生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_有胞子菌からなる静菌組成物及び悪臭防止生菌剤
出願番号:2008292775
年次:2010
IPC分類:A01N 63/02,A61L 9/01,A01P 3/00,A01N 25/08,A01N 25/04,C12N 1/20,C12N 1/16


特許情報キャッシュ

立花 美枝子 橋本 英夫 JP 2010100597 公開特許公報(A) 20100506 2008292775 20081021 有胞子菌からなる静菌組成物及び悪臭防止生菌剤 日之出産業株式会社 599072297 橋本 英夫 508174344 立花 美枝子 橋本 英夫 A01N 63/02 20060101AFI20100409BHJP A61L 9/01 20060101ALI20100409BHJP A01P 3/00 20060101ALI20100409BHJP A01N 25/08 20060101ALI20100409BHJP A01N 25/04 20060101ALI20100409BHJP C12N 1/20 20060101ALN20100409BHJP C12N 1/16 20060101ALN20100409BHJP JPA01N63/02 EA61L9/01 PA01P3/00A01N25/08A01N25/04 102C12N1/20 EC12N1/16 G 6 書面 11 4B065 4C080 4H011 4B065AA01 4B065AA15 4B065AA30 4B065AA72 4B065AC13 4B065AC14 4B065AC20 4B065BD33 4B065BD35 4B065BD50 4B065CA05 4B065CA10 4B065CA54 4C080AA03 4C080BB06 4C080CC01 4C080HH05 4C080JJ01 4C080JJ04 4C080LL03 4C080LL07 4C080MM33 4C080NN15 4C080NN18 4C080NN23 4C080QQ03 4H011AA02 4H011BA01 4H011BB21 4H011BC08 4H011BC19 4H011DA02 4H011DA15 4H011DD07 4H011DG03 4H011DH10 本発明は、菌叢バランスを制御する静菌組成物に関し、また、生ゴミ等から生ずる腐敗菌からの悪臭の発生を安全かつ効果的に防止する悪臭防止生菌剤に関する。 近年、人と人や愛玩動物との衛生感覚が高まり、体臭や口臭、獣臭に嫌悪感を示す人が多くなってきている。また、ゴミの分別収集が行われ、家庭や事業所からの生ゴミの収集日も一週間に2〜3回となり、2〜4日の保管が日常となっている。このため、食物残渣を主とした生ゴミから発生する腐敗による悪臭は家庭内での生活環境を悪化し、事業所等では近隣への環境公害となっている。また、悪臭を発する菌は、近隣へ衛生問題を含めた多くの問題を生じさせている。 人や動物や生ゴミには多くの菌類が生育している。人では脇の下や鼻腔、口腔内に、動物では体全体に多くの菌が存在し、その菌叢バランスが崩れるとそこに存在していた種々の菌が蛋白質や脂肪を強く分解して発生する臭気と菌類が発する臭気で腐敗臭が発生し、化膿や腋臭、口臭、獣臭として、人は不快に感じる。 常在する菌類が偏って増殖したり、異常に増殖することで悪臭が生じることが知られている。従って、多種多様の菌類を制御する物質や技術が求められている。従来、生ごみの悪臭に対応するには防臭と消臭があるが、防臭とは発生しようとする腐敗臭を抑制防止することであり、消臭とは存在した腐敗臭を除去することである。これらに関して、種々の方法が提案されている。 この腐敗悪臭の発生を消臭・防止するための方法としては、生ゴミの悪臭源の消臭や腐敗臭の発生を抑制するための化学物質と微生物培養液遠心分離上清中の酵素の組み合わせにて行うものがある(特許文献1)。この消臭剤として使用されているアルデヒド化合物は殺菌剤でもあり、かつ上澄みに残った菌は家庭内で使用するには安全面で大きな問題を有している。 固体有機酸とカビと乳酸菌を主体とする生ゴミ防臭剤が提案されている(特許文献2)。ここに使用されている菌類はカビと乳酸菌で、カビはアフラトキシンを生成するものがあり、人にとって有害な菌も多く含まれ家庭内での使用は危険である。また、粉末にした乳酸菌は保存時に死滅率が高く、加えて有機酸との混合は乳酸菌の死滅率を高めて劣化し、一般に使用するには問題が多い。 乳酸菌の菌体及び酵素を含む、生ごみ用防臭の菌体組成物が提案されている(特許文献3)。ここに使用されている乳酸菌種は、液状においても乾燥状態であっても常温で保存すると当初の菌数を保つことは困難で、防臭効果が短期間に劣化してしまう。また、油脂分解酵素(リパーゼ)は、油脂を分解すると生じる短鎖脂肪酸が悪臭を発すること等が知られており、一般に使用するには問題が多い。特開平6−154547特開平8−215659特開平9−253178 従来、このような人や動物、生ゴミから発生する悪臭を家庭内あるいは事業所などで回避するために、化学薬品の芳香成分や殺菌成分、酵素やカビなどの生菌成分を使用した各種の消臭剤や防臭剤が提供されているが、効果や安定性、安全面で充分な提案がなされているとは言い難い。このようなことから、人や動物に直接使用したり家庭内の台所で使用しても安全で、事業所等で使用しても衛生面で環境問題にならず、悪臭を防止し、その能力を持続する生菌からなる組成物や悪臭防止剤が求められている。 本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、人や動物の悪臭及び家庭や事業所等の生ゴミの悪臭を発生する菌類を静菌することで悪臭を防止し、安全性が高く効果が継続する静菌組成物や悪臭防臭生菌剤を提供する。 請求項1の静菌組成物は、食品から分離した酸又はアルコールを生成する一種以上の有胞子菌を主成分とする。 請求項2の静菌組成物は請求項1の有胞子菌が、有胞子乳酸菌、アルコール生成有胞子酵母よりなる群から選ばれる少なくとも1種よりなる。 請求項3の静菌組成物は、請求項1又は2に記載の静菌組成物にアミノ酸、糖質、リボシドの少なくとも一種以上を加えたものよりなる。 請求項4の悪臭防止生菌剤は、請求項1〜3記載の生菌組成物を粉末化、又は容液に溶解することを特徴とする。 請求項5の悪臭防止生菌剤は、請求項4の溶液が水及び/又は非水溶液であり、前記非水溶液がグリセリン、糖アルコール類から選ばれる少なくても1種以上よりなることを特徴とする。 請求項6の静菌組成物及び悪臭防止生菌剤は使用する有胞子菌の生菌数が103cfu/g〜1014cfu/g含むことを特徴とする。 以下に本発明の詳細を説明する。 本発明の静菌組成物とは、食品から分離した酸又はアルコールを生成する有胞子菌からなることを特徴とするが、本発明の食品から分離した菌とは直接食品から分離した菌をいうが、スターターも元をただせば食品から分離したものであり、また分離源が食品でなくとも同属同菌種の場合も食品から分離した菌とみなすものである。 この発明における菌とは細菌、真菌を含めての総称であり、酵母とは真菌の中で単一細胞の形体のことをいう。人にとって危険のない食品から分離した菌は、使用するに当り、人に安全で環境に悪影響を与えないことが大きな特徴である。 菌からの酸生成は酢酸、乳酸、プロピオン酸等が知られ、アルコールの生成は飲食に適するエチルアルコールである。また、本発明の有胞子菌とは栄養細胞には胞子はないが胞子を形成する能力を有し、胞子を形成している菌若しくは胞子をいう。 一般的な醗酵食品から分離される酸を生成する菌は乳酸菌に代表され、乳酸菌は市販のヨーグルトやチーズなどの醗酵乳製品や漬物、味噌、醤油から分離される。菌種的には乳酸桿菌であるラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)等や乳酸球菌であるストレプトコックス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコックス・ラクチス(Lactococcus lactis)、エンテロコックス・フェシウム(Enterococcus faecium)等である。また、これ以外にも酸を生成する菌としては、酢酸菌、プロピオン酸菌等があるが、これらの菌は乳酸菌を含め加熱に弱く室温での保存性が悪い。 これに反して、本発明の有胞子乳酸菌にはバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、スポロラクトバチルス・イヌリナス(Sporolactobacillus inulinus)が存在する。栄養細胞の時には一般の乳酸菌と同様に乾燥や熱に弱いが、胞子を形成すると胞子はこれに反して乾燥や熱に強く、乾燥状態では極めて安定で1年以上に渡り一定の菌数を保持する特徴を有する。 食品から分離されたことが明確であるバチルス・コアギュランスは麦芽、パン種、ホワイトブレッドの種菌や焼成前の生地や漬物から分離することができる。また、飲料等のスターターや菓子などに加え、プロバイオティクス菌として利用されている。バチルス・コアギュランスは一般的な乳酸菌と近縁でありL型乳酸を生成するが、胞子を形成することに大きな差異がある。 本発明のアルコールを生成する有胞子酵母(アルコール生成有胞子酵母と称する)とはアルコールを生成するワイン、地ビール、清酒やパン生地から分離されるが、菌種的には同一でサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。栄養が不十分になるような条件等で胞子を形成し、胞子は乾燥に耐性が強いものとなる。 これらの有胞子菌は乳酸を生成する有胞子乳酸菌やアルコールを生成するアルコール生成有胞子酵母よりなるものを特徴とするが、これらの菌は栄養細胞時には一般の乳酸菌や酵母と同様に保存性に欠けるが、胞子を形成した時点で保存性は比較にならない大きなものとなる。これらは実施例に示したが、各菌を常温にて長期に渡り保存すると、活性を継続するには胞子を形成する菌が最適であった。 即ち、本発明による静菌組成物とは酸又はアルコールを生成する有胞子菌を主成分とするものであるが、これらの菌が生成した成分により、他の菌類の生育を抑制する静菌作用を有するものから成るものをいう。例えば、有胞子菌が生成した乳酸又はアルコールによって、口臭、体臭、動物の獣臭、生ゴミ等での悪臭を発生する働きを持つ菌数を減少させ、増殖を静止させる静菌作用が示された。 本発明の静菌組成物に加えるアミノ酸、糖質、リボシドとは、胞子状の菌を発芽させる発芽誘起物質である。一般的には窒素源、炭素源やリンの欠乏等から栄養細胞は胞子形成を行うことから、環境の栄養リッチを感知して発芽するといわれている。発芽誘起物質で最も好ましいものはアミノ酸でありL−アラニン、DL−ヒスチジン、L−トリプトファン、L−プロリン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−リジンである。L−アラニンにおいては後述する実施例にて本発明に関する菌に適することを具体的に説明した。 発芽誘起物質としての糖質に関しては、本発明の微生物が生育できる糖が好ましく、本発明の菌種に共通する糖質はグルコース、フラクトース、ガラクトース、フィラノース、スクロースが好ましい。また、リボシドに関しては、アデノシン又はイノシンでよい。栄養細胞のみが乳酸やアルコールを生成するのであり、これらの発芽誘起物質を加えることは胞子を速やかに栄養細胞に生育させる重要な物質であった。 本発明の悪臭防止生菌剤とは、前記載の生菌組成物を粉末化、又は容液に溶解することを特徴とするが、粉末化や溶液化で家庭や事業所で使い易いものにすることを目的としている。粉末化とは有胞子乳酸菌又は/及びアルコール生成有胞子酵母を既知の胞子形成培地にて培養させたのち乾燥させ粉末化し、他の添加する成分も粉末化して混合することで、常温で非常に長期間安定した効果を有する粉末悪臭防止生菌剤となった。 粉末悪臭防止生菌剤とは、前記の静菌組成物を利用し酸やアルコールを生産する菌を家庭や事業系生ゴミに添加すれば、この菌の生育によりpHが下がり、またはアルコール成分を生成することで腐敗菌の活性は弱まり、生体や環境で悪臭を発する菌の生育を強く抑制するものであった。 液状の悪臭防止生菌剤は静菌組成物を溶解するが、溶液が水及び/又は非水溶液であり、栄養素を含まない水、又は栄養素や発芽誘起物質を含む水の場合には胞子が生育しないような物質を水に溶解させればよい。これらは、アルコール類、食塩などの塩類、酢酸等の有機酸等で良い。 前記非水溶液がグリセリン、糖アルコール類から選ばれる少なくても1種以上よりなることを特徴とするが、非水性溶液に静菌組成物を溶解することで、非常に長期間安定した液体悪臭防止生菌剤となる。この非水溶液とは、後記した実施例に示したようにグリセリン、糖アルコール類から選ばれる非水溶液1種または2種の液に、これ以外の非水溶液や水を混合することができた。 糖アルコールとは還元基を有する糖類を還元してできるもので自然界にも存在し、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、その他オリゴ糖などの糖アルコールがあるが、安全性を考慮して食品添加物として許可されているものであればどれも使用することができる。 本発明の静菌組成物及び悪臭防止生菌剤は有胞子菌の生菌数が103cfu/g〜1014個cfu/g含むことを特徴とするが、静菌効果は対象物の存在する菌数や菌種で異なり、強い静菌作用が必要であれば添加量を多くするが、防臭の実施例に記載したように、対象物100gにつき104cfu/g以上を含むことが好ましく、より好ましくは105cfu/g〜1012cfu/gであった。 人や動物の体臭や口臭の防止には、皮膚に塗布したり直接口内に入れたりすることになり、また家庭の台所や事業所等の生ゴミの悪臭防止や水周の配水管での腐敗臭の防止に、生活環境中で噴霧したり振りかけるといった操作をするので、防臭剤や消臭剤はより安全なものが求められている。 本発明の乳酸又はアルコールを生産する有胞子菌の少なくても1種を使用した静菌組成物は、食品から分離された菌のため、人や動物の体臭や口臭の防止として安全に直接塗布したり直接口に入れることが可能で、かつ家庭内でも室外でも、環境に悪影響を生じさせずに利用することができる。また、長期間に渡り菌数保持することで安定した静菌作用を有し、また発芽誘起物質を加えることで、胞子から栄養細胞化を促進させて、乳酸又は/及びエチルアルコールで悪臭を発する菌の増殖を迅速に抑制し強い静菌効果を示す。 本発明の悪臭防止生菌剤は前記した静菌組成物を使用して粉末状や液体に溶解・分散させて、腐敗を発することが予見されるものに直接添加し、静菌作用により悪臭を防止させる。家庭や事業系の生ゴミや排水溝に直接振りかけて、家庭内でも室外でも、環境に悪影響を生じさせずに、安全に長期間安定して腐敗臭の防止ができる。 本発明の有胞子乳酸菌はバチラス・コアギュランスであり、分離は前記した食品でよいが、保存菌株として株式会社ワイ・エム・ビー・インターナショナル、独立行政法人理化学研究所で入手できる。また、商品名ラクリス−Sとして三菱化学フーズ株式会社より購入することができる。 本発明のアルコール生成有胞子酵母のサッカロミセス・セルビシエの分離は前記した食品で良いがビール、ワイン、清酒やパンに使用するものは種々の種酵母製造メーカーにて販売されているが、例えばパン酵母はS.I.Lesaffre(フランス)社製、スーパーカメリヤドライイースト(日清フーズ株式会社)、また独立行政法人理化学研究所から入手することができる。 静菌組成物及び悪臭防止生菌剤は、食品添加物等のように安全であれば必要に応じて添加でき、マスキングのために乾燥したハーブ粉末や食品に使用される香料を添加してもよく、乳化剤や必要であれば乾燥剤を加えてもよい。菌数を調整するためのセルロース粉末や鉱物粉末を加えることもできる。粉状の場合は顆粒剤、散剤、錠剤、ペレット状に加工できるがこれらに限定されない。 また、本発明の菌は生育には酸性側のpH好むので、有機酸を加えることは腐敗菌を抑制させ、悪臭を防止する本発明の菌類を素早く生育させるに有効である。pH整剤として炭酸カルシウム等の塩類を加えてもよい。 液体悪臭防止生菌剤はチューブ入りのゾル状歯磨き剤などもこの範疇に属し、食品添加物や医薬品等を必要に応じ使用できる。 容器はどの様なものでもよいが、粉末状の場合は蓋ができて水分の影響を受けないものがよい。液体を詰める容器は定量注げるものやスプレー、水鉄砲状、ポンプ状タイプのもの等が使用できる。ゾル状のものはチューブ状や広口瓶等を使用できる。 以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。 実施例1醗酵食品であるヌカ漬けのヌカを1g採り、生理食塩水にて適宜希釈して、定法に従いBCP加プレートカウント寒天培地(栄研化学株式会社)にて混釈し、30〜40℃にて48〜72時間培養すると黄変したコロニーが発生した。また、サブロー寒天培地(栄研化学株式会社)にクロラムフェニコール400μg/ml加えた培地のプレートに、同様に適宜希釈した試験液0.1mlを塗布し25℃にて5〜7日培養すると真菌のコロニーが発生した。 分離した菌類は数多くあったが目的菌種に絞り、形状の変わったコロニーを釣菌し純粋培養するとともに、顕微鏡にて形や大きさ、胞子の有無、グラム染色、カタラ−ゼ活性、耐熱性等の基本検査を行い、乳酸桿菌、乳酸球菌、有胞子乳酸菌及び酵母に分けた。 乳酸菌、耐熱性菌、酵母用の同定検査のアピマニュアルキット(日本ビオメリュー株式会社)等を使用して属種を同定した。この結果からラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum )、エンテロコックス・フェシウム(Enterococcusu faecium)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を分離同定した。 実施例2実施例1で分離同定した菌を使用した。ラクトバチルス・プランタラム、エンテロコックス・フェシウムは脱脂乳にて35℃で24時間培養した後、定法に従い凍結乾燥してサンプルを作成した。バチルス・コアギュランスは胞子の形成型を使用するために、普通ブイヨン培地(栄研化学株式会社)にて45℃にて3日間培養し遠心分離後、殺菌水で遠心洗浄した。この菌を先の培地の10倍量の硫酸マンガン1ppm添加した普通ブイヨン培地にて培養し胞子の形成を鏡検して、80℃30分加熱して栄養細胞を殺菌し、これを低温乾燥させた。サッカロミセス・セルビシエはサブロー培地を坂口フラスコにて30℃で3日攪拌培養し、同様に遠心分離後、無菌水で遠心洗浄した。この菌を先の培地の10倍量の胞子形成培地(KAc培地)で30℃で培養し胞子の形成を鏡検して、これを低温乾燥させた。 これらの菌を30℃に保存した結果を表1に示したが、1グラム当たりのラクトバチルス・プランタラム、エンテロコックス・フェシウムは1週間後に1オーダー低下し、2ヶ月後には10万分の1になり生存の劣化が激しい。これに反し、有胞子菌のバチルス・コアギュランスは全く変動がなく、サッカロミセス・セルビシエは2桁の菌数減少があったが、有胞子菌は保存性が良好であることが判明した。 実施例3豚肉15g、生鯵15g、うどん20g、キャベツ15gおよび玉ねぎ15gを裁断し、水20gを混合して100gの模擬生ゴミを作成した。そして、模擬生ゴミを縦25cm×横15cm容のポリエチレンの袋に入れ、室温(30〜40℃)下に置き、3日経過後に腐敗臭を確認してドリップを10万倍に希釈し、この1mlを滅菌した200mlの三角フラスコにとり、100mlの滅菌した普通ブイヨン培地(栄研化学株式会社)を加えた。これを試験菌に見合う個数調整した。 このドリップが入った培地に、バチルス・コアギュランスJCM2258を普通ブイヨン培地にて培養した培養液(6.2×108cfu/ml)0.01ml、0.1ml、1.0mlを採りよく攪拌した。同様にサブロー培地にてサッカロミセス・セルビシアJCM7255を培養した培養液(2.2×108cfu/ml)0.1ml、1.0mlを採り、加えてよく攪拌した。これらの試験液を30℃〜35℃で3日間保存培養した。 バチルス・コアギュランスの場合は各試験液から1ml採り、9mlの滅菌生理食塩水に入れたものを2本作製した。1本は80℃30分加熱してから、他の1本はそのままで適宜希釈して、標準寒天培地(栄研化学株式会社)で、混釈培養して菌数測定した。サッカロミセス・セルビシエの場合は殺菌生理食塩水で適宜希釈して、SPC培地で総菌数を測定し、サブロー培地に実施例1と同様クロラムフェニコール加えたプレートに塗布して生じた酵母のコロ−ニーを差し引いて腐敗菌とした。比較液は標準寒天培地にて、定法にて適宜希釈したものを標準寒天培地にて測定した。 結果を表2に示したが、比較例としての腐敗菌のみを普通ブイヨン培地で保存培養したものは5.8×108cfu/mlと腐敗菌が増殖し腐敗臭が強く感じられた。しかし、バチルス・コアギュランスJCM2258、又はサッカロミセス・セルビシエJCM7255を加えたものは、3.5×105cfu/ml以上に腐敗菌が増殖せず、いずれの添加量も静菌作用を示し、腐敗菌を抑えて腐敗臭を防止することができた。これらの菌が静菌剤として有効であることが判明した。 実施例4前記した100gの模擬生ゴミを菌体組成物試料の個数分調整し、これを縦25cm×横15cm容のポリエチレンの袋にいれた。表3に記載の試料記号に対応する組成を有する菌体組成試料をポリエチレン中の模擬生ごみに対して散布した後、室温(25〜35℃)下に置き腐敗臭発生の試験をおこなった。悪臭における人の臭覚は分析機器よりはるかに感度が高いので、判定は官能検査によった。 これらの判定は、30〜60歳代の男(3名)女(3名)の6名で判定した。判定基準は4段階とした。1点;全く腐敗臭がしない。2点;臭いに変化があるが腐敗臭ではない。3点;腐敗臭がある。4点;強い腐敗臭がある。官能検査員6名で点数づけを行い、合計点を6で除し小数点以下は四捨五入して1〜4で評価した。 効果のある最低菌数の確認として、ラクリス−S原抹(5.2×109cfu/g)1gを採り、ブドウ糖49gとスターチ50gの混合粉末に加え、よく攪拌し均一にしてラクリス−S試験粉末(5.1×107cfu/g)とした。試料番号(a)は、ラクリス−S試験粉末を加えない、比較例とした。試料番号(b)は、ラクリス−S試験粉末0.01gを模擬生ゴミに加えた。試料番号(c)は、ラクリス−S試験粉末0.1gを模擬生ゴミに加えた。試料番号(d)は、ラクリス−S試験粉末1.0gを模擬生ゴミに加えた。試料番号(e)は、ラクリス−S試験粉末10gを模擬生ゴミに加えた。 試料番号(f)は、ラクリス−S試験粉末1gにL−アラニン1モル液1mlとブドウ糖5gを模擬生ゴミに加えた。試料番号(g)は、ラクリス−S試験粉末1gとスーパーカメリヤドライイースト(2.4×107cfu/g)1gを模擬生ゴミに加えた。試料番号(h)は、スーパーカメリヤドライイースト3gを模擬生ゴミに加えた。 この結果は表3に示したが、(a)〜(e)の結果から模擬生ゴミ100gに対して105以上のラクリス−Sを加えれば腐敗臭が抑えられるが、より好ましくは106以上のラクリス−Sを加えればよい。(f)では単に同数のラクリス−S試験粉末の同菌数を与えたものより、発芽誘起物質のL−アラニン及びグルコースを加えることで生ゴミの腐敗臭が強く防止された。(g)では、単にラクリス−S試験粉末の同菌数を与えたものより、アルコール生成酵母のサッカロミセス・セルビシエを加えることで生ゴミの腐敗臭が強く防止された。また、(h)では、サッカロミセス・セルビシエを加えることで生ゴミの腐敗臭が防止された。 試験例5実施例2のバチルス・コアギュランスJCM2258(3.3×1011cfu/g)を各試験液10mlに0.01g加えて、非水溶液中の生存性について検討した。試験液はグリセリン、ソルビトール、殺菌水の各100部液、グリセリン25部+水75部液、グリセリン30部+ソルビトール20部+水50部液での保存試験を行った。 各液の30℃での保存性の結果を表4に示したが、2ヶ月後においても水及び純非水溶液、非水溶液と水の混合液で菌数の低下はほとんど見られず、液状防臭剤としての高い保存性が示され、効果の安定性が示された。 食品から分離した酸又はアルコールを生成する一種以上の有胞子菌を主成分とする静菌組成物 請求項1の有胞子菌が、有胞子乳酸菌、アルコール生成有胞子酵母よりなる群から選ばれる少なくとも1種よりなる請求項1記載の静菌組成物 アミノ酸、糖質、リボシドの少なくとも一種以上を加えた請求項1又は2に記載の静菌組成物 請求項1〜3記載の生菌組成物を粉末化、又は容液に溶解することを特徴とする悪臭防止生菌剤 請求項4の溶液が水及び/又は非水溶液であり、前記非水溶液がグリセリン、糖アルコール類から選ばれる少なくても1種以上よりなることを特徴とする請求項4記載の悪臭防止生菌剤 有胞子菌の生菌数が103cfu/g〜1014cfu/g含むことを特徴とする請求項1〜3記載の静菌組成物又は請求項4、5記載の悪臭防止生菌剤 【課題】人や動物の悪臭及び家庭や事業所等の生ゴミの悪臭を発生する菌類を静菌することで悪臭を防止し、安全性が高く効果が継続する静菌組成物や悪臭防止生菌剤を提供する。【解決手段】食品から分離した酸又はアルコールを生成する一種以上の有胞子菌を主成分とする静菌組成物及び悪臭防臭生菌剤。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る