生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_銅触媒の再生方法
出願番号:2008281084
年次:2010
IPC分類:B01J 23/94,B01J 38/10,B01J 38/12,C07C 45/29,C07C 47/07,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

田中 康隆 山浦 亮 JP 2010104938 公開特許公報(A) 20100513 2008281084 20081031 銅触媒の再生方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 鍬田 充生 100090686 阪中 浩 100142594 田中 康隆 山浦 亮 B01J 23/94 20060101AFI20100416BHJP B01J 38/10 20060101ALI20100416BHJP B01J 38/12 20060101ALI20100416BHJP C07C 45/29 20060101ALI20100416BHJP C07C 47/07 20060101ALI20100416BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100416BHJP JPB01J23/94 ZB01J38/10 BB01J38/12 BC07C45/29C07C47/07C07B61/00 300 6 OL 12 4G169 4H006 4H039 4G169AA03 4G169AA10 4G169BA02A 4G169BA02B 4G169BC01A 4G169BC02B 4G169BC08A 4G169BC13B 4G169BC31A 4G169BC31B 4G169BC58B 4G169BD05A 4G169BD05B 4G169CB07 4G169CB19 4G169DA05 4G169GA05 4G169GA06 4H006AA02 4H006AC12 4H006AC45 4H006BA05 4H006BA06 4H006BA14 4H006BA30 4H006BA33 4H006BA60 4H006BA82 4H006BA84 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC18 4H039CA62 4H039CC20 本発明は、シンタリング(銅触媒の結晶化に伴う触媒表面積の低下)又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、効率よく再生できる固体触媒の再生方法に関する。 固体銅触媒は、種々の反応、例えば、アルコールの脱水素化によるカルボニル化合物(アルデヒド、ケトンなど)の製造、カルボニル化合物の水素化によるアルコールの製造などに広く利用されており、工業的に重要な触媒の1つである。 中でも、アルデヒドは、各種有機化合物の合成中間体などとして、工業的に極めて重要な化合物であり、アルコールからの工業的な合成法の確立が望まれている。また、アルコールを用いたアルデヒド製造は、脱石油原料であるバイオアルコール(バイオエタノールなどのバイオマス発酵法により得られるアルコール)が利用可能であるため、近年、注目されている。しかし、アルコールを用いたアルデヒド製造では、アルコールの転化率やアルデヒド選択率が不十分であったり、使用される銅触媒が失活し易いなどの問題がある。そのため、工業的には、アルコールを原料とするアルデヒド製造は殆ど実施されておらず、アセトアルデヒドは主としてエチレンを原料とするいわゆるワッカー法により製造されているのが現状である。 また、アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造に、固体銅触媒を用いる場合、平衡をアルデヒド側に有利にするため、触媒温度を200℃〜300℃程度の高温に保つ必要がある。しかし、還元状態で、このように高い温度に曝すと、活性種である金属銅の結晶粒子が成長して有効な表面積が低下し(いわゆるシンタリング現象が起き)、反応活性が次第に低下して、触媒寿命が極めて短くなるという問題点が知られている。 さらに、バイオエタノールを用いて、アルデヒドを製造する場合、バイオエタノールに不可避的に微量に含まれるジメチルスルフィドなどの硫化物が、触媒活性種である金属銅に強固に吸着して、触媒毒として作用し、触媒活性を低下させる問題も知られている。 失活触媒の再生方法としては、従来より種々の方法が知られているが、それらは一般に触媒表面に付着した有機成分(基質、主又は副生成物、これらの分解物や重合物など)を除去(燃焼、洗浄などの方法による除去など)するものであり、触媒本体の構造変化であるシンタリングやイオウ系触媒毒成分により活性低下した触媒を再生する方法はほとんど知られていない。 例えば、特開平9−75734号公報(特許文献1)には、反応使用中に失活した銅含有触媒を、水素含有ガスの前処理、酸素含有ガスによる酸化処理及び還元性ガスによる処理に供し、触媒を再生する方法が開示されている。また、特許文献1には、前処理が触媒上に付着した有機物を脱離し易くするためのものであること、及び特許文献1の再生方法は、熱的負担による触媒構成成分の結晶成長又は新しい化合物の形成に伴う活性低下に対しては不十分であることが記載されている。また、特開2000−93800号公報(特許文献2)には、失活した触媒の油分を溶剤で洗浄し、ついで触媒に残った溶剤を除去し、得られた触媒を酸素含有ガスで酸化し、得られた触媒を還元活性化する水素化触媒の再生法が開示されている。特許文献2には、油分を除去する工程が、酸化工程での油分の燃焼による発熱を抑制し、活性点である銅又はその酸化物のシンタリングを軽減することが開示されている。しかし、特許文献2では、シンタリングにより結晶が成長した触媒の再生については、何ら教示されていない。特開平9−75734号公報(請求項1,段落番号[0010][0014])特開2000−93800号公報(請求項1,段落番号[0009]) 従って、本発明の目的は、シンタリング(銅触媒の結晶化に伴う触媒表面積の低下)又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、効率よく再生できる銅触媒の再生方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、触媒を長寿命化でき、原料アルコールの転化率及びアルデヒドの収率を改善して、工業的なアルデヒド製造に利用可能な銅触媒の再生方法を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、酸素含有ガスで酸化し、水素含有ガスで還元すると、シンタリング(銅触媒の結晶化に伴う触媒表面積の低下)やイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒であっても、有効に再生可能であることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、本発明の再生方法は、シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元する失活した銅触媒の再生方法である。前記再生方法では、高温かつ還元雰囲気下での使用によるシンタリング、又はスルフィド化合物の吸着により失活した銅触媒を、酸素含有ガスでの酸化に供してもよい。また、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造過程で失活した銅触媒を、酸素含有ガスでの酸化に供してもよい。 本発明では、アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造過程で失活した銅触媒を、溶剤による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、酸素含有ガスでの酸化に供し、さらに水素含有ガスにより気相で還元処理してもよい。また、失活した銅触媒を、200〜500℃の温度で酸素含有ガスにより酸化し、100〜200℃の温度で水素含有ガスにより還元してもよい。 失活した銅触媒は、固体銅触媒の存在下、アルコールを脱水素化することにより得られる銅触媒であってもよく、脱水素化に使用される固体銅触媒は、酸化ケイ素で構成された担体に、還元により金属銅を生成可能な銅化合物と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属助触媒とが担持された前駆体を還元賦活処理した固体銅触媒であってもよい。 本発明では、失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、水素含有ガスで還元するので、シンタリングやイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した触媒であっても、効率よく再生することができる。そのため、触媒を長寿命化することもできる。また、原料アルコールの転化率及びアルデヒドの収率を改善することもでき、工業的なアルデヒド製造に有用である。 [固体銅触媒] 固体銅触媒としては、活性種としての銅を含有する限り特に制限されず、種々の反応に利用される固体銅触媒が使用できるが、通常、脱水素化又は水素化反応に利用される触媒、例えば、アルコールの脱水素化によりカルボニル化合物(アルデヒド、ケトンなど)を合成するための固体銅触媒、カルボニル化合物の水素化によりアルコールを合成するための固体銅触媒などが挙げられる。 活性種としての銅は、アルコールをアルデヒドに変換する活性を有する形態(又は状態)であればよく、金属銅(単体)、銅化合物(酸化物、水酸化物、銅塩(硫酸銅、リン酸銅、硝酸銅、炭酸銅などの無機酸塩;カルボン酸の銅塩などの有機酸塩など)など)の何れの形態であってもよい。固体触媒は、このような銅単体及び銅化合物から選択された少なくとも一種を含有すればよい。活性種としての銅は、金属銅の形態であるのが好ましい。また、銅は、金属銅又は銅化合物の形態で、そのまま用いてもよく、担体に担持させた形態で用いてもよい。 なお、活性種としての銅は、固体触媒の主たる触媒として作用すればよく、助触媒などと組み合わせて用いてもよい。また、固体触媒は、銅及び助触媒の双方が担体に担持された形態であってもよく、担体として助触媒を用い、銅触媒が助触媒に担持されていてもよい。 銅と組み合わせる助触媒としては、銅以外の各種金属又は金属化合物が挙げられる。助触媒に含まれる金属元素としては、例えば、アルカリ金属(Li、K、Naなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Baなど)、周期表第4族金属(Ti、Zrなど)、第5族金属(Vなど)、第6族金属(Cr、Mo、Wなど)、第7族金属(Mnなど)第8族金属(Fe、Ruなど)、第9族金属(Co、Rhなど)、第10族金属(Ni、Pd、Ptなど)、銅以外の第11族金属(Ag、Auなど)、第12族金属(Znなど)、第13族金属(Alなど)などが例示できる。助触媒は、これらの金属元素を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。 助触媒は、金属単体であってもよく、金属化合物、例えば、酸化物、水酸化物、塩(硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;カルボン酸塩などの有機酸塩など)などであってもよい。また、助触媒は、一種の金属単体又は金属化合物で構成してもよく、これらの形態の助触媒を複数含有してもよい。これらの助触媒のうち、酸化物、例えば、酸化ナトリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物などが好ましい。このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属酸化物は、適度な塩基性を有しており、表面酸性度の高い担体又は他の助触媒などを用いる場合であっても、固体触媒の表面酸性度(表面酸量)を特定の範囲に調整することができ、反応に有利である。 なお、銅(金属銅又は銅化合物など)と、助触媒との割合(重量比)は、例えば、0.1/100〜300/100、好ましくは1/100〜150/100、さらに好ましくは5/100〜80/100(例えば、10/100〜50/100)程度である。 銅及び/又は上記助触媒などは、担体に担持させてもよい。なお、助触媒と、担体とは、通常、種類の異なる化合物が使用される。このような担体としては、活性炭、ゼオライト、ベントナイト、シリカ(又は酸化ケイ素)、ジルコニア、チタニアなどの他、銅以外の金属の酸化物などが例示できる。金属酸化物としては、周期表第4族金属酸化物(酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)、酸化バナジウムなどの第5族金属酸化物、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステンなどの第6族金属酸化物、酸化マンガンなどの第7族金属酸化物、酸化亜鉛などの第12族金属酸化物、酸化アルミニウムなどの第13族金属酸化物などが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 上記担体のうち、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、第6族金属酸化物(酸化クロムなど)、第13族金属酸化物(酸化アルミニウムなど)などが好ましい。特に、担体として、少なくとも表面酸性度が比較的低い担体、例えば、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどを用いてもよい。中でも、表面酸性度がほとんどなく、大表面積のものが容易に得られ、かつ化学的安定性及び耐熱性にも優れ、毒性もない酸化ケイ素を用いるのが好ましい。 また、表面酸性度が低い担体(酸化ケイ素及び/又は酸化ジルコニウムなど)と、表面酸性度が高い担体(酸化クロムなどの周期表第6族金属酸化物など)などとを組み合わせてもよい。なお、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどの表面酸性度が低い担体と、酸化クロムなどの比較的表面酸性度が高い担体とを併用する場合、表面酸性度が高い担体(酸化クロムなど)の割合は、表面酸性度が低い担体(酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなど)100重量部に対して、例えば、50重量部以下、好ましくは0.01〜30重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部程度であってもよい。 固体触媒のうち、銅と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属助触媒とが担体に担持された触媒が好ましい。銅(又は銅化合物)の割合は、担体100重量部に対して、例えば、0.1〜300重量部、好ましくは1〜200重量部(例えば、2〜150重量部)、さらに好ましくは3〜100重量部(例えば、5〜80重量部)程度であってもよい。また、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(又は化合物)の割合は、担体100重量部に対して、例えば、0.1〜80重量部(例えば、0.1〜50重量部)、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜30重量部程度であってもよい。 なお、固体触媒は、上記銅化合物、助触媒(アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物など)、もしくはこれらの化合物を担体に担持した化合物を、そのまま触媒として用い、反応で生じる還元雰囲気下で銅化合物を活性な銅触媒(金属銅など)とする方法でもよく、そのままの状態では活性が低い又は不活性な場合には、適宜、慣用の賦活化方法により賦活化処理(還元賦活化処理など)して用いてもよい。 銅又は銅化合物、助触媒などの担体への担持は、慣用の方法(共沈法、含浸法など)により行うことができる。例えば、銅化合物を溶媒に溶解又は分散させた混合物を、助触媒及び/又は担体とともに、混合(混練なども含む)し、必要により溶媒を除去することにより担持してもよく、適宜、加熱処理、酸化処理、還元処理などにより、銅化合物などの活性成分を担体に固定化させてもよい。酸化銅を、担体に担持させる場合、例えば、硝酸銅などの塩を溶媒に溶解させた溶液と、担体(酸化ケイ素、酸化クロム、酸化アルミニウムなどの他、酸化マグネシウム、酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物を含む)とを混合し、酸化処理により銅塩(硝酸銅など)を酸化銅に変換することにより担持させることができる。また、担体(酸化ケイ素、酸化ケイ素及び他の金属酸化物(例えば、酸化クロムなどの周期表第6族金属の酸化物など)の組み合わせなど)に、銅化合物(酸化銅など)と、助触媒(アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物(酸化ナトリウム、酸化バリウム、及び酸化カルシウムなどの酸化物など)など)とを担持した前駆体を、還元賦活処理することにより、少なくとも銅(又は銅化合物)が活性化された固体触媒などとして用いてもよい。例えば、酸化銅などの銅化合物は、還元賦活処理により、金属銅に変換されてもよい。 還元賦活化は、固体触媒又はその前駆体(低活性又は不活性な固体触媒など)を、還元性ガス(水素含有ガスなど)雰囲気下で加熱することにより行うことができる。水素含有ガスなどの還元性ガスは、必要により、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)で稀釈して用いてもよい。加熱温度は、固体触媒又はその前駆体の種類によって、適宜選択でき、例えば、100〜300℃、好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃程度であってもよい。 固体触媒は、使用される固定床、流動床などの反応形態に応じて、粉末、顆粒、ペレットなど、種々の形状に成形して用いてもよい。また、固体銅触媒又はその前駆体としては、市販品を使用してもよい。 なお、固体触媒は、アンモニア昇温脱離(TPD)法による表面酸量が0〜3mmol/g、好ましくは0.0001〜1mmol/g程度であってもよい。固体触媒は、アンモニアTPD法による表面酸量が、0.10mmol/g以下(例えば、0〜0.10mmol/g)、好ましくは0.0001〜0.07mmol/g、さらに好ましくは0.001〜0.05mmol/g、特に0.05〜0.04mmol/g程度であってもよい。固体触媒の表面酸量は、担体、助触媒などを、これらの成分の表面酸量に基づいて組み合わせたり、その割合を調整することなどにより調整することができる。 [固体銅触媒の再生方法] (固体銅触媒の失活) 失活した固体銅触媒は、前記固体銅触媒を、適用される反応、例えば、脱水素化又は水素化反応(例えば、アルコールの脱水素化によるカルボニル化合物(アルデヒド、ケトンなど)の製造、カルボニル化合物の水素化によるアルコールの製造など)に供され、反応初期に得られる触媒活性よりも活性が低下した触媒を意味する。 特に、本発明では、固体銅触媒が、上記の反応(特に、還元状態での高温での反応など)などにより、シンタリングにより触媒活性種の銅(金属銅又は銅化合物など)の結晶が成長し、固体銅触媒の表面積が低下した状態、もしくは反応系に含まれるか又は副生するイオウ含有触媒毒成分が固体銅触媒に吸着され、活性種の銅と結合し、銅触媒が被毒された状態を意味する。 イオウ含有触媒毒成分としては、銅触媒を被毒する成分であれば特に制限されず、反応の種類や原料の種類などに応じて、例えば、硫化水素、硫化物(金属硫化物など)、メルカプタン(メチルメルカプタン、エチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタンなど)、硫酸又はそのエステル(硫酸メチル、硫酸エチルなどの硫酸アルキルなど)、スルホン酸又はそのエステル(スルホン酸メチル、スルホン酸エチルなどのスルホン酸アルキルなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシドなど)、スルフィド(アルキルスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどのジアルキルスルフィド(ジC1−4アルキルスルフィドなど)など)などが挙げられる。これらのイオウ含有成分は、一種又は二種以上、反応系に含まれていてもよい。特に、反応原料としてアルコールを用いる場合、前記スルフィドなどのスルフィド化合物が含まれる場合がある。特に、バイオエタノールには、不可避的に、アルキルスルフィド(ジメチルスルフィドなど)が含まれる。そのため、このようなイオウ含有触媒毒成分が反応系に含まれ、銅触媒を被毒する場合であっても、本発明の再生方法によれば、効率よく銅触媒を活性化でき、再生することができる。 シンタリングやイオウ含有被毒成分の吸着は、通常、条件が過酷であるほど生じやすい。例えば、高温での反応、長時間の反応、還元下での反応、又はこれらの条件の組み合わせなどにより、金属銅又は銅化合物が結晶化する傾向にある。例えば、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造では、反応温度を高くするほど、平衡がアルデヒド側に移動するため、高温での反応が有利である一方、シンタリングや被毒成分の吸着が起こりやすい。 本発明では、シンタリングやイオウ含有被毒成分の吸着により失活した触媒を容易に再生可能であるため、アルコールの脱水素化反応を高温で行うこともでき、アルデヒドを効率よく製造できる。反応温度は、例えば、150〜400℃、好ましくは170〜350℃、さらに好ましくは200〜300℃程度であってもよい。 また、反応は、常圧下又は減圧下で行ってもよいが、加圧下で行っても、反応後、触媒を効率よく再生可能である。反応時間は、例えば、30分〜3000時間、好ましくは1〜1500時間、さらに好ましくは10〜1000時間程度であってもよい。特に、300〜2000時間、好ましくは500〜1000時間程度の長時間の反応で、シンタリングやイオウ含有被毒成分の吸着により失活した触媒であっても、本発明の再生方法によれば、有効に触媒を活性化できる。 なお、固体銅触媒の失活の程度は、特に制限されないが、反応初期の基質の転化率を100としたとき、0〜90、好ましくは1〜85、さらに好ましくは5〜80(特に、10〜75)程度であってもよい。 本発明の再生方法は、特に、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造で失活した固体銅触媒に有利に適用できる。 アルデヒドの製造において、失活した固体銅触媒は、活性な固体銅触媒と、アルコールとを接触させて、アルコールを脱水素化し、対応するアルデヒドを合成する過程で得ることができる。 アルデヒドの製造原料である基質アルコールとしては、一級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの脂肪族一級アルコール(1−C1−6アルカノールなど)、2−シクロヘキシルメタノールなどの脂環族一級アルコール(C5−8シクロアルキル−C1−6アルカノールなど)、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの芳香族一級アルコール(C6−10アリール−C1−6アルカノールなど)などが例示できる。これらのアルコールは、置換基、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル、エチル基などのアルキル基(C1−4アルキル基など);シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基;フェニル基などのC6−10アリール基;ニトロ基;アミノ基又はN−置換アミノ基などを有していてもよい。なお、これらの置換基は、アルコールの脂肪族部位(アルキル基の部分)、シクロアルカン環及び/又はアレーン環などに置換していてもよい。好ましいアルコールは、メタノール、エタノールなどの1−C1−4アルカノール、特にエタノールである。 反応に供するアルコールは、含水アルコールであってもよい。アルコール中の水分量は、例えば、0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%程度であってもよい。 前記アルコールの脱水素化により、アルコールのヒドロキシル基部分がオキソ基に変換されたアルデヒドが生成する。例えば、エタノールの脱水素化によりアセトアルデヒドを得ることができる。 反応は、アルコールを固体触媒と接触できればよく、液相反応であってもよいが、通常、気体状のアルコールと固体触媒とを気相で接触させる気相反応である場合が多い。 液相でバッチ反応方式にて反応を行う場合、基質アルコールに対する固体触媒の割合は、例えば、アルコール100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。 反応は、バッチ式で行ってもよいが、連続式で行うのが好ましい。連続反応の場合、アルコールの液空間速度(LHSV)は、例えば、0.5〜20h−1、好ましくは1〜10h−1、さらに好ましくは2〜7h−1程度であってもよい。 また、固体触媒の使用形態は、基質の物性、生産性などを勘案して慣用の形態から適宜選択でき、例えば、気相固定床、気相流動床、液相固定床、又は液相流動床などであってもよい。 (触媒再生) 本発明の再生方法では、上記のように、シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元することにより再生する。 酸化工程において、使用する酸素含有ガスは、分子状酸素を含有すればよく、純粋な酸素ガス(分子状酸素)を用いてもよく、分子状酸素を不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンガスなど)、空気、二酸化炭素などで稀釈して用いてもよい。また、酸素含有ガスとして、空気を用いてもよい。なお、純粋な酸素含有ガスを用いると、固体銅触媒を必要以上に昇温し易いため、通常、不活性ガスや空気で希釈して用いる場合が多い。 酸化工程は、失活した固体銅触媒に酸素含有ガスを接触させることにより行うことができる。触媒を用いた反応(例えば、アルコールを原料とするアルデヒド製造など)後、引き続き、触媒の再生を行う場合、失活した触媒を反応器に収容した状態で、反応器に酸素含有ガスを添加することにより、容易に失活した触媒を酸化することができる。 酸化温度(固体銅触媒の温度)は、150〜500℃(例えば、200〜500℃)、好ましくは170〜450℃、さらに好ましくは180〜400℃程度であってもよい。酸化反応は高温ほど速やかに進行するが、触媒が高温になりすぎると、銅以外の担体や助触媒成分のシンタリングが不可逆的に進行する可能性がある。また、反応器中で酸化処理を行う場合、酸化熱により、触媒の異常昇温が起こる可能性がある。そのため、必要に応じて分子状酸素を窒素ガスなどの不活性ガスで希釈して実施するのが好ましい。 酸化処理は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。酸化処理の処理時間は、例えば、1〜100時間程度の範囲から適宜選択でき、好ましくは1.5〜50時間、さらに好ましくは2〜24時間(例えば、3〜12時間)程度であってもよい。 このような酸化処理により、銅触媒を酸化するとともに、ジメチルスルフィドなどの硫黄含有触媒毒成分を酸化する。例えば、銅触媒が金属銅である場合、金属銅の酸化により酸化銅に変化し、ジメチルスルフィドなどの硫化物は、酸化により、硫黄含有酸化物に変化する。 本発明では、特に、失活した銅触媒(アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造過程で失活した銅触媒など)を、溶剤(炭化水素、ハロゲン系溶媒、アルコール、ケトン、エーテル、アミドなどの各種有機溶媒など)による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、酸素含有ガスでの酸化に供する。そのため、シンタリングやイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した銅触媒であっても、効果的に、酸化することができるとともに、イオウ含有触媒毒成分も酸化することができる。 酸化処理後の固体銅触媒は、さらに水素含有ガスによる還元工程に供する。還元工程で使用する水素含有ガスとしては、純粋な水素ガス(分子状水素)であってもよく、水素ガスを不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)、空気などで稀釈して用いてもよい。酸化した銅触媒(酸化銅など)の還元反応は、発熱反応であり、必要以上に触媒の温度が上昇するのを防ぐため、水素ガスは窒素ガスなどの不活性ガスで適宜希釈するのが好ましい。 還元工程の温度は、例えば、室温(20〜30℃程度)〜300℃、好ましくは50〜250℃、さら好ましくは100〜200℃程度である。なお、温度が高すぎると、還元された銅触媒が結晶化するシンタリングが進行し易くなる可能性がある。 還元反応は、不活性溶媒(炭化水素、エステル、アルコール、油脂類(高級脂肪酸、そのエステル又はアミドなど)など)中で液相還元してもよいが、通常、気相で行う。また、還元処理は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。 還元時間は、例えば、1〜50時間、好ましくは1.5〜24時間、さらに好ましくは2〜12時間(特に、3〜10時間)程度であってもよい。 このような還元工程により、酸化工程で酸化された銅触媒(酸化銅など)を、活性な銅触媒(金属銅など)に変換することができる。そして、得られた活性な銅触媒は、各種反応(例えば、アルデヒド製造、アルコール製造など)に利用できる。 本発明では、失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、水素含有ガスで還元するので、シンタリングやイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒であっても、有効に再生することができる。そのため、本発明の再生方法は、固体銅触媒を用いる各種製造方法(特に、工業的な製造方法、例えば、アルコールを原料とするアルデヒドの製造方法など)で得られる失活触媒の再生処理に有用である。また、バイオエタノールなどのバイオマス発酵法により得られるアルコールなどを用いたアルデヒド製造により得られる失活触媒の処理にも適用できるため、脱石油原料の点からも有用である。 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 実施例1 (1)還元賦活化工程 組成がCuO:Cr2O3:BaO:SiO2(重量比=40:38:12:10)である固体触媒6mlを、ステンレス製反応管に充填して、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、次いで、反応管に水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、3L/hrの流量で流した。発熱がほぼ収まった段階で、水素ガスの流量を6L/hr、窒素ガスを0L/hrにし、触媒層を、温度170℃で6時間保持して還元賦活処理を行った。還元賦活処理により、触媒層の酸化銅は、触媒活性種である金属銅に変換された。 (2)脱水素化反応工程 次いで、反応管に、含水エタノール(水分量:6重量%)をLHSV=4.0h−1の供給速度で仕込み、触媒層温度260℃、常圧で脱水素反応を行った。得られた反応粗液をガスクロマトグラフにて分析した結果、反応初期(原料仕込み開始乃至仕込みから16時間までの間)に得られた反応粗液の分析から、反応初期の原料エタノールの転化率は42.6%、消費エタノール基準のアセトアルデヒド選択率は86.0%であった。また、同条件で反応を700時間継続後、反応粗液を分析したところ、エタノール転化率は31.5%まで低下した。 (3)触媒再生工程 700時間反応後、触媒を反応管中に入れた状態で、反応管に空気3.0L/hr(STP換算値、以下、同じ)及び窒素ガス3.0L/hrを流しつつ、触媒層を、温度300℃に昇温した。発熱がほぼ収まったところで、窒素ガスの供給を止めて空気の流量を6.0L/hr、窒素ガスの流量を0L/hrにし、触媒層を、温度400℃に昇温して12時間保持した。次いで、触媒層の温度を160℃まで下げ、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、さらに、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、3L/hrの流量で流した。発熱がほぼ収まった段階で、水素ガスの流量を6L/hr、窒素ガスの流量を0L/hrにし、触媒層を、温度170℃で6時間保持した。 (4)再生触媒を用いた脱水素化反応工程 上記の工程(3)により再生された触媒を用いて、上記工程(2)と同様の条件で、エタノールの脱水素反応を実施したところ、反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)に得られた反応粗液の分析から、原料エタノール転化率は46.0%、アセトアルデヒド選択率は82.7%であった。 実施例2 (1)還元賦活化工程 組成がCu0:SiO2:Na2O(重量比=68:30:2)である固体触媒を用いる以外は、実施例1の還元賦活化工程と同様に触媒の賦活化を行った。 (2)脱水素化反応工程 触媒層温度を270℃とする以外は、実施例1の工程(2)と同様に、エタノールの脱水素化反応を行った。反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)における反応粗液の分析から、反応初期の原料エタノールの転化率は46.7%、消費エタノール基準のアセトアルデヒド選択率は88.6%であった。また、同条件で反応を700時間継続後、反応粗液を分析したところ、エタノール転化率は37.6%まで低下した。 (3)触媒再生工程 700時間反応後、触媒を反応管に入れた状態で、実施例1の工程(3)と同様に触媒の再生処理を行った。 (4)再生触媒を用いた脱水素化反応工程 上記の工程(3)により再生された触媒を用いて、上記工程(2)と同様の条件で、エタノールの脱水素反応を実施したところ、反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)の反応粗液の分析から、原料エタノール転化率は45.6%、アセトアルデヒド選択率は89.3%であった。 実施例3 実施例1と同様にして、固体触媒を還元賦活化し、脱水素化反応を行った。反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)の反応粗液の分析から、反応初期の原料エタノールの転化率は43.2%、消費エタノール基準のアセトアルデヒド選択率は89.0%であった。 原料エタノール中にジメチルスルフィドを930ppm相当添加し、脱水素化反応を継続した。ジメチルスルフィドの添加から、70時間後のエタノール転化率は4.7%、アセトアルデヒド選択率は83.3%であった。ジメチルスルフィドの添加から70時間後、触媒を反応管中に入れた状態で、実施例1の工程(3)と同様に、触媒の再生処理を行った。 再生された固体触媒を用いた、実施例1の工程(2)と同様の条件で、エタノールの脱水素反応を実施したところ、反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)の反応粗液の分析から、原料エタノール転化率は44.6%、アセトアルデヒド選択率は84.7%となった。 シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元する失活した銅触媒の再生方法。 高温かつ還元雰囲気下での使用によるシンタリング、又はスルフィド化合物の吸着により失活した銅触媒を、酸素含有ガスでの酸化に供する請求項1記載の再生方法。 アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造過程で失活した銅触媒を、酸素含有ガスでの酸化に供する請求項1又は2記載の再生方法。 アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造過程で失活した銅触媒を、溶剤による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、酸素含有ガスでの酸化に供し、さらに水素含有ガスにより気相で還元処理する請求項1〜3の何れかの項に記載の再生方法。 失活した銅触媒を、200〜500℃の温度で酸素含有ガスにより酸化し、100〜200℃の温度で水素含有ガスにより還元する請求項1〜4の何れかの項に記載の再生方法。 失活した固体銅触媒が、固体銅触媒の存在下、アルコールを脱水素化して得られ、この脱水素化に使用される固体銅触媒が、酸化ケイ素で構成された担体に、還元により金属銅を生成可能な銅化合物と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属助触媒とが担持された前駆体を、還元賦活処理して得られる触媒である請求項1〜5の何れかの項に記載の再生方法。 【課題】シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、効率よく再生できる銅触媒の再生方法を提供する。【解決手段】シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分(ジメチルスルフィドなどのスルフィド化合物など)の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元することにより、失活した固体銅触媒を再生する。前記失活触媒は、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造過程で失活した銅触媒であってもよい。失活触媒は、溶剤による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、酸素含有ガスでの酸化に供してもよく、水素含有ガスによる還元処理は気相で行ってもよい。【選択図】なし


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特許公報(B2)_銅触媒の再生方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_銅触媒の再生方法
出願番号:2008281084
年次:2013
IPC分類:B01J 23/94,B01J 38/10,B01J 38/12,C07C 45/29,C07C 47/07,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

田中 康隆 山浦 亮 JP 5225026 特許公報(B2) 20130322 2008281084 20081031 銅触媒の再生方法 株式会社ダイセル 000002901 鍬田 充生 100090686 阪中 浩 100142594 田中 康隆 山浦 亮 20130703 B01J 23/94 20060101AFI20130613BHJP B01J 38/10 20060101ALI20130613BHJP B01J 38/12 20060101ALI20130613BHJP C07C 45/29 20060101ALI20130613BHJP C07C 47/07 20060101ALI20130613BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130613BHJP JPB01J23/94 ZB01J38/10 BB01J38/12 BC07C45/29C07C47/07C07B61/00 300 B01J21/00−38/74 C07B31/00−63/04 C07C1/00−409/44 JSTPlus(JDreamII) CAplus(STN) WPI 米国特許第04855267(US,A) 特開2000−093800(JP,A) 特公昭48−019611(JP,B1) 特開平09−075734(JP,A) 特開昭50−020995(JP,A) 特公昭49−043476(JP,B1) 特表2006−503703(JP,A) 特開2006−102597(JP,A) 特開2002−320863(JP,A) 国際公開第2008/081792(WO,A1) 独国特許出願公開第19963441(DE,A1) R. J. FARRAUTO et al.,Poisoning by SOx of Some Base Metal Oxide Auto Exhaust Catalysts,Journal of Catalysis,Vol. 33, Pages 249-255 (1973) 6 2010104938 20100513 12 20110912 後藤 政博 本発明は、シンタリング(銅触媒の結晶化に伴う触媒表面積の低下)又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、効率よく再生できる固体触媒の再生方法に関する。 固体銅触媒は、種々の反応、例えば、アルコールの脱水素化によるカルボニル化合物(アルデヒド、ケトンなど)の製造、カルボニル化合物の水素化によるアルコールの製造などに広く利用されており、工業的に重要な触媒の1つである。 中でも、アルデヒドは、各種有機化合物の合成中間体などとして、工業的に極めて重要な化合物であり、アルコールからの工業的な合成法の確立が望まれている。また、アルコールを用いたアルデヒド製造は、脱石油原料であるバイオアルコール(バイオエタノールなどのバイオマス発酵法により得られるアルコール)が利用可能であるため、近年、注目されている。しかし、アルコールを用いたアルデヒド製造では、アルコールの転化率やアルデヒド選択率が不十分であったり、使用される銅触媒が失活し易いなどの問題がある。そのため、工業的には、アルコールを原料とするアルデヒド製造は殆ど実施されておらず、アセトアルデヒドは主としてエチレンを原料とするいわゆるワッカー法により製造されているのが現状である。 また、アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造に、固体銅触媒を用いる場合、平衡をアルデヒド側に有利にするため、触媒温度を200℃〜300℃程度の高温に保つ必要がある。しかし、還元状態で、このように高い温度に曝すと、活性種である金属銅の結晶粒子が成長して有効な表面積が低下し(いわゆるシンタリング現象が起き)、反応活性が次第に低下して、触媒寿命が極めて短くなるという問題点が知られている。 さらに、バイオエタノールを用いて、アルデヒドを製造する場合、バイオエタノールに不可避的に微量に含まれるジメチルスルフィドなどの硫化物が、触媒活性種である金属銅に強固に吸着して、触媒毒として作用し、触媒活性を低下させる問題も知られている。 失活触媒の再生方法としては、従来より種々の方法が知られているが、それらは一般に触媒表面に付着した有機成分(基質、主又は副生成物、これらの分解物や重合物など)を除去(燃焼、洗浄などの方法による除去など)するものであり、触媒本体の構造変化であるシンタリングやイオウ系触媒毒成分により活性低下した触媒を再生する方法はほとんど知られていない。 例えば、特開平9−75734号公報(特許文献1)には、反応使用中に失活した銅含有触媒を、水素含有ガスの前処理、酸素含有ガスによる酸化処理及び還元性ガスによる処理に供し、触媒を再生する方法が開示されている。また、特許文献1には、前処理が触媒上に付着した有機物を脱離し易くするためのものであること、及び特許文献1の再生方法は、熱的負担による触媒構成成分の結晶成長又は新しい化合物の形成に伴う活性低下に対しては不十分であることが記載されている。また、特開2000−93800号公報(特許文献2)には、失活した触媒の油分を溶剤で洗浄し、ついで触媒に残った溶剤を除去し、得られた触媒を酸素含有ガスで酸化し、得られた触媒を還元活性化する水素化触媒の再生法が開示されている。特許文献2には、油分を除去する工程が、酸化工程での油分の燃焼による発熱を抑制し、活性点である銅又はその酸化物のシンタリングを軽減することが開示されている。しかし、特許文献2では、シンタリングにより結晶が成長した触媒の再生については、何ら教示されていない。特開平9−75734号公報(請求項1,段落番号[0010][0014])特開2000−93800号公報(請求項1,段落番号[0009]) 従って、本発明の目的は、シンタリング(銅触媒の結晶化に伴う触媒表面積の低下)又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、効率よく再生できる銅触媒の再生方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、触媒を長寿命化でき、原料アルコールの転化率及びアルデヒドの収率を改善して、工業的なアルデヒド製造に利用可能な銅触媒の再生方法を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、酸素含有ガスで酸化し、水素含有ガスで還元すると、シンタリング(銅触媒の結晶化に伴う触媒表面積の低下)やイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒であっても、有効に再生可能であることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、本発明の再生方法は、シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元する失活した銅触媒の再生方法である。前記再生方法では、高温かつ還元雰囲気下での使用によるシンタリング、又はスルフィド化合物の吸着により失活した銅触媒を、酸素含有ガスでの酸化に供してもよい。また、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造過程で失活した銅触媒を、酸素含有ガスでの酸化に供してもよい。 本発明では、アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造過程で失活した銅触媒を、溶剤による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、酸素含有ガスでの酸化に供し、さらに水素含有ガスにより気相で還元処理してもよい。また、失活した銅触媒を、200〜500℃の温度で酸素含有ガスにより酸化し、100〜200℃の温度で水素含有ガスにより還元してもよい。 失活した銅触媒は、固体銅触媒の存在下、アルコールを脱水素化することにより得られる銅触媒であってもよく、脱水素化に使用される固体銅触媒は、酸化ケイ素で構成された担体に、還元により金属銅を生成可能な銅化合物と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属助触媒とが担持された前駆体を還元賦活処理した固体銅触媒であってもよい。 本発明では、失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、水素含有ガスで還元するので、シンタリングやイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した触媒であっても、効率よく再生することができる。そのため、触媒を長寿命化することもできる。また、原料アルコールの転化率及びアルデヒドの収率を改善することもでき、工業的なアルデヒド製造に有用である。 [固体銅触媒] 固体銅触媒としては、活性種としての銅を含有する限り特に制限されず、種々の反応に利用される固体銅触媒が使用できるが、通常、脱水素化又は水素化反応に利用される触媒、例えば、アルコールの脱水素化によりカルボニル化合物(アルデヒド、ケトンなど)を合成するための固体銅触媒、カルボニル化合物の水素化によりアルコールを合成するための固体銅触媒などが挙げられる。 活性種としての銅は、アルコールをアルデヒドに変換する活性を有する形態(又は状態)であればよく、金属銅(単体)、銅化合物(酸化物、水酸化物、銅塩(硫酸銅、リン酸銅、硝酸銅、炭酸銅などの無機酸塩;カルボン酸の銅塩などの有機酸塩など)など)の何れの形態であってもよい。固体触媒は、このような銅単体及び銅化合物から選択された少なくとも一種を含有すればよい。活性種としての銅は、金属銅の形態であるのが好ましい。また、銅は、金属銅又は銅化合物の形態で、そのまま用いてもよく、担体に担持させた形態で用いてもよい。 なお、活性種としての銅は、固体触媒の主たる触媒として作用すればよく、助触媒などと組み合わせて用いてもよい。また、固体触媒は、銅及び助触媒の双方が担体に担持された形態であってもよく、担体として助触媒を用い、銅触媒が助触媒に担持されていてもよい。 銅と組み合わせる助触媒としては、銅以外の各種金属又は金属化合物が挙げられる。助触媒に含まれる金属元素としては、例えば、アルカリ金属(Li、K、Naなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Baなど)、周期表第4族金属(Ti、Zrなど)、第5族金属(Vなど)、第6族金属(Cr、Mo、Wなど)、第7族金属(Mnなど)第8族金属(Fe、Ruなど)、第9族金属(Co、Rhなど)、第10族金属(Ni、Pd、Ptなど)、銅以外の第11族金属(Ag、Auなど)、第12族金属(Znなど)、第13族金属(Alなど)などが例示できる。助触媒は、これらの金属元素を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。 助触媒は、金属単体であってもよく、金属化合物、例えば、酸化物、水酸化物、塩(硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;カルボン酸塩などの有機酸塩など)などであってもよい。また、助触媒は、一種の金属単体又は金属化合物で構成してもよく、これらの形態の助触媒を複数含有してもよい。これらの助触媒のうち、酸化物、例えば、酸化ナトリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物などが好ましい。このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属酸化物は、適度な塩基性を有しており、表面酸性度の高い担体又は他の助触媒などを用いる場合であっても、固体触媒の表面酸性度(表面酸量)を特定の範囲に調整することができ、反応に有利である。 なお、銅(金属銅又は銅化合物など)と、助触媒との割合(重量比)は、例えば、0.1/100〜300/100、好ましくは1/100〜150/100、さらに好ましくは5/100〜80/100(例えば、10/100〜50/100)程度である。 銅及び/又は上記助触媒などは、担体に担持させてもよい。なお、助触媒と、担体とは、通常、種類の異なる化合物が使用される。このような担体としては、活性炭、ゼオライト、ベントナイト、シリカ(又は酸化ケイ素)、ジルコニア、チタニアなどの他、銅以外の金属の酸化物などが例示できる。金属酸化物としては、周期表第4族金属酸化物(酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)、酸化バナジウムなどの第5族金属酸化物、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステンなどの第6族金属酸化物、酸化マンガンなどの第7族金属酸化物、酸化亜鉛などの第12族金属酸化物、酸化アルミニウムなどの第13族金属酸化物などが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 上記担体のうち、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、第6族金属酸化物(酸化クロムなど)、第13族金属酸化物(酸化アルミニウムなど)などが好ましい。特に、担体として、少なくとも表面酸性度が比較的低い担体、例えば、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどを用いてもよい。中でも、表面酸性度がほとんどなく、大表面積のものが容易に得られ、かつ化学的安定性及び耐熱性にも優れ、毒性もない酸化ケイ素を用いるのが好ましい。 また、表面酸性度が低い担体(酸化ケイ素及び/又は酸化ジルコニウムなど)と、表面酸性度が高い担体(酸化クロムなどの周期表第6族金属酸化物など)などとを組み合わせてもよい。なお、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどの表面酸性度が低い担体と、酸化クロムなどの比較的表面酸性度が高い担体とを併用する場合、表面酸性度が高い担体(酸化クロムなど)の割合は、表面酸性度が低い担体(酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなど)100重量部に対して、例えば、50重量部以下、好ましくは0.01〜30重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部程度であってもよい。 固体触媒のうち、銅と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属助触媒とが担体に担持された触媒が好ましい。銅(又は銅化合物)の割合は、担体100重量部に対して、例えば、0.1〜300重量部、好ましくは1〜200重量部(例えば、2〜150重量部)、さらに好ましくは3〜100重量部(例えば、5〜80重量部)程度であってもよい。また、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(又は化合物)の割合は、担体100重量部に対して、例えば、0.1〜80重量部(例えば、0.1〜50重量部)、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜30重量部程度であってもよい。 なお、固体触媒は、上記銅化合物、助触媒(アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物など)、もしくはこれらの化合物を担体に担持した化合物を、そのまま触媒として用い、反応で生じる還元雰囲気下で銅化合物を活性な銅触媒(金属銅など)とする方法でもよく、そのままの状態では活性が低い又は不活性な場合には、適宜、慣用の賦活化方法により賦活化処理(還元賦活化処理など)して用いてもよい。 銅又は銅化合物、助触媒などの担体への担持は、慣用の方法(共沈法、含浸法など)により行うことができる。例えば、銅化合物を溶媒に溶解又は分散させた混合物を、助触媒及び/又は担体とともに、混合(混練なども含む)し、必要により溶媒を除去することにより担持してもよく、適宜、加熱処理、酸化処理、還元処理などにより、銅化合物などの活性成分を担体に固定化させてもよい。酸化銅を、担体に担持させる場合、例えば、硝酸銅などの塩を溶媒に溶解させた溶液と、担体(酸化ケイ素、酸化クロム、酸化アルミニウムなどの他、酸化マグネシウム、酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物を含む)とを混合し、酸化処理により銅塩(硝酸銅など)を酸化銅に変換することにより担持させることができる。また、担体(酸化ケイ素、酸化ケイ素及び他の金属酸化物(例えば、酸化クロムなどの周期表第6族金属の酸化物など)の組み合わせなど)に、銅化合物(酸化銅など)と、助触媒(アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物(酸化ナトリウム、酸化バリウム、及び酸化カルシウムなどの酸化物など)など)とを担持した前駆体を、還元賦活処理することにより、少なくとも銅(又は銅化合物)が活性化された固体触媒などとして用いてもよい。例えば、酸化銅などの銅化合物は、還元賦活処理により、金属銅に変換されてもよい。 還元賦活化は、固体触媒又はその前駆体(低活性又は不活性な固体触媒など)を、還元性ガス(水素含有ガスなど)雰囲気下で加熱することにより行うことができる。水素含有ガスなどの還元性ガスは、必要により、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)で稀釈して用いてもよい。加熱温度は、固体触媒又はその前駆体の種類によって、適宜選択でき、例えば、100〜300℃、好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃程度であってもよい。 固体触媒は、使用される固定床、流動床などの反応形態に応じて、粉末、顆粒、ペレットなど、種々の形状に成形して用いてもよい。また、固体銅触媒又はその前駆体としては、市販品を使用してもよい。 なお、固体触媒は、アンモニア昇温脱離(TPD)法による表面酸量が0〜3mmol/g、好ましくは0.0001〜1mmol/g程度であってもよい。固体触媒は、アンモニアTPD法による表面酸量が、0.10mmol/g以下(例えば、0〜0.10mmol/g)、好ましくは0.0001〜0.07mmol/g、さらに好ましくは0.001〜0.05mmol/g、特に0.05〜0.04mmol/g程度であってもよい。固体触媒の表面酸量は、担体、助触媒などを、これらの成分の表面酸量に基づいて組み合わせたり、その割合を調整することなどにより調整することができる。 [固体銅触媒の再生方法] (固体銅触媒の失活) 失活した固体銅触媒は、前記固体銅触媒を、適用される反応、例えば、脱水素化又は水素化反応(例えば、アルコールの脱水素化によるカルボニル化合物(アルデヒド、ケトンなど)の製造、カルボニル化合物の水素化によるアルコールの製造など)に供され、反応初期に得られる触媒活性よりも活性が低下した触媒を意味する。 特に、本発明では、固体銅触媒が、上記の反応(特に、還元状態での高温での反応など)などにより、シンタリングにより触媒活性種の銅(金属銅又は銅化合物など)の結晶が成長し、固体銅触媒の表面積が低下した状態、もしくは反応系に含まれるか又は副生するイオウ含有触媒毒成分が固体銅触媒に吸着され、活性種の銅と結合し、銅触媒が被毒された状態を意味する。 イオウ含有触媒毒成分としては、銅触媒を被毒する成分であれば特に制限されず、反応の種類や原料の種類などに応じて、例えば、硫化水素、硫化物(金属硫化物など)、メルカプタン(メチルメルカプタン、エチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタンなど)、硫酸又はそのエステル(硫酸メチル、硫酸エチルなどの硫酸アルキルなど)、スルホン酸又はそのエステル(スルホン酸メチル、スルホン酸エチルなどのスルホン酸アルキルなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシドなど)、スルフィド(アルキルスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどのジアルキルスルフィド(ジC1−4アルキルスルフィドなど)など)などが挙げられる。これらのイオウ含有成分は、一種又は二種以上、反応系に含まれていてもよい。特に、反応原料としてアルコールを用いる場合、前記スルフィドなどのスルフィド化合物が含まれる場合がある。特に、バイオエタノールには、不可避的に、アルキルスルフィド(ジメチルスルフィドなど)が含まれる。そのため、このようなイオウ含有触媒毒成分が反応系に含まれ、銅触媒を被毒する場合であっても、本発明の再生方法によれば、効率よく銅触媒を活性化でき、再生することができる。 シンタリングやイオウ含有被毒成分の吸着は、通常、条件が過酷であるほど生じやすい。例えば、高温での反応、長時間の反応、還元下での反応、又はこれらの条件の組み合わせなどにより、金属銅又は銅化合物が結晶化する傾向にある。例えば、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造では、反応温度を高くするほど、平衡がアルデヒド側に移動するため、高温での反応が有利である一方、シンタリングや被毒成分の吸着が起こりやすい。 本発明では、シンタリングやイオウ含有被毒成分の吸着により失活した触媒を容易に再生可能であるため、アルコールの脱水素化反応を高温で行うこともでき、アルデヒドを効率よく製造できる。反応温度は、例えば、150〜400℃、好ましくは170〜350℃、さらに好ましくは200〜300℃程度であってもよい。 また、反応は、常圧下又は減圧下で行ってもよいが、加圧下で行っても、反応後、触媒を効率よく再生可能である。反応時間は、例えば、30分〜3000時間、好ましくは1〜1500時間、さらに好ましくは10〜1000時間程度であってもよい。特に、300〜2000時間、好ましくは500〜1000時間程度の長時間の反応で、シンタリングやイオウ含有被毒成分の吸着により失活した触媒であっても、本発明の再生方法によれば、有効に触媒を活性化できる。 なお、固体銅触媒の失活の程度は、特に制限されないが、反応初期の基質の転化率を100としたとき、0〜90、好ましくは1〜85、さらに好ましくは5〜80(特に、10〜75)程度であってもよい。 本発明の再生方法は、特に、アルコールの脱水素化によるアルデヒドの製造で失活した固体銅触媒に有利に適用できる。 アルデヒドの製造において、失活した固体銅触媒は、活性な固体銅触媒と、アルコールとを接触させて、アルコールを脱水素化し、対応するアルデヒドを合成する過程で得ることができる。 アルデヒドの製造原料である基質アルコールとしては、一級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの脂肪族一級アルコール(1−C1−6アルカノールなど)、2−シクロヘキシルメタノールなどの脂環族一級アルコール(C5−8シクロアルキル−C1−6アルカノールなど)、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの芳香族一級アルコール(C6−10アリール−C1−6アルカノールなど)などが例示できる。これらのアルコールは、置換基、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル、エチル基などのアルキル基(C1−4アルキル基など);シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基;フェニル基などのC6−10アリール基;ニトロ基;アミノ基又はN−置換アミノ基などを有していてもよい。なお、これらの置換基は、アルコールの脂肪族部位(アルキル基の部分)、シクロアルカン環及び/又はアレーン環などに置換していてもよい。好ましいアルコールは、メタノール、エタノールなどの1−C1−4アルカノール、特にエタノールである。 反応に供するアルコールは、含水アルコールであってもよい。アルコール中の水分量は、例えば、0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%程度であってもよい。 前記アルコールの脱水素化により、アルコールのヒドロキシル基部分がオキソ基に変換されたアルデヒドが生成する。例えば、エタノールの脱水素化によりアセトアルデヒドを得ることができる。 反応は、アルコールを固体触媒と接触できればよく、液相反応であってもよいが、通常、気体状のアルコールと固体触媒とを気相で接触させる気相反応である場合が多い。 液相でバッチ反応方式にて反応を行う場合、基質アルコールに対する固体触媒の割合は、例えば、アルコール100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。 反応は、バッチ式で行ってもよいが、連続式で行うのが好ましい。連続反応の場合、アルコールの液空間速度(LHSV)は、例えば、0.5〜20h−1、好ましくは1〜10h−1、さらに好ましくは2〜7h−1程度であってもよい。 また、固体触媒の使用形態は、基質の物性、生産性などを勘案して慣用の形態から適宜選択でき、例えば、気相固定床、気相流動床、液相固定床、又は液相流動床などであってもよい。 (触媒再生) 本発明の再生方法では、上記のように、シンタリング又はイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元することにより再生する。 酸化工程において、使用する酸素含有ガスは、分子状酸素を含有すればよく、純粋な酸素ガス(分子状酸素)を用いてもよく、分子状酸素を不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンガスなど)、空気、二酸化炭素などで稀釈して用いてもよい。また、酸素含有ガスとして、空気を用いてもよい。なお、純粋な酸素含有ガスを用いると、固体銅触媒を必要以上に昇温し易いため、通常、不活性ガスや空気で希釈して用いる場合が多い。 酸化工程は、失活した固体銅触媒に酸素含有ガスを接触させることにより行うことができる。触媒を用いた反応(例えば、アルコールを原料とするアルデヒド製造など)後、引き続き、触媒の再生を行う場合、失活した触媒を反応器に収容した状態で、反応器に酸素含有ガスを添加することにより、容易に失活した触媒を酸化することができる。 酸化温度(固体銅触媒の温度)は、150〜500℃(例えば、200〜500℃)、好ましくは170〜450℃、さらに好ましくは180〜400℃程度であってもよい。酸化反応は高温ほど速やかに進行するが、触媒が高温になりすぎると、銅以外の担体や助触媒成分のシンタリングが不可逆的に進行する可能性がある。また、反応器中で酸化処理を行う場合、酸化熱により、触媒の異常昇温が起こる可能性がある。そのため、必要に応じて分子状酸素を窒素ガスなどの不活性ガスで希釈して実施するのが好ましい。 酸化処理は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。酸化処理の処理時間は、例えば、1〜100時間程度の範囲から適宜選択でき、好ましくは1.5〜50時間、さらに好ましくは2〜24時間(例えば、3〜12時間)程度であってもよい。 このような酸化処理により、銅触媒を酸化するとともに、ジメチルスルフィドなどの硫黄含有触媒毒成分を酸化する。例えば、銅触媒が金属銅である場合、金属銅の酸化により酸化銅に変化し、ジメチルスルフィドなどの硫化物は、酸化により、硫黄含有酸化物に変化する。 本発明では、特に、失活した銅触媒(アルコールの脱水素化によるアルデヒド製造過程で失活した銅触媒など)を、溶剤(炭化水素、ハロゲン系溶媒、アルコール、ケトン、エーテル、アミドなどの各種有機溶媒など)による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、酸素含有ガスでの酸化に供する。そのため、シンタリングやイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した銅触媒であっても、効果的に、酸化することができるとともに、イオウ含有触媒毒成分も酸化することができる。 酸化処理後の固体銅触媒は、さらに水素含有ガスによる還元工程に供する。還元工程で使用する水素含有ガスとしては、純粋な水素ガス(分子状水素)であってもよく、水素ガスを不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)、空気などで稀釈して用いてもよい。酸化した銅触媒(酸化銅など)の還元反応は、発熱反応であり、必要以上に触媒の温度が上昇するのを防ぐため、水素ガスは窒素ガスなどの不活性ガスで適宜希釈するのが好ましい。 還元工程の温度は、例えば、室温(20〜30℃程度)〜300℃、好ましくは50〜250℃、さら好ましくは100〜200℃程度である。なお、温度が高すぎると、還元された銅触媒が結晶化するシンタリングが進行し易くなる可能性がある。 還元反応は、不活性溶媒(炭化水素、エステル、アルコール、油脂類(高級脂肪酸、そのエステル又はアミドなど)など)中で液相還元してもよいが、通常、気相で行う。また、還元処理は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。 還元時間は、例えば、1〜50時間、好ましくは1.5〜24時間、さらに好ましくは2〜12時間(特に、3〜10時間)程度であってもよい。 このような還元工程により、酸化工程で酸化された銅触媒(酸化銅など)を、活性な銅触媒(金属銅など)に変換することができる。そして、得られた活性な銅触媒は、各種反応(例えば、アルデヒド製造、アルコール製造など)に利用できる。 本発明では、失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、水素含有ガスで還元するので、シンタリングやイオウ含有触媒毒成分の吸着により失活した固体銅触媒であっても、有効に再生することができる。そのため、本発明の再生方法は、固体銅触媒を用いる各種製造方法(特に、工業的な製造方法、例えば、アルコールを原料とするアルデヒドの製造方法など)で得られる失活触媒の再生処理に有用である。また、バイオエタノールなどのバイオマス発酵法により得られるアルコールなどを用いたアルデヒド製造により得られる失活触媒の処理にも適用できるため、脱石油原料の点からも有用である。 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 実施例1 (1)還元賦活化工程 組成がCuO:Cr2O3:BaO:SiO2(重量比=40:38:12:10)である固体触媒6mlを、ステンレス製反応管に充填して、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、次いで、反応管に水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、3L/hrの流量で流した。発熱がほぼ収まった段階で、水素ガスの流量を6L/hr、窒素ガスを0L/hrにし、触媒層を、温度170℃で6時間保持して還元賦活処理を行った。還元賦活処理により、触媒層の酸化銅は、触媒活性種である金属銅に変換された。 (2)脱水素化反応工程 次いで、反応管に、含水エタノール(水分量:6重量%)をLHSV=4.0h−1の供給速度で仕込み、触媒層温度260℃、常圧で脱水素反応を行った。得られた反応粗液をガスクロマトグラフにて分析した結果、反応初期(原料仕込み開始乃至仕込みから16時間までの間)に得られた反応粗液の分析から、反応初期の原料エタノールの転化率は42.6%、消費エタノール基準のアセトアルデヒド選択率は86.0%であった。また、同条件で反応を700時間継続後、反応粗液を分析したところ、エタノール転化率は31.5%まで低下した。 (3)触媒再生工程 700時間反応後、触媒を反応管中に入れた状態で、反応管に空気3.0L/hr(STP換算値、以下、同じ)及び窒素ガス3.0L/hrを流しつつ、触媒層を、温度300℃に昇温した。発熱がほぼ収まったところで、窒素ガスの供給を止めて空気の流量を6.0L/hr、窒素ガスの流量を0L/hrにし、触媒層を、温度400℃に昇温して12時間保持した。次いで、触媒層の温度を160℃まで下げ、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、さらに、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、3L/hrの流量で流した。発熱がほぼ収まった段階で、水素ガスの流量を6L/hr、窒素ガスの流量を0L/hrにし、触媒層を、温度170℃で6時間保持した。 (4)再生触媒を用いた脱水素化反応工程 上記の工程(3)により再生された触媒を用いて、上記工程(2)と同様の条件で、エタノールの脱水素反応を実施したところ、反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)に得られた反応粗液の分析から、原料エタノール転化率は46.0%、アセトアルデヒド選択率は82.7%であった。 実施例2 (1)還元賦活化工程 組成がCu0:SiO2:Na2O(重量比=68:30:2)である固体触媒を用いる以外は、実施例1の還元賦活化工程と同様に触媒の賦活化を行った。 (2)脱水素化反応工程 触媒層温度を270℃とする以外は、実施例1の工程(2)と同様に、エタノールの脱水素化反応を行った。反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)における反応粗液の分析から、反応初期の原料エタノールの転化率は46.7%、消費エタノール基準のアセトアルデヒド選択率は88.6%であった。また、同条件で反応を700時間継続後、反応粗液を分析したところ、エタノール転化率は37.6%まで低下した。 (3)触媒再生工程 700時間反応後、触媒を反応管に入れた状態で、実施例1の工程(3)と同様に触媒の再生処理を行った。 (4)再生触媒を用いた脱水素化反応工程 上記の工程(3)により再生された触媒を用いて、上記工程(2)と同様の条件で、エタノールの脱水素反応を実施したところ、反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)の反応粗液の分析から、原料エタノール転化率は45.6%、アセトアルデヒド選択率は89.3%であった。 実施例3 実施例1と同様にして、固体触媒を還元賦活化し、脱水素化反応を行った。反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)の反応粗液の分析から、反応初期の原料エタノールの転化率は43.2%、消費エタノール基準のアセトアルデヒド選択率は89.0%であった。 原料エタノール中にジメチルスルフィドを930ppm相当添加し、脱水素化反応を継続した。ジメチルスルフィドの添加から、70時間後のエタノール転化率は4.7%、アセトアルデヒド選択率は83.3%であった。ジメチルスルフィドの添加から70時間後、触媒を反応管中に入れた状態で、実施例1の工程(3)と同様に、触媒の再生処理を行った。 再生された固体触媒を用いた、実施例1の工程(2)と同様の条件で、エタノールの脱水素反応を実施したところ、反応初期(原料仕込みから12時間乃至16時間の間)の反応粗液の分析から、原料エタノール転化率は44.6%、アセトアルデヒド選択率は84.7%となった。 高温かつ還元雰囲気下での使用によるシンタリング、又はイオウ含有触媒毒成分としてのスルフィド化合物の吸着により失活した固体銅触媒を、酸素含有ガスで酸化し、さらに水素含有ガスで還元する失活した銅触媒の再生方法であって、 前記失活した固体銅触媒が、固体銅触媒の存在下、エタノールを脱水素化して得られた銅触媒であり、この脱水素化に使用される固体銅触媒が、酸化ケイ素で構成された担体に、還元により金属銅を生成可能な銅化合物と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属助触媒とが担持された前駆体を、還元賦活処理して得られる触媒であり、 エタノールの脱水素化によるアルデヒドの製造過程で失活した銅触媒を、溶剤による油分の除去処理又は水素含有ガスによる前処理をすることなく、200〜500℃の温度で酸素含有ガスでの酸化に供し、さらに100〜200℃の温度で水素含有ガスにより気相で還元処理する再生方法。 エタノールが含水エタノールであり、アルデヒドがアセトアルデヒドである請求項1記載の方法。 酸化温度が200〜400℃である請求項1又は2記載の方法。 イオウ含有触媒毒成分がジC1−4アルキルスルフィドである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 請求項1〜4のいずれかの方法により再生した固体銅触媒の存在下、エタノールを脱水素化してアルデヒドを製造する方法。 アルデヒドがアセトアルデヒドである請求項5記載の方法。


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