウム、およびナトリウムのイノシトールリン酸塩から実質的になる群から選択されてもよい。本発明の別の実施形態では、イノシトールリン酸組成物は、食料品または飲料に製造過程において添加されてもよい。本発明のさらなる実施形態では、イノシトールリン酸組成物は、消費の前に食料品または飲料に添加されてもよい。本発明のさらに別の実施形態では、イノシトール六リン酸およびイノシトールの合計量は、そうした治療を必要とする対象における歯牙浸食または骨粗しょう症の進行を阻止する、または遅延させるのに十分であってよい。本発明の別の実施形態では、イノシトール六リン酸は、イノシトール六リン酸塩を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、イノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸ナトリウムから実質的になってもよい。本発明のさらなる実施形態では、イノシトール六リン酸塩は、カリウムイノシトール六リン酸から実質的になってもよい。本発明のさらなる実施形態では、ノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸カルシウム−マグネシウムから実質的になってもよいA.虫歯および浸食の予防におけるIP6およびイノシトール 本発明においては、我々は、イノシトール、ならびにその誘導体イノシトール六リン酸および/またはその塩および/またはエステルが、柑橘系清涼飲料水中の遊離酸の中性化に効果的であることを示した。イノシトールの化学組成を図2に示す。結果を、様々な飲料の滴定酸度(TA)で表し、Ca-MgIP-6+イノシトール、およびIP6ナトリウムの添加後の飲料のTA%を測定した。滴定(総)酸性度は、総または潜在的酸性度を測定し、酸性分子の総数を示すが、pH測定は水素イオン濃度を表す。滴定酸度(クエン酸%としての)を、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液でpH 8.2まで飲料を滴定し、以下の関係を用いることにより計算する。ここでは、牛乳を含む様々な液体の滴定酸度を測定する標準的な手順に従う。本発明の一実施形態では、滴定酸度の低下はTA%の減少として測定することができる。滴定酸度の低下は、TA%の任意の減少を含む場合がある。本発明のいくつかの実施形態では、TA%の減少は0%を上回り、最大100%であり、好ましくは10%〜100%、より好ましくは50%〜100%である。上述のように、清涼飲料水は風味を増すため様々な酸味料が添加されている。これらはリン酸や様々な多塩基有機酸である。研究は、飲料のpHとエナメル質への攻撃の間に相関がないことを示す。図3および4は、様々な清涼飲料水中でのエナメル質の分解率と飲料のpHを示す。例えば、抜歯したヒトの歯から摘出されたエナメル質の断面、ならびに歯冠(エナメル質部分)のみが飲料に曝露されるようにコーティングした抜歯したヒトの歯について実験を行った。表1.飲料のpHとTA%(クエン酸)表1に示すように、飲料のpHと滴定酸度の間に相関はなく、この知見はTA%が、飲料誘導性の歯のエナメル質の分解をより正確に反映していたことを明確に裏付ける。新しく開封した飲料の容器中に含まれるTA%が、開封後大気にさらされていたものに比べて高いことがわかった。この効果は、大気中のCO2の吸収、または飲料中の泡の放出の結果によるものと推測される。上述のように、飲料のpHは直接または実際の酸性度であり、水素イオン濃度の測定である。対照的に、滴定酸度(TA)は総または潜在的な酸性度であり、酸性分子(プロトン化分子、非プロトン化分子の両方)の総数を示す。研究は、図5および6に示すように、滴定酸度とエナメル質の分解の間に非常に強い相関があることを示している。エナメル質への浸食の最小化への解法は、滴定酸性度を減少させることである。多塩基有機酸がエナメル質に対して浸食性を有する理由には、それらがカルシウムキレート能を有すること、それらが優れた緩衝能を有すること、閾値より小さいpHを維持する能力を有すること、および、著しい希釈も緩衝にほとんど影響を与えないことなどが含まれる。我々の研究は、イノシトール六リン酸ドデカナトリウム(IP6)およびIP6のカルシウム−マグネシウム塩およびイノシトールの添加が清涼飲料水のTA%を減少させたことを示す。表2.清涼飲料水中のTA%の減少に対するIP6およびイノシトールの影響続く研究では、フレスカやレッドブルをはじめとした様々な飲料へのIP6およびイノシトールの添加がほぼ0にまでTA%を減少させたことが示された。IP6単独は、IP6とイノシトールの組み合わせよりもさらに良好な保護を提供する。しかし、本発明はIP6単独での使用に限定されない。これらの実験は、IP6およびイノシトールの比率を1:1モルに設定して行った。これらのデータは、イノシトールおよびその誘導体が飲料の滴定酸度を低下させたことを示し、飲料の潜在的な酸性度を低下させることで歯のエナメル質の分解が防げることを確認するものである。これらさらに実証するために、抜歯されたヒトの歯のうち、歯冠から切断されたエナメル質の断面、またはエナメル質/象牙質ジャンクションの下側の歯根部を含む原型のままの歯を、保護能を有するニスでコーティングしたもののいずれかを用いて研究を行った。これらのエナメル質試料を、0.5および1.0重量%のフィチン酸(イノシトール六リン酸)ドデカナトリウム塩を添加した、または添加しない状態で、様々な清涼飲料水中に浸漬した。図7および8に示すように、エナメル質の分解は、様々な時間における処理飲料、および未処理飲料中でのエナメル質の質量の減少として測定した。図8および9に示す結果から、フィチン酸が滴定酸度を低下させることによって、クエン酸含有飲料中でのエナメル質の浸食を減少させるという結論が示される。これを考慮すると、上述のように応用の可能性として、クエン酸含有飲料用の添加物、歯磨剤用の添加物、口腔乾燥症患者または唾液の分泌や唾液能が低下した患者に与える食料品または飲料への添加物としての使用が考えられる。B.骨粗しょう症の予防におけるIP6およびイノシトールヒト骨芽細胞MG−63細胞およびHS−883破骨細胞を、in vitroにおいてIP6で処理し、MTTベース細胞毒性アッセイ(増殖能)と、骨細胞の分化のアルカリホスファターゼ(ALP)およびマトリクス・メタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)活性を用いて、それらの増殖能および分化能を評価した。IP6は、骨芽細胞中のALPおよびMMP−2の発現を活性化し、これは新生骨を構築する優れた能力を有することを示す。一方で、IP6は、骨を破壊する破骨細胞の増殖を抑制する。表3.骨粗しょう症の予防に対するIP6およびイノシトールの効果ヒドロコルチゾン 対照 IP6処理なし 0.52±0.01 0.34±0.0210μM 0.59±0.04 0.45±0.02データは、300μMのNa−IP6+70μMイノシトールで処理したHS−883破骨細胞の540nmでの吸光度の平均±SDを表す。IP6による破骨細胞のこうした抑制は、p<0.05で有意である。追加の実験では、骨芽細細MG−63ヒト骨肉種細胞および破骨細胞HS−883Tヒト骨巨大肉腫細胞を、イーグルの最小必須培地中、非必須アミノ酸添加アールの平衡塩類溶液およびダルベッコ変法イーグル培地中でそれぞれ培養した。10%ウシ胎児血清(FBS)とL−グルタミンを両培地に添加した。さらに、MG−63細胞の培養培地に1mMピルビン酸ナトリウムを加えた。100mMのNa−IP6のストック溶液を蒸留水中で調製し、pHを7.4に調整し、培養培地中で必要に応じて希釈した。細胞成長および増殖を、MTT−ベース細胞毒性アッセイを用いて測定した。簡潔に述べると、MG−63およびHS−883.T細胞株を、96ウェルのプレートに細胞2000個/ウェルになるよう接種した。24時間後、細胞を様々な濃度のIP6(50〜300μM)、ヒドロコルチゾン10μM、ヒドロコルチゾンとIP6の混合に曝露した。細胞を24または72時間増殖させた。濃度1mg/mlのMTT溶液100μLを、増殖期の最後に各ウェルに添加し、4時間インキュベーションした。MTT還元のホルマザン産物を150μLのDMSOを加えて溶解した。直後に、吸光度測定用のデータ整理ソフトウェアを用いてプレートリーダー内で540nmでのMTTの還元を記録することで、成育の変化を評価した。IP6存在下での骨芽細胞および破骨細胞の分化を調べるために、以下のマーカーを評価した。アルカリホスファターゼ(ALP)、マトリクス・メタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)、および酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)。市販のキットを用いてALP活性を測定した。1プレートにつき細胞4×105個の量になるよう、骨芽細胞を培養皿に接種した。細胞のコンフルエンスが約50〜60%に達したら、様々な濃度のIP6、10μMのヒドロコルチゾン、または50μMのヒドロコルチゾン+IP6で48時間細胞を処理した。氷上でインキュベーションを停止し、細胞をPBSで2回洗浄し、0.25%のTriton X−100に溶解した。溶解液25μLを2.5mLのALPサンプルバッファーと混合し、4または24時間室温でインキュベートした後、プレートリーダー上でλ405nmで吸光度を測定した。同様の手順でTRAPを測定した。細胞6×105個になるよう骨芽細胞をプレートに接種した。酵素の評価のため、200μLの溶解液を60μLのL−酒石酸溶液および3mLの試薬と混合した。結果をタンパクの量に合わせて調整した。培養培地中のMMP活性を評価するため、ザイモグラフィーを行った。細胞を組織培養皿に接種してコンフルエンスが60〜70%になるまで生育させた後、無血清培地中で様々な濃度のIP6で処理した。48時間後、馴化培地を採取し、直ちにマトリクス・メタロプロテイナーゼ活性を分析した。電気泳動には10%ポリアクリルアミドゲルを用い、泳動後、ゲルをリネーチャリングバッファー中で緩やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。37°Cで一晩、ディベロッピングバッファー中でさらにインキュベーションを行った。インキュベーションの最後に、ゲルをクマシーブルー染色溶液で10分間染色し、脱染液1(9.2%酢酸、45.4%メタノール)でリンスし、必要があれば室温で脱染液2(10%酢酸と10%メタノール)とインキュベートした。ウインドウズ用のUN−SCAN−ITゲル数値化ソフトを用いてプロテイナーゼ活性を測定し、各バンドについて測定された平均ピクセルの量に従ってパーセンテージで表した。表4.骨粗しょう症の予防に対するIP6およびイノシトールの効果IP6および10μMヒドロコルチゾンで処理したMG−63骨芽細胞の増殖 IP6処理 対照 ヒドロコルチゾン なし 1.54±0.12 1.07±0.14 IP650μM 1.69±0.09 1.73±0.03データは、50μMのNa−IP6+70μMのイノシトールで処理したMG−63ヒト骨芽細胞の540nMでの吸光度の平均±SDを表す。ヒドロコルチゾンが、骨を形成する骨芽細胞の数を30.5%有意に減少させ(p<0.05)、IP6+イノシトール処理が、骨芽細胞の成長の抑制を逆転させた(これも有意であるp<0.05)ことに注目されたい。ザイモグラフィーでは、対照グループの細胞からの培養培地中の活性化ゼラチナーゼ−Aはほとんど検出されなかった。しかし、50〜300μMの濃度のIP6と一緒に培養した細胞からの培地中には著しい量が検出された。IP6によって、骨芽細胞からの培養培地中のゼラチナーゼAの活性は、用量依存的にに増加した。300μMのIP6で細胞を処理した後、活性化の著しい上昇が認められた。対照的に、100および300μMのIP6で処理した骨を破壊する破骨細胞において、プロ−MMP−2およびMMP−2活性両方の低下が認められた。さらに、骨芽細胞の増殖に対するヒドロコルチゾン(広く用いられるステロイドであり、骨粗しょう症患者にも使用される)の負の効果をIP6が阻害することがわかった。これらの実験は、50−300μMのIP6ナトリウム塩および70μMのイノシトールを用いて行ったので、IP6とイノシトールのモル比は、約1:1.4〜約4.3:1である。要約すると、IP6および/またはイノシトールは、虫歯、歯の浸食、ならびに骨の代謝/変性疾患の予防能を示した。IP6の様々な塩、例えば、ナトリウム、カルシウム−マグネシウムも全て効果的であった。さらに、フィチン酸は、イノシトールの有無にかかわらず骨粗しょう症を減少させる。好適な実施形態においては、使用する塩は、骨粗しょう症患者が必要とするカルシウムの添加をもたらす、IP6のカルシウムまたはカルシウム−マグネシウム塩であることに注目すべきである。さらに、IP6とイノシトールのモル比は、1:1.4〜4.3:1であった。実施例を示し、好適な実施形態に関して本発明を説明したが、本発明が開示された実施形態に限定されないことを理解すべきである。そうではなく、本発明は、当業者には明らかであるように、様々な変更を含むことを意図するものである。従って、そうした変更の全てを包括するよう、付属の特許請求項の範囲により幅広い解釈を許容する。エナメル質の分解速度によって示されるように、コーラ系飲料に比べて、柑橘類含有飲料がより深刻な障害を歯のエナメル質に与えることを示す。イノシトールの化学組成を示す。(環状多価アルコールイノシトールの構造(シス−1,2,3,5−トランス−4,6−シクロヘキサンヘキソール))。清涼飲料水中での歯のエナメル質の質量の減少と飲料のpHを示す。飲料のpHとエナメル質の分解を示す。滴定酸度とエナメル質の分解の間に非常に強い相関があることを示す。滴定酸度とエナメル質の分解の間に非常に強い相関があることを示す。マウンテンデュー飲料中における、エナメル質の浸食性の低下に対するフィチン酸の効果を示す。レッドブル飲料中におけるエナメル質の浸食性の低下に対するフィチン酸添加の効果を示す。フレスカ(0.5%添加)、スプライト(0.5%添加)およびマウンテンデュー(1.0%添加)の滴定酸度の低下を示すことにより、滴定酸性度に対するフィチン酸添加の効果を示す。1%フィチン酸の添加による、マウンテンデューおよび5%レモンジュースによるエナメル質の分解の減少を示す。 イノシトールリン酸組成物を食料品または飲料に添加することにより、前記食料品または飲料の滴定酸度を低下させる工程を含む方法。 前記イノシトールリン酸組成物は、1〜6個のリン酸基を有するイノシトールリン酸を含む、請求項1に記載の方法。 前記イノシトールリン酸組成物は、イノシトールリン酸塩を含む、請求項1に記載の方法。 前記イノシトールリン酸塩は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、カルシウム−マグネシウム、およびナトリウムのイノシトールリン酸塩から実質的になる群から選択される、請求項3に記載の方法。 1〜6個のリン酸基を有する前記イノシトールリン酸組成物は、イノシトールリン酸塩を含む、請求項2に記載の方法。 前記イノシトールリン酸塩は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、カルシウム‐マグネシウム、またはナトリウムのイノシトールリン酸塩から実質的になる、請求項5に記載の方法。 前記イノシトールリン酸組成物は、製造過程において前記食料品または飲料に添加される、請求項1に記載の方法。 前記イノシトールリン酸組成物は、消費の前に前記食料品または飲料に添加される、請求項1に記載の方法。 イノシトール六リン酸およびイノシトールを含む組成物であって、イノシトール六リン酸およびイノシトールの合計量は、治療を必要とする対象における、歯牙浸食または骨粗しょう症の進行を予防する、または遅延させるのに十分である、組成物。 前記イノシトール六リン酸は、イノシトール六リン酸塩を含む、請求項9に記載の組成物。 前記イノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸ナトリウムから実質的になる、請求項10に記載の組成物。 前記イノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸カリウムから実質的になる、請求項10に記載の組成物。 骨粗しょう症を予防する、その進行を遅延させる、または抑制するのに十分な量のイノシトール六リン酸を含む医薬組成物を、哺乳動物に投与する工程を含む方法。 前記イノシトール六リン酸は、イノシトール六リン酸塩を含む、請求項13に記載の方法。 前記イノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸カリウムから実質的になる、請求項14に記載の方法。 前記医薬組成物は、イノシトールをさらに含む、請求項13に記載の方法。 前記イノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸カルシウム−マグネシウムから実質的になる、請求項16に記載の方法。 前記イノシトール六リン酸塩は、イノシトール六リン酸カルシウム−マグネシウムから実質的になる、請求項14に記載の方法。 本発明は、様々な飲料および食料品の滴定酸度と浸食リスクを低下させる、イノシトール、誘導体、それらの塩の組成物、ならびに関連化合物を提供する。さらに、それらが有する、酸による歯のエナメル質(ヒドロキシアパタイト)への攻撃に対する保護作用の結果として、それらを食料品へ添加することで、歯の硬組織に対する保護作用が得られる。また、該組成物は、骨のその他の代謝性疾患/変性疾患、例えば骨粗しょう症に対して保護も提供する。本発明は、虫歯および骨の変性を予防する方法をさらに提供する。