生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_外用の医薬組成物
出願番号:2008503738
年次:2013
IPC分類:A61K 31/4178,A61K 47/12,A61K 47/10,A61P 17/00,A61P 31/10


特許情報キャッシュ

三木 豊彦 野沢 暁 久保田 信雄 冨山 進 小林 浩一 JP 5184341 特許公報(B2) 20130125 2008503738 20061002 外用の医薬組成物 日本農薬株式会社 000232623 株式会社ポーラファルマ 507029007 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 下田 俊明 100151596 三木 豊彦 野沢 暁 久保田 信雄 冨山 進 小林 浩一 JP 2006062078 20060308 JP 2006215904 20060808 20130417 A61K 31/4178 20060101AFI20130328BHJP A61K 47/12 20060101ALI20130328BHJP A61K 47/10 20060101ALI20130328BHJP A61P 17/00 20060101ALI20130328BHJP A61P 31/10 20060101ALI20130328BHJP JPA61K31/4178A61K47/12A61K47/10A61P17/00 101A61P31/10 A61K 31/4178 A61K 47/10 A61K 47/12 A61P 17/00 A61P 31/10 CAplus/REGISTRY(STN) 国際公開第97/002821(WO,A1) 特開2002−114680(JP,A) 特開昭62−093227(JP,A) 特開平02−264723(JP,A) 特開2002−363070(JP,A) 国際公開第04/021968(WO,A1) 国際公開第03/020248(WO,A1) 特開2001−064206(JP,A) 国際公開第02/083084(WO,A1) 国際公開第00/001384(WO,A1) 特開昭61−118315(JP,A) 再公表特許第97/007794(JP,A1) 特表平10−508299(JP,A) 国際公開第07/102243(WO,A1) 2 JP2006319705 20061002 WO2007102241 20070913 18 20090827 鈴木 理文 本発明は、外用の医薬組成物に関し、具体的には、爪白癬若しくは角質増殖型の白癬症の治療又は予防に用いられる外用の医薬組成物に関する。 日本列島は亜熱帯から温帯にかけて存在し、その気候は湿度が高く温暖であり、カビなどの真菌にとっては繁殖しやすい気候であると言える。これに加えて、服装の西洋化により、足部には靴の着用の習慣が根付き、これにより、足部は真菌のより繁殖しやすい環境になっていると言え、真菌性の皮膚疾患が重大な社会問題となっている。中でも爪白癬は完治率が低く、再発性、再感染性が高いため、その効果的な治療法が求められていた。 従来、このような疾患に対してトルナフタート製剤を中心に使用する治療が行なわれてきた。また、近年ではビホナゾール、イトラコナゾールと言ったイミダゾール系抗真菌剤の製剤が主流となっている。 上記イミダゾール系抗真菌剤としては、下記一般式(1)で表されるもの、具体的には、下記構造式(1)に示したルリコナゾール、下記構造式(2)に示したラノコナゾールが発売されている。上記ルリコナゾールは、現在、最も新しいイミダゾール系抗真菌剤であり、「ルリコン」(登録商標)という名称の市販品も存する(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。 上記ルリコナゾールは光学活性を有するイミダゾール系抗真菌剤で、広範囲な抗菌スペクトルをもち、特に皮膚糸状菌に対して顕著な抗菌活性を示す。さらに、皮膚角質貯留性が非常に高いことも特徴の1つであり、爪白癬症の処置への応用が期待される化合物といえる。しかしながら、爪においては、物質の透過性を抑制する作用が著しく、真菌存在部位まで薬剤が到達しにくいため、上記ルリコナゾールのみでは爪白癬症への効果が十分発揮できるとはいえない。 一方、上記ルリコナゾール等の抗真菌活性を有する物質の経皮吸収の促進手段としては、ベンジルアルコールを透過促進剤として使用することが知られている。 また、上記ベンジルアルコール以外にも、抗真菌剤の分野においては、薬剤の爪内への移行を促進する手段として、例えば、尿素、サリチル酸といった爪を軟化させる物質を配合する方法(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)、脂肪酸エステルを利用する方法(例えば、特許文献5、特許文献6を参照)、高級アルコール、有機塩基、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の吸収促進剤を利用する方法(特許文献7、特許文献8を参照)等が知られていた。しかしながら、何れの場合も、その効果は十分とはいえなかった。 さらに、下記一般式1で表される化合物を利用して爪白癬を処置する試みとしては、被膜形成剤とポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンコポリマーを組み合わせてリザーバー層を形成させる方法(例えば、特許文献9を参照)等が開発され、その効果は顕著に改善したが、爪白癬症がある程度回復し、爪の構造が堅固になると、その効果が減じる欠点が存した。(但し、式中Xは水素原子または塩素原子を表す。)特開昭62−93227号公報特開平10−226686号公報特開平10−152433号公報特開平10−226639号公報特開平7−206711号公報WO96/11710特開平6−211651号公報特表2004−529923号公報WO03/105841 上述のように、ルリコナゾール等の抗真菌活性を有する物質は経皮吸収が困難であること、及び該経皮吸収の促進手段としては、ベンジルアルコール等を透過促進剤として使用することが知られている。しかしながら、上記ルリコナゾールにおいては、ベンジルアルコール等の透過促進効果が如実には発現しないことを本願発明者らは見いだした。 本発明は、上記知見を基に為されたものであり、ルリコナゾール及び/又はその塩を含有する外用の医薬組成物において、該組成物の透過吸収性を阻害する要因を解明し、該阻害要因を解消する手段を開発し、透過吸収性に優れる外用の医薬組成物を提供することを課題とする。 この様な状況に鑑みて、本発明者らは、ルリコナゾール及び/又はその塩の生体への透過吸収性を阻害する要因を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、ルリコナゾール及び/又はその塩を有効成分とする医薬製剤を生体に塗布した際に、瞬時にルリコナゾールの微細な結晶が析出し、これが透過吸収性を阻害していることを見いだした。更に、検討を重ねた結果、かかる結晶析出は、乳酸及び/又はその塩を添加することにより抑制できることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。(1)1)下記構造式(1)で表されるルリコナゾール及び/またはその塩と、2)乳酸及び/またはその塩と、3)エタノール50〜90質量%とを含有することを特徴とする、外用の医薬組成物。(2) 爪白癬の治療又は予防用のものであることを特徴とする、(1)に記載の外用の医薬組成物。 本発明によれば、一般式1に表される化合物及び/又はその塩を含有する外用剤において、その吸収透過性促進を阻害する要因を抑制する手段を開発し、透過吸収性に優れる抗真菌医薬組成物を提供することができる。実施例4のローション4の顕微鏡写真を示す図である。実施例4の比較ローション4の顕微鏡写真を示す図である。実施例4の比較ローション5の顕微鏡写真を示す図である。実施例5のローション5の顕微鏡写真を示す図である。実施例5の比較ローション6の顕微鏡写真を示す図である。実施例5の比較ローション7の顕微鏡写真を示す図である。(1)本発明の外用の医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物ともいう)の必須成分であるルリコナゾール及び/又はその塩 本発明の外用の医薬組成物は、ルリコナゾール及び/又はその塩(以下、ルリコナゾール等ともいう)を必須成分として含有する。上記ルリコナゾールは、上記構造式(1)で表される。上記ルリコナゾールは、化学名(R)−(−)−(E)−[4−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン]−1−イミダゾリルアセトニトリルで表される既知の化合物であり、その製法と抗真菌特性は既に知られている。特開昭62−93227号(前記特許文献1)を参酌することができる。 また、上記「その塩」としては、生理的に許容されるものであれば特段の限定はされないが、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酢酸塩等の有機酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩等の含硫酸塩が好適に例示できる。安全性、溶解性の面からより好ましくは、塩酸塩である。 本発明の外用の医薬組成物において、ルリコナゾール等の好ましい含有量は、医薬組成物全量に対して総量で、0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜15質量%である。該ルリコナゾール等の含有量は、溶解性とその製剤特性により決定することが出来る。(2)本発明の外用の医薬組成物に用いられるα−ヒドロキシカルボン酸及び/またはその塩 本発明の外用の医薬組成物は、α−ヒドロキシカルボン酸及び/またはその塩(以下、α−ヒドロキシカルボン酸等ともいう)を必須成分として含有する。前記α−ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、炭素数2〜5のα−ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。なかでも、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸等が好適に例示でき、これらのうちでは乳酸が特に好ましい。又、これらの塩としては、医薬製剤に使用されるものであって、生理的に許容されるものであれば特段の限定なく適用することができ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩やトリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、アルギニン塩やリシン塩などの塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。本発明の外用の医薬組成物においては、かかる成分は唯一種を含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。 本発明の外用の医薬組成物において、かかる成分は、塗布時にルリコナゾール等が塗布面に結晶を形成して、析出するのを抑制する作用を有する。この様な結晶析出抑制作用により、ルリコナゾール等が生体内に阻害されずに取り込まれるようになる。これにより、上記ベンジルアルコール等の透過促進物質の働きを遺憾なく発揮させることができる。 この様な作用は、α−ヒドロキシカルボン酸以外の酸では十分に得ることができない。この様な作用を発現するためには、本発明の外用の医薬組成物におけるα−ヒドロキシカルボン酸等の含有量は、総量で、医薬組成物全量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。少なすぎると前記作用を発現しない場合が存し、多すぎても効果が頭打ちになり、他の成分の配合量の制限となる場合などが存するためである。 また、上記α−ヒドロキシカルボン酸等による、ルリコナゾール等の結晶析出抑制作用の発揮には、ルリコナゾール等に対するα−ヒドロキシカルボン酸等の質量比(α−ヒドロキシカルボン酸等/ルリコナゾール等)は0.1〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましく、0.8〜2が特に好ましい。(3)本発明の外用の医薬組成物に用いられるベンジルアルコール 本発明の外用の医薬組成物は、ベンジルアルコールを含有することが好ましい。ベンジルアルコールはすでに医薬組成物における添加物として使用されているものであり、市販品も存し、その入手には困難性は存しない。ベンジルアルコールは、前記α−ヒドロキシカルボン酸等の存在下、ルリコナゾール等の結晶が塗布時に生体上に析出し、生体組織内への浸透、取り分け、爪内への浸透を阻害するのを抑制する作用を発揮する。従って、ベンジルアルコールとα−ヒドロキシカルボン酸とを組み合わせることにより、爪床部への薬剤配向が相乗的に向上する。この様な作用を発現するためには、ベンジルアルコールは、医薬組成物全量に対して、0.5〜15質量%含有することが好ましく、1〜10質量%含有することが特に好ましい。即ち、ベンジルアルコールが上記含有量の範囲外においては、塗布時に、ルリコナゾール等の結晶を析出する場合が存する。この様に塗布時の結晶析出が抑制されることにより、ベンジルアルコールは本来の組織内浸透促進効果を遺憾なく発揮する。(4)本発明の外用の医薬組成物に用いられる二塩基酸のジエステル 本発明の外用の医薬組成物は、二塩基酸のジエステル、特に二塩基酸と炭素数1〜4のアルコールとのジエステルを含有することが好ましい。上記二塩基酸としては、炭素数1〜10の二塩基酸が挙げられ、アジピン酸、セバシン酸、蓚酸、炭酸等が好適に例示できる。一方、炭素数1〜4のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等が好適に例示できる。又、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールも上記炭素数1〜4のアルコールとして使用することができる。 上記二塩基酸のジエステルとして、具体的には、炭酸プロピレン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなどが好適に例示でき、アジピン酸ジイソプロピルとセバシン酸ジエチルが特に好ましい。これらの成分は、本発明の外用の医薬組成物において、唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。かかる成分は、上記α−ヒドロキシカルボン酸等の存在下、前記ベンジルアルコール、後記N−メチル−2−ピロリドンなどとともに、ルリコナゾール等の組織内への浸透、取り分け、爪内への浸透を促進する作用を発揮する。この様な作用を発現するために、本発明の外用の医薬組成物において、かかる成分の含有量は、総量で、医薬組成物全量に対して、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。(5)本発明の外用の医薬組成物に用いられるN−メチル−2−ピロリドン 本発明の外用の医薬組成物は、N−メチル−2−ピロリドンを含有することが好ましい。 N−メチル−2−ピロリドンはすでに医薬組成物における添加物として使用されているものであり、市販品も存し、その入手には困難性は存しない。N−メチル−2−ピロリドンは、前記α−ヒドロキシカルボン酸等の存在下、前記ベンジルアルコール、二塩基酸のジエステルなどとともに、ルリコナゾール等の組織内への浸透、取り分け、爪内への浸透を促進する作用を発揮する。この様な作用を発現するために、本発明の外用の医薬組成物におけるかかる成分の含有量は、医薬組成物全量に対して、1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることが特に好ましい。N−メチル−2−ピロリドンは、ルリコナゾールが保存中に異性体へ変化することを防ぐ作用も有する。(6)本発明の外用の医薬組成物 本発明の外用の医薬組成物において、ベンジルアルコール、二塩基酸のジエステル及びN−メチル−2−ピロリドンは、それぞれがルリコナゾール等及びα−ヒドロキシ酸等を含む外用の医薬組成物に対して相乗効果を供するため、これらの何れか1種を組み合わせて用いることも出来る。しかしながら、それぞれが異なったメカニズムで、ルリコナゾール等及びα−ヒドロキシ酸等を含む外用の医薬組成物の爪内移行を促進するため、少なくともベンジルアルコールを含有する形態で用いることが好ましく、ベンジルアルコールを含有する形態で2種以上を組み合わせて用いることがさらに好ましく、ベンジルアルコール、二塩基酸のジエステル及びN−メチル−2−ピロリドンを含有する形態で用いることが特に好ましい。ベンジルアルコールは、ルリコナゾール等及びα−ヒドロキシ酸等を含む外用の医薬組成物に対して顕著な相乗効果(透過促進効果)を提供するためである。また、N−メチル−2−ピロリドンは、透過促進効果に加えてルリコナゾール等が保存中に異性体へ変化することを防ぐ作用も有し、上記医薬組成物の経時安定性を向上させることが可能なためである。 本発明の外用の医薬組成物は、上記成分以外に、通常医薬組成物で使用される任意の成分を本発明の効果を損ねない範囲において含有することが出来る。 かかる成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油、ゲイロウ、トリアセチン、クエン酸トリエチル、酢酸ブチル等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール類、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、水、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ポリビニルピロリドン、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が好ましく例示できる。これらの任意成分と、前記の成分とを常法に従って処理することにより、本発明の外用の医薬組成物を製造することが出来る。本発明の外用の医薬組成物としては、外用の医薬組成物で使用されている剤形であれば特段の限定無く適用することが出来、例えば、ローション剤、乳液剤、ゲル剤、クリーム剤、エアゾル剤、ネイルエナメル剤、ハイドゲル貼付剤などが好適に例示できる。特に好ましいものはローション剤であり、ルリコナゾール等の溶状を安定させるために、50〜90質量%のエタノールを含有せしめることが特に好ましい。 本発明の外用の医薬組成物は、ルリコナゾール等の特性を利用し、真菌による疾病の治療乃至は悪化の予防に用いることが好ましい。真菌による疾病としては、水虫のような足部白癬症、カンジダ、デンプウのような体部白癬症、爪白癬のようなハードケラチン部分の白癬症が例示でき、その効果が顕著なことから、爪白癬のようなハードケラチン部分の処置に用いることが特に好ましい。本発明の外用の医薬組成物の効果は爪に特に好適に発現されるが、通常の皮膚真菌症にも及ぶので、本発明の構成を充足する皮膚真菌症に対する外用の医薬組成物も本発明の技術的範囲に属する。この様な皮膚真菌症としては、足白癬症や足白癬症の内、かかとなどに現れる角質増殖型の白癬症などが例示できる。上記皮膚真菌症においては、通常の薬剤が効果を奏しにくい角質増殖型の白癬症への適用が本発明の効果が著しく現れるので好ましい。 その使用態様は、一日に一回乃至は数回、疾病の箇所に適量を塗布することが例示でき、かかる処置は連日行われることが好ましい。特に、爪白癬に対しては、通常の製剤では為し得ない量の有効成分であるルリコナゾール等を、爪内に移行せしめることが出来る。これにより、長期間抗真菌剤を飲用することなく、外用のみによって爪白癬を治療することが出来る。又、再発や再感染が爪白癬では大きな問題となっているが、本発明の外用の医薬組成物を、症状鎮静後1〜2週間投与することにより、この様な再発や再感染を防ぐことができる。この様な形態で本発明の外用の医薬組成物は予防効果を奏する。 以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。<実施例1〜3及び比較例1〜3> 以下に示す表1の処方に従い、本発明の医薬組成物を含むローション1〜3、及び比較ローション1〜3を作製した。即ち、処方成分を室温で攪拌混合し、可溶化させて、各ローションを得た。各ローションの塗布後の製剤安定化作用を調べた。即ち、スライドグラス上にローション1〜3及び比較ローション1〜3を1滴滴下し、5分間風乾し、結晶の析出度合いを顕微鏡で観察し、判定した。<実施例4、比較例4及び比較例5> 以下に示す表2の処方に従い、本発明の医薬組成物を含むローション4を作製した。即ち、処方成分を室温で攪拌混合し、可溶化させて、ローション4を得た。 実施例4の処方において、乳酸をエタノールに置換した比較ローション4(比較例4)、リン酸に置換した比較ローション5(比較例5)を作製し、ローション4とともに、その塗布後の製剤安定化作用を調べた。即ち、ローション4、比較ローション4及び比較ローション5を1滴スライドグラス上に滴下し、5分間風乾し、顕微鏡で観察し、結晶の析出度合いを判定した。結晶の析出度合いは顕微鏡の1視野の面積に対する析出した結晶の面積の比率として算出した(3視野平均)。結果はローション4が0%、比較ローション4が11%、比較ローション5が9%であった。図1〜3にローション4、比較ローション4及び比較ローション5の顕微鏡写真をそれぞれ示す。これより、本発明の医薬組成物を含む、ローション4では、塗布面における結晶の析出が抑制されていることが判る。 さらに、上記ローション4及び比較ローション4について、爪透過薬剤量を計測した。即ち、ヒト爪の切片の表裏をO−リング(内径2mm)付きのポリテトラフルオロエチレン板で挟み、これをフランツセル(オープントップセル、セントラル理研(株))に固定した。爪の裏側セルに寒天を注入し、固化したのちに、爪の表側セルのO−リング内に試料0.5μLを投与した。1日1回、3日間投与し、最終投与より24時間経過した後、O−リング内部の爪を打ち抜き、メタノールを用いて、ルリコナゾールを抽出する。この抽出液を高速液体クロマトグラフ法により、爪中のルリコナゾール量を測定した。結果、ローション4の爪透過薬剤量を1とした場合、比較ローション4の爪透過薬剤量が0.60(比較ローション4の爪透過薬剤量を1とした場合、ローション4の爪透過薬剤量は1.67)で有ることがわかった。<実施例5、比較例6及び比較例7> 下記の表3に従い、実施例4と同様の方法で、ローション5を作製した。実施例5の処方において、乳酸をエタノールに置換した比較ローション6(比較例6)、リン酸に置換した比較ローション7(比較例7)を作製し、ローション5とともに、実施例4と同様の方法で結晶の面積の比率を算出したところ、ローション5は0%、比較ローション6は4%、比較ローション7は7%であった。図4〜6にローション5、比較ローション6及び比較ローション7の顕微鏡写真をそれぞれ示す。ここに於いても本発明の効果が認められた。<実施例6、実施例7及び比較例8> 以下に示す表4に従い、実施例4と同様の方法で、ローション6(実施例6)を作製した。実施例6の処方において、ローション6のベンジルアルコールをエタノールに置換したローション7(実施例7)及びローション6のベンジルアルコール及び乳酸をエタノールに置換した比較ローション8(比較例8)を作製した。これらについて、実施例4と同様の方法で爪透過薬剤量を計測した。結果は、ローション7の爪透過薬剤量を1とした場合、ローション6の爪透過薬剤量が6.30であり(ローション6の爪透過薬剤量が爪1cm3あたり58μg、ローション7の爪透過薬剤量が9.2μg)、比較ローション8の爪透過薬剤量が0.61であった。即ち、乳酸単独、並びに、乳酸及びベンジルアルコールの添加によって、ルリコナゾールの爪へ透過性がそれぞれ1.65倍、10.40倍高まったことがわかる。上記実施例4の結果も併せて考慮すれば、本発明の医薬組成物においてはベンジルアルコールのような透過促進剤が本来の透過促進効果を発揮していることがわかる。従って、本発明の医薬組成物においては、このような成分を含有することが好ましいこともわかる。尚、以後、透過吸収性の指標として、ローション7等の対照サンプルの爪透過薬剤量を1としたときの各サンプルの爪透過薬剤量を「透過吸収比」と称して用いる。<実施例8〜13> 以下に示す表5に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション8〜13を作製した。又、これらについて、実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション8〜13の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めた。この結果を表6に示す。本発明の医薬組成物においては、アジピン酸ジイソプロピルのような二塩基酸のジエステルを含有することが好ましいことがわかる。これらはいずれも、皮膚外用剤などで経皮吸収促進成分として知られている成分であるが、ルリコナゾールの爪透過に関しては、特に二塩基酸のジエステルが著効を示すことが明らかになった。<実施例14及び15> 以下に示す表7に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション14を作製した。同時に、ローション14のベンジルアルコールをエタノールに置換したローション15も作製し、実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション14及び15の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めた。ローション14の透過吸収比は14.88であり、ローション15の透過吸収比は4.19であった。この結果より、本発明の医薬組成物においては、炭酸プロピレンによりルリコナゾールの爪透過性が向上していることがわかる。更に、ベンジルアルコールを加えることにより、3.55倍透過性が高まることもわかる。<実施例16及び17> 下記表8に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション16を作製した。同時に、ローション16のN−メチル−4−ピロリドンをエタノールに置換したローション17も作製し、実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション17の爪透過薬剤量を1としたときのローション16の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めた。ローション16の透過吸収比は4.12であり、ベンジルアルコール、アジピン酸ジイソプロピル及び乳酸の組合せで薬剤の爪透過が促進されているローション17よりも、更に薬剤透過が亢進しており、N−メチル−2−ピロリドンの顕著な添加効果が認められた。即ち、本発明の医薬組成物に於いては、乳酸、二塩基酸のジエステル、ベンジルアルコール及びN−メチル−2−ピロリドンを含む形態が特に好ましいことが判る。<実施例18> 下記表9に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション18を作製した。実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション18の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めたところ、3.03であった。本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。ベンジルアルコールが存しない状況でもN−メチル−2−ピロリドンとアジピン酸ジイソプロピルの組み合わせにより爪透過性が向上していることがわかる。<実施例19> 下記表10に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション19を作製した。実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション19の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めたところ、2.49であった。本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。N−メチル−2−ピロリドンが存しない状況でもベンジルアルコールとアジピン酸ジイソプロピルの組み合わせにより爪透過性が向上していることがわかる。<実施例20> 下記表11に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション20を作製した。実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション20の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めたところ、2.49であった。本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。この結果は、アジピン酸ジイソプロピルをセバシン酸ジエチルに置換可能であることを示し、アジピン酸ジイソプロピルの結果が二塩基酸ジエステル全般に適用可能であることを示す。<実施例21> 下記表12に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション21を作製した。実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション21の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めたところ、2.34であった。本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。本発明の医薬組成物においては、溶媒による透過促進効果が明瞭に現れていることがわかる。<実施例22> 下記表13に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション22を作製した。実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション22の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めたところ、2.05であった。本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。本発明の医薬組成物においては、溶媒による透過促進効果が明瞭に現れていることがわかる。<実施例23> 下記表14に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション23を作製した。実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行い、ローション7の爪透過薬剤量を1としたときのローション23の爪透過薬剤量(透過吸収比)を求めたところ、1.68であった。本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。本発明の医薬組成物においては、溶媒による透過促進効果が明瞭に現れていることがわかる。<実施例24> 下記表15に従い、実施例4と同様の方法で、本発明の医薬組成物を含むローション24を作製した。該ローション24を、実施例4に記載の方法で爪透過薬剤量の計測を行ったところ、260.3μg/cm3であった。該本発明の医薬組成物は優れた透過促進作用を有することが判る。産業上の利用の可能性 本発明により、ルリコナゾール及び/又はその塩の透過吸収性に優れた外用の医薬組成物を提供することが可能となる。 1)下記構造式(1)で表されるルリコナゾール及び/またはその塩と、2)乳酸及び/またはその塩と、3)エタノール50〜90質量%とを含有することを特徴とする、外用の医薬組成物。 爪白癬の治療又は予防用のものであることを特徴とする、請求項1に記載の外用の医薬組成物。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る