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タイトル:特許公報(B2)_石膏ボード中のアスベスト分析方法及び分析試料作製方法
出願番号:2008294916
年次:2013
IPC分類:G01N 23/207,G01N 1/10


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大原 俊彦 日浦 盛夫 小田 新一郎 JP 5344425 特許公報(B2) 20130823 2008294916 20081118 石膏ボード中のアスベスト分析方法及び分析試料作製方法 広島県 591079487 専徳院 博 100128277 大原 俊彦 日浦 盛夫 小田 新一郎 20131120 G01N 23/207 20060101AFI20131031BHJP G01N 1/10 20060101ALI20131031BHJP JPG01N23/207G01N1/10 B G01N 23/207 G01N 1/10 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CiNii 特開2008−241440(JP,A) 川西 幸子,「室内環境の研究 −石綿による環境汚染の最近の知見と問題点−」,武蔵野短期大学研究紀要,1989年 6月25日,第4輯,p.39-54 Joseph A. Hrijac, et.al.,"On the use of X-ray powder diffraction for determining low levels of chrysotile asbestos in gypsum-based bulk materials: use of a synchrotron source",Analytica Chimica Acta,1997年 9月10日,Vol. 350, No. 1/2,p. 221-229 3 2010122017 20100603 9 20111017 藤田 都志行 本発明は、石膏ボード中のアスベストを分析する方法及びこの分析に使用する分析試料作製方法に関する。 石膏ボードは、特定の条件において硫化水素を生成するという問題があり,過去にはこれが原因となった事故が発生したことをうけて、管理型処分場での処分が義務付けられている。こうした中、近年建築物の解体に伴い排出される廃石膏ボードの量が増加していることからリサイクル技術の開発が緊急の課題となっている。しかしながら一部石膏ボード製品にはアスベストが使われていることが報告されていることから、廃石膏ボード再利用の際には、こうしたアスベスト含有製品を除く必要がある。 石膏ボード中のアスベストの有無を確認する方法としては、JIS A1481「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」(以下、JIS法と言う。)がある。JIS法は広く一般の建材製品を対象とする方法であり、汎用性に優れているが、試料前処理方法等が煩雑で専門的な知識を必要とすることから検査費用が高く、小規模の解体現場で排出される廃石膏ボードにまで適用するのは、難しい状況にある。 JIS法の課題を踏まえ、いくつかの簡易判定方法が提案されている。例えば、アスベスト中のFe、Mgを溶解液を用いて溶出させ、これに呈色試薬を添加して呈色させアスベストの有無を判定する方法が開発され、簡易キットとして販売されている(例えば特許文献1参照,非特許文献1参照)。さらにアスベスト結合タンパク質を利用してアスベストの有無を判定する簡易検出キットも開発されている(例えば非特許文献2参照)。特開2008−26269号公報http://www.unichemy.co.jp/Products2/AsbWakahruPro/AsbWakahruPro1.htmlhttp://siliconbio.co.jp/41/50.html 特許文献1及び非特許文献1に記載の判定方法は、JIS法に比較して短時間かつ安価にアスベストの有無を判定可能と思われるが、アスベストの種類の同定、定量分析が不十分である。また非特許文献2に記載の判定方法も、非特許文献1に記載の判定方法と同様に建材を分析対象物とすることが可能であるが、この方法もアスベストの定量分析に難がある。 上記の通り、アスベストの分析方法として、JIS法の課題を踏まえ、簡便かつ迅速にアスベストの判定、含有量の測定が可能な方法が提案されているけれども、これら分析方法も課題を有している。特にアスベストの定量分析において、微量の含有量を迅速かつ正確に測定できる分析方法の開発は非常に遅れている。 本発明の目的は、石膏ボード中に含まれるアスベスト含有量を精度良く、安価にまた短時間に測定可能なアスベスト分析方法及び分析試料作製方法を提供することである。 JIS法によるアスベスト含有の判定は、X線回折と位相差・分散染色法を併用する方法であり、試料は対象となる建材等を粉砕したものをそのまま用いる。図3にクリソタイル標準品、廃石膏ボード粉砕物に0.1%の割合でクリソタイル標準品を混合した試料、廃石膏ボード粉砕物のX線回折チャートを示す。図3からも分かるように、廃石膏ボード粉砕物にクリソタイル標準品を混合した試料では,石膏ボードに由来する回折線が強く確認され、クリソタイル特有の回折線を確認することができなかった。このような状況の試料からX線回折を用いて微量のアスベストを検出するためには、測定の妨害となるアスベスト以外の粒子を除去するとともに、アスベストの絶対量を増やすための濃縮方法の検討が必要であると考え、測定の妨害となる石膏の粒子除去と同時に試料の濃縮を行うことが可能な方法を見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、次の通りである。 請求項1に記載の本発明は、石膏ボード中のアスベストを分析する方法であって、分析対象試料である石膏ボードに水及び硫酸カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成可能で、かつ水に溶解可能な又は強酸に溶解可能な硫酸塩を生成可能な炭酸塩を加え、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムと炭酸塩とを反応させ、硫酸カルシウムを炭酸カルシウムにする第一ステップと、前記第一ステップで得られる懸濁溶液に、水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウムと反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸、又は水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウム及び第一ステップで生成した硫酸塩と反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸を加え、炭酸カルシウムを溶解させる第二ステップと、前記第二ステップで得られる水溶液をろ過し固形分を分離する第三ステップと、前記第三ステップで得られる固形分を乾燥し分析試料を得る第四ステップと、前記第四ステップで得られる分析試料をX線回折法で分析しアスベスト含有量を測定する第五ステップと、を含むことを特徴とする石膏ボード中のアスベスト分析方法である。 請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の石膏ボード中のアスベスト分析方法において、前記炭酸塩が炭酸ナトリウムであり、前記強酸がギ酸であることを特徴とする。 請求項3に記載の本発明は、石膏ボード中のアスベストを分析するための分析試料作製方法であって、分析対象試料である石膏ボードに水及び硫酸カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成可能で、かつ水に溶解可能な又は強酸に溶解可能な硫酸塩を生成可能な炭酸塩を加え、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムと炭酸塩とを反応させ、硫酸カルシウムを炭酸カルシウムにする第一ステップと、前記第一ステップで得られる懸濁溶液に、水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウムと反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸、又は水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウム及び第一ステップで生成した硫酸塩と反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸を加え、炭酸カルシウムを溶解させる第二ステップと、前記第二ステップで得られる水溶液をろ過し固形分を分離する第三ステップと、前記第三ステップで得られる固形分を乾燥し分析試料を得る第四ステップと、を含むことを特徴とする分析試料作製方法である。 本発明に係る石膏ボード中のアスベスト分析方法は、簡易な化学的前処理の導入で妨害となる石膏粒子を除去し、アスベスト粒子を濃縮した状態で測定するためアスベスト含有量を精度良く、安価にまた短時間に測定することができる。また本発明に係る分析試料作製方法を用いることにより、石膏粒子を除去しアスベスト粒子を濃縮した分析用試料を安価にまた短時間に得ることができる。 試料を濃縮する最も効率的な方法は、処理する試料量を増やすことであるが、石膏ボードの主成分である石膏(硫酸カルシウム:CaSO4)は難溶性の塩であり、また酸を加えても溶けにくいことから大量の試料を処理することは難しい。そこで本発明に係るアスベスト分析方法においては、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムを炭酸カルシウムにした後、この炭酸カルシウムを強酸と反応させることで硫酸カルシウムを除去し、試料の濃縮を行い、その後この試料をX線回折法で分析することとした。以下、具体的な手順を示す。 図1は、本発明の実施の一形態としてのアスベスト分析方法及び分析試料作製方法の手順を示すフローチャートである。 第一ステップとして分析対象試料である石膏ボードに水及び炭酸塩を加え、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムと炭酸塩とを反応させ、硫酸カルシウムを炭酸カルシウムにする。ここで使用可能な炭酸塩は、硫酸カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成可能で、生成する硫酸塩が水に溶解するもの又は生成する硫酸塩が強酸に溶解するものであればよく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又はこれらの混合物などが例示される。硫酸カルシウムと炭酸塩とを反応させる際に、石膏ボードを粉砕しかつ石膏ボードと炭酸塩と水とを撹拌混合することが反応促進の点から好ましい。硫酸カルシウムと炭酸塩とが反応して生成する炭酸カルシウムも難溶性の塩であるため、得られる溶液は懸濁溶液である。 第二ステップとして、第一ステップで得られる懸濁溶液に強酸を加え、炭酸カルシウムを溶解させる。炭酸カルシウムは、強酸で容易に溶解させることができる。ここで使用可能な強酸は、懸濁溶液に含まれる他の物質と反応として水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウムと反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸、又は懸濁溶液に含まれる他の物質と反応として水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウム及び第一ステップで生成した硫酸塩と反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸であればよく、ギ酸、塩酸、硝酸、又はこれらの混合物などが例示される。第二ステップにおいても、炭酸カルシウムと強酸との反応を促進させるため、強酸を加えた懸濁溶液を撹拌混合することが好ましい。 第三ステップとして、第二ステップで得られる水溶液をろ過し固形分を分離する。ここでろ材として、JIS法の二次分析試料の作製方法で使用されるふっ素樹脂バインダグラスファイバーフィルタを使用することができる。ろ過方法もJIS法と同様に吸引ろ過とすることができる。 第四ステップとして、第三ステップで得られる固形分を乾燥し分析用試料を得る。乾燥は、一般的な水分除去を目的とした乾燥と同じ要領で行えばよい。 以上、第一ステップから第四ステップにより、分析試料を得ることができる。このようにして得られる分析試料には、測定の妨害となる石膏が除去され、かつアスベストが濃縮されているため、次ステップであるX線回折法を用いたアスベスト含有量の測定において、微量のアスベストも検出することができる。 第五ステップでは、第四ステップで得られる分析試料をX線回折装置で分析しアスベスト含有量を測定する。ここでは、JIS法に規定されている基底標準吸収補正法によるX線回折定量分析方法に準拠して分析を行えばよい。 本発明に係るアスベスト分析方法及び分析試料作製方法を用いて、測定の妨害となる粒子を除去すると同時に、処理する試料量を増やしてろ材上のアスベストの量そのものを増やすことにより、微量のアスベストを効率よく検出することができる。後述の実施例に示すように、本方法によりアスベスト含有量0.1%のレベルまでは検出が可能であった。 試料を500mg、コニカルビーカーにとり、無じん水60mLを加えて超音波洗浄器を用いて分散させた。次にこの溶液中に炭酸ナトリウム1.0gを加え,さらに超音波洗浄器を用いて分散させた。このとき見た目にはほとんど色の変化は無く、白色に懸濁した状態の溶液が得られた。次にこの懸濁溶液に20%ギ酸水溶液を20mL加えて懸濁物を溶解させた。しばらく放置して完全に反応させたのち、再び超音波洗浄器を用いて分散させた。このようにして調製した溶液はほぼ透明になっていた。次にこの溶液を25mmφのふっ素バインダグラスファイバーフィルタを用いてろ過した後、105℃で乾燥させX線回折測定用試料を得た。このX線回折測定用試料をX線回折装置で分析しアスベスト含有量を測定した。試料には、廃石膏ボード粉砕物に0.1%の割合でクリソタイル標準品を混合したものと、硫酸カルシウム・2水和物に0.1%の割合でクリソタイル標準品を混合したものを用いた。 得られたX線回折チャートを図2に示した。図2に示すように廃石膏ボード粉砕物に0.1%の割合でクリソタイル標準品を混合した試料においても、クリソタイル特有の回折線が確認され、アスベストの存在を知ることができた。本発明の実施の一形態としてのアスベスト分析方法及び分析試料作製方法の手順を示すフローチャートである。本発明の実施例のX線回折チャートである。クリソタイル標準品、廃石膏ボード粉砕物に0.1%の割合でクリソタイル標準品を混合した試料、廃石膏ボード粉砕物のX線回折チャートである。 石膏ボード中のアスベストを分析する方法であって、 分析対象試料である石膏ボードに水及び硫酸カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成可能で、かつ水に溶解可能な又は強酸に溶解可能な硫酸塩を生成可能な炭酸塩を加え、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムと炭酸塩とを反応させ、硫酸カルシウムを炭酸カルシウムにする第一ステップと、 前記第一ステップで得られる懸濁溶液に、水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウムと反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸、又は水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウム及び第一ステップで生成した硫酸塩と反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸を加え、炭酸カルシウムを溶解させる第二ステップと、 前記第二ステップで得られる水溶液をろ過し固形分を分離する第三ステップと、 前記第三ステップで得られる固形分を乾燥し分析試料を得る第四ステップと、 前記第四ステップで得られる分析試料をX線回折法で分析しアスベスト含有量を測定する第五ステップと、を含むことを特徴とする石膏ボード中のアスベスト分析方法。 前記炭酸塩が炭酸ナトリウムであり、前記強酸がギ酸であることを特徴とする請求項1に記載の石膏ボード中のアスベスト分析方法。 石膏ボード中のアスベストを分析するための分析試料作製方法であって、 分析対象試料である石膏ボードに水及び硫酸カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成可能で、かつ水に溶解可能な又は強酸に溶解可能な硫酸塩を生成可能な炭酸塩を加え、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムと炭酸塩とを反応させ、硫酸カルシウムを炭酸カルシウムにする第一ステップと、 前記第一ステップで得られる懸濁溶液に、水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウムと反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸、又は水に不溶な塩を新たに生成させることなく、炭酸カルシウム及び第一ステップで生成した硫酸塩と反応して水に溶解可能な反応生成物を生成可能な強酸を加え、炭酸カルシウムを溶解させる第二ステップと、 前記第二ステップで得られる水溶液をろ過し固形分を分離する第三ステップと、 前記第三ステップで得られる固形分を乾燥し分析試料を得る第四ステップと、を含むことを特徴とする分析試料作製方法。


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