タイトル: | 公開特許公報(A)_被験物質の気道感作性評価方法 |
出願番号: | 2008327880 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/15,G01N 33/53 |
森 剛志 太田 美佳 JP 2009175137 公開特許公報(A) 20090806 2008327880 20081224 被験物質の気道感作性評価方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 坂元 徹 100151909 森 剛志 太田 美佳 JP 2007336490 20071227 G01N 33/15 20060101AFI20090710BHJP G01N 33/53 20060101ALI20090710BHJP JPG01N33/15 ZG01N33/53 PG01N33/53 QG01N33/53 N 9 OL 10 本発明は、化学物質の気道感作性を評価する方法に関する。 化学物質の安全性評価の一環として、化学物質の哺乳動物に対する気道感作性の有無を評価する方法の開発が行われている。 化学物質の気道感作性の評価方法として、マウス、モルモット、またはラットを用いた方法が知られている(非特許文献1参照)。マウスを用いた気道感作性の評価方法として、被験物質で経皮感作した後、該物質を気管内投与したマウスから得られる気管支肺胞洗浄液中のIL-4、IFN-γ、IgE等の量を指標とした評価方法(非特許文献2参照)や、被験物質を経皮投与したマウスのリンパ節から採取した細胞の培養上清に含まれるIL-4、IL-5、IL-10、IL-12、IL-13およびIFN-γの量を指標とした評価方法(非特許文献3参照)等が知られている。一方、経皮感作したマウスのリンパ節細胞の培養に含まれるサイトカインの量は化学物質の気道感作性を評価するための確かな指標にならないとの報告もある(非特許文献4)。J. H. E. Arts and C. F. Kuper. (2007) Animal models to test respiratory allergy of low molecular weight chemicals: A guidance. Methods. 41, 61-71.D. M. Sailstad et al. (2003) A murine model for low molecular weight chemicals: differentiation of respiratory sensitizers (TMA) from contact sensitizers (DNFB). Toxicology. 194, 147-161.R. J. Dearman and I. Kimber. (2001) Cytokine Fingerprinting and Hazard Assessment of Chemical Respiratory Allergy. J. Appl. Toxicol. 21, 153-163.M. Selgrade et al. (2006) Inconsistencies between cytokine profiles, antibody responses, and respiratory hyperresponsiveness following dermal exposure to isocyanates. Toxicol Sci. 94, 108-117. 化学物質の気道感作性を確実に評価することができる方法の開発が切望されている。 かかる状況の下、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明は下記の発明を提供するものである。[発明1] 被験物質を接触させた非ヒト哺乳動物におけるG-CSF量及び血清IgE量を指標とすることを特徴とする被験物質の気道感作性評価方法。[発明2] 被験物質の非ヒト哺乳動物への接触が、被験物質への感作のために該被験物質を該哺乳動物に接触させる第一工程と、気道におけるアレルギー反応を誘発するために該被験物質を該哺乳動物に投与する第二工程と、により行われる発明1に記載の被験物質の気道感作性評価方法。[発明3] 第一工程における非ヒト哺乳動物への被験物質の接触が、該哺乳動物への該被験物質の経皮投与により行われる発明2に記載の被験物質の気道感作性評価方法。[発明4] 第二工程における非ヒト哺乳動物への被験物質の投与が、該哺乳動物への該被験物質の気管内投与により行われる発明2に記載の被験物質の気道感作性評価方法。[発明5] G-CSF量が、該哺乳動物から得た気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量である発明1〜4のいずれかに記載の被験物質の気道感作性評価方法。[発明6] 非ヒト哺乳動物がTh2優位系統のマウスである発明1〜5のいずれかに記載の被験物質の気道感作性評価方法。[発明7] 発明1に記載の方法であって、(1)被験物質への感作のために該被験物質を非ヒト哺乳動物に接触させる工程、(2)気道におけるアレルギー反応を誘発するために該被験物質を該哺乳動物の気管内に投与する工程、(3)該哺乳動物から気管支肺胞洗浄液と血清を採取し、該気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量と該血清中のIgE量とを測定する工程(4)工程(3)で得られた測定値と対照動物における測定値とを比較することにより得られる差異に基づき該被験物質の気道感作性を評価する工程を有することを特徴とする方法。[発明8] 対照動物が、感作のための該被験物質の接触を行わず、気道におけるアレルギー反応を誘発するための被験物質の気管内投与を行った非感作群の非ヒト哺乳動物であり、工程(3)で得られたG-CSF量とIgE量の測定値がいずれも非感作群のこれら測定値よりも高い場合に、該被験物質は気道感作性を有すると評価する発明7記載の方法。[発明9] 発明1〜8のいずれかに記載の被験物質の気道感作性評価方法を用いて、ヒトへの該被験物質の気道感作性を予測する方法。 本発明により、化学物質の気道感作性の有無をより確実に評価する方法を提供することができる。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の被験物質の気道感作性評価方法は、被験物質を接触させた非ヒト哺乳動物におけるG-CSF量及び血清IgE量を指標とする。 本発明の評価方法に用いられる非ヒト哺乳動物としては、マウス、モルモット、ラット等が挙げられ、好ましくはTh2優位マウスが挙げられる。 Th2優位マウスは、一般的な免疫反応であるTh1型とTh2型のうち、Th2型免疫反応を引き起こしやすい性質をもつ系統のマウスであり、具体的にはBALB/cマウスが挙げられる。本発明の評価方法には、BALB/cマウスの雄性及び雌性のいずれを用いてもよく、6-15週齢のものが好ましく用いられる。評価に用いられるBALB/cマウスの数は、被験物質あたり1群1匹以上、好ましくは3匹以上、より好ましくは7匹以上である。 被験物質の非ヒト哺乳動物への接触は2回以上行われる。この接触は、A.被験物質への感作のために該被験物質を非ヒト哺乳動物に接触させる第一工程と、B.気道におけるアレルギー反応を誘発するために該被験物質を該哺乳動物に投与する第二工程とにより行われることが好ましい。 第一工程において、被験物質への感作のために該被験物質を非ヒト哺乳動物に接触させる方法としては、例えば除毛した非ヒト哺乳動物の腹部又は耳介、好ましくは該腹部及び耳介共に被験物質を塗布する、すなわち、経皮投与する方法、被験動物の気管内に被験物質を投与又は吸入させる方法、被験動物の鼻から被験物質を投与する方法等が挙げられる。経皮投与する方法が好ましい。投与は少なくとも1回、好ましくは複数回行われる。 感作のために投与する被験物質溶液を調製する際には、被験物質を溶解又は均一に懸濁させることができ、且つ被験哺乳動物に対してアレルギー性及び刺激性がない溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒として例えば、オリーブオイル、アセトンとオリーブオイルとの混合液、DMSO、水または生理食塩水を挙げることができる。気管内への投与のための被験物質溶液の調製には、溶媒としてオリーブオイル、オリーブオイルとDMSOとの混合液、水、または生理食塩水等を用いることができる。また、気管内への吸入のための被験物質溶液の調製には、溶媒として水、生理食塩水、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセトン、コーンオイル、オリーブオイル、ピーナッツオイル、ホワイトカーボン又は炭酸カルシウム等を用いることができる。 感作のために投与する被験物質溶液の投与量及び濃度は、通常、被験動物に極端な刺激反応を起こさない程度の量及び濃度とする。例えば、被験動物と同種の非ヒト哺乳動物を用いて被験物質の試験投与を行うことにより、適切な投与量及び濃度を予め決めることができる。 被験物質を非ヒト哺乳動物の腹部や耳介に経皮投与する場合の投与量及び濃度については、哺乳動物を用いた感作性試験であるLLNA(非特許文献5参照)で陽性が認められる投与量を指標とすることもできる。例えば、アセトンとオリーブオイルとの混合液を溶媒として用いてMDI溶液を調製しこれをTh2優位マウスに経皮投与する場合、好ましい投与量は10-200μlであり、好ましいMDI濃度は0.1-2.0%である。OECD Guideline for The Testing of Chemicals. Guideline 429. Skin Sensitisation: Local Lymph Node Assay. 24 April 2002. 第二工程において、気道におけるアレルギー反応を誘発するために被験物質を被験哺乳動物に投与する方法としては、例えば被験哺乳動物の気管内に被験物質を投与又は吸入させる方法、被験哺乳動物の鼻から被験物質を投与する方法等が挙げられる。 気道におけるアレルギー反応を誘発するために投与する被験物質溶液を調製する際には、被験物質を溶解又は均一に懸濁させることができ、且つ被験哺乳動物に対してアレルギー性及び刺激性がない溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒として例えば、オリーブオイル、アセトンとオリーブオイルとの混合液、水または生理食塩水等を挙げることができる。気管内への投与のための被験物質溶液の調製には、溶媒としてオリーブオイル、オリーブオイルとDMSOとの混合液、水、または生理食塩水等を用いることができる。また、気管内への吸入のための被験物質溶液の調製には、溶媒として水、生理食塩水、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセトン、コーンオイル、オリーブオイル、ピーナッツオイル、ホワイトカーボン又は炭酸カルシウム等を用いることができる。 気道におけるアレルギー反応を誘発するために投与する被験物質溶液の投与量及び投与濃度は、通常、被験動物に刺激反応を起こさない程度の量及び濃度とする。例えば、被験動物と同種の非ヒト動物を用いて被験物質の試験投与を行うことにより、適切な投与量及び濃度を予め決めることができる。具体的には例えば、予め被験物質を投与した非ヒト哺乳動物から得られる気管支肺胞洗浄液に含まれるサイトカインの内、該被験物質の気管内投与により気道上皮細胞や肺胞マクロファージ等の細胞から分泌され、気道における刺激や炎症に関与するサイトカイン、例えばIL-5、IL-13, TNF-α等の濃度に影響を及ぼさない投与量及び投与濃度を目安とすることができる。例えば、オリーブオイルを溶媒として用いてMDI溶液を調製しこれをTh2優位マウスの気管内に投与する場合、好ましい投与量は10-50μlであり、好ましい投与濃度は0.0001%以下である。 前述の方法により被験物質を接触させた非ヒト哺乳動物(感作群)から得た例えば気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量及び血清中のIgE量を測定する。対照として、感作のための該被験物質の接触を行わず、気道におけるアレルギー反応を誘発するための被験物質の投与投与のみを行った非ヒト哺乳動物(非感作群)から得た気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量及び血清中のIgE量を測定する。感作群と非感作群の測定値を比較して得られる差異に基づき、被験物質の被験哺乳動物に対する気道感作性の有無を評価する。具体的には、感作群におけるG-CSF量及び血清IgE量の測定値がいずれも、非感作群のこれら測定値よりも高い場合に、該被験物質は気道感作性を有すると評価する。 気管支肺胞洗浄液と血清のサンプリングは、例えば、被験物質の最終投与から所定時間後、具体的には0.5から48時間後、好ましくは4から24時間後に、麻酔下で行う。気管支肺胞洗浄液の取得に用いる溶液としては、各種緩衝液を挙げることができ、具体的にはリン酸緩衝液、好ましくは0.01mM〜0.5mMのEDTAと0.01%〜3%のBSAとを含むリン酸緩衝液を挙げることができる。 G-CSF(granulocyte-colony stimulating factor)量の測定方法としては、例えばウェスタンブロット法、ELISA法、マイクロビーズを用いた多項目測定法等が挙げられる。 血清IgE量の測定方法としては、例えばウェスタンブロット法、ELISA法等が挙げられる。 本発明の気道感作性評価方法において、被験物質を用いる試験と並行して、対照物質を用いた試験を行ってもよい。 陽性対照物質(気道感作性物質)としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート(HMDI)、無水フタル酸(PA)、トリメリト酸無水物(TMA)等が挙げられる。このような気道感作性物質について、日本産業衛生学会は、ヒトに対して明らかに気道感作性がある物質を第1群、ヒトに対しておそらく気道感作性がある物質を第2群として分類している。当該分類では、上記物質のうち、TDI、HDI、MDI、PAおよびTMAは第1群に分類されている。また、HMDIは、イソシアネート構造を有し、EUの危険物分類では、気道感作性がないことを証明しない限り、気道感作性物質として取り扱われる物質とされている。 陰性対照物質としては、4−エトキシメチレン−2−フェニルオキサゾリン−5−オン(OXA)、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)、ヘキシルシンナムアルデヒド(HCA)等の皮膚感作性物質が挙げられる。これらの物質は、日本産業衛生学会の気道感作性物質分類において、ヒトに対して明らかに気道感作性がある物質として挙げられていない。 被験物質の非ヒト哺乳動物への気道感作性を評価することによって、該被験物質のヒトへの気道感作性を予測することができる。一般に、非ヒト哺乳動物とヒトとでは免疫機構は似ており、非ヒト哺乳動物で皮膚感作性が認められる化学物質は、ヒトでも同様に皮膚感作性が認められることが知られている。皮膚感作性については非ヒト哺乳動物を用いて評価した結果を元に、ヒトでの皮膚感作性を予測することが一般に行なわれている。気道感作性についてもこれと同様であると予想されている。ヒトに対する気道感作性が知られている物質について、本発明の評価方法により、非ヒト哺乳動物への気道感作性が有ると評価された。したがって、非ヒト哺乳動物における被験物質の気道感作性の評価結果からヒトでの気道感作性を予測することは可能であると考えられる。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。試験例1(気道感作性物質を用いた試験) 6週齢の雌性BALB/cマウス(日本チャ−ルス・リバー株式会社)をプラスチック製ケージ(W290×D340×H170mm、床敷き:ホワイトフレーク、日本クレア株式会社)に1ケージ当たり10匹ずつ収容して飼育し、CRF-1固型飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)及び濾過済の水道水を自由に摂取させた。このように飼育して7又は8週齢に達したBALB/cマウスの両腹側部を剃毛した。 アセトン及びオリーブオイルを4:1で混合した溶液を溶媒として、2% ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)溶液、2% ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)溶液および25% 無水フタル酸(PA)溶液を各々経皮投与用に調製した。また、気管内投与用に、オリーブオイルを溶媒として、0.0001%MDI溶液および0.001%HMDI溶液を各々調製し、2%のDMSOを含むオリーブオイルを溶媒として、0.05%PA溶液を調製した。いずれも用事調製とした。 剃毛翌日又はそれ以降に、上記の経皮投与用被験物質溶液各々又は溶媒(アセトンとオリーブオイルの4:1混合液)を上記マウスの両腹側部へ50μLずつ、計100μL塗布した(0日目)。該マウスに翌日(1日目)にも上記の経皮投与用被験物質溶液各々又は溶媒を同様に塗布し、更に、6日目と7日目にも同様に塗布した。12日目、13日目、14日目には該マウスの両耳介の背側に上記の経皮投与用被験物質溶液各々又は溶媒(アセトンとオリーブオイルの4:1混合液)を20μLずつ、計40μL塗布した。次いで、27日目に上記の気管内投与用被験物質溶液各々50μLを各マウスの気管内に投与した。気管内投与24時間後に血清を採取するとともに、0.05mM EDTA及び0.1% BSAを含むPBS溶液を用いて気管支肺胞洗浄液を得た。得られた気管支肺胞洗浄液に含まれるG-CSF量をマイクロビーズを用いた多項目測定法により測定した。血清IgE量は、ELISA法により測定した。これらの結果を図1及び図2に示した。気管内投与に先立って被験物質を経皮投与されたマウス、すなわち感作群と、溶媒を経皮投与されたマウス、すなわち非感作群との間で、気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量および血清IgE量の測定値を比較し両側検定を行った。G-CSF量及びIgE量は非感作群に比べ感作群で有意に増加していた。参考試験例1(皮膚感作性物質を用いた試験) 6週齢の雌性BALB/cマウス(日本チャ−ルス・リバー株式会社)をプラスチック製ケージ(W290×D340×H170mm、床敷き:ホワイトフレーク、日本クレア株式会社)に1ケージ当たり10匹ずつ収容して飼育し、CRF-1固型飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)及び濾過済の水道水を自由に摂取させた。このように飼育して7又は8週齢に達したBALB/cマウスの両腹側部を剃毛した。 アセトン及びオリーブオイルを4:1で混合した溶液を溶媒として、1% 4−エトキシメチレン−2−フェニルオキサゾリン−5−オン(OXA)投与液、1% ジニトロクロロベンゼン(DNCB)投与液および25% ヘキシルシンナムアルデヒド(HCA)投与液を各々経皮投与用に調製した。また、気管内投与用に、オリーブオイルを溶媒として、0.01%DNCB投与液およびHCA投与液を各々調製し、2%DMSOを含むオリーブオイルを溶媒として、0.001%OXA投与液を調製した。いずれも用事調製とした。 剃毛翌日又はそれ以降に、上記の経皮投与用被験物質投与液又は溶媒(アセトンとオリーブオイルの4:1混合液)を上記マウスの両腹側部へ50μLずつ、計100μL塗布した(0日目)。該マウスに翌日(1日目)にも上記の経皮投与用被験物質投与液各々又は溶媒を同様に塗布し、更に、6日目と7日目にも同様に塗布した。12日目、13日目、14日目には該マウスの耳介両側に上記の経皮投与用被験物質投与液又は溶媒(アセトンとオリーブオイルの4:1混合液)を20μLずつ、計40μL塗布した。次いで、27日目に上記の気管内投与用被験物質投与液各々50μLを各マウスの気管内に投与した。気管内投与24時間後に血清を採取するとともに、0.05mM EDTA及び0.1% BSAを含むPBS溶液を用いて気管支肺胞洗浄液を得た。得られた気管支肺胞洗浄液に含まれるG-CSF量をマイクロビーズを用いた多項目測定法により測定した。血清IgE量は、ELISA法により測定した。結果を図1及び図2に示した。測定した気管支肺胞洗浄液中G-CSF量と血清IgE量について、気管内投与に先立って被験物質を経皮投与されたマウス、すなわち感作群と、溶媒を経皮投与されたマウス、すなわち非感作群との間で、気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量および血清IgE量の測定値を比較し両側検定を行った。DNCBとOXAについては、非感作群に比べ感作群で、血清中IgE量の有意な増加が認められたが、気管支肺胞洗浄液中G-CSFに有意な増加は認められなかった。HCAについては、非感作群に比べ感作群で、気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量に有意な増加が認められたが、血清中IgE量については有意な増加は認められなかった。 上記試験例の結果を、表1に示す。気道感作性物質(PA,MDI,HMDI)ではG-CSFおよび血清IgE共に感作群で有意な増加が認められた。一方、皮膚感作性物質(DNCB,OXA,HCA)では、G-CSFおよび血清IgE共に感作群で有意な増加が認められた物質はなかった。 ○:非感作群に比べ感作群で有意な増加が認められた ×:非感作群に比べ感作群で有意な増加が認められなかった試験例2(気道感作性物質を用いた試験) 6週齢の雌性BALB/cマウス(日本チャ−ルス・リバー株式会社)をプラスチック製ケージ(W290×D340×H170mm、床敷き:ホワイトフレーク、日本クレア株式会社)に1ケージ当たり10匹ずつ収容して飼育し、CRF-1固型飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)及び濾過済の水道水を自由に摂取させた。このように飼育して7又は8週齢に達したBALB/cマウスの両腹側部を剃毛した。 経皮投与用に、アセトン及びオリーブオイルを4:1で混合した溶液を溶媒として、1% トルエンジイソシアネート(TDI)投与液、25% 無水トリメリト酸(TMA)投与液および2% グルタルアルデヒド(GA)投与液を各々調製し、また、DMSOを溶媒として、5% テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム(AT)投与液および10% クロラミンT(CH)投与液を各々調製した。また、気管内投与用に、オリーブオイルを溶媒として、0.001%TDI投与液および0.000001%GA投与液を各々調製し、2%のDMSOを含むオリーブオイルを溶媒として、0.01%TMA投与液、0.001%AT投与液および0.00001%CH投与液を各々調製した。いずれも用事調製とした。 剃毛翌日又はそれ以降に、上記の経皮投与用被験物質投与液各々又は溶媒(アセトンとオリーブオイルの4:1混合液、またはDMSO)を上記マウスの両腹側部へ50μLずつ、計100μL塗布した(0日目)。該マウスに翌日(1日目)にも上記の経皮投与用被験物質投与液各々又は溶媒を同様に塗布し、更に、6日目と7日目にも同様に塗布した。12日目、13日目、14日目には該マウスの両耳介の背側に上記の経皮投与用被験物質投与液各々又は溶媒(アセトンとオリーブオイルの4:1混合液、またはDMSO)を20μLずつ、計40μL塗布した。次いで、27日目に上記の気管内投与用被験物質投与液各々50μLを各マウスの気管内に投与した。気管内投与24時間後に血清を採取するとともに、0.05mM EDTA及び0.1% BSAを含むPBS溶液を用いて気管支肺胞洗浄液を得た。得られた気管支肺胞洗浄液に含まれるG-CSF量をマイクロビーズを用いた多項目測定法により測定した。血清IgE量は、ELISA法により測定した。これらの結果を図3及び図4に示した。気管内投与に先立って被験物質を経皮投与されたマウス、すなわち感作群と、溶媒を経皮投与されたマウス、すなわち非感作群との間で、気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量および血清IgE量の測定値を比較し片側検定を行った。G-CSF量及びIgE量は非感作群に比べ感作群で有意に増加していた。 上記試験例の結果を、表2に示す。気道感作性物質(TMA,TDI,GA,AT,CH)ではG-CSFおよび血清IgE共に感作群で有意な増加が認められた。 ○:非感作群に比べ感作群で有意な増加が認められた ×:非感作群に比べ感作群で有意な増加が認められなかった 本発明によって、被験物質により誘発される気道感作性をより確実に評価する方法を提供することができる。試験例1及び参考試験例1において測定されたG-CSF量を示す図である。縦軸はG-CSF濃度(pg/mL)を示す。横軸は以下の被験マウス群を示す:1はPA非感作群、2はPA感作群、3はMDI非感作群、4はMDI感作群、5はHMDI非感作群、6はHMDI感作群、7はDNCB非感作群、8はDNCB感作群、9はOXA非感作群、10はOXA感作群、11はHCA非感作群、12はHCA感作群。図中の有意差記号の意味は次のとおりである:*は<0.05, ***は<0.001, N.Sは有意差無し。試験例1及び参考試験例1において測定されたIgE量を示す図である。縦軸はIgE濃度(ng/mL)を示す。横軸は以下の被験マウス群を示す:1はPA非感作群、2はPA感作群、3はMDI非感作群、4はMDI感作群、5はHMDI非感作群、6はHMDI感作群、7はDNCB非感作群、8はDNCB感作群、9はOXA非感作群、10はOXA感作群、11はHCA非感作群、12はHCA感作群。図中の有意差記号の意味は次のとおりである:**は<0.01, ***は<0.001, N.Sは有意差無し。試験例2において測定されたG-CSF量を示す図である。縦軸はG-CSF濃度(pg/mL)を示す。横軸は以下の被験マウス群を示す:1はTMA非感作群、2はTMA感作群、3はTDI非感作群、4はTDI感作群、5はGA非感作群、6はGA感作群、7はAT非感作群、8はAT感作群、9はCH非感作群、10はCH感作群。図中の有意差記号の意味は次のとおりである:*は<0.05, **は<0.01。試験例2において測定されたIgE量を示す図である。縦軸はIgE濃度(ng/mL)を示す。横軸は以下の被験マウス群を示す:1はTMA非感作群、2はTMA感作群、3はTDI非感作群、4はTDI感作群、5はGA非感作群、6はGA感作群、7はAT非感作群、8はAT感作群、9はCH非感作群、10はCH感作群。図中の有意差記号の意味は次のとおりである:*は<0.05, ***は<0.001。 被験物質を接触させた非ヒト哺乳動物におけるG-CSF量及び血清IgE量を指標とすることを特徴とする被験物質の気道感作性評価方法。 被験物質の非ヒト哺乳動物への接触が、被験物質への感作のために該被験物質を該哺乳動物に接触させる第一工程と、気道におけるアレルギー反応を誘発するために該被験物質を該哺乳動物に投与する第二工程と、により行われる請求項1に記載の被験物質の気道感作性評価方法。 第一工程における非ヒト哺乳動物への被験物質の接触が、該哺乳動物への該被験物質の経皮投与により行われる請求項2に記載の被験物質の気道感作性評価方法。 第二工程における非ヒト哺乳動物への被験物質の投与が、該哺乳動物への該被験物質の気管内投与により行われる請求項2に記載の被験物質の気道感作性評価方法。 G-CSF量が、該哺乳動物から得た気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量である請求項1〜4のいずれかに記載の被験物質の気道感作性評価方法。 非ヒト哺乳動物がTh2優位系統のマウスである請求項1〜5のいずれかに記載の被験物質の気道感作性評価方法。 請求項1に記載の方法であって、(1)被験物質への感作のために該被験物質を非ヒト哺乳動物に接触させる工程、(2)気道におけるアレルギー反応を誘発するために該被験物質を該哺乳動物の気管内に投与する工程、(3)該哺乳動物から気管支肺胞洗浄液と血清を採取し、該気管支肺胞洗浄液中のG-CSF量と該血清中のIgE量とを測定する工程(4)工程(3)で得られた測定値と対照動物における測定値とを比較することにより得られる差異に基づき該被験物質の気道感作性を評価する工程を有することを特徴とする方法。 対照動物が、感作のための該被験物質の接触を行わず、気道におけるアレルギー反応を誘発するための該被験物質の気管内投与を行った非感作群の非ヒト哺乳動物であり、工程(3)で得られたG-CSF量とIgE量の測定値がいずれも非感作群のこれら測定値よりも高い場合に、該被験物質は気道感作性を有すると評価する請求項7記載の方法。 請求項1〜8のいずれかに記載の被験物質の気道感作性評価方法を用いて、ヒトへの該被験物質の気道感作性を予測する方法。 【課題】被験物質による気道感作性をより確実に評価することができる方法を提供すること。【解決手段】被験物質を接触させた非ヒト哺乳動物におけるG-CSF量及び血清IgE量を指標とすることを特徴とする被験物質の気道感作性評価方法;被験物質の非ヒト哺乳動物への接触が、被験物質への感作のために該被験物質を該哺乳動物に接触させる第一工程と、気道におけるアレルギー反応を誘発するために該被験物質を該哺乳動物に投与する第二工程と、により行われる被験物質の気道感作性評価方法;第一工程における非ヒト哺乳動物への被験物質の接触が、該哺乳動物への経皮投与により行われる被験物質の気道感作性評価方法等を提供する。【選択図】なし