生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_シスチン−アミノ酸複合体及びその製造方法
出願番号:2008330677
年次:2015
IPC分類:A61K 31/198,A23L 1/305,A23L 2/52,A61K 8/44,A61P 3/02,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

木藤 良沢 鈴木 潔 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 JP 5668271 特許公報(B2) 20141226 2008330677 20081225 シスチン−アミノ酸複合体及びその製造方法 ユーハ味覚糖株式会社 390020189 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 木藤 良沢 鈴木 潔 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 20150212 A61K 31/198 20060101AFI20150122BHJP A23L 1/305 20060101ALI20150122BHJP A23L 2/52 20060101ALI20150122BHJP A61K 8/44 20060101ALI20150122BHJP A61P 3/02 20060101ALI20150122BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20150122BHJP JPA61K31/198A23L1/305A23L2/00 FA61K8/44A61P3/02A61Q19/00 A61K31/00−33/44 A61K 9/00− 9/72 A61K47/00−47/48 A23L 1/27− 1/308 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特表平01−501706(JP,A) 特表2007−508384(JP,A) 特開2002−047178(JP,A) 国際公開第2007/004613(WO,A1) 特開2005−247738(JP,A) 国際公開第2006/080086(WO,A1) Lilia Milanesi, Christopher A. Hunter, Svetlana E. Sedelnikova, Jonathan P. Waltho,Amplification of Bifunctional Ligands for Calmodulin from a Dynamic Combinatorial Library,Chemistry - A European Journal,2006年 1月23日,Volume 12, Issue 4,Pages 1081-1087 Toyo Kuninori, Junko Nishiyama,Measurement of biological thiols and disulfides by high-performance liquid chromatography and electrochemical detection of silver mercaptide formation,Analytical Biochemistry,1991年 8月15日,Volume 197, Issue 1,Pages 19-24 Hideshi Inoue, Masaaki Hirobe,Interchange reaction of disulfides and denaturation of oxytocin by copper(II)/ascorbic acid/O2 system,Biochemical and Biophysical Research Communications,1987年 5月29日,Volume 145, Issue 1,Pages 596-603 5 2010150192 20100708 12 20111007 常見 優 本発明は、飲食品又は化粧品用の機能性添加剤及びその製造方法に関する。 アミノ酸は、タンパク質を構成しており、栄養素として重要である。近年では、アミノ酸を含有する補助食品が含まれた健康食品や飲料が多く販売されている。 中でも、体内で合成されない9種類の必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つは、枝分かれするような分子構造をしており、BCAA(Branched Chain Amino Acidの略;分岐鎖アミノ酸)とも呼ばれている。ほとんどのアミノ酸が肝臓で代謝されるのに対して、BCAAは筋肉で代謝されエネルギーを産生する唯一のアミノ酸として知られている。BCAAは肉・魚・乳製品・卵等の食品に多く含まれているが、運動前や運動中に効率的に摂取する目的で、飲料やサプリメントとしても提供されている。即ち上記の飲料やサプリメントは、運動により急速に消費されるエネルギー源を補い、筋肉の分解・損傷を抑制し、筋肉痛や筋肉疲労を軽減する目的で提供されている。またBCAAの肝臓におけるアルブミン合成促進作用を利用して、肝臓疾患の治療薬も開発されている(特許文献1,2)。更には筋蛋白質の合成を促進するシグナルとしての機能も有するという報告や、脳に疲労や眠気を伝えるセロトニンが脳に伝わるのを抑える働きがあると言われている。 そこで筋肉疲労軽減や肝臓疾患の治療の観点から、バリン、ロイシン、イソロイシンを配合した飲食品・医薬品の開発が進められており、配合比率の調査検討を重ねて吸収効率を向上させた組成物(特許文献3)や、BCAAを含有する素材を加水分解してペプチド化した混合物(特許文献4, 5)、他の機能性素材と組み合わせた組成物(特許文献6)が提供されている。また呈味改善の観点からBCAAを有するペプチド混合物の開発も進められてきた(特許文献7)。しかしながら、バリン、ロイシン、イソロイシンをシスチン等の含硫アミノ酸あるいは含硫アミノ酸を有するタンパク質加水分解物と結合させて新たな機能を付与した素材は見られず、その開発が期待されていた。 フェニルアラニンは、上記のBCAAと同様に、体内で合成されない必須アミノ酸であり、アラニンの側鎖の水素原子がフェニル基で置き換えられた構造を有する。フェニルアラニンは、肉類を始めとして魚・貝・卵・乳製品等の食品に多く含まれているが、外傷・関節痛・リウマチ等の慢性的な痛みを軽減すると言われ、天然のL−フェニルアラニンから化学合成されたDL−フェニルアラニンが鎮痛剤として提供されており、特に変形性関節症及び多発性硬化症に関連した疼痛を軽減する目的でフェニルアラニン誘導体の開発が進められてきた(特許文献8,9)。また、筋肉自体の疲労や筋肉の疲労に伴う精神的疲労を回復する目的でフェニルアラニンを含有する栄養組成物が開発されている(特許文献10)。更に、鬱症状に対しても効果があると言われ、DL−フェニルアラニンが抗鬱の目的で利用される場合もある。一方、フェニルアラニンのメチルエステルをアスパラギン酸と結合させた構造のアスパルテームは、人工甘味料として飲食品の分野で広く用いられ、溶解性の改善等の改良が進められている(特許文献11,12)。フェニルアラニン摂取の安全性に関しては、フェニルアラニン−4−モノオキシゲナーゼ遺伝子の完全欠損であるフェニルケトン尿症では、血中にフェニルアラニンが異常に蓄積されることから、フェニルアラニンの摂取を控えることが推奨されている。そこで、その処置の方法(特許文献13)、フェニルアラニン含量の少ないペプチド混合物の製造法(特許文献14)、フェニルアラニンを含まない乳児及び幼児用食品が開発されている(特許文献15)。しかしながら、上記の飲食品の分野のみならず他の分野においても、フェニルアラニンをシスチン等の含硫アミノ酸あるいは含硫アミノ酸を有するタンパク質加水分解物と結合させて新たな機能を付与した素材は見られず、その開発が期待されていた。 シスチンは2分子のシステインがチオール基(−SH)の酸化により生成するS−S結合(ジスルフィド結合)を介してつながった構造をもつアミノ酸である。ポリペプチド中のシステイン間のジスルフィド結合はタンパク質の2次構造の維持に必要であり、毛髪においては、ケラチン中のシステイン間のジスルフィド結合が巻き髪の度合いを決める。毛髪中には種々の蛋白質が存在するがおもな蛋白質はケラチンと呼ばれ約18種類のアミノ酸からできている。絹や繊維など他の蛋白質にはほとんど含まれていないシスチンを14〜18%も含むことを特徴としている。さらには、毛髪に存在するケラチンは、爪にも存在し、そのアミノ酸組成は毛髪と類似しており、シスチンを多く含有する。ケラチン繊維中のシステイン残基間でジスルフィド結合が形成されてシスチンとなり、ケラチン繊維の強度の向上に寄与する。 そこで毛髪用化粧品の分野ではシスチンの有する特性を付加したシスチン導入ペプチド(特許文献16)、システイン導入ペプチド(特許文献17)が開発されており、その技術を用いて毛髪の損傷を防止し損傷した毛髪を回復させるための毛髪保護剤(特許文献18)や、パーマネントウェーブ時の毛髪の損傷を防止し、毛髪に優れたウェーブを付与でき、処理後の毛髪に艶・潤いなどを付与することができるパーマネントウェーブ用第1剤(特許文献19)が提供されている。また組織工学並びにバイオテクノロジーの分野で、インプラント等の生体材料への応用を目的として、チオール基の付加等の修飾によるコラーゲンの改質を行い、ジスルフィド結合を介して架橋可能なコラーゲン誘導体(特許文献20)が開発されている。更にはチオール基を有する有機化合物(特許文献21)が開発され、縫合糸・生体代用物・接着剤として提供されている。上記の通り毛髪化粧品及び組織工学並びにバイオテクノロジーの分野では含硫アミノ酸あるいは含硫アミノ酸を有するタンパク質加水分解物の有する特性を付加した素材の開発において進展が見られるが、それはペプチド以上の分子量のものに限られており、アミノ酸と複合化させた素材は見られない。更に、pHの変化を伴うシスチンとペプチドとの反応により複合体が形成されることが確かめられている。しかしながら、アミノ酸とシスチンの複合体に関しては確認されておらず、含硫アミノ酸あるいは含硫アミノ酸を有するタンパク質加水分解物の有する特性をアミノ酸に付加した素材の開発が期待されていた。特許3696297号公報特許3682453号公報特許3368897号公報特許2958801号公報特許3183945号公報特許2814529号公報特許3211824号公報特開平9−503971号公報特開2002−88097号公報特開平8−198748号公報特開2002−504905号公報特許公表2002−504905号公報特許公表2000−502323号公報特開平8−140693号公報特表平9−508807号公報特開平10−287697号公報特開平11−124395号公報特開平11−269045号公報特開平11−269047号公報特開平6−80935号公報特表平9−503490号公報 本発明は、飲食品又は化粧品に添加可能な機能性成分としてシスチンとアミノ酸との複合体を提供することを目的とする。中でも、本発明は、シスチンと、アミノ酸とをそれぞれを単独で投与した場合に比べて、それぞれの作用が有意に向上するという相乗効果を奏するシスチン−アミノ酸複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記シスチン−アミノ酸複合体を混合する食品又は化粧品を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記の事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、次いで酸性溶液に溶解したアミノ酸溶液と混合・攪拌することにより、pH10未満の溶液中で何らかの形で複合体を形成させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明の要旨は、(1)シスチンとアミノ酸とから形成され、前記アミノ酸がバリン、イソロイシン、ロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸であり、pH10未満の溶液中で沈殿することを特徴とするシスチン−アミノ酸複合体、(2)シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、前記シスチン溶液と酸性溶液に溶解したアミノ酸を含有する溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させて、沈殿物として得る前記(1)に記載のシスチン−アミノ酸複合体、(3)シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、 前記シスチン溶液と酸性溶液に溶解したアミノ酸を含有する溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなる前記(1)又は(2)に記載のシスチン−アミノ酸複合体の製造方法、(4)前記(1)又は(2)に記載のシスチン−アミノ酸複合体を含有する飲食品又は化粧品に関する。 本発明のシスチン−アミノ酸複合体を飲食品又は化粧品等に添加して摂取することで、アミノ酸の有する種々の作用、中でもバリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニンなどのアミノ酸を用いた場合には筋肉疲労軽減作用と、シスチンの有するメラニン色素の出現防止効果による美白作用・解毒作用の両者における改善をそれぞれ単独で添加した場合よりもそれぞれ有意に向上させることができ、その結果として筋肉・髪・爪・皮膚の損傷を回復し、艶・なめらかさ・はりを付与することにおいて、これまで以上に健康・美容の効果を期待できる。 本発明のシスチン−アミノ酸複合体は、シスチンに対してアミノ酸が結合していることを特徴とする。 本発明で使用するシスチンとは、含硫アミノ酸であるシステイン2分子がS−S結合(ジスルフィド結合)を介してつながった構造を持ち、天然に多く存在するL体を用いるが、特にL体とD体の混合物あるいはD体のみでも複合体を製造することが可能であり、これに制限されない。 本発明で使用するアミノ酸とは、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アルギニン、トレオニン、アラニン、プロリン、メチオニン、リジン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンである。 前記アミノ酸は、単独でも混合物でもよいし、天然に多く存在するL体を用いるが、特にL体とD体の混合物あるいはD体のみでも複合体を製造することが可能であり、これに制限されない。 なお、本発明でいうアミノ酸にはグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、システインは含まれない。 本発明のシスチン−アミノ酸複合体は、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、前記シスチン溶液と酸性溶液に溶解したアミノ酸を含有する溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させてなることが好ましい。 本発明では、前記のような方法で複合体を形成させることで、従来のような複雑な化学合成を経る必要がなく、また、合成過程で使用する試薬を除去して精製する必要もないので、飲食品・化粧品等の安全性への留意を要する製品にも容易に添加することができ、また、沈殿物として回収することにより、溶液以外の形で使用することのできる汎用性の高い添加物となる。 原料であるシスチンは、pH10未満の溶液中において凝集体を形成して沈殿する性質を有するが、シスチンとアミノ酸とが複合体を形成することで、凝集体の沈殿量に変化が生じる。 例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アルギニン、トレオニン、アラニン、プロリン、メチオニン、リジン等のアミノ酸とシスチンとが複合体を形成する場合には、シスチン単独と比べて沈殿物の量が減少する。一方、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン等のアミノ酸とシスチンとが複合体を形成する場合には、シスチン単独と比べて沈殿物の量が増大する。 なお、グリシン、ヒスチジン、チロシン、システイン、トリプトファンの場合には、複合体を形成しないため、沈殿物の量に有意な変化はない。 したがって、本発明では、この沈殿物の量の変化を確認することで複合体の形成を判別することができる。 なお、本発明のシスチン−アミノ酸複合体における詳細な結合様式については明らかではないが、バリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニンの場合には前記シスチン重量に対して、アミノ酸の作用を発現する観点から、前記アミノ酸を0.5倍(重量比)以上含有する複合体であることが好ましい。 したがって、本発明は、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、 前記シスチン溶液と酸性溶液に溶解したバリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選ばれる一種以上の分岐鎖アミノ酸を含有する溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなる前記シスチン−アミノ酸複合体の製造方法に関する。 本発明でシスチンを溶解することに使用するアルカリとは、pH10以上の水溶液として用いることができ、例えば、炭酸カリウム・水酸化カリウム・炭酸ナトリウム・水酸化ナトリウムを用いることができるが、飲食品・化粧品の製造の観点からは炭酸カリウム・炭酸ナトリウムを使用することが好ましい。なおpH10未満では十分に溶解することができず、本発明に用いることは好ましくない。なお、前記アルカリ溶液中のシスチン濃度は特に限定はないが1〜3重量%が好ましい。 また、本発明で前記アミノ酸を溶解することに使用する酸性溶液とは、pH2以下の水溶液として用いることができ、例えば、クエン酸・酢酸・乳酸・塩酸等を用いることができるが、飲食品又は化粧品を製造する観点からは、クエン酸を使用することが好ましい。なお、pH2を超えると十分に溶解しない場合があり、本発明に用いることは好ましくない。なお、アミノ酸が難溶性の場合は加熱してもよい。また、前記酸性溶液中のアミノ酸濃度は特に限定はないが2〜5重量%が好ましい。 前記シスチン溶液と前記アミノ酸を含有する酸性溶液とを混合・撹拌する条件としては、混合液のpHが10未満となるようにすればよく、特に限定はない。また混合後は、pH10未満に調整した混合液を静置することで、溶液中で複合体を形成させることができる。 複合体の形成の有無は、溶液中の沈殿物の量を、あらかじめ測定しておいたシスチン単独の凝集物の沈殿量と比較することで判断することができる。 前記のようにして得られたシスチン−アミノ酸複合体は、前記混合液をろ過又は遠心分離することで分離することができる。複合体の種類としては、後述の実施例に示すように沈殿し難いものもあり、この場合にはろ過液を乾燥して回収することもできる。また、分離した複合体を固化させたり、粉末状にすることも可能である。 本発明のシスチン−アミノ酸複合体は、前記のように安全性に優れた方法で製造されたものであるため、飲食品又は化粧品に好適に配合することができる。また、このような飲食品又は化粧品を摂取した場合にシスチン又はアミノ酸単独で配合した場合に比べてそれぞれの作用効果が奏されるだけでなく、相乗的に有意になるという相乗効果も奏される。 つぎに実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお以下の実施例などにおいて、溶液などの濃度を示す%は特にその単位を付記していないかぎり重量%である。実施例1 シスチン‐アミノ酸複合体は、L−シスチンをまず90℃において、pH10以上の炭酸カリウム溶液に溶解して2%シスチン溶液を作成する。これを室温(25℃)に戻し、それにアミノ酸溶液40gを徐々に添加して撹拌する。用いるアミノ酸溶液としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンのいずれか一種を2%以上で含有する酸性溶液を作製し、上記の2%シスチン溶液に添加する。室温(25℃)において、2%シスチン溶液5gに上記のアミノ酸溶液を徐々に混合・攪拌して、pHを下げたところ、白濁を生じた。その後一晩続けて室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mクエン酸緩衝液5gを添加してpHを6に調整した。この反応液を49000×g(20000rpm)以上で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mクエン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000×g(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチン‐アミノ酸複合体の沈殿物を得た。比較例1 実施例の対照として、室温(25℃)において、2%シスチン‐2%炭酸カリウム溶液5gに対して、1Mクエン酸溶液5.0gを混合・攪拌して、pHを下げたところ、白濁を生じた。その後60分間室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mクエン酸緩衝液5gを添加してpHを6に調整し、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンのいずれか一種を2%以上で含有するアミノ酸溶液40gを徐々に混合・攪拌した後一晩続けて室温で放置した。この反応液を49000×g(20000rpm)で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mクエン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000×g(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチンの沈殿物を得た。実施例2 バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン以外のアミノ酸に関して、実施例1及び比較例1と同様にしてシスチン‐アミノ酸複合体形成の検証実験を行った。L−シスチンをまず90℃において、pH10以上の炭酸カリウム溶液に溶解して2%シスチン溶液を作成する。これを室温(25℃)に戻し、それにアミノ酸溶液40gを徐々に添加して撹拌する。用いるアミノ酸溶液としては、アミノ酸を2%以上で含有する酸性溶液を作製し、上記の2%シスチン溶液に添加する。室温(25℃)において、2%シスチン溶液5gに上記のアミノ酸溶液を徐々に混合・攪拌して、pHを下げた。その後一晩続けて室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mクエン酸緩衝液5gを添加してpHを6に調整した。この反応液を49000×g(20000rpm)以上で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mクエン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000×g(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチンを含有する沈殿物を得た。比較例2 実施例2の対照として、室温(25℃)において、2%シスチン‐2%炭酸カリウム溶液5gに対して、1Mクエン酸溶液5.0gを混合・攪拌して、pHを下げたところ、白濁を生じた。その後60分間室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mクエン酸緩衝液5gを添加してpHを6に調整し、アミノ酸を2%以上で含有するアミノ酸溶液40gを徐々に混合・攪拌した後一晩続けて室温で放置した。この反応液を49000×g(20000rpm)で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mクエン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000×g(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチンの沈殿物を得た。 実施例1と比較例1で得られた沈殿物の重量を比較した結果を表1に示す。実施例1で得られた沈殿物の重量を比較例1で得られたシスチンの沈殿物の重量を基準(1)として、1.5倍以上に増加したものを「増加」とし、0.7倍以下に減少したものを「減少」とし、0.8倍から1.2倍程度の変化のものを「変化なし」と分類した。なおチロシンに関しては上記の実施例と比較例に示した実験条件では溶解が困難であり、重量を評価することができなかったため、表1には結果を載せていない。 表1から明らかなように、シスチン−アミノ酸反応実験において、pHの変化に伴うシスチンの沈殿物の重量は、グリシン、ヒスチジンを除いて、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アルギニン、トレオニン、アラニン、プロリン、メチオニン、リジンのアミノ酸のいずれか一種との反応に関しては減少し、一方、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンの4つのアミノ酸のいずれか一種との反応に関しては著しく増加した。以上より、グリシン、ヒスチジン、トリプトファンを除くアミノ酸は、シスチンと反応して複合化することが明らかとなった。なお、システインについては、シスチンの構成アミノ酸であり、類似の作用効果を有するアミノ酸であるため除いている。実施例3 下記の処方により各成分を混合して、シスチン0.1gとアミノ酸複合体0.9gを反応させてなるシスチン‐アミノ酸複合体1.0gを含有する飲料を作成した。アミノ酸はバリン:ロイシン:イソロイシン:フェニルアラニン=1:2:1:0.5の比率で含有されるように調整したものを使用した。実施例4 下記の処方により各成分を混合して、シスチン0.3gとアミノ酸複合体2.7gを反応させてなるシスチン‐アミノ酸複合体3.0gを含有する化粧品を作成した。アミノ酸はバリン:ロイシン:イソロイシン:フェニルアラニン=1:2:1:0.5の比率で含有されるように調整したものを使用した。試験例1 実施例3で作製した疲労回復・美容飲料を30人の被試験者に2週間、毎日飲用してもらい、それによる疲労度・肌質の変化について、自覚症状のアンケート調査を行った。被試験者を10人ずつA・B・Cの3グループに分けて、各々25cc・50cc・100ccを2週間、毎日飲用してもらった。表4にその結果を表に示す。比較例3 実施例3の飲料のシスチン−アミノ酸複合体の代わりに、シスチン1.0gを添加した飲料を作製した。比較例4 実施例3の飲料のシスチン−アミノ酸複合体の代わりに、アミノ酸1.0gを添加した飲料を作製した。アミノ酸はバリン:ロイシン:イソロイシン=1:2:1の比率で含有されるように調整したものを使用した。比較例5 実施例3の飲料のシスチン‐アミノ酸複合体の代わりに、ブドウ糖1.0gを添加した飲料を作製した。試験例2 試験例1と同じく、比較例3〜5で作製した飲料を40人の被試験者に2週間、毎日飲用してもらい、それによる疲労度・肌質の変化について、自覚症状のアンケート調査を行った。被試験者を10人ずつ4グループに分けて、それぞれ実施例1あるいは比較例3〜5で作製した飲料を100ccずつ2週間、毎日飲用してもらった。その結果を表5に示す。 表5に示すように、実施例1及び比較例3〜5のいずれのグループにおいても美容・疲労回復への効果が見られた。但しプラセボコントロールとした比較例5ではほとんど美容・疲労回復への効果は見られなかった。すなわち、実施例1のシスチン‐アミノ酸複合体では、過半数の美容・疲労回復への効果が見られた。これ対して、比較例3のシスチン単独、比較例4のアミノ酸単独でも、実施例1ほどの美容効果及び疲労回復への効果が見られなかった。 したがって、シスチン‐アミノ酸複合体は、シスチンとバリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニンをそれぞれ単独で使用するよりも美容・疲労回復への効果に優れる効果を奏することが証明された。 本発明のシスチン‐アミノ酸複合体は、前記のようにシスチンの美白作用とアミノ酸の作用、特にバリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニンを用いた場合には筋肉疲労の軽減作用を共に備えた美容及び疲労回復において特に優れるものであるため、筋肉・髪・爪・皮膚の損傷を回復し、艶・なめらかさ・はりを付与する目的で、飲食品に有効成分として好適に使用することができる。 シスチンとアミノ酸とから形成され、前記アミノ酸がバリン、イソロイシン、ロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸であり、pH10未満の溶液中で沈殿することを特徴とするシスチン−アミノ酸複合体。 シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、前記シスチン溶液と酸性溶液に溶解したアミノ酸を含有する溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させて、沈殿物として得る請求項1に記載のシスチン−アミノ酸複合体。 シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、 前記シスチン溶液と酸性溶液に溶解したアミノ酸を含有する溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなる請求項1又は2記載のシスチン−アミノ酸複合体の製造方法。 請求項1又は2記載のシスチン−アミノ酸複合体を含有する飲食品。 請求項1又は2記載のシスチン−アミノ酸複合体を含有する化粧品。


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