タイトル: | 特許公報(B2)_原子移動ラジカルカップリング反応を用いる1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法 |
出願番号: | 2008510801 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07C 67/343,C07C 69/773,C07B 61/00 |
新谷 武士 JP 5081146 特許公報(B2) 20120907 2008510801 20070316 原子移動ラジカルカップリング反応を用いる1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法 日本曹達株式会社 000004307 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 新谷 武士 JP 2006074463 20060317 20121121 C07C 67/343 20060101AFI20121101BHJP C07C 69/773 20060101ALI20121101BHJP C07B 61/00 20060101ALN20121101BHJP JPC07C67/343C07C69/773C07B61/00 300 C07C 37/01、39/15、67/343、69/773 国際公開第2000/023072(WO,A1) T. OSAKO et al,Inorganic Chemistry,2005年,44(2),410-415 Jitender M. KHURANA et al.,Organic & Biomolecular Chemistry,2003年,1,pp.1737-1740 F. FRANCALANCI et al.,Journal of Electroanalytical Chemistry,1982年,232,pp.59-70 6 JP2007055393 20070316 WO2007119402 20071025 13 20080812 神野 将志 本願は、2006年3月17日に出願された特願2006−074463号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 本発明は、1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法に関し、詳しくは、触媒として遷移金属化合物を用いた1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法に関する。 テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカンは、多分子系包接化合物におけるホスト化合物として利用できる。例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンは、種々の有機ゲスト化合物と選択的に包接化合物(ホスト分子の作る空洞内にゲスト分子が入り込んだ構造を有する化合物)を形成するので、選択分離、化学的安定化、不揮発化、粉末化などの技術分野における応用が期待されている。 これまで、テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカンを製造する方法としては、例えば、フェノールとグリオキザールを、酢酸中、硫酸存在下、2〜10℃の温度範囲内で縮合させる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。 また、グリオキザールとグリオキザールに対して大過剰のフェノールとを塩酸存在下、100〜180℃の温度範囲内で縮合させる方法(例えば、特許文献1参照。)や、フェノールとジアルデヒド又はその誘導体とを、硫酸とリン酸の存在下に縮合させることを特徴とするテトラキス(ヒドロキシフェニル )アルカンの製造方法(例えば、特許文献2参照。)が知られている。 しかしながら、特許文献1に記載の方法のように、硫酸触媒単独下における反応は、副反応が起き易く、また反応が暴走し易い等、その制御が困難であるという問題があった。また、大過剰のフェノールを用いた高温下における反応は、反応溶媒が不要、反応時間が短い、低コストといった特徴を有するものの、副反応が起き易く、高収率は見込めず、しかも、副反応によって得られる生成物は多種にわたり、その除去は非常に困難であるといった問題があった。 また、特許文献2に記載の方法のように、硫酸とリン酸の混合酸触媒存在下に縮合させることにより、副反応が押えられ、テトラキス(ヒドロキシフェニル )アルカンが選択的に効率良く生成することができるが、その収率は40〜70%程度であり、反応も数時間〜数十時間という長時間を要していた。 また、特許文献3に記載の方法のように、亜鉛を触媒としたカップリング反応により、フェニル基にエステル基が結合したテトラキスフェニル骨格を有する化合物を製造してきたが、この方法も、24時間程度還流を行って反応させるものであり、反応時間が長く、また、その収率も低かった。Monatshefte fur ChemIe.,82,652(1951).特開昭57−65716号公報特開平7−076538号公報WO00/20372 本発明の課題は、短時間の反応で、極めて高収率に、1,2−フェニルエタン系化合物を製造することができる方法を提供することにある。 本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意研究した結果、遷移金属錯体を触媒として用いて原子移動ラジカルカップリング反応を行うことにより、亜鉛を用いたカップリング法や、その他の従来の合成法に比較して、格段に反応時間が短く、しかも、高収率で1,2−フェニルエタン系化合物を製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、 [1]遷移金属錯体の存在下、式(I)で表される化合物(Raは、水素原子、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Rbは、水素原子又は置換基を表し、nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき、Rbは同一であっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよく、Xは、ハロゲン原子を表す。)をカップリング反応させて、式(II)で表される化合物を製造する1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法であって、 前記遷移金属錯体が、金属化合物及びその配位子となる化合物を、前記カップリング反応の系内に添加して、この系内で形成させたものであり、前記金属が、周期律表の第7〜11族の元素であることを特徴とする1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法や、 [2]Raが、置換又は無置換のフェニル基であることを特徴とする上記[1]に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法や、 [3] Raで表されるフェニル基の置換基、又はRbで表される置換基が、COOR1、SO2R2、OR3、SR4又はN(R5)(R6)(R1〜R6は、水素原子又は有機基を表す。)であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法に関する。 また本発明は、 [4] 式(I)で表される化合物が、式(I−1)で表される化合物であり、式(II)で表される化合物が、式(II−1)で表される化合物であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法や、 [5] 式(I−1)及び式(II−1)におけるRbが、OR3又はCOOR1であることを特徴とする上記[4]に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法や、 [6]遷移金属錯体が、銅錯体又は鉄錯体であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法に関する。 本発明の製造方法によれば、極めて短時間に高収率で1,2−フェニルエタン系化合物を製造することができる。 本発明の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法としては、遷移金属錯体の存在下、式(I)で表される化合物をカップリング反応させて、式(II)で表される化合物を製造する方法であれば特に制限されるものではなく、本発明によれば、極めて短時間に式(II)で表される化合物を収率よく得ることができる。式(I)で表される化合物は、1種又は2種以上用いることができ、本発明におけるカップリング反応は、ホモカップリングでもクロスカップリングでもよい。 式(I)及び式(II)中、Raは、水素原子又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、反応性の点から、置換又は無置換のフェニル基であることが好ましい。フェニル基の置換基が2以上のとき、かかる置換基は、同一であっても異なっていてもよく、互いに連結して、飽和環、芳香環、ヘテロ環を形成していてもよい。Rbは、水素原子又は置換基を表す。nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき、Rbは同一であっても異なっていてもよく、互いに連結して、飽和環、芳香環、ヘテロ環を形成していてもよい。また、Xは、ハロゲン原子を表し、例えば、塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子を挙げることができ、反応性の点から、臭素原子であることが好ましい。 Raで表されるフェニル基の置換基、又はRbで表される置換基としては、例えば、COOR1、SO2R2、OR3、SR4又はN(R5)(R6)を挙げることができ、COOR1が好ましい。R1〜R6は、水素原子又は有機基を表し、有機基としては、例えば、アルキル基、シリル基、アシル基、アリール基、ホスホリル基、スルホニル基、アルキルホスホリル基、アルキルスルホニル基等を挙げることができる。具体的に、置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基等のシリルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基等を挙げることができる。 特にR3は、例えば、メチル基、メトキシメチル基、2―メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基、テトラヒドロピラニル基、フェナシル(phenacyl)基、シクロプロピルメチル基、アリル(allyl)基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、t-ブチル基、ベンジル基、オルト-ニトロベンジル基、9―アンスリルメチル(anthrymethyl)基、4―ピコリル(picolyl)基、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、バレリル(valeryl)基、2,2,2−トリクロロエチルカルボニル基、ビニルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、アリールカルバモイル(aryl carbamoyl)、メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等をあげることができる。 好ましい式(I)で表される化合物としては、具体的に、式(I−1)で表される化合物を挙げることができる。 この式(I−1)で表される化合物のカップリングを行うことにより、式(II−1)で表される化合物を得ることができる。 本発明における遷移金属錯体としては、リビングラジカル重合法において用いることができる触媒を挙げることができる。本発明の製造方法においては、遷移金属錯体そのものを系内に添加してもよいし、金属化合物及びその配位子となる化合物を系内に添加して系内で遷移金属錯体を形成してもよい。 遷移金属錯体を構成する中心金属としては、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅等の周期律表第7〜11族元素(日本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993年)記載の周期律表による)を挙げることができる。これらの中でも、銅、鉄が好ましく、銅が特に好ましい。 具体的に、銅錯体としては、NH3、NO、NO2、NO3、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリブチルアミン、1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン、ピリジン、フェナントロリン、ジフェナントロリンや置換フェナントロリン、2,2’:6’,2”−ターピリジン、ピリジンイミン、架橋脂肪族ジアミン、4−4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン、チオシアネート、O,S,Se,Teの配位したビピリジン、イミノジピリジン、アルキルイミノピリジン、アルキルビピリジニルアミン、アルキル置換トリピリジン、ジ(アルキルアミノ)アルキルピリジン、エチレンジアミンジピリジン、トリ(ピリジニルメチル)アミン、N,N,N’,N’N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等の窒素含有化合物及び/又はハロゲン原子を配位子とした銅錯体を挙げることができ、具体的には、アセチル[4−4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン]銅、六フッ化ホスフィン−ジ[4−4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン]銅、チオシアネート銅、[N,N,N’,N’N”−ペンタメチルジエチレントリアミン]臭化銅等を挙げることができる。 鉄錯体としては、ジ(トリフェニルホスフィン)二塩化鉄、ジ(トリブチルアミノ)二塩化鉄、トリフェニルホスフィン三塩化鉄、(1−ブロモ)エチルベンゼン−トリエトキシホスフィン−二臭化鉄、(1−ブロモ)エチルベンゼン−トリフェニルホスフィン−二臭化鉄、(1−ブロモ)エチルベンゼン−[4−4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン]二臭化鉄、(1−ブロモ)エチルベンゼン−トリ−n−ブチルアミノ−二臭化鉄、(1−ブロモ)エチルベンゼン−トリ−n−ブチルホスフィン−二臭化鉄、トリ−n−ブチルホスフィン−二臭化鉄、[4−4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン]二臭化鉄、テトラアルキルアンモニウム三ハロゲン化鉄(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化鉄(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニル臭化鉄(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニル塩化鉄(II)、ジカルボニルインデニルヨウ化鉄(II)、ジカルボニルインデニル臭化鉄(II)、ジカルボニルインデニル塩化鉄(II)、ジカルボニルフルオレニルヨウ化鉄(II)、ジカルボニルフルオレニル臭化鉄(II)、ジカルボニルフルオレニル塩化鉄(II)、1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン塩化鉄、1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン臭化鉄等を挙げることができる。 さらに、他の遷移金属錯体としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(トリアルキルホスフィン)p−シメンルテニウム、ジクロロ−ジ(トリシメンホスフィン)スチリルルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドロテトラ(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニル臭化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニル塩化ルテニウム(II)、ジカルボニルインデニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルインデニル臭化ルテニウム(II)、ジカルボニルインデニル塩化ルテニウム(II)、ジカルボニルフルオレニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルフルオレニル臭化ルテニウム(II)、ジカルボニルフルオレニル塩化ルテニウム(II)、ジクロロ−ジ−2、6−ビス[(ジメチルアミノ)−メチル](μ−N2)ピリジンルテニウム(II)等のルテニウム錯体; カルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ニッケル(II)、カルボニルシクロペンタジエニル臭化ニッケル(II)、カルボニルシクロペンタジエニル塩化ニッケル(II)、カルボニルインデニルヨウ化ニッケル(II)、カルボニルインデニル臭化ニッケル(II)、カルボニルインデニル塩化ニッケル(II)、カルボニルフルオレニルヨウ化ニッケル(II)、カルボニルフルオレニルヨウ化ニッケル(II)、カルボニルフルオレニル臭化ニッケル(II)、カルボニルフルオレニル塩化ニッケル(II)、o,o’−ジ(ジメチルアミノメチル)フェニルハロゲン化ニッケル、ジ−トリフェニルホスフィン二臭化ニッケル、ジ(トリn−ブチルアミノ)二臭化ニッケル、1,3−ジアミノフェニル臭化ニッケル、ジ(トリn−ブチルホスフィン)二臭化ニッケル、テトラ(トリフェニルホスフィン)ニッケル等のニッケル錯体; トリカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化モリブデン(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニル臭化モリブデン(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニル塩化モリブデン(II)、ジN−アリール−ジ(2−ジメチルアミノメチルフェニル)リチウムモリブデン、ジNアリール−(2−ジメチルアミノメチルフェニル)−メチル−リチウムモリブデン、ジNアリール−(2−ジメチルアミノメチルフェニル)−トリメチルシリルメチル−リチウムモリブデン、ジN−アリール−(2−ジメチルアミノメチルフェニル)−p−トリル−リチウムモリブデン等のモリブデン錯体;トリカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化タングステン(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニル臭化タングステン(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニル塩化タングステン(II)等のタングステン錯体;ジカルボニルシクロペンタジエニルコバルト(I)等のコバルト錯体;トリカルボニルシクロペンタジエニルマンガン(I)、トリカルボニル(メチルシクロペンタジエニル)マンガン(I)等のマンガン錯体;トリカルボニルシクロペンタジエニルレニウム(I)、ジオキソビス(トリフェニルホスフィン)ヨウ化レニウム等のレニウム錯体、トリ(トリフェニルホスフィン)塩化ロジウム等のロジウム錯体;トリフェニルホスフィンジアセチルパラジウム等のパラジウム錯体;等を挙げることができる。これらの遷移金属錯体は、一種又は二種以上組み合わせて使用できる。 遷移金属化合物の添加量としては、その種類にもよるが、一般的に、原料となる式(I)で表される化合物に対して、0.1〜5当量であることが好ましく、0.3〜1当量であることがより好ましい。 また、本発明の製造方法においては、触媒の活性の向上を図ることができる点から、塩基の存在下でカップリング反応を行うことが好ましい。塩基としては、有機塩基であっても無機塩基であってもよく、有機塩基としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類を挙げることができ、無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物又は炭酸塩、アルカリ土類金属の酸化物又は炭酸塩等を挙げることができる。 反応に用いる有機溶媒としては特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 反応温度は、通常、室温〜150℃であり、60〜120℃であることが好ましい。反応は、通常、常圧又は加圧下において行われる。また、反応は、極めて短時間で進み、3〜90分、好ましくは5〜30分程度で完了する。このように、本発明の製造方法によれば、極めて効率的に目的とする化合物を製造することができる。反応の停止は、反応系の温度を下げることにより行うことができる。反応終了後は、再結晶、カラム精製、減圧精製、濾過等の通常の分離精製方法により、目的とする化合物を単離することができる。 また、本発明の製造方法においては、製造された式(II)で表される化合物が、ベンゼン環に、上記のようなCOOR1、SO2R2、OR3、SR4又はN(R5)(R6)といった置換基を有する場合には、酸処理を施して活性水素を生成させ、置換基を、それぞれCOOH,SO2H,OH,SH,NH2に変換することができる。又、塩基存在下に加水分解してから、OH、SH基に変換することができる。酸処理に使用する酸としては、塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、メタンスルホン酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸を挙げることができる。酸処理の処理温度は、特に制限されず、例えば、−10℃〜150℃の範囲で行うことができる。塩基としては、有機塩基であっても無機塩基であってもよく、有機塩基としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類を挙げることができ、無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物又は炭酸塩、アルカリ土類金属の酸化物又は炭酸塩等を挙げることができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。 50mlフラスコに、PhCOOEt2−Br 0.39g(1mmol)、CuBr 0.14g(1mmol)、Cu(0) 0.25g(4mmol)、トルエン 20mlを加え、脱気した。更に、N,N,N’,N’N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.35g(2mmol)を加え、80℃で30分間攪拌した。反応液を冷却後、不溶物をろ過した。水層に着色がなくなるまでろ液を水洗し、MgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、減圧下で乾燥を行い、白色結晶0.30g(単離収率97%)を得た。 30mlフラスコに、メチル4−(ブロモメチル)ベンゾエート 1.15g(5mmol)、CuBr 0.72g(5mmol)、Cu(0) 1.27g(20mmol)、ビピリジン 1.56g(10mmol)、トルエン 20mlを加えて脱気後、100℃で1時間攪拌した。反応液を冷却後、クロロホルム 10mlを加え、不溶物をろ過した。ろ液を水洗後、MgSO4で乾燥した。溶媒を留去後、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶を行った。得られた結晶を減圧下で乾燥を行い、微黄色結晶0.32g(単離収率43%)を得た。 200mlフラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン 9.6g(48mmol)、トリエチルアミン 11.8g(117mmol)、テトラヒドロフラン 200mlを仕込み、0℃に冷却した。その中に塩化ベンゾイル 14.9g(106mmol)を加え、室温下で1時間撹拌した。トリエチルアミン塩酸塩をろ過により除去後、ろ液を濃縮した。塩化メチレンで溶解後、三回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した。反応液を濃縮後、ヘキサン/酢酸エチルで再結晶することにより、微黄色針状結晶Aを16.8g(単離収率86%)得た。 200mlフラスコに、先に合成したA 14.4g(35mmol)、N−ブロモサクシンイミド 6.5g(37mmol)、ベンゼン 70mlを仕込み、1時間還流した。冷却後、反応液を濃縮した。塩化メチレンで溶解後、三回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した。反応液を濃縮後、酢酸エチルで再結晶することにより、白色綿状結晶Bを11.7g(単離収率68%)得た。 100mlフラスコに、先に合成したB 4.9g(10mmol)、CuBr 0.7g(5mmol)、Cu 1.3g(20mmol)、トルエン 50mlを仕込み、脱気した。80℃に加温後、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン 1.8g(10mmol)を加え、80℃で30分間撹拌した。反応液を冷却後ろ過し、不溶物を三回水洗した。不溶物にクロロホルム 100mlを加え、10分還流後、熱いうちにろ過を行った。ろ液を濃縮後、酢酸エチルで洗浄することにより、白色綿状結晶Cを3.1g(単離収率76%)得た。 次に、100mlフラスコに、先に合成したC 2.6g(3.2mmol)、トルエン 50mlを仕込み、水酸化カリウム、水の存在下にケン化した加水分解生成物を精製して1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンDの白色粉末1.1g(2.8mmol)を得た。 遷移金属錯体の存在下、式(I)で表される化合物(Raは、水素原子、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Rbは、水素原子又は置換基を表し、nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき、Rbは同一であっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよく、Xは、ハロゲン原子を表す。)をカップリング反応させて、式(II)で表される化合物を製造する1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法であって、 前記遷移金属錯体が、金属化合物及びその配位子となる化合物を、前記カップリング反応の系内に添加して、この系内で形成させたものであり、前記金属が、周期律表の第7〜11族の元素であることを特徴とする1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法。 Raが、置換又は無置換のフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法。 Raで表されるフェニル基の置換基、又はRbで表される置換基が、COOR1、SO2R2、OR3、SR4又はN(R5)(R6)(R1〜R6は、水素原子又は有機基を表す。)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法。 式(I)で表される化合物が、式(I−1)で表される化合物であり、式(II)で表される化合物が、式(II−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法。 式(I−1)及び式(II−1)におけるRbが、OR3又はCOOR1であることを特徴とする請求項4に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法。 遷移金属錯体が、銅錯体又は鉄錯体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の1,2−フェニルエタン系化合物の製造方法。