タイトル: | 特許公報(B2)_カテキン類の製造方法 |
出願番号: | 2008307531 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 36/00,A61K 36/18,A61K 31/353,A61P 3/06,C07D 311/30 |
岡田 一夫 佐藤 康平 山田 響介 JP 5593026 特許公報(B2) 20140808 2008307531 20081202 カテキン類の製造方法 オルガノ株式会社 000004400 宮崎 昭夫 100123788 緒方 雅昭 100127454 岡田 一夫 佐藤 康平 山田 響介 20140917 A61K 36/00 20060101AFI20140828BHJP A61K 36/18 20060101ALI20140828BHJP A61K 31/353 20060101ALI20140828BHJP A61P 3/06 20060101ALI20140828BHJP C07D 311/30 20060101ALI20140828BHJP JPA61K35/78 YA61K35/78 CA61K31/353A61P3/06C07D311/30 A61K 36/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開2007−228911(JP,A) 特開平06−009607(JP,A) 特開2007−195458(JP,A) 特開平11−292870(JP,A) 特開平11−228565(JP,A) 国際公開第08/072360(WO,A1) Ion-exchange technique for the recovery of caffeine from industrial waste water,Research and Industry,1971年,16(2),89-92 Cation-exchange micropreparative separation of galloylated and non-galloylated sulphur conjugated catechins.,Journal of Chromatography A,2002年,973(1-2),229-234 3 2010132573 20100617 10 20110802 前田 亜希 本発明はカテキン類の製造方法に関する。 茶等に含まれるカテキン類は、体脂肪の蓄積抑制効果があるといわれている。このような生理効果を喫茶により発現させるためには、相当量のお茶を飲むことが必要となる。そこで、簡易にカテキン類を摂取するために、カテキン類を高濃度で清涼飲料水等に配合する要求がある。しかしながら、清涼飲料水等に高濃度のカテキン類を配合するために、茶抽出物を原料としたカテキン類を清涼飲料水等に高濃度に配合すると、不純物として含まれる没食子酸も清涼飲料水中に高濃度に含まれることとなる。没食子酸が高濃度となると、苦味が強くなり、清涼飲料水の香味の面で不都合がある。こうした問題に対し、茶抽出物等から没食子酸を除去する種々の方法が提案されている。 例えば、合成吸着剤を充填したカラムに、カテキン類及び没食子酸等を含む茶抽出物の水溶液を通液し、カラムを水洗したのち、塩基性水溶液でカテキン類を溶離する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。また、例えば、タナーゼ処理した茶抽出液を陰イオン交換樹脂に通液することにより、没食子酸を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。 ところで、従来、複数の成分を分離し特定の成分を精製する方法として、クロマトグラフィーの手法による分離(クロマト分離)が、工業的に利用されている。クロマト分離は、固体の充填材を用い、この充填材に対する分配係数の差を利用して、原料液中の成分を分離する。クロマト分離の原理は、充填材を充填した充填層に、分離しようとする2以上の成分を含む原料液を供給し、この原料液を水等の溶離液で流下させることで、上記各成分の充填材に対する分配係数の違いにより、分配係数の小さい成分は相対的に速く流下し、分配係数の大きい成分は相対的に遅く流下することで、各成分を含む画分に分離するものである。 クロマト分離では、例えば、糖等のような非電解質を含む原料をクロマト分離する場合、サイズ排除機能やイオン排除機能、配位子機能をもつ陽イオン交換樹脂を充填材とし、高純度の糖を得ることができる(例えば、特許文献4)。糖のクロマト分離では、溶離液として、水もしくは希薄な塩基性水溶液等の水系溶媒を用いることができるため、食品添加物として適合するプロセスとすることができる。このため、クロマト分離は食品の加工に、良好に用いることができる。 クロマト分離の方式としては、例えば固定層方式や移動層方式がある。固定層方式では、充填材を充填した充填層に対して一過性で原料液を通液して、複数の成分を分離回収する方式である。移動層方式は、例えば、分離する2成分の移動速度の中間の速度で、充填材を溶離液の移動方向(分離する2成分の移動方向)と逆に移動させ、充填層の中間に原料液を供給して分離を行うものである。即ち、分離する2成分は、原料液の供給点から互いに逆向きに充填層内を移動することとなり、固定層方式では分離が困難な、分配係数の差が小さい成分同士を良好に分離できる。この様な移動層方式では、原料液中の2成分を純度高く、連続的に分離することができる。一方で、大型の工業用装置において、各成分の帯域を維持したまま、充填材を移動することは極めて困難である。 上述の移動層方式の原理を利用したクロマト分離方式に、擬似移動層方式がある。擬似移動層方式は、例えば、充填材を充填した単位充填層が閉鎖ループを形成するように連結し、原料液と溶離液の供給位置及び各成分の画分の抜き出し位置を単位充填層に対して液循環流通の下流側に切り替えながら、連続的に行わせて分離を行う。充填層を幾つかのカラムに分割して、原料液の供給位置を溶離液の流れる方向に順次間欠的に移動させることによって、移動層方式とほぼ同等の分離性能を得ることができる。特開2007−228911号公報特開平6−9607号公報特開2007−195458号公報特開平11−313699号公報 しかしながら、特許文献1、2のような合成吸着剤による吸着分離によれば、カフェイン等の他、没食子酸を除去できるが、カテキン類の回収率が低いという問題点があった。また、特許文献3のような陰イオン交換樹脂による吸着分離では、茶抽出液中の没食子酸の一部は除去されるものの除去率が不十分であるという問題点があった。加えて、茶抽出物中のカテキン類と没食子酸をクロマト分離により分離精製しようとすると、カテキン類は水への溶解度が低いため、効率的にカテキン類を得ることができない。さらに、クロマト分離は、分離対象となる物質間の充填剤に対する分配係数の差により分離するため、分離対象となる物質が異なる特許文献4の精製方法をカテキン類の精製に直ちに適用することは困難である。そして、カテキン類の製造方法には、より一層の精製精度の向上と回収率の向上が求められている。 そこで、本発明は没食子酸を除去した高純度のカテキン類を高回収率で得られるカテキン類の製造方法を目的とする。 本発明のカテキン類の製造方法は、陽イオン交換樹脂が充填された充填層に、カテキン類を含有する原料液、及び、有機溶剤と水とを含む溶離液を供給し、クロマト分離により精製する工程を有することを特徴とする。前記溶離液はエタノール水溶液であることが好ましく、前記原料液及び/又は前記溶離液に塩基を加えてもよく、前記クロマト分離は、擬似移動層方式であることが好ましく、前記原料液は、茶抽出物又は茶抽出物の処理物であることが好ましい。 本発明のカテキン類の製造方法によれば、没食子酸を除去し高純度に精製したカテキン類を高回収率で製造できる。 以下、本発明のカテキン類の製造方法について、例を挙げて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。 本発明のカテキン類の製造方法は、陽イオン交換樹脂が充填された充填層に、カテキン類を含有する原料液及び溶離液を供給しクロマト分離する工程を有するものである。 (クロマト分離装置) 本発明のカテキン類の製造方法に使用するクロマト分離装置の一例について、図1を用いて説明する。図1は固定層方式のクロマト分離装置8の模式図である。図1に示すとおり、クロマト分離装置8は、単位充填塔10と、原料液貯槽20と、溶離液貯槽30と、第一画分貯槽40と、第二画分貯槽50とを有する。 原料液貯槽20は、バルブ22が備えられた配管24により、単位充填塔10の上部と接続されている。溶離液貯槽30は、バルブ32が備えられた配管34により、単位充填塔10の上部と接続されている。単位充填塔10には、陽イオン交換樹脂が充填されて、充填層12が形成されている。 単位充填塔10の下部には、配管60が接続されている。配管60は、分岐62で、配管44と配管54と配管64とに接続されている。配管44には、バルブ42が備えられ、配管44は、第一画分貯槽40と接続されている。配管54には、バルブ52が備えられ、配管54は、第二画分貯槽50と接続されている。配管64には、バルブ66が備えられ、配管64は図示されない排出口と接続されている。 <陽イオン交換樹脂> 充填層12に充填されている陽イオン交換樹脂は、原料液の組成やカテキン類の種類、溶離液の種類等を勘案して決定することができる。陽イオン交換樹脂の種類は特に限定されず、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。陽イオン交換樹脂のイオン形は特に限定されず、再生形であってもよいし、Ca形、Na形等の塩形であってもよい。例えば、原料液中に塩化ナトリウムが含まれる場合には、Na形陽イオン交換樹脂を選択することで、電解質である塩化ナトリウムとカテキン類とを良好に分離することができる。なお、再生形とは、交換基の対イオンが、H+に置換されているものをいう。陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース社製のアンバーライト(商品名)を挙げることができる。陽イオン交換樹脂は単独で用いてもよく、2種以上の陽イオン交換樹脂を組み合わせて用いてもよい。 (カテキン類の製造方法) 本発明のカテキン類の製造方法について説明する。 まず、原料液貯槽20に原料液を入れる。バルブ22、66を開、バルブ32、42、52を閉として、原料液貯槽20から、任意の量の原料液を単位充填塔10に供給する。次いで、バルブ32、66を開、バルブ22、42、52を閉として、溶離液貯槽30から溶離液を単位充填塔10に供給する。任意の量の溶離液を供給した後、バルブ32、42を開、バルブ22、52、66を閉として、溶離液を単位充填塔10に供給する。そして、原料液と溶離液は、充填層12内を流通する。ここで、充填層12内に充填された陽イオン交換樹脂は、原料液中の没食子酸等の陽イオン交換樹脂への分配係数が、カテキン類の陽イオン交換樹脂への分配係数よりも小さい。このため、原料液中の没食子酸等は、主に移動相(溶離液、原料液の溶媒等)中を流下する。一方、カテキン類は、固定相である陽イオン交換樹脂と、移動相との間を移動しながら流下する。そして、原料液中の没食子酸等が、早期に単位充填塔10から第一画分として流出し、配管60、44を経由して、第一画分貯槽40に貯留される。 次いで、バルブ32、52を開、バルブ22、42、66を閉として、溶離液を単位充填塔10に供給する。上述のように、原料液中のカテキン類は、没食子酸等に比べて陽イオン交換樹脂への分配係数が大きいので、没食子酸等よりも充填層12内を遅く流下する。このため、カテキン類は、単位充填塔10から第二画分として流出し、配管60、54を経由して、第二画分貯槽50に貯留される。 第二画分の採取を終えた後、バルブ32、66を開、バルブ22、42、52を閉とし、溶離液を充填層12に流通させて、陽イオン交換樹脂の再生と洗浄を行う。充填層12を流通した溶離液は、配管60、64を経由して、図示されない排出口から排出される(以上、カテキン類精製工程)。 カテキン類精製工程の後、必要に応じて第二画分の濃縮、乾燥、造粒等の工程を設けてもよい(加工工程)。かかる工程を設けることで、カテキン類の高濃度濃縮液や、粒状物を得ることができる。 <原料液> 原料液は、カテキン類を含む溶液であれば特に限定されず、例えば、茶抽出物、茶抽出物の処理物、又はこれらを任意の溶媒で希釈もしくは溶解したものが挙げられる。具体的には、固体の茶抽出物である市販のポリフェノン(東京フードテクノ株式会社製)、テアフラン(株式会社伊藤園製)、サンフェノン(太陽化学株式会社製)等の粗カテキン製剤を溶媒に溶解したものが挙げられる。茶抽出物の処理物としては、例えば特開2004−321105号公報に開示されている方法により、茶抽出物中のカテキン類のガレート率を低くする処理を施したものが挙げられる。原料液は、原料液が茶抽出物、茶抽出物の処理物、又はこれらの希釈物もしくは溶解液(以下、総じて茶抽出物類ということがある)である場合、苦味の原因である没食子酸を含有する。このため、本発明は、没食子酸を安全に除去でき香味の改善が図れる点で、茶抽出物類の原料液に適用することが好ましく、ガレート体カテキンを一部分解した処理物であることがより好ましい。なお、前記茶抽出物、茶抽出物の処理物は液体状であってもよいし、固形状であってもよい。ただし、固形状である場合には、前記任意の溶媒で溶解して原料液とする。 原料液に使用する溶媒は、原料液中の成分や溶離液の種類を勘案して決定することができ、例えば、水又は有機溶剤を含む水溶液が挙げられる。有機溶剤を含む水溶液としては、例えば、後述する溶離液と同じものを選択することができる。 茶抽出物を得る方法は、公知の方法により茶葉から抽出する方法を用いることができる。例えば、茶葉を温水で抽出して、茶抽出液を得る方法が挙げられる。 カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン;エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキンの総称である。 原料液にはカテキン類、溶媒の他、不純物として、没食子酸、カフェイン、無機塩等が含まれていてもよい。特に不純物が没食子酸の場合において、カテキン類との分離が良好に行え、本発明の効果が顕著に現れる。 原料液には必要に応じて塩基を添加することができる。例えば、充填層12内で没食子酸の濃度が高い場合や、原料液が中性〜酸性である場合等には、原料液に塩基を添加することが好ましい場合がある。原料液に塩基を添加することで、没食子酸等の弱酸をイオン化させ、カテキン類と不純物との分離を容易にし、カテキン類を良好に精製できるためである。 原料液に添加する塩基は、原料液中の不純物の種類、陽イオン交換樹脂の種類、クロマト分離条件に応じて決定することができ、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、アンモニア(NH3)水等が挙げられる。この内、Na形の陽イオン交換樹脂を使用する場合にイオン形が保持されやすいので、添加する塩基としてNaOHを選択することが好ましい。また、例えば、添加した塩基の再利用の観点からは、NH3水が好ましい。NH3水は、第一画分、第二画分から回収するのが容易なためである。原料液への塩基の添加量は、処理条件を勘案して決定することができ、例えば、除去しようとする没食子酸等の弱酸と略当モル量とすることが好ましい。没食子酸を確実にイオン化するために没食子酸と当モル量の塩基を加える場合、加える塩基はNH3が好ましい。原料液にNH3を添加した場合は、NaOH等の強塩基を添加した場合に比べ原料液のpHが低くなり、カテキン類等の分解が抑えられるためである。 原料液のpHは除去対象とする物質に応じて決定することができ、没食子酸等、除去対象とする物質のpKa以上とすることが好ましい。 <溶離液> 溶離液は有機溶剤と水とを含むものである。有機溶剤は、水に可溶なものであればよく、原料液中の成分等に応じて適宜決定することができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジオキサン等のエーテル類、アセトン等のケトン類を用いることができ、中でも、エタノールを用いることが好ましい。エタノールと水の混合物は、毒性が低い上にクロマト分離の際の取り扱いが容易である。加えて、クロマト分離して得られたカテキン類は、食品として使用する際の後処理が容易である。 溶離液は、エタノールと水の混合物の場合、エタノールの含有量は10〜90体積%が好ましく、20〜60体積%がより好ましい。エタノール含有量が上記下限値未満であるとカテキン類の溶解度が低く回収率の向上が図りにくい。エタノール含有量が上記上限値を超えると、イオン排除の機構が働きにくくなり、カテキン類の純度向上が図りにくくなる。 溶離液には、必要に応じて塩基を添加することができる。例えば、充填層12内で没食子酸の濃度が高い場合や、溶離液が中性〜酸性である場合等には、溶離液に塩基を添加することが好ましい場合がある。溶離液に塩基を添加することで、没食子酸等の弱酸をイオン化させ、カテキン類と不純物との分離を容易にし、カテキン類を良好に精製できるためである。 溶離液に添加する塩基は、原料液中の不純物の種類、陽イオン交換樹脂の種類、クロマト分離条件に応じて決定することができ、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、アンモニア(NH3)水等が挙げられる。この内、Na形の陽イオン交換樹脂を使用する場合にイオン形が保持されやすいので、添加する塩基としてNaOHを選択することが好ましい。また、例えば、添加した塩基の再利用の観点からは、NH3水が好ましい。NH3水は、第一画分、第二画分から回収するのが容易なためである。溶離液への塩基の添加量は、処理条件を勘案して決定することができ、例えば、除去しようとする没食子酸等の弱酸と略当モル量とすることが好ましい。没食子酸を確実にイオン化するために没食子酸と当モル量の塩基を加える場合、加える塩基はNH3が好ましい。溶離液にNH3を添加した場合は、NaOH等の強塩基を添加した場合に比べ溶離液のpHが低くなり、カテキン類等の分解が抑えられるためである。なお、溶離液に添加する塩基の種類及び添加量は、原料液へ添加する塩基の種類及び添加量にかかわりなく、適切な種類及び添加量を決定できる。 クロマト分離における、充填層に流通させる原料液及び/又は溶離液の温度は特に限定されず、原料液中の成分等を勘案して決定することができる。例えば、0〜80℃とすることが好ましく、0〜60℃とすることがより好ましい。上記下限値未満であると、冷却設備にコストがかかり、上記上限値を超えると製造設備を耐熱仕様とする必要が生じ、設備コストが高くなるためである。 溶離液のpHは除去対象とする物質に応じて決定することができ、没食子酸等、除去対象とする物質のpKa以上とすることが好ましい。 第一画分を採取するための溶離液の通液量は特に限定されず、例えば、単位充填塔10の出口で得られる流出液を分析し、第二画分中のカテキン類の濃度が一定以上となった時点で、第二画分の採取を開始してもよいし、経験的に求められた溶離液の通液量をもって、第二画分の採取に切り替えてもよい。第二画分を採取するための溶離液の通液量は特に限定されず、例えば、単位充填塔10の出口で得られる流出液を分析し、第二画分中のカテキン類の濃度が一定値以下となった時点で洗浄に切り替えてもよいし、経験的に求められた溶離液の通液量をもって、洗浄に切り替えてもよい。 加工工程における加工の方法は公知の方法を用いることができる。例えば、カテキン類の高濃度濃縮物を得る方法としては、減圧濃縮、加熱濃縮等が挙げられる。粉体物を得る方法としては、例えば、噴霧乾燥等が挙げられる。 上述のように、カテキン類精製工程は、陽イオン交換樹脂を充填した充填層に、カテキン類を含有する原料液及び溶離液を供給し、クロマト分離により精製することで、原料液中の没食子酸等の不純物を第一画分として得、カテキン類を第二画分として得ることができる。前記カテキン類精製工程は、陽イオン交換樹脂のイオン排除の働きにより、没食子酸等は充填層から早く流出し、カテキン類は充填層から遅く溶出する。この原理を利用した各種のクロマト分離方法により、原料液中のカテキン類と没食子酸とを容易に分離できるため、高純度のカテキン類を高回収率で得ることができる。 加えて、溶離液が有機溶剤と水とを含むことで、高濃度のカテキン類を精製することができる。カテキン類及び没食子酸は水への溶解度が小さい。例えば水に対するカテキンの溶解度は、1.6g/L程度であり、没食子酸の溶解度は11.9g/L程度である。これに対し、50体積%エタノール水溶液に対するカテキンの溶解度は20g/L程度であり、没食子酸の溶解度は120g/L程度である。このため、充填層内でのカテキン類及び没食子酸の濃度を高めてクロマト分離をすることができ、第一画分への没食子酸濃度、第二画分におけるカテキン類濃度を向上させることができる。一方で、有機溶剤中では、陽イオン交換樹脂の交換基や没食子酸がイオン化されない。本発明では、溶離液が水を含むことにより、陽イオン交換樹脂の交換基、没食子酸のイオン化を維持することができ、分配係数の差により、カテキン類と没食子酸とを分離することができる。このように、有機溶剤と水とを含む溶離液を用いることで、第二画分には高純度かつ高濃度のカテキン類が含まれることとなり、原料液からのカテキン類の精製を効率的に行うことができる。 上述のクロマト分離方法では、固定層方式のクロマト分離装置を用いているが、本発明のクロマト分離方法は、固定層方式のクロマト分離装置に限られず、移動層方式、擬似移動層方式のクロマト分離装置を用いてもよい。また、特許第1998860号明細書、特許第2008230号明細書、特許第1954744号明細書に開示されているような、クロマト分離方法を用いることもできる。さらに、これに限られず、その他のあらゆるクロマト分離方法、即ち、固体の充填材を用い、この充填材への分配係数の差を利用して、原料液中の成分を分離することを原理とする分離方法で用いることができる。中でも、擬似移動層方式のクロマト分離装置又は擬似移動層方式を改良したクロマト分離装置は、溶離液の量が少なく、充填材の利用効率が高いため、より高濃度で、より高純度のカテキン類を得ることができる。 以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。 (実施例1) カテキン類を含む溶液を原料液Aとして、HPLCを用いてカテキン類の溶出時間を確認した。通常のHPLC分析方法に従い、溶離液Aを用いて、原料液Aを分析した。分析カラムとしては、分析カラム(SCX−Na、φ6.0×L150、東ソー株式会社製)を4本直列に接続して用いた。分析条件は、流速:0.6mL/min、原料液注入量:10μL、カラムオーブンの温度40℃、検出器の波長270nmであった。分析結果を図2に示す。 <原料液> 原料液A:(+)−カテキン水和物(東京化成工業株式会社製)0.5gを溶媒A(エタノール50mLと純水50mLとの混合液)に溶解し、原料液Aとした。 <溶離液> 溶離液A:エタノール/純水=50/50(体積比)で混合したものを溶離液とした。 <HPLC仕様> HPLCはHPLC分析装置(株式会社島津製作所製)を用いた。HPLCの仕様は、コントローラ:SCL-10AVP、ポンプ:LC−10ADVP、オートサンプラー:SIL−10ADVP、カラムオーブン:CTO−10ACVP、検出器:UV検出器SPD−10AVPであった。 (実施例2) 原料液Aを原料液Bとした以外は、実施例1と同様にして分析を行った。分析結果を図3に示す。 原料液B:没食子酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)0.5gを溶媒A(エタノール50mLと純水50mLとの混合液)に溶解し、原料液Bとした。 図2は、横軸に溶出時間(min)をとり、縦軸に濃度(mAU)をとった、(+)−カテキンの溶出時間を示すグラフである。図3は、横軸に溶出時間(min)をとり、縦軸に濃度(mAU)をとった、没食子酸の溶出時間を示すグラフである。図2に示すように、(+)−カテキンを溶媒Aに溶解した原料液Aを用いた実施例1では、(+)−カテキンの溶出時間のピークが23.6minであった。一方、図3に示すように、没食子酸を溶媒Aに溶解した原料液Bを用いた実施例2では、没食子酸の溶出時間のピークが11.7minであった。図2と図3の比較において、(+)−カテキンの溶出時間と没食子酸の溶出時間は大きく離れており、かつピークの重なりがない。したがって、原料液に含まれるカテキン類と没食子酸とを容易に分離し、カテキン類を高純度に精製できることが判った。本発明のカテキン類の製造に用いるクロマト分離装置の一例を示す模式図である。実施例1の(+)−カテキンの溶出時間を示すグラフである。実施例2の没食子酸の溶出時間を示すグラフである。符号の説明 8 クロマト分離装置 12 充填層 Na形の強酸性陽イオン交換樹脂が充填された充填層に、カテキン類及び没食子酸を含有する原料液を供給する工程と、 前記充填層に、エタノールの含有量が20〜60体積%であるエタノール水溶液を溶離液として供給する工程と、 前記充填層から、前記カテキン類よりも早く流出する、前記没食子酸を含む第1の流出液を得る工程と、 前記充填層から、前記カテキン類を含有する第2の流出液を得る工程と、 を有し、 前記原料液及び/又は前記溶離液に塩基を加えることを特徴とするカテキン類の製造方法。 前記クロマト分離は、擬似移動層方式であることを特徴とする、請求項1に記載のカテキン類の製造方法。 前記原料液は、茶抽出物又は茶抽出物の処理物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカテキン類の製造方法。