タイトル: | 特許公報(B2)_口腔用ステイン除去剤および口腔用組成物 |
出願番号: | 2008521253 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 8/24,A61Q 11/00 |
柴 肇一 斉藤 敦 岡田 和喜 辻野 義雄 JP 5422205 特許公報(B2) 20131129 2008521253 20070614 口腔用ステイン除去剤および口腔用組成物 株式会社マンダム 390011442 リジェンティス株式会社 502124248 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所 110000280 柴 肇一 斉藤 敦 岡田 和喜 辻野 義雄 JP 2006166767 20060616 20140219 A61K 8/24 20060101AFI20140130BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20140130BHJP JPA61K8/24A61Q11/00 A61K8/00−8/99 A61Q1/00−90/00 Thomson Innovation CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開平09−175966(JP,A) 国際公開第2002/045677(WO,A1) 特表2003−526648(JP,A) 特開2003−212743(JP,A) 特開2003−002815(JP,A) 特開平01−213222(JP,A) 特開2002−306126(JP,A) 特開昭63−030408(JP,A) 特開2005−080617(JP,A) 周知・慣用技術集(化粧料及び類似品),特許庁,1984年,第117頁 4 JP2007062029 20070614 WO2007145287 20071221 15 20100607 松本 直子 本発明は、口腔用ステイン除去剤および口腔用組成物に関する。さらに詳しくは、歯垢や、食べ物、お茶、コーヒー、タバコなどによるステインを歯の表面に沈着するのを防止するとともに、沈着したステインを効果的に除去しうる口腔用ステイン除去剤、および該ステイン除去剤を含有する口腔用組成物に関する。 従来、歯の表面に付着したステインや歯垢を除去するために歯磨剤などの口腔用組成物中にポリリン酸塩やメタリン酸塩を配合する試みがなされている。例えば、ポリリン酸塩またはメタリン酸塩と、メントールまたはアネトールとが併用された口腔用組成物(特許文献1参照)、水溶性ピロリン酸塩とともにポリリン酸塩が配合された口腔用組成物(特許文献2参照)、ポリリン酸塩と天然系スクラブ剤とが併用された歯牙清掃材(特許文献3参照)などが報告されている。 しかしながら、これらの口腔用組成物や歯牙清掃材には、歯面に付着したステインや歯垢を歯ブラシなどで完全に除去することができず、日々の歯磨きによっても、ステインや歯垢が蓄積するという欠点がある。また、その口腔用組成物や歯牙清掃材には、歯ブラシが届き難い歯に付着したステインや歯垢を殆ど除去することができないという欠点もある。 そこで、歯ブラシなどにより歯面をブラッシングしなくとも、ステインや歯垢を効果的に除去することができるとともに、一旦除去した歯面にステインなどが沈着するのを防止することができるステイン除去剤の開発が望まれている。 一方、ウルトラリン酸は、抗菌性を有することが知られ、従来、食品の保存剤として用いられている(特許文献4および5参照)。また、ウルトラリン酸は、タンニン含有組成物の変色防止効果を発現することが報告されている(特許文献6参照)。しかしながら、ウルトラリン酸のステイン除去作用については、報告されていない。特開昭63−30408号公報特開平9−175966号公報特開平10−182386号公報特開昭58−121204号公報特開2005−80617号公報特開2002−306126号公報 本発明の目的は、歯ブラシなどによって歯面をブラッシングしなくてもステインや歯垢を効果的に除去することができるとともに、一旦ステインや歯垢が除去された歯面にステインなどが沈着することを防止することができる、口腔用ステイン除去剤および該ステイン除去剤を含有する口腔用組成物を提供することにある。 本発明は、〔1〕 ウルトラリン酸塩を含有してなる口腔用ステイン除去剤、〔2〕 ウルトラリン酸塩の平均重合度が7〜12である前記〔1〕に記載の口腔用ステイン除去剤、〔3〕 前記〔1〕または〔2〕に記載のステイン除去剤を含有してなる口腔用組成物、〔4〕 pHが4〜8である前記〔3〕に記載の口腔用組成物、ならびに〔5〕 ウルトラリン酸塩の含有量が0.5〜10重量%である前記〔3〕または〔4〕に記載の口腔用組成物に関する。 本発明の口腔用ステイン除去剤および該ステイン除去剤を含有する口腔用組成物は、歯ブラシなどによって歯面をブラッシングしなくてもステインや歯垢を効果的に除去することができるとともに、一旦ステインや歯垢が除去された歯面にステインなどが沈着することを防止することができる。 本発明の口腔用ステイン除去剤に、平均重合度が7〜12であるウルトラリン酸塩が用いられている場合には、ステインや歯垢の除去効果をより一層高めることができる。図1は、本発明の実施例15〜21で得られたウルトラリン酸塩および分画A〜Fのゲルろ過クロマトグラムである。 本発明のステイン除去剤は、ウルトラリン酸塩を含有する。ウルトラリン酸塩とは、2個以上のPO4四面体がそれぞれ他のPO4四面体が有する酸素原子を共有するように重合することによって生成するリン酸塩である縮合リン酸塩の一種である。 縮合リン酸塩は、M2O/P2O5(Mはアルカリ金属に代表される1価の金属を示す)のモル比により、ポリリン酸塩、メタリン酸塩およびウルトラリン酸塩に分類される。 ポリリン酸塩は、M2O/P2O5(Mは前記と同じ)のモル比の値(R)が2≧R>1であり、式(I): Mm+2PmO3m+1 (I)(式中、Mは前記と同じ。mは2以上の整数を示す)で表される直鎖状の化合物である。 メタリン酸塩は、M2O/P2O5(Mは前記と同じ)のモル比の値(R)が1であり、式(II): (MPO3)n (II)(式中、Mは前記と同じ。nは3以上の整数を示す)で表され、環状または極めて長い直鎖状の化合物である。前記ポリリン酸塩とメタリン酸塩とを合わせて、ポリリン酸塩と称されることもある。 ウルトラリン酸塩は、M2O/P2O5(Mは前記と同じ)のモル比の値(R)が1>R>0であり、式(III):(式中、Mは前記と同じ。xおよびyは0<x/y<1を満足する正の整数を示す)で表され、分子中に分枝PO4基を含む架橋構造を有する化合物であり、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩と比べて特異な構造を有している。式(III)において、xは、好ましくは2〜20の整数であり、yは、好ましくは4〜20の整数である。xおよびyは、ステインの除去効果を高める観点から、それぞれ、平均重合度7〜12を満たす正の整数であることが好ましい。 ウルトラリン酸塩の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。それらのなかでは、ナトリウム塩が好ましい。 ウルトラリン酸塩は、そのまま用いても優れたステインの除去効果を奏する。ウルトラリン酸塩の平均重合度は、ステインや歯垢の除去効果をより一層高める観点から、好ましくは7〜12、より好ましくは8.5〜11.5、さらに好ましくは9〜11である。 特定の平均重合度を有するウルトラリン酸塩を分画する方法としては、特に限定されないが、例えば、ウルトラリン酸塩のアルコール−水系溶媒における溶解度の差を利用する方法が挙げられる。ウルトラリン酸塩は、その重合度(分子量)が大きくなるにしたがってアルコール−水系溶媒に対する溶解度が小さくなり、アルコール濃度が高くなるにしたがってアルコール−水系溶媒に対する溶解度が低くなるという性質を有する。この性質を利用することにより、ウルトラリン酸塩を一定の平均重合度を有するように簡便に分画することができる。 分画に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、t−ブタノールなどが挙げられる。それらのなかでは、分画後の残存溶媒を考慮するとエタノールが好ましい。 分画方法としては、例えば、以下の操作が挙げられる。まず、ウルトラリン酸塩100重量部あたり水300〜500重量部の割合でウルトラリン酸塩を水に溶解させることにより、ウルトラリン酸塩の水溶液を調製する。前記水は、特に限定されないが、精製水であることが好ましい。 なお、ウルトラリン酸塩の水溶液には、ウルトラリン酸塩の分解を抑制する観点から、ウルトラリン酸塩の水溶液が中性〜弱酸性となるように、酸やアルカリを添加することが好ましい。より具体的には、ウルトラリン酸塩の水溶液のpHは、好ましくは4〜7、より好ましくは5〜7となるように調整することが望ましい。 次に、ウルトラリン酸塩100重量部あたりアルコール10〜20重量部の割合で、ウルトラリン酸塩の水溶液にアルコールを加えて攪拌する。このとき、アルコールは、ウルトラリン酸塩の水溶液中に高濃度で溶解し難いため、ウルトラリン酸塩の水溶液が下層に、ウルトラリン酸塩のアルコール水溶液が上層にそれぞれ分離する。 また、ウルトラリン酸塩の水溶液にアルコールが含まれている場合、ウルトラリン酸塩の重合度が大きいほど、その溶解度が低下することから、下層のウルトラリン酸塩の水溶液中には、重合度がより大きなウルトラリン酸塩が溶解しており、一方、上層のウルトラリン酸塩のアルコール水溶液中には、それよりも重合度が小さいウルトラリン酸塩が溶解している。 なお、上層と下層とを分離させる場合、上層と下層との分離を容易にする観点から、例えば、遠心分離機を用いて上層と下層とを遠心分離させることが好ましい。 分離した上層のアルコール水溶液には、ウルトラリン酸塩100重量部あたりアルコール10〜20重量部の割合で、アルコールを加えて攪拌する。これにより、アルコール水溶液中のアルコールの濃度が高くなることから、前記と同様に重合度が高いウルトラリン酸塩が下層に水溶液として分離し、それよりも重合度が低いウルトラリン酸塩がアルコール水溶液として上層に分離する。 こうして、一定回数の分離操作を繰返すことにより、一定の平均重合度を有するウルトラリン酸塩を容易に得ることができる。例えば、平均重合度が7〜12であるウルトラリン酸塩を得るためには、通常、アルコール−水系溶媒を用いた分離操作を3〜5回程度繰返せばよい。なお、ウルトラリン酸塩の単離に際しては、目的の分画を凍結乾燥や減圧下で濃縮してもよい。 本発明の口腔用ステイン除去剤におけるウルトラリン酸塩の含有量には、特に限定がない。ステイン除去剤は、ウルトラリン酸塩のみで構成されていてもよく、あるいは本発明の目的が阻害されない範囲で他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、潤滑剤、溶剤、香味剤、粘結剤、発泡剤、着色剤、保存剤などが挙げられる。 本発明の口腔用組成物は、前記ステイン除去剤を含有する。口腔用組成物中におけるステイン除去剤の含有量には、特に限定がない。口腔用組成物は、ステイン除去剤のみで構成されていてもよく、あるいは本発明の目的が阻害されない範囲内で他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、エタノールなどの溶媒;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどの可溶化剤;グリセリン、ソルビトールなどの潤滑剤;サッカリンナトリウム、ペパーミントオイル、メントールなどの香味剤;カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの粘結剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの発泡剤;炭酸カルシウム、無水ケイ酸などの研磨剤;カラメル、法定色素などの着色剤;パラベン、安息香酸ナトリウムなどの保存剤;リン酸塩、クエン酸塩などのpH調整剤;水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。 口腔用組成物中のウルトラリン酸塩の含有量は、ステインや歯垢の除去効果を効果的に発現させる観点から、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。あまりにも多量に含有させてもステインや歯垢の除去効果の向上が望めず、かえって経済性が低下する傾向があることから、好ましくは10重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。これらの観点から、口腔用組成物中のウルトラリン酸塩の含有量は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。 口腔用組成物のpHは、ステインや歯垢の除去効果を効果的に発現させる観点から、好ましくは8以下、より好ましくは6.5以下であり、齲蝕から歯のエナメル質を保護する観点から、好ましくは4以上、より好ましくはpH5以上である。これらの観点から、口腔用組成物のpHは、好ましくは4〜8であり、より好ましくは5〜6.5である。 本発明の口腔用組成物は、例えば、歯磨剤、洗口剤、入れ歯洗浄剤、歯牙パッチなどに用いることができる。また、本発明の口腔用組成物は、ステインや歯垢の除去効果に優れたステイン除去剤が含有されていることから、ヒトのみならず、自己が歯面をブラッシングしないイヌやネコなどのペット用の口腔用組成物としても有効に用いることができる。 次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。実施例1および比較例1〜2〔ステイン除去試験〕 被検液として、ウルトラリン酸ナトリウムの100mM(リン酸濃度)水溶液(pH6.2)、メタリン酸ナトリウムの100mM(リン酸濃度)水溶液(pH6.2)およびリン酸ナトリウムの100mM(リン酸濃度)水溶液(pH6.2)をそれぞれ調製した。より具体的には、必要量のウルトラリン酸ナトリウム〔太平化学産業(株)製、食品添加物規格品〕、メタリン酸ナトリウム〔太平化学産業(株)製、食品添加物規格品〕またはリン酸一ナトリウム(NaH2PO4・2H2O)をリン酸濃度が100mMとなるようにそれぞれ精製水80mLに溶解し、5N NaOHまたは5N HClを用いてpHを6.2に調整した後、精製水を加えて全量を100mLとした。 これとは別に、紅茶葉4gを沸騰させた精製水200mLに10分間浸し、この液を濾紙(ワトマン社製、No.5B)で濾過することにより、紅茶抽出液を得た。 次に、ヒドロキシアパタイト粉末150mgを15mL容の遠沈管に入れ、精製水10mLを加えて転倒混和し、混合液を調製した。この混合液を遠心分離機〔(株)クボタ製、5200型〕にて遠心分離(1500g、2分間)し、上清を取り除いた。この上清を除去した混合液に紅茶抽出液5mLを加えて1分間転倒混和した後、遠心分離(1500g、2分間)し、再度、上清を取り除いた。 この上清を除去した混合液に含まれているヒドロキシアパタイト粉末に未吸着の紅茶ステインを洗浄するため、精製水10mLを加えて1分間転倒混和した後、遠心分離(1500g、2分間)して上清を取り除いた。この操作をもう1回繰返した後、混合液に精製水10mLまたは各被検液10mLを加えて1分間転倒混和し、遠心分離(1500g、2分間)した。上清を取り除いた後、その混合液に精製水10mLを加えて1分間転倒混和して遠心分離(1500g、2分間)した。 この混合液から上清を取り除いた後、その混合液に精製水13mLを加えて1分間転倒混和し、フィルターパッド〔日本ミリポア(株)製、品番:AP10〕上で吸引濾過した。これを風乾してイメージスキャナー〔セイコーエプソン(株)製、GT−8300UF型〕でスキャンした後、画像を反転(ネガ化)し、画像解析プログラムImageJ〔インターネット(URL:〕で解析した。 各被検液における紅茶ステインの残存率は、被検液の代わりに精製水で同様に処理した場合の残存率を100%とし、紅茶抽出液を添加せずに同様に処理した場合をバックグラウンド(残存率:0%)として算出した。この試験を3回繰り返し、その平均値を採用した。その結果を表1に示す。 表1に示された結果から、ウルトラリン酸塩を用いた場合には(実施例1)、メタリン酸塩を用いた場合(比較例1)およびリン酸塩を用いた場合(比較例2)と対比して、ステインの除去効果が格段に高いことがわかる。実施例2〜5〔pHの影響の試験〕 ウルトラリン酸ナトリウム〔ミテジマ化学(株)製、食品添加物規格品〕1gを精製水80mLに溶解し、5N NaOHを用いてpHを5.5、6.2、6.9または7.6に調整した後、精製水で全量を100mLとした(リン酸濃度として100mM)。これらを被検液とし、実施例1と同様の方法でステイン除去試験を行なった。その結果を表2に示す。 表2に示された結果から、pHが大きくなるにしたがってステインや歯垢の除去効果が低下し、pHが小さいほうがステインや歯垢の除去効果に優れていることがわかる。また、pHが5.5である場合(実施例2)およびpHが6.2である場合(実施例3)では、ステインや歯垢の除去効果がほぼ同等であり、これらの場合には、弱アルカリ性であるpHが7.6である場合(実施例5)と対比して、ステインや歯垢の除去効果が約2.5倍大きいことがわかる。実施例6〜14〔濃度依存性の試験〕 ウルトラリン酸ナトリウム〔ミテジマ化学(株)製、食品添加物規格品〕の含有量が0、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、3.0、5.0または10.0w/v%の各水溶液(pH6.2)を調製した。これらの被検液を用いて、実施例1と同様の方法でステイン除去試験を行った。その結果を比較例2の結果とともに表3に示す。 表3に示された結果から、ウルトラリン酸塩の濃度が0.4w/v%以下である場合には、ステイン除去効果の濃度依存性が大きいことがわかる。これとは逆に、ウルトラリン酸塩の濃度を高めていくと、その濃度が1w/v%以上でステイン除去効果の濃度依存性が小さくなることがわかる。実施例15〜21ウルトラリン酸塩の分画試験(1) ウルトラリン酸ナトリウム〔ミテジマ化学(株)製、食品添加物規格品〕80gに精製水254mLおよび10N NaOH50mLを加えて溶解し、ウルトラリン酸水溶液(pH6.0)を調製した。このウルトラリン酸水溶液にエタノール15mLを加えて攪拌し、室温で10分間静置した後、遠心分離機〔(株)クボタ製、5200型〕にて遠心分離(10000g、10分間)し、上層1aと下層1bとに分離した。得られた下層1bを分画Aとした。 上層1aにエタノール16mLを加えて攪拌し、室温で10分間静置した後、遠心分離(10000g、10分間)し、上層2aと下層2bとに分離した。得られた下層2bを分画Bとした。 上層2aにエタノール17mLを加えて攪拌し、室温で10分間静置した後、前記と同様に遠心分離し、上層3aと下層3bとに分離した。得られた下層3bを分画Cとした。 上層3aにエタノール17.5mLを加えて攪拌し、室温で10分間静置した後、前記と同様に遠心分離し、上層4aと下層4bとに分離した。得られた下層4bを分画Dとした。 上層4aにエタノール18.5mLを加えて攪拌し、室温で10分間静置した後、前記と同様に遠心分離し、上層5aと下層5bとに分離した。得られた下層5bを分画Eとし、上層5aを分画Fとした。 得られた各分画を下記条件にてゲルろ過クロマトグラフィーで分析した。その結果を図1に示す。図1に示された結果から、分画A(図1中のA)が最も数平均分子量(平均重合度)が大きく、分画B(図1中のB)、分画C(図1中のC)、分画D(図1中のD)および分画E(図1中のE)の順に数平均分子量(平均重合度)が小さくなり、分画F(図1中のF)が最も数平均分子量(平均重合度)が小さいことがわかる。このことから、アルコール−水系溶媒を用いて溶解度の差を利用することにより、特定の数平均分子量(平均重合度)を有するウルトラリン酸塩を簡便に得ることができることがわかる。なお、溶出時間が短いほど分子量(重合度)はより大きい。なお、図1中のXは、分画前のウルトラリン酸ナトリウムのデータを示す。<HPLC条件> 分析機器 :(株)島津製作所製、商品名:島津LC2010C型HPLC カラム :昭和電工(株)製、商品名:Sodex OHpak SB−803HQ カラム温度:30℃ 溶媒 :0.1M NaCl 流速 :1mL/min 検出器 :(株)島津製作所製、商品名:示差屈折計検出器RID−10A 次に、ウルトラリン酸ナトリウムおよび上記で得られたA〜Fの各分画をリン酸としての濃度が100mMとなるように精製水で溶解または希釈し、5N NaOHまたは5N HClを用いてpHを6.2に調整した。これらを被検液とし、実施例1と同様の方法でステイン除去試験を行なった。その結果を表4に示す。 表4に示された結果から、分画C〜Eは、いずれも分画前のウルトラリン酸塩よりも優れたステインや歯垢の除去効果を有することがわかる。なかでも、分画Dが最もステインや歯垢の除去効果に優れており、分画前のウルトラリン酸塩と比べて、約2倍のステインや歯垢の除去効果を示すことがわかる。ウルトラリン酸塩の分画試験(2) 前記で得られた分画A〜Fおよび分画前のウルトラリン酸ナトリウムの平均重合度(平均鎖長)は、電気泳動を行ない、その泳動度により決定した。より具体的には、15%ポリアクリルアミドゲル〔アクリルアミド:ビスアクリルアミド(重量比)=30:0.8〕を用い、試料濃度1重量%、アプライ量4μL、140V定電圧で30分間電気泳動を行った。また、分子量スタンダードとして、平均重合度14、60および130の3種類のポリリン酸ナトリウムを各種分画の試料とともに電気泳動した。 電気泳動後、ゲルをトルイジンブルーで染色することにより、ポリリン酸を可視化し、染色したゲルの画像をイメージスキャナー〔セイコーエプソン(株)製、GT−8300UF型〕でスキャンし、電子データとして取り込み、泳動度(泳動距離)を前記画像解析プログラムImageJで解析した。解析は、各試料の泳動先端部と尾部の座標をピクセル数で測定し、先端部(低分子量側)と尾部(高分子量側)の中間点を平均重合度にあたる点として、泳動起点から中間点に至るまでの距離をピクセル数で算出した。分子量スタンダードの泳動度の結果を表5に示す。 表5に示された結果から、泳動度(x)に対する平均重合度の対数〔y:log(n)〕から、式:y=−0.002888x+2.767214(ただし、相関係数の二乗(R2)は0.987385である)で表される検量線が得られた。 また、上記検量線と各試料の泳動度の結果から、各試料の平均重合度を算出した。その結果を表6に示す。 表6に示されているように、分画前のウルトラリン酸塩よりもステインや歯垢の除去効果に優れている分画C〜Eの平均重合度は、8.7〜11.3であり、最もステインや歯垢の除去効果に優れている分画Dの平均重合度は、10.2であった。 表6に示された結果から、平均重合度が小さい分画Fや、平均重合度が大きい分画AおよびBでは、分画前のウルトラリン酸塩のステインや歯垢の除去活性と同程度の活性または除去活性の低下が認められることから、ステインや歯垢の除去効果を増強させるためには、ウルトラリン酸塩が特定範囲の平均重合度を有することが適切であることがわかる。実施例22および比較例3〔ステイン沈着防止試験〕 被検液として、ウルトラリン酸ナトリウムの100mM(リン酸濃度)水溶液(pH6.2)およびメタリン酸ナトリウムの100mM(リン酸濃度)水溶液(pH6.2)をそれぞれ実施例1と同様に調製した。 次に、ヒドロキシアパタイト粉末150mgを15mL容の遠沈管に入れ、精製水または各被検液10mLを加えて転倒混和した後、遠心分離機〔(株)クボタ製、5200型〕にて遠心分離(1500g、2分間)し、上清を取り除いた。残渣に精製水10mLを加えて1分間転倒混和した後、遠心分離(1500g、2分間)により上清を取り除き、ヒドロキシアパタイト粉末を洗浄した。この洗浄操作を再度繰返した後、該ヒドロキシアパタイト粉末に紅茶抽出液5mLを加えて1分間転倒混和した。 その後、遠心分離機でこのヒドロキシアパタイト粉末と紅茶抽出液との混合物の遠心分離(1500g、2分間)を行ない、上清を取り除いた後、該混合物に精製水10mLを加えて1分間転倒混和して遠心分離(1500g、2分間)した。前記混合物から上清を取り除いた後、該混合物に精製水13mLを加えて1分間転倒混和し、フィルターパッド〔日本ミリポア(株)製、品番:AP10〕上で吸引濾過した。 次に、このフィルターパッドを用いて実施例1と同様の操作により紅茶ステインの沈着率を算出した。なお、各被検液における紅茶ステインの沈着率は、被検液の代わりに精製水で同様に処理した場合の沈着率を100%とし、紅茶抽出液を添加せずに精製水のみで同様に処理した場合をバックグラウンド(沈着率:0%)として算出した。その結果を表7に示す。 表7に示された結果から、ウルトラリン酸塩は、歯面などへのステインの沈着を防止する効果は、メタリン酸塩よりも約1.7倍優れていることがわかる。 以下、本発明の口腔用組成物の処方例を示す。なお、各成分の量は、いずれも重量%である。処方例1(粉末タイプ洗口剤) 無水ケイ酸 2.5 ウルトラリン酸ナトリウム(実施例19で得られた分画D) 3.0 サッカリンナトリウム 0.2 着色剤 適 量 香料 適 量 炭酸水素ナトリウム 残 部 合 計 100.0処方例2(洗口剤) エタノール 1.0 グリセリン 2.5 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0 ウルトラリン酸ナトリウム(実施例19で得られた分画D) 4.5 サッカリンナトリウム 0.15 安息香酸ナトリウム 0.05 リン酸ニ水素ナトリウム 3.5 着色剤 適 量 香料 適 量 精製水 残 部 合 計 100.0処方例3(粉歯磨) ラウリル硫酸ナトリウム 2.0 ウルトラリン酸ナトリウム(実施例19で得られた分画D) 4.0 サッカリンナトリウム 0.1 精製水 適 量 香料 適 量 炭酸カルシウム 残 部 合 計 100.0処方例4(液体歯磨) エタノール 10.5 グリセリン 4.5 ラウリル硫酸ナトリウム 1.2 ウルトラリン酸ナトリウム(実施例19で得られた分画D) 5.0 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール 0.5 サッカリンナトリウム 0.15 安息香酸ナトリウム 0.1 香料 適 量 着色剤 適 量 精製水 残 部 合 計 100.0処方例5(練歯磨) 第二リン酸カルシウム・ニ水和物 45.0 無水ケイ酸 2.0 グリセリン 15.0 カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.8 カラギーナン 0.3 ラウリル硫酸ナトリウム 1.5 ウルトラリン酸ナトリウム(実施例19で得られた分画D) 4.0 サッカリンナトリウム 0.15 ヒノキチオール 適 量 香料 適 量 パラベン 適 量 精製水 残 部 合 計 100.0 本発明の口腔用ステイン除去剤および口腔用組成物は、歯面などへのステインの沈着を防止するうえに、優れたステインや歯垢の除去効果を奏するので、歯磨剤、洗口剤、入れ歯洗浄剤、歯牙パッチなどの口腔用の製剤に好適に用いることができる。 ウルトラリン酸塩を含有してなる口腔用ステイン除去剤であって、当該ウルトラリン酸塩の平均重合度が7〜12であることを特徴とする口腔用ステイン除去剤。 請求項1に記載のステイン除去剤を含有してなる口腔用組成物。 pHが4〜8である請求項2に記載の口腔用組成物。 ウルトラリン酸塩の含有量が0.5〜10重量%である請求項2または3に記載の口腔用組成物。