タイトル: | 公表特許公報(A)_エスシタロプラムおよびブプロピオンの低用量の併用を用いる中枢神経系障害の治療方法 |
出願番号: | 2008535806 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/343,A61K 31/135,A61P 43/00,A61P 25/00,A61P 25/24,A61P 25/22,A61P 25/20,A61P 15/08 |
ジョナス・ジェフリー ボーズ・アンジャナ ツァイ・ジョイス JP 2009511606 公表特許公報(A) 20090319 2008535806 20061016 エスシタロプラムおよびブプロピオンの低用量の併用を用いる中枢神経系障害の治療方法 ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット 591143065 江崎 光史 100069556 奥村 義道 100093919 鍛冶澤 實 100111486 ジョナス・ジェフリー ボーズ・アンジャナ ツァイ・ジョイス US 60/727,276 20051014 US 60/810,882 20060602 US 60/804,086 20060606 A61K 31/343 20060101AFI20090220BHJP A61K 31/135 20060101ALI20090220BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/24 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/22 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/20 20060101ALI20090220BHJP A61P 15/08 20060101ALI20090220BHJP JPA61K31/343A61K31/135A61P43/00 121A61P25/00 101A61P25/24A61P25/22A61P25/20A61P15/08A61P43/00 111 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2006060006 20061016 WO2007053796 20070510 42 20080612 4C086 4C206 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA05 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA06 4C086NA14 4C086ZA03 4C086ZA05 4C086ZA12 4C086ZA81 4C086ZC02 4C086ZC75 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA08 4C206MA03 4C206MA04 4C206NA05 4C206NA06 4C206NA14 4C206ZA03 4C206ZA05 4C206ZA12 4C206ZA81 4C206ZC02 4C206ZC75 本発明は、エスシタロプラムおよびブプロピオンの低用量の併用を用いる中枢神経系障害、例えば気分障害(例えば大うつ病性障害)または不安障害(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害または恐慌性障害)の治療方法に関する。 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(以下SSRIと呼ぶ)、例えばラセミ体シタロプラムおよびエスシタロプラムは、主に、三環系抗うつ剤およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)と比較して優れた有効性のために、うつ病の治療における第一選択の治療になっている。SSRIは、シナプスでの神経細胞による神経伝達物質セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン)の再取り込みを阻害することによって機能する。結果として、セロトニンがシナプス間隙に残り、受容細胞の受容体を刺激する機会を有することになる。 通常、SSRI治療の開始と観察される治療効果との間には遅れ(例えば2週間)が存在する。遅れの神経学的根拠は以下のとおりである: SSRIの投与が直ちにシナプスのセロトニンを増加させ、抑制性5-HT1A自己受容体を刺激し、同時に5-HTニューロンの自然発火を低下させる。継続的なSSRI投与の後には、5-HT1A自己受容体が脱感作し、5-HTニューロンの通常の発火に戻る。 エスシタロプラムはシタロプラムのS-エナンチオマーであり、以下の構造:を有する。 エスシタロプラムの製造方法は、例えば特許文献1および特許文献2および特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6に開示されており、これらは全て参照することによって本明細書に組み込まれるものである。 参照することによって本明細書に組み込まれる特許文献7および特許文献8には、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、急性ストレス障害、摂食障害(例えば、過食症、食欲不振および肥満)、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認知障害、衝動調節障害、注意欠陥過活動性障害および薬物乱用を含む種々の精神障害の治療にエスシタロプラムを使用する方法が開示されている。特許文献8ではまた、慣用のSSRIでの初期治療に応答しなかった患者、特に慣用のSSRIでの初期治療に応答しなかった大うつ病性障害を有する患者の治療にエスシタロプラムを使用する方法が開示されている。 大うつ病性障害および全般性不安障害の治療用に、シュウ酸エスシタロプラムが最近米国でLexapro(R)として上市されている。Lexapro(R)は、5、10および20 mgのエスシタロプラム即放性錠剤(シュウ酸塩として)で、および5 mg/mLの経口液剤で入手することができる。 溶融造粒法によって製造されたシュウ酸エスシタロプラムの放出調節製剤が特許文献9に開示されている。特定の溶出プロファイルを有するSSRI、例えば臭化水素酸シタロプラムおよびシュウ酸エスシタロプラムの放出調節製剤が特許文献10に開示されている。 エスシタロプラムに伴う副作用には、悪心、不眠、傾眠、発汗過多、疲労および性機能障害(射精障害、無オルガズム症および性欲減退を含むがこれらに限定はされない)が含まれる。 塩酸ブプロピオンは、大うつ病性障害の治療用にWellbutrin(R)、Wellbutrin SR (R)およびWellbutrin XL(R)として、そして禁煙治療の補助剤としてZyban(R)が近年上市されている。ブプロピオンは、他の近年入手可能な抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤)とは化学的に関連性の無いアミノケトン誘導体である。抗うつ作用および禁煙効果の神経化学的メカニズムは未知であるが、ノルアドレナリン作動性経路および/またはドーパミン作動性効果が主に関連していると考えられる。ブプロピオンはモノアミンオキシダーゼを阻害せず、そしてセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込みの弱い遮断薬である。 Wellbutrin(R) (即放性塩酸ブプロピオン製剤)は、1日に3回、好ましくは連続投与間に少なくとも6時間を有して投与される75および100 mg錠剤として供給されている。塩酸ブプロピオンの放出制御製剤も開発されている。 例えば、特許文献11には、塩酸ブプロピオンコアならびに水不溶性、水透過性フィルム形成コーティングおよび粒状の水溶性コア形成材料からなるコーティングを含む放出制御ブプロピオン錠製剤が開示されている。しかしながら、25〜70%のブプロピオンが4時間以内に、40〜90%が6時間以内に放出されるので、通常、1日に少なくとも2回の投薬がなおも必要とされる。 特許文献12、特許文献13および特許文献14には、塩酸ブプロピオンの分解を防ぐために安定剤を含有する塩酸ブプロピオン製剤が開示されている。 特許文献15には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する放出制御ブプロピオン錠製剤が開示されている。ブプロピオンの半分以上が好ましくは4時間で蒸留水に放出される。この速い放出速度のために、この製剤は通常1日に多数回投与される。 特許文献16および特許文献17には、安定剤および孔形成剤を含まない塩酸ブプロピオンの放出制御錠が開示されている。この錠剤は、塩酸ブプロピオン、結合剤、滑沢剤、および水不溶性かつ水透過性フィルム形成ポリマー、可塑剤および水溶性ポリマーから実質的になるコーティングから実質的になるコアからなる。 特許文献18および特許文献19および特許文献20には、塩酸ブプロピオンのコートペレットを含む1日1回用の塩酸ブプロピオン製剤が開示されている。 非特許文献1では、抗うつ薬の即放性製剤と放出制御製剤との臨床試験結果が、薬剤投与中止の原因となる悪心に関して比較されている。著者は「より安定な薬物動態プロファイルが、一部の新しい放出制御抗うつ薬を用いた場合の悪心の発生低下の原因であり得る」が「関連性は証明されていない」と述べている。 非特許文献2(「Gerner I」)によれば、「ブプロピオンは不十分な臨床反応、SSRI性機能障害の治療用の、および併存ADDおよび恐慌性障害もしくは強迫性障害に伴ううつ病用のSSRIに加えられた」。非特許文献3(ブプロピオンSRとベンラファキシン、パロキセチンまたはフルオキセチンとの併用の薬物動態、治療および性機能障害効果)に関する研究);非特許文献4(「Gerner II」);非特許文献5(性機能障害を誘発するセロトニン再取り込み阻害剤(パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンまたはフルボキサミン)に関する解毒薬としてのブプロピオンの使用に関する研究);非特許文献6(SSRI誘発性性的副作用の治療としてのブプロピオン徐放性製剤に関する研究)も参照のこと。しかしながら、ブプロピオンを用いるSSRI誘発性性機能障害の治療が効果的であるとは証明されていない。非特許文献7によると、ブプロピオンを用いる強化療法を比較する二重盲検プラセボ対照試験では、プラセボと同等の性障害の改善が示された。さらに、ブプロピオンでは他の抗うつ薬と比較して発作の発生が増加した。上記Gerner II参照(過去に発作がなかったうつ病患者における、ブプロピオンとフルオキセチンまたはフルボキサミンとの併用後の大運動発作が3件報告されている);上記Gerner Iも参照。 24%〜46%のうつ病患者が、適当な用量および期間の抗うつ薬治療に完全には応答できないことが研究により示されている。非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10では、治療抵抗性のうつ病患者において、単剤療法に切り替えた場合に対してシタロプラムおよびブプロピオンSRの併用を比較した臨床試験の結果が報告されている。著者によれば、「このコホート研究の結果は、シタロプラムおよびブプロピオンSRの併用が単剤療法に切り替えた場合よりも効果的であることを示している」。 特許文献21には、ニューロンのモノアミン再取り込みの阻害によって改善した障害を治療するためのブプロピオン代謝産物が開示されている。ブプロピオン代謝産物は、薬学的活性化合物、例えばSSRI、5-HT3阻害剤またはニコチンとともに補助的に投与することができる。米国再発行特許発明第34,712号明細書米国特許第6,566,540号明細書国際公開第03/000672号パンフレット国際公開第03/006449号パンフレット国際公開第03/051861パンフレット国際公開第2004/083197パンフレット国際公開第01/03694パンフレット国際公開第02/087566パンフレット国際公開第01/22941号パンフレット国際公開第2004/058299号パンフレット米国再発行特許発明第33,994号明細書米国特許第5,358,970号明細書米国特許第5,763,493号明細書米国特許第5,731,000号明細書米国特許第5,427,798号明細書米国特許第6,096,341号明細書米国特許第6,143,327号明細書米国特許第6,096,341号明細書米国特許出願公開第2003/0161874号明細書米国特許出願公開第2005/0147678号明細書米国特許第6,342,496号明細書DeVane, J. Clin. Psychiatry 2003, 64 (suppl. 18):14-19Gerner et al, Biol. Psychiatry, 1998, 43:101S, abstract 336Kennedy et al J. Clin. Psychiatry, 2002, 63: 181-186Gerner et al, Biol. Psychiatry, 1998, 43:99S, abstract 329Ashton et al., J. Clin. Psychiatry, 1998, 59(3):112-115Gitlin et ah, J. Sex & Marital Therapy 2002, 28:131-138Sturpe et al., J. Family Practice August 2002, 51(8):1681Fava et al, Psychiatr. Clin. North Am., 1996, 19(2): 179-200Fava et al, Ann. Clin. Psychiatry, 2003, 15(1): 17-22Lam et al, J. Clin. Psychiatry, 2004, 65:337-340 従来の方法よりも副作用が少なく、治療抵抗性の患者に有効な中枢神経系障害の治療方法が必要とされている。 また、5-HTニューロン活性の初期の減少を示さず、SSRI治療効果の遅れを示さないSSRI治療方法も必要とされている。 本発明は、有効量のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)および有効量のブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)を投与することによって、治療を必要とする患者において中枢神経系(CNS)障害、例えば、気分障害(例えば大うつ病性障害)を治療する方法に関する。1つの好ましい実施態様において、前記方法は、4 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩および150 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の連日投与に関する。1つの実施態様において、エスシタロプラムおよびブプロピオンは、両者を含む単一の経口剤形で共投与(co-administered)または投与することができる。別の関連する実施態様において、エスシタロプラムおよびブプロピオンは、一方または両者を含む2個またはそれ以上の経口剤形で共投与または投与することができる。好ましくは、単一の剤形または別々の剤形は1日に1回の処方であり、すなわち、各剤形の1日に1回の投与で所望のCNS障害の治療には十分である。さらに別の実施態様においては、エスシタロプラムおよびブプロピオンを順次投与することができる。エスシタロプラムおよびブプロピオンの低用量の併用は、中枢神経系障害、例えば大うつ病性障害および不安障害の治療における有効性を、従来の製剤より少ない副作用で改善する。 治療できるCNS障害の例には、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、急性ストレス障害、摂食障害(例えば過食症、食欲不振および肥満)、恐怖症、気分変調、月経前症候群、月経前不快気分障害、認知障害、衝動調節障害、注意欠陥過活動性障害および薬物乱用が含まれるが、これらに限定はされない。エスシタロプラムおよびブプロピオンの併用は、慣用のSSRIを用いた初期治療に応答しなかった患者、特にSSRIを用いた初期治療に応答しなかった大うつ病性障害の患者を効果的に治療することができる。前記併用はさらに、治療または軽減を必要とする患者における自殺念慮を治療または軽減することができ、脳卒中後の無障害生存を改善する。 本発明の別の実施態様は、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩との併用以外の抗うつ薬を用いた治療を原因とする、悪心、不眠、傾眠、発汗過多、疲労またはこれらの組み合わせを患っている患者を治療する方法である。該方法には、(a)前記抗うつ薬での治療を中止すること;および(b)有効量のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩および有効量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の共投与によって患者を治療すること、が含まれる。1つの実施態様において、抗うつ薬はSSRI、例えばシュウ酸エスシタロプラム(例えば、即放性シュウ酸エスシタロプラム製剤)である。 さらに別の実施態様は、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩との併用以外の抗うつ薬を用いた治療を原因とする性機能障害を患っている患者の性機能障害を治療する方法である。性機能障害は射精障害、無オルガズム症および/または性欲減退であり得る。該方法には、(a)前記抗うつ薬での治療を中止すること;および(b)ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩およびエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の共投与によって患者を治療すること、が含まれる。1つの実施態様において、抗うつ薬はSSRI、例えばシュウ酸エスシタロプラム(例えば、即放性シュウ酸エスシタロプラム製剤)である。 さらに別の実施態様は、有効量のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩および有効量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の共投与によって、治療抵抗性のうつ病を患っている患者を治療する方法である。 別の実施態様において、本発明は、エスシタロプラムをブプロピオンとともに共投与することを含む、エスシタロプラムの投与に続く(すなわち、エスシタロプラムでの初期治療後の)治療効果の遅れを減少させる方法を提供する。該方法は、好ましくは、SSRIおよびブプロピオンの哺乳類、最も好ましくはヒトへの共投与によって実施される。好ましくは、治療はこの共投与処方計画で開始される。 <図面の簡単な説明> 図1は、4つの治療群(プラセボ、150 mgブプロピオン、4 mgエスシタロプラム、ならびに150 mgブプロピオンおよび4 mgエスシタロプラムの併用)のそれぞれに関してMADRSによって測定した場合の、8週の治療の間のベースラインからの平均変化を示す。 図2は、4つの治療群(プラセボ、150 mgブプロピオン、4 mgエスシタロプラム、ならびに150 mgブプロピオンおよび4 mgエスシタロプラムの併用)のそれぞれに関してHAMD24によって測定した場合の、8週の治療の間のベースラインからの平均変化を示す。 図3は、4つの治療群(プラセボ、150 mgブプロピオン、4 mgエスシタロプラム、ならびに150 mgブプロピオンおよび4 mgエスシタロプラムの併用)のそれぞれに関してHAMD17によって測定した場合の、8週の治療の間のベースラインからの平均変化を示す。 <発明の詳細な説明> 定義 本明細書において使用される場合に、「エスシタロプラム」という語句には、好ましくはそのR-エナンチオマーを3、2、1、0.5または0.2重量%未満(l-[3-(ジメチル-アミノ)プロピル]-l-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリルの全重量100%を基準として)含有するl-[3-(ジメチル-アミノ)プロピル]-l-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリル、すなわち、97、98、99、99.5または99.8%(重量%)のエナンチオマー純度を有するS-シタロプラムが含まれる。エスシタロプラムの薬学的に許容される塩には、限定はされないが、有機および無機酸により形成される酸付加塩が含まれる。好適な有機酸の例としては、限定はされないが、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、シュウ酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、桂皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸およびテオフィリン酢酸、および8-ハロテオフィリン、例えば8-ブロモテオフィリンが挙げられる。好適な無機酸の例としては、限定はされないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸が挙げられる。エスシタロプラムの好ましい薬学的に許容される塩には、限定はされないが、シュウ酸エスシタロプラムおよび臭化水素酸エスシタロプラムが含まれる。「エスシタロプラム」という語句にはまた、エスシタロプラムおよびその薬学的に許容される塩の多形体、水和物、溶媒化合物および非晶形が含まれる。エスシタロプラムおよびその薬学的に許容される塩は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6(これらはそれぞれ参照することによって本明細書に組み込まれる)に記載されるように製造することができる。例えば、国際公開第03/011278号パンフレット、および米国特許出願公開第2004/0167209号明細書、および米国特許出願第10/851,763号明細書および米国特許出願第10/948,594号明細書(これらはそれぞれ参照することによって本明細書に組み込まれる)に記載されているようなシュウ酸エスシタロプラムおよび臭化水素酸エスシタロプラムの結晶もまた使用することができる。本明細書で表される比較用のエスシタロプラム「即放性」錠剤は、好ましくは米国食品医薬品局に承認された等量(シュウ酸塩としての5、10および20 mgのエスシタロプラム)の新薬申請番号21-323の錠剤である。 特に言及しない限り、エスシタロプラム塩の重量値は全て、エスシタロプラム遊離塩基に相当する重量として示す。例えば、4 mgのシュウ酸エスシタロプラムは、4 mgエスシタロプラム遊離塩基に相当するモルのシュウ酸エスシタロプラムの量を表す。 「ブプロピオン」という語句は、(±)-l-(3-クロロフェニル)-2-[(l,l-ジメチルエチル)アミノ]-l-プロパノンを表す。ブプロピオンの薬学的に許容される塩には、限定はされないが、有機または無機酸により形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、メシル酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩が含まれる。「ブプロピオン」という語句にはまた、ブプロピオンおよびその薬学的に許容される塩の多形体、水和物、溶媒化合物および非晶形が含まれる。好ましいブプロピオンの薬学的に許容される塩は塩酸ブプロピオンである。本明細書で表される比較用のブプロピオン「即放性」錠剤は、好ましくは等量(50、75および100 mgの塩酸ブプロピオン)の新薬申請番号018-644の錠剤である。 「有効量」は、状態、障害または状況を治療するために哺乳類に投与する場合に、このような治療を達成するのに十分な、活性成分および活性成分の組み合わせの量を意味する。「有効量」は、活性成分、治療される状態、障害または状況およびその重篤度、ならびに治療される哺乳類の年齢、体重、身体状態および応答性に応じて変わり得るものである。本発明の1つの実施態様において、エスシタロプラムの有効量は、中枢神経系(CNS)障害、例えば、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害またはパニック発作を治療するのに有効な量である。 「薬学的に許容される」という語句は、通常、動物またはヒトでのインビボでの使用において生物学的にまたは薬理的に適合することを意味し、好ましくは、動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦の規制当局または州政府によって承認されていること、または米国薬局方もしくはその他の一般的に認知される薬局方に記載されていることを意味する。 本明細書において使用される場合に、「治療する」という語句には以下のうちの1つまたはそれ以上が含まれる:(a)例えば中枢神経系(CNS)障害(例えば、気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、およびパニック発作を含む恐慌性障害)を含む、対象者における障害の少なくとも1つの症状を軽減または緩和すること;(b)限定はされないが、特定の刺激(重圧、組織障害および寒い気温)に対して応答する対象者を含む、対象者が直面する障害の発現の強度および/または期間を軽減または緩和すること;および(c)発病(障害の臨床症状発現前の期間)を抑制すること、遅らせること、および/または障害を発現または悪化させるリスクを減少すること。 「パニック発作」という語句には、限定はされないが、パニック発作が生じる恐慌性障害, 特定恐怖症, 社会恐怖症および広場恐怖症を含むパニック発作に関連するいずれの疾患も含まれる。これらの疾患はさらに、精神障害の診断と統計マニュアル第4版本文改訂版(DSM- IV-TR)(A. Frances(ed.)、米国精神医学会、ワシントン、2000)において定義されている。パニック発作は、多くの場合は死が差し迫っている感じを伴って、強烈な不安、恐れまたは恐怖が突然発現する個別的な期間である。発作の間は、動悸、発汗、振せん、息切れの感覚、窒息感、胸の痛みまたは不快、悪心、目眩感、非現実感、自制心を失うことへのもしくは気が狂うことへの恐れ、死への恐れ、感覚異常および悪寒または顔面紅潮が現れる。 恐慌性障害は、パニック発作が不意に頻発し、継続的な不安が存在することによって特徴付けられる。広場恐怖症は、逃げることが困難なまたはパニック発作が生じた場合に助けられないような場所または状況に関する、あるいはこれらを避けようとする不安である。特定恐怖症および社会恐怖症(以前はともに単に恐怖症としていた)は、特定の対象物もしくは状況(飛行機、高所、動物、血を見ること)または社会的に行動する状況が存在することまたは予測されることに対しての過剰または不合理である、著しく継続的な恐れによって特徴付けられる。 パニック発作が起こる障害は、発作の発生の予測可能性によって互いに区別され、例えば、恐慌性障害では発作は予測不能であり特定の事象と関連しないが、一方で、特定恐怖症では発作は特定の刺激が引き金となる。 「恐慌性障害の治療」という表現には、パニック発作の数の減少または予防、および/またはパニック発作の重症度の軽減が含まれ得る。 本明細書において使用される場合に、「気分障害」という語句には、DSM-IV-TRにおいて特定される気分障害(抑うつ障害、例えば大うつ病性障害を含むが、これらに限定はされない)が含まれる。 本明細書において使用される場合に、「不安障害」という語句には、DSM-IV-TRにおいて特定される不安障害(広場恐怖症を伴わない恐慌性障害、広場恐怖症を伴う恐慌性障害、社会恐怖症(以前は社会不安障害として知られていた)、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害および全般性不安障害)が含まれる。 「治療抵抗性うつ病」を患っている患者には、(1)最低でも6週間継続して投与された標準用量の抗うつ薬(例えばSSRI)に応答する(すなわち、二重盲検試験においてプラセボよりも有意に優れている)ことができない患者、および(2)最低でも12週間継続して投与された標準用量の抗うつ薬(例えばSSRI)(単剤療法)に応答することができない患者、が含まれる。患者のうつ病が抗うつ薬に対して治療抵抗性であるかどうかを決定するための1つの基準は、1(著名改善:very much improved)または2(かなり改善:much improved)の臨床全般印象-改善度(CGI-I)スコアが、6、8または12週の治験の終了までに達成されるかどうかである。CGI-I尺度は、「Guy, W. (ed.): ECDEU Assessment Manual for Psvchopharmacology. Revised, DHEW Pub. No. (ADM) 76-338, Rockville, MD, National Institute of Mental Health, 1976」に定義されている。 本明細書において使用される場合に、「徐放」、「放出調節」および「徐放または放出調節」という語句は長期間にわたる活性成分の放出を表し、これにより、即放性製剤と比較した場合の最高血中濃度の低下およびTmaxの延長が得られる。これらの語句にはまた、一連の即放性パルスを介した期間にわたっての放出も含まれる。100 mgのWellbutrin(R) 錠剤(即放性塩酸ブプロピオン錠剤)に関する薬物動態プロファイルは、投与後約1〜2時間での最高血中濃度を示す。20 mgのシュウ酸エスシタロプラム錠剤(即放性錠剤)に関する薬物動態プロファイルは、約5時間で最高血中濃度を示す(「Physician's Desk Reference 2005, Thomson Healthcare; 59th ed. 2004」)。 「パルス投与(pulsatile)」は、複数の薬物用量が間隙を有する時間間隔で放出されることを意味する。 「バイオアベイラビリティー」という語句は、活性成分または活性部分、例えばエスシタロプラムが薬剤製品から吸収され、体系的に利用可能になる速度および程度を表す。 「約」または「およそ」という語句は、当業者によって決定される特定の値に関して許容することができる誤差範囲内を意味し、それは1つにはその値が測定または決定される方法に依存する(すなわち測定システムの制約)。例えば「約」は、当技術分野の慣例によれば、1(またはそれ以上の)標準偏差以内を意味しうる。あるいは、組成物に関して「約」は10%まで、好ましくは5%までの範囲を意味することができる。 ブプロピオンおよびエスシタロプラムの併用 本発明において使用するための経口薬には、好ましくは、約75、150もしくは225 mgの塩酸ブプロピオンおよび約2.5、4、5、10、15もしくは20 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(例えばシュウ酸エスシタロプラムまたは臭化水素酸エスシタロプラム)が含まれる。これらの薬は、単一の経口剤形または個別の剤形の形態で同時にまたは順次投与することができる。別の好ましい実施態様において、経口薬または経口剤形には、好ましくは約75、150もしくは225 mgの塩酸ブプロピオンおよび約4、8、12または16 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩が含まれる。 経口薬における各成分の好ましい量は以下の表に示すとおりであるが、これに限定はされない。 エスシタロプラムおよびブプロピオンの両方を含む単一の剤形は、好ましくは、エスシタロプラムおよびブプロピオンが互いに接触しないように製剤化される。 放出調節製剤 ブプロピオンおよび/またはエスシタロプラムを含む剤形は、ブプロピオンの放出調節およびエスシタロプラムの即放または放出調節がなされるように製剤化することができる。ブプロピオン、エスシタロプラムまたは両者に関する放出調節プロファイルは、持続性製剤およびパルス型製剤によって達成することができる。 パルス型製剤(Pulsatile Formulations) パルス性放出プロファイルは、2個またはそれ以上の薬剤含有投薬単位を含み、閉じられている剤形、例えば、密閉されたカプセル剤または錠剤を用いて達成することができる。該剤形は、それぞれが異なる薬剤放出プロファイルを有する1、2、3または4種またはそれ以上のタイプの投薬単位を含むことができる。各投薬単位によって、ブプロピオンおよび/またはエスシタロプラムの多相的放出が得られる。 好ましくは、パルス型剤形には、少なくとも2種のタイプの投薬単位が含まれ、より好ましくは、2種または3種のタイプの投薬単位が含まれる。例えば、1つの実施態様においては、剤形の摂取に続いて実質上直ちに、第一のタイプの投薬単位が薬剤を放出し、第二のタイプが摂取後およそ1〜8時間後に薬剤を放出し、そして随意的な第三のタイプが摂取後およそ4〜24時間後に薬剤を放出する。 別の実施態様において、70%を超えるエスシタロプラムおよび約10〜50%のブプロピオンが第一のパルスで放出される。残りのブプロピオンおよび残りのエスシタロプラム(任意)の放出は、第一のパルス後の1回またはそれ以上のパルスにおいて起こる。パルスの数および放出される薬剤の量により、好ましくは、Tmaxがエスシタロプラムに関しては約4〜約35時間に、そしてブプロピオンに関しては約4〜約12時間になる。 各投薬単位は、例えば、錠剤(例えば、圧縮されたまたは成形された)、ビーズまたは粒子であることができる。あるいは、投薬単位は、剤形(例えば、多層錠)における異なる層であってもよい。好適なパルス投与系は米国特許第6,217,904号明細書、米国特許第6,555,136号明細書、米国特許第6,793,936号明細書、米国特許第6,627,223号明細書、米国特許第6,372,254号明細書、米国特許第6,730,321号明細書、米国特許第6,500,457号明細書、米国特許第4,723,958号明細書、米国特許第5,840,329号明細書、米国特許第5,508,040号明細書および米国特許第5,472,708号明細書、米国特許出願公開第2003-124196号明細書、米国特許出願公開第2004-028729号明細書および米国特許出願公開第2003-0133978号明細書(これらは全て参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている。 錠剤投薬単位は任意のサイズでよい。1つの好ましい実施態様において、錠剤は約4.5〜約15 mmの範囲の外径を有する。1つの実施態様において、剤形(例えばカプセル剤)は2または3個の錠剤を含む。 通常、ビーズ投薬単位は不活性支持体を含み、薬剤がそこにコーティングされる。不活性支持体は、例えば、糖または微結晶性セルロースであることができる。薬剤は、当業者に公知の方法によって不活性支持体にコーティングすることができる。 個々の投薬単位(例えば、ビーズおよび粒子)は、当業者に公知の方法によって、1つの錠剤またはカプセル剤に成形または圧縮することができる。 徐放性製剤 剤形に関する徐放プロファイルは、コーティングにより、および/または上述のビーズ、粒子、および剤形中における投薬単位としての錠剤の使用により達成することができる。 投薬単位 当業者であれば理解でき、そして関連する文書および文献に記載されるように、薬剤含有錠剤または種々の薬剤放出プロファイルを付与するその他の投薬単位の製造には、多くの方法を利用することができる。このような方法には、薬剤または薬剤含有調合物をコーティングすること、薬剤の粒子径を増加させること、薬剤をマトリックス中に置くこと、そして適当な錯化剤を用いて薬剤の錯体を形成させることが含まれる。 パルス型製剤および徐放性製剤のための放出調節投薬単位は、例えば、薬剤または薬剤含有調合物を1種またはそれ以上の膜コーティング材料、例えば1種またはそれ以上のポリマー系材料でコーティングすることにより製造することができる。放出遅延投薬単位を得るためにコーティングを使用する場合に、特に好ましいコーティング材料には、限定はされないが生体内で分解でき、段階的に加水分解され、そして/または段階的に水に溶解可能なポリマーが含まれる。「コーティング重量」または投薬単位あたりのコーティング材料の相対量が、通常、摂取と薬剤放出との間の時間間隔を決定付ける。 放出遅延を達成するための好適な膜コーティング材料には、限定はされないが、以下が含まれる:セルロース系ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースエステル-エーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレートのアルカリ塩、セルロースアセテートフタレートのアルカリ土類金属塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム;好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等から形成されるアクリル酸ポリマーおよびコポリマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルのコポリマー(例えば、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよびトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリドのターポリマー(ニュージャージー州ピスカタウェイのRohm America L.L.C.からEudragit(R)として入手可能));ビニルポリマーおよびコポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー、およびエチレンビニルアセテートコポリマー;およびセラック、アンモニア化セラック、セラック-アセチルアルコールおよびセラックn-ブチルステアレート。 場合により、錠剤、ビーズまたは粒子は結腸において薬物の放出を行うのが望ましく、この場合には、結腸内で薬剤放出が可能なポリマー系材料または他の材料が使用される。これらは、前記のリストから選択することができ、または医薬製剤およびドラッグデリバリーの分野において公知である他の材料を使用することができる。例えば、ヒドロコロイドガム、例えば、グアーガム、ローカストガム、ビーンガム、ガムトラガラントおよびカラヤガムが、結腸へのデリバリーに効果的であり得る(例えば米国特許第5,656,294号明細書参照)。結腸へのドラッグデリバリーを行うのに好適な他の材料には、多糖類、ムコ多糖類、および関連化合物、例えば、ペクチン、アラビノガラクトース、キトサン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナンおよびキシランが含まれる。 所望のパルス投与プロファイルは、複数の錠剤を含む剤形によって達成することができる。第一の錠剤がコーティング材料をほとんどまたは全く伴わずに供され、第二の錠剤がある程度のコーティング材料を伴って供され、第三の錠剤がさらなるコーティング材料等を伴って供される。同様に、薬剤含有投薬単位がビーズまたは粒子であるカプセル化剤形に関しては、ビーズまたは粒子の第一のフラクションがコーティング材料をほとんどまたは全く伴わずに供され、第二のフラクションがある程度のコーティング材料を伴って供され、第三のフラクションがさらなるコーティング材料等を伴って供される。例えば、剤形が3種の錠剤(または、同様に、3つのタイプの薬剤含有粒子またはビーズ)を含有する場合には、第一の錠剤(薬剤を実質的に直ちに放出する)は約5%未満(好ましくは約3%未満)(錠剤の全重量を基準として)の全コーティング重量を有することができ、第二の錠剤は約5%〜30%(好ましくは5%〜20%)の範囲の全コーティング重量を有することができ、そして、第三の錠剤(もし存在するなら)は約15%〜40%(好ましくは20%〜40%)の範囲の全コーティング重量を有することができる。あるコーティング材料に対して好ましいコーティング重量は、当業者であれば、異なる量の種々のコーティング材料を用いて製造した投薬単位に関して個々の放出プロファイルを評価することによって容易に決定することができる。 あるいは、放出遅延投薬単位、例えば錠剤または粒子は、薬剤を適当な材料、例えば不溶性プラスチック、親水性ポリマーまたは脂肪族化合物のマトリックス(例えば不溶性マトリックス)内に分散させることによって製剤化することができる。不溶性プラスチックマトリックスは、例えば、塩化ポリビニルまたはポリエチレンを含むことができる。放出遅延投薬単位用のマトリックスを得るために有用な親水性ポリマーには、限定はされないが、適当なコーティング材料として上述したものが含まれる。マトリックス材料として使用するための脂肪族化合物には、限定はされないが、ワックス(例えば、カルナバワックス)およびグリセリルトリステアレートが含まれる。薬剤をマトリックス材料と混合してすぐに、該混合物を錠剤に圧縮するか、または個々の薬剤含有粒子に加工することができる。 個々の投薬単位は、着色コーティングを施して提供することができ、これは、対応する放出遅延プロファイルを有する錠剤またはビーズまたは粒子フラクションの同定に使用される単一の色を有する。これは例えば、青色コーティングを即放性錠剤またはビーズまたは粒子フラクション用に使用でき、赤色コーティングを「中程度」の放出錠剤またはビーズまたは粒子フラクション用に使用できる、ということである。この方法では、製造の間の間違いを容易に回避することができる。色は、コーティング製造時に、薬学的に許容される着色剤をコーティングに組み入れることによって導入することができる。着色剤は天然または合成のいずれのものでもよい。天然着色剤には、限定はされないが、クロロフィル、anattenes、ベータ-カロチン、アリザリン、インジゴ、ルチン、ヘスペリジン、ケルセチン、カルミン酸および6,6'-ジブロモインジゴのような顔料が含まれる。合成着色剤には、限定はされないが、酸性染料および塩基性染料の両者(例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、オキサジン類、チアジン類、ピラゾロン類、キサンテン類、インジゴイド類、アントラキノン類、アクリジン類、ローズアニリン類、フタレイン類およびキノリン類)を含む染料が含まれる。 カプセル化錠剤に関しては、カプセル中におけるそれぞれ個々の錠剤の重量は、通常、約50 mg〜約600 mgの範囲、好ましくは約50 mg〜約450 mg、より好ましくは約60 mg〜約300 mgの範囲にある。個々の錠剤は、当業者に公知の方法によって製造することができる。本明細書における錠剤を形成させるのに好ましい方法は、粉状、結晶質もしくは粒状薬剤含有調合物の、単独でのまたは希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤または他の賦形剤と組み合わせての直接圧縮によるものである。圧縮した錠剤はまた、湿式造粒法または乾式造粒法によって製造することもできる。錠剤はまた、適当な水溶性滑沢剤を含む湿った材料とともに出発して、圧縮よりもむしろ成形することもできる。薬剤含有粒子またはビーズはまた、当業者に公知の方法、例えば流体の分散を用いる方法によって製造することもできる。 当業者に公知のコーティング方法および装置を、投薬単位、例えば薬剤含有錠剤、ビーズまたは粒子をコーティングするために使用することができる。例えば、放出遅延コーティング組成物は、コーティングパンまたは流動層コーティング装置を用いて塗布することができる。錠剤、ビーズ、薬剤粒子および放出遅延剤形を製造するための材料、装置および方法については、「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, eds. Lieberman et al. (New York: Marcel Dekker, Inc., 1989), and Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6th Ed. (Media, Pa.: Williams & Wilkins, 1995)」に記載されている。 個々の薬剤含有投薬単位に存在する任意成分には、限定はされないが、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、安定剤、界面活性剤および着色剤が含まれる。 希釈剤(「増量剤」とも呼ばれる)は通常、圧縮に関して実践的なサイズを得ることができるように錠剤のかさを増加させるために含まれるものである。好適な希釈剤には、第二リン酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、二酸化ケイ素、アルミナ、タルク、微結晶性セルロース、パウダーシュガー、およびこれらの混合物が含まれる。 結合剤は、錠剤製剤に粘着性を付与するために使用され、これによって錠剤は圧縮後にも損なわれていない状態を維持する。好適な結合剤には、限定はされないが、デンプン(トウモロコシデンプンおよびα化デンプンが含まれる)、ゼラチン、糖類(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびVeegum)および合成ポリマー(例えばポリメタクリレートおよびポリビニルピロリドン)、およびこれらの混合物が含まれる。 滑沢剤は、錠剤製造を容易化するために使用される。好適な滑沢剤の例には、限定はされないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびポリエチレンングリコールが含まれる。好ましくは、投薬単位には、約1重量%未満(投薬単位の重量に対して)の滑沢剤が含まれる。 崩壊剤は、投与後の錠剤の崩壊または「解体(「breakup」)」を促進するために使用される。適当な崩壊剤には、限定はされないが、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム、架橋ポリマー、およびこれらの混合物が含まれる。 安定剤は、薬剤の分解反応(例えば、酸化反応、例えばブプロピオンおよびその薬学的に許容される塩(例えば塩酸ブプロピオン)に関連する酸化反応を含む)を阻害するためまたは遅らせるために使用される。好適な安定剤には、米国特許第5,763,493号明細書、米国特許第5,731,000号明細書、米国特許第5,358,970号明細書に記載されるものが含まれる。安定剤は、有機酸、カルボン酸、アミノ酸の酸性塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物でよい。アミノ酸の酸性塩の例には、限定はされないが、塩酸塩、例えばシステイン塩酸塩、L-システイン塩酸塩、グリシン塩酸塩およびシスチン二塩酸塩が含まれる。他の安定剤の例には、限定はされないが、アスコルビン酸、リンゴ酸、イソアスコルビン酸、クエン酸および酒石酸が含まれる。本発明の1つの実施態様において、剤形にはアルギン酸ナトリウムが安定剤として含まれる。本発明の別の実施態様において、剤形は安定剤を実質的にまたは完全に含まない。 好適な界面活性剤には、限定はされないが、陰イオン性、陽イオン性、両性および非イオン性界面活性剤が含まれる。好適な陰イオン性界面活性剤には、限定はされないが、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムイオンのような陽イオンとともにカルボキシレート、スルホネートおよびスルフェートイオンを含有するものが含まれる。他の好適な界面活性剤には、限定はされないが、長アルキル鎖スルホネートおよびアルキルアリールスルホネート、例えばナトリウムドデシルベンゼンスルホネート;ジアルキルナトリウムスルホスクシネート、例えばナトリウムビス-(2-エチルヘキシル)-スルホスクシネート;および硫酸アルキル、例えばラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。 必要な場合には、錠剤は、非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤および保存剤を含むこともできる。 本明細書において上述したように、1つの実施態様において、個々の薬剤錠剤、ビーズまたは粒子は閉じられたカプセル内に含まれる。カプセル材料は硬くても軟らかくてもよく、当業者であれば理解できるように、通常、無味で、容易に投与され、そして水溶性である化合物、例えばゼラチン、デンプンまたはセルロースを含む。好ましいカプセル材料はゼラチンである。カプセルは好ましくは例えばゼラチンバンドを用いて密閉される。例えば、摂取後短時間で溶出するようなカプセル化医薬を製造するための材料および方法が記載されている「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 2000)」を参照。 剤形 剤形は、1種またはそれ以上の放出調節剤をポリマー系コーティングまたはマトリックスの形態で含むこともできる。剤形はまた、1種またはそれ以上のキャリアー、賦形剤、付着防止剤(anti-adherants)、増量剤、安定剤、結合剤、着色剤、流動促進剤および滑沢剤を含むこともできる。 マトリックスの親水性または疎水性に応じて、胃液と接触して、対象が消化状態にあるにも拘らず胃内での保持を促進するために十分な大きさのサイズに膨潤する材料でよい。消化状態は食物摂取によって誘導され、上部胃腸(GI)管の運動パターンの急速かつ顕著な変化を伴って開始する。該変化は、胃が受ける収縮の大きさが減少すること、および、幽門の開口が部分的に閉じた状態へ減少することからなる。結果として、篩別過程によって、液体および小さい粒子が部分的に開いた幽門を通過する一方で、幽門より大きい難消化性粒子が逆戻りし(retropelled)、胃内に留まる。体液がマトリックスを通って移動して活性物質を溶解し、これがマトリックスを通る拡散により放出され、これは同時に放出流を調節する。従って、本発明のこれらの実施態様における放出制御マトリックスは、薬剤の長期放出が腸内におけるより胃内で生じるように、逆戻りすることによって胃内に留まるのに十分な大きさのサイズに膨潤できるものとして選択される。胃内における滞留時間を長くするサイズに膨潤する経口剤形は、米国特許第5,007,790号明細書、米国特許第5,582,837号明細書、米国特許第5,972,389号明細書、国際公開第98/55107号パンフレットおよび国際公開第96/26718号パンフレットに開示されている。この段落で引用される文献はそれぞれ、引用されることによって全体として本明細書に組み込まれる。 マトリックスは、不溶性の親水性ポリマー、例えばセルロースエステル、カルボキシビニルエステル、またはアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルからなることができる。体液との接触において、親水性マトリックスが水化され、膨潤し、非常に密なポリマーのネットワークを形成することにより、可溶性の活性成分が拡散する。さらに、マトリックスの膨潤を調節するために、脂質、特にグリセリルエステルを添加することができる。これらの調合物は、造粒、およびその後のポリマー、活性成分および種々の佐剤から形成される混合物の圧縮によって得ることができる。 疎水性マトリックスは、高度に無害である天然源の脂質マトリックス物質、例えばミツロウからなることができる。これらの調合物は、造粒、湿式法もしくは溶媒法、およびその後の各成分を高い割合で含む圧縮により得ることができる。 通常、膨潤性マトリックスは、水膨潤性の非毒性ポリマー結合剤を含み、水の吸収によって寸法を制限されずに膨潤し、そして薬剤を時間をかけて放出する。この記載に合致するポリマーの例には、限定はされないが、以下が含まれる:限定はされないが、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび微結晶性セルロース多糖、およびその誘導体、ポリアルキレン酸化物、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンゴム、マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、デンプンおよびデンプンを基礎とするポリマー、マルトデキストリン、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲルおよび架橋ポリアクリル酸、およびこれらの誘導体を含む、セルロースポリマー類およびその誘導体。さらなる例(限定を意図するものではない)としては、上記ポリマーのコポリマー(ブロックコポリマーおよびグラフトポリマーを含む)が挙げられる。コポリマーの具体的な例としては、PLURONIC(R)およびTECTONIC(R)が挙げられ、これらはポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーであり、BASF Corporation(Chemicals Div.、ワイアンドット、ミシガン州、USA)から入手可能である。さらなる例としては、一般的に「Super Slurper」として知られ、Illinois Corn Growers Association(ブルーミントン、イリノイ州、USA)から入手することが可能である加水分解デンプンポリアクリロニトリルグラフトコポリマーが挙げられる。 マトリックス用に好適な他のポリマーとしては、ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリ(エチレンオキシド)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの組み合わせが挙げられる。好ましいポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。1つの実施態様において、放出調節製剤、例えば、24時間放出調節製剤は、約10重量%〜約50重量%、好ましくは約15重量%〜約45重量%の範囲の量でこのようなポリマーを含む。 即放性と比較した場合の最高血中濃度到達時間(Tmax)の延長は、インビトロにおける薬剤の溶出・放出速度と関連している。インビトロにおける薬剤の溶出・放出速度は、マトリックスの組成に依存する。異なるセルロースマトリックスを使用することにより、約4時間〜約24時間のうちのどこへでもインビトロの放出速度(約70〜約80%以上の薬剤溶出)を操作することができる。上記製剤は、両薬剤に関して約1〜約35時間、好ましくは約4〜約30時間の範囲の最高血中濃度到達時間(平均Tmax)、および約4〜約24時間において約70〜約80%以上というインビトロ放出速度 を有する。好ましくは、上記製剤は、約30分〜約12時間において約80%以上というエスシタロプラムに関する放出速度を有する。より好ましくは、上記製剤は、使用環境(例えば胃腸管)へ導入した後の最初の1時間以内に約10%〜約40%という放出速度を有し、その後徐放され;そして、より好ましくは、上記製剤は、次の12時間以内に70%以上という放出速度を有する。 本発明における錠剤は、慣用の混合、粉砕、および医薬品製剤分野において公知の錠剤化技術によって製造することができる。放出調節錠剤は、例えば、回転式錠剤プレス(rotary tabletting press)に適したパンチおよびダイによる直接圧縮、射出成形もしくは圧縮成形、造粒後の圧縮、あるいは、泥膏の形成および該泥膏の型中への成形または押出物の短い長さへの切り出しによって製造することができる。 ラクトース(例えばラクトース一水和物)のような増量剤は、溶出パターンを調節するために使用される。ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルセルロースを使用した場合には、目標である調節された放出よりも溶出速度をさらに遅くすることができる。遅い放出は、形成された疎水性マトリックス錠剤がポリマーの侵食というメカニズムによって薬剤を放出することによるものである。疎水性マトリックスからの侵食は非常に遅いので、易溶性活性成分の溶出速度もまた遅くなる。しかしながら、ラクトースもまた、エスシタロプラムおよびブプロピオン錠剤に関する粉末の流れおよび圧縮性の改善に有用である、重要な増量剤成分である。 錠剤を直接圧縮により製造する場合には滑沢剤の添加が有用であり、圧力を緩めた場合に、粉末の流れを促進するために、および錠剤のキャッピング(錠剤の一部が壊れる)を防ぐために重要である。有用な滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウムおよび硬化植物油(好ましくはステアリン酸およびパルミチン酸の水素化および精製トリグリセリド)が含まれる。好ましい実施態様において、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。24時間放出製剤では、ステアリン酸マグネシウムが好ましくは約0.5重量%〜約3重量%、好ましくは約0.5重量%〜約2重量%の範囲の量で存在する。錠剤硬度、粉末流動性および錠剤摩損度を高めるために、ならびにダイの壁への付着を減少させるために追加の賦形剤を添加することもできる。 以下の実施例を用いて本発明を説明するが、これは本発明を限定するものではない。全ての部およびパーセントは、特に言及しない限り重量によるものである。 実施例1 エスシタロプラムコアおよび放出調節ビーズ 表1および2に、それぞれエスシタロプラムコアおよび放出調節ビーズを製造するための製剤成分および重量パーセントの範囲を示す。それぞれの放出調節ビーズは、放出調節コーティングでコーティングされたエスシタロプラムコアビーズである。 表3の処方を有するエスシタロプラムコアビーズ(200 mg/g)を製造した。 ビーズは、表3の成分1〜5を高せん断グラニュレーター(Disona、Fluid Air、シカゴ、イリノイ州)で混合することにより製造することができる。顆粒化された材料を押出機(Niro、Model E- 140、コロンビア、メリーランド州)を用いて押し出し、その後スフェロナイザー(spheronizer)(Niro Model S450、コロンビア、メリーランド州)を用いてビーズに球形化(spheronized)する。ビーズは場合により50℃で最大12時間乾燥する。 表3から得られたエスシタロプラムコアビーズを、表4(プロファイルI)または5(プロファイルII)に従って放出調節コーティングでコーティングした。 実施例2 パルス型エスシタロプラムカプセル剤形 実施例1に記載されるエスシタロプラムコアおよび放出調節ビーズは、パルス型放出プロファイルを達成するためにカプセルに充填することができる。例えば、カプセル充填機(MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)を用いて所定の重量のビーズをカプセルに充填することができる。4 mg力価のエスシタロプラムカプセル剤に関して、1カプセルあたりのビーズの量を表6に示す。 特定の力価を有するビーズを異なる量で含有するカプセル剤は、異なる溶出プロファイルをもたらす。また、多くのビーズ、例えば5、8、10、15、16、20および40 mg(全充填重量による)のビーズを用いることにより、種々の用量に比例した力価がもたらされる。 実施例3 ブプロピオンコアおよび放出調節ビーズ 表7および8に、それぞれブプロピオンコアおよび放出調節ビーズを製造するための製剤成分および重量パーセントの範囲を示す。それぞれの放出調節ビーズは、放出調節コーティングでコーティングされたブプロピオンコアビーズを含む。 表9の処方を有するブプロピオンコアビーズ(600 mg/g)を製造した。 ビーズは、表9の成分1〜5を高せん断グラニュレーター(Disona、Fluid Air、シカゴ、イリノイ州)で混合することにより製造することができる。顆粒化された材料を押出機(Niro、Model E- 140、コロンビア、メリーランド州)を用いて押し出し、その後スフェロナイザー(Niro Model S450、コロンビア、メリーランド州)を用いてビーズに球形化する。ビーズは場合により50℃で最大12時間乾燥する。 表9から得られたブプロピオンコアビーズを、表10(プロファイルI)または11(プロファイルII)に従って放出調節コーティングでコーティングした。 実施例4 パルス型ブプロピオンカプセル剤形 実施例3に記載されるブプロピオンコアおよび放出調節ビーズは、パルス型放出プロファイルを達成するためにカプセルに充填することができる。例えば、カプセル充填機(MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)を用いて所定の重量のビーズをカプセルに充填することができる。150 mg力価のブプロピオンカプセル剤に関して、1カプセルあたりのビーズの量を表12に示す。 特定の力価を有するビーズを異なる量で含有するカプセル剤は、異なる溶出プロファイルをもたらす。また、多くのビーズ、例えば75〜450 mg(全充填重量による)のビーズを用いることにより、種々の用量に比例した力価がもたらされる。 実施例5 パルス型エスシタロプラムおよびブプロピオンカプセル剤形 パルス型カプセル剤形は、複数個のエスシタロプラムビーズおよびブプロピオンビーズをカプセルに充填することにより製造される。150 mg力価のブプロピオン/4 mg力価のエスシタロプラムカプセル剤に関するパルス型カプセル剤形を表13に示す。 所望の溶出・放出プロファイルを満たすように、多数のビーズを組み合わせることができる。ビーズは、カプセル化装置(例えば、MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)でビーズブレンド(bead blend)またはマルチプルホッパー(multiple hoppers)を用いて充填することができる。 充填重量を変えることによって、用量に比例した力価を製造することができる。 実施例6 ラット背側縫線核セロトニンニューロンにおける、ブプロピオンおよびエスシタロプラムの共投与の効果 ラット背側縫線核(DRN)5-HTニューロンにおけるブプロピオンおよびエスシタロプラムの併用の効果を、単剤療法として与えられた場合のそれぞれの薬剤の効果と比較した。ガラス電極をDRN 5-HTニューロン中におろし、発火パターンおよびスパイク持続時間により同定を行った。皮下(s.c.)に埋め込まれたミニポンプを用いる、麻酔されたラットへのエスシタロプラム(10 mg/kg)での2日間の治療により、DRN 5-HTニューロンの自然発火が著しく減少した(コントロール:1.18 Hz + 0.15 n = 30;エスシタロプラム:0.35 + 0.06、n = 27; p<.001)。1日に1回、2日間ブプロピオン(30 mg/kg, s.c.)を与えた場合(最後の用量については実験の直前に注射された)には、DRN 5-HTニューロンの発火率は有意に亢進しなかった(1.54 Hz + 0.17、n = 26;NS)。単剤療法実験と同一用量および経路でのエスシタロプラムおよびブプロピオンの併用投与では、ブプロピオン単独よりも有意に発火が亢進した(エスシタロプラム + ブプロピオン:2.41 Hz + 0.5、n = 24;p < .02)。 エスシタロプラムおよびブプロピオンの併用で治療したラットにおいて、細胞体樹状突起5-HT1A自己受容体の感受性の評価を行った。5-HTニューロンの発火活性におけるLSDの抑制効果は、エスシタロプラムおよびブプロピオンで2日間治療したラットにおいて有意に72%減少したが、これはこの自己受容体の脱感作を示している。 この実施例は、ラットDRNでは、ブプロピオンがエスシタロプラムとともに相乗的に作用し、治療効果の獲得におけるエスシタロプラムの生来的かつ機構的な遅れを妨げることを示すものである。 方法 実験は、標準的な実験室条件下(飼料および飲料水は自由摂取させる12:12明暗サイクル)で飼育された300〜325 gの体重を有する雄のSprague Dawleyラット(Charles River、サンコンスタン、ケベック州、カナダ)で行った。ラットを抱水クロラール(400 mg/kg、i.p.)で麻酔し、定位固定装置(David Kopf Instruments、タハンガ、カリフォルニア州、USA)に乗せた。後足を挟むことに対する侵害受容反応を防ぐために追加用量(100 mg kg-1、i.p.)を与えた。サーミスト制御のヒーティングパッド(Seabrook Medical Instruments, Inc.、サンティアサント、ケベック州、カナダ)を用いて、実験を通して体温を37℃に維持した。電気生理学的な記録を行う前に、ラットの外側尾静脈に薬剤の全身注入用カテーテルを挿入した。 ラットにハロタン麻酔下で、皮下に埋め込まれた浸透圧ミニポンプを通してシュウ酸エスシタロプラムを投与した(1日あたり10 mg/kg送達)。動物内ミニポンプを用いて、記録を行った。塩酸ブプロピオンを、30 mg/kgの用量で1日に1回、2日間皮下に注射した(最後の用量は電気生理学的実験の直前に投与した)。 予めガラス繊維フィラメントが付されており(充填の促進のため)、先端が1〜3μmだけ向きを変えられており、そして2 M NaCl溶液を充填された、慣用の方法で引っ張られたシングルバレルのマイクロガラスピペットを用いて、5-HTニューロンの細胞外ユニタリーの記録を行った。インピーダンス範囲は2〜4 MΩとした。5-HTニューロンを記録するために、正中線上のラムダより1 mm前方にドリルでバーホールを開けた。矢状静脈洞の破壊による出血は骨ろうを用いて直ちに止血した。正中線上の両耳間+ 1.0 mmに下ろしたマイクロピペットを用いてセロトニンニューロンを記録した。背側縫線核の自然発生的に活性な5-HTニューロンを、以下の基準を用いて同定した:規則的な発火率(0.5 2.5 Hz)および長時間(1.5〜2.5 ms)の正の活動電位。さらに、これらの特徴的な波形は、すぐ下で始まる1 mmの間で直ちにシルビウス水道床(floor of the Sylvius aqueduct)に遭遇し、これは電気的休止(electrical silence)の期間に相当する。基礎となる発火率を確認するために、セロトニンニューロンを少なくとも1分間記録した。 実施例7 うつ病患者は、有効であることが知られている治療を受けても多くの場合には 直ちに改善せず、これは、抗うつ薬の効果の遅れのためであり、そして60%の患者が最初に受けた抗うつ薬では軽減しないためである。さらに、一部の患者は、寛解に至る前に治療から脱落してしまう。寛解を促進し、最大化するための方法が必要とされている。このパイロット試験により、異なる作用機序を有する薬剤の組み合わせが、寛解への時間を減少し、外来のうつ病患者の全体的な寛解率を増加させる可能性が評価された。 方法 比較的治療を受けたことがなく、身体的に健康な非精神病性うつ病の外来患者を43人集めた。ベースライン時の身体的試験の後に、依然としてうつ病であり、試験適格性を有する患者に、許容患者がエスシタロプラム40 mg/dとブプロピオン450 mg/dとを15日目までに受けられるように、急速に少しずつずらす用量漸増スケジュールでエスシタロプラムとブプロピオンとを付与した。HAMDおよびCGIを用いて、4週間は毎週、その後の追加の4週間は隔週で、患者の評価を毎週行った。 全ての患者が組み入れ基準および除外基準(以下)を満たしていた。 組み入れ基準:1)現在うつ病である(DSM IV大うつ病、気分変調またはうつ病NOS)2)HAMD-D(21項目)>93)参加への同意 除外基準:1)いずれかの治験薬(20 mg/d以上のエスシタロプラムまたは300 mg/d以上のブプロピオンのどちらかを4週以上)における過去の適正ではあるが効果を得られなかった治験;40 mg/d以上のシタロプラムを4週以上もまた除外される 2)発作の危険性が高いことを示す病歴(例えば、成人になってからの過去の発作、発作性障害と診断されたこと、発作の危険性を増加させることが知られている薬剤を服用していること、著しい頭部外傷歴、過食症または食欲不振歴)3)いずれかの治験薬に対する不耐性歴(患者およびM.D.が副作用をおそらく管理できると同意した場合を除く)4)過去のアルコールおよび/または薬物乱用/依存5)適切に管理されていない重大な医学的疾患(例えば、治療されていない高血圧または糖尿病)6)双曲I型、双曲II型7)精神病歴、または現在精神病8)妊娠または授乳9)現在、抗うつ薬または抗躁うつ病薬を服用しており、服用停止ができないと判断される(時々の睡眠薬または不安用ベンゾジアゼピンは許容される)10)公知で有効な避妊を用いない月経前女性11)現在うつ病でない(現在の治療によると考えられても考えられなくともいずれにせよ)12)自殺の危険性がある**自殺企図歴は、個別的に評価を行う。 SCIDを用いる最初の過程、治験適格性の決定、および他のベースライン測定(HAMD、CGI、BDI、PGIおよびSCL-90)、および試験の説明の後に、通常の検査測定用に血液を採取し、EKGおよび尿を採取して、身体的検査を完了した。1週間で患者を再評価し(プラセボなし)、なおも治験適格性を有する場合には、以下のスケジュールにより治験薬投与(study medication)を開始した。患者は、4週間、HAMD、CGI、BDIおよびPGI(患者評価のCGI)を用いて週に1度面接が行われ、そして、4週の間に隔週で面接が行われて、そこで最終結果が決定された。さらに、4週目および8週目来院時には、第一の治験薬投与の直前の再評価時にSCL-90を行った。最初の2週間(すなわち、急速な用量上昇)については、週の中ごろに患者に対して電話で連絡が取られており、さらに、困難な身体的問題が生じた場合には、患者はいつでも電話をかけるように推奨されている。有害事象(AE)については、各来院時に、AE用の用紙(報告されるそれぞれのAEに対して1つの行が割り当てられる)に記入した。各行における1つの欄は、AE、その一般コード、それが治験薬投与より先行したかどうか、先行した場合にそれは悪化したか、発現および消失の日付、重症度、AEが治験薬投与に起因すると臨床家が考える程度、AEにどう対処したか、および、それが解決したかまたは継続中か、を表示するものである。 投薬スケジュール(患者の許容性を前提として) 臨床家は、推測された副作用が現れた場合には、用量の増加を遅らせるか、または用量を減らすことができる。 結果 5人の患者が治験薬投与を受けなかった。投与を行った38人のうち、12人(31%)が2週目までに軽減し(HAMD<8)、23人(61%)が8週目までに軽減した。9人の患者は試験を完了せず、7人の患者は有害事象(AE)(めまい感および日中の鎮静(それぞれ2人の患者)、じんましん、「興奮(hyper)」、鼓脹、および「非現実感(spacey)」(それぞれ患者1人ずつ)を含む)によるものであった。11人(29%)の患者が少なくとも1度は重篤なAEを体験しており、大部分は試験終了までに改善した。 治験薬投与を受けた38人の患者(24人の女性(63%)を含む)は、63%がコーカソイドであり、平均年齢は39±12歳(範囲:21〜64歳)であり、そして平均HAMD は15±4である。71%(n=27)は現在大うつ病であり、15人(40%)は気分変調性障害、5人(13%)はうつ病NOSであった。さらに、8%は恐慌性障害、5%は社会恐怖症、8%はOCD、3% PTSD、8%は摂食障害、そして11%は過去のアルコール乱用であった。さらに1人の患者は身体醜形障害であった。 23人(61%)は試験終了までに軽減した(17項目型 HAMD≦7)。12人(31%)は1週目または2週目に軽減した。17項目型 HAMDの平均は2週目に15±4から11±6に下がり、試験終了時には7±7に下がった。 9人(24%)の患者は試験を完了しなかった。2人の脱落はAE以外の理由による未完了(1人は予約をすることが不可能になり(上述のAEはなし)、もう1人は利益を欠くこと(AEを伴いながらも7週目を完了した後。この時点までは許容性であった)による)であると考えられた。7人の患者においては、未完了はAEによるものであると考えられた。これらには、めまい感および日中の鎮静(それぞれ2人の患者が体験)、じんましん、「興奮」、鼓脹、および「非現実感」(それぞれ患者1人の患者が体験)を含まれていた。試験の間に体験された他のAEを重症度とともに表14〜19に示す。表14は、共通して体験されたいくつかのカテゴリー(過剰刺激(overstimulation)、胃腸(gi)、睡眠、性および精神を含む)それぞれにおける最も深刻なAEについておよびAEに対する情報を示す。表16〜20は、これらのカテゴリーの中の各々を分類したものであり、表15は、いずれのカテゴリーにも当てはまらずに多岐にわたる他のAEを表すものである。各表には、最も深刻な重症度を有する副作用を有する患者の数(およびパーセント)に関する行、試験終了時に副作用を有する数および%に関する行、ならびに各副作用の重症度もしくは副作用のカテゴリーが変化した数/%に関する行が示されている。我々はこれで十分だと考えているが、希望がある場合には、それらについても開示可能である。 平均最終用量は、エスシタロプラムに関しては30±13 mg/dであり、ブプロピオンに関しては347±124であった。11人(29%)がプロトコールの用量スケジュールを遂行し、両薬剤の最大用量における試験を完了した。さらに、6人(16%)の患者がプロトコールの用量増加を試験に留まっている間中遂行したが、8週全部を完了はしなかった。さらに、5人(13%)が用量スケジュールにおける治験最大用量に達したが、その後に用量を減少させ、一方で、漸増を遅らせることによって4人(11%)の患者が最大用量に到達した。最終的に、12人(32%)が試験最大用量に到達せずに試験を完了した。全体では、19人(50%)が両薬剤の試験最大用量に到達し、17人(45%)が試験終了時に最大用量であった。1人の患者に関しては、8週目の来院時に、ブプロピオンを600 mg/dにまで増量したと申告したために、ブプロピオンの最終用量が0 mg/d〜600 mg/d、エスシタロプラムが0 mg/d〜40 mg/dの範囲であること、2人の患者に関しては一方の薬剤が許容されず、他方に関してのみ試験を終了したこと(エスシタロプラムおよびブプロピオンそれぞれに対して1人)には留意が必要である。 実施例8 大うつ病性障害の成人患者におけるエスシタロプラム併用の固定用量比較 この試験では、大うつ病性障害(MDD)患者において、エスシタロプラム/ブプロピオン併用治療の有効性、安全性および忍容性を、その成分の単剤療法およびプラセボと比較して評価した。 方法 この臨床試験は、以下の図に示すように、外来患者における固定用量の多施設共同無作為化二重盲検並行群間試験として行う。 試験は、1週の単盲検プラセボによるlead-in期間と、それに続く8週の二重盲検による治療期間からなる。4つの治療群(プラセボ、シュウ酸エスシタロプラム4 mg、塩酸ブプロピオン150 mg、またはシュウ酸エスシタロプラム4 mg/塩酸ブプロピオン150 mg)それぞれに対して約135人の患者を無作為化する(全体で558人の患者)。 MDDの外来患者における固定用量の多施設共同無作為化二重盲検並行群間試験を行う。スクリーニング(1回目の来院:Visit 1)時に適格性基準を満たす患者が、1週の単盲検によるプラセボ治療のlead-in期間に参加する。lead-in期間を完了し、ベースライン(2回目の来院)時に全ての参加基準を継続して満たす患者は、プラセボ、エスシタロプラム4 mg、塩酸ブプロピオンXL 150 mg、またはエスシタロプラム4 mg/塩酸ブプロピオンXL 150 mg併用のうちのいずれかを用いる8週の二重盲検治療に無作為に割り当てられる。治療群への割り当ては、コンピューターが作製した無作為化表に従う。 ベースライン(2回目の来院)後は、1週目(3回目の来院)、2週目(4回目の来院)、4週目(5回目の来院)、6週目(6回目の来院)および8週目(7回目の来院)の終わりに試験のために来院する。必要に応じて、試験のための来院は、試験の週の最終日の3日前または3日後までに行われる。精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を1回目の来院にのみ行い、これをもとの資料(source document)とする。 以下の主要有効性評価を患者来院時に実施する:モントゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(MADRS)−この臨床家が評価する尺度は、患者の過去1週間のうつ病症候学に関して1回目の来院から7回目の来院を通して実施される(早期中止の場合も含む)。患者は10項目(悲しみの感情、無気力、悲観、内的緊張、自殺思考、睡眠減少もしくは食欲減退、集中困難、および興味の欠如を評価する)について評価される。各項目は7点尺度で採点され、0は症状がないことを表し、6は症状が最大の重症度であることを表す。 以下の副次的有効性評価を患者来院時に実施する:ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-24)−この臨床家が評価する尺度は、1回目の来院から7回目の来院を通して実施される(早期中止の場合も含む)。この24項目尺度は、抑うつ気分、罪業、自殺、不安、激越、無力感、絶望感、無価値感、または離人症/現実感喪失、彼/彼女の洞察レベル、彼/彼女の不眠パターン、仕事およびその他の活動に関する興味の欠如、体重減少、心気症、精神運動抑制、または妄想の存在、脅迫、生殖もしくは身体症状、および症状の存在の日内変動に基づいて、患者の抑うつ状態を評価する。 以下の追加的な有効性評価を患者来院時に実施する:臨床全般印象尺度-重症度(CGI-S)−CGI-Sは、臨床家が評価する尺度であり、1回目の来院から7回目の来院を通して実施される(早期中止の場合も含む)。この尺度は、MDDを有する患者集団に関して、患者の精神病の現在の状況の重症度を、治験医師の臨床的見解に基づいて評価するものである。患者は、1〜7までの尺度(1は正常、7は症状が極めて重い患者)で評価される。臨床全般印象尺度-改善度(CGI-I)−CGI-Iは、臨床家が評価する尺度であり、3回目の来院から7回目の来院を通して実施される(早期中止の場合も含む)。治験医師の臨床的見解に基づいて、この尺度では、ベースライン評価からの患者の精神病の全体的な改善または悪化が、治験医師がそれが薬剤治療によると考えるか否かに関係なく評価される。患者は、1〜7までの尺度(1は非常に良好に改善した、7は非常に悪化した)で評価される。ハミルトン不安評価尺度(HAMA)−この臨床家が評価する尺度は、2、5および7回目の来院時に実施される(早期中止の場合も含む)。この14項目尺度により、不安な気分、緊張および抑うつ;任意の恐怖心、不眠または集中力の低下;泌尿生殖器系、心臓血管系、呼吸系、自律神経系または身体症状の存在;および面接者による面接の間の患者の態度および行動の評価に基づいて、患者の不安レベルが評価される。各項目は、5点尺度(0は症状がないことを表し、4は最大重症度の症状を表す)で採点を行う。クオリティ・オブ・ライフ(QOL)−自己評価の質問表は、2、5および7回目の来院時に、または早期中止時に記入する。 この16項目の患者評価尺度によって、個々が感じているクオリティ・オブ・ライフ、および多様な領域での機能における満足感が評価される。5点制の項目スコアは合計され、より高いスコアは各領域での大きな楽しみまたは満足を表す。 患者の安全性評価は各来院時に医師によって行われ、評価は記録される。2回目の来院から始まる各来院時に、患者は直前の来院からの有害事象(AE)について質問される。治験側職員が全ての関連情報を電子症例報告書(eCRF)に記録する。患者は、「ご気分はいかがですか?」のような誘導的でない質問によって、AEに関する情報を自発的に申し出るように求められている。AEは2回目の来院、およびその後の全ての来院時(早期中止の場合も含む)にまとめられる。 血液および尿検体は1および7回目の来院(または早期中止時)に採取する。出産可能性を有する女性は、1回目の来院に血清による妊娠試験を受ける必要がある。主要検査室の指示どおりに、検体を解析のために提出する。以下のパラメーターが測定される:血液学/化学/尿分析および他の標準的に検査室で行われる試験。以下の試験は1回目の来院時にのみ行う:血清によるβ-HCG妊娠試験(出産可能性を有する女性)、尿中薬物スクリーニング、およびTSH。 脈拍数ならびに収縮期および拡張期血圧(患者が5分間座った後の)を1回目の来院から7回目の来院を通して記録する(早期中止の場合も含む)。これらの測定は、各来院時(早期中止の場合も含む)に患者が立ち上がった1分後にも行う。体重を各来院時に記録する。可能であれば、患者の体重は、一貫して患者の空腹時かまたは一貫して患者が空腹でない時のいずれかにおいて、日中の同時刻に測定する。患者は日常的な室内着を着用するが、ジャケットおよび靴は脱ぐ。適切に調節された天秤(balance beam)の目盛りのみを使用する。身長は1回目の来院時にのみ記録する。 全面的な身体的検査は、1および7回目の来院(早期中止の場合も含む)に行われる。身体的検査は医師によって、または身体的検査を行うために訓練を受け、免許を有するヘルスケアの専門家によって行われる。 12誘導心電図(ECG)を1および7回目の来院(または早期中止時)および医学上必要な場合に記録する。主要ECG検査室の指示に従ってECGを取り、解析する。ECGの解釈は試験センターの医師の責任において行う。 アリゾナ性経験指標(Arizona Sexual Experiences Scale:ASEX)を2および7回目の来院時(または早期中止時)に記入する。男女で異なるものが使用される。5項目の患者が評価する尺度により、性欲、心理的および生理的興奮、オルガズムへの達しやすさ、およびオルガズムへの満足に関して性経験が評価される。各項目を6点尺度で採点し、数が高いほど性機能障害が大きいことを示す。 最終検査における、またはいずれかの理由(臨床的に重要な検査所見異常を含む)のための早期中止時における臨床所見は、状態が試験前の状態に戻るまで、または治験薬と無関係であるとして説明可能になるまで続けられる。フォローアップ用の来院は、必要に応じて中止の28日以内に予定される。 投薬:単盲検のlead-in期間に関しては、患者はプラセボカプセルを供給される。二重盲検期間に関しては、プラセボ、エスシタロプラム4 mgまたはブプロピオン徐放150 mgを含有する見た目が同一のカプセルが供給される。薬剤は、それぞれが10カプセルずつなる2つの列に配置された20個のカプセルを含むブリスターカード中に供給される。 全ての治験薬投与は、試験の間中、毎日1回の投薬として、好ましくは薬剤が患者に与えられた日に開始して、各晩の同時刻に実施される。その後、好ましい場合には投薬は朝に切り替えられる。各来院時に、患者は毎日2個のカプセルを摂取するように指示される(1個は1列目から、もう1個は2列目から)。患者は、使用しなかった薬剤を全て、試験のための各来院時に返却するように指示されている。1回目の来院において適格性基準を満たす患者は、20個のプラセボカプセルを含有するブリスターカードを与えられる。患者は、治験薬を与えられた日に開始して、単回投与として毎日2個のカプセルを摂取するように指示される。2回目の来院において全ての適格性基準を満たす患者は、無作為化された番号を割り当てられ、1週目の治療用に対応する以下の図に示されるようなブリスターカードを与えられる。 二重盲検ブリスターカードの配置 患者はその場において最も小さい無作為化番号を割り当てられる。患者は、治験薬を与えられた日に開始して、単回投与として毎日2個のカプセルを摂取するように指示される。割り当てられた治療群に従って、患者は1日当たり、プラセボ、4 mgエスシタロプラム、150 mgブプロピオン、または4 mgエスシタロプラムおよび150 mgブプロピオンを受ける。 3回目の来院に、患者は2週目の治療用に1個のブリスターカードを与えられる。4、5および6回目の来院時に、患者は3〜4、5〜6および7〜8週目の治療用に2個のブリスターカードをそれぞれ与えられる。患者は、単回投与として毎日2個のカプセルを摂取し続けるように指示される。割り当てられた治療群に従って、患者は1日当たり、プラセボ、4 mgエスシタロプラム、150 mgブプロピオン、または4 mgエスシタロプラムおよび150 mgブプロピオンを受ける。 有効性:全ての有効性解析は、本試験に登録された患者全体に基づく(ITT Population)。全ての統計的検定は、有意水準5%で行われる両側仮説検定である。 全ての有効性解析は、LOCF(Last Observation Carried Forward)法およびOC(Observed Cases)法の両方を用いて行う。これらの解析においては、欠測値の前であってベースラインの後に最後に観測された値を、欠測値のところへ入れる。欠測値が1週目に生じた場合は、患者がベースライン後に欠測していない別の値を有する場合にのみ、ベースライン(2回目の来院)値を1週目に入れる。OC解析に関しては、観測値のみを使用する。 LOCFおよびOC法の両者を用いて、記述的統計を来院および治療群により表す。 主要有効性パラメーターに関しては、ベースライン(2回目の来院)から8週目までのMADRS全スコアの変化を主要有効性パラメーターとして使用する。主要解析はLOCF法を用いて行う。他の3群(プラセボ、エスシタロプラムまたはブプロピオン)の各々とエスシタロプラム/ブプロピオン併用群との間の3つの主要な比較を、治療群および試験施設を因子とし、ベースラインMADRSスコアを共変量としてANCOVAモデルを用いて行う。 上記ANCOVAモデルからの残差の正規性を調べるためにシャピロ・ウィルク検定を使用する。上記ANCOVAモデルからの残差の正規性の仮説が0.05水準で棄却される場合には、ベースラインからの変化を正規スコアを用いて変換し、治療群および試験施設を因子とし、同様に変換したベースライン(2回目の来院)全スコアを共変量として二次元ANCOVAモデルを用いて解析する。 ファミリーワイズの危険率(family-wise error rate)を5%水準で強く制御するために、3群比較それぞれの実子のために5%の有意水準を使用する、事前に順序化された(priori ordered)多重試験法を使用する。具体的には試験手順は、以下の3つの段階の試験である:段階1:エスシタロプラム/ブプロピオン併用とプラセボ間の試験を行う。この比較が5%水準で有意な場合には、該併用がプラセボと有意に相違するものとして段階2に進み、そうでない場合には手順を停止する。段階2:エスシタロプラム/ブプロピオン併用とブプロピオン間の試験を行う。この比較が5%水準で有意な場合には、該併用がブプロピオンと有意に相違するものとして段階3に進み、そうでない場合には手順を停止する。段階3:エスシタロプラム/ブプロピオン併用とエスシタロプラム間の試験を行う。この比較が5%水準で有意な場合には、該併用がエスシタロプラムと有意に相違しており該試験は成功であると判断し、そうでない場合には手順を停止する。 さらに、ブプロピオン単剤療法およびプラセボ間、ならびにエスシタロプラム単剤療法およびプラセボ間の副次的な比較を、ベースライン(2回目の来院)から8週目までのMADRS全スコアの変化に関して、同一のANCOVAモデルを用いて5%の有意水準で行う。 副次的な有効性パラメーターは、ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMD全スコアの変化である。解析は、主要有効性パラメーターに関して使用したのと同様の統計モデルを用いて行う。4個の治療群(エスシタロプラム/ブプロピオン併用、エスシタロプラム、ブプロピオン、およびプラセボ)間の対比較を有意水準5%で行う。 追加的な有効性パラメーターは、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのMADRS全スコアの変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMD全スコアの変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのCGI-S全スコアの変化、 8週目時のCGI-Iスコア、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMA全スコアの変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのQOLスコアMの変化、 8週目時のMADRS反応率(ベースラインから50%減少)、 8週目時のMADRS寛解率(MADRS<12)、 8週目時のHAMD反応率(ベースラインから50%減少)、 8週目時のHAMD寛解率(HAMD-17<7)、 8週目時のCGI-I反応率(CGI-I<2)、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMDの精神運動抑制に関する下位尺度の変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMDの認知障害に関する下位尺度の変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMDの睡眠障害に関する下位尺度の変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMDのメランコリーに関する下位尺度の変化、 ベースライン(2回目の来院)から8週目までのHAMDの抑うつ気分に関する下位尺度の変化。 連続変数に関しては、主要有効性パラメーターに使用したのと同様の統計モデルを用いて解析を行う(CGI-Sのベースラインスコアを共変量として使用するCGI-Iを除く)。カテゴリ変数に関しては、治療群およびそれぞれのベースライン値を説明変数として用いるロジスティック回帰モデルを用いて解析を行う。 4個の治療群(エスシタロプラム/ブプロピオン併用、エスシタロプラム、ブプロピオン、およびプラセボ)間の対比較は有意水準5%で行う。さらに、全ての有効性パラメーターに関する解析は各来院時に行う。 結果 ベースラインからエンドポイントまでの平均変化に関して行われた評価に基づく有効性の結果(LOCF)を、表21および図1〜3に示す。 反応率に基づく有効性の結果を表22に示す。エスシタロプラムおよびブプロピオン群におけるそれぞれ56.5%および46.6%の患者が、1または2のCGI-Iでの反応を示し、一方、併用群における57.1%の患者が同レベルの反応を示した。エスシタロプラムおよびブプロピオン群におけるそれぞれ47.3%および43.6%の患者が、MADRSにより測定した場合に50%以上の改善を示し、一方、併用群における47.9%の患者が同レベルの反応を示した。HAMD24により測定した場合の反応に関しては、エスシタロプラムおよびブプロピオン群におけるそれぞれ46.6%および42.9%の患者が50%以上の改善を示し、一方、併用群における46.4%の患者が同レベルの反応を示した。エスシタロプラム、ブプロピオンおよび併用療法群におけるそれぞれ35.9%、37.6%、39.3%の患者が、12以下のMADRSでの寛解を示した。エスシタロプラム、ブプロピオンおよび併用療法群におけるそれぞれ29.8%、29.3%および28.6%の患者が、7以下のHAMD17での寛解を示した。CGI-I反応=1または2MADRS寛解<=12MADRS反応>=50%改善HAMD 17寛解<=7HAMD24反応>=50%改善 安全性および忍容性の結果を表23に示す。早期中止に関して、プラセボ、ブプロピオン、エスシタロプラム、またはブプロピオンおよびエスシタロプラムの組み合わせを摂取した患者のそれぞれ21.1%、21.6%、18.3%、17.1%が治療を早期に中止した。プラセボ、ブプロピオン、エスシタロプラム、またはブプロピオンおよびエスシタロプラムの併用群におけるそれぞれ65.4%、75.4%、65.6%および76.4%の患者が、治療下で発生する有害事象(TEAE)を少なくとも1種示した。プラセボ、ブプロピオン、エスシタロプラム、またはブプロピオンおよびエスシタロプラムの併用群において、選択されたTEAEを示した患者の数およびパーセントを表23に示す。最後に、治療群および性別によって分類したASEX変化を表24に示す。 以上の結果を考慮すると、驚くべきことであり、そして予期しなかったことであるが、エスシタロプラムおよびブプロピオンの併用を中枢神経系障害を有効に治療するために使用することができる。 特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコールが本願において引用されるが、これらの開示は参照されることにより全ての目的に対して全体として本明細書に組み込まれる。図1は、4つの治療群(プラセボ、150 mgブプロピオン、4 mgエスシタロプラム、ならびに150 mgブプロピオンおよび4 mgエスシタロプラムの併用)のそれぞれに関してMADRSによって測定した場合の、8週の治療の間のベースラインからの平均変化を示す。4つの治療群(プラセボ、150 mgブプロピオン、4 mgエスシタロプラム、ならびに150 mgブプロピオンおよび4 mgエスシタロプラムの併用)のそれぞれに関してHAMD24によって測定した場合の、8週の治療の間のベースラインからの平均変化を示す。図3は、4つの治療群(プラセボ、150 mgブプロピオン、4 mgエスシタロプラム、ならびに150 mgブプロピオンおよび4 mgエスシタロプラムの併用)のそれぞれに関してHAMD17によって測定した場合の、8週の治療の間のベースラインからの平均変化を示す。 (a)約20 mgまでの量におけるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩、および(b)約225 mgまでの量におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の有効量の連日投与を含む、治療を必要とする患者において中枢神経系障害を治療する方法。 約4 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩および約150 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩が連日投与される、請求項1記載の方法。 エスシタロプラムがシュウ酸エスシタロプラムとして投与される、請求項1または2のいずれか1つに記載の方法。 ブプロピオンが塩酸ブプロピオンとして投与される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。 エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩、およびブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩が共投与される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。 エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩、およびブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩が単一の剤形で一緒に投与される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。 障害が気分障害である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。 気分障害が大うつ病性障害である、請求項7記載の方法。 障害が不安障害である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。 ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩との併用以外の抗うつ薬を用いた治療を原因とする、悪心、不眠、傾眠、発汗過多、疲労またはこれらの組み合わせを患っている患者を治療する方法であって、以下:(a)前記抗うつ薬での治療を中止すること;および(b)(i)約225 mgまでの量におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩および(ii)約20 mgまでの量におけるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に連日投与すること、を含む、前記治療方法。 エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩とブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩との併用以外の抗うつ薬を用いた治療を原因とする性機能障害を患っている患者の性機能障害を治療する方法であって、以下:(a)前記抗うつ薬での治療を中止すること;および(b)(i)約225 mgまでの量におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の有効量および(ii)約20 mgまでの量におけるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の有効量を患者に連日投与すること、を含む、前記治療方法。 性機能障害が射精障害である、請求項11記載の方法。 性機能障害が無オルガズム症である、請求項11記載の方法。 性機能障害が性欲減退である、請求項11記載の方法。 エスシタロプラムをブプロピオンとともに共投与することを含む、エスシタロプラムでの初期治療後の治療効果の遅れを減少させる方法。 本発明は、エスシタロプラムおよびブプロピオンの低用量の併用を用いる中枢神経系障害、例えば気分障害(例えば大うつ病性障害)または不安障害(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害または恐慌性障害)の治療方法に関する。