生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_炎症性疾患の予防または治療剤
出願番号:2008520634
年次:2012
IPC分類:A61K 39/395,A61P 29/00,A61P 17/00,A61P 19/02,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

長谷川 雅一 北村 秀智 安達 秀樹 糟谷 恵子 JP 5043008 特許公報(B2) 20120720 2008520634 20070608 炎症性疾患の予防または治療剤 中外製薬株式会社 000003311 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 井上 隆一 100142929 大関 雅人 100114340 長谷川 雅一 北村 秀智 安達 秀樹 糟谷 恵子 JP 2006160096 20060608 20121010 A61K 39/395 20060101AFI20120920BHJP A61P 29/00 20060101ALI20120920BHJP A61P 17/00 20060101ALI20120920BHJP A61P 19/02 20060101ALI20120920BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120920BHJP JPA61K39/395 DA61K39/395 NA61P29/00A61P17/00A61P29/00 101A61P19/02A61P43/00 111 A61K 39/00-395 A61P 17/00 A61P 19/00-02 A61P 29/00 A61P 43/00 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) WPI 医学中央雑誌WEB 国際公開第02/077230(WO,A1) SONKOLY, E., et al.,IL-31: A new link between T cells andpruritus in atopic skin inflammation,Journal of Allergy andClinical Immunology,2006年,Vol.117, No.2,p.411-417 BILSBOROUGH, J., et al.,IL-31 is associated with cutaneouslymphocyte antigen-positive skin homing T cells in patients withatopic dermatitis,Journal of Allergy and Clinical Immunology,2006年,Vol.117, No.2,p.418-425 永田欽也, 他,新しいサイトカインIL-31,月刊リウマチ科,2006年 3月28日,第35巻, 第3号,p.282-286 16 JP2007061625 20070608 WO2007142325 20071213 24 20100519 横井 宏理 本発明は、NR10アンタゴニストを有効成分として含有する、新規な炎症性疾患の予防または治療剤に関する。本発明はまた、NR10アンタゴニストを用いた炎症性疾患を予防または治療する方法に関する。 種々の細胞の増殖分化、あるいは分化成熟した細胞の機能の賦活化に関与する液性因子として、数多くのサイトカインの存在が知られている。生体では、サイトカイン刺激を受けた細胞が別のサイトカインを産生し、複数のサイトカインによるネットワークが形成されている。生体の恒常性は、このネットワークが互いに調節し合うことによって、微妙なバランスの上に保たれている。多くの免疫炎症性の疾患は、これらのサイトカイン・ネットワークの破綻により生じると考えられ、モノクローナル抗体による抗サイトカイン療法が注目されている。例えば、抗TNF抗体や抗IL-6受容体抗体は、臨床で高い効果を示している。しかし一方で、実際の病態では代償経路が働き、IL-4等ひとつのサイトカインを遮断しただけでは治療効果が得られず、失敗した例も多い。 本発明者らは、IL-6のシグナル伝達受容体gp130に相同性の高い、新規サイトカイン受容体NR10の単離に成功した(特許文献1)。NR10は、オンコスタチンM受容体(OSMR)とヘテロダイマーを形成し、IL-31の受容体として機能する(非特許文献1)。Zymogenetics社は、IL-31を過剰発現させたトランスジェニック・マウスが掻痒性皮膚炎を自然発症することを報告した(特許文献2)。 しかしながら、マウスにおけるサイトカインの強制発現や、病態マウスにおける血中のサイトカイン濃度の高さが、実際に疾患の原因となっていると断言することは出来ない。抗体によりシグナルを遮断した時に治療効果が得られるかは、全く不明である。例えば、IL-18をケラチノサイトで過剰発現させたトランスジェニック・マウスは、掻痒性皮膚炎を発症する。また、アトピー性皮膚炎自然発症モデルNC/Ngaマウスでは、血中のIL-18濃度が病態の進行とともに上昇する。これらから、IL-18の過剰発現が疾患の原因として推察された。しかしながら、実際には、中和抗体投与による治療効果は認められなかった(非特許文献2)。 このように、サイトカインの発現が上昇している疾患において、そのサイトカインの機能を阻害したとしても必ずしも治療効果が得られる訳ではなく、サイトカインの発現量から実際に治療効果が得られる疾患を推測することは困難である。従って、ターゲットとするサイトカインのシグナル伝達の阻害により実際に治療効果が得られる疾患を見出すことが重要である。 なお、本発明の先行技術文献を以下に示す。WO00/75314WO03/060090IL-31 is associated with cutaneous lymphocyte antigen-positive skin homing T cells in patients with atopic dermatitis., J Allergy Clin Immunol. 2006 Feb;117(2):418-25.Administration of anti-interleukin 18 antibody fails to inhibit development of dermatitis in atopic dermatitis-model mice NC/Nga., British Journal of Dermatology 149: 39-45, 2003 本発明は上述の背景に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、サイトカイン受容体アンタゴニストによる炎症性疾患に対する抗サイトカイン療法を提供することである。より具体的には、本発明の課題は、抗NR10中和抗体により治療効果が得られる炎症性疾患を見出し、それらの疾患に対する新しい治療方法を提供することである。本発明はまた、ヒトに対する臨床応用が可能な抗ヒトNR10中和抗体を提供することも課題とする。 本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。本発明者らは、様々な病態モデルマウスを対象とした抗マウスNR10中和抗体の薬効の評価を試みた。その結果、NC/Ngaマウスを用いたアトピー性皮膚炎モデルマウス、塩化ピクリルの繰返し塗布による慢性皮膚炎モデルマウスにおいて、顕著な症状の抑制効果が示され、実際に、中和抗体が治療薬として有用であることが明らかにされた。また、リウマチのモデルであるコラーゲン関節炎および変形性関節症のモデルであるコラゲナーゼ関節炎においても症状を抑制する効果が確認された。これらの結果は、本願のNR10中和抗体が、慢性炎症の予防または治療に応用可能であることを示唆する。さらに本発明者らは、ヒトNR10中和抗体の取得にも成功した。すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔17〕を提供するものである。〔1〕NR10アンタゴニストを有効成分として含有する、炎症性疾患の予防または治療剤。〔2〕NR10アンタゴニストがNR10に対する中和活性を有する抗体である、〔1〕に記載の予防または治療剤。〔3〕抗体がモノクローナル抗体である、〔2〕に記載の予防または治療剤。〔4〕抗体がヒトNR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体である、〔2〕に記載の予防または治療剤。〔5〕抗体が組換え抗体である、〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の予防または治療剤。〔6〕組換え抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、〔5〕に記載の予防または治療剤。〔7〕NR10に対する中和活性を有する抗体の断片及び/又はその修飾物を有効成分として含有する、〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載の予防または治療剤。〔8〕炎症性疾患がアトピー性皮膚炎である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の予防または治療剤。〔9〕炎症性疾患が慢性皮膚炎である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の予防または治療剤。〔10〕炎症性疾患がリウマチである〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の予防または治療剤。〔11〕炎症性疾患が変形性関節症である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の予防または治療剤。〔12〕NR10に対する中和活性を有する抗体。〔13〕モノクローナル抗体である、〔12〕に記載の抗体。〔14〕NR10がヒトNR10である〔12〕に記載の抗体。〔15〕組換え型抗体である、〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載の抗体。〔16〕組換え型抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、〔15〕に記載の抗体。〔17〕〔12〕〜〔16〕のいずれかに記載の抗体の断片及び/又はその修飾物。〔18〕NR10アンタゴニストを炎症性疾患を呈する患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を予防または治療する方法。〔19〕炎症性疾患の予防または治療のために用いる剤の製造における、NR10アンタゴニストの使用。BM095をIL-31依存性Ba/F3細胞増殖アッセイ系に添加したときの、BM095による細胞増殖抑制効果を観察した結果を示すグラフである。横軸はアッセイ系中の推定mIL-31濃度、縦軸(OD450(450nmの吸光度))は細胞量を表す。凡例は、BM095添加量(単位:ng/mL)を示す。BM095添加量に依存して細胞増殖抑制効果が観察された。アトピー性皮膚炎モデルマウスに抗NR10抗体を投与したときの治療効果を示すグラフである。陰性対照群(vehicle群)と比較し、抗NR10抗体投与群では有意な炎症抑制効果が確認された。アトピー性皮膚炎モデルマウスに抗NR10抗体を投与したときの経時的体重変化を示すグラフである。既存抗炎症剤投与群では体重減少が観察されたにもかかわらず、抗NR10投与群では体重の変化が無く、抗NR10抗体の安全性が認められた。慢性皮膚炎モデルマウスに抗NR10抗体を投与したときの治療効果を示すグラフである。抗NR10抗体投与群では、有意な耳介腫脹抑制効果が認められた。慢性皮膚炎モデルのマウス耳介の免疫組織染色を示す写真である。ヒトと同様に、肥厚した表皮でマウスNR10の発現亢進が観察された。コラーゲン誘発関節炎モデルマウスに抗NR10抗体を投与したときの関節炎発症抑制効果を示すグラフである。コラゲナーゼ誘発関節炎(変形性関節症)モデルにおいて、BM095の投与濃度とAUCとの関係を示すグラフである。ここでAUCとは、左右の膝関節幅の差を右膝関節の腫脹を表す値とし、その推移の曲線下面積を意味する。IL-31存在下におけるヒトNR10中和抗体(精製抗体)の濃度と細胞増殖抑制活性の相関を表すグラフである。抗体1、抗体2、抗体3は高いNR10中和活性を示した。IL-31存在下におけるヒトNR10に対するキメラ抗体NA633の濃度と細胞増殖抑制活性の相関を表すグラフである。NA633は高いNR10中和活性を示した。カニクイザルNR10とヒトNR10のアミノ酸配列を比較した図である。二重下線を付した配列は、細胞膜貫通領域を示している。キメラNA633抗体の、ヒトIL-31刺激カニクイザルNR10/ヒトOSMR/BaF細胞株の細胞増殖抑制活性を示すグラフである。NA633はカニクイザルNR10にも中和活性を示した。DSS大腸炎モデルマウスの体重変化率の推移を示すグラフである。急性Picryl chloride 接触性皮膚炎モデルの耳介の厚さの変化の推移を示すグラフである。 本発明は、NR10アンタゴニストを活性成分として含有する炎症性疾患の予防または治療剤に関する。本発明は、本発明者らによって、NR10アンタゴニスト(例えば、抗NR10中和抗体)がアトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、リウマチ、変形性関節症等を発症したモデルマウスにおいてその症状の顕著な抑制効果が見出されたことに基づく。 NR10は、オンコスタチンM受容体(OSMR)とヘテロダイマーを形成し、IL-31の受容体として機能するタンパク質である。glm-r(J Biol Chem 277, 16831-6, 2002)、GPL(J Biol Chem 278, 49850-9, 2003)、IL-31RA(Nat Immunol 5, 752-60, 2004)などの名前としても知られており、本発明のNR10には、このような名前で呼ばれるタンパク質も含まれる。また本発明のNR10には、ヒトやマウス、その他の哺乳動物に由来するNR10も含まれ、特に限定されるものではないが、好ましいNR10としてヒトやマウス由来のNR10が挙げられる。ヒト由来のNR10として、複数のスプライシングバリアントが知られている(WO00/075314)。上記スプライシングバリアントのうち、NR10.1は662アミノ酸からなり、細胞膜貫通領域を有することを特徴とする。また、NR10.2は、252アミノ酸配列からなる膜貫通領域を持たない可溶性受容体様タンパク質である。一方、細胞膜貫通型受容体タンパク質として機能するNR10スプライシングバリアントとして、NR10.3およびIL-31RAv3が知られている。本発明におけるヒトNR10は、オンコスタチンM受容体(OSMR)とヘテロダイマーを形成し、IL-31の受容体として機能するものであれば特に制限されるものではないが、好ましいNR10としてはNR10.3(ILRAv4とも呼ばれる(Nat Immunol 5, 752-60, 2004))およびIL-31RAv3を挙げることができる。NR10.3(IL-31RAv4)は662アミノ酸からなり(WO00/075314,Nat Immunol 5, 752-60, 2004)、IL-31RAv3は732アミノ酸からなる(GenBank Accession No: NM_139017)。IL-31RAv4のアミノ酸配列を配列番号:6に、IL-31RAv3のアミノ酸配列を配列番号:7に示す。一方、マウス由来のNR10としては、配列番号:5に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。 本発明においてNR10アンタゴニストとは、NR10に結合することにより、NR10活性化に基づく細胞内シグナル伝達を遮断し、細胞の生理的活性を喪失させるまたは抑制する物質を意味する。ここで生理的活性としては、例えば、生理活性物質(例えば、ケモカイン、炎症性サイトカインなど)の産生誘導活性、産生抑制活性、分泌促進活性、分泌抑制活性、増殖活性、増殖誘導活性、生存活性、分化活性、分化誘導活性、転写活性、膜輸送活性、結合活性、タンパク質分解活性、リン酸化/脱リン酸化活性、酸化還元活性、転移活性、核酸分解活性、脱水活性、細胞死誘導活性、アポトーシス誘導活性などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。 アンタゴニスト活性の有無の判定は当業者に公知の方法により行うことが可能である。例えば、細胞表面上に発現させたNR10に、リガンドの存在下で被検化合物を接触させ、NR10の活性化の指標となる細胞内シグナル伝達が生じるか否かを判定すればよい。このような判定は、例えば、文献「Dillon SR, et al., Interleukin 31, a cytokine produced by activated T cells, induces dermatitis in mice. Nat Immunol. 2004 Jul; 5(7):752-60.」に記載の方法によって行うことが可能である。リガンド刺激に応答した細胞内シグナル伝達を阻害する化合物は、NR10のアンタゴニストであると考えられる。 本発明におけるアンタゴニストは、天然の化合物であっても人工の化合物であってもよい。本発明におけるアンタゴニストとしては公知のものを用いることができる。また、上記方法によってアンタゴニスト活性を有すると判定された新規化合物を用いることもできる。 本発明におけるNR10アンタゴニストの1つの態様としては、NR10に対する中和活性を有する抗体が挙げられる。本発明における「NR10に対する中和活性を有する抗体」とは、NR10に基づく生理活性を抑制する作用を有する抗体を意味する。本発明における「NR10に対する中和活性を有する抗体」はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、好ましい態様としてはモノクローナル抗体が挙げられる。 NR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体は、たとえば、ヒトやマウス等の哺乳動物に由来するNR10またはその断片ペプチドを免疫原として、公知方法によって抗NR10モノクローナル抗体を調製した後、得られた抗NR10モノクローナル抗体の中からNR10中和活性を有する抗体を選別することにより、得ることが出来る。すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫する。得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって、抗NR10モノクローナル抗体を作製することが可能である。免疫される動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、サル、ヤギ、ロバ、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物を用いることができる。抗原の調製は、公知NR10遺伝子配列を用い、公知の方法、例えばバキュロウイルスを用いた方法(WO98/46777など)等に準じて行うことができる。NR10中和活性を有する抗体の選別は、例えば、実施例において後述するように、IL-31依存性細胞株に候補の抗体を添加したときの、該IL-31依存性細胞株の増殖抑制効果を観察する方法により、該抗体がNR10中和活性を有する抗体であるか判定することができる。上記方法においてIL-31依存性細胞株の増殖を抑制する抗体は、NR10に対する中和活性を有する抗体であると考えられる。 ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行ってもよい。 本発明のNR10に対する中和活性を有する抗体の好ましい態様として、ヒトNR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体が挙げられる。ヒトNR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体を作製するための免疫原としては、ヒトNR10に対する中和活性を有する抗体を作製できる限り、特に限定されない。例えばヒトNR10には複数のバリアントの存在が知られるが、ヒトNR10に対する中和活性を有する抗体を作製できる限り、いずれのバリアントを免疫原としてもよい。または同様の条件のもとに、NR10の断片ペプチドや、天然のNR10配列に人為的な変異を加えたものを免疫原としてもよい。ヒトNR10.3は、本発明のNR10に対する中和活性を有する抗体を作製するうえで、好ましい免疫原の一つである。 ここで、本発明の上記抗体は、NR10に対する中和活性を有するものであれば特に限定されず、キメラ(chimeric)抗体、ヒト化(humanized)抗体、ヒト抗体などの組換え抗体も含まれる。キメラ抗体とは、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体である。キメラ抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。例えば、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入することによって行うことが可能である(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望のヒト抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、ヒト抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、キメラ抗体を発現させることができる。 ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。 また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。 さらに、ヒト抗体ファージライブラリーを用いて、パニング法によりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は周知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388などを参考にすることができる。 重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、NR10に対する中和活性を有する限り、NR10に対する中和活性が確認された抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されていてもよい。重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されており、NR10に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列を調製するための、当業者によく知られた方法としては、タンパク質に変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492)などを用いて、NR10に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列に適宜変異を導入することにより、NR10に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域と機能的に同等な変異体を調製することができる。このように、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域において、1もしくは複数のアミノ酸が変異しており、NR10に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域もまた本発明の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域に含まれる。 アミノ酸残基を改変する場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、及び、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸の置換を保存的置換と称す。あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1984)81:5662-6; Zoller, M. J. and Smith, M., Nucleic Acids Res.(1982)10:6487-500; Wang, A. et al., Science(1984)224:1431-3; Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1982)79:6409-13)。このような変異体は、本発明の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、そして、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有する。本明細書において配列の同一性は、配列同一性が最大となるように必要に応じ配列を整列化し、適宜ギャップ導入した後、元となった重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列の残基と同一の残基の割合として定義される。アミノ酸配列の同一性は、上述の方法により決定することができる。 また、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されており、NR10に対する中和活性を有する重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、該重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸から得ることも可能である。重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を単離するための、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、6M 尿素、0.4%SDS、0.5 x SSC、37℃の条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を例示できる。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4%SDS、0.1 x SSCの条件、42℃を用いれば、より相同性の高い核酸の単離を期待することができる。単離した核酸の配列の決定は、後述の公知の方法によって行うことが可能である。単離された核酸の相同性は、塩基配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。 上記ハイブリダイゼーション技術を利用する方法にかえて、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列情報を基に合成したプライマーを用いる遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を単離することも可能である。 塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:5873-7)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al.,J.Mol.Biol.(1990)215:403-10)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(NCBI (National Center for Biotechnology Information) の BLAST (Basic Local Alignment Search Tool) のウェブサイトを参照;http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。 また本発明における抗体は、低分子化抗体であってもよい。本発明の低分子化抗体は、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)の一部分が欠損している抗体断片を含み、NR10への中和活性を有する限り特に限定されない。本発明の低分子化抗体は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましく、特に好ましくはVHとVLの両方を含む低分子化抗体である。 本発明における低分子化抗体は、全長抗体よりも分子量が小さくなることが好ましいが、例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーなどの多量体を形成すること等もあり、全長抗体よりも分子量が大きくなることもある。 本発明における低分子化抗体の一つとして、scFv抗体を挙げることができる。scFv抗体は、重鎖可変領域([VH])及び軽鎖可変領域([VL])をリンカー等で結合して一本鎖ポリペプチドにした抗体である(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883、 Plickthun「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」Vol.113, Resenburg 及び Moore編, Springer Verlag, New York, pp.269-315, (1994))。結合される重鎖可変領域と軽鎖可変領域の順序は特に限定されず、どのような順序で並べられていてもよく、例えば、以下のような配置を挙げることができる。[VH]リンカー[VL][VL]リンカー[VH] 重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、置換、欠失、付加及び/又は挿入されていてもよい。さらに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を会合させた場合に、抗原結合活性を有する限り、一部を欠損させてもよいし、他のポリペプチドを付加してもよい。又、可変領域はキメラ化やヒト化されていてもよい。 本発明において、抗体の可変領域を結合するリンカーは、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカー、例えば、Protein Engineering, 9(3), 299-305, 1996に開示されるリンカーを用いることができる。 本発明において好ましいリンカーはペプチドリンカーである。ペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能であるが、通常、1〜100アミノ酸、好ましくは3〜50アミノ酸、更に好ましくは5〜30アミノ酸、特に好ましくは12〜18アミノ酸(例えば、15アミノ酸)である。 ペプチドリンカーのアミノ酸配列としては、例えば、以下のような配列を挙げることができる。SerGly・SerGly・Gly・SerSer・Gly・GlyGly・Gly・Gly・Ser(配列番号:8)Ser・Gly・Gly・Gly(配列番号:9)Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:10)Ser・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:11)Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:12)Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:13)Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:14)Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:15)(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:10))n(Ser・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:11))n[nは1以上の整数である]等を挙げることができる。 合成化学物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドの架橋に通常用いられている架橋剤、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ−EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ−DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、ビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ−BSOCOES)などであり、これらの架橋剤は市販されている。 本発明の抗体には、本発明の抗体のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加された抗体も含まれる。また、これら抗体と他のペプチド又はタンパク質とが融合した融合タンパク質も含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと他のペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の抗体との融合に付される他のペプチド又はポリペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の抗体との融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。 本発明の抗体は、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られた抗体が、本発明の抗体と同等の機能を有している限り、本発明に含まれる。例えば、本発明の抗体を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明の抗体はこのような抗体も包含する。 本発明の抗体は当業者に公知の方法により作製することができる。例えば、NR10を認識する抗体の配列を基に、当業者に公知の遺伝子組換え技術を用いて作製することが可能である。具体的には、NR10を認識する抗体の配列を基に抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。 ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。本発明の抗体を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043)、またはT7プロモーターなどを持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(ファルマシア製)、「QIAexpress system」(キアゲン製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。 また、ベクターには、抗体分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379)を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。 大腸菌以外にも、例えば、本発明の抗体を製造するためのベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(インビトロゲン社製)や、pEF-BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン製)、pNV11、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。 CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。 さらに、遺伝子を安定的に発現させ、かつ、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を目的とする場合には、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pSV2-dhfr(「Molecular Cloning 2nd edition」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989))など)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられ、また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。 これにより得られた本発明の抗体は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一な抗体として精製することができる。抗体の分離、精製は、通常の抗体の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる。 クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose FF(GE Amersham Biosciences)等が挙げられる。本発明は、これらの精製方法を用い、高度に精製された抗体も包含する。 また本発明は、上記本発明の抗体の断片及び/又はその修飾物を有効成分として含有する、炎症性疾患の予防または治療剤を提供する。本発明の抗体の断片及び/又はその修飾物は、本発明の抗体(全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)、組換え抗体(例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等)、低分子化抗体(例えばscFv抗体等))の一部が欠損している抗体断片を含み、抗原への結合能を有していれば特に限定されない。本発明の抗体断片は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)又は/及び軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましい。VHまたはVLのアミノ酸配列は、置換、欠失、付加及び/又は挿入がされていてもよい。さらに抗原への結合能を有する限り、VH又は/及びVLの一部を欠損させてもよい。又、可変領域はキメラ化やヒト化されていてもよい。抗体断片の具体例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv等を挙げることができる。このような抗体断片を得るには、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。 また本発明の抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、放射性物質、蛍光物質、発光物質、酵素、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている(例えば、US5057313、US5156840)。本発明における「抗体」にはこれらのコンジュゲート抗体も包含される。 抗体のNR10に対する結合活性の測定は、当業者に公知の方法により行うことが可能である。例えば、抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、抗原をコーティングしたプレートに、抗体を含む試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p-ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。 また、抗体のNR10に対する中和活性の測定は、例えば、実施例記載の、該IL-31依存性細胞株の増殖抑制効果を観察する方法によって行うことができる。 本発明のNR10アンタゴニスト又はNR10に対する中和活性を有する抗体は、炎症性疾患の予防または治療剤に用いることが出来る。本発明者らは、マウスNR10に対する中和抗体を各種炎症モデル動物に投与し、顕著な治療効果が得られることを実証した。また、アトピー性皮膚炎患者の肥厚した表皮において、ヒトNR10の発現が亢進しているとの報告があり(非特許文献1)、一方、本発明者らは上記慢性皮膚炎モデルのマウス耳介の免疫組織染色を行ったところ、ヒトと同様に、肥厚した表皮でマウスNR10の発現が亢進していることを確認した(実施例5)。これらのことから、NR10は、炎症性疾患においていずれの動物種においても同様に関与していると考えられ、ヒトNR10に対する中和抗体は、マウスNR10中和抗体と同様に、各種炎症性疾患の予防および治療に有効であると考えられる。さらに、抗体以外のNR10アンタゴニストについても、本実施例における所見と同様に、各種炎症性疾患に対する治療効果を有するものと考えられる。 本発明において炎症性疾患とは、物理的、化学的、または生物学的作用物質による損傷や異常刺激によって、罹患した血管および隣接した組織に起こる細胞学的・組織学的反応に関する病理学上の所見を伴う疾患(ステッドマン医学大辞典第5版、株式会社メジカルレビュー社、2005年)を言う。一般的に炎症性疾患は皮膚炎(アトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、等)、炎症性腸疾患(大腸炎、等)、喘息、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、等)、気管支炎、Th-2型自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、慢性GVHD、クローン病、変形性脊椎炎、腰痛、痛風、手術外傷後の炎症、腫脹の緩解、神経痛、咽喉頭炎、膀胱炎、肝炎(非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性肝炎、等)、B型肝炎、C型肝炎、動脈硬化などが挙げられる。 本発明の対象となる炎症性疾患の好ましい例として、アトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、リウマチ、変形性関節症、慢性喘息が挙げられる。 本発明者らは、NR10に対するアンタゴニスト抗体がアトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、リウマチ、変形性関節症に対して治療効果を有していることを見出した。一方、急性接触性皮膚炎およびDSS急性大腸炎モデルにおいては、NR10に対するアンタゴニスト抗体が治療効果を有さないことが判明した。 本発明の炎症性疾患の予防または治療剤は、上述のNR10アンタゴニスト又はNR10に対する中和活性を有する抗体を有効成分として含有することを特徴とする。NR10アンタゴニストを「有効成分として含有する」とは、NR10アンタゴニストを活性成分の少なくとも1つとして含むという意味であり、その含有率を制限するものではない。また、本発明の炎症性疾患の予防または治療剤は、NR10アンタゴニストと合わせて他の炎症性疾患の予防または治療を促進する成分を含有してもよい。 本発明のNR10アンタゴニストは、常法に従って製剤化することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)。さらに、必要に応じ、医薬的に許容される担体及び/または添加物を供に含んでもよい。例えば、界面活性剤(PEG、Tween等)、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤(リン酸、クエン酸、他の有機酸等)、キレート剤(EDTA等)、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含むことができる。しかしながら、本発明の炎症性疾患の予防または治療剤は、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜含んでいてもよい。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン及び免疫グロブリン等の蛋白質、並びに、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸を含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、NR10アンタゴニストを、例えば、生理食塩水、ブドウ糖またはその他の補助薬を含む等張液に溶解する。補助薬としては、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、さらに、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO-50)等と併用してもよい。 また、必要に応じNR10アンタゴニストをマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる(Remington's Pharmaceutical Science 16th edition &, Oslo Ed. (1980)等参照)。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、NR10アンタゴニストに適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res.(1981) 15: 167-277; Langer, Chem. Tech. (1982)12: 98-105;米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開(EP)第58,481号; Sidman et al., Biopolymers(1983)22:547-56;EP第133,988号)。 本発明の炎症性疾患の予防または治療剤は、経口または非経口のいずれでも投与可能であるが、好ましくは非経口投与される。具体的には、注射及び経皮投与により患者に投与される。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射等により全身又は局所的に投与することができる。炎症を抑制したい部位またはその周辺に局所注入、特に筋肉内注射してもよい。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。投与量としては、例えば、1回につき体重1kgあたり活性成分が0.0001mg〜100mgの範囲で選ぶことが可能である。または、例えば、ヒト患者に投与する場合、患者あたり活性成分が0.001〜1000mg/kg・body・weightの範囲を選ぶことができ、1回当たり投与量としては、例えば、NR10アンタゴニストが0.01〜50mg/kg・body・weight程度の量が含まれることが好ましい。しかしながら、本発明の炎症性疾患の予防または治療剤は、これらの投与量に制限されるものではない。 また本発明は、NR10に対する中和活性を有する抗体(NR10に対する中和活性を有する抗体の断片及び/又はその修飾物を含む。以下同様)を提供する。本発明のNR10に対する中和活性を有する抗体は、上記炎症疾患の予防または治療剤において有効成分として有用である。本発明のNR10に対する中和活性を有する抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、好ましくはモノクローナル抗体である。NR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体は、上述の方法によって得ることが可能である。また、本発明のモノクローナル抗体は、哺乳動物由来のNR10またはその断片に対して中和活性を有し、好ましくはヒトやマウス由来のNR10またはその断片に対して中和活性を有し、さらに好ましくはヒト由来のNR10またはその断片に対して中和活性を有する。ヒトNR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体を作成するためには、免疫原としてヒトのNR10またはその断片ペプチドを用いればよい。また、本発明のNR10に対する中和活性を有する抗体は、組換え抗体であってもよい。本発明のNR10に対する中和活性を有する組換え抗体としては、これに限定されるものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、低分子化抗体が挙げられる。 本発明において、NR10に対する中和活性を有する抗体の例としては、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する抗マウスNR10抗体を挙げることができる。 本発明には、ヒトNR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体も含まれる。本発明のヒトNR10に対する中和活性を有するモノクローナル抗体は、上述のように、免疫原としてヒトのNR10またはその断片ペプチドを用いることによってモノクローナル抗体を作製し、さらにそれら抗ヒトNR10モノクローナル抗体の中から、上記IL-31依存性細胞株を用いたアッセイ系によって、ヒトNR10中和活性を有する抗体を選抜することが可能である。 本発明において、ヒトNR10に対する中和活性を有する抗体の例としては、以下の(a)から(d)いずれかに記載の抗体を挙げることができる。(a) CDR1として配列番号:18に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:19に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:20に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有する抗体。(b) CDR1として配列番号:21に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:22に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:23に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体。(c) (a)の重鎖可変領域と(b)の軽鎖可変領域を有する抗体。(d) (a)〜(c)いずれかに記載の抗体と同じエピトープを認識する抗体。 ある抗体が他の抗体と同じエピトープを認識するか否かは、両者のエピトープに対する競合によって確認することができる。抗体間の競合は、競合結合アッセイによって評価することができ、その手段としてELISA、蛍光エネルギー転移測定法(FRET)や蛍光微量測定技術(FMAT(登録商標))などが挙げられる。抗原に結合した該抗体の量は、同じエピトープへの結合に対して競合する候補競合抗体(被検抗体)の結合能に間接的に相関している。すなわち、同じエピトープに対する被検抗体の量や親和性が大きくなるほど、該抗体の抗原への結合量は低下し、抗原への被検抗体の結合量は増加する。具体的には、抗原に対し、適当な標識をした該抗体と評価すべき抗体を同時に添加し、標識を利用して結合している該抗体を検出する。抗原に結合した該抗体量は、該抗体を予め標識しておくことで、容易に測定できる。この標識は特には制限されないが、手法に応じた標識方法を選択する。標識方法は、具体的に蛍光標識、放射標識、酵素標識などが挙げられる。 例えば、NR10を発現させた動物細胞に蛍光標識した該抗体と、非標識の該抗体あるいは被検抗体を同時に添加し、標識された該抗体を蛍光微量測定技術によって検出する。 ここでいう同じエピトープを認識する抗体とは、標識該抗体に対して、非標識の該抗体の結合により結合量を50%低下させる濃度(IC50)に対して、被検抗体が非標識該抗体のIC50の10倍高い濃度で少なくとも50%、標識該抗体の結合量を低下させることができる抗体である。 本発明で用いられるヒトNR10に対して中和活性を有する抗体はさらにカニクイザルNR10に対して結合活性を有することが好ましく、カニクイザルNR10に対して中和活性を有することがさらに好ましい。カニクイザルNR10への結合活性または中和活性の測定には、配列番号:24に記載のアミノ酸配列からなるカニクイザルNR10を用いることが可能である。 なお、本発明は、以下に示す治療方法もまた提供する。ここで、NR10、アンタゴニスト、モノクローナル抗体、組換え抗体、炎症性疾患等の説明は上述の通りである。(1)NR10アンタゴニストを炎症性疾患を呈する患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を予防または治療する方法(2)NR10アンタゴニストがNR10への結合活性を有する抗体である、(1)に記載の方法(3)抗体がモノクローナル抗体である、(2)に記載の方法(4)抗体がヒトNR10に結合するモノクローナル抗体である、(2)に記載の方法(5)抗体が組換え抗体である、(2)〜(4)のいずれかに記載の方法(6)組換え抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、(5)に記載の方法(7)NR10に対する中和活性を有する抗体の断片及び/又はその修飾物を有効成分として含有する、(2)〜(6)のいずれかに記載の方法(8)炎症性疾患がアトピー性皮膚炎である(1)〜(7)のいずれかに記載の方法(9)炎症性疾患が慢性皮膚炎である(1)〜(7)のいずれかに記載の方法(10)炎症性疾患がリウマチである(1)〜(7)のいずれかに記載の方法(11)炎症性疾患が変形性関節症である(1)〜(7)のいずれかに記載の方法 さらに本発明は、以下に示す発明もまた提供する。ここで、NR10、アンタゴニスト、モノクローナル抗体、組換え抗体、炎症性疾患等の説明は上述の通りである。(1)炎症性疾患の予防または治療のために用いる剤の製造における、NR10アンタゴニストの使用(2)NR10アンタゴニストがNR10への結合活性を有する抗体である、(1)に記載の使用(3)抗体がモノクローナル抗体である、(2)に記載の使用(4)抗体がヒトNR10に結合するモノクローナル抗体である、(2)に記載の使用(5)抗体が組換え抗体である、(2)〜(4)のいずれかに記載の使用(6)組換え抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、(5)に記載の使用(7)NR10に対する中和活性を有する抗体の断片及び/又はその修飾物を有効成分として含有する、(2)〜(6)のいずれかに記載の使用(8)炎症性疾患がアトピー性皮膚炎である(1)〜(7)のいずれかに記載の使用(9)炎症性疾患が慢性皮膚炎である(1)〜(7)のいずれかに記載の使用(10)炎症性疾患がリウマチである(1)〜(7)のいずれかに記載の使用(11)炎症性疾患が変形性関節症である(1)〜(7)のいずれかに記載の使用 なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。〔実施例1〕NR10およびOSMR発現Ba/F3細胞株の樹立 ヒトNR10 cDNA(WO 0075314 SEQ ID No:1)を発現ベクターpCOS1(Biochem Biophys Res Commun. 228, p838-45, 1996)に組み込み、pCosNR10.3とした。オンコスタチンM受容体 cDNA(OSMR, GenBank accession No. NM003999)をヒト胎盤ライブラリーからPCR法により単離し、同様に、発現ベクターpCos1-hOSMRを構築した。マウスIL-3依存性pro-B細胞由来細胞株Ba/F3に、それぞれのベクター10μgずつを同時にエレクトロポレーション法で導入した(BioRad Gene Pulser, 960μF, 0.33 kV)。導入後は、ヒトIL-31を添加・培養し、IL-31依存性に増殖を示す細胞株を得た。同様に、マウスIL-31依存性細胞株も、マウスNR10およびマウスOSMR遺伝子を発現させたBa/F3細胞から作製した。 いずれも数ng/mLのED50を示し、良好に増殖する細胞株が得られた。ヒトIL-31依存性細胞株はマウスIL-31に反応せず、ヒトNR10蛋白(細胞外領域)添加により抑制された。マウスIL-31依存性細胞株は、ヒトIL-31に反応せず、マウスNR10添加蛋白(細胞外領域)により抑制されなかった。〔実施例2〕NR10蛋白(細胞外領域)の調製 ヒトNR10 cDNAを鋳型に、PCR法により細胞外領域のみを増幅し、またC末端にFLAGタグ配列を付加し、発現ベクターpCXND3(WO2005/005636)に組み込んだ(pCXND3-NR10-flag)。直鎖状にしたこのベクター10μgをチャイニーズハムスター卵巣細胞株DG44へエレクトロポレーション法によって導入し(BioRad Gene PulserII, 25μF, 1.5 kV)、高発現を示す細胞株を得た。この細胞株を大量培養した培養上清から抗FLAG抗体カラム(SIGMA製)、ゲル濾過法により精製標品を得、以下の実験に供した。C末端にFLAGタグ配列を付加したマウスNR10(細胞外領域)も同様に調製した。〔実施例3〕抗マウスNR10中和活性を有するscFvの単離と キメラIgG化BM095の調製 具体的には、本発明者らは、ヒト抗体ファージライブラリーから、ビオチン化したマウスNR10蛋白(細胞外領域)を用いて、パニング法により候補クローンの絞り込みを行った。これらのクローンから分泌scFvを精製し、これを実施例1に記載のIL-31依存性Ba/F3細胞増殖アッセイ系に添加した。その結果、強い増殖抑制活性を示すクローンBM095を得ることに成功した。 PCR法により、BM095のヒトH鎖可変領域配列(VH)をマウスIgG2a定常領域(CH1以降)に、ヒトL鎖可変領域配列(VL)をマウスλ鎖定常領域に連結し、発現ベクターを構築した。この時のVHのアミノ酸配列を配列番号:1に、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:2に示す。また、VLのアミノ酸配列を配列番号:3に、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:4に示す。直鎖状にした各々の発現ベクターを同時にDG44株に導入し、キメラIgGの高い発現量を示す細胞株を選別した。この細胞株を大量培養した培養上清から、プロテインA(rProtein A Sepharose Fast Flow, GE Amersham Biosciences製)カラム、陽イオン交換(SP-TOYOPEARL 650M, TOSOH製)カラムクロマトグラフィーにより、精製標品を得た。さらに、ActiClean Etox(Sterogen製)樹脂によりパイロジェンを検出限界以下まで低減し、以下の動物実験に供した。また、上記アッセイ系にBM095を添加したときの結果を、図1に示す。〔実施例4〕NC/Ngaマウスを用いたアトピー性皮膚炎モデルでの薬効検討 皮膚炎モデルは、塩化ピクリル(PiCl)塗布を週一回繰返すことにより作製した。すなわち、5% PiCl(150μL)腹部・足蹠への感作4日後から、0.8% PiCl(150μL)背部・耳介への週一回誘発を繰返した。3週目から6週にかけて,週2回症状を観察し、5つの視点((1)掻痒症、(2)発赤・出血、(3)浮腫、(4)損傷・組織欠損、(5)痂皮形成・乾燥)から各0〜3点のスコアリングを実施した。抗体は、感作・各誘発前日の6回(BM095群)、もしくは3週目以降の各誘発前日の3回(V/B群)、10 mg/kgで腹腔内投与した。陽性対照として、3週目以降毎日1 mg/kgデキサメサゾンを経口投与した(DEX群)。それぞれ一群10匹のNC/Ngaマウス♂を使用した。 図2に示すように、溶媒投与vehicle群に比し,抗体投与群では,有意な抑制効果が認められた。またこの時、図2に示すように、DEX群では有意な体重減少が認められたが、抗体投与群では変化は無く,非常に安全な薬剤であることが示唆された。〔実施例5〕塩化ピクリル繰返し塗布による慢性皮膚炎モデルでの薬効検討 6週令の雌性BALB/cマウスに、20μLの0.5%塩化ピクリル(acetone/olive oil (1:4 v/v)溶液)を右耳に塗布して感作を行った。感作後8日目より1日おきに右耳に20μLの0.25%塩化ピクリル(acetone/olive oil (1:4 v/v))を塗布することにより誘発を繰り返した。BM095の予防効果評価群には感作前日より、BM095治療効果評価群には誘発開始後20日目より、週1回、10 mg/kgのBM095を腹腔内投与した。Dial thickness gaugeにより右耳の厚さを経時的に測定することにより、耳介腫脹を評価した。 その結果、図4に示すように、抗体投与群では有意な抑制効果が認められた。アトピー性皮膚炎患者の肥厚した表皮ではヒトNR10の発現が亢進していることが報告されている(非特許文献1)。上記慢性皮膚炎モデルのマウス耳介の免疫組織染色を行ったところ、ヒトと同様に、肥厚した表皮でマウスNR10の発現亢進が観察された(図5。実施例3に於いて定常領域をヒトIgGに変換したBM095を作製し、免疫組織染色に用いた。茶褐色に発色している部分がNR10発現部位)。本所見は、ヒトおよびマウスにおいて、炎症性疾患に対しNR10が同様に関与していることを示唆する。〔実施例6〕コラーゲン誘発関節炎(リウマチ)モデルでの薬効検討 モデルマウスの作製、および薬効評価は以下のように行った。 9週齢の雌DBA/1JNマウスに対し、ウシ関節由来0.3%II型コラーゲンとComplete Adjuvant H37Raを等量混合したコラーゲンゲル140μLを尾根部皮内に投与した(Day0、感作)。3週間後に同様に調製したコラーゲンゲルを背部皮内に投与し、関節炎の発症を誘発した(Day21、誘発)。感作前々日(Day-2)の体重をもとにマウス16匹を各8匹の2群に分け、溶媒投与群とBM095投与群を設定した。被験物質であるBM095は、PBSで6倍希釈した20 mmol/L Acetate buffer(pH5.5)(200 mmol/L NaCl)を溶媒として、BM095投与群の8匹のマウスに対して10 mg/kg体重となるように感作前日(Day-1)に静脈内投与した。一方、対照の溶媒投与群とした8匹のマウスに対しては、体重あたり同一容量となるように溶媒をDay-1に投与した。なお、誘発前日(Day20)より2-3日の間隔で四肢の腫脹を観察し、スコアリング(1肢あたり0-4点:16点満点)により評価を行った。 その結果、図6に示すように,BM095投与群ではDay20以降の四肢の腫脹においてスコアの低下がみられ、BM095は関節炎発症抑制作用を有することが示された。〔実施例7〕コラゲナーゼ誘発関節炎(変形性関節症)モデルでの薬効検討 モデルマウスの作製、および薬効評価は以下のように行った。 8週齢の雄C57BL/6J Jclマウス(日本クレア製)に対し、溶媒対照(PBSで6倍希釈した20 mmol/L Acetate buffer, pH5.5, 200 mmol/L NaCl, n=5)、BM095 2mg/kg(n=5), BM095 20 mg/kg (n=6) を尾静脈より静脈内投与した(5mL/kg)。その後3%イソフルラン吸入麻酔下で、0.45μmフィルター(MILLIPORE社製)で濾過した1.5% コラゲナーゼ溶液(TypeII, Sigma社製)6μLを右膝関節腔内に投与した(Am J Pathol 1989; 135(6):1001-14)。 左右の膝関節幅について、ノギス(ミツトヨ製)を用いてコラゲナーゼ投与直前、投与後3,7,14日に測定し、左右の差を算出した。この差を右膝関節の腫脹を表す値とし、その推移の曲線下面積(AUC)を台形法で算出し、薬効の指標とした。AUCについて、溶媒対照群とBM095投与群の間で統計解析ソフトウエア(SAS Institute社製)を用いてStudent t検定を行った(p<0.05の場合有意差あり)。その結果、図7に示すように、BM095投与群のAUCは、いずれの用量においても溶媒対照群に対し有意に小さかった。この結果から、BM095が変形性関節症モデルにおける関節炎を抑制することが明らかになった。[実施例8]抗ヒトNR10中和抗体の取得 ヒトNR10蛋白(細胞外領域)〔実施例2に記載〕をマウスに免疫し,通常の方法によりハイブリドーマを作製した。これらのハイブリドーマの培養上清を,実施例1で示したヒトIL-31依存性細胞株(hNR10/hOSMR/BaF3細胞)を用いた中和活性で評価し,高いNR10中和活性を有するいくつかのクローンを得た(図8)。[実施例9]ヒト・キメラ抗体の作成 中和抗体の中で最も活性の高かった、NA633の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:16に、軽鎖鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:17に示す。又、NA633の重鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列を配列番号:18に、CDR2のアミノ酸配列を配列番号:19に、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:20に、軽鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列を配列番号:21に、CDR2のアミノ酸配列を配列番号:22に、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:23に示す。 さらに、常法にしたがい、これらマウス可変領域と、ヒト定常領域(H鎖はIgG1,L鎖はκ)とのキメラ抗体を作製し、中和活性を測定した。図9に示すように,キメラNA633抗体は低濃度で強い中和活性を示した。[実施例10]カニクイザルNR10の単離 前臨床段階での安全性評価のため、カニクイザルへの交差性・中和活性は重要であると考え、カニクイザルNR10遺伝子の単離を試みた。公開されているアカゲザルゲノム情報などからプライマーを設計し,PCR法によりカニクイザル臓器からNR10遺伝子の増幅に成功した。単離したカニクイザルNR10とヒトNR10のアミノ酸配列のアラインメントを図10に示す。又、カニクイザルNR10のアミノ酸配列を配列番号:24に示す。このカニクイザルNR10遺伝子を用いて、実施例1で述べたように、ヒトOSMR遺伝子と共にBa/F3細胞に導入し、ヒトIL-31依存性増殖を示す細胞株を樹立した。この細胞株を用いて実施例9のキメラ抗体NA633の中和活性を調べたところ、カニクイザルでも強い中和活性を示すことが判明した(図11)。[参考例1]Dextran Sulfate Sodium (DSS) 誘発大腸炎に対するBM095の薬効 炎症性腸疾患 (IBD)の病態モデルとして報告されているDSS誘発大腸炎モデル(J Immunol 2003;171:5507-5513)を作製し、抗マウスNR10中和抗体であるBM-095の効果を検討した。Dextran Sulfate Sodium Salt (和光純薬製)の5% (w/v) 水溶液を、0.22μmフィルター(Millipore製)で濾過滅菌した蒸留水を用いて調製し、6週齢のオスBalb/cAnN Crjマウス(日本チャールス・リバー製)に給水ビンにて7日間自由摂取させ、体重を測定し、DSS投与開始日の体重に対する変化率を薬効の評価項目とした。 本モデルにおいて、IL-31シグナリング中和により病態が改善されるかどうかを、抗マウスNR10中和抗体であるBM095をDSS投与前日に10 mg/kgの用量で静脈内投与して体重減少を評価した(n=10)。溶媒対照群として、溶媒(酢酸緩衝液 [20 mmol/L 酢酸ナトリウム、20 mmol/L 塩化ナトリウム]と燐酸緩衝生理食塩水[PBS, GIBCO製]を容量比1:5で混合したもの)を、DSS投与前日に静脈内投与した群(Vehicle群, n=10)を設けた。また、正常マウスの体重変化率の推移を把握するため、DSS投与群と同じ週齢、性別のBalb/cAnN Crjマウスの体重変化率の推移も観察した(n=1)。 体重の推移を図12に示した。Vehicle群においてはDSS投与により体重変化率が低下した。一方、BM095投与群においてもVehicle群と同様の体重推移を示したが、DSS投与後4および5日後ではBM095群ではVehicle群よりも有意に体重変化率が低下した。これら結果から、BM095投与による本モデルの大腸炎治療効果は認められなかった。 本モデルにおいては、IL-31RAの発現が亢進することが報告されているが(WO2004/003140)、上記実験の結果、同分子の中和抗体は本モデルの大腸炎に対して治療効果がないことが明らかになった。[参考例2]急性Picryl chloride 接触性皮膚炎モデルに対するBM095の薬効 急性接触性皮膚炎のモデルとして報告されている (Clin Immunol 2003; 108: 257-262)、塩化ピクリル塗布による感作・誘発による遅延型過敏症反応の結果生じる皮膚炎を作製し、抗マウスNR10中和抗体であるBM-095の効果を検討した。8週齢のメスBalb/cAnN Crjマウス(日本チャールス・リバー製)の腹部皮膚に、50μL の7%塩化ピクリル(nacalai tesque, Inc.)溶液(エタノール:アセトン=3:1, v/v)を塗布して感作し、5日後に20μLの1% 塩化ピクリル溶液(アセトン:オリーブ=1:4, v/v)を右の耳介皮膚に塗布して接触性皮膚炎を惹起した(誘発)。溶媒の耳介の厚さへの影響を評価するための対照として、20μLの溶媒(アセトン:オリーブ=1:4, v/v)を同一マウスの左の耳介皮膚に塗布した(陽性対照群, n=6)。誘発直前および誘発後24,48,72時間に左右の耳の厚さをDial thickness gauge(尾崎製作所製)で測定し、誘発直前の耳介の厚さに対する変化を薬効評価項目とした。 病態の成立を評価するための対照群として、感作時に塩化ピクリルを含まないエタノール:アセトン混合液(3:1, v/v)を腹部皮膚に塗布し、その5日後に20μLの1% 塩化ピクリル溶液を右の耳介皮膚に、溶媒(アセトン:オリーブ=1:4, v/v)20μLを左の耳介皮膚に塗布した群(陰性対照群, n=6)を設けた。 本系病態における抗NR10抗体投与の効果を評価するために、上記陽性対照群の方法で急性接触性皮膚炎を惹起し、感作前日および誘発前日にBM095 10 mg/kg を静脈内投与した群(BM095群, n=6)と、同じタイミングで溶媒(酢酸緩衝液 [20 mmol/L 酢酸ナトリウム、20 mmol/L 塩化ナトリウム]と燐酸緩衝生理食塩水[PBS, GIBCO製]を容量比1:5で混合したもの)を投与した群(Vehicle群、n=5)を設けた。 誘発後72時間までの耳介の厚さの変化を図13に示した。陽性対照群は誘発後24、48、72時間のいずれにおいても陰性対照群に対して有意に耳介が肥厚しており、病態が成立したことが示された。このとき、BM-095群はVehicle群と同様の耳介の厚さの推移を示し、有意な抑制は認められなかった。 これら結果より、BM095投与による本モデルで観察される急性接触性皮膚炎に対する治療効果は認められないことが判明した。 本発明によって、新たな炎症性疾患の予防または治療剤が提供された。本発明によって提供された炎症性疾患の予防または治療剤は、その活性成分として、NR10アンタゴニスト、より好ましくはNR10に対する中和活性を有する抗体を含有する。 近年、モノクローナル抗体による抗サイトカイン療法が注目されている。しかしながら、実際の病態においては多くの場合、ひとつのサイトカインを遮断してもその代償経路が働き、治療効果を得ることは困難な状況であった。又、ターゲットとするサイトカインを遮断した場合、どのような疾患で治療効果が得られるのかを予測することは困難であった。このような中、本発明者らは、抗NR10中和抗体がアトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、リウマチ、変形性関節症等を発症したモデルマウスにおいて、その症状を顕著に抑制することが出来ること見出した。 また本発明者らは、ヒトNR10中和抗体の取得にも成功した。ヒトNR10中和抗体を有効成分として含有する炎症性疾患の予防または治療剤は、ヒトへの臨床応用に向けて、極めて有用である。 ヒトNR10およびカニクイザルNR10に対する中和活性を有する抗NR10抗体を有効成分として含有する、炎症性疾患の予防または治療剤であって、炎症性疾患がアトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、リウマチまたは変形性関節症である、予防または治療剤。 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の予防または治療剤。 抗体が組換え抗体である、請求項1または2に記載の予防または治療剤。 組換え抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項3に記載の予防または治療剤。 ヒトNR10およびカニクイザルNR10に対する中和活性を有する抗NR10抗体のFab、Fab’、F(ab’)2若しくはFv断片及び/又はそれらに化学的な修飾を施したコンジュゲート抗体を有効成分として含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の予防または治療剤。 炎症性疾患がアトピー性皮膚炎である請求項1〜5のいずれか1項に記載の予防または治療剤。 アトピー性皮膚炎における(1)掻痒症、(2)発赤・出血、(3)浮腫、(4)損傷・組織欠損、および(5)痂皮形成・乾癬からなる群より選択される少なくとも1つの症状を抑制することを特徴とする、請求項6に記載の予防または治療剤。 炎症性疾患が慢性皮膚炎である請求項1〜5のいずれか1項に記載の予防または治療剤。 炎症性疾患がリウマチである請求項1〜5のいずれか1項に記載の予防または治療剤。 炎症性疾患が変形性関節症である請求項1〜5のいずれか1項に記載の予防または治療剤。 ヒトNR10およびカニクイザルNR10に対する中和活性を有する抗NR10抗体。 モノクローナル抗体である、請求項11に記載の抗体。 組換え型抗体である、請求項11または12に記載の抗体。 組換え型抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項13に記載の抗体。 請求項11〜14のいずれか1項に記載の抗体のFab、Fab’、F(ab’)2若しくはFv断片及び/又はそれらに化学的な修飾を施したコンジュゲート抗体。 炎症性疾患の予防または治療のために用いる剤の製造における、ヒトNR10およびカニクイザルNR10に対する中和活性を有する抗NR10抗体の使用であって、炎症性疾患がアトピー性皮膚炎、慢性皮膚炎、リウマチまたは変形性関節症である、使用。配列表


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