タイトル: | 特許公報(B2)_有機電界発光素子 |
出願番号: | 2008296051 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | H01L 51/50,C08F 126/12,C09K 11/06,C07D 209/88 |
高須 勲 飯田 涼子 水野 幸民 榎本 信太郎 内古閑 修一 JP 5481057 特許公報(B2) 20140221 2008296051 20081119 有機電界発光素子 株式会社東芝 000003078 蔵田 昌俊 100108855 中村 誠 100088683 福原 淑弘 100109830 峰 隆司 100075672 野河 信久 100103034 河野 直樹 100153051 砂川 克 100140176 風間 鉄也 100100952 勝村 紘 100101812 河井 将次 100070437 佐藤 立志 100124394 岡田 貴志 100112807 堀内 美保子 100111073 市原 卓三 100127144 高須 勲 飯田 涼子 水野 幸民 榎本 信太郎 内古閑 修一 20140423 H01L 51/50 20060101AFI20140403BHJP C08F 126/12 20060101ALI20140403BHJP C09K 11/06 20060101ALI20140403BHJP C07D 209/88 20060101ALI20140403BHJP JPH05B33/14 BC08F126/12C09K11/06 690C07D209/88 C08C 19/00− 19/44 C08F 6/00−246/00 C08F301/00 C09K 11/00− 11/89 H05B 33/00− 33/28 特開2004−288380(JP,A) 国際公開第03/077609(WO,A1) 特開2003−187983(JP,A) 特開2004−175869(JP,A) 特開平08−060145(JP,A) 1 2010121041 20100603 11 20110323 鈴木 亨 本発明は有機電界発光素子に関する。 近年、次世代ディスプレイや照明のための発光技術として有機電界発光素子(有機EL素子)が注目されている。有機EL素子の研究初期は、有機層の発光機構として主に蛍光が用いられていた。しかし、蛍光の内部量子効率は理論上25%が上限であるとされている。実際、実験的にも、蛍光を用いた有機EL素子で25%を超える量子効率を示す報告はほとんどなされていない。一方、リン光を用いた有機EL素子では、原理上100%の内部量子効率が得られることが示されている。これは、蛍光が励起一重項のみからの発光であるのに対し、リン光は励起三重項からの発光が可能となり、統計的に励起三重項は励起一重項の3倍存在するためである。実際、リン光を用いた有機EL素子においては、100%に近い内部量子効率を示す実験結果が報告されている。 近年におけるリン光を用いた発光層の構成の主流は、有機材料からなるホスト材料中に、イリジウムや白金などを中心金属とする発光性金属錯体をドープしたものである。このリン光発光層中の発光ドーパントにおける励起子生成のメカニズムの1つは以下の通りである。すなわち、陰極と陽極からの電子と正孔の注入により生成したホスト材料の励起状態から、発光ドーパントへエネルギー移動を起こすことによって発光ドーパントが励起状態となり、その基底状態へのエネルギー失活過程において発光を示す。 図1に示すように、ホスト材料の発光スペクトルと発光ドーパントの吸収スペクトルの重なり(図1においてAで示す)が大きいほど、ホストから発光ドーパントへのエネルギー移動効率がよい。これは、フェルスターのエネルギー移動機構と呼ばれる。 リン光を用いた発光層のホスト材料は、低分子系と高分子系に大別される。低分子系ホスト材料を含む発光層は、主に低分子系ホスト材料および発光ドーパントを真空共蒸着することによって成膜される。高分子系ホスト材料を含む発光層は、主に高分子系ホスト材料および発光ドーパントを混合した溶液を塗布することによって成膜される。 低分子系ホスト材料の代表例は、パラビスカルバゾリルフェニレン(CBP)などである。高分子系ホスト材料の代表例は、ポリビニルカルバゾール(PVK)などである(非特許文献1、非特許文献2)。下記に、カルバゾールの構造と置換位置番号、およびPVKの構造を示す。 発光ドーパント材料には、青色発光ドーパント材料、緑色発光ドーパント材料、赤色発光ドーパント材料などがある。青色発光ドーパント材料の代表例はビス(2−(4,6−ジフルオレフェニル)ピリジナートイリジウム錯体[以下、FIrpicと記す]などである。緑色発光ドーパント材料の代表例はトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体[以下、Ir(ppy)3と記す]などである。赤色発光ドーパント材料の代表例はBt2Ir(acac)などである。 ここで、これらの発光ドーパント材料と高分子系ホスト材料であるPVKとを含む発光層を成膜することを想定する。ここで、PVKの発光波長が420nmであるのに対し、それぞれの発光ドーパント材料を発光させるための吸収帯は、青色発光ドーパント材料であるFIrpic:380nm、緑色発光ドーパント材料であるIr(ppy)3:410nm、赤色発光ドーパント材料であるBt2Ir(acac):480nmとなっている。したがって、たとえばPVKからFIrpicへのエネルギー移動を効率よく行わせたい場合には、PVKの発光波長を短波長シフトさせることが望ましい。 また、リン光を用いた発光層のホスト材料の望ましい特性として、発光ドーパントの励起三重項状態を失活させないことが挙げられる。これには、ホスト材料の励起三重項エネルギーが発光ドーパントの励起三重項エネルギーよりも高いことが望ましく、そのためにもホスト材料の発光波長を短波長シフトさせることが望ましい。Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 39 (2000) pp. L828-L829Adv. Mater. 2006, 18, 948-954 本発明の目的は、発光波長が短波長シフトしたホスト材料として用いることができるポリビニルカルバゾールを発光層に含む有機電界発光素子を提供することにある。 本発明の一実施形態によれば、陽極と陰極との間に発光層を有し、前記発光層はホスト材料と青色発光ドーパントとを含有する有機電界発光素子であって、 前記ホスト材料は、下記一般式(式中、R2、R4、R5およびR7の2つ以上はFであり、残りはHであり、nは2以上の正の整数である)で表される、2位、4位、5位および7位に2つ以上のフッ素を有するカルバゾール骨格を有する繰り返し単位を含むポリビニルカルバゾールであることを特徴とする有機電界発光素子が提供される。 本発明の実施形態に係る、2位、4位、5位および7位に2つ以上のフッ素を有するカルバゾール骨格を有する繰り返し単位を含むポリビニルカルバゾールは、発光波長が短波長シフトしたホスト材料として用いることができ、青色発光ドーパント材料へのエネルギー移動効率を向上できる。また、本発明の実施形態に係る有機電界発光素子は、上記ポリビニルカルバゾールからなるホスト材料と青色発光ドーパントとを含有する発光層を有し、高い発光効率を得ることができる。 以下、本発明の実施形態を説明する。 本発明の実施形態に係るポリビニルカルバゾールは、2位、4位、5位および7位に2つ以上のフッ素を有するカルバゾール骨格を有する繰り返し単位を含む。フッ素の置換位置は、2位、4位、5位および7位から任意に2つ以上選択することができる。分子軌道計算から、このようなフッ素置換カルバゾールは、発光が短波長シフトすることが見積もられている。 次に、カルバゾール骨格の2位および7位でフッ素置換したポリビニル・二フッ化カルバゾールの合成例を説明する。反応スキームを下記に示す。 (反応I) 100mL三口フラスコ中、トルエン50mL、3−フルオロフェノール(1)25.0mmol、30%りん酸カリウム水溶液50mLを加え、反応液10℃以下の条件で、無水トリフルオロメタンスルホン酸30.0mmolを滴下し、室温下、1時間攪拌した。酢酸エチル50mLで二回抽出し、150mLの水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去し、乾燥させることで、液体の化合物(2)23.0mmolを得た(収率92%)。 (反応II) トルエン40mLに化合物(2)2.0mmol、3−フルオロアニリン2.2mmolを溶解させ、酢酸パラジウム0.2mmol、炭酸セシウム2.4mmol、配位子として2−ジシクロヘキシルフォスニノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル3.0mmolを加え、100℃で2時間攪拌した。反応液を真空乾燥した後、カラムクロマトグラフィ(溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=1:3)によって単離し、化合物(3)1.5mmolを得た(収率75%)。 (反応III) 100mLナスフラスコ中、酢酸50mLに、化合物(3)4mmol、酢酸パラジウム8mmolを加え、100℃で4時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、硫酸マグネシウムで脱水した。有機層を真空乾燥させ、得られた固体をカラムクロマトグラフィ(溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=1:3)によって単離し、化合物(4)0.6mmolを得た(収率15%)。化合物(4)を重水素化クロロホルムに溶解させ、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定した。ピーク位置の化学シフト(ppm):6.98(多重線),7.09(四重線),7.92(四重線),8.10。 (反応IV) 50mLナスフラスコ中、化合物(4)3.0mmol、ジメチルスルホキシド10mL、水酸化カリウム9.7mmol、クロロエチルトシレート9.9mmolを加え、室温で5時間攪拌した。酢酸エチルを加え、水で洗浄した後、溶媒を除去し、乾燥して、化合物(5)を得た。 (反応V) 100mL三口フラスコ中、水酸化カリウム7.5mmol、化合物(5)のエタノール溶液(90mL)、イソプロピルアルコール6.5mLを混合し、2時間加熱還流した後、氷浴で冷却した。純水200mLを加え、ろ過した後、酢酸エチルを加え、真空乾燥した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、溶剤は酢酸エチル:ヘキサン=1:5)によって単離し、化合物(6)2.5mmolを得た(収率85%)。 (反応VI) 50mL三口フラスコ中、化合物(6)2.76mmol、アゾビスイソブチロニトリル0.38mmol、脱水テトラヒドロフラン3.3mLを50〜60℃の温度で5時間攪拌した。室温で冷却した後、テトラヒドロフランに溶解させ、メタノール中で再沈殿により精製し、乾燥した後、517mgの化合物(7)を得た(収率82%)。 重水素化テトラヒドロフランに溶解させ、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、高分子特有のブロードなスペクトルが得られた(ピーク位置の化学シフト(ppm):2.00,3.13,4.70,6.09,6.42,6.65,7.00,7.20,7.436)。数平均分子量(Mn)は17,975であった。 ここで、図2に、化合物(4)の二フッ化カルバゾールおよび無置換カルバゾールの発光スペクトルを示す。図2に示されるように、化合物(4)の二フッ化カルバゾールでは、無置換カルバゾールと比較して、発光波長が短波長シフトしていることがわかる。 一方、青色リン光発光ドーパントとしては、下記のような化合物が挙げられる。 次に、上記で合成したポリビニル・二フッ化カルバゾール(以下、F−PVKと記す)を含む発光層を有する有機EL素子(実施例)を作製した。 図3に有機EL素子の断面図を示す。ガラス基板1上に、陽極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、および電子注入層/陰極6が順次形成されている。 陰極2は厚さ50nmのITO(インジウム錫酸化物)からなる透明電極である。正孔輸送層3の材料には、導電性インクであるポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン・スルフォン酸)[以下、PEDOT:PSSと記す]の水溶液を用いた。PEDOT:PSSの水溶液をスピンコートによって塗布し、加熱して乾燥することにより正孔輸送層3を50nmの厚さに形成した。 発光層4の材料には、ホスト材料としてF−PVK、キャリアバランスをとる目的で導入する化合物として1,3−ビス(2−(4−ターシャリーブチルフェニル)−1,3,4−オキシジアゾル−5−イル)ベンゼン[以下、OXD−7と記す]、青色リン光発光ドーパントとしてFIrpicを用いた。重量比でF−PVK:OXD−7:FIrpic=65:30:5となるように秤量し、これらをクロロベンゼンに溶解した溶液をスピンコートによって塗布し、加熱して乾燥することにより発光層4を90nmの厚さに形成した。 電子輸送層5はトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム[以下、Alq3と記す]を真空蒸着することにより10nmの厚さに形成した。電子注入層は厚さ1nmのLiFで形成され、陰極は厚さ150nmのAlで形成されている。 比較のために、ホスト材料として無置換のPVKを用いて上記と同様にして有機EL素子(比較例)を作製した。 図4に、実施例および比較例の有機EL素子の発光特性を示す。いずれの有機EL素子でも、電流密度の上昇とともに発光が開始され、発光効率が単調に上昇する挙動が認められた。発光層にF−PVKを含む実施例の有機EL素子は、発光層に無置換のPVKを含む比較例の有機EL素子に比べて発光効率が高い。測定した電流密度範囲で最高の発光効率は、実施例で19.9cd/A、比較例で9.3cd/Aであった。この結果は、フッ素置換されたF−PVKでは発光波長が短波長シフトし、青色発光ドーパントであるFIrpicへのエネルギー移動効率が向上したことによる。ホスト材料の発光スペクトルと発光ドーパントの吸収スペクトルの重なりを示す模式図。二フッ化カルバゾールおよび無置換カルバゾールの発光スペクトルを示す図。本発明の実施形態に係る有機EL素子の断面図。実施例および比較例の有機EL素子の発光特性を示す図。符号の説明 1…ガラス基板、2…陽極、3…正孔輸送層、4…発光層、5…電子輸送層、6…電子注入層/陰極。 陽極と陰極との間に発光層を有し、前記発光層はホスト材料と青色発光ドーパントとを含有する有機電界発光素子であって、 前記ホスト材料は、下記一般式(式中、R2、R4、R5およびR7の2つ以上はFであり、残りはHであり、nは2以上の正の整数である)で表される、2位、4位、5位および7位に2つ以上のフッ素を有するカルバゾール骨格を有する繰り返し単位を含むポリビニルカルバゾールであることを特徴とする有機電界発光素子。