生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_新規な生分解性ポリマー
出願番号:2008551812
年次:2009
IPC分類:C08G 63/91,A61K 47/34,A61L 27/00,C08L 101/16


特許情報キャッシュ

リスト ハカラ ハリー コルホネン ユッカ セッパラ JP 2009524722 公表特許公報(A) 20090702 2008551812 20070126 新規な生分解性ポリマー ジェイヴィーエス−ポリマーズ オサケ ユキチュア 504150298 リスト ハカラ 508226115 ハリー コルホネン 508226126 杉村 憲司 100147485 冨田 和幸 100119530 荒川 桂子 100141900 リスト ハカラ ハリー コルホネン ユッカ セッパラ FI 20060077 20060126 C08G 63/91 20060101AFI20090605BHJP A61K 47/34 20060101ALI20090605BHJP A61L 27/00 20060101ALI20090605BHJP C08L 101/16 20060101ALN20090605BHJP JPC08G63/91A61K47/34A61L27/00 YC08L101/16 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW FI2007050042 20070126 WO2007085702 20070802 30 20080919 4C076 4C081 4J029 4J200 4C076AA94 4C076BB11 4C076BB21 4C076BB32 4C076CC29 4C076EE24A 4C076EE45A 4C076EE49A 4C076FF32 4C076FF63 4C076FF68 4C081AB01 4C081BA16 4C081BB06 4C081CA161 4C081CA171 4C081CE02 4C081DA01 4C081DA11 4C081DB03 4C081EA02 4J029AA02 4J029AB01 4J029AB04 4J029AC03 4J029AD01 4J029AD06 4J029AD07 4J029AE06 4J029EG09 4J029EH03 4J029GA12 4J029GA43 4J029JB171 4J029JF371 4J029KH01 4J200AA02 4J200BA13 4J200BA18 4J200DA22 4J200EA01 4J200EA11 本発明は、新しいポリエステル酸無水物系バイオポリマーおよびその製造に関する。 ポリラクチド、ポリグリコールおよびポリ(ε−カプロラクトン)は生分解性ポリエステルであり、その医学的用途への使用が広範囲にわたって研究されている。ポリ酸無水物もやはり、制御された放出を要する薬剤成分用の最も有望な材料の一つである。その理由は、これらが充分に疎水性であり、表面分解により分解するからである。前記ポリエステルの酸無水物はこれら2つのタイプのポリマーの組み合わせからなり、その結果どちらか一方のポリマー単独では達成できない新しいタイプのポリマー特性を生み出す。 生分解性プラスチックの最も重要なグループは脂肪族ポリエステル類を備え、その生分解が主として加水分解性エステル結合に基づく。脂肪族生分解性ポリエステルとしてはポリグリコリド、ポリアクチドおよびポリカプロラクトン、ならびにポリヒドロキシブチラートおよびポリヒドロキシバレラートが挙げられ、これらが微生物の助力によって生産される。一般に、ポリエステルはヒドロキシ酸から、または二酸とジオールとから調製される。脂肪族ポリエステルが適切な機械的性質を有するのを確実にするためには、そのモル質量が高くなければならない。高いモル質量を達成するための最も一般的な手段は、ラクトンの開環重合によりポリエステルを調製することである。脂肪族ポリエステルは非毒性で生体適合性材料であるので、これらを整形外科、歯科、製薬および外科の分野に頻繁に用いる。 前記脂肪族ポリエステルはバルク分解により分解し、その結果ポリマー鎖の加水分解が充分に進行したとき、その断片が機械的性質を失い、質量損が始まる。仮にこの段階で調製物中にまだ大きな割合の薬剤成分がある場合、それから有害な割合を制御不能な方法で放出し得ることが可能である。外科用途において、機械的性質が突然崩壊するのは有益でない。表面分解性ポリマー(ポリ酸無水物およびポリオルトエステル)を用いることにより、分解が進行すると、ポリマーを表面から溶解し、薬剤分子を放出する際に、一定の0次放出(すなわち放出が時間線形である)を達成することが可能となる。ポリ酸無水物の特性は、これらを表面分解性にすることが可能なことである。 ポリ酸無水物の最も重要な用途は薬剤成分の放出のシステムである。その理由は、表面分解性ポリマーからの薬剤成分の放出が、質量浸食によって分解するポリマーからのものよりも均一だからである。ポリ酸無水物の表面分解用の条件は、ポリマーが充分に疎水性であることである。この場合、水がポリマー内に浸透できず、加水分解がポリマーの表面だけで起こる必要がある。異なる親水性および疎水性のモノマーを用いることによって、ポリマーの全分解時間を数日から数年までの範囲で調整することができる。一般に、脂肪族ジカルボン酸を親水性モノマーとして用い、これに応じて芳香族ジカルボン酸または異なる脂肪酸を疎水性モノマーとして用いる。カルムスチン(細胞増殖抑制剤)を備えるポリ酸無水物インプラントで、脳腫瘍の後処理に用いられるグリアデル(Griadel(登録商標))は、調整された薬剤投与の用途におけるポリ酸無水物の使用例である。ポリ酸無水物の問題はその大気の湿度に対する過敏性であり、このためこれらを氷点下の温度で貯蔵および輸送しなければならず、言い換えると、論理的に高価でかつ実用的でない。その他の問題はポリ酸無水物の脆性であり、このことはたとえばインプラントの外科的移植の間に取り扱うのを難しくする。 ポリエステルの良好な機械的性質と、ポリ酸無水物の好適な分解挙動とを組合わせるために、種々のポリエステル酸無水物が生産されている。非特許文献1では、ABA共重合体が合成され、該共重合体は中央にセバシン酸ポリ無水物を、また両末端にポリ乳酸ブロックを備える。該ポリ乳酸ブロックはポリマーの分解および薬剤成分の放出に対し充分な効果を奏することが報告されている。非特許文献2および3では、主鎖に酸無水物結合を備えたポリカーボネートが調製されている。セバシン酸をコモノマーとして用いることによって、共重合体を生成し、その分解挙動が表面分解性物質に近似していることが報告されている。非特許文献4では、ポリ(ε−カプロラクトン)を結合して高モル質量のポリエステル酸無水物を形成している。該ポリマーは2段階で分解する。すなわち、酸無水物結合の急速な加水分解の後にポリ(ε−カプロラクトン)のより緩徐な分解が続く。これに応じて、非特許文献5および6では、ポリ(ε−カプリラクトン)とポリアクチドとのプレポリマーからポリエステル酸無水物を調製し、該酸無水物が2段階で分解する。非特許文献7および8では、アミンを含有する化合物を用いることによって、乳酸系ポリエステル酸無水物の微小粒子の製造および表面の調製を実証している。また、遺伝子の輸送用の微小粒子の使用について報告している。上記研究において、使用したポリエステル酸無水物は熱可塑性であった。さらに、非特許文献9では、架橋結合した網状構造のポリエステル酸無水物の調製が報告されている。低モル質量のポリ(ε−カプロラクトン)プレポリマーを用いる場合、該ポリエステル酸無水物が48時間で表面分解により分解された。「生体高分子(Biomacromolecules)」、R.Silvanik、A.J.Domb、3、754、2002年「高分子の高速伝達(Macromol. Rapid. Commun.)」、C.Xiao、K.J.Zhu、21、1113、2000年「高分子国際(Polym. Int.)」、C.Xiao、K.J.Zhu、50、414、2001年「J. Mol. Sci., Pure Appl. Chem.」、R.F.Storey, A.E.Taylor、A34、265、1997年「J. Appl. Polym. Sci.」、H.Korhonen 外、81、176、2001年「高分子化学物質(Macromol. Chem. Phys.)」、H.Korhonen 外、205、937、2004年「生体材料(Biomaterials)」、B.A.Pfeifer 外、26、117、2005年「Int. J. Pharm.」B.A.Pfeifer 外、34、210、2005年「J. Pol. Sci., PartA」A.O.Helminen 外、41、2003年 上述したポリマーにおいて、プレポリマーとして用いるポリエステルのモル質量及び熱特性を調整するのは可能である。問題になっている材料の弱点はプレポリマーの疎水性を調整することができないという事実に起因する。本発明の目的は、前述したポリマーと材料組成、特性および使用がかなり異なる新規な生分解性ポリエステル酸無水物系ポリマーを製造することである。本発明の目的は、ポリマーの疎水性を変えることによって分解速度を幅広く調整することができる生分解性ポリマーを特に生成することである。現在、これが本発明に係るポリマーにおいて予想外に実現されている。 本発明は、分解速度およびメカニズムを調整し得るポリエステル酸無水物に関する。本発明に係るポリマーでは、異なる疎水性を有する種々の環状酸無水物を結合するのにポリエステルプレポリマーを用いる。このようにして生成したプレポリマーは結合して線状熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するか、または架橋して網状構造のポリエステル酸無水物を形成する。 本発明に係るポリマーの製造の第1段階では、水酸基で末端処理したポリエステルプレポリマーを合成する。モノマーとして環状エステルを用いることによる開環重合によって、前記プレポリマーを製造することができる。あるいはまた、縮合重合を用いることによりヒドロキシ酸または二官能性モノマーから前記プレポリマーを製造することができる。 前記製造の一環として、プレポリマーの分子構造(たとえば直鎖状もしくは星状)および分子サイズを決定する種々のアルコールを用いることが可能である。 第2段階では、環状構造の疎水性酸無水物を用いることによって前記プレポリマーを官能化する。該官能化を触媒なしでまたはピリジンのような触媒とともに行うことができる。本発明に係るポリマーにおいて、官能化に用いる環状構造の酸無水物は、通常アルケニル鎖を備えるコハク酸無水物である。酸無水物がプレポリマーの末端水酸基と反応すると、環構造が開き、末端に酸を形成する。発明者のBheda J. H.とMoore B. M. らは、ポリエステルと一緒にアルケニル鎖を備えた対応する酸無水物を用いており(国際公開第2005/076947号パンフレット)、;米国特許第4388926号明細書における発明者のShalaby S. W. とSchipper E. らも同様である。しかしながら、これらの特許において、ポリエステル成分は生分解性ではなく、前記特許に記載されたポリエステルは、酸無水物結合を備えるポリエステル酸無水物を形成するためにさらに合成されない。 前記官能化の後、線状熱可塑性ポリエステル酸無水物もしくは架橋網状ポリエステル酸無水物を酸末端プレポリマーから調製する。 線状ポリエステル酸無水物は、ポリ酸無水物の製造に用いるものに対応する方法を用いて製造することができる。一般に、ポリエステル酸無水物は2段階の溶融重縮合を用いることにより製造される。第1段階の間に、酸末端プレポリマーを酢酸無水物と反応させることができ、第2段階の間に実際の重縮合を行う。生成した活性化プレポリマーは抽出を用いることによって精製することができる。あるいはまた、該プロセスでポリエステル酸無水物を個別精製段階なしに製造することができる。換言すれば、プレポリマーが酢酸無水物と反応した直後に重縮合を行う。これは、容易に加水分解される酸無水物結合を備える粘着性プレポリマーを回避するために、特に好都合である。 架橋ポリエステル酸無水物の製造の間に、酸無水物結合およびビニル基がともにプレポリマー鎖の末端に生成されるように酸末端プレポリマーを官能化する。その後、ビニル基を備えるプレポリマーを二重結合の開放により網状構造ポリエステル酸無水物に架橋する。用いるプレポリマーの構造は線状であっても分岐状であってもよい。プレポリマーの組成、モル質量および分子構造は、その粘性を制御するのに用いることができ、これは用途ごとに好適な架橋方法を選択することを可能にする。たとえば、低い粘度を有するプレポリマーの室温での光架橋が、温度に敏感である材料を架橋すべきマトリックスに添加するのを可能にする。 本発明は、疎水性成分、好ましくはアルケニル鎖を備えるコハク酸無水物をプレポリマーに加えることによって、調製したポリマーの分解速度を調整することが可能であるという思想に基づく。疎水性成分は、プレポリマーの疎水性を増強するとともに、プレポリマーのガラス転移温度および溶融温度を低下させる。これらファクターはともにポリエステル酸無水物の分解挙動に重大な効果を有する。 ポリエステルブロックをカップリングしてポリエステル酸無水物を形成する前に、官能化を用いて疎水性部分を構成単位、すなわちポリエステルブロックに結合することによってポリマーを製造することが可能である。 より詳しくは、本発明に係るポリマーは主として請求項1の特徴部分において記載されていることによって特徴づけられる。 同様に、本発明に係る方法は請求項13の特徴部分において記載されていることによって特徴づけられる。 多数の利点を本発明で達成することができる。すなわち、本発明に係るポリマーを特に医療および製薬用途に幅広く適用し得る。かかる用途の例は、放出調整を必要とする薬剤成分、および組織技術用途である。なお、かかる生分解性ポリマーの適用は、ポリマーの分解速度を調整するか、または表面分解可能であるポリマーを用いることが有利な場合に問題になるかもしれない。 以下、詳細な説明および添付の例の助けを借りて本発明をより詳しく考察する。本発明に係る線状及び架橋ポリエステル酸無水物のいくつかの調製に関する反応式は以下のとおりである: 上述したように、本発明に係るポリエステル酸無水物系の熱可塑性または架橋性ブロックポリマーは、 a)ポリエステルブロック、 b)官能化を用いることにより該ポリエステルブロックに結合した疎水性部分、および c)官能化ポリエステルブロックをカップリングする酸無水物結合を主として備え、好ましくはこれらから成る。 本発明において、末端官能性オリゴマー、すなわちテレケリック(telekelic)オリゴマーを形成し、該オリゴマーに疎水性構成部分を結合する。すなわち、(強)疎水性モノマーを本発明に用いるのは好ましくないが、代わりに、官能化を用いることにより生成物を疎水性にするか又は生成物の疎水性を増大させる疎水性部分をポリエステルブロックに結合する。 一般に、本発明に係るブロックポリマーにおいて、ポリエステルブロックは、ラクトン、脂肪族ヒドロキシ酸または二官能性ヒドロキシル基もしくはカルボン酸基を備えるモノマーから誘導した構成単位から成り、該単位は乳酸、カプロラクトン、ラクチド、グリコリドまたはこれらの混合物であるのが好ましく、他の類似する生成物を排除しない。 ヒドロキシ末端基プレポリマーを製造するためにいくつかの一般に既知の方法が存在する。これら方法の例は、塊状もしくは溶液重合形態の開環重合および縮重合である。重合プロセスにおいて、所望のモル質量を有するポリマーを、1)ラクトン、ヒドロキシ酸もしくは二官能性モノマーと、2)アルコール(ジオールもしくは多官能性アルコール)とから製造する。 本発明において、プレポリマーの製造に用いる前記ラクトンの例は、ε−カプロラクトン、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、グリコリドおよび1,5−ジオキセパン−2−オンである。使用する前記ヒドロキシ酸モノマーは、一般にα−ヒドロキシ酸またはβ−ヒドロキシ酸からなる。使用する前記モノマーは、トリメチルカーボネートのような環状カーボネートとすることもできる。より好ましくは、L−乳酸、D−乳酸またはこれらの混合物(いわゆるD,L−乳酸)、グリコール酸、6−カプリル酸およびL−もしくはD−マンデル酸のような脂肪族もしくは芳香族α−ヒドロキシ酸を用いる。ヒドロキシ酸モノマーを多官能化することもできる。これらモノマーの例はリンゴ酸およびクエン酸である。 プレポリマーの製造に用いるアルコールのヒドロキシ基数および用いる材料の量は、重合で生成するプレポリマーの構造(たとえば線状か星状)および分子サイズを決定づける。使用すべきアルコールは一般に多官能性で、例えばブタンジオール、グリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール、グリセロールまたは種々のポリグリセロールがある。 [ヒドロキシ末端基プレポリマーの製造] 本発明に係る方法においては、ヒドロキシル末端基プレポリマーが、一好適実施態様によれば、ε−カプロラクトン、L−ラクチドまたはDL−ラクチドから開環重合を用いることにより、またブタンジオールもしくはペンタエリスリトールを開始剤として、オクタン酸スズ(SnOct2)を触媒として用いることにより製造される。ポリマーの成長がヒドロキシル基から起こり、これは2つのヒドロキシル基を有するブタンジオール開始剤が線状ヒドロキシ末端基プレポリマーを形成し、また4つのヒドロキシル基を有するペンタエリスリトール開始剤が星状ヒドロキシ末端基プレポリマーを形成することを意味する。分子鎖長、すなわちプレポリマーのモル質量が、開始剤のモルパーセントを用いて調整される。重合を、好ましくは溶媒を用いることなく液相状態における塊状重合として行うことが可能である。かかる重合においては、初期材料および触媒を予熱された反応器内に供給し、ここで混合する。初期材料の供給後に反応器中の空気を窒素流で置換し、このようにして反応が窒素雰囲気下で生起する。前記初期材料を温度(120−180℃)に応じて0.5−6時間反応させことができ、その後プレポリマーをその後の官能化および分析のために回収する。 [酸末端基プレポリマーの製造] 本発明に係る第2段階は、置換された環状構造酸無水物を用いることによるヒドロキシ末端基プレポリマーの官能化を備える。前記環状構造酸無水物は、一般に置換されたコハク酸無水物、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物、ジグリコール酸無水物またはフタル酸無水物を含む。置換基はアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルカンもしくはシクロアルケンまたはこれらの組み合わせとすることができる。特に興味深いものはアルケニル鎖を備えるコハク酸無水物であり、これは種々のアルケニル鎖長で市販されている。プレポリマーの疎水性はアルケニル鎖長が伸びるにつれて増大する。 本発明に係る方法において、カルボン酸末端基プレポリマーがアルケニル鎖を備えるコハク酸無水物を用いることによるヒドロキシル末端基プレポリマーの官能化によって製造される。環状構造酸無水物を用いることによって、副生成物を回避する。プレポリマーのOH基の反応性は、ポリエステルの製造に用いるモノマーに左右される。たとえば、ε−カプロラクトンから製造したプレポリマーを官能化する際には、アルケニル鎖により置換されたコハク酸無水物の0−30モル%余剰分を用いることが可能である。これに対応して、L−ラクチドまたはDL−ラクチドから調製したプレポリマーを官能化する際には、アルケニル鎖により置換されたコハク酸無水物の余剰分は50−300モル%である。好適実施態様によれば、ε−カプロラクトンのプレポリマーの官能化を100−160℃の温度で2−6時間行い、またL−ラクチドまたはDL−ラクチドから調製したプレポリマーの官能化を100−160℃の温度で2−24時間行う。必要ならば、官能化度が充分に高くなるまで反応を続けることができる。官能化後、プレポリマーをまずジクロロメタンもしくは類似の溶媒に溶解し、次いでヘキサン、イソオクタンもしくは類似の溶媒に沈殿させることによって、該プレポリマーを過剰官能化材料から精製する。最終的には、カルボン酸末端基プレポリマーを真空槽で乾燥し、次いでデシケーターに保管する。 [線状熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するための酸末端基プレポリマーの結合] 本発明に係る製造の第3段階は、カルボン酸末端基プレポリマーを結合、すなわちカップリングして熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するか、もしくは架橋して網状構造ポリエステル酸無水物を形成することを備える。熱可塑性ポリエステル酸無水物の製造においては、オリゴマー状のプレポリマーを酸無水物結合を介して結合して、高モル質量を有しかつ複数のプレポリマー構成単位を含むポリマーを形成する。結合すべきプレポリマーは線状構造を有し、かつ2つのカルボン酸を備えなければならず、それを通じてプレポリマー間の酸無水物結合が形成される。1つのカルボン酸基のみを備えるプレポリマーを用いることができ、この場合該プレポリマーが反応した後に重合を停止する。重合の停止は、たとえばABA型ブロック共重合体を生成する際がおそらく望ましい。 他の重合方法を排除することなく、熱可塑性ポリエステル酸無水物を製造する最も実用的な方法は液相重縮合である。液相重縮合において、重合が2段階で起こる。第1段階では、プレポリマーのカルボン酸基が酢酸無水物と反応することができる。その後、プレポリマーの実際の結合が重縮合により生起する。カルボン酸基の活性化が酢酸無水物中でのプレポリマーの還流によって行われ、この場合酸末端基が反応し、酸無水物を形成する。酢酸が反応中に副生成物として生成され、そのため、過剰酢酸無水物が使われる。酢酸無水物中でプレポリマーを還流することにより反応を行うことができ、この場合の反応温度は酢酸無水物の沸点(140℃)である。適切な反応時間は約半時間である。 還流後、重合を直接続けることができ、あるいはまたプレポリマーを重縮合の前に精製する。プレポリマーの精製は、温度を室温まで下げ、次いで真空の助けにより過剰酢酸無水物の大部分を除去することによって行われる。最終精製は、プレポリマーを石油エーテルあるいはこの目的に適した類似の溶媒中に抽出することによって行われる。別個の抽出段階を実行しない場合には、過剰酢酸無水物と反応中に生成した酢酸とを除去するために、反応器内での段階的還流直後に真空を適用する。酢酸無水物および酢酸が除去された時、反応器の温度を重縮合に用いる温度まで上げる。 実際の結合は液相での重縮合として起こる。重縮合は平衡反応であり、この場合重合を促進させるためには、前記平衡を生成物の側に移動させなければならない。平衡移動は、縮合生成物の除去を促進することによって行われる。これは、圧力を下げ、温度を上げることによってなされる。さらに、縮合生成物を除去するために、不活性ガスを液状ポリマーに供給することができる。重合が促進される場合、液状ポリマーの粘度が著しく上昇し、このことは、縮合生成物を反応混合物から除去し得るためには、混合をできるだけ活発にすべきであることを意味する。 重縮合に用いる圧力はかなり低くする必要があり、最も好ましいのは1mbar未満である。重合の促進を容易にするため、温度は140℃以上とすべきである。他方では、有効な最高重合温度が副反応の増大により制限され、このことは190℃未満の温度で重合を行うのが有利であることを意味する。触媒は重縮合において必要ではない。重合時間は、使用する温度に応じて約1時間から数時間である。完成したポリエステル酸無水物をジクロロメタンもしくは他の適当な溶媒に溶解し、次いでたとえばヘキサンもしくは石油エーテルで沈殿させることにより、該酸無水物を精製することが可能である。 一般に、プレポリマーのカップリングに用いる結合化合物の量は、該プレポリマーの官能基に対して等モル、少なくともほぼ等モル(0.5−2倍、好ましくは約0.8−1.2倍、特に約0.9−1.1倍)である。 [網状構造ポリエステル酸無水物を形成するための酸末端基プレポリマーの架橋] 網状構造ポリエステル酸無水物を形成するための酸末端基プレポリマーの架橋は、メタクリル酸無水物を用いることによるカルボン酸末端基プレポリマーのメタクリル化、および末端ビニル基によるこれらのプレポリマーのメタクリル化を備える。前記架橋は、熱または光のいずれかを用いるか、もしくは照射によるか、または適当な装置でこれらの組み合わせを用いることにより行うことができる。架橋は、適用前に、もしくは直接現場で生起し得る。 本発明に係る方法において、かつ好適な実施態様によれば、ε−カプロラクトン、L−ラクチドまたはDL−ラクチドから製造したカルボン酸末端基プレポリマーをメタクリル化する際には、酸無水物結合を形成するメタクリル酸無水物もしくは類似の二重結合化合物の1.5−5倍過剰を用いる。ε−カプロラクトンおよびDL−ラクチドから製造したプレポリマーのメタクリル化を40−100℃の温度で6−48時間行う。官能化の後、プレポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサンまたはイソオクタンで沈殿させることにより、該プレポリマーを過剰官能化物質から精製する。最終的には、メタクリル化プレポリマーを真空槽で乾燥し、次いで冷蔵庫に保管する。 本発明に係る硬化方法においては、プレポリマーの二重結合の反応、すなわち架橋を開始し、ラジカルを形成する化合物、たとえばジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシドカーボネート、モノペルオキシカーボネート、ジペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、スルホニルペルオキシド、ケトンペルオキシドまたはペルオキシカルボン酸のような有機過酸化物を用いることによってプレポリマー内にフリーラジカルが生成する。また、ラジカルを形成する化合物は、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノニルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、アセチルシクロへキサンスルホニルペルオキシド、m−クロロパーベンゾエート酸、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−アミルパーベンゾエートおよびtert−ブチルペルオキシマレイン酸とすることができる。さらに、過酸化水素のような無機過酸化物、酸素、オゾン、アゾ化合物、レドックス開始剤、樟脳キニーネのような光開始剤、重合体ペルオキシド、およびラジカルを形成する他の方法、もしくはこれらの混合物を用いることができる。 本発明に係る方法では、プレポリマーの架橋を促進し、また架橋の前に促進剤をさらに加えることによって架橋温度を下げることができる。たとえば、コバルト化合物のような金属化合物、ジメチルアミノエチルメタクリレートのような有機アミン、もしくは他の既知の促進剤を前記促進剤として用いることができる。オクタン酸コバルト及びナフテン酸コバルトのような促進剤並びにアミン促進剤をそのまままたは適当な溶媒に溶解して用いることができる。 本発明の方法では、メタクリル化後に抑制剤を添加することによってプレポリマーの二重結合の反応、すなわち架橋感受性や速度を調節することができる。前記抑制剤がラジカルと反応して不活性分子を形成する。このようにして、メタクリル化プレポリマーの早期硬化を防止し、加工時間を延長する。抑制剤が加工(すなわちラジカルとの反応)を完了したときに、プレポリマーの架橋が開始する。 本発明に係る網状構造生分解性ポリエステル酸無水物の製造では、プレポリマーの二重結合を互いに反応させることによってプレポリマーを硬化することができる。架橋との関連において、反応性モノマーまたはマクロモノマーをプレポリマーとともに用いることが可能であり、この場合個々の化合物の二重結合が互いに反応して網状構造架橋ポリマーを形成する。網状構造生分解性ポリエステル酸無水物の製造において、反応性モノマーまたは反応性マクロモノマーをプレポリマーとともに用いることにより、架橋密度に影響を与え、可撓性のゴム状材料を生成し、またプレポリマーの粘度を下げることが可能である。 本発明に係る方法において、温度に敏感な開始剤を用いることによって熱的に、あるいは光開始剤を用いることによる光の手段によってメタクリル化プレポリマーを架橋する。熱硬化は、ペルオキシドを用いて室温を超える温度で行うことができ、架橋時間は数分から24時間までで変化する。光を用いる架橋も室温で行うことができる。低粘度を有し、室温で硬化したプレポリマーは特に興味深い、なぜなら温度感応物質をそれらに添加することができるからである。 プレポリマー(ポリエステルブロック)の数平均モル質量(Mn)は、一般に約750−50,000g/モル、好ましくは1,000−25,000g/モル、特に約1,500−15,000g/モルであり、また対応する重量平均モル質量(Mw)は800−60,000g/モル、好ましくは1,100−30,000g/モル、最も好ましくは約1,700−20,000g/モルである。上記範囲は制限的であると指摘すべきではないが、生成物の生分解性によっては、100,000−150,000g/モルのモル質量(Mn)であって、同様に、対応する水準のMwのプレポリマーを使用することができる。 しかしながら、適用のより好ましい形態によれば、比較的小さなモル質量を有するプレポリマーを生成することができ、この場合プレポリマーのモル質量は、該プレポリマーが少なくとも本質的に可塑性であるような水準にあるのが最も適している。 後述の実施例においては、Mwが約2,000−7,500g/モルで、Mnが約2,500−8,500g/モルであった。 Mw/Mn比(多分散性)はたとえば約1.05−10.0、特に約1.1−5.0、一般に約1.1−3.0である。このような狭いモル質量分布は、下記でより詳細に述べる重合方法を用いることによって生成することが容易であることを見出した。しかしながら、本発明では、広い多分散性(PDIが20)を有する生成物を用いることが可能である。 本発明に係るポリエステル酸無水物は、医学および薬学の技術分野において全体的に新しい潜在用途を開拓する。大まかに言って、本発明に係るポリエステル酸無水物を生分解性ポリマーに適用することができ、この適用ではポリマーの分解速度を調節したり、表面分解性ポリマーを用いたりすることが有利である。他の代替案を排除することなく、これらの適用例は組織技術における骨格材料、あるいはポリマー様多孔化剤としてのポリマーの使用である。同様に、薬剤適用の例は、活性成分の放出におけるマトリックスとしてのポリマーの使用である。この場合、表面分解性ポリエステル酸無水物がより好ましく、なぜならこれらを用いることによって0次放出挙動を達成することができ、大きな分子の放出も可能とするからである。室温で活性物質を添加することも可能であり、また、温度感応活性物質の使用も可能とする。種々の複合体もポリエステル酸無水物から生成することができ、この場合生物活性ガラスのようなバイオセラミックを含む生物活性複合体が特に興味深い。手術では、ポリエステル酸無水物をたとえばインプラントおよび縫合糸に用いることができる。 次の実施例において、本発明をより詳細に説明する。 実施例1 線状OH末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーの製造 2リッター反応器を用い、混合を2つのらせん状ミキサーにより行った。まず、200gのε−カプロラクトン(1.75モル)、8.31gの1,4−ブタンジオール(0.092モル、5モル%)および0.149gのオクタン酸スズ(0.35ミリモル、0.02モル%)を反応器に加えた。初期材料の秤量後、窒素流を反応器に約3分間導入した。窒素の導入後、温度を160℃に上げ、該温度で初期材料を4時間反応させた。重合の間、反応混合物を50rpmの速度で混合した。重合後、液状ポリマーを冷却し、次いでその後の官能化のために回収した。前記ポリマーのサンプル番号はPCL−BD5−OHである。より小さなモル質量を有する対応プレポリマー(サンプル番号 PCL−BD10−OH)は、17.56gの1,4−ブタンジオール(0.195モル、10モル%)を用いることにより調製した。 このようにして得たポリマーのモル質量は、SEC分析(サイズ排除クロマトグラフィー、Size Exclusion Chromatography)を用い、ポリスチレン標準に対して比較することにより決定した。結果は、1,4−ブタンジオールの量がプレポリマーのモル質量を制御することを示した。5モル%の1,4−ブタンジオールを含むポリマーの数平均モル質量は4600g/モルであり、10モル%の1,4−ブタンジオールを含むポリマーの数平均モル質量は2400g/モルであった。DSC分析(示差走査熱量測定)は、溶融温度が48℃(PCL−BD5−OH)および36℃(PCL−BD10−OH)のとき、プレポリマーが部分的に結晶質であったことを示した。エステル結合(4.03ppm)およびOH末端官能基(3.61ppm)に特有であるピークが、1H−NMR(核磁気共鳴分光学)を用いることによりプレポリマーで観察された。 実施例2 線状OH末端基ポリラクチド系プレポリマーの製造 初期材料としてε−カプロラクチドの代わりにL−ラクチドまたはDL−ラクチドを用いた以外、実施例1と同じ方法により重合を行った。初期材料の量は200gのL−ラクチド(1.39モル)、6.58gの1,4−ブタンジオール(0.073モル、5モル%)および0.118gのオクタン酸スズ(0.02モル%)であった。ポリマーのサンプル番号はPLLA−BD5−OHであった。対応するプレポリマーはより小さなモル質量(サンプル番号 PLLA−BD10−OH)を有するが、13.89gの1,4−ブタンジオール(0.154モル、10モル%)を用いることにより調製した。ポリ(DL−ラクチド)系ポリマーにおいて、DL−ラクチドの使用量は上述したもの(サンプル番号 PDLA−BD5−OHおよびPDLA−BD10−OH)と同じであった。 得られたポリマーのモル質量は、SEC分析を用い、ポリスチレン標準に対して比較することにより決定した。モル質量は実施例1におけるポリカプロラクトン系プレポリマーのものと同じ水準であった。ポリマーPLLA−BD5−OHの数平均モル質量は5100g/モルであり、ポリマーPLLA−BD10−OHのは2300g/モルであった。これに対応して、ポリマーPDLA−BD5−OHの数平均モル質量は4400g/モルであり、ポリマーPDLA−BD10−OHの数平均モル質量は2200g/モルであった。DSC分析は、溶融温度が127℃およびガラス転移温度が36℃のとき、プレポリマーPLLA−BD5−OHが部分的に結晶質であったことを示した。より小さいモル質量を有するポリマーPLLA−BD10−OHのガラス転移温度は22℃であり、溶融ピークは観察されなかった。DL−ラクチド系ポリマーは非晶質であり、それらは30℃(PDLA−BD5−OH)と14℃(PDLA−BD10−OH)のガラス転移温度を有するだけであると観察された。1H−NMR法を用いることにより、プレポリマーがエステル結合(5.14ppm)およびOH末端官能基(4.33ppm)に特有なピークを有することが観察された。 実施例3 星状OH末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーの製造 重合を実施例1と同じ方法により行ったが、4つのOH基を有するペンタエリスリトールを1,4−ブタンジオールの代わりに用いた。初期材料の量は200gのε−カプロラクトン(1.75モル)、26.51gのペンタエリスリトール(10モル%)および0.149gのオクタン酸スズ(0.35ミリモル、0.02モル%)であった。ポリマーのサンプル番号はPCL−PER10−OHであった。プレポリマーの調製は、7.5、5および2.5モル%のペンタエリスリトール(サンプル番号PCL−PER7.5−OH、PCL−PER5−OH、PCL−PER2.5−OH)を用いることにより対応する方法で行った。 モル質量および溶融温度は実施例1に記載した線状ポリカプロラクトンプレポリマーのものと同じ水準であった。PCL−PER10−OHポリマーの数平均モル質量は1800g/モルであり、PCL−PER7.5−OHポリマーの数平均モル質量は2600g/モル、PCL−PER5−OHポリマーの数平均モル質量は3900g/モル、PCL−PER2.5−OHポリマーの数平均モル質量は7100g/モルであった。1H−NMR(核磁気共鳴分光学)法を用いることにより、プレポリマーがエステル結合(4.03ppm)およびOH末端官能基(3.61ppm)に特有のピークを有することが観察された。 実施例4 OH末端基を酸末端基に変えるための線状OH末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーの官能化 酸末端基に変えるためのプレポリマーの官能化を、攪拌用磁性ロッドを用いた250mlの丸底フラスコで行った。まず、実施例1に係る30gのPCL−BD5−OHプレポリマーと、5.8gの(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)とを秤量してフラスコに入れた。酸無水物の使用量はプレポリマーのOH基の量よりも1.3倍大きい量であった。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、次いで密封した。前記フラスコを油浴中に140℃の温度で3時間置いた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサンを用いて沈殿させた。過剰酸無水物を除去するために、前記溶解および沈殿を3回繰り返した。残余の溶媒を除去するため、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)の代わりに2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)またはn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いることによって、官能化を対応する方法により行った。 1H−NMR法を用いることにより、プレポリマーのOH末端官能基(3.61ppmピーク)が消失し、生成した酸官能基(2.84ppm)に特有であるピークを観察することができた。 実施例5 OH末端基を酸末端基に変えるための星状OH末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーの官能化 酸末端基に変えるためのプレポリマーの官能化を、攪拌用磁性ロッドを用いた250mlの丸底フラスコで行った。最初に、実施例3に係る30gの星状(4分岐)PCL−PER10−OHポリマーと、36.85gのn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)とを秤量してフラスコに入れた。酸無水物の使用量はプレポリマーのOH基の量に関して等量であった。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、次いで密封した。フラスコを油浴中に140℃の温度で3時間置いた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、イソオクタンを用いて沈殿させた。不純物を除去するために、前記溶解および沈殿を3回繰り返した。残余の溶媒を除去するため、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。n−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の代わりに(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)または2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることによって、官能化を対応する方法により行った。イソオクタンのほかに、ヘキサンも前記沈殿に用いた。 1H−NMR法を用いることにより、プレポリマーのOH末端官能基(3.61ppmピーク)が消失し、生成した酸官能基(2.84ppm)に特有であるピークを観察することができた。 実施例6 (+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いることによるOH末端基を酸末端基に変えるための線状OH末端基ポリラクチド系プレポリマーの官能化 酸末端基に変えるための線状ポリラクチド系プレポリマーの官能化を実施例4と同じ方法により行ったが、(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)の使用量はプレポリマーのOH基量の2倍の量であった。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、次いで密封した。フラスコを油浴中に140℃の温度で24時間置いた。生成した酸末端基プレポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサンを用いて沈殿させた。前記溶解および沈殿を3回繰り返し、これにより過剰の酸無水物を除去した。残余の溶媒を除去するため、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。 1H−NMR法を用いることにより、プレポリマーのOH末端官能基(3.61ppmピーク)が消失し、生成した酸官能基(2.89ppm)に特有なピークを観察することができた。 実施例7 2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることによるOH末端基を酸末端基に変えるための線状OH末端基ポリラクチド系プレポリマーの官能化 酸末端基に変えるための線状ポリラクチド系プレポリマーの官能化を実施例4と同じ方法により行ったが、2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)の使用量はプレポリマーのOH基量の2倍の量であった。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、次いで密封した。フラスコを油浴中に160℃の温度で8時間置いた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサンを用いて沈殿させた。前記溶解および沈殿を3回繰り返し、その後過剰の酸無水物を除去した。残余の溶媒を除去するため、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。 1H−NMR法を用いることにより、プレポリマーのOH末端官能基(3.61ppmピーク)が消失し、生成した酸官能基(2.89ppm)に特有なピークを観察することができた。 実施例8 n−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いることによるOH末端基を酸末端基に変えるための線状OH末端基ポリラクチド系プレポリマーの官能化 酸末端基に変えるための線状ポリラクチド系プレポリマーの官能化を実施例4と同じ方法により行ったが、n−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の使用量はプレポリマーのOH基量の2倍の量であった。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、次いで密封した。フラスコを油浴中に160℃の温度で8時間置いた。その後、所要に応じてn−オクタデセニルコハク酸無水物を加えて総量でプレポリマーのOH基量の3倍過剰の酸無水物を生成し、反応をさらに8時間続けた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、イソオクタンを用いて沈殿させた。前記溶解および沈殿を3回繰り返し、その後過剰の酸無水物を除去した。残余の溶媒を除去するため、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。 1H−NMR法を用いることにより、プレポリマーのOH末端官能基(3.61ppmピーク)が消失し、生成した酸官能基(2.84ppm)に特有なピークを観察することができた。 実施例9 熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するための酸末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーのカップリング 熱可塑性ポリエステル無水物を形成するためのプレポリマーのカップリングを、攪拌モーターによって回転するブレードミキサーを用いた100ml三つ口丸底フラスコで行った。最初に、15mlの酢酸無水物と、実施例4に係る(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いて官能化された15gのPCL−BD5−OHプレポリマーとを秤量してフラスコに入れた。秤量後、フラスコをその温度が130℃である油浴中に置いた。半時間還流した後、吸引によってフラスコに減圧を注意深く導入した。半時間で減圧を1mbar未満の最終圧力まで増大することによって、過剰の酢酸無水物を除去した。この1mbar未満の圧力を維持しながら、温度を半時間で175℃まで上げ、該温度で重縮合を1時間続けた。重合の後、反応混合物を急速に冷却し、ジクロロメタンに溶解し、これからヘキサンを用いて沈殿させた。残余の溶媒を除去するため、沈殿したポリマーを真空槽で乾燥した。精製したポリエステル酸無水物を冷凍庫に保存した。 ポリエステル酸無水物のモル質量は、SEC分析を用い、ポリスチレン標準に対して比較することにより決定した。(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いて官能化したプレポリマーの数平均モル質量は5,100g/モルであったが、プレポリマーから調製したポリエステル酸無水物の数平均モル質量は40,000g/モルであった。 あらゆるカプロラクトン系ポリエステル酸無水物を対応する方法で調製した。カプロラクトン系ポリエステル酸無水物のモル質量および熱特性を表1に示す。 a 官能化に用いたコハク酸無水物のアルケニル鎖長 b OH末端基プレポリマー c 分裂ピーク 実施例10 熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するための酸末端基ポリラクトン系プレポリマーのカップリング ポリエステル酸無水物を形成するためのポリラクチド系プレポリマーの結合を実施例9と同じ方法により行ったが、初期材料としてポリカプロラクトン系プレポリマーの代わりに、実施例6に係る(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いてすでに酸末端基に官能化され、5モル%の1,4−ブタンジオールを含む15gのプレポリマーを用いた。 ポリエステル酸無水物のモル質量は、SEC分析を用い、ポリスチレン標準に対して比較することにより決定した。本例で述べたPLLA−プレポリマーの数平均モル質量は4,800g/モルであったが、プレポリマーから調製したポリエステル酸無水物の数平均分子量は22,000g/モルであった。 あらゆるポリラクチド系ポリエステル酸無水物を対応する方法で調製した。これらのモル質量および熱特性を表2に示す。 a 官能化に用いたコハク酸無水物のアルケニル鎖長 b OH末端基プレポリマー c DSC分析の最初の加熱では溶融温度があり、第2加熱では溶融ピークは現れなかった。 実施例11 熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するための異なるモル質量を有する2つの酸末端基ポリラクチド系プレポリマーのカップリング ポリエステル酸無水物を形成するためのポリラクチドのカップリングを実施例9と同じ方法により行ったが、初期材料としてポリカプロラクトン系プレポリマーの代わりに、異なるモル質量を有する2つのポリラクチドプレポリマーを用いた。前記プレポリマーの1つは5モル%の1,4−ブタンジオールを含む7.5gのPLLA−プレポリマーであって、該プレポリマーはn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いることによりすでに酸末端基に官能化されており、使用した他のプレポリマーは7.5gのPLLA−プレポリマーであって、該プレポリマーはn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いることによりすでに酸末端基に官能化されており、その1,4−ブタンジオールの割合は10モル%であった。 ポリエステル酸無水物のモル質量は、SEC分析を用い、ポリスチレン標準に対して比較することにより決定した。本例で述べたPLLA−BD5プレポリマーの数平均モル質量は5,100g/モルであり、PLLA−BD10の数平均モル質量は3,000g/モルであった。前記プレポリマーからカップリングしたポリエステル酸無水物の数平均モル質量は21,000g/モルであった。 実施例12 線状酸末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーのメタクリル化 メタクリル酸無水物を用いることによる線状酸末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーの官能化を、混合用の磁性ロッドを用いた100ml丸底フラスコで行った。まず、実施例4に係るn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いて官能化した15gの酸末端基プレポリマーと、約3倍過剰のメタクリル酸無水物(45g)とを秤量してフラスコに入れた。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、密封した。次いで、前記フラスコを60℃の温度の油浴中に24時間置いた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、イソオクタンを用いることにより沈殿させた。前記溶解および沈殿を3回繰り返し、その後過剰のメタクリル酸無水物と、生成した副生成物、すなわちメタクリル酸とを除去した。残余の溶媒を除去するために、沈殿したメタクリル化プレポリマーを真空槽で乾燥した。n−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の代わりに(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)または2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることにより官能化したカプロラクトン系プレポリマーに関するメタクリル化を対応する方法で行った。イソオクタンのほかに、ヘキサンも前記沈殿のために用いた。 1H−NMR法を用いることにより、酸官能基(2.84ppm)に特有なピークが消失し、生成した二重結合に特有なピーク(6.20ppmおよび5.80ppm)が観察された。赤外分光計(FTIR、フーリエ変換赤外分光法)を用いることにより、二重結合(1634cm-1)および酸無水物結合(1806cm-1)の両方に特有なピークがプレポリマーで観察された。 実施例13 星状酸末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーのメタクリル化 メタクリル酸無水物を用いることによる星状酸末端基ポリカプロラクトン系プレポリマーの官能化を、混合用の磁性ロッドを用いた100ml丸底フラスコで行った。まず、実施例5に係るn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いて官能化した15gの酸末端基プレポリマーと、約3倍過剰のメタクリル酸無水物(45g)とを秤量してフラスコに入れた。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、密封した。前記フラスコを60℃の温度の油浴中に24時間置いた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、イソオクタンを用いることにより沈殿させた。前記溶解および沈殿を3回繰り返し、その後過剰のメタクリル酸無水物と、生成した副生成物、すなわちメタクリル酸とを除去した。残余の溶媒を除去するために、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。n−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の代わりに(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)または2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることにより官能化したカプロラクトン系プレポリマーに対しメタクリル化を対応する方法で行つた。イソオクタンのほかに、ヘキサンも前記沈殿のために用いた。 1H−NMR法を用いることにより、酸官能基(2.84ppm)に特有なピークが消失し、生成した二重結合に特有なピーク(6.20ppmおよび5.80ppm)が観察された。赤外分光計(FTIR、フーリエ変換赤外分光法)を用いることにより、二重結合(1634cm-1)および酸無水物結合(1806cm-1)に特有の両方のピークがプレポリマーで観察された。 実施例14 酸末端基ポリラクチド系プレポリマーのメタクリル化 メタクリル酸無水物を用いることによる酸末端基ポリラクチド系プレポリマーの官能化を、混合用の磁性ロッドを用いた100ml丸底フラスコで行った。最初に、実施例8に係るn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)を用いて官能化した15gのプレポリマーと、約5倍過剰のメタクリル酸無水物(75g)とを秤量してフラスコに入れた。秤量後、窒素をフラスコへ導入し、密封した。前記フラスコを80℃の温度の油浴中に24時間置いた。生成したプレポリマーをジクロロメタンに溶解し、ヘキサンを用いることにより沈殿させた。前記溶解および沈殿を3回繰り返し、その後過剰のメタクリル酸無水物と、生成した副生成物、すなわちメタクリル酸とを除去した。残余の溶媒を除去するために、沈殿したプレポリマーを真空槽で乾燥した。カプロラクトン系プレポリマーをn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の代わりに(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)または2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることにより官能化するか、もしくは星状ポリラクチド系プレポリマーを用いた場合にかかるプレポリマーに関するメタクリル化を対応する方法で行った。 1H−NMR法を用いることにより、酸官能基(2.89ppm)に特有なピークが消失し、生成した二重結合に特有なピーク(6.20ppmおよび5.80ppm)が観察された。 実施例15 網状構造ポリエステル酸無水物を形成するためのメタクリル化線状ポリカプロラクトン系プレポリマーの熱使用による架橋 実施例12に係る約5gの線状ポリカプロラクトン系プレポリマーをアルミニウム型に秤量して入れ、所要に応じて40−90℃の温度で溶融した。次いで、2重量%のジベンゾイルペルオキシドをプレポリマーに混和し、混合により均質化した。その後、プレポリマーを型に注入し、圧縮プレスプレートの間で1時間120℃の温度で硬化させた。前記型を冷却したとき、架橋したポリエステル酸無水物サンプルを取り外し、冷凍庫に保存した。メタクリル化カプロラクトン系プレポリマーをn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の代わりに(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)または2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることにより官能化したものに架橋を同じ方法で行った。架橋の度合い、すなわちゲル比率をジクロロメタンでの24時間抽出により重量分析で検討し、それらは10−60%であった。FTIR分光計を用いることにより、二重結合ピーク(1634cm-1)の欠如と酸無水物結合(1806cm-1)に特有のピークの発現とがともに架橋ポリエステル酸無水物で観察された。 実施例16 網状構造ポリエステル無水物を形成するためのメタクリル化星状ポリカプロラクトン系プレポリマーの熱使用による架橋 実施例13に係る約5gの星状ポリカプロラクトン系プレポリマーをアルミニウム型に秤量して入れ、所要に応じて40−90℃の温度で溶融した。次いで、2重量%のジベンゾイルペルオキシドをプレポリマーに混和し、混合によって均質化した。その後、プレポリマーを型に注入し、圧縮プレスプレートの間で1時間120℃の温度で硬化させた。前記型を冷却したとき、架橋したポリエステル酸無水物サンプルを取り出し、冷凍庫に保存した。メタクリル化カプロラクトン系プレポリマーをn−オクタデセニルコハク酸無水物(18−SAH)の代わりに(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)または2−ドデセニル−1−イルコハク酸無水物(12−SAH)を用いることにより官能化したものに架橋を対応する方法で行った。架橋の度合い、すなわちゲル比率をジクロロメタンでの24時間抽出により重量分析で検討し、それらは90%を超えた。FTIR分光計を用いることにより、二重結合ピーク(1634cm-1)の欠如と酸無水物結合(1806cm-1)に特有のピークの発現とがともに架橋ポリエステル酸無水物で観察された。 実施例17 線状ポリラクチド系ポリエステル無水物の加水分解における時間の関数としての質量減少 ポリエステル酸無水物の加水分解試験を、10mlのリン酸塩緩衝溶液(pH7.0)を含む20mlの試験管に加水分解サンプルを置くことにより行った。前記試験管を攪拌器(37℃、100rpm)内に置いた。試験前に、円盤状のサンプルは2mm厚で、6mmの直径を有した。加水分解の間、種々の時間点で3つの平行サンプルを取り出し、直ちに秤量し、その後乾燥した。乾燥重量を決定するために、前記サンプルを真空槽で1週間乾燥した。リン酸塩緩衝液を1週間に一度変えた。加水分解の間、緩衝溶液でpHの変化がなかったことを観察することができた。 実施例10に係る線状熱可塑性ポリ(L−ラクチド)系ポリエステル酸無水物の時間の関数としての質量減少を図1に示す。図1に示すように、官能化に用いた環状酸無水物の疎水性を調整することにより、カップリングの使用により生起したポリエステル酸無水物の分解速度に影響を与えることができる。疎水性アルケニル鎖を含まないポリエステル酸無水物L10−0は1週間未満でほとんど完全に分解するが、アルケニル鎖を含むポリエステル酸無水物L10−8、L10−12およびL10−18は著しく緩徐に分解する。ここで、サンプル番号の最後の番号(0、8、12および18)は、アルケニル鎖長を表している。 実施例18 異なるモル質量を有する2つのポリラクチド系プレポリマーを含む線状熱可塑性ポリエステル酸無水物の加水分解における時間の関数としての質量減少 異なるモル質量を有する2つのポリラクチド系プレポリマーを含む実施例11に係る線状熱可塑性ポリエステル酸無水物の加水分解試験を実施例17で記載したように行った。加水分解中の質量の減少を、時間の関数として図2にグラフを使って示す。 図2が明らかに示すように、ポリエステル酸無水物の製造において異なる速度で分解するプレポリマーを用いることにより、ポリマーの分解作用をさらに制御することができる。緩徐に分解するプレポリマーの量が増えるにつれて分解が遅くなる。ポリマーL−18/18−20/80は、異なるモル質量を有し、その結果異なる速度で分解する2つのプレポリマー(PLLA−BD5−18およびPLLA−BD10−18)を含み、かかるプレポリマー間の比が20/80重量%である。これに対応して、ポリマーL−18/18−50/50における前記比は50/50重量%であり、ポリマーはより緩徐に分解する。その理由は、この場合により緩徐に分解するプレポリマーの割合がより大きいからである。1つのプレポリマーを用いた場合に起こるように、アルケニル鎖のないポリマー(L−0/0−20/80)は、アルケニル鎖を含む対応するポリマー(L−18/18−20/80)よりも著しく早く分解する。 実施例19 線状メタクリル化ポリカプロラクトン系プレポリマーから架橋したポリエステル酸無水物の加水分解における時間の関数としての質量減少 実施例15に係る線状メタクリル化ポリカプロラクトン系プレポリマーから架橋したポリエステル酸無水物の加水分解試験を実施例17に記載したように行い、加水分解中の酸無水物の質量減少を、時間の関数として図3にグラフを使って示す。図3が明らかに示すように、アルケニル鎖が伸びることによる疎水性の増加は加水分解を遅くする。分解曲線の最後の番号は、プレポリマーの官能化に用いた環状酸無水物のアルケニル鎖長を表している。 実施例20 星状プレポリマーから架橋したポリカプロラクトン系ポリエステル酸無水物の加水分解における時間の関数としての質量減少 実施例16に係る星状プレポリマーから架橋したポリカプロラクトン系ポリエステル酸無水物の加水分解試験を実施例17に記載したように行い、加水分解中の酸無水物の質量減少を、時間の関数として図4にグラフを使って示す。再び図4が明らかに示すように、プレポリマーの官能化試薬のアルケニル鎖が伸びることによる疎水性の増加は、明らかに加水分解を遅くする。図3に示すように、分解曲線の最後の番号は、プレポリマーの官能化に用いた環状酸無水物のアルケニル鎖長を表している。 実施例21 ポリマーマトリックスの多孔化のための架橋ポリカプロラクトン系ポリエステル酸無水物の使用 10モル%のペンタエリスリトールを含み、(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いて官能化した実施例13に係るポリカプロラクトン系メタクリル化プレポリマーを多孔化材として用いた。まず、2重量%の樟脳キニーネをプレポリマーに添加し、その後プレポリマーを可視光を用いることにより架橋して0.5mm厚フィルムを形成した。架橋においては、まずフィルムの片側を10分間照射し、その後フィルムを反転し、もう一方側を10分間照射した。架橋フィルムから、0.5mm厚で1mm幅未満のファイバーを切り出した。 多孔化すべきマトリックス材料は、6モル%のペンタエリスリトールを含む共重合体であり、その共重合体のモノマー組成は90モル%のε−カプロラクトンと10モル%のDL−ラクチドであり、その末端水酸基がメタクリル酸無水物を用いることによりメタクリル化されていた。まず、2重量%の樟脳キニーネをマトリックス材料に混合し、次いで多孔化用に用いる50重量%のファイバーをそれに添加した。ファイバーとマトリックス材料とからなる生成した混合物から可視光を用いることにより、2mm×6mm×30mmのロッドを架橋させた。ロッドの中央から約1cm長さの断片を切り出し、実施例17に従って加水分解させた。72時間後、前記ロッドを加水分解溶液から取り出し、真空槽で乾燥した。多孔化ロッドを図5に示す。図5で明らかに示すように、マトリックス構造体中の細孔は加水分解されたファイバーの形状を有する。 実施例22 架橋ポリカプロラクトン系ポリエステル酸無水物のタンパク質放出への使用 10モル%のペンタエリスリトールを含み、(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いて官能化した実施例13に係るポリカプロラクトン系メタクリル化プレポリマーを、タンパク質を含むマトリックスに対して用いた。溶液状プレポリマー、樟脳キニーネ(2重量%)およびBSAタンパク質(10重量%、ウシ血清アルブミン、モル質量66,400g/モル)を混和、混合して均質化混合物を形成した。可視光を用いることによって、2mm厚で6mmの直径を有する円盤状サンプルを混合物から架橋させた。サンプルの両側を照射室で2+4+4分間架橋し、それぞれの架橋段階間で冷却した。 架橋したタンパク質を含むポリエステル酸無水物の加水分解試験を実施例17におけるように行った。 UVスペクトル分光法(紫外線)を用いて加水分解溶液から放出されたBSAの量を決定した。 架橋ポリマーサンプルの質量減少、および加水分解中に放出されたBSAの量を、時間の関数として図6にグラフを使って示す。図6に示すように、サンプルの質量は一様に減少し、放出された薬用成分の量は該質量の減少に比例する。この場合、分解および放出の挙動は表面侵食性ポリマーに特有のものである。 実施例23 架橋ポリカプロラクトン系ポリエステル酸無水物の高分子放出への使用 10モル%のペンタエリスリトールを含み、(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いて官能化した実施例13に係るポリカプロラクトン系メタクリル化プレポリマーを、デキストランを含むマトリックスに対して用いた。比較のために用いた材料は、カルボン酸無水物(0−SAH)を(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)の代わりに官能化物質として用いたポリマーであった。溶液状プレポリマー、樟脳キニーネ(2重量%)およびデキストラン(10重量%、モル質量2,000,000g/モル)を混和し、混合により均質化した。2mm厚で6mmの直径を有するサンプルを混合物から取り出し、可視光を用いて架橋させた。照射室でのサンプルの両側の架橋時間は2+4+4分間であり、冷却をそれぞれの架橋段階間で行った。 架橋したデキストラン担持ポリエステル酸無水物の加水分解試験を実施例17におけるように行った。加水分解溶液から放出されたデキストランの量をゲルろ過クロマトグラフィーを用いることにより決定した。架橋ポリマーサンプルの質量減少、および時間の関数としての加水分解中に放出されたデキストランの量を図7に示す。図7に示すように、サンプルの質量は一様に減少し、デキストランの放出量は該質量の減少に比例する。この場合、分解および放出の挙動は表面侵食性ポリマーに特有のものである。さらに、図7は(+/-)−2−オクテン−1−イルコハク酸無水物(8−SAH)を用いて官能化したポリマー、すなわちより疎水性のポリマーがより緩徐に分解することを示している。実施例10に係る線状熱可塑性ポリ(L−ラクチド)系ポリエステル酸無水物の質量減少を表したグラフである。実施例11に係る線状熱可塑性ポリエステル酸無水物の加水分解中での質量減少を表したグラフである。実施例15に係る線状メタクリル化ポリカプロラクトン系プレポリマーから架橋されたポリエステル酸無水物の加水分解中での質量減少を表したグラフである。実施例16に係る星状プレポリマーから架橋されたポリカプロラクトン系ポリエステル酸無水物の加水分解中での質量減少を表したグラフである。多孔化ロッドを示す写真である。架橋したポリマーサンプルの質量減少と、加水分解中に放出されたBSAの量を表したグラフである。架橋したポリマーサンプルの質量減少と、加水分解中に放出されたデキストランの量を表したグラフである。 a)ポリエステルブロック、 b)官能化を適用することにより前記ポリエステルブロックに結合した疎水性部分、および c)官能化ポリエステルブロックをカップリングする酸無水物結合を主として備えることを特徴とするポリエステル酸無水物系の熱可塑性または架橋性ブロックポリマー。 前記ポリエステルブロックa)が構成単位、好ましくは乳酸、カプロラクトン、ラクチド、グリコリドまたは同一タイプの他の化合物を排除しないこれらの混合物を備え、前記構成単位がラクトン、脂肪族ヒドロキシ酸または二官能性ヒドロキシル基もしくはカルボキシル酸基を備えるモノマーから誘導されることを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー。 前記熱可塑性ポリエステル酸無水物における前記構成単位のポリエステルブロックa)が直鎖構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載のブロックポリマー。 前記架橋性ポリエステル酸無水物における前記構成単位のポリエステルブロックa)が線状、星状、くし型であるか、もしくは他の分岐した鎖構造を有することを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のブロックポリマー。 前記ポリエステルブロックa)に少なくとも1つの疎水性置換基を備える環状構造酸無水物、好ましくはアルケニルもしくはアルキルコハク酸無水物を結合し、そのアルケニルもしくはアルキル置換基の炭素鎖が少なくとも2原子、より好ましくは2〜24原子を有し、他の疎水性置換基形状を排除しないことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のブロックポリマー。 前記ポリマーが加水分解性であり、前記構成単位を選択することにより分解する速度を調整することが可能であることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のブロックポリマー。 前記ポリマーが分解する速度を10分から2年以上にわたる期間で調整することができることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のブロックポリマー。 前記ポリマーの分解メカニズムが、初期材料の選択に応じて質量または表面侵食のいずれかであることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のブロックポリマー。 調製可能な生分解性を要求する用途、好ましくは他の類似する用途を排除しない医学および獣医学の用途への前記いずれかの請求項に記載のブロックポリマーの使用。 薬剤投与もしくは活性成分の調整可能な放出、より好ましくは生体内のたんぱく質のような熱に敏感および/または大きな分子の調整された放出のための薬剤マトリックスとしての請求項1〜8のいずれかに記載のブロックポリマーの使用。 組織技術への、好ましくは他の医学もしくは獣医学での使用を排除しない多孔化材料としての請求項1〜8のいずれかに記載のブロックポリマーの使用。 複合体、好ましくは他を排除しないバイオセラミックを含む生物活性複合体への請求項1〜8のいずれかに記載のブロックポリマーの使用。 請求項1〜8のいずれかに記載のブロックポリマーを製造するに当たり、ポリエステルブロックのカップリング前に官能化を用いることにより疎水性部分b)を前記構成単位a)を形成するポリエステルブロックにカップリングしてポリエステル酸無水物を形成することによって前記ポリマーの加水分解速度の調整を行うことを特徴とするブロックポリマーの製造方法。 官能化を用いることによってポリエステルブロックa)に結合する前記疎水性部分が、アルケニルもしくはアルキル鎖のような少なくとも1つの長鎖置換基を備える酸無水物、好ましくは他の類似する化合物を排除しないアルケニルまたはアルキルコハク酸無水物から形成されることを特徴とする請求項13に記載の方法。 前記ポリエステルブロックa)の官能化に用いる置換された環状酸無水物のアルケニルもしくはアルキル置換基の炭素鎖長が、少なくとも2原子、好ましくは2〜24原子であることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。 本発明は新規の生分解性ポリマーに関する。かかるポリマーは、異なる疎水性を有する環状構造の酸無水物が結合した生分解性ポリエステル系プレポリマーを備え、カップリングにより線状熱可塑性ポリエステル酸無水物を形成するか、あるいは架橋して網状構造ポリエステル酸無水物を形成する。本発明に係るポリマーの分解速度およびメカニズムを広く制御することができ、このようにして、例えば手術及び生物活性複合体における組織技術用途用の薬剤成分の投与の制御に使用することができる。【選択図】なし


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