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タイトル:特許公報(B2)_炎症性腸疾患の鑑別判断方法
出願番号:2008516672
年次:2012
IPC分類:G01N 30/88,G01N 33/66,G01N 33/50


特許情報キャッシュ

三善 英知 飯島 英樹 新崎 信一郎 辻井 正彦 林 紀夫 中川 孝俊 近藤 昭宏 谷口 直之 JP 4973885 特許公報(B2) 20120420 2008516672 20070518 炎症性腸疾患の鑑別判断方法 国立大学法人大阪大学 504176911 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 松谷 道子 100106518 志賀 美苗 100127638 櫻井 陽子 100138911 橋本 諭志 100146259 三善 英知 飯島 英樹 新崎 信一郎 辻井 正彦 林 紀夫 中川 孝俊 近藤 昭宏 谷口 直之 JP 2006140457 20060519 20120711 G01N 30/88 20060101AFI20120621BHJP G01N 33/66 20060101ALI20120621BHJP G01N 33/50 20060101ALI20120621BHJP JPG01N30/88 NG01N33/66 ZG01N33/50 TG01N33/50 UG01N30/88 J G01N 30/88 G01N 33/50 G01N 33/66 特表2005−504321(JP,A) 国際公開第99/34218(WO,A1) 国際公開第2005/054853(WO,A2) Journal of Autoimmunity,1989年,vol.2,p.101-114, Journal of Immunology,,1993年,vol.151,p.1137-1146, Journal of Autoimmunity,1997年,vol,10,p.77-85 FEBS Letters,2000年,vol.473,p.349-357 Glycoconjugate Journal,2002年,vol.19,p.23-31 9 JP2007060257 20070518 WO2007136001 20071129 17 20100514 宮澤 浩 本発明は炎症性腸疾患の鑑別判断方法に関する。詳細には、本発明は炎症性腸疾患患者が潰瘍性大腸炎であるかクローン病であるかを鑑別判断する方法に関する。 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、現在全国で約12万人の患者が存在する難治性疾患として知られている。現在、IBD患者が潰瘍性大腸炎であるかクローン病であるかの鑑別診断は、主に特徴的な注腸造影の所見、内視鏡の所見、類上皮細胞肉芽腫の有無を観察する病理学的所見、血便の有無、肛門病変の合併などを観察する臨床症状の相違に基づき行われている。かかる鑑別診断のためには、内視鏡による検査が必須となり、患者への負担が大きい。非侵襲的で客観的判断の可能な鑑別診断法が求められている。 免疫グロブリンG(以下「IgG」とする)は正常ヒト血清中の生体内に存在する免疫グロブリンの約75−85%を占める糖タンパク質である。IgGは図1に示すように同一の2本のH鎖と同一の2本のL鎖から構成されている対称形の構造の分子である。 IgGのFc領域には糖鎖が存在しており、IgG全体の立体構造を保つ上で重要な働きを有し、またFcγレセプターや補体などのエフェクター分子との相互作用に大きな影響を与えることが知られている。このような糖鎖として図2に示す16種類が存在することが知られている。 健常人においてはIgGの16種類の糖鎖の相対比率はほぼ一定であるが、骨髄腫患者やリューマチ患者の糖鎖は特異的な相対比率を示すことが知られている。例えば慢性関節リウマチ患者においては、ガラクトースを有していないアガラクト糖鎖が多数存在することが報告されている。係る知見に基づき、慢性関節リウマチの診断を行う方法(特許文献1)が提案され、また糖鎖の相対比率を得る手段(非特許文献1)やガラクトース欠損糖鎖を有するアガラクトIgGに対する血中抗体(CARF)を測定する手段(非特許文献2)等が開発されている。しかし、このCARFはリウマチの活動性にはよく相関するものの、必ずしも血中アガラクトIgGの量を反映するものではないことが確認されている。 また、IgG糖鎖の変化に基いてエイズの病態を診断するエイズ検査試薬(特許文献2)、肝疾患、悪性高血圧疾患、免疫グロブリンA腎症、小児疾患等の診断方法(特許文献3)が提案されている。特に炎症性疾患全般において、アガラクトIgGが増えることは古くから報告されている(非特許文献3)。炎症性疾患のなかでも特に自己免疫疾患においてアガラクトIgG量が上昇することが報告されている。このような疾患でアガラクトIgGが上昇する機序としては、TNFやIL6など急性期のサイトカインの関与が示唆されているものの、詳細は明らかではない。炎症性腸疾患においても、クローン病や潰瘍性大腸炎でアガラクトIgGが健常人と比べて上昇することが報告されており、しかもその値がC反応性蛋白(CRP)や臨床症状と相関すると言われている(非特許文献4および5)。しかしながら、これらの報告は、IgG糖鎖の全分画におけるアガラクトIgGの比率を指標として検討されたものであり、特定の糖鎖間の比率に基づいて炎症性腸疾患を鑑別診断する方法について言及した従来技術はない。特開平8−23091号公報特開平7−209301号公報特開平8−82623号公報TAKARA BIO ONLINE CATALOGUE 「PALSTATION(登録商標)を用いたヒトIgGの糖鎖分析」http://bio.takara.co.jp/catalog/catalog_d.asp?C_ID=C0730 (平成18年3月15日ダウンロード)血清中抗ガラクトース欠損IgG抗体測定用医薬品ピコルミ(登録商標)CA・RF添付書類Thomas W. Rademacher et al., Springer Semin Immunopathol, Vol. 10, 231-249 (1998)R Dube et al., Gut, Vol. 31, 431-434 (1990)Mae F. Go et al., J. Clin. Gastroenterol. Vol 18, 86-87 (1994) 本発明は、炎症性腸疾患を鑑別判断するための、客観的かつ非侵襲的方法を提供することを目的とする。 本発明は、炎症性腸疾患に罹患している、あるいはその可能性の高い患者より採取された血清中の免疫グロブリンG糖鎖分画において、式(I)で示されるG0糖鎖量と、式(II)で示されるG2糖鎖量(上記式中、Gはガラクトース、Mはマンノース、GNはN−アセチルグルコサミン、Fはフコースを示す)の相対比を測定し、得られた相対比に基づき患者の鑑別判断を行う、炎症性腸疾患の判定方法を提供する。 本発明の方法において、式(I)で示されるG0糖鎖量の式(II)で示されるG2糖鎖量に対する相対比(G0/G2)を測定する。該比が一定の値より高い場合にクローン病であると判定される。一方、該比が一定の値より低い場合には、潰瘍性大腸炎と判定される。 本発明により、炎症性腸疾患を発症している、あるいはその疑いの高い患者において、潰瘍性大腸炎とクローン病の鑑別診断を行うことができる。本発明の方法は患者より採取された末梢血を用いるものであり内視鏡による診断を必須とする従来の方法と比して患者への負担は格段に低い。 更に具体的に述べれば、本発明は、炎症性腸疾患患者から採取した末梢血を用いて、該腸疾患が潰瘍性大腸炎に由来するものか或いはクローン病に由来するものかを鑑別判断し得る方法に関するものである。本発明の方法により、従来は特徴的な注腸造影の所見、内視鏡の所見、類上皮細胞肉芽腫の有無を観察する病理学的所見、血便の有無、肛門病変の合併などを観察して総合的に判断する必要のあったこれらの鑑別を、例えば血便の有無、肛門病変の合併等の非侵襲的所見から炎症性腸疾患と判断される患者の末梢血を用いて、当該炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎に由来するものかあるいはクローン病に由来するものかを鑑別判定し得るので、患者の肉体的、精神的負担を大いに軽減できるという効果を奏する。また、本発明の方法に用いられるG0/G2比は炎症性腸疾患の予後予測マーカーとしても有用である。IgG抗体の模式図を示す。IgG抗体の糖鎖全16種類を示す。HPLCの各ピークと図2に示す各糖鎖構造との対応関係を示す。HPLCパターンとG0/G2測定方法を示す健常人由来のIgGの糖鎖のHPLCパターンの一例を示す。クローン病患者由来のIgGの糖鎖のHPLCパターンの一例を示す。潰瘍性大腸炎患者由来のIgGの糖鎖のHPLCパターンの一例を示す。クローン病患者(CD)、潰瘍性大腸炎患者(UC)および健常人(HC)のG0/G2比の分布を示す。クローン病患者(CD)、潰瘍性大腸炎患者(UC)および健常人(HC)のG0/G2比の分布を示す。クローン病患者(CD)および潰瘍性大腸炎患者(UC)の疾患活動性および罹病範囲とG0/G2比の関係を示す。クローン病患者(CD)、潰瘍性大腸炎患者(UC)および健常人(HC)のガラクトース欠損(aGAL)陽性/陰性率を示す。クローン病患者と健常人の鑑別判断のためのG0/G2比およびASCAレベルについてのROC曲線を示す。クローン病患者と潰瘍性大腸炎患者の鑑別判断のためのG0/G2比およびASCAレベルについてのROC曲線を示す。クローン病患者(CD)におけるG0/G2比とASCAレベルの関係を示す。潰瘍性大腸炎患者(UC)におけるG0/G2比とASCAレベルの関係を示す。慢性関節リウマチと潰瘍性大腸炎を併発している患者の糖鎖のHPLCパターンを示す。クローン病患者(CD)、潰瘍性大腸炎患者(UC)および健常人(HC)の形質細胞におけるβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β4GalT)1の相対的mRNA発現を示す。クローン病患者(CD)、潰瘍性大腸炎患者(UC)および健常人(HC)のB細胞におけるβ4GalT1の相対的mRNA発現を示す。クローン病患者(CD)、潰瘍性大腸炎患者(UC)および健常人(HC)の形質細胞におけるβ4GalTの酵素活性を示す。クローン病患者(CD)および潰瘍性大腸炎患者(UC)の血清中の抗アガラクトIgG抗体量を示す。 本発明の方法は、患者より採取された末梢血より得られた血清を用いる。本明細書および請求の範囲において「炎症性腸疾患に罹患している、あるいはその可能性の高い患者」は、従来から知られた炎症性腸疾患と関連づけられる臨床所見により炎症性腸疾患の罹患が確認された患者、および臨床所見より炎症性腸疾患に罹患している疑いが高いと考えられる患者である。 本発明の方法においては、患者の末梢血より得られた血清中のIgGの糖鎖構造を調べる。患者の末梢血より血清を得る方法は、現在臨床検査で採用されているいずれの方法を用いても良い。 得られた血清よりIgGを得、その糖鎖パターンを解析する。前述の非特許文献1、非特許文献3等に記載されているように、血清中のIgG糖鎖パターンを調べる方法はいくつか報告されている。本発明においては、血清中のIgGの糖鎖中の式(I)で示されるG0糖鎖と式(II)で示されるG2糖鎖の相対比を調べることができる方法であれば、いずれの方法を採用してもよい。例えば糖鎖を単離し、蛍光標識し、これをHPLCで展開してG0糖鎖とG2糖鎖の相対比を調べる方法が例示される。 一の態様において本発明は、1)炎症性腸疾患患者の血清中の免疫グロブリンGを単離する工程、2)免疫グロブリンGより糖鎖を切り出す工程、3)G2糖鎖量とG0糖鎖量の相対比を測定する工程、および4)得られた相対比によって、炎症性腸疾患を鑑別する工程を含む。 各工程は、いずれも公知の方法を採用して行えばよく、特に限定されるものではない。例えば血清からプロテインAを用いてIgGを単離し、次いでN−グリカナーゼにて糖鎖を遊離させ、遊離された糖鎖を蛍光標識したものをHPLCで展開することによって、患者のIgG糖鎖のパターンを測定することができる(例えば非特許文献1等)。 具体的に説明する。プロテインAはIgGと特異的に結合する。このプロテインAを担体に結合させたカラムが市販されている。かかるカラムに血清を作用させることにより、IgGを単離することができる。 得られたIgGより糖鎖を切り出す。糖鎖の切り出しは、ヒドラジン分解、Nアセチル化処理等を用いる化学的方法、N−グリカナーゼ等の酵素を作用させる方法が知られており、いずれを用いてもよい。IgGより切り出された糖鎖を、ピリジルアミノ(PA)化する。得られたPA化糖鎖を次いで、市販の糖鎖分析用カラムを用いて、カラム記載のプロトコルに従いHPLC分析する。 図3に、糖鎖分析HPLCパターンを示す。図2に示す各IgG糖鎖に対応するピークを各アルファベットで示した。図4にG0/G2測定の概念図を示す。本態様においてはG0糖鎖量とG2糖鎖量の相対比として、G0糖鎖のピークおよびG2糖鎖のピークの高さの比を用いる。 本発明の判定方法においては、抗IgG(G0糖鎖)抗体および抗IgG(G2糖鎖)抗体をそれぞれ作成し、これらを用いてELISA法等の常套の方法にて患者の血清中のIgG糖鎖パターンを調べてもよい。抗体は、IgG(G0糖鎖)とIgG(G2糖鎖)を特異的に区別し、その相対的な量比を測定することが可能なものであれば、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。抗体の調製、ELISA法を利用した定量法はよく知られており、公知のいずれの方法によって行ってもよい。 本発明においては、上記のようにして得られる血清中のIgG糖鎖におけるG2糖鎖とG0糖鎖の相対比に基づき、炎症性腸疾患の患者の鑑別判定を行う。G2糖鎖に対するG0糖鎖の相対比(G0/G2)が予め設定された値より高い場合に、炎症性腸疾患はクローン病である、あるいはクローン病である可能性が高いと判定される。炎症性腸疾患患者において該相対比が予め設定された値より低い場合には、潰瘍性大腸炎である、あるいは潰瘍性大腸炎である可能性が高いと判定される。 さらに、患者の炎症性腸疾患は、G0/G2比がより高いほど重症であると判定、あるいは将来重症になると予測される。 ここで「予め設定された値」は、IgG糖鎖パターンの測定プロトコルを決定した後、該プロトコルにて、従来からの判定基準によりクローン病であるか、潰瘍性大腸炎であるかの診断がされている患者の血清、および健常人の血清についてのデータを元に設定される値である。 例えば、本願明細書に記載の実施例において用いた方法である、G2糖鎖とG0糖鎖の量の相対比として、IgGから糖鎖を単離し、G0糖鎖とG2糖鎖の量の相対比(G0/G2)を、それぞれの糖鎖のHPLCピークの高さの比として求めた場合、G0/G2が1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上である場合に患者はクローン病である、あるいはクローン病である可能性が高いと判定される。一方、炎症性腸疾患患者においてG0/G2が2.1未満である場合、好ましくは2.0未満である場合、さらに好ましくは1.5未満である場合に患者は潰瘍性大腸炎である、あるいは潰瘍性大腸炎である可能性が高いと判定される。なお、この値は限定的ではなく、当業者は当該プロトコルにて症例数を増やして検討し、さらに信頼性の高い値を得ることができる。 なお、慢性関節リウマチ患者においてアガラクトIgG含量が高いことが知られており、その他の炎症性疾患においてもIgGの糖鎖パターンに変化が見られることが知られている。本発明による炎症性腸疾患の判定に際しては患者が併発する疾患について考慮する必要がある。 本発明の別の態様において、前記G0/G2が予め設定された値より低い場合に該患者の予後が良好であると判定される。本態様における「予め設定された値」は健常人のG0/G2比に基づき設定され、例えば健常人のG0/G2比の平均+2SDであり、その値として1.4が例示される。この値が限定的でないことは前記と同様である。 本発明のキットは、本発明の判定方法を実施するため、G0糖鎖量およびG2糖鎖量を検出するための試薬を含む。前述のように患者の血清中のG0糖鎖量およびG2糖鎖量は、HPLCによって、あるいは抗IgG(G0糖鎖)抗体および抗IgG(G2糖鎖)抗体を用いるELISA法等によっても調べることができる。よって、G0糖鎖量およびG2糖鎖量を検出するための試薬には、これら方法に使用されるあらゆる試薬が包含される。 キットの一例は、(1)血清中のIgGを単離するための試薬、;および(2)IgGより糖鎖を切り出すための試薬、を含むキットである。「血清中のIgGを単離するための試薬」には、当該目的に使用可能なあらゆる手段が包含され、例えばプロテインAまたはGを有するカラムが挙げられる。本キットはさらに、切り出した糖鎖を修飾するための試薬、例えば2−アミノピリジン、および/または糖鎖分析用HPLCカラムを含んでもよい。 キットの別の例は、例えばELISA法に有用なキットであり、(1)抗IgG(G0糖鎖)抗体;(2)抗IgG(G2糖鎖)抗体;(3)IgG(G0糖鎖)およびIgG(G2糖鎖)を固定化するための固相支持体、例えばマイクロプレート、プラスチックチューブまたはビーズ;および(4)検出用酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ、およびその基質、を含む。本キットはさらに適当な希釈液、洗浄液、標準物質を含んでもよい。 この度、潰瘍性大腸炎患者においてクローン病患者および健常人と比較して糖転移酵素であるβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β4GalT)1のmRNAの発現が上昇しており、より高いβ4GalT活性が観察されることが明らかとなった(実施例6)。よって本願は、炎症性腸疾患に罹患している、あるいはその可能性の高い患者においてβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの活性を測定すること、およびその測定結果に基づき患者の鑑別判断を行うことを含む、炎症性腸疾患の判定方法を包含する。実施例1 表1に記載のクローン病患者(CD)27例、潰瘍性大腸炎患者(UC)27例および健常人(HC)10例の末梢血より常法により血清を得た。なお、患者には関節炎リウマチに罹患している者はいなかった。 血清からのIgGの精製はタカラバイオ(株)のImmunoPure IgG Purification Kitを用い、キットに添付されたプロトコルに従ってIgGを含む画分を集めた。 得られたIgG画分の約2nmol相当をマイクロ遠心チューブに投入して凍結乾燥し、100mM NH4HCO3(pH8.6)40μlと水20μlを加えて溶解した。ここへグリコペプチダーゼF(タカラバイオ(株))を20μl(10mU)加え、37℃で一晩インキュベーションした。反応後、100mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)50μlを添加し、37℃にて1時間インキュベーションし、グリコシルアミンからアンモニアを遊離させて、糖鎖を単離した。 得られた液をPALSTATION(登録商標)(タカラバイオ(株))により、添付のプロトコルに従いピリジルアミノ化(PA化)した。 PA化糖鎖の約1/10量(約200pmol相当)を溶離液B20%、溶離液A80%を含む液で平衡化した糖鎖分析用ODS シリカカラムPALPAK Type R(登録商標 タカラバイオ株式会社)へ注入し、溶離液Bの割合を60分かけて50%まで直線的に上昇させて、糖鎖を溶出した。糖鎖の検出は、蛍光検出器(Ex320nm Em400nm)により行った。カラム: PALPAK Type R(4.6 mmΦ×250 mm) タカラバイオ(株)溶離液A: 10 mM 酢酸−トリメチルアミン(pH3.8) 溶離液B:0.5% 1-ブタノール含有溶離液A 流速: 1.0 ml/min カラム温度: 40℃ 蛍光検出:Ex320nm Em400nm 図5〜7に健常人、クローン病患者、潰瘍性大腸炎患者の代表的なHPLCパターンを示す。G0/G2は、上記式(I)(図2のE)で示される糖鎖(G0糖鎖)およびで式(II)(図2のH)で示される糖鎖(G2糖鎖)のピーク高さの比である。患者の背景は下記のとおりである。図5:健常人 58歳男性 G0/G2=0.57図6:クローン病患者 17歳男性 大腸型:G0/G2=7.93図7:潰瘍性大腸炎患者 17歳男性 全大腸炎型:G0/G2=1.21 また、全症例のG0/G2の値の分布を図8に示した。HPLCのパターンは、クローン病群と、潰瘍性大腸炎および健常人群に分類された。クローン病患者全症例において、G0糖鎖はG2糖鎖より高いピークを呈した。G0/G2の比が2.1以上を陽性とすると、健常人は全例陰性であったが、クローン病患者の81%、潰瘍性大腸炎患者では11%が陽性であった。一方、1.5以上を陽性とすると、クローン病で全例が陽性であり、潰瘍性大腸炎の37%、健常人の20%が陽性であった。カットオフ値を1.5、2.0、2.1とした場合の、各群に含まれる人数を表2に示す。 実施例2 クローン病患者(CD)45例、潰瘍性大腸炎患者(UC)42例、および健常人(HC)25例の血清を用いて、実施例1と同様の実験を行った。詳細な患者特性は表3に示す。 血清IgGはプロテインGカラム (Amersham Biotech. Bucks, UK)を用いて精製した。詳細には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で半分に希釈した血清をプロテインGカラムにロードした。次いでカラムを最低10カラム量のPBSで洗浄し、その後同量の10mM重炭酸アンモニウムで洗浄した。カラムに結合したIgGを0.1Mトリフルオロ酢酸(pH2.2)で溶出した。IgGの濃度は、Nanodrop ND-1000 spectroscopy (Nanodrop Technologies, Wilmington, DE)により280nmにて測定した。 精製したIgG(10−20nmol)のサンプルをSpeedVacシステム(Labconco Corp., Kansas City, MO) により乾燥した後、20μlの100mM重炭酸アンモニウムに溶解した。0.5mUグリコペプチダーゼF (タカラバイオ(株)) と一晩37℃でインキュベーションし、IgGからN結合糖鎖を遊離させた。この糖鎖をさらに50mM酢酸アンモニウム(pH4.0)と30分間インキュベーションし、凍結乾燥した。 GlycoTag (タカラバイオ(株))を製造元のプロトコルにしたがい使用し、遊離させた糖鎖を2−アミノピリジンで標識した。過剰な2−アミノピリジンをCellulose Cartridge Glycan preparation kit (タカラバイオ(株))により除去し、次いでその糖鎖を2M酢酸と80℃で2時間インキュベーションしてシアル酸を除去した。 PA化糖鎖を逆相HPLCシステム (Waters Corp., Milford, MA) により分析した。 カラム:PALPAK Type R-MB(2 mmΦ×150 mm、タカラバイオ(株)) 溶離液A:10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.4) 溶離液B:0.5% 1−ブタノール含有リン酸ナトリウム緩衝液 流速:0.5ml/min カラム温度:40℃ 溶離液B(0−50%勾配)30分および溶離液B(50%)10分にて糖鎖を溶出した。糖鎖の検出は、蛍光検出器 (Waters 2475) (Ex320nm、Em400nm)にて行った。 クローン病患者および潰瘍性大腸炎患者のG0/G2比は健常人のG0/G2比よりも有意に高かった(クローン病患者(平均±SD=2.33±1.58);潰瘍性大腸炎患者(1.24±0.78);健常人(0.69±0.34)、クローン病患者vs.健常人、潰瘍性大腸炎患者vs.健常人のいずれもP<0.01、図9)。さらに、クローン病患者のG0/G2比は潰瘍性大腸炎患者のG0/G2比よりも有意に高かった(P<0.01、図9)。 実施例3 G0/G2比が臨床パラメーターと相関するかついて検討した。疾患活動性は、クローン病患者についてはクローン病活動指数(CDAI)、潰瘍性大腸炎患者については潰瘍性大腸炎活動指数(CAI)により決定した。疾患活動期のクローン病患者(CDAI>=150)のG0/G2比は、緩解期の患者(CDAI<150)よりも有意に高かった(p<0.05、図10A)。また、炎症が回腸に限定されない罹病範囲の広いクローン病患者(ウィーン分類のカテゴリーL2およびL3)のG0/G2比は、回腸末端のみに炎症が見られる患者(カテゴリーL1)よりも有意に高かった(p<0.01、図10B)。同様に、疾患活動期の潰瘍性大腸炎患者(CAI>=6)のG0/G2比は、緩解期の患者(CAI<6)よりも有意に高かった(p<0.01、図10C)。さらに、罹病範囲の広い(大腸全体)潰瘍性大腸炎患者のG0/G2比は、左側の結腸のみが罹患している患者よりも有意に高かった(図10D)。なお、G0/G2比とCRP値、発症年齢または罹病期間との間に相関は見られなかった(データ非提示)。 実施例4 炎症性腸疾患の血清マーカーとしてのガラクトース欠損IgGの有効性について検討した。G0/G2比のカットオフ値を1.4(健常人のG0/G2比の平均+2SD)として、IgGのガラクトース欠損の陽性/陰性(aGAL(+)/(−))を判断した。その結果、クローン病患者の73%、潰瘍性大腸炎患者の33%、および健常人の0%が陽性であった。各群間の差は有意であった(p<0.01、図11A)。 最も一般的なクローン病患者のマーカーである抗サッカロマイセス・セレヴィシエ抗体(ASCA)のレベルを測定し、G0/G2比と比較した。血清中のASCAの濃度は、ASCA IgG ELISA kit (Genesis Diagnostics, Cambridge shire, UK) により製造元の説明にしたがい測定し、10U/ml以上を陽性とした。ROC(Receiver operated characteristic)曲線およびROC曲線下面積(AUC)により、G0/G2比の感度および特異性は、クローン病患者と健常人との相違に関してASCAよりも高いことがわかった(G0/G2比のAUCvs.ASCAのAUC=0.926(95%CI、0.872−0.980)vs.0.815(95%CI、0.732−0.897);図11B)。さらに、クローン病患者と潰瘍性大腸炎患者との相違に関しても、G0/G2比の感度および特異性はASCAよりも高いことがわかった(G0/G2比のAUCvs.ASCAのAUC=0.849(95%CI、0.780−0.918)vs.0.792(95%CI、0.714−0.869);図11C)。なお、クローン病患者および潰瘍性大腸炎患者のG0/G2比およびASCAレベルの分布図において、G0/G2比とASCAレベルの間に相関は見られなかった(図11D、E)。 実施例5 ガラクトース欠損IgG(G0/G2比に基づく)と炎症性腸疾患の予後との関係について調べた。患者がサラゾスルファピリジン(SASP)または5−アミノサリチル酸(5−ASA)のいずれかの投与(コルチコステロイド、抗TNFα抗体、および免疫調節薬なし)により1年以上緩解状態を維持している場合を「臨床的無再発」と定義した。ガラクトース欠損の陽性/陰性(aGAL(+)/(−))は、実施例4と同様に判断した。ガラクトース欠損陽性の潰瘍性大腸炎患者の臨床的無再発率(11%)は、陰性患者(77%)よりも有意に低かった(p<0.001;表4)。また、ガラクトース欠損陽性のクローン病患者の臨床的無再発率は陰性患者と比較して低かった(表4)。さらに、CRP値が陰性(<0.3mg/dl)の場合も、ガラクトース欠損陽性の潰瘍性大腸炎患者の臨床的無再発率(0%(0/5))は陰性患者(90%(19/21))より有意に低かった(p<0.001)。これらの結果は、G0/G2比が炎症性腸疾患の予後予測マーカーとなることを示唆する。参考例1 潰瘍性大腸炎とリウマチを合併した患者から採取された血清中の、IgG糖鎖パターンを実施例1と同様の方法にて調べた。潰瘍性大腸炎患者 69歳女性、CRP5.43、左側大腸炎型、リウマチを合併。 HPLCパターンを図12に示す。クローン病患者と同様の糖鎖パターンを示し、G0/G2=2.70であった。 実施例6 炎症性腸疾患患者の血清中のβ−ガラクトシダーゼ(糖鎖末端のガラクトースを遊離させる酵素)の活性を調べた。クローン病患者および健常人の血清を、外腕ガラクトースを有するPA化二分岐糖鎖 (PA-Sugar chain 001、タカラバイオ(株)) と3日間37℃でインキュベートし、この糖鎖をHPLCにより分析した。その結果、クローン病患者および健常人のいずれの血清によっても末端ガラクトースの欠失が観察された(データ非提示)。これは、クローン病患者と健常人の間でβ−ガラクトシダーゼ活性には差がないことを示唆する。 次に、糖転移酵素であるβ−ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素活性を炎症性腸疾患患者において調べた。IgGはB細胞および形質細胞により産生されることから、これら細胞におけるβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β4GalT)1のmRNAの発現をリアルタイムPCRにより調べた。また、形質細胞におけるβ4GalTの酵素活性を調べた。 末梢血単核細胞(PBMC)を炎症性腸疾患患者および健常人の静脈血からFicoll-Hypaque密度勾配遠心により単離した。このPBMCから、B cell isolation kit IIおよびPlasma cell isolation kit (Miltenyi Biotec., Bergisch Gladbach, Germany) により添付の説明書にしたがいB細胞および形質細胞を単離した。 全RNAをIsogen-LS (Wako Chemicals, Osaka, Japan) により単離し、Superscript III first strand system (Invitrogen, Carlsbad, CA)を添付の説明書にしたがい使用して相補的DNAを合成した。ヒトβ4GalT1(Assay ID: Hs00155245_m1)および内部標準βアクチン用の設計および標識済みのTaqMan PCR プライマーとプローブのセット (TaqMan Gene Expression Assays, Applied Biosystems, Foster City, CA) およびABI PRISM 7900HT Sequence Detection System の装置およびソフトウェア (Applied Biosystems)を用いてリアルタイムPCRを行った。 また、単離した形質細胞を100μlのTNEバッファー(25mM Tris、1% NP−40、1mM EDTA)に溶解し、超音波分解し、12,000gで10分間4℃で遠心し、上清を回収した。7.5μlの細胞サンプルを、6.25μlの80mM UDP−ガラクトース(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、5μlの0.77 mM ピリジルアミノ化アガラクトN結合オリゴ糖(アクセプター分子として使用)とインキュベートし、HEPESバッファーで25μlに調節した(反応混合物中のアクセプター分子の最終濃度は77μMである)。この混合物を37℃で24時間インキュベートし、反応を1分間の煮沸により終了させた。次いでサンプルを12,000gで10分間遠心し、25μlの上清のうち5μlを前述のようにHPLCで分析した。β4GalT活性は、反応中に上昇したガラクトシル化グリカンのピークの曲線下面積を測定し、その濃度を標準的ガラクトシル化二分岐PA糖を用いて決定することで計算した。β4GalT活性は、ガラクトシル化グリカンの濃度をインキュベーション時間で割り、nmol/時間で示した。 形質細胞における潰瘍性大腸炎患者のβ4GalT1のmRNAの発現は、クローン病患者(P<0.05)および健常人(P<0.01)よりも有意に高かった(図13A)。また、潰瘍性大腸炎患者のB細胞では、クローン病患者または健常人と比較してβ4GalT1のmRNAの発現が有意に増加していた(図13B)。さらに、潰瘍性大腸炎患者の形質細胞では、クローン病患者または健常人と比較してβ4GalTの活性が大幅に上昇していた(図13C)。 参考例2 リウマチの診断マーカーである抗アガラクトIgG抗体のレベルをクローン病患者および潰瘍性大腸炎患者において調べた。抗アガラクトIgG抗体が陽性であったのは、41例のクローン病患者のうち1例(2%)および38例の潰瘍性大腸炎患者のうち2例(5%)のみであった(図14)。これら3例の抗アガラクトIgG抗体陽性のクローン病患者および潰瘍性大腸炎患者では、陰性患者と比較して疾患特性や腸管外合併症の相違は観察されなかった。 以上の結果から、抗アガラクトIgGの抗体レベルでは炎症性腸疾患の鑑別診断、より具体的にはクローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別判断は難しいことが判る。 炎症性腸疾患に罹患している、あるいはその可能性の高い患者より採取された血清中の免疫グロブリンG糖鎖分画において、式(I)で示されるG0糖鎖量と、式(II)で示されるG2糖鎖量(上記式中、Gはガラクトース、Mはマンノース、GNはN−アセチルグルコサミン、Fはフコースを示す)の相対比を測定し、得られた相対比に基づき患者の鑑別判断を行う、炎症性腸疾患の判定方法。 G0糖鎖量のG2糖鎖量に対する相対比G0/G2が予め設定された値より高い場合に、炎症性腸疾患患者がクローン病であると判定する、請求項1記載の方法。 G0糖鎖量のG2糖鎖量に対する相対比G0/G2が予め設定された値より低い場合に、炎症性腸疾患患者が潰瘍性大腸炎であると判定する、請求項1記載の方法。 G0糖鎖量のG2糖鎖量に対する相対比G0/G2が高いほど該患者の炎症性腸疾患が重症であると判定する、請求項1〜3いずれかに記載の方法。 G0糖鎖量のG2糖鎖量に対する相対比G0/G2が予め設定された値より低い場合に、該患者の予後が良好であると判定する、請求項1記載の方法。 1)血清中の免疫グロブリンGを単離する工程、2)免疫グロブリンGより糖鎖を切り出す工程、3)該糖鎖におけるG2糖鎖量とG0糖鎖量の相対比を測定する工程、および4)得られた相対比によって、炎症性腸疾患を判定する工程を含む、請求項1〜3いずれかに記載の方法。 G0糖鎖量およびG2糖鎖量を検出するための試薬を含む、請求項1〜6いずれかに記載の方法を実施するためのキット。 以下を含む、請求項7記載のキット:1)血清中の免疫グロブリンGを単離するための試薬;および2)免疫グロブリンGより糖鎖を切り出すための試薬。 以下を含む、請求項7記載のキット:1)抗免疫グロブリンG(G0糖鎖)抗体;2)抗免疫グロブリンG(G2糖鎖)抗体;3)免疫グロブリンG(G0糖鎖)および免疫グロブリンG(G2糖鎖)を固定化するための固相支持体;および4)検出用酵素およびその基質。


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