タイトル: | 特許公報(B2)_ベンゾチアゾール化合物の製造方法 |
出願番号: | 2008539782 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07D 277/62,C07D 277/72,C07C 319/02,C07C 323/34 |
青塚 知士 熊沢 健太郎 JP 5244604 特許公報(B2) 20130412 2008539782 20071012 ベンゾチアゾール化合物の製造方法 あすか製薬株式会社 000002990 鍬田 充生 100090686 青塚 知士 熊沢 健太郎 JP 2006279927 20061013 20130724 C07D 277/62 20060101AFI20130704BHJP C07D 277/72 20060101ALI20130704BHJP C07C 319/02 20060101ALI20130704BHJP C07C 323/34 20060101ALI20130704BHJP JPC07D277/62C07D277/72C07C319/02C07C323/34 C07D 277/62 C07C 319/02 C07C 323/34 C07D 277/72 CA/REGISTRY/CASREACT(STN) 国際公開第2004/100881(WO,A1) 特開平07−097376(JP,A) チェコ国特許発明第00263891(CZ,B6) 英国特許出願公開第00558887(GB,A) 特開平06−234763(JP,A) 特開平08−208631(JP,A) 特開2004−250412(JP,A) 特表2005−526102(JP,A) 国際公開第98/046594(WO,A1) 特開昭63−250385(JP,A) 特開平06−025160(JP,A) ZHANG, L.,7'-Substituted Benzothiazolothio- and Pyridinothiazolothio -Purines as Potent Heat Shock Protein 90 Inhibitors,Journal of Medicinal Chemistry,2006年,Vol.49, No.17,p.5352-5362 SUZUKI, N.,Synthesis of antimicrobial agents. I. Synthesis and antimicrobial activities of thiazoloquinoline derivatives,Chemical & Pharmaceutical Bulletin,1979年,Vol.27, No.1,p.1-11 BADGER,G.M. et al,Synthetic applications of activated metal catalysts. III. Desulfurization of thiazoles with Raney ni,Journal of the Chemical Society,1957年,p.1652-7 WEIBULL,B.,Reduction of 2-mercaptobenzothiazole to benzothiazole,Acta Chemica Scandinavica,1962年,Vol.16,p.1052 6 JP2007069911 20071012 WO2008047694 20080424 26 20101005 安藤 倫世 本発明は、アルドースリダクターゼ阻害作用を有する一連の化合物を合成する上で有用なアミノチオフェノール化合物(又はその塩)の製造方法、アミノチオフェノール化合物の製造における中間体として有用なベンゾチアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール化合物、2−ヒドロベンゾチアゾール化合物など)の製造方法、及び新規ベンゾチアゾール化合物に関する。 アルドースリダクターゼは、グルコース代謝における重要な酵素であり、この酵素を阻害することにより糖尿病及び/又は糖尿病性合併症を治療する試みが行われている。例えば、アルドースリダクターゼ阻害作用を有する化合物として、種々の化合物が合成及び開発されており、2−位にヘテロ環含有基やエステル結合含有基を有するベンゾチアゾール化合物(以下、単に2−置換ベンゾチアゾール化合物と称する場合がある)もそのような化合物の一つである。 2−置換ベンゾチアゾール化合物は、アルドースリダクターゼ阻害活性が高く、受容体への選択性も高いため、副作用の軽減が期待されている薬剤である。2−置換ベンゾチアゾール化合物としては、例えば、特開平8−208631号公報(特許文献1)には、2−位に特定のエステル含有基を有するベンゾチアゾール化合物又はその医薬的に許容される塩を有効成分として含有するアルドースリダクターゼ阻害剤が開示されている。また、Van Zandtら、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),48(9),3141-3152(2005)(非特許文献1)には、ゾポルレスタット(Zopolrestat)を始め、各種アルドースリダクターゼ阻害剤が臨床段階まで進んでいることが記載されている。さらに、非特許文献1では、リドレスタット(Lidorestat)を含むインドール−N−酢酸類について、経口による効能及びアルドースリダクターゼに関する選択性に関して検討している。青塚ら、ケミカル アンド ファーマシューティカル ブルティン(Chemical and Pharmaceutical Bulletin),42(6),1264-1271(1994)(非特許文献2)には、アルドースリダクターゼ阻害剤として有用な4−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−1,4−ベンゾチアジン−2−酢酸誘導体の合成が記載されている。また、特開昭62−114988号公報(特許文献2)には、ベンゾイミダゾール環などを含有する複素環式オキソフタラジニル酢酸が、酵素アルドースリダクターゼ阻害剤として有用であることが記載されている。 また、上記のような2−置換ベンゾチアゾール化合物は、種々の方法により合成されている。例えば、上記非特許文献1には、N−エトキシカルボニルメチル−インドール−3−アセトニトリルと2−アミノ−3,4,6−トリフルオロチオフェノールの塩酸塩とを2,2,2−トリフルオロエタノール中で反応させ、さらに水酸化ナトリウム水溶液で加水分解することによりリドレスタットを合成する方法が記載されている。また、上記非特許文献2では、1−シアノメチル−1,4−ベンゾチアジン化合物と、2−アミノチオフェノール化合物の塩酸塩とをエタノール中で反応させ、さらに水酸化ナトリウム又は臭化水素を作用させて、4−(置換ベンゾチアゾール−2−イルメチル)−1,4−ベンゾチアジン−2−酢酸誘導体を合成している。 また、上記のような方法において、アミノチオフェノール化合物は、2−置換ベンゾチアゾール化合物を製造する原料として有用であり、アミノチオフェノール化合物も種々の方法により合成することができる。例えば、上記非特許文献1及び2には、下記反応経路により、アミノチオフェノール化合物の塩酸塩を合成する方法が記載されている。 また、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),34,108-122(1991)(非特許文献3)には、下記の反応経路により2−アミノチオフェノールを合成する方法が記載されている。 しかし、上記のような方法では、原料のテトラフルオロアニリン又は2−ニトロフェノールから4工程(非特許文献1及び2の方法では、塩酸処理の前までで4工程)必要であり、全工程後の収率も39〜62%と十分満足できるものではない。また、特開平7−188156号公報(特許文献3)には、2−メルカプトベンゾチアゾールを加水分解することにより、2−アミノチオフェノールを得る方法が開示されているが、本方法は、高濃度の水酸化ナトリウムの存在下、高温高圧で反応させる必要があり、工業的に不利である。このように、従来の方法では、2−アミノチオフェノール化合物を効率よく製造することは困難であり、工業生産的観点から見ても不利である。そのため、より簡便で、しかも高い収率で2−アミノチオフェノール化合物を製造できる方法の開発が望まれている。特開平8−208631号公報(請求項1及び18)特開昭62−114988号公報(請求項1、第8頁左下欄10〜13行)特開平7−188156号公報Van Zandtら、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),48(9),3141-3152(2005)(第3141頁右下欄、図1、第3142頁右欄及びスキーム2、第3143頁右下欄)青塚ら、ケミカル アンド ファーマシューティカル ブルティン(Chemical and Pharmaceutical Bulletin),42(6),1264-1271(1994)(第1264頁左欄第2パラグラフ、第1265頁チャート3)ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),34,108-122(1991)(第111頁スキームIV) 従って、本発明の目的は、2−アミノチオフェノール化合物の合成中間体として有用なベンゾチアゾール化合物を簡便、かつ高い収率で製造できる方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、アルドースリダクターゼ阻害剤などとしても有用な2−置換ベンゾチアゾール化合物の原料である2−アミノチオフェノール化合物を、温和な条件下で、効率よく製造できる方法を提供することにある。 本発明のさらに他の目的は、2−アミノチオフェノール化合物の製造中間体として有用な新規ベンゾチアゾール化合物を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、テトラフルオロアニリンなどの特定の芳香族アミン化合物とジチオ炭酸O−アルキル塩(キサントゲン酸塩など)との反応、及びこの反応により得られるメルカプトベンゾチアゾール化合物と還元性金属成分との反応を利用すると、2−アミノチオフェノール化合物の合成中間体であるベンゾチアゾール(2−ヒドロベンゾチアゾール)化合物(ひいては、2−アミノチオフェノール化合物)を、従来の方法に比較して少ない工程数で効率よく、しかも温和な条件下で製造できることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、本発明では、下記式(I)(式中、Xはハロゲン原子、ニトロ基、アルキルスルホニルオキシ基、又はハロアルキルスルホニルオキシ基を示す。R1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示し、基R1〜R4のうち、隣接する2つの基は互いに結合して芳香族環又は脂肪族環を形成してもよい)で表される芳香族アミン化合物と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させて、下記式(II)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表されるベンゾチアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール化合物)を生成させ、このベンゾチアゾール化合物(II)を、さらに還元性金属成分との反応に供して、下記式(III)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表されるベンゾチアゾール化合物(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)を生成させる。 前記方法において、Xがハロゲン原子である芳香族アミン化合物(I)と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させてもよい。前記芳香族アミン化合物(I)として、R1〜R4のうち少なくとも1つがハロゲン原子である化合物を用いてもよく、R1〜R4のうち2又は3個がフッ素原子であり、残余が水素原子である化合物を用いてもよい。芳香族アミン化合物(I)として、R2が水素原子であり、R1、R3及びR4がフッ素原子である化合物を用いるのも好ましい。 ベンゾチアゾール化合物(II)(2−メルカプトベンゾチアゾール化合物)と還元性金属成分との反応において、前記金属成分として、遷移金属単体、周期表第14属金属単体、及びこれらの金属の還元体から選択された少なくとも一種の金属単体を用いてもよい。 また、本発明には、前記反応により得られたベンゾチアゾール化合物(III)(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)をさらに塩基と反応させて、下記式(IV)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表されるアミノチオフェノール化合物又はその塩を製造する方法も包含される。ベンゾチアゾール化合物(III)(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)と塩基との反応において、前記塩基として、無機塩基を用いてもよい。また、下記式(Ia)(式中、X1はハロゲン原子を示し、X2〜X4はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子を示す。X2〜X4のうち少なくとも1つがハロゲン原子である)で表される芳香族アミン化合物と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させて、下記式(IIa)(式中、X2〜X4は前記に同じ)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール化合物を生成させ、この2−メルカプトベンゾチアゾール化合物と、遷移金属単体、周期表第14属金属単体、及びこれらの金属の還元体から選択された少なくとも一種の金属単体とを反応させて、下記式(IIIa)(式中、X2〜X4は前記に同じ)で表されるベンゾチアゾール化合物(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)を生成させ、このベンゾチアゾール化合物(IIIa)と無機塩基とを反応させて、下記式(IVa)(式中、X2〜X4は前記に同じ)で表されるアミノチオフェノール化合物又はその塩を製造してもよい。 本発明には、下記式で表される新規ベンゾチアゾール化合物も含まれる。(式中、Yは水素原子又はメルカプト基を示し、X2〜X4はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子を示す。X2〜X4のうち少なくとも1つがハロゲン原子である) 前記式において、X2〜X4の全てがハロゲン原子であってもよい。 なお、本明細書中、ベンゾチアゾール化合物、メルカプトベンゾチアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール化合物)、ヒドロベンゾチアゾール化合物(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)において、「ベンゾチアゾール化合物」とは、チアゾール環に少なくともベンゼン環骨格を含む芳香環が前記ベンゼン環骨格を介して縮合した化合物を意味し、ベンゼン環がチアゾール環に縮合した化合物のみならず、ナフタレン環、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン環などのベンゼン環骨格を含む多環式芳香環がベンゼン環骨格を介してチアゾール環に縮合した化合物も含む意味で用いる。また、アミノチオフェノール化合物も同様に、アミノ基とメルカプト基とを置換基として有するベンゼン環を少なくとも骨格として有する化合物を意味し、前記ベンゼン環の骨格にベンゼン環などの芳香環やシクロアルカンなどの脂肪族環が縮合した化合物、例えば、2−アミノチオナフトール、2−アミノチオ−5,6,7,8−テトラヒドロナフトールなども含む意味で用いる。 本発明では、特定の芳香族アミン化合物とジチオ炭酸O−アルキル塩(キサントゲン酸塩など)との反応及びこの反応により得られるメルカプトベンゾチアゾール化合物と還元性金属成分との反応を組み合わせて利用するので、2−アミノチオフェノール化合物の合成中間体であるベンゾチアゾール化合物を、従来の方法に比較して少ない工程数で、簡便に、効率よく製造できる。そのため、前記ベンゾチアゾール化合物の収率を改善できる。また、上記中間体までの工程数を減じることができるため、2−アミノチオフェノール化合物、さらにはこの2−アミノチオフェノール化合物を原料(又は中間体)として得られ、アルドースリダクターゼ阻害剤などとしても有用な2−置換ベンゾチアゾール化合物までの工程数も低減することができ、これらの化合物も効率よく製造できる。さらに、本発明では、高濃度の水酸化ナトリウムを使用したり、高温高圧下で反応させる必要がなく、温和な条件で、前記2−アミノチオフェノール化合物を製造することもできる。また、本発明では、2−アミノチオフェノール化合物の製造中間体としても有用な新規ベンゾチアゾール化合物を提供することもできる。発明の詳細な説明 本発明では、下記式(I)で表される芳香族アミン化合物と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させて、下記式(II)で表されるベンゾチアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール化合物)を生成させる。さらに、このベンゾチアゾール化合物(II)を、さらに還元性金属成分との反応に供することにより、下記式(III)で表されるベンゾチアゾール化合物(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)を生成させることができる。また、ベンゾチアゾール化合物(III)をさらに塩基と反応させることにより、下記式(IV)で表されるアミノチオフェノール化合物又はその塩を製造することができる。アミノチオフェノール化合物(IV)は、必要により、酸処理等により対応する塩に変換してもよい。このようなアミノチオフェノール化合物又はその塩は、アルドースリダクターゼ阻害剤などとしても有用な2−置換ベンゾチアゾール化合物(例えば、2−位にヘテロ環含有基やエステル結合含有基などの官能基を有するベンゾチアゾール化合物)の原料(又は中間体)として有用である。(式中、Xはハロゲン原子、ニトロ基、アルキルスルホニルオキシ基、又はハロアルキルスルホニルオキシ基を示す。R1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示し、基R1〜R4のうち、隣接する2つの基は互いに結合して芳香族環又は脂肪族環を形成してもよい) 上記各式(I)〜(IV)において、X又はR1〜R4で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素原子などが挙げられる。 Xで表されるアルキルスルホニルオキシ基としては、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキル−スルホニルオキシ基(例えば、C1−10アルキルスルホニルオキシ基)が例示できる。アルキルスルホニルオキシ基は、好ましくはC1−6アルキルスルホニルオキシ基、さらに好ましくはC1−4アルキルスルホニルオキシ基であってもよい。また、Xで表される前記ハロアルキルスルホニルオキシ基としては、前記アルキルスルホニルオキシ基に対応するハロアルキルスルホニルオキシ基、例えば、フルオロメチルスルホニルオキシ、ジフルオロメチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルスルホニルオキシ基などのモノ又はポリフルオロアルキルスルホニルオキシ基、これらのフルオロアルキルスルホニルオキシ基に対応するクロロアルキルスルホニルオキシ基、ブロモアルキルスルホニルオキシ基及びヨウ化アルキルスルホニルオキシ基などのモノ又はポリハロアルキルスルホニルオキシ基(例えば、モノ乃至トリハロアルキルスルホニルオキシ基)などが例示できる。ハロアルキルスルホニルオキシ基は、好ましくはモノ乃至トリハロC1−6アルキルスルホニルオキシ基、さらに好ましくはモノ乃至トリフルオロC1−4アルキルスルホニルオキシ基などであってもよい。 R1〜R4で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、C1−10アルキル基)、好ましくはC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)などが挙げられる。ハロアルキル基としては、前記アルキル基に対応するハロアルキル基、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基などのモノ又はポリフルオロアルキル基、これらのフルオロアルキル基に対応するクロロアルキル基、ブロモアルキル基及びヨウ化アルキル基などのモノ又はポリハロアルキル基(例えば、モノ乃至トリハロアルキル基)などが挙げられる。ハロアルキル基は、好ましくはモノ乃至トリハロC1−6アルキル基、さらに好ましくはモノ乃至トリフルオロC1−4アルキル基などであってもよい。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基(例えば、C1−10アルコキシ基)、好ましくはC1−6アルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基)などが挙げられる。ハロアルコキシ基としては、前記アルコキシ基に対応するハロアルコキシ基、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ、パーフルオロエトキシ、フルオロプロポキシ、フルオロイソプロポキシ、トリフルオロイソプロポキシ、パーフルオロイソプロポキシ基などのモノ又はポリフルオロアルコキシ基、これらのフルオロアルコキシ基に対応するクロロアルコキシ基、ブロモアルコキシ基、ヨウ化アルキルオキシ基などのモノ又はポリハロアルコキシ基(例えば、モノ乃至トリハロアルコキシ基)などが挙げられる。ハロアルコキシ基は、好ましくはモノ乃至トリハロC1−6アルコキシ基、さらに好ましくはモノ乃至トリフルオロC1−4アルコキシ基などであってもよい。 R1〜R4で表されるアリール基としては、フェニル、トリル、フルオロフェニル、ナフチル基などの置換基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基及び/又はフッ素原子などの前記と同様のハロゲン原子など)を有していてもよいC6−14アリール基(好ましくはC6−10アリール基)などが挙げられる。R1〜R4で表されるアラルキル基としては、ベンジル、4−メチルベンジル、フルオロベンジル、フェネチル基などの前記アリール基に対応し、かつ置換基(例えば、アリール基上に置換基)を有していてもよいC6−14アリール−直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキル基)などが挙げられる。前記アリール基及びアラルキル基において、アリール基上の置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子など)の個数は、例えば、1〜4個、好ましくは1〜3個程度であってもよい。 前記式(I)〜(IV)において、基R1〜R4のうち、隣接する2つの基(例えば、R1及びR2、R2及びR3、又はR3及びR4)は、互いに結合して芳香族環(ベンゼン環などのC6−10アレーン環など)又は脂肪族環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環などのC4−8シクロアルカン環;シクロヘキセン環などのC4−8シクロアルケン環など)を形成してもよい。すなわち、前記式(I)〜(IV)におけるベンゼン環には、上記芳香族環又は脂肪族環が縮合して縮合環を形成してもよい。このような縮合環の具体例としては、ナフタレン環、インダン環、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン環、インデン環、1,4−ジヒドロナフタレン環、6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン環などが挙げられる。 なお、上記反応工程I〜IIIにおいて、基R1〜R4の種類は、例えば、化合物(I)と化合物(III)とで異なっていてもよく、化合物(II)と化合物(IV)とで異なっていてもよい。すなわち、各反応工程の間に適宜、慣用の反応を行って、官能基(前記基R1〜R4、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)を導入してもよく、前記のような官能基を有する化合物から官能基を脱離させて水素原子などに変換してもよい。 (反応工程I) 反応工程Iでは、芳香族アミン化合物(I)とジチオ炭酸O−アルキル塩(キサントゲン酸塩など)との反応により、ジチオ炭酸O−アルキル塩のアルキル−O−基(すなわちアルコキシ基)(キサントゲン酸塩のエトキシ基など)及び塩形成部分の脱離を伴って、アミン化合物(I)のアミノ基及び基Xの部位で閉環反応が起こり、基Xの位置にジチオ炭酸O−アルキル塩中のイオウ原子が導入されて、ベンゼン環に縮合したチアゾール環が形成される。この反応では、芳香族アミン化合物(I)から化学量論的にベンゾチアゾール化合物(II)が生成する。 前記式(I)の芳香族アミン化合物において、基R1〜R4のうち少なくとも1つ(好ましくは2〜3個)はハロゲン原子(フッ素、塩素原子(特にフッ素原子)など)であるのが好ましい。また、残りの基(残余)は水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、及びハロアルコキシ基から選択するのが好ましい。このような化合物のうち、基R1〜R4のうち2又は3個がハロゲン原子(フッ素原子など)、残余が水素原子である化合物、さらにはR1〜R4のうち2又は3個がフッ素原子であり、残余が水素原子である化合物などを用いる場合が多い。特に好ましい芳香族アミン化合物(I)としては、R2が水素原子であり、R1、R3及びR4がフッ素原子である化合物などが挙げられる。なお、芳香族アミン化合物(I)において、基Xは、好ましくはハロゲン原子(フッ素、塩素原子など)、特にフッ素原子が好ましい。 好ましい芳香族アミン化合物は、例えば、下記式(Ia)で表すことができる。(式中、X1はハロゲン原子を示し、X2〜X4はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子を示す。X2〜X4のうち少なくとも1つがハロゲン原子である) なお、式(Ia)において、基X1、X2、X3及びX4は、それぞれ順に、前記式(I)における基X、R1、R3及びR4に対応する。前記式(Ia)において、基X2〜X4に関して、ハロゲン原子は基X2〜X4のいずれであってもよく、基X2〜X4のうちの2つ又は全てがハロゲン原子であってもよい。なお、基X1〜X4のハロゲン原子の種類は同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。基X1〜X4で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素原子などが好ましく、特にフッ素原子であるのが好ましい。 芳香族アミン化合物(I)及び(Ia)の具体例としては、基X(又は基X1)がフッ素原子である場合を例に挙げて説明すると、2−フルオロアニリン、2,3−ジフルオロアニリン、3−クロロ−2−フルオロアニリン、2,6−ジフルオロアニリン、2,5−ジフルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、2,4,6−トリフルオロアニリン、2,5,6−トリフルオロアニリン、2,3,4,6−テトラフルオロアニリン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロアニリンなどのモノ又はポリフルオロアニリン;2−フルオロ−5−メチルアニリンなどのアルキル−フルオロアニリン;2−フルオロ−3−トリフルオロメチルアニリン、2−フルオロ−5−トリフルオロメチルアニリンなどのハロアルキル−フルオロアニリン;4−フェニル−2−フルオロアニリン、5−フェニル−2−フルオロアニリンなどのアリール−フルオロアニリン;4−ベンジル−2−フルオロアニリン、5−ベンジル−2−フルオロアニリンなどのアラルキル−フルオロアニリンなどが挙げられる。また、芳香族アミン化合物(I)(又は(Ia))には、上記化合物の例に対応し、かつ基X(又は基X1)が、塩素原子などの他のハロゲン原子、ニトロ基、アルキルスルホニルオキシ基、又はハロアルキルスルホニルオキシ基である化合物なども含まれる。 これらの化合物のうち、特に、2−位がフッ素原子であるモノ乃至テトラフルオロアニリン、特に、式(Ia)においてX1〜X4の全てがフッ素原子である2,3,5,6−テトラフルオロアニリンなどが好ましい。なお、上記芳香族アミン化合物(I)(及び(Ia))は、通常、一種を基質として用いる場合が多いが、必要であれば、二種以上組み合わせて用いてもよい。 芳香族アミン化合物(I)及び(Ia)としては、公知又は慣用の方法に準じて合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。例えば、2,3,5,6−テトラフルオロアニリンのCAS登録番号は700−17−4であり、市販品として入手可能である。 ジチオ炭酸O−アルキル塩を構成するジチオ炭酸O−アルキル(RO−C(=S)−SH、式中、Rはアルキル基を示す)としては、例えば、ジチオ炭酸O−メチル、ジチオ炭酸O−エチル(キサントゲン酸,CH3CH2O−C(=S)−SH)、ジチオ炭酸O−プロピル、ジチオ炭酸O−イソプロピル、ジチオ炭酸O−n−ブチル、ジチオ炭酸O−t−ブチルなどのジチオ炭酸O−C1−6アルキルが挙げられる。 ジチオ炭酸O−アルキル塩は、前記ジチオ炭酸O−アルキルと塩基との塩であり、例えば、アミン(アルキルアミンなど)などの有機塩基との塩であってもよいが、通常、無機塩基[水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物(アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物など);炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩など]との塩を用いる場合が多い。 好ましいジチオ炭酸O−アルキル塩は、ジチオ炭酸O−C1−4アルキル塩、特にジチオ炭酸O−エチル塩である。 ジチオ炭酸O−アルキル塩の具体例としては、ジチオ炭酸O−エチルカリウム、ジチオ炭酸O−エチルナトリウム、ジチオ炭酸O−エチルカルシウムなどのジチオ炭酸O−アルキル金属塩(例えば、ジチオ炭酸O−アルキルアルカリ金属塩、ジチオ炭酸O−アルキルアルカリ土類金属塩)、特に、ジチオ炭酸O−エチル金属塩などのジチオ炭酸O−C1−4アルキル金属塩などが挙げられる。ジチオ炭酸O−アルキル塩のうち、特に、ジチオ炭酸O−アルキルアルカリ金属塩(ジチオ炭酸O−エチルカリウムなどのジチオ炭酸O−C1−4アルキルアルカリ金属塩など)を用いる場合が多い。これらのジチオ炭酸O−アルキル塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 芳香族アミン化合物(I)とジチオ炭酸O−アルキル塩との割合(モル比)は、例えば、0.3/1〜1.5/1程度の範囲から選択でき、好ましくは0.5/1〜1/1程度であってもよい。なお、芳香族アミン化合物(I)に対して、ジチオ炭酸O−アルキル塩を過剰(例えば、前記割合が0.5/1〜0.9/1程度)に用いてもよい。 反応は、通常、反応に対して不活性な溶媒中で行うことができ、このような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAA)などのアミド類;テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類;N−メチルピロリドン(NMP)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 溶媒の割合は、反応を阻害しない範囲で適宜選択でき、例えば、芳香族アミン化合物1重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部程度であってもよい。 反応は、基質である芳香族アミン化合物及び/又は溶媒の還流温度以下で行うことができ、通常、加熱下(特に加熱還流下)で行う場合が多い。反応温度は、例えば、−100℃〜+300℃、好ましくは0〜250℃、さらに好ましくは室温(20〜30℃程度)〜200℃程度であってもよい。 反応時間は、基質、溶媒の種類などに応じて異なり、特に制限されないが、例えば、0.5〜4時間、好ましくは1〜3時間、さらに好ましくは1〜2時間程度の範囲から適宜選択できる。 反応は、大気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)の流通又は雰囲気下で行ってもよい。反応は、常圧、減圧又は加圧下のいずれで行ってもよい。 上記のような反応工程(I)により前記芳香族アミン化合物(I)に対応するベンゾチアゾール化合物(II)を1−ステップで、しかも高い収率で効率よく得ることができる。得られたベンゾチアゾール化合物(又は2−メルカプトベンゾチアゾール化合物)(II)は、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法、例えば、ろ過、転溶、塩析、蒸留、溶媒除去、析出(例えば、塩を形成させることによる析出など)、晶析、再結晶、デカンテーション、抽出、乾燥、洗浄、クロマトグラフィー、及びこれらの組み合わせなどにより、分離又は精製してもよい。なお、前記ベンゾチアゾール化合物(II)は、反応混合物中に、酸(塩酸などの無機酸など)を添加することにより形成された塩が析出、沈殿するため、このような性質を利用して、反応混合物中にて、一旦、前記塩を析出させ、ろ過(吸引ろ過など)やデカンテーションなどにより固液分離し、得られた固形分を次工程に供してもよい。また、反応工程I及び反応工程IIは、一連の連続反応(連続工程)として行ってもよい。このような連続反応では、反応工程IIに先だって、上記のように化合物(II)の塩を析出させ、固液分離させるのが有利であり、反応工程I、析出、固液分離、及び反応工程IIと連続的に工程を進めることができ、有利である。また、2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)は、分離又は精製処理を施すことなく、反応工程IIに供してもよい。 (反応工程II) 反応工程IIでは、前記式(II)で表されるベンゾチアゾール化合物(以下、2−メルカプトベンゾチアゾール化合物と称する場合がある)を還元性金属成分と反応させることにより、2−メルカプトベンゾチアゾール化合物の2−位のメルカプト基が脱離して、前記式(III)で表される2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(2−位に水素原子を有するベンゾチアゾール化合物)が生成する。 基質である2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)としては、前記反応工程Iの項で例示した芳香族アミン化合物(I)又は(Ia)に対応する化合物が例示できる。2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)は、通常、一種で使用する場合が多いが、必要であれば二種以上組み合わせて用いてもよい。好ましい2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)としては、例えば、下記式(IIa)で表わされる化合物などが挙げられる。(式中、X2〜X4は前記に同じ) 化合物(IIa)の具体例としては、例えば、4−フルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、5−フルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、7−フルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、4,5−ジフルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、4,7−ジフルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、5,7−ジフルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールなどのフルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール;これらのフルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾールに対応するクロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロモ−2−メルカプトベンゾチアゾール、ヨード−2−メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。 前記還元性金属成分としては、還元能を有する金属成分であればよく、例えば、金属単体[例えば、金属カルシウム、金属マグネシウムなどのアルカリ土類金属;金属鉄、金属銅、金属亜鉛などの遷移金属;金属アルミニウムなどの周期表第13族金属;金属スズなどの周期表第14族金属;及びこれらの金属の還元体(例えば、還元鉄など)など]、金属化合物[例えば、前記金属単体に対応する金属塩(硫酸塩などの無機酸金属塩など)、前記金属単体の水素化物などが挙げられる。これらの金属成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属成分のうち、金属単体(金属の還元体を含む)、例えば、遷移金属単体、周期表第14族金属単体などが好ましい。金属成分としては、特に、還元鉄、金属スズ、金属亜鉛などの金属単体が好ましい。 金属成分は、反応溶媒などに溶解した状態で用いてもよく、固形状で反応系に共存させてもよい。固形状の金属成分の形状は、特に制限されず、粉粒状(粉末状など)、針状、棒状、リボン状、板状、フレーク状、塊状などであってもよい。金属成分は、好ましくは粉末状であってもよい。 金属成分の割合は、例えば、化合物(II)(又は(IIa))1重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは0.7〜2重量部程度である。 反応工程IIでは、酸、例えば、塩酸、硫酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸(例えば、C1−6カルボン酸など)を用いてもよい。これらの酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。上記酸は、触媒として機能してもよい。酸の割合は、2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)(又は(IIa))1重量部に対して、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは1〜12重量部(例えば、5〜10重量部)程度である。 反応は、溶媒の非存在下又は存在下のいずれで行ってもよい。また、前記酸触媒を溶媒として用いてもよい。反応は、通常、溶媒の存在下で行う場合が多い。反応溶媒としては、例えば、反応に対して不活性な溶媒、水、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類;ジエチレンエーテル、THF、セロソルブなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ベンゾフェノンなどのケトン類;DMFなどのアミド類などが挙げられる。これらの反応溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 反応は、加熱下で行うことができ、通常、加熱還流下で行う場合が多い。反応温度は、例えば、30〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。 反応時間は、特に制限されず、基質、酸、溶媒の種類などに応じて、適宜選択でき、例えば、0.5〜4時間、好ましくは1〜3.5時間、さらに好ましくは1.5〜3時間程度の範囲から適宜選択できる。 反応は、大気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)の流通又は雰囲気下で行ってもよい。反応は、常圧、減圧又は加圧下のいずれで行ってもよい。 上記のような反応工程IIにより得られるベンゾチアゾール化合物(III)は、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法(前記反応工程Iの項で例示の方法など)により、分離又は精製してもよい。また、ベンゾチアゾール化合物(III)は分離又は精製処理を施すことなく、次工程IIIに供してもよい。 (反応工程III) 反応工程IIIでは、ベンゾチアゾール化合物(III)に塩基を作用させて、チアゾール環を開環させることにより、2−アミノチオフェノール化合物(IV)を生成させる。 基質であるベンゾチアゾール化合物(III)(以下、2−ヒドロベンゾチアゾール化合物と称する場合がある)としては、前記反応工程IIの項で例示した2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)又は(IIa)、さらには前記反応工程Iの項で例示した芳香族アミン化合物(I)又は(Ia)に対応する化合物が例示できる。2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(III)は、通常、一種で使用する場合が多いが、必要であれば二種以上組み合わせて用いてもよい。好ましい2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(III)としては、例えば、下記式(IIIa)で表わされる化合物などが挙げられる。(式中、X2〜X4は前記に同じ) 化合物(IIIa)の具体例としては、例えば、4−フルオロベンゾチアゾール、5−フルオロベンゾチアゾール、7−フルオロベンゾチアゾール、4,5−ジフルオロベンゾチアゾール、4,7−ジフルオロベンゾチアゾール、5,7−ジフルオロベンゾチアゾール、4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールなどのフルオロベンゾチアゾール;これらのフルオロベンゾチアゾールに対応するクロロベンゾチアゾール、ブロモベンゾチアゾール、ヨードベンゾチアゾールなどが挙げられる。 前記2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(III)(化合物(IIIa)も含む)に作用させる塩基としては、弱塩基及び強塩基のいずれであってもよく、例えば、無機塩基[アンモニア;金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物;水酸化銅などの遷移金属水酸化物;水酸化アルミニウムなどの周期表第13族金属の水酸化物など)など]などが挙げられる。これらの塩基は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 塩基の割合は、2−ヒドロベンゾチアゾール化合物1当量(1mol)に対して、例えば、0.01〜100当量、好ましくは0.5〜10当量、さらに好ましくは1〜3当量程度である。 反応は、通常、溶媒の存在下で行われる場合が多い。反応溶媒としては、前記反応工程IIの項で例示した溶媒と同様の溶媒が使用できる。好ましい溶媒は、例えば、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類などである。また、上記反応工程IIで用いた反応混合物をそのまま反応工程IIIに供することにより、反応工程IIの反応溶媒をIIIにおける反応溶媒として用いてもよい。 反応は、加熱下で行うことができ、通常、加熱還流下で行う場合が多い。反応温度は、例えば、0〜300℃、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜120℃程度であってもよい。 反応時間は、特に制限されず、基質、塩基、溶媒の種類などに応じて、適宜選択でき、例えば、10分〜3.5時間、好ましくは20分〜2.5時間、さらに好ましくは0.5〜2時間程度の範囲から適宜選択できる。 反応は、大気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)の流通又は雰囲気下で行ってもよい。反応は、常圧下で行ってもよい。 2−アミノチオフェノール化合物(IV)としては、前記反応工程IIIの項で例示した2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(III)又は(IIIa)、さらには、前記反応工程IIの項で例示した2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)又は(IIa)及び前記反応工程Iの項で例示した芳香族アミン化合物(I)又は(Ia)に対応する化合物が例示できる。 好ましい2−アミノチオフェノール化合物(IV)としては、例えば、下記式(IVa)で表わされる化合物などが挙げられる。(式中、X2〜X4は前記に同じ) 2−アミノチオフェノール化合物(IVa)の具体例としては、例えば、6−フルオロ−チオフェノール、2−アミノ−4−フルオロチオフェノール、2−アミノ−3−フルオロチオフェノール、2−アミノ−4,6−ジフルオロチオフェノール、2−アミノ−3,6−ジフルオロチオフェノール、2−アミノ−3,4−ジフルオロチオフェノール、2−アミノ−3,4,6−トリフルオロチオフェノールなどのフルオロ−2−アミノチオフェノール;これらのフルオロ−2−アミノチオフェノールに対応するクロロ−2−アミノチオフェノール、ブロモ−2−アミノチオフェノール、ヨード−2−アミノチオフェノールなどが挙げられる。 2−アミノチオフェノール化合物(IV)は、分子中のアミノ基を塩の形態に変換させて用いてもよい。このような2−アミノチオフェノール化合物の塩は、例えば、前記化合物(IV)に酸を作用させることにより生成できる。酸としては、化合物(IV)の塩を形成できればよく、例えば、ギ酸、酢酸などのカルボン酸(有機カルボン酸など)の他、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)などが挙げられる。これらの酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの酸のうち、通常、無機酸を用いる場合が多い。 酸の割合は、2−アミノチオフェノール化合物のアミノ基1当量に対して、例えば、0.5〜3当量、好ましくは0.7〜2当量、さらに好ましくは0.9〜1.5当量程度であってもよい。 上記のような反応工程IIIにより得られる2−アミノチオフェノール化合物(IV)(化合物(IVa)、及び化合物(IV)又は(IVa)の塩も含む)は、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法(前記反応工程Iの項で例示の方法など)により、分離又は精製してもよい。また、2−アミノチオフェノール(IV) (化合物(IVa)、及び化合物(IV)又は(IVa)の塩も含む)は分離又は精製処理を施すことなく、使用してもよい(例えば、次工程などに供してもよい)。なお、酸により化合物(IV)を塩に変換すると、より容易に化合物(IV)を分離又は精製することができる。 このような方法により得られる2−アミノチオフェノール化合物(IV)は、アルドースリダクターゼ阻害剤などとしても有用な2−置換ベンゾチアゾール化合物の原料(又は中間体)として有用である。 2−アミノチオフェノール化合物(IV)は、ニトリル化合物R5−CN (V)(式中、R5は有機基を示す)と反応させることによりニトリル基に結合した有機基R5をベンゾチアゾール化合物の骨格に導入することができる。 すなわち、ニトリル化合物(V)のニトリル基と、2−アミノチオフェノール化合物(IV)又はその塩のアミノ基(又はその塩)及びメルカプト基との閉環反応により、チアゾール環が形成され、ニトリル化合物(V)のニトリル基に結合した有機基R5がチアゾール環の2位に導入されることにより、ベンゾチアゾール化合物の2−位に種々の有機基(又は官能基)が導入された2−置換ベンゾチアゾール化合物を製造できる。以下に、ニトリル化合物の基R5が3−シアノメチル−5−メチルベンジル基である場合の上記反応の反応工程式の具体例を示す。(式中、R1〜R4は前記に同じ) (反応工程IV) 反応工程IVにおいては、前記2−アミノチオフェノール化合物(IV)(上記反応工程式では、化合物(IV)の塩酸塩を記載している)と前記式(Va)で表される1,3−ジ(シアノメチル)−5−メチルベンゼンとを、加熱することにより、閉環反応が起こり、2−アミノチオフェノール化合物のアミノ基及びメルカプト基と、ニトリル化合物(V)のニトリル基との間でチアゾール環が形成されることにより、2−(3’−シアノメチル−5’−メチルベンジル)ベンゾイミダール化合物(VI)が得られる。 反応工程IVは、エタノールを用いる場合に限らず、反応溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、反応溶媒の存在下で行う場合が多い。反応溶媒は、反応に不活性な限り特に制限されず、前記反応工程IIの工程で例示の反応溶媒が使用できる。反応溶媒のうち、特にエタノール、エチレングリコールなどのアルコール類を用いる場合が多い。なお、前記反応工程IIIから連続して反応を行う場合には、反応工程IIIで得られる反応混合物を、必要により、前記酸で塩変換処理を行った後、そのまま反応工程IVに供することにより、反応工程IIIの反応溶媒をそのまま反応工程IVの反応溶媒として用いてもよい。 反応溶媒の割合は、例えば、基質であるアミノチオフェノール化合物(IV)1重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜30重量部程度であってもよい。 反応温度は、基質であるアミノチオフェノール化合物、ニトリル化合物、及び反応溶媒の種類などに応じて、適宜選択でき、例えば、100〜250℃、好ましくは120〜200℃、さらに好ましくは140〜190℃程度であってもよい。また、還流下(溶媒などの還流温度で)で加熱することにより反応を行ってもよい。 ニトリル化合物(V)としては、前記1,3−ジ(シアノメチル)−5−メチルベンゼン(Va)に限らず、最終生成物の構造に応じて、種々の化合物が使用できる。このようなニトリル化合物としては、例えば、ヘテロ環、芳香族環、エステル結合などの有機基又は官能基を有するニトリル化合物などが挙げられる。なお、最終生成物がカルボキシル基を有する化合物である場合、ニトリル化合物(V)としてカルボキシル基を有するニトリル化合物を用いると、カルボキシル基が化合物(IV)のアミノ基及び/又はメルカプト基と反応する場合があるので、化合物(V)としては、後処理又は次工程によりカルボキシル基に変換可能な基(ニトリル基、エステル結合(エステル基)など)を有する化合物を用いる場合が多い。 ニトリル化合物(V)の具体例としては、例えば、ヘテロ環を有する化合物[例えば、1,3−ジ(シアノメチル)−1,4−ベンゾチアジンなどの複数(例えば、2〜4個)のニトリル基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)を有するベンゾチアジン;1−シアノメチル−3−エトキシカルボニルメチル−1,4−ベンゾチアジン、1−シアノメチル−3−エトキシカルボニルメチル−1,4−ベンゾチアジン−2−オン、1−シアノメチル−2−チオ−3−エトキシカルボニルメチル−1,4−ベンゾチアジンなどのシアノ基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)とアルコキシカルボニルアルキル基(エトキシカルボニルメチル、t−ブトキシカルボニルメチル基などの(C1−4アルコキシ−カルボニル)−C1−4アルキル基など)とを有するベンゾチアジン化合物;1,3−ジ(シアノメチル)−フタラジン−4−オンなどの複数(例えば、2〜4個)のニトリル基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)を有するフタラジン;1−シアノメチル−3−エトキシカルボニルメチル−フタラジンなどのシアノ基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)とアルコキシカルボニルアルキル基(エトキシカルボニルメチル、t−ブトキシカルボニルメチル基などの(C1−4アルコキシ−カルボニル)−C1−4アルキル基など)とを有するフタラジン化合物;1,3−ジ(シアノメチル)インドールなどの複数(例えば、2〜4個)のニトリル基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)を有するインドール;3−シアノメチル−1−エトキシカルボニルメチル−インドールなどのシアノ基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)とアルコキシカルボニルアルキル基(エトキシカルボニルメチル、t−ブトキシカルボニルメチル基などの(C1−4アルコキシ−カルボニル)−C1−4アルキル基など)とを有するインドール化合物など]、芳香族環を有する化合物[例えば、ジシアノメチルベンゼンなどの複数(例えば、2〜4個)のニトリル基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)を有するC6−10アレーン化合物;1−シアノメチル−3−エトキシカルボニルメチルベンゼンなどのシアノ基(シアノメチル基などのシアノC1−4アルキル基など)とアルコキシカルボニルアルキル基(エトキシカルボニルメチル、t−ブトキシカルボニルメチル基などの(C1−4アルコキシ−カルボニル)−C1−4アルキル基など)とを有するC6−10アレーン化合物など]、ポリシアノアルカン(ジシアノブタンなどのジ乃至トリシアノ−C1−10アルカンなど)、アルコキシカルボニルアルカンニトリル(エトキシカルボニルペンタンニトリルなどの(C1−4アルコキシ−カルボニル)−C2−10アルカンニトリルなど)などが挙げられる。なお、これらのニトリル化合物のうち、ベンゼン環の骨格を有する化合物は、ベンゼン環上に置換基(フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基などのC1−6アルキル基;トリフルオロメチル基などのハロC1−4アルキル基;エトキシカルボニルメチル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル−C1−4アルキル基;メトキシ基などのC1−4アルコキシ基;フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)を有していてもよい。これらのニトリル化合物(V)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 アミノチオフェノール化合物(IV)とニトリル化合物(V)(化合物(Va)を含む)の割合(モル比)は、例えば、化合物(IV)/化合物(V)=0.5/1〜10/1、好ましくは0.7/1〜5/1、さらに好ましくは0.9/1〜3/1程度であってもよい。 反応時間は、特に制限されず、基質、溶媒の種類などに応じて、適宜選択でき、例えば、10分〜3.5時間、好ましくは20分〜2.5時間、さらに好ましくは0.5〜2時間程度の範囲から適宜選択できる。 反応は、大気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)の流通又は雰囲気下で行ってもよい。反応は、常圧、減圧又は加圧下のいずれで行ってもよい。 上記のような反応工程IVにより得られる化合物(VI)は、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法(前記反応工程Iの項で例示の方法など)により、分離又は精製してもよい。また、化合物(VI)は分離又は精製処理を施すことなく、使用してもよい(例えば、次工程などに供してもよい)。 なお、上記ニトリル化合物(V)としては、公知又は慣用の方法により得られるニトリル化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。なお、ニトリル化合物(V)のうち、1,3−ジ(シアノメチル)−5−メチルベンゼン(Va)は、例えば、1,3,5−トリメチルベンゼンから、1,3−ジ(ブロモメチル)−5−メチルベンゼンを経て、製造できる。この反応の詳細については、例えば、特開昭64−19067号公報などを参照できる。 また、前記ニトリル化合物(V)のうち、3−シアノメチル−1−エトキシカルボニルメチル−インドールは、3−シアノメチルインドールを、水素化ナトリウムの存在下、エチルブロモアセテートと反応させることにより得ることができる。この反応の詳細は、例えば、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),48(9),3141-3152(2005)(スキーム2)などを参照できる。また、その他のニトリル化合物(V)の製造方法についても、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),48(9),3141-3152(2005)、ケミカル アンド ファーマシューティカル ブルティン(Chemical and Pharmaceutical Bulletin),42(6),1264-1271(1994)、特開平8−208631号公報、及びこれらの文献に引用されている文献などを参照できる。 (反応工程V) 反応工程IVにより得られた化合物(VI)が、分子中にシアノ基(−CN)を有する場合、反応工程Vにおいて化合物(VI)に酸を作用させることにより、シアノ基をさらにカルボキシル基に変換することができる。 反応工程Vにおいて、シアノ基からカルボキシル基への変換に使用する酸としては、有機酸(ギ酸、酢酸などのカルボン酸など)、無機酸(硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など)などが挙げられる。反応工程Vでは、前記酸として、通常、無機酸を使用する場合が多い。 酸の使用量は、例えば、化合物(VI)のシアノ基1当量に対して、0.5〜10当量、好ましくは0.7〜5当量、さらに好ましくは0.9〜3当量程度であってもよい。 反応工程Vは、反応溶媒の非存在下で行ってもよく、反応溶媒の存在下で行ってもよい。反応溶媒としては、例えば、水、エーテル類(ジエチルエーテル、THFなど)、ケトン類(アセトン、ベンゾフェノンなど)、炭化水素類(ベンゼン、トルエンなど)などが挙げられる。これらの反応溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、反応工程Vでは、前記酸を反応溶媒として用いてもよく、酸と前記例示の反応溶媒とを組み合わせて反応溶媒として用いてもよい。さらに、反応工程IVからの反応混合物をそのまま用いることにより、反応工程IVにおける反応溶媒をそのまま反応工程Vにおける反応溶媒として使用してもよい。 上記のような反応工程Vにより得られる化合物(VII)は、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法(前記反応工程Iの項で例示の方法など)により、分離又は精製してもよい。 なお、反応工程Vでは、シアノ基を有する化合物(VI)からカルボキシル基を有する化合物(VII)への反応の例を挙げたが、化合物(VI)がエトキシカルボニルメチル基など、エステル結合(アルコキシカルボニルアルキル基など)を有する場合、アルコキシカルボニル部位のアルキル基を、慣用の脱離反応により脱離させることにより、カルボキシル基を有する化合物(VII)を得ることもできる。脱離反応は、特に制限されず、例えば、塩基(前記例示の塩基、特に、水酸化ナトリウムなどの無機塩基など)、又はハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素など)などを、前記エステル結合を有する化合物(VI)に作用させることにより行うことができる。 好ましい態様では、前記化合物(IV)として前記化合物(IVa)を用いるのが好ましい。このような反応は、下記反応工程式で記載することができる。なお、各反応は、前記化合物(IV)から化合物(VI)を経て、前記化合物(VII)に至る反応に準じる。(式中、X2〜X4は前記に同じ) 上記の式(VIIa)において、X2〜X4がいずれもフッ素原子である化合物は、3−[(4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾール−2−イル)メチル]インドール−N−酢酸であり、リドレスタットとして、アルドースリダクターゼ阻害剤として有用であることが知られている。また、X2〜X4がいずれもフッ素原子である式(VIIa)の化合物と、前記化合物(Va)に代えて、化合物(V)のうち、1,3−ジ(シアノメチル)−1,4−ベンゾチアジンとを用い、上記反応工程式に準じて反応を行うと、1−[(4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾール−2−イル)メチル]−3−カルボキシ−1,4−ベンゾチアジンが得られ、この化合物もアルドースリダクターゼ阻害剤として有用であることが知られている。 本発明には、このような2−位に有機基R5を有するベンゾチアゾール化合物、及びその原料(又は中間体)である2−アミノチオフェノール化合物を製造するのに有用な新規ベンゾチアゾール化合物(2−ヒドロベンゾチアゾール化合物、及び2−メルカプトベンゾチアゾール化合物)も含まれる。このような新規ベンゾチアゾール化合物は、前記2−位に有機基R5を有するベンゾチアゾール化合物及び2−アミノチオフェノール化合物の原料(又は中間体)として有用であり、下記式で表すことができる。(式中、Yは水素原子又はメルカプト基を示し、X2〜X4は前記に同じ) なお、この式では、X2〜X4のうち少なくとも1つがハロゲン原子である。このような化合物としては、前記2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(IIa)の項で例示したフルオロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロモ−2−メルカプトベンゾチアゾール、ヨード−2−メルカプトベンゾチアゾール;前記2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(IIIa)の項で例示したフルオロベンゾチアゾール、クロロベンゾチアゾール、ブロモベンゾチアゾール、ヨードベンゾチアゾールなどが挙げられる。これらのうち、特に、X2〜X4のうち複数個がハロゲン原子である化合物、特に、X2〜X4の全てがハロゲン原子である化合物などが好ましい。前記ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などであってもよいが、特にX2〜X4のうち少なくとも1つがフッ素原子を含むのが好ましく、さらにX2〜X4のうち複数個がフッ素原子であるのが好ましく、特にX2〜X4の全てがフッ素原子であるのが好ましい。 本発明は、アルドースリダクターゼ阻害剤などとしても知られる2−位に有機基を有するベンゾチアゾール化合物の製造における原料又は中間体として有用なベンゾチアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール化合物、2−ヒドロベンゾチアゾール化合物)、及びこのベンゾチアゾール化合物から得られる2−アミノチオフェノール化合物を効率よく製造するのに有用である。特に、本発明では、従来の方法に比べて、工程数を低減できるので、2−アミノチオフェノール化合物までの収率も高く、ひいては、2−位に有機基を有するベンゾチアゾール化合物までの収率を向上又は改善することもできる。また、本発明の方法では、製造工程の短縮も可能であることに加え、温和な条件で前記ベンゾチアゾール化合物を製造できることから、従来の方法に比べて、製造コスト及び製造効率も改善でき、工業的な製造において、特に有用である。 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 実施例1 (1)反応工程I:2−メルカプト−4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールの製造 2,3,5,6−テトラフルオロアニリン(10.0g,60.6mmol)及びジチオ炭酸O−エチルカリウム(キサントゲン酸カリウム,29.15g,131.8mmol)を、DMF(100ml)に添加して、加熱し、還流下、2時間反応させた。得られた反応混合物を、室温まで冷却し、反応混合物に水(400ml)を加えて希釈した。この希釈物に、さらに濃塩酸(20ml)を添加し、析出した沈殿物を濾取した。濾取した沈殿物を水洗(200ml)した後、吸引濾過により水分を除き、2−メルカプト−4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールを得た。なお、生成物の薄層クロマトグラフィー(TLC)におけるRf値は、展開溶媒(CH2Cl2:CH3OH(容積比)=9:1)を用いたとき、0.51であった。 得られた2−メルカプト−4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールの1H−NMRは以下の通りである。1H−NMR(CDCl3):δ 6.69−6.79(1H,m),12.36(1H,br)。 (2)反応工程II:4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールの製造 上記(1)の工程で得られた生成物(全量)を用いて、4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールを製造した。すなわち、前記2−メルカプト−4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールに、酢酸(120ml)、エタノール(30ml)、水(30ml)及び還元鉄(13.4g)を加えて、油浴上(油浴温度120℃)で加熱し、還流下、還流開始から2時間半かけて反応を行った。得られた反応混合物を、水(400ml)で希釈し、さらに塩化メチレン(200ml)を加えて混合し、セライト(珪藻土)上で吸引濾過した。濾過物をさらに塩化メチレンで洗浄し、塩化メチレン相を集めて、さらに水洗した。得られた有機相を、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、さらに溶媒を除去し、無色粉末の4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾール(収量10.0g,2,3,5,6−テトラフルオロアニリンからの収率88%)を得た。なお、この化合物は、昇華性を有するため、減圧には注意を要する。また、4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールのTLCにおけるRf値は、展開溶媒(ヘキサン:酢酸エチル(容積比)=85:15)を用いたとき、0.33であった。 得られた4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾールの物性は以下の通りである。1H−NMR(CDCl3):δ 7.08−7.17(1H,m)、9.06(1H,s)MS m/z:190[M+1]+,179融点:120〜124℃。 実施例2(反応工程III:2−アミノ−3,4,6−トリフルオロチオフェノール塩酸塩の製造) 実施例1で得られた4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾール(9.5g,50mmol)に、エタノール(150ml)及び2規定(2mol/l)水酸化ナトリウム(50ml)を加え、加熱し、還流下で100分間反応を行った。得られた反応液を、約3分の1の容積になるまで減圧濃縮し、この濃縮物に水を添加して希釈し、さらに濃塩酸(50ml)を添加して酸性にした。この酸性混合物に、塩化メチレンを用いて抽出処理を行い(50ml×4回)、得られた有機相を合わせて、水洗し、さらに無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた有機相を容積が約4分の1になるまで減圧濃縮し、この濃縮物に10重量%塩化水素−メタノール溶液(40ml)を加えて混合し、さらに溶媒を除去して淡黄色粉末の2−アミノ−3,4,6−トリフルオロチオフェノール塩酸塩(10.4g,収率95%(全工程収率84%))を得た。なお、この化合物も昇華性を有していた。2−アミノ−3,4,6−トリフルオロチオフェノール塩酸塩のTLCにおけるRf値は、展開溶媒(ヘキサン:酢酸エチル(容積比)=7:3)を用いたとき、0.61であった。 得られた2−アミノ−3,4,6−トリフルオロチオフェノール塩酸塩の物性は以下の通りである。1H−NMR(CDCl3−D2O):δ 6.31−6.42(1H,m)融点:125〜126℃。 下記式(I)(式中、Xはハロゲン原子、ニトロ基、アルキルスルホニルオキシ基、又はハロアルキルスルホニルオキシ基を示す。R1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を示し、基R1〜R4のうち、2又は3個がフッ素原子であり、残余が水素原子である)で表される芳香族アミン化合物と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させて、下記式(II)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール化合物を生成させ、この2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)を、さらに酢酸の存在下、還元鉄との反応に供して、下記式(III)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表される2−ヒドロベンゾチアゾール化合物を生成させるベンゾチアゾール化合物の製造方法。 Xがハロゲン原子である芳香族アミン化合物(I)と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させる請求項1記載の製造方法。 芳香族アミン化合物(I)として、R2が水素原子であり、R1、R3及びR4がフッ素原子である化合物を用いる請求項1又は2記載の製造方法。 下記式(I)(式中、Xはハロゲン原子、ニトロ基、アルキルスルホニルオキシ基、又はハロアルキルスルホニルオキシ基を示す。R1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、それぞれ同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を示し、基R1〜R4のうち、2又は3個がフッ素原子であり、残余が水素原子である)で表される芳香族アミン化合物と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させて、下記式(II)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール化合物を生成させ、この2−メルカプトベンゾチアゾール化合物(II)をさらに酢酸の存在下、還元鉄との反応に供して、下記式(III)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表される2−ヒドロベンゾチアゾール化合物を生成させ、この2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(III)をさらに塩基と反応させて、下記式(IV)(式中、R1〜R4は前記に同じ)で表されるアミノチオフェノール化合物又はその塩を製造する方法。 2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(III)と塩基との反応において、前記塩基として、無機塩基を用いる請求項4記載の製造方法。 下記式(Ia)(式中、X1はハロゲン原子を示し、X2〜X4はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はフッ素原子を示す。X2〜X4のうち2又は3個がフッ素原子であり、残余が水素原子である)で表される芳香族アミン化合物と、ジチオ炭酸O−アルキル塩とを反応させて、下記式(IIa)(式中、X2〜X4は前記に同じ)で表される2−メルカプトベンゾチアゾール化合物を生成させ、この2−メルカプトベンゾチアゾール化合物と、還元鉄とを酢酸の存在下、反応させて、下記式(IIIa)(式中、X2〜X4は前記に同じ)で表される2−ヒドロベンゾチアゾール化合物を生成させ、この2−ヒドロベンゾチアゾール化合物(IIIa)と無機塩基とを反応させて、下記式(IVa)(式中、X2〜X4は前記に同じ)で表されるアミノチオフェノール化合物又はその塩を製造する請求項4記載の製造方法。