生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_口腔内用殺菌剤、及び該殺菌剤を含有する食品添加剤
出願番号:2008517664
年次:2008
IPC分類:A61K 38/44,A61K 31/7004,A61K 31/19,A61K 31/194,A61P 1/02,A61P 31/04


特許情報キャッシュ

新 光一郎 堀米 綾子 山内 恒治 JP 4203120 特許公報(B2) 20081017 2008517664 20070628 口腔内用殺菌剤、及び該殺菌剤を含有する食品添加剤 森永乳業株式会社 000006127 佐伯 憲生 100102668 小板橋 浩之 100127133 新 光一郎 堀米 綾子 山内 恒治 JP 2007049220 20070228 20081224 A61K 38/44 20060101AFI20081204BHJP A61K 31/7004 20060101ALI20081204BHJP A61K 31/19 20060101ALI20081204BHJP A61K 31/194 20060101ALI20081204BHJP A61P 1/02 20060101ALI20081204BHJP A61P 31/04 20060101ALI20081204BHJP JPA61K37/50A61K31/7004A61K31/19A61K31/194A61P1/02A61P31/04 A61K 38/44 A61K 31/00-31/7004 A61P 1/02 A61P 31/04 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特表平07−503707(JP,A) 特表平06−500700(JP,A) 特表昭59−231011(JP,A) 4 JP2007062993 20070628 WO2008105113 20080904 16 20080414 安居 拓哉 本発明は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する、口腔内細菌の殺菌のための口腔内用殺菌剤、及び該殺菌剤を含有する食品添加剤に関する。本発明の口腔内用殺菌剤、及び該殺菌剤を含有する食品添加剤は口腔内細菌に起因する疾患の予防及び/又は治療に効果を有する。 歯周病は、口腔内の悩みとして齲蝕に次いで第二番目に多い疾患である。歯周病は、歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨等の歯周組織を破壊し、その機能を侵す疾患である。歯周病の次に多い口腔内の悩みが口臭である。口臭症は歯周病等の原疾患に起因する病的口臭と他の原因による生理的口臭に分類されるが、その口臭原因物質である揮発性硫黄化合物の産生には、歯周病菌をはじめとする種々の口腔内細菌の関与が明らかにされている(例えば、非特許文献1)。 近年では、高齢者や要介護者における、唾液や食物等の誤嚥(液体または固体が嚥下時に誤って気管に入ること)による誤嚥性肺炎が懸念されており、この誤嚥性肺炎では口腔内細菌がその発症に関与する可能性が指摘されている。すなわち、口腔内の衛生状態の確保が、高齢者や要介護者においては命に関わるほどに重大となりうることから、口腔ケアの重要性が認識されてきている(例えば、非特許文献2)。 口腔内の衛生状態に影響を及ぼす重要な口腔内細菌の中でも、歯周病の原因となる歯周病菌として、グラム陰性菌であるアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)やフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)等が知られている。特に、Actinobacillus actinomycetemcomitansは、急速に進行して重度な歯周炎となる急速性歯周炎の原因菌である。口腔内には、これらの代表的な歯周病菌等の病原性細菌以外にも多くの口腔内細菌が住み着き、口腔内細菌叢を形成している。 乳タンパク質の一種であるラクトパーオキシダーゼは、哺乳類の乳汁をはじめ、唾液、涙液、気道粘液等の分泌液にも含有される酸化還元酵素であり、工業的には牛乳から大量スケールで精製することが可能である(例えば、特許文献1、特許文献2)。このラクトパーオキシダーゼは、過酸化水素及びチオシアン酸の存在下において、ヒポチオシアン酸の生成を触媒し、強い抗菌活性を示すことが知られている。一般的に、この抗菌系(ラクトパーオキシダーゼが、過酸化水素及びチオシアン酸の存在下において、ヒポチオシアン酸の生成を触媒し、強い抗菌活性を示す系)はラクトパーオキシダーゼシステムと呼ばれている。 このラクトパーオキシダーゼシステムの抗菌活性については、一般に齲蝕菌等のグラム陽性菌に対しては抗菌活性や殺菌活性を示さないこと、及び歯周病菌に多いグラム陰性菌の一部の菌種に対して抗菌活性を示すことが知られている(例えば、特許文献3)。一方、グラム陰性菌であっても、上述のように歯周病への関与が知られるActinobacillus actinomycetemcomitansやFusobacterium nucleatum等は、ラクトパーオキシダーゼシステムに対する感受性が低いこと、すなわちラクトパーオキシダーゼシステムは、Actinobacillus actinomycetemcomitans等に対する殺菌活性が不十分であることが報告されている(例えば、非特許文献3)。これに対し、ラクトパーオキシダーゼシステムにおいて、Actinobacillus actinomycetemcomitansやFusobacterium nucleatumに対して十分な殺菌活性を持たせるために、チオシアン酸の替わりにヨウ素イオンを組み合わせたラクトパーオキシダーゼシステムが提案されている(例えば、非特許文献4)。 上記のラクトパーオキシダーゼシステムに使用されるチオシアン酸及びその塩は、一般に食品添加物としては許可されておらず、その見込みもないものである。また、チオシアン酸の替わりに提案されているヨウ素イオン及びヨウ素化合物もまた、食品添加物としては許可されておらず、その見込みもないものである。特開平5−41981号公報国際公開WO2005/078078号パンフレット特公平4−25924号公報臨床家のための口臭治療のガイドライン、八重垣建編、クインテッセンス出版、東京、2000年、第13−26頁ジロドントロジー(Gerodontology)、イギリス、第23巻、2006年、p.55〜59ジャーナル・オブ・ペリオドンタル・リサーチ(Journal of Periodontal Research)、デンマーク、第33巻、1998年、p.421〜427インターナショナル・ジャーナル・オブ・アンチマイクロバイアル・エイジェンツ(International Journal of Antimicrobial Agents)、オランダ、第21巻、2003年、p.434〜440 上述のように、口腔内の衛生状態の確保は、歯周病や口臭症を予防するために重要である。特に高齢者や要介護者においては、誤嚥性肺炎を避けるためにも、口腔ケアは極めて重要である。 しかし、高齢者や要介護者においては、口腔ケアのために行う歯みがきや、歯みがきをした後にうがいをして歯磨き粉を吐き出すといった作業が、本人及び介護者にとって非常に困難で苦痛を伴う作業となる場合も多い。特に、吐き出しに失敗して、それが誤嚥事故を起こせば、それによって誤嚥性肺炎を生じかねない。すなわち、歯みがき等の口腔ケアは、高齢者や要介護者の状態によっては、口腔内の衛生状態の確保手段として、極めてリスクの大きい手段である。 そのために、口腔内の衛生状態の確保手段として、歯みがき、うがい、吐き出し等をする必要がない口腔ケア手段が求められていた。 一方、医薬品としてのみ許可されているような強力な合成殺菌剤等を投与するという手段は、一時的な口腔内の衛生状態の向上のためには有用であっても、数年以上の長期間にわたり日常的に使用する衛生状態確保手段としては、安全性の面から不安が残る。 これらの点に鑑みて、本発明者等は、安全で副作用が少なく、飲食品に添加して飲食品とともに飲食可能であり、同時に口腔内で殺菌効果を発揮し、且つ長期間の日常的な摂取にも不安がない殺菌剤を使用すれば、上記の問題点を全て解消する口腔ケア手段となるという着想を得た。 従って、本発明の目的は、安全で副作用が少なく、飲食品に添加して飲食品とともに飲食可能であり、同時に口腔内で殺菌効果を発揮し、且つ長期間の日常的な摂取にも不安がない殺菌剤、及び該殺菌剤を含有する食品添加剤を提供することにある。 上記目的を達成するために、本発明者等は、飲食品に添加可能な殺菌剤の探索研究を鋭意行ってきた。そして、乳タンパク質であるラクトパーオキシダーゼを含むラクトパーオキシダーゼシステムに着目した。しかし、このラクトパーオキシダーゼシステムは、食品添加物として認められていないチオシアン酸等を必須の成分としている。 ところが、探索研究の過程において、ラクトパーオキシダーゼシステムにチオシアン酸を添加することなく、その他の成分のみでヒト唾液中での殺菌活性を測定したところ、チオシアン酸及びその代替物質を添加することなく、pH調整成分の添加により、強い殺菌活性を発揮することを見いだした。 すなわち、本発明者等は、乳タンパク質であるラクトパーオキシダーゼを、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分と組み合わせたシステム(系)を口腔内用殺菌剤として使用することにより、上記目的を達成できることを見いだして、本発明を完成させた。 さらに驚くべきことに、本発明による口腔内用殺菌剤は、従来からラクトパーオキシダーゼシステムに感受性が低いとされていた口腔内細菌であるアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)に対して抗菌活性を有するものであった。 従って、本発明は、次の(1)〜(8)にある。(1) 有効成分としてラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する、口腔内細菌の殺菌のための口腔内用殺菌剤。(2) pH調節成分が、有機酸及び/又は有機酸の塩類である、請求項1に記載の口腔内用殺菌剤。(3) 有機酸が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、及びグルタミン酸からなる群から選択された少なくとも1種以上の酸である、(2)に記載の口腔内用殺菌剤。(4) pH調節成分によって、pH5.9〜pH4.4の範囲のpH条件に調節される、(1)〜(3)の何れかに記載の口腔内用殺菌剤。(5) 口腔内細菌が、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)である、(1)〜(4)の何れかに記載の口腔内用殺菌剤。(6) (1)〜(5)の何れかの口腔内用殺菌剤を含有する、食品添加剤。(7) (1)〜(5)の何れかの口腔内用殺菌剤を含有する、歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎の予防及び/又は治療用の食品添加剤。(8) (1)〜(5)の何れかの口腔内用殺菌剤を含有する、歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎の予防及び/又は治療用の医薬組成物。 さらに、本発明は、次の(9)〜(14)にもある。(9) (1)〜(5)の何れかの口腔内用殺菌剤、又は(6)〜(7)の何れかの食品添加剤を含有する、飲食品。(10) (1)〜(5)の何れかの口腔内用殺菌剤、又は(6)〜(7)の何れかの食品添加剤を含有する、歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎の予防及び/又は治療用の飲食品。(11) 口腔内細菌の殺菌のための口腔内用殺菌剤を製造するための、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分の使用(use)。(12) 食品添加剤を製造するための、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分の使用(use)。(13) 飲食品を製造するための、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分の使用(use)。(14) (1)〜(5)の何れかの口腔内用殺菌剤、(6)〜(7)の何れかの食品添加剤、(8)の医薬組成物、又は(9)〜(10)の飲食品の有効量を口腔内に投与することによって、歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎の予防及び/又は治療をする方法(method)。 本発明の口腔内殺菌剤及び食品添加剤は、口腔内の衛生状態の確保手段として効果的であることに加えて、安全で副作用が少なく、飲食品に添加して飲食品とともに飲食可能であり、同時に口腔内で殺菌効果を発揮し、且つ長期間の日常的な摂取にも不安がない。 さらに、本発明の口腔内用殺菌剤及び食品添加剤による口腔ケアは、高齢者や要介護者に対して、歯みがきや、歯みがきをした後にうがいをして歯磨き粉を吐き出すといった、本人及び介護者にとって非常に困難で苦痛を伴い、高齢者や要介護者の状態によってはリスクの大きい作業を強いることがない。 さらに、本発明の口腔内用殺菌剤及び食品添加剤によれば、以下に示す効果が奏される。(1)口腔内細菌を効果的に殺菌することが可能である。(2)口腔内細菌に起因する疾患の予防及び/又は治療に効果を有する。(3)ヒトに対する安全性が高く、日常的に摂取することが可能である。(4)飲食品に添加することによって、歯周病予防等に効果を有する飲食品を提供することができる。図1は本発明の口腔内殺菌剤の投与によるヒト呼気中の硫化水素量の変化を表した図である。図2は本発明の口腔内殺菌剤の投与によるヒト呼気中の揮発性硫黄化合物の変化を表した図である。 次に、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施態様に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。 本発明に使用するラクトパーオキシダーゼは、ほ乳類の乳等から得ることができ、例えば、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の乳等から得ることができる。例えば、特開平5−41981公報(発明の名称:生菌含有液状組成物)に開示された方法のように、乳等未加熱のホエーまたは脱脂乳から、常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー等)に従って工業的に製造することが好ましく、更に、市販の天然物由来のラクトパーオキシダーゼ(例えばバイオポール社製等)、又は組換え型ラクトパーオキシダーゼ〔例えば、シンらの方法[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニュケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)、第271巻、2000年、p.831−836]によって発現・精製された組換え型ラクトパーオキシダーゼ、又は市販の組換え型ラクトパーオキシダーゼ〕を使用することも可能である。 本発明に使用するラクトパーオキシダーゼは、ほ乳類の乳に由来するものを好適に使用可能である。口腔内用殺菌剤、食品添加剤、医薬組成物に使用する場合には、その乳が伝統的に飲食用に用いられている牛、羊、山羊などの乳に由来するラクトパーオキシダーゼが好ましく、特に牛乳由来のものが好ましい。これらは歴史的な年月の間、ヒトの飲食に使用されていたために、ヒトに対する安全性が極めて高い水準で担保されているからである。 また、牛乳由来の未加熱のホエーは、乳製品製造の副産物として安定して大量に得ることができるために、本発明に使用するラクトパーオキシダーゼの原料として、特に好適である。 本発明に使用するグルコースオキシダーゼは、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)等の微生物の産生する酵素である市販品のグルコースオキシダーゼ(例えば、新日本化学工業社製等)を使用することができる。 本発明に使用するグルコースは、例えば、市販品の食品添加物用のグルコース(例えば、日本食品化工社製等)を使用することができる。 本発明に使用するpH調節成分としては、口腔内用殺菌剤を唾液等の溶媒に懸濁した際のpHを4.4〜5.9の弱酸性に安定させるための緩衝能があればどのようなものであってもよく、例えば有機酸及び/又は有機酸の塩類を使用することができ、例えば、市販食品添加物のクエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルタミン酸等からなる群より選択される少なくとも1種以上の酸、及びクエン酸塩(例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム等)、乳酸塩(例えば、乳酸ナトリウム等)、リンゴ酸塩(例えば、リンゴ酸ナトリウム等)、コハク酸塩(例えば、コハク酸一ナトリウム、コハク酸ニナトリウム等)、酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム等)、グルタミン酸塩(例えば、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム等)等からなる群より選択される少なくとも1種以上の塩類の組み合わせを使用することが可能である。 これらのグルコースオキシダーゼ、グルコース、有機酸、及び塩類はいずれも食品添加物として広く利用されており、また市販されており容易に入手可能である。 ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、有機酸、及び塩類は、唾液との混合により口腔内細菌を殺菌する作用を有しているので、口腔内用殺菌剤(以下、「本発明の殺菌剤」、「本発明の殺菌剤組成物」又は「本発明の組成物」という場合がある。)の有効成分として使用することができる。ここで、「有効成分」とは、口腔内細菌を殺菌する作用に寄与する成分を意味する。また、本発明の殺菌剤には、ラクトパーオキシダーゼシステムに関与する成分以外に、口腔内細菌を殺菌する作用を有する成分が含まれていてもよい。例えば、本発明の殺菌剤には、乳中の他の有用な蛋白質であるラクトフェリン、リゾチーム、免疫グロブリン、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン等やプロバイオティクスとして働く乳酸菌等が含まれていてもよい。 本発明の口腔内用殺菌剤は、口腔内細菌を殺菌する作用を有する。したがって、本発明の殺菌剤は、例えば口腔内細菌によって惹起される歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎等の各種の疾患の予防及び治療効果を有する殺菌剤として用いることができる。しかし、本発明の口腔内用殺菌剤は、口腔内細菌に起因する疾患に対する予防及び/又は治療の使用に限定されるものではない。 本発明の口腔内用殺菌剤は、その有効成分が乳タンパク質、酵素、糖類、酸、及び塩類等の食品素材及び食品添加物に使用されるものであるので、ヒトに対する安全性が高く、日常的に経口摂取することによって口腔内細菌に起因する疾患に対する予防及び/又は治療に効果が発揮される特徴を持つ。前記口腔内細菌に起因する疾患としては、歯周病、口臭症、誤嚥性肺炎等が挙げられる。 本発明の口腔内用殺菌剤は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、酸、及び塩類の混合物自体であってもよいし、それ以外の成分を含有していてもよい。ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、酸、及び塩類以外の成分は、摂取の形態に応じて適宜選択できる。例えば、経口等の投与方法により適宜使用することが可能であり、公知の方法により、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤等に加工することも可能である。 本発明に係る口腔内用殺菌剤としては、例えば、有効成分としてラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を薬学的に許容され得る賦形剤等の任意の添加剤を用いて製剤化することにより製造できる。本発明に係る食品添加剤を同様に製剤化してもよい。製剤化する場合、製剤中の有効成分の含有量は、通常0.005〜20質量%、好ましくは0.05〜12.5質量%である。製剤化にあたっては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。 賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられ、結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マグロゴール等が挙げられ、崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられ、滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられ、安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられ、矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられ、注射剤用溶剤としては、例えば、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。 また、本発明の口腔内用殺菌剤及び食品添加剤は、飲食品に配合して投与することもできる。投与量及び投与回数は、目的とする作用効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、投与量は、成人1日当たり通常10mg〜10gの範囲から適宜選択でき、投与回数は、1日1回から数回の範囲から適宜選択できる。また、投与期間としては、7日間以上が好ましい。 本発明のラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、酸、及び塩類を含有した口腔内用殺菌剤又は食品添加物を配合した飲食品の形態としては、例えば、清涼飲料、乳飲料等又はこれらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末;加工乳、発酵乳等の乳製品;経腸栄養食及びその調整用粉末、とろみ調整食品;機能性食品等が挙げられ、さらに、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物、パン等を挙げることができる。このような飲食品は、例えば、本発明の口腔内用殺菌剤又は食品添加物(粉末又はその水溶液(シロップ等)等の形態を含む)に、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等を配合することにより、製造することができる。 飲食品の好適な形状としては、タブレット状のサプリメントを例示することができる。これによって、有効成分の摂取量及び有効成分と同時に摂取されるカロリーを正確に把握することができる。 さらに、飲食品の好適な形状として、液体、特にとろみのある液体を挙げることができる。液体は、口腔内に行き渡り、特に歯周病で問題となる歯の硬組織と歯肉組織との間に浸透しやすいからであり、とろみのある液体は、口腔内に滞留する時間が長くなることによってより有効に殺菌効果が発揮可能であるためである。従って、上述の製剤及び飲食品の中で、液体、特にとろみのある液体となる形態は、本発明の好適な態様である。 尚、本発明の口腔内用殺菌剤又は食品添加物は、以下に示す疾患の予防用又は治療用としての効能を表示した飲食品に配合することができる。すなわち、このような飲食品及び本発明の飲食品には、口腔内細菌に起因する疾患、例えば歯周病、口臭症、誤嚥性肺炎等の予防用又は治療用であること、を表示することができる。 ここで、「表示」とは、前記効能を需要者に対して知らしめる行為を意味し、例えば、本発明の口腔内用殺菌剤又は食品添加物を配合した飲食品又は本発明の飲食品の商品若しくは商品の包装・広告等に前記効能を付する行為、付したものを譲渡、引き渡し、展示等をする行為等があるが、特に特定保健用食品〔健康増進法施行規則(平成15年4月30日、日本国厚生労働省令第86号)の第12条第1項第5号参照〕として表示する態様が好ましい。[実施例] 以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 上述したように、本発明は、探索研究の過程において、ラクトパーオキシダーゼシステムにチオシアン酸を添加することなく、その他の成分のみでヒト唾液中での殺菌活性を測定したところ、チオシアン酸及びその代替物質を添加することなく、pH調整成分の添加により、強い殺菌活性を発揮することを見いだすことを通じて、完成されたものである。 本発明に係る口腔内用殺菌剤の殺菌活性を発揮するメカニズムについて、本発明者等は、唾液中に微量のチオシアン酸が存在してこの寄与によって抗菌活性が発揮されるのではないかと考えて、以下の実験を行い、本発明の口腔内殺菌剤の効果の確実な再現を確認した。 本発明において、口腔内用殺菌剤による口腔内細菌に対する殺菌作用を評価するために、ヒト口腔内細菌であり、これまでラクトパーオキシダーゼ、過酸化水素、チオシアン酸の組み合わせによるラクトパーオキシダーゼシステムに対する感受性が低いとの報告(インターナショナル・ジャーナル・オブ・アンチマイクロバイアル・エイジェンツ(International Journal of Antimicrobial Agents)、オランダ、第21巻、2003年、p.434〜440)があるアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスに対して口腔内用殺菌剤の殺菌活性を検討した。なお、溶媒としては、ヒト唾液サンプル又は唾液の替わりに唾液と同レベルの0.5mMチオシアン酸を添加したリン酸緩衝生理食塩水を使用した。詳細は、後記する試験例の方法に従った。 次に試験例を示して本発明の口腔内用殺菌剤の作用を詳細に説明する。[試験例1] 本試験は、口腔内細菌に対する口腔内用殺菌剤による効果を調べるために行った。(1)試料の調製 エリスリトール(日研化学社製)15g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)52.5g、ソルビトール(東和化成社製)30g、コーンスターチ(王子コーンスターチ)15g、アセロラ香料(高砂香料工業社製)0.75g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)6g、クエン酸・一水和物(国産化学社製)2.58g、クエン酸三ナトリウム・二水和物(国産化学社製)5.21g、キシリトール(和光純薬社製)18g、グルコース(和光純薬社製)4.5g、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)0.05g、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)0.4g各粉末を添加して乳鉢で均一に混合した混合物を作成し、試験試料とした。また、対照試料としてラクトパーオキシダーゼのみを添加しない混合物を作成した。(2)菌液の調製 アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスJCM8578(理化学研究所より分譲)をブレイン・ハート・インフュージョン液体培地(BD社製)で一晩培養し、菌液を調製した。(3)試験方法 容量50mlの滅菌ディスポーザブルチューブに試験試料又は対照試料0.5gを添加した。次に、ヒトの唾液と同じレベルの0.5mMチオシアン酸ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水3.3mlを添加して懸濁した後、33.3μlの上記菌液を添加、攪拌して15分間、37℃、10%炭酸ガスを充填したインキュベーター中で保持した。この混合液をリン酸緩衝生理食塩水で10倍ずつ段階希釈し、10%ウマ血清、0.1%酵母エキス、75μg/mlバシトラシン、5μg/mlバンコマイシンの添加によりアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスを選択的に生育させるトリプチケースソイ寒天培地(ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(Journal of Clinical Microbiology)、アメリカ、第15巻、1982年、p.606〜609)に塗布して3日間、37℃、10%炭酸ガスを充填したインキュベーター中で培養した後、寒天培地上に形成されたコロニーの数を測定した。検出されたアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスのコロニー数から、上記懸濁液1ml当りの生菌数の対数値(log10 cfu/ml)を求めた。(3)試験結果 本試験の結果を表1に示す。 その結果、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、酸、及び塩類を含有する試験試料はアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの生菌数を検出限界以下にまで減少させ、非常に強い殺菌効果を示した。一方、ラクトパーオキシダーゼのみを含有しない対照試料では生菌数は殆ど変化しなかった。なお、同じ条件で、チオシアン酸ナトリウム添加リン酸緩衝生理食塩水の替わりに健康な成人から採取した唾液をフィルター滅菌して使用したところ、試験試料に強い殺菌活性が認められた。[試験例2] 本試験は、口腔内細菌に対する口腔内用殺菌剤の効果におけるpH調整剤及びグルコースの影響を調べるために行った。(1)試料の調製 エリスリトール(日研化学社製)15g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)52.5g、ソルビトール(東和化成社製)30g、コーンスターチ(王子コーンスターチ)15g、アセロラ香料(高砂香料工業社製)0.75g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)6g、キシリトール(和光純薬社製)18g、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)0.05g、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)0.4g各粉末を添加して乳鉢で均一に混合し、グルコース、酸、及び塩類を含有しない混合物を作成した。(2)菌液の調製 試験例1と同様の方法でアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの菌液を調製した。(3)試験方法 容量50mlの滅菌ディスポーザブルチューブに上記のpH調整剤とグルコースを含有しない混合物0.459gを添加した。次に、3倍濃度のリン酸緩衝水溶液1.11ml、100mMクエン酸緩衝液(pH4.6、5.0、5.4、5.8、又は6.2)又は100mMリン酸緩衝液(pH6.6、7.0、又は7.4)1.0ml、50mMチオシアン酸ナトリウム33.3μlを添加し、さらに15mg/mlグルコース水溶液と精製水をグルコース終濃度0、0.045、0.15、0.45、1.5又は4.5mg/ml、合計添加液量3.3mlとなるように添加して懸濁した後、33.3μlの上記菌液を添加、攪拌して15分間、37℃、10%炭酸ガスを充填したインキュベーター中で保持した。この混合液中のアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンスの生菌数を試験例1と同様の方法で測定した。本試験の殺菌活性の評価基準として、生菌数が接種菌数の10分の1以下に低下した場合、有効と判定した。(3)試験結果 本試験の結果を表2に示す。 表2には、各行に各pHの緩衝液を添加した際の懸濁液のpH実測値を示し、各列に異なるグルコース濃度における結果を示した。その結果、pH実測値が5.9以下の弱酸性条件では、グルコースを添加した場合には、いずれのグルコース濃度でも、有効な殺菌活性を有していた。すなわち、本発明の口腔内用殺菌剤は、溶媒に懸濁した際のpHが5.9以下となるように緩衝能を有する酸及び塩類を添加することによって強い殺菌活性が得られることが明らかになった。この殺菌活性は、好ましくはpH5.9以下で有効に発揮され、グルコース濃度が0.15mg/ml以上の場合にはpH5.5以下とすることで菌数が検出限界以下となるほどに有効に発揮され、グルコース濃度が0.45mg/ml以上の場合にはpH5.9以下とするだけで菌数が検出限界以下となるほどに有効に発揮され、グルコース濃度が1.5mg/ml以上の場合にはpH6.8以下とするだけで菌数が検出限界以下となるほどに有効に発揮され、グルコース濃度が4.5mg/ml以上の場合にはpH7.1以下とすることで菌数が検出限界以下となるほどに有効に発揮されるものであった。また、グルコース濃度が0.15mg/ml以上の条件では、pH4.4〜pH7.1の範囲のいずれのpHの場合にも、有効な殺菌活性を有していた。この結果から計算すると、口腔内用殺菌剤中へのグルコース配合量は、組成物中のグルコース含有量(混合物、グルコース、酸、及び塩類の合計重量に占めるグルコース重量の百分率)が上記のいずれの緩衝液を酸及び塩類として用いた場合でも0.1%以上であれば強い殺菌効果が得られることが明らかとなった。 以上の結果から、本発明の口腔内用殺菌剤は、唾液のなかに存在する微量のチオシアン酸を利用してその殺菌活性を発揮することが明らかになった。さらに、従来、ラクトパーオキシダーゼシステムの殺菌効果が及ばないとされていたアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)に対しても、殺菌活性を発揮することがわかった。 本発明の口腔内用殺菌剤が、それ自身にチオシアン酸成分を含有せず、外部からのチオシアン酸の添加を必要とせず、唾液のなかに存在する微量濃度のチオシアン酸によって十分に殺菌活性を発揮することから、本発明の口腔内用殺菌剤は、医薬品の場合には服薬量を過ちがちな高齢者や要介護者にとっても、極めて安心して使用できる殺菌剤であり、食品添加剤としても極めて安心なものである。 また、本発明の口腔内用殺菌剤が、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)に対して殺菌活性を発揮することから、本発明は、新規なアクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)用の口腔内用殺菌剤を提供するものである。 次に製造例(実施例1)を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の製造例に限定されるものではない。 エリスリトール(日研化学社製)150g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)525g、ソルビトール(東和化成社製)300g、コーンスターチ(王子コーンスターチ)150g、アセロラ香料(高砂香料工業社製)7.5g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)60g、クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)25.8g、クエン酸三ナトリウム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)52.1g、キシリトール(東和化成社製)180.1g、グルコース(日本食品化工社製)45g、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)0.5g、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)4gの各粉末を添加して均一に混合し、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、錠剤1錠当り0.5gとし、12錠/分の打錠速度、9.8KPaの圧力で前記混合粉末を連続的に打錠し、口腔内用殺菌剤であるタブレット1800錠(約900g)を製造した。[試験例3] 本試験は、ヒトの口臭に対する本発明の口腔内用殺菌剤による効果を調べるために行った。(1)試料の調製(試験試料) 実施例1の方法において、錠剤1錠当り質量を0.6gとして打錠したこと以外は、実施例1と同様の方法にて製造したタブレット(本発明の口腔内用殺菌剤)を試験試料とした。(対照試料) また、前記試験試料において、ラクトパーオキシダーゼとグルコースオキシダーゼの代わりに、これらを還元麦芽糖水飴に置換したこと以外は、その他の成分については同様の組成で、実施例1と同様の方法で製造したタブレットを対照試料とした。(2)試験方法(試験群) 試験日の起床後、歯磨き・うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人3名の被験者に対して、試験日の午前中に試験試料(タブレット)を1錠ずつ口腔内で溶かし、連続的に3錠服用させた(試験群)。タブレット摂取前、並びに、摂取1時間後、及び2時間後の各時点において口腔内の呼気を採取し、口臭原因物質として知られている硫化水素の変化量、および揮発性硫黄化合物の変化量(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドの総変化量)を口臭測定器(アビリット社製、オーラル・クロマ)によって測定し、被験者3名の平均値を呼気10ml当たりのng数で表示した。(対照群) また、対照試験として、前記試験日程とは別に、試験日の起床後、歯磨き・うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人3名の被験者に対して、対照試料(タブレット:ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ不含)を前記試験群と同様の方法で3錠服用させ、口腔内の呼気を口臭測定器により測定した(対照群)。(無摂取群) さらに、試験群、対照群とは別の試験日程で、試験群及び対照群と同様に、試験日の起床後、歯磨き・うがい等の歯の清掃、飲水、および飲食を禁止した健常人3名の被験者に対して、タブレットを一切摂取させることなく、口腔内の呼気における硫化水素の変化量、および揮発性硫黄化合物の変化量を口臭測定器により測定した(無摂取群)。(3)試験結果 本試験の結果を表3及び表4に示す。表3は、各群における呼気中の硫化水素の変化量を示す。また、表4は、各群における呼気中の揮発性硫黄化合物の変化量を示す。さらに、図1および図2は、表3および表4をグラフ化したものである。a)硫化水素の変化量 表3および図1から明らかなとおり、被験者が何も摂取しない状態(無摂取群:図1の□で示す)では、1時間後に呼気中の硫化水素量は0.50ng/10mlと僅かに上昇し、さらに、2時間後には呼気中の硫化水素の変化量は3.14ng/10mlにまで達したが、本発明のタブレットを摂取(試験群:図1の●で示す)することによって、1時間後には摂取前に比べ2.54ng/10ml減少し、2時間後であっても、1時間後に比べ0.17ng/10ml増加するものの、依然として摂取前に比べ2.37ng/10mlだけ低い状態を維持していることが判明した。なお、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ不含のタブレットを摂取した群(対照群:図1の▲で示す)において、摂取から1時間後は摂取前に比べ、一旦1.02ng/10mlだけ減少するものの、2時間後には、呼気中の硫化水素量は摂取前の状態にまで戻ってしまい、呼気中の硫化水素量を低い状態で保持する効果は確認されなかった。すなわち、試験群は、摂取1時間後において対照群と比較して約2.5倍の硫化水素の減少量を示した。さらに対照群で硫化水素の変化が増大に転じた2時間後においても、試験群ではその硫化水素の減少状態が摂取1時間後と同程度に維持されていることがわかった。b)揮発性硫黄化合物の変化量(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドの総変化量) 表4および図2から明らかなように、被験者が何も摂取しない状態(無摂取群:図2の□で示す)では、1時間後に呼気中の揮発性硫黄化合物の変化量は0.37ng/10mlと僅かに上昇し、さらに、2時間後には呼気中の揮発性硫黄化合物の変化量は5.30ng/10mlにまで達したが、本発明のタブレットを摂取(試験群:図2の●で示す)することによって、1時間後には摂取前に比べ3.93ng/10ml減少し、2時間後であっても、1時間後に比べ1.99ng/10ml増加するものの、依然として摂取前に比べ1.94ng/10mlだけ低い状態を維持していることが判明した。なお、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ不含のタブレットを摂取した群(対照群:図2の▲で示す)において、摂取から1時間後は摂取前に比べ、一旦1.48ng/10mlだけ減少するものの、2時間後には、呼気中の揮発性硫黄化合物の総量は摂取前の状態にまで戻ってしまい、呼気中の揮発性硫黄化合物の総量を低い状態で保持する効果は確認されなかった。すなわち、試験群は、摂取1時間後において対照群と比較して約2.6倍の揮発性硫黄化合物の減少量を示した。さらに対照群で揮発性硫黄化合物の変化が増大に転じた2時間後においても、試験群ではその揮発性硫黄化合物の減少状態が摂取1時間後の約半分程度に維持されていることがわかった。 以上より、口腔内の呼気中の硫化水素又は揮発性硫黄化合物の総量は、ラクトパーオキシダーゼとグルコースオキシダーゼを含む本発明の口腔内用殺菌剤(試験群)を摂取することにより減少することが判明し、かつ、その減少した状態を一定時間保持する効果も有することが明らかとなった。すなわち、本発明の口腔内用殺菌剤は、インビトロの実験系のみならず、実際のヒトの口腔内においてもその殺菌活性を発揮して、ヒトの呼気中の口臭成分を低減させること、すなわち実際にヒトの口臭抑制効果を発揮すること、さらにこれらの効果は何ら副作用を伴うこともなく、単にヒトの口腔内に投与するだけで発揮されることがわかった。 本発明の口腔内用殺菌剤及び食品添加剤は、口腔内の衛生状態の確保手段として効果的であることに加えて、安全で副作用が少なく、飲食品に添加して飲食品とともに飲食可能であり、同時に口腔内で殺菌効果を発揮し、且つ長期間の日常的な摂取にも不安がない。 有効成分としてラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する(ただし、チオシアン酸及びその塩を添加されて含有しない)、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)の殺菌のための口腔内用殺菌剤であって、 pH調節成分によって、pH5.4〜pH4.4の範囲に調節される、口腔内用殺菌剤。 pH調節成分が、有機酸及び/又は有機酸の塩類である、請求項1に記載の口腔内用殺菌剤。 有機酸が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、及びグルタミン酸からなる群から選択された少なくとも1種以上の酸である、請求項2に記載の口腔内用殺菌剤。 請求項1〜3の何れかの口腔内用殺菌剤を含有する、歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎の予防及び/又は治療用の医薬組成物。


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