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タイトル:特許公報(B2)_遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液
出願番号:2008283060
年次:2014
IPC分類:C07F 15/00,B01J 31/24,C07C 67/05,C07C 69/16


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宇都宮 賢 大久保 三輪子 JP 5604783 特許公報(B2) 20140905 2008283060 20081104 遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液 三菱化学株式会社 000005968 宇都宮 賢 大久保 三輪子 JP 2007288508 20071106 20141015 C07F 15/00 20060101AFI20140925BHJP B01J 31/24 20060101ALI20140925BHJP C07C 67/05 20060101ALI20140925BHJP C07C 69/16 20060101ALI20140925BHJP JPC07F15/00 CC07F15/00 FB01J31/24 ZC07C67/05C07C69/16 C07F B01J CAplus/REGISTRY(STN) 特開2004−202487(JP,A) 特表2001−503757(JP,A) 特開2007−039490(JP,A) 6 2009132697 20090618 33 20110804 新留 素子 本発明は、遷移金属と有機配位子を有する遷移金属錯体を含有する溶液において、該遷移金属が析出するのを抑制する方法に関する。詳しくは、本発明は、遷移金属−有機リン含有リガンド錯体触媒を用いた水素化反応、異性化反応等の反応後の溶液中において、該遷移金属錯体触媒からの遷移金属析出を抑制する方法に関する。 遷移金属とホスファイトリガンドなどの有機リン含有配位子とからなる錯体触媒は、多くの反応プロセスに使用されており、このような反応プロセスとしては、例えば、不飽和化合物の水素化反応、異性化反応、オレフィンのハイドロフォルミル化反応、オレフィンの二量化反応等が知られている。また、ハイドロフォルミル化反応の際、ロジウム−ホスファイトリガンド錯体触媒を構成するホスファイトリガンドが、副生する酸性物質により或いは加水分解等によって一部が分解されると、錯体が不安定となり反応溶液中に錯体触媒の金属が析出することから、副生する酸性化合物を除去することも知られている(特許文献1参照)。これらの反応に使用される錯体触媒における遷移金属、例えば、ロジウム(第8族)やパラジウム(第10族)等は反応後の反応溶液から分離され回収されている。しかし、実際の反応プロセスにおいて、反応工程内で錯体触媒から金属の析出が生ずると触媒金属の損失となるだけでなく、装置内の汚染の一因となり、例えば熱伝導度が低下するなど、円滑な操作上問題である。 金属錯体触媒からの金属の析出は、そのリガンドが反応時或いは目的生成物等の分離・回収時に酸化などにより一部が分解して錯体が不安定となることが析出の一つの要因であるので、錯体触媒におけるリガンドの分解等を阻止して、安定化を図り、プロセス工程内での金属が析出することを抑制し、金属錯体触媒含有液として反応系外に取り出すことが求められている。特表2000−501712 本発明は、有機リン配位子を含有する遷移金属錯体触媒を用いた反応後の反応液中における遷移金属の析出を抑制し、遷移金属錯体触媒はその含有液として反応系外に効率良く取り出す方法を提供するものである。 本発明者らは、各種反応に使用されているホスファイトリガンド等を含有する遷移金属錯体触媒を用いた反応液中において、遷移金属の析出を防止するために反応後の反応液中の該遷移金属錯体の状態について鋭意研究した結果、これらの遷移金属錯体触媒のホスファイトリガンド等の配位子が、反応中或いは分離・回収中に酸化等により一部が分解し、それによって錯体が不安定となり、錯体の金属が析出し易くなるのが一因であることを見出した。さらに、反応液における遷移金属錯体を酸化防止剤としてのホスファイトで接触処理することにより該遷移金属錯体を安定化し、遷移金属の析出を防止し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき達成されたのである。 すなわち、本発明の要旨は、以下の各項に存する。1: 下式(1)、(3)及びトリフェニルホスフィンから選ばれる少なくとも一種の3価の有機リン化合物からなる配位子を有する第8〜10族遷移金属から選ばれる遷移金属の遷移金属錯体を含有する溶液及び、下式(2)で表される芳香族ホスファイトが含まれることを特徴とする遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。2:第8〜10族遷移金属がパラジウム又は白金であることを特徴とする前記1項に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。3:上記遷移金属錯体が異性化反応、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、脱水素反応、オリゴメリゼーション、メタセシス、カップリング反応、或いはアリル化反応のうち、いずれか一種の反応に用いる触媒であることを特徴とする前記1又は2項に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。4:上記遷移金属錯体が異性化反応の触媒であることを特徴とする前記3項に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。5:上記遷移金属錯体を含有する溶液が、前記3又は4項に記載された何れかの反応後の溶液であることを特徴とする遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。6:上記遷移金属錯体が異性化反応の反応触媒であり、かつ、上記遷移金属錯体を含有する溶液が、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを主成分とする溶液であることを特徴とする前記1〜5項の何れか一項に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。 本発明の方法によれば、有機リン配位子を含有する遷移金属錯体触媒を用いた反応後の反応液中において、遷移金属の析出を抑制して錯体を安定化するので、反応系内での金属のロスを生ずることなく該遷移金属錯体触媒を、その含有液として反応系外に効率良く取り出すことができ、装置内の汚染、熱伝導度の低下等を抑えることができる。 以下、本発明をより詳細に説明する。 本発明における遷移金属錯体触媒は、3価の有機リン化合物からなる配位子及び第8〜10族遷移金属から選ばれる遷移金属を含有する遷移金属錯体からなり、該配位子はP−C結合、P−O結合或いはP−N結合を有するものである。この様な遷移金属錯体触媒は、例えば、アリル化合物誘導体の異性化、不飽和化合物の水素化、オレフィンのヒドロホルミル化、脱水素、オレフィンのオリゴメリゼーション、メタセシス、カップリング反応、ジエンのヒドロシアン化(ブタジエンのアジポニトリル化)等の多くの製造プロセスに使用される公知の遷移金属錯体触媒である。 本発明における遷移金属錯体触媒が含有する、3価の有機リン化合物からなる配位子は、P−C結合、P−O結合或いはP−N結合を有する化合物であり、ホスフィン、ホスファイト、及びホスホラアミダイトから選ばれる単座及び複座の配位子が含まれる。 ホスフィンとしては、トリアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、ジシクロアルキルアリールホスフィン、シクロアルキルジアリールホスフィン、トリアラルキルホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、及びトリアリールホスフィン等が挙げられ、例えば下記一般式(i)で示される。 (上記式(i)中、3個のR’はそれぞれ独立して同一でも異なっていてもよく、置換若しくは未置換のアルキル基またはアリール基である。) アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基等が挙げられ、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、これらの基が有し得る置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、シリル基、アミノ基、アシル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、スルホニル基、スルホン酸基、シアノ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。これらの中、フェニル基、ナフチル基などのアリール基が好ましい。 前記ホスフィンとして、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリス−p−トリルホスフィン、トリス−p−メトキシフェニルホスフィン、トリス−p−フルオロフェニルホスフィン、トリス−p−クロルフェニルホスフィン、トリス−ジメチルアミノフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、t−ブチルジフェニルホスフィン、n−ブチルジフェニルホスフィン、n−ヘキシルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等が挙げられる。 前記ホスファイトとしては、下記の式(1−1)及び(2−1)で表される単座及び2座の配位子が挙げられる。 前記ホスホラアミダイトとしては、下記の式(1−2)及び(2−2)〜(2−5)で表される単座及び2座の配位子が挙げられる。 上記式中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、及びY9は、それぞれ独立に鎖状若しくは環状アルキル基、アリール基又は複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、Y2とY3、Y4とY5、Y6とY7、Y8とY9はそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。nはメチレン鎖(−CH2−)の長さを示し、nは1〜10であり、好ましくは1〜5であり、特に好ましくは2〜4である。mはメチレン鎖の長さを示し、mは1〜5であり、好ましくは1〜3である。 R1及びR5は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の2級又は3級炭化水素基を表し、R2、R3、R6、R7、R9及びR10は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、R4及びR8は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。 上記鎖状若しくは環状のアルキル基及びアルコキシ基のアルキル骨格部分は、通常、炭素数1〜20であり、好ましくは1〜14である。その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等である。また、アルキル基が有し得る置換基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、アミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、ヒドロキシ基、及びハロゲン原子が挙げられる。 上記アリール基は、炭素数が通常6〜20であり、好ましくは6〜14である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、これらの基が有し得る置換基としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数6〜20のアルキルアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリーロキシ基、炭素数6〜20のアリールアルキル基、炭素数6〜20のアリールアルコキシ基、シアノ基、エステル基、ヒドロキシ基、および塩素、フッ素等のハロゲン原子が挙げられる。 Y1〜Y9が置換基を有していてもよいアリール基である場合、具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−ニトロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、及び下記の(C−1)〜(C−8)の基などが挙げられる。 上記式(1−1)〜(2−5)で表される配位子の具体例を以下に示す。 本発明における遷移金属錯体触媒における第8〜10族の遷移金属としては、好ましくはルテニウム、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金等であり、特に好ましくはパラジウムである。該遷移金属は化合物の形態で供給されるが、具体的な化合物としては、例えば酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハライド塩、有機塩、無機塩、アセチルアセトナト化合物、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等が挙げられる。 具体的なパラジウム化合物としては、パラジウム金属、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ジクロロシクロオクタジエンパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジベンジリアセトン)パラジウム、カリウムテトラクロロバラグト、ナトリウムテトラクロロバラグト、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、及びその他のカルボキシレート化合物、オレフィン含有化合物、有機ホスフィン含有化合物、アリルパラジウムクロリドニ量体等が挙げられる。特に、価格及び取り扱いのし易さなどから、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等が特に好適に用いられる。 本発明の遷移金属錯体における、上記配位子の添加量は、配位子中のリン原子のモル比が遷移金属錯体中の遷移金属の1モルに対して0.1〜1000が好ましく、より好ましくは1〜100であり、1〜10が特に好ましい。また、配位子として一種又は複数種の配位子が含まれていてもよい。遷移金属錯体の調製方法は、特に制限されず、例えば、該錯体を触媒とする反応時、遷移金属化合物と配位子化合物を所望の割合で溶媒中、加温することにより反応させて触媒含有液とすることが出来る。 本発明においては、上記3価の有機リン化合物からなる配位子と第8〜10族の遷移金属を含む遷移金属錯体を含有する溶液と芳香族ホスファイトとを接触させるが、芳香族ホスファイトは、配位子である3価の有機リン化合物とは異なるものである。 遷移金属錯体触媒の金属析出は、該金属錯体触媒のホスファイトリガンド配位子が、反応中或いは分離・回収中に酸化されて錯体が不安定となることが一因である。従って、接触させる芳香族ホスファイトは上記金属錯体触媒の有する3価の有機リン化合物からなる配位子の酸化を防止し、それ自体が酸化される成分として機能するものであればよく、下記式(I)で示される芳香族ホスファイトが挙げられる。 [上記式(I)中、3個のRはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、少なくとも1個のRはアリール基である。] 式(I)における炭化水素基は、アルキル基又はアリール基から選ばれる。アルキル基は、炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜14の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は環状のアルキル基であり、具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。また、アルキル基が有し得る置換基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、アミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、ヒドロキシ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。 アリール基は、炭素数が通常6〜20であり、好ましくは6〜14である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの基が有し得る置換基としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数6〜20のアルキルアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリーロキシ基、炭素数6〜20のアリールアルキル基、炭素数6〜20のアリールアルコキシ基、シアノ基、エステル基、ヒドロキシ基および、塩素、フッ素等のハロゲン原子が挙げられる。置換基として、好ましくは、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基であり、t−ブチル基が特に好ましい。 芳香族ホスファイトとしては、式(I)における少なくとも1個のアリール基が、そのオルト位(2位又は6位)に置換基を有することが好ましく、オルト位に有する置換基は3級または4級炭素原子によりアリール基に結合する置換基であることが好ましい。特に好適な芳香族ホスファイトは、式(I)中、3個のRは同一で、オルト位に3級または4級炭素原子により結合する置換基を有するフェニル基であるホスファイトであり、また、芳香族ホスファイトは、単座のホスファイトであることが好ましい。特に、オルト位にt−ブチル基を有するフェニル基の単座ホスファイトが好ましい。 芳香族ホスファイトとして具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス−o−トリルホスファイト、トリス−o−i−プロピルフェニルホスファイト、トリス−2−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−i−ブチルフェニルホスファイト、トリス−i−プロピルフェニルホスファイト、トリス−2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−2,5−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−2,3−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−2,4−ジ−i−プロピルフェニルホスファイト、トリス−2,5−ジ−i−プロピルフェニルホスファイト、トリス−2,6−ジ−i−プロピルフェニルホスファイト、トリス−2,3−ジ−i−プロピルフェニルホスファイト、プロピルジ(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、t−ブチルジ(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、n−ブチルジ(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、n−ヘキシルジフェニルホスファイト、t−ブチルジ(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、n−ブチル−ジ(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2,4−t−ブチルフェニル)シクロヘキシルホスファイト、トリス−2−t−ブチルシクロヘキシルホスファイト、ジ(2−t−ブチルシクロヘキシル)フェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中、トリス−2−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−i−ブチルフェニルホスファイト、トリス−i−プロピルフェニルホスファイト、トリス−2,4−ジ-t−ブチルフェニルホスファイト、トリス−2,4−ジt−ブチルフェニルホスファイト等が好ましく、特にトリス−2,4−ジt−ブチルフェニルホスファイトが好ましい。 本発明における3価の有機リン化合物からなる配位子と第8〜10族の遷移金属を含む遷移金属錯体を含有する溶液としては、具体的には該遷移金属触媒を用いた反応により得られる反応液である。該遷移金属錯体触媒を用いた反応としては、例えば、アリル化合物誘導体の異性化、不飽和化合物の水素化、オレフィンのヒドロホルミル化、脱水素、オレフィンのオリゴメリゼーション、メタセシス、カップリング反応、ジエンのヒドロシアン化(ブタジエンのアジポニトリル化)等が挙げられる。特に、本発明では、該遷移金属錯体を触媒とするアリル化合物誘導体の異性化反応後の反応液が好ましく、ブタジエンの酸化アセトキシ化反応で得られるアセトキシアリル化合物、即ち3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの1,4−ジアセトキシ−2−ブテンへの異性化反応の反応液が特に好ましい。 本発明の方法において、上記該遷移金属触媒を用いた反応により得られる反応液と芳香族ホスファイトとを接触させるが、反応液としては反応後の反応液そのままであっても反応液から生成物を除去した残留液或いは触媒を分離した触媒を含有する反応液であってもよく、特に反応後の反応液と接触させるのが好ましい。反応液と芳香族ホスファイトとの接触は、具体的には反応後の反応液に芳香族ホスファイト含有溶液または固体そのものを添加し、接触させることにより行われる。芳香族ホスファイトは固体そのものであっても、溶液であってもよいが、添加時の反応液との接触効率からあらかじめ均一に溶解させておいた方が好ましい。これにより、反応工程以降、反応液では遷移金属錯体触媒と芳香族ホスファイトが均一な溶液として工程内の配管内、蒸留塔等の装置内を移送されるので、配管内及び蒸留塔等の装置内での触媒金属の析出による金属ロス、工程系内での汚れの生成が抑制される。また、触媒金属は溶解した含有液として系外に取り出すことが出来、取り出された溶液は触媒処理(触媒回収或いは廃棄)に付される。触媒処理工程では、取り出された溶液をそのまま焼却する、金属回収の為に他場所に移送、或いはプラント内に設置された水中燃焼装置等により金属灰としての回収等が行われる。 反応液と芳香族ホスファイトとの混合物は、必要であれば加熱処理される。加熱処理温度は、通常20℃〜200℃、好ましくは80℃〜180℃である。この範囲を超えて高温で処理すると芳香族ホスファイト自身の熱分解が進行し、他方低温過ぎると反応液に対する芳香族ホスファイトの溶解度が下がり、金属の析出抑制効果が低下する。 芳香族ホスファイトの選定基準としては、そのホスファイトが有する酸化防止機能を最大限発揮させるために、酸素以外の因子による分解を回避する必要があり、具体的には熱的あるいは化学的に容易に分解するホスファイトの使用は好ましくない。そのため、熱的に安定である芳香族ホスファイトが好ましく、さらに化学的な安定性を高めるためには、P−O結合が他の化学成分との反応によって開裂されるのを防止するために、芳香族環がそのP−O結合に対するオルト位に嵩高い置換基を有するホスファイトが好ましい。また通常は単座ホスファイトが複座ホスファイトよりも安価であり、機能上及びコストの観点から単座の芳香族ホスファイトが好ましい。 遷移金属触媒を用いた反応により得られる反応液へ芳香族ホスファイトを添加して接触させる場合、反応液に対する芳香族ホスファイトの割合は、反応液に含まれる遷移金属触媒の種類、量等により異なるが、通常、遷移金属触媒の金属1モル量に対して1モル等量〜1000モル等量であり、好ましくは2モル等量〜50モル等量である。添加量が、この割合を超えて少なすぎると、金属の析出抑制効果が得られず、他方多すぎても添加量に見合う効果は得られないので、コスト上好ましくない。 添加される芳香族ホスファイト溶液における濃度は、該芳香族ホスファイトの種類によっても異なるが、通常50重量ppm〜1重量%であり、好ましくは100重量ppm〜5000重量ppmである。 以下に、遷移金属錯体触媒を用いたアセトキシアリル化合物の異性化反応後の反応液を、芳香族ホスファイトと接触させる方法を説明する。 アセトキシアリル化合物としての3,4−ジアセトキシ−1−ブテン類及び/又は1,4−ジアセトキシ−2−ブテン類をブタジエン等の共役ジエン類の酸化ジアセトキシ化反応により製造する方法は公知である。最も一般的には、パラジウム系触媒の存在下、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシ−2−ブテン及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを製造するが、その反応液には、通常これらのジアセトキシブテン類の加水分解物である1−アセトキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン、4−ヒドロキシ−3−アセトキシ−1−ブテンなども含まれている。 異性化反応に原料として供給される3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとしては、純品の他、上記ブタジエンのジアセトキシ化反応後の反応液そのもの、あるいは酢酸、水などの3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも低沸点の副生物の少なくとも一部を蒸留などにより除去したもの、あるいは3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも高沸点の副生物の一部あるいは全量を蒸留などにより除去したもの、更には低沸点の副生物及び高沸点副生物の双方を一部あるいは全量を除去したもの等である。本発明の方法では、これらを「3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを主成分とする含有液」として使用する。通常、本発明で使用する「3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを主成分とする含有液」は、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンも含有するが、その他に、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解物である3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン、4−ヒドロキシ−3−アセトキシ−1−ブテン及び/又は3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、更に1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの加水分解物である1−アセトキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテン及び/又は1,4−ジヒドロキシ−2−ブテンを含んでいても差し支えない。 上述のアセトキシアリル化合物等の異性化反応において触媒として使用される遷移金属錯体としては、配位子として好ましくはホスファイト或いはホスホラアミダイト、特に好ましくはホスホラアミダイトとパラジウムとの錯体触媒である。遷移金属錯体の使用量は、反応原料であるアセトキシアリル化合物に対して0.001重量ppm〜1000重量ppmであり、好ましくは0.001〜100重量ppm、特に好ましくは0.01〜100重量ppmの範囲である。 異性化反応を実施する温度は、通常20〜200℃であり、好ましくは80〜180℃、特に好ましくは100℃〜160℃である。反応温度が高すぎると、遷移金属錯体触媒のメタル化による劣化が進行し、活性の消失が起こり、また反応温度が低すぎた場合には、反応速度が低下し、長大な反応器が必要となってしまう。 異性化反応を実施する圧力は、通常1気圧であるが、減圧下又は加圧下であっても構わないが、1気圧〜10気圧が好ましく、特に好ましくは1〜3気圧である。反応圧力が低すぎると反応温度の低下に伴い触媒活性が低下し、反応圧力が高すぎると反応器コストが増大してしまう。 異性化反応は、通常液相中で行われ、該異性化反応は溶媒の存在下、又は非存在下のいずれでも実施可能である。溶媒を使用する場合、好ましい溶媒として、触媒及び原料化合物を溶解するものであれば使用可能であり特に限定はされない。溶媒の具体例としては、ジグライム、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジアリルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン、ジ(n−オクチル)フタレイト等のエステル類;トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;異性化反応で生成する副生物そのもの;または原料であるアリル化合物誘導体そのもの;生成物であるアリル化合物そのもの;原料アリル化合物の脱離基に由来する化合物等が挙げられる。特に好ましい溶媒として、原料であるアリル化合物そのもの、生成物であるアリル化合物そのもの等が挙げられる。 溶媒の使用量は特に限定されないが、異性化反応は主に分子内反応で進行するため、従来と比較してより少ない溶媒量で行うことが望ましい。通常、原料であるアリル化合物誘導体の合計重量に対して0〜10重量倍以下、好ましくは0〜5重量倍以下、最も好ましくは0〜1重量倍以下である。溶媒量が多すぎる場合には反応速度が低下する。 異性化反応を実施する際の反応方式として、撹拌型の完全混合反応器やプラグフロー型の反応器を用いて、連続方式、半連続方式または回分方式のいずれでも行うことができる。反応器内の気相部は、溶媒、原料化合物、反応生成物、反応副生物、触媒分解物等に由来する蒸気以外は、アルゴンや窒素等の不活性ガスで形成されていることが望ましい。特に空気の漏れ込み等による酸素の混入が触媒劣化、即ちリン化合物の酸化消失の原因となるため、その量を極力低減させることが望ましい。 異性化反応器から連続的に流出する反応液に、反応器出口近傍の配管に設けられた供給口から芳香族ホスファイトの溶液を注入する。芳香族ホスファイト溶液の注入は、連続的、間欠的のいずれでもよいが、連続的に供給するのが好ましい。芳香族ホスファイトが供給された反応液は、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの異性化反応により得られた生成物(1,4−ジアセトキシ−2−ブテン)を異性化反応液から分離するための分離工程(蒸留塔)に移送され、蒸留分離される。生成物の分離には、慣用の分離操作を採用することができ、具体的には、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作のほか、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の分離操作が挙げられる。各分離操作は、各々独立の工程で行ってもよく、2つ以上の成分の分離を同時に行ってもよい。なお、生成物、更には原料アリル化合物等を分離した後の残液は、前述した触媒処理に付すことができる。 上記異性化反応以外の反応として、オレフィンのハイドロフォルミル化反応が挙げられる。オレフィンのハイドロフォルミル化反応は、通常、オレフィンとオキソガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)とを、遷移金属(例えば、Rh,Pd等)と有機リン化合物からなる配位子とを含む金属錯体触媒を用いて、溶媒の存在下或いは不存在下反応させることにより行われる。触媒の使用量は、反応基質1モルに対し、通常0.1ppmモル以上、好ましくは1ppmモル以上であり、0.2モル%以下、好ましくは0.1モル%以下である。反応温度は、通常、−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応圧力は、通常0.01MPa〜30MPa、好ましくは0.05MPa〜20MPaである。 また、他の反応として、上記遷移金属錯体触媒を用いたオレフィン、カルボニル化合物、イミン化合物等の水素化反応が挙げられる。水素化反応における該触媒の使用量は、反応基質1モルに対し、通常0.1ppmモル以上、好ましくは1ppmモル以上であり、0.2モル%以下、好ましくは0.1モル%以下である。反応温度は、通常、−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃であり、水素分圧は、通常0.001MPa〜30MPa、好ましくは0.01MPa〜20MPaである。 本発明の方法は、上記の反応例より得られる反応液に適用することにより反応液から遷移金属含有溶液を支障なく取り出すことが出来る。 次に、本発明の方法を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 参考例1 Pd−Te触媒1kgの存在下に、ブタジエン0.21kg/hr、酢酸2.94kg/hr、6%酸素/94%窒素混合ガス0.34kg/hrを流通させ、80℃、6MPaの条件でアセトキシ化反応させて、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンが81重量%、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが9重量%、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテンが2重量%、酢酸3重量%、その他3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分が3重量%、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の高い成分が2重量%を含む混合液を得た。 参考例2 参考例1で得た混合液11Lを連続蒸留により3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液と、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン含有液とに分離した。尚、蒸留には40段のオルダーショウ蒸留塔を使用した。連続蒸留は、塔頂圧力は20mmHg、還流比は3、塔頂温度は95℃、塔底温度は151℃の温度範囲において保持し、150cc/hrの流量で塔底から20段の位置に混合液を連続導入し、塔頂部から27cc/hrで連続留出を行い、塔底から123cc/hrで連続抜き出しを行なった。本連続蒸留により、塔底から1,4−ジアセトキシ−2−ブテン含有液を缶出液として得、塔頂から3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液を留出液として得た。得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液は、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが45重量%、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテンが11重量%、酢酸が22重量%、その他3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分が20重量%、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の高い成分が2重量%を含む混合液であった。また、該3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液の1,4−ジアセトキシ−2−ブテン含有量は1重量%以下であった。 参考例3 参考例2で得た3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液300kgを連続蒸留により3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分の大部分を分離した。尚、蒸留には規則充填物TM−700M(MCパック)を5m充填した充填塔を使用した(HETP140mm/NTP)。塔頂圧力は100mmHg、還流比は3、塔頂温度は77℃、塔底温度は144℃の温度において保持し、20kg/hrの流量で塔底から2610mmの位置に連続導入し、塔頂部から7.6kg/hrで連続留出を行い、塔底から580mmの位置から側流として11.4kg/hr、塔底から1kg/hrで連続抜き出しを行なった。本連続蒸留により、塔頂から3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分を留出液として得た。該留出中には酢酸が71重量%、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが0.18重量%(蒸留塔に導入する3,4−ジアセトキシアリル化合物量の0.17重量%に相当)、その他、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分21重量%含まれていた。また塔底からの抜き出した液中には3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが70重量%、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテンが9重量%、その他3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分が3重量%、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の高い成分が18重量%を含まれていた。また、側流からの抜き出した液中には3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが69重量%、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテンが15重量%、その他3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の低い成分が4重量%、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンよりも沸点の高い成分が12重量%を含む精製3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを得た。 実施例1 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(3.2 mg)、下記式(1)で表される配位子(上記(B−3)で表される配位子 31.2 mg、パラジウム金属に対して2モル等量)及び参考例3で塔底から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液75gを添加し、80℃で1時間加熱撹拌して溶解し、パラジウム触媒溶液を調製した。このパラジウム触媒溶液中の溶存パラジウム金属濃度をICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)により測定した結果、金属パラジウム濃度は20重量ppmであった。このパラジウム触媒液2ccに下式(2)で示されるDBPO[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト]を添加(5.0 mg、パラジウム金属に対して20モル等量)し、常圧下175℃で27時間加熱した。加熱後の触媒溶液を目粗さが8μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液中に残存溶解するパラジウム濃度をICP−MSにより測定した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、20重量ppmであった。加熱前の初期濃度と残存溶解濃度により、パラジウム金属の溶存残存率を算出した。その結果、パラジウム金属の溶存残存率は100%であり、Pdメタル析出率は0%であった。 溶存残存率(%)= 残存溶解濃度/初期濃度 Pdメタル化量(重量ppm) = 初期濃度(20ppm)−残存溶解濃度 Pdメタル析出率(%)=[Pdメタル化量]/[初期濃度] 比較例1(ブランクテスト) 上記実施例1において、パラジウム触媒溶液にDBPOを添加せずに常圧下、175℃で加熱した以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、6重量ppmであり、Pdメタル析出率は70%であった。 比較例2(DBPOとトリフェニルホスフィンの効果比較) 上記実施例1において、パラジウム触媒溶液にDBPOを添加せず、代わりにトリフェニルホスフィンを添加(0.4mg、パラジウム金属に対して4モル等量)し、常圧下175℃で加熱した以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、2重量ppmであり、Pdメタル析出率は90%であった。 実施例2 (トリフェニルホスフィン1000重量ppm存在条件) 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(7.9mg)、上記式(1)で表される配位子(78.8mg、パラジウム金属に対して2モル等量)、トリフェニルホスフィン(76.5mg、触媒溶液中のトリフェニルホスフィン濃度1000重量ppm)、及び参考例3で側流から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液75gを添加し、80℃で1時間加熱撹拌して溶解し、パラジウム触媒溶液を調製した。このパラジウム触媒溶液中の溶存パラジウム金属濃度をICP−MSにより測定した結果、金属パラジウム濃度は54重量ppmであった。このパラジウム触媒液2ccに前記式(2)で表されるDBPO[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト]を添加(12.6mg、パラジウム金属に対して20モル等量)し、常圧下175℃で10時間加熱した。加熱後の触媒溶液を目粗さが8μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液中に残存溶解するパラジウム濃度をICP−MSにより測定した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、52重量ppmであった。加熱前の初期濃度と残存濃度により、パラジウム金属の溶存残存率を算出した。その結果、パラジウム金属の溶存残存率は96%であり、Pdメタル析出率は4%であった。 実施例3 上記実施例2において、DBPO添加量を(6.3mg、パラジウム金属に対して10モル等量)とした以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、50重量ppmであり、Pdメタル析出率は7%であった。 比較例8 上記実施例2において、パラジウム触媒溶液にDBPOに代えてトリフェニルホスファイト[P(OPh)3]を添加(5μl、パラジウム金属に対して4モル当量)して、常圧下、175℃で加熱した以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、23重量ppmであり、Pdメタル析出率は57%であった。 実施例5 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(5.0 mg)、上記式(1)で表される配位子(48.4 mg、パラジウム金属に対して2モル等量)、トリフェニルホスフィン(12.4mg、触媒溶液中のトリフェニルホスフィン濃度500重量ppm)及び参考例3で塔底から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液24gを添加し、80℃で1時間加熱撹拌して溶解し、パラジウム触媒溶液を調製した。このパラジウム触媒液3ccに上記式(2)で示されるDBPO[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト]を1重量%含む3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液を1.8g添加(パラジウム金属に対して20モル等量)した。このパラジウム触媒溶液中の溶存パラジウム金属濃度をICP−MSにより測定した結果、金属パラジウム濃度は59重量ppmであった。このパラジウム触媒溶液を常圧下175℃で10時間加熱した。加熱後の触媒溶液を目粗さが8μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液中に残存溶解するパラジウム濃度をICP−MSにより測定した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、55重量ppmであった。加熱前の初期濃度と残存濃度により、パラジウム金属の溶存残存率を算出した。その結果、パラジウム金属の溶存残存率は93%であり、Pdメタル析出率は7%であった。 比較例3 上記実施例2において、パラジウム触媒溶液にDBPOを添加しないこと以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、4重量ppmであり、Pdメタル析出率は93%であった。 比較例4 上記実施例2において、パラジウム触媒溶液にDBPOに代えてトリn−ブチルホスファイト[P(OnBu)3]を添加(5μl、パラジウム金属に対して4モル等量)した以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、2重量ppmであり、Pdメタル析出率は96%であった。 上記実施例1〜5、比較例1〜4の結果を纏めて表1に示す。 実施例6 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(2.2 mg)、上記式(3)で表される配位子(上記(B−3)で表される配位子 19.5 mg、パラジウム金属に対して2モル等量)及び参考例3で側流から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液20gを添加し、80℃で1時間加熱撹拌して溶解し、パラジウム触媒溶液を調製した。このパラジウム触媒溶液中の溶存パラジウム金属濃度をICP−MSにより測定した結果、金属パラジウム濃度は42重量ppmであった。このパラジウム触媒液3ccに式(2)で示されるDBPO[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト]を添加(19mg、パラジウム金属に対して20モル等量)し、常圧下175℃で10時間加熱した。加熱後の触媒溶液を目粗さが8μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液中に残存溶解するパラジウム濃度をICP−MSにより測定した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、41重量ppmであった。加熱前の初期濃度と残存濃度により、パラジウム金属の溶存残存率を算出した。その結果、パラジウム金属の溶存残存率は98%であり、Pdメタル析出率は2%であった。 比較例5 上記実施例6において、パラジウム触媒溶液にDBPOを添加しないこと以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、0重量ppmであり、Pdメタル析出率は100%であった。 実施例7 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(2.2mg)、上記式(3)で表される配位子(19.5mg、パラジウム金属に対して2モル等量)、トリフェニルホスフィン(20mg、触媒溶液中のトリフェニルホスフィン濃度1000重量ppm)、及び参考例3で側流から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液20gを添加し、80℃で1時間加熱撹拌して溶解し、パラジウム触媒溶液を調製した。このパラジウム触媒溶液中の溶存パラジウム金属濃度をICP−MSにより測定した結果、金属パラジウム濃度は42重量ppmであった。このパラジウム触媒液2ccに前記式(2)で表されるDBPO[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト]を添加(19mg、パラジウム金属に対して20モル等量)し、常圧下175℃で10時間加熱した。加熱後の触媒溶液を目粗さが8μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液中に残存溶解するパラジウム濃度をICP−MSにより測定した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、40重量ppmであった。加熱前の初期濃度と残存濃度により、パラジウム金属の溶存残存率を算出した。その結果、パラジウム金属の溶存残存率は96%であり、Pdメタル析出率は4%であった。 比較例6 上記実施例7において、パラジウム触媒溶液にDBPOを添加しないこと以外は同様にして実施した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、0重量ppmであり、Pdメタル析出率は100%であった。 実施例8 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(5.1 mg)、上記式(3)で表される配位子(46.2 mg、パラジウム金属に対して2モル等量)、トリフェニルホスフィン(12.7mg、触媒溶液中のトリフェニルホスフィン濃度500重量ppm)及び参考例3で側流から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液24gを添加し、80℃で1時間加熱撹拌して溶解し、パラジウム触媒溶液を調製した。このパラジウム触媒液3ccに上記式(2)で示されるDBPO[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト]を1重量%含む3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液を1.8g添加(パラジウム金属に対して20モル等量)した。このパラジウム触媒溶液中の溶存パラジウム金属濃度をICP−MSにより測定した結果、金属パラジウム濃度は58重量ppmであった。このパラジウム触媒溶液を常圧下175℃で10時間加熱した。加熱後の触媒溶液を目粗さが8μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液中に残存溶解するパラジウム濃度をICP−MSにより測定した。その結果、加熱ろ過後の残存溶解パラジウム金属濃度は、56重量ppmであった。加熱前の初期濃度と残存濃度により、パラジウム金属の溶存残存率を算出した。その結果、パラジウム金属の溶存残存率は97%であり、Pdメタル析出率は3%であった。上記実施例6〜8、比較例5〜6の結果を纏めて表2に示す。 実施例9 (減圧条件下でのDBPOによるパラジウム金属のメタル析出抑制) 窒素ガス雰囲気下、ガラス製フラスコに酢酸パラジウム(21mg)、上記式(1)で表される配位子(200mg、パラジウム金属に対して2モル等量)、トリフェニルホスフィン(49mg、触媒溶液中のトリフェニルホスフィン濃度10重量ppm)及び参考例3で塔底から得られた3,4−ジアセトキシ−1−ブテン含有液)400ccを装入し、80℃で1時間加熱撹拌を行い、触媒溶液を調製し、金属パラジウム濃度として50重量ppm 含有する反応液を得た。蓋付き容器に得られた反応液及び上記式(2)で示されるDBPO(1.22g、パラジウム金属に対して20モル等量)を装入し、蓋をして密閉した後、減圧下(300〜380torr)、165℃まで昇温した。同温度を維持しながら、165℃に到達した時点(time=0)から、所定時間毎に反応液中のパラジウム濃度を測定し、経時変化を観測した。その結果を図1に示す。 なお、パラジウム濃度は、IPC−MSにより測定した。また、パラジウム溶存残存率(%)は反応液中の初期濃度に対する割合である。 比較例7 上記実施例3において、DBPOを添加しなかった以外は、実施例3と同様にしてパラジウム濃度の経時変化を観測し、その結果を図1に示した。実施例9及び比較例7におけるPd溶存残存率の経時変化を示す。縦軸はPd溶存残存率(%)、横軸は時間(h)を示す。 下式(1)、(3)及びトリフェニルホスフィンから選ばれる少なくとも一種の3価の有機リン化合物からなる配位子を有する第8〜10族遷移金属から選ばれる遷移金属の遷移金属錯体を含有する溶液及び、下式(2)で表される芳香族ホスファイトが含まれることを特徴とする遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。 第8〜10族遷移金属がパラジウム又は白金であることを特徴とする請求項1に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。 上記遷移金属錯体が異性化反応、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、脱水素反応、オリゴメリゼーション、メタセシス、カップリング反応、或いはアリル化反応のうち、いずれか一種の反応に用いる触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。 上記遷移金属錯体が異性化反応の触媒であることを特徴とする請求項3に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。 上記遷移金属錯体を含有する溶液が、請求項3又は4に記載された何れかの反応後の溶液であることを特徴とする遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。 上記遷移金属錯体が異性化反応の反応触媒であり、かつ、上記遷移金属錯体を含有する溶液が、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを主成分とする溶液であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の遷移金属錯体と芳香族ホスファイトの混合溶液。


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