生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_シスチン‐ケラチン加水分解物複合体およびその製造方法
出願番号:2008277294
年次:2010
IPC分類:C07K 14/78,A61K 8/65,A61K 8/44,A61Q 7/00,A61Q 19/00,A23J 3/04,A23J 3/30,A23L 1/305


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木藤 良沢 鈴木 潔 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 JP 2010105931 公開特許公報(A) 20100513 2008277294 20081028 シスチン‐ケラチン加水分解物複合体およびその製造方法 ユーハ味覚糖株式会社 390020189 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 木藤 良沢 鈴木 潔 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 C07K 14/78 20060101AFI20100416BHJP A61K 8/65 20060101ALI20100416BHJP A61K 8/44 20060101ALI20100416BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20100416BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20100416BHJP A23J 3/04 20060101ALI20100416BHJP A23J 3/30 20060101ALI20100416BHJP A23L 1/305 20060101ALI20100416BHJP JPC07K14/78A61K8/65A61K8/44A61Q7/00A61Q19/00A23J3/04A23J3/30A23L1/305 6 1 OL 12 4B018 4C083 4H045 4B018LB08 4B018MD20 4B018MD69 4B018ME14 4B018MF10 4C083AA112 4C083AB312 4C083AC012 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC122 4C083AC132 4C083AC172 4C083AC242 4C083AC302 4C083AC422 4C083AC442 4C083AC482 4C083AC542 4C083AC581 4C083AC582 4C083AC852 4C083AD072 4C083AD152 4C083AD212 4C083AD332 4C083AD432 4C083AD441 4C083AD442 4C083AD642 4C083AD662 4C083CC02 4C083CC05 4C083CC28 4C083CC37 4C083DD31 4C083EE07 4C083EE12 4C083EE22 4H045AA10 4H045AA30 4H045CA40 4H045EA01 4H045EA20 本発明はケラチン加水分解物に新たな性質を付加することに関し、さらに詳しくはケラチン加水分解物に含硫アミノ酸であるシスチンを付与し、pH依存的に沈殿物を形成するシスチン‐ケラチン加水分解物複合体であり、従来ケラチン加水分解物を原料として製造してきた素材の代わりに用いることができる、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体に関する。 ケラチンは、毛髪・爪といった部位に対する保護作用・改善効果・発育効果を期待しやすいことから、健康食品・サプリメント市場において消費者に広く認知されている。原料としては羊毛・羽毛・角・鱗などが挙げられる。ケラチン加水分解物は、羊毛・羽毛等から調整したケラチンを、酵素や酸/アルカリで加水分解し、精製を行ったものである。ケラチン加水分解物は分子量数千程度であることが多く、300〜5000程度の大きさをもったペプチドの集合体である。最終製品は乾燥させた粉末・顆粒や溶液の形で提供される。 ケラチン加水分解物の元となるケラチンはヒトを含めた多細胞動物の角質組織に最も多量に含まれる繊維状タンパク質である。硬い毛髪・爪など角質組織の主要構成成分であり、毛髪・爪は硬ケラチン、柔らかい皮膚角質層は軟ケラチンと呼ばれるアミノ酸組成の若干異なるケラチンから構成される。 ケラチンの機能性は物理的機能と生理的機能に大別される。物理的機能としては酸化・還元機能・難生分解性が挙げられる。ケラチン中の含硫アミノ酸であるシステインのチオール基(−SH)の強い還元性によりジスルフィド(−SS−)結合が形成され、羊毛・毛髪の弾力性や強靭性といった優れた力学的特性が発現する。また、羊毛は綿・麻・絹と比べると難生分解性繊維であり土壌中での分解速度はかなり遅いことがわかっている(非特許文献1)。生理的特性としては、栄養素としての働きや、生理活性・生体調節機能としての働きが挙げられる。栄養学的特性は、アミノ酸組成として約18種類のアミノ酸から構成され、絹や繊維など他のタンパク質にはほとんど含まれないCys(システイン/シスチン)が14〜18%と多く含まれるという特徴をもつ。また塩基性アミノ酸のヒスチジン・リジン・アルギニンの比が1:3:10という特徴をもつ(非特許文献2)。生理活性としては、抗酸化作用をはじめ、抗癌プロモーション作用・抗発癌作用を有する(特許文献1)。 シスチンは含硫アミノ酸の一種であり、毛髪を構成する蛋白質ケラチンの主要成分として知られている。生体内では必須アミノ酸であるメチオニンから5つの段階を経てシステインとなり、2分子のシステインがチオール基(−SH)の酸化により生成するS−S結合(ジスルフィド結合)を介してつながった構造をもつアミノ酸となる。ポリペプチド中のシステイン間のジスルフィド結合はタンパク質の2次構造の維持に必要であり、毛髪においては、ケラチン中のシステイン間のジスルフィド結合が巻き髪の度合いを決める。さらには、毛髪に存在する硬ケラチンは、爪にも存在し、そのアミノ酸組成は毛髪と類似しており、シスチンを多く含有する。毛髪においては、ケラチン繊維中のシステイン残基間でジスルフィド結合が形成されてシスチンとなり、毛髪の弾力性・強靭性の向上に寄与することが知られている。また体内で代謝されると硫黄を発生し、他の物質と反応することで解毒する働きがあり、有毒金属や喫煙、飲酒などで生じる活性酸素や放射線などの害から体を守ることができると言われている。 そこで毛髪用化粧品の分野ではシスチンの有する特性を付加したシスチン導入ペプチドが開発されており(特許文献2)、その技術を用いて毛髪の損傷を防止し損傷した毛髪を回復させるための毛髪保護剤(特許文献3)や、パーマネントウェーブ時の毛髪の損傷を防止し、毛髪に優れたウェーブを付与でき、処理後の毛髪に艶・潤いなどを付与することができるパーマネントウェーブ用第1剤(特許文献4)が提供されている。また組織工学並びにバイオテクノロジーの分野で、インプラント等の生体材料への応用を目的として、チオール基の付加等の修飾によるコラーゲンの改質を行い、ジスルフィド結合を介して架橋可能なコラーゲン誘導体(特許文献5)が開発されている。一方ではチオール基を有する有機化合物(特許文献6)が開発され、縫合糸・生体代用物・接着剤として提供されている。上記の通り毛髪化粧品および組織工学並びにバイオテクノロジーの分野ではシスチンの有する特性を付加した素材の開発において進展が見られるが、それ以外の飲食品等の分野ではほとんど見られない。シスチンは前述したようにケラチンの主要成分であり、生体内では必須アミノ酸であるメチオニンから合成されるが、何らかの理由により体内のメチオニンが欠乏した場合にはシスチンの合成が相対的に減るため、ケラチンの量も低下し、毛髪や爪が脆弱になる。シスチンは毛髪や爪の成長に伴って消費されることを考えると、その質の改善のためには飲食品として摂取することが有効と考えられる。またシスチンをケラチンと併せて摂取することで、アミノ酸の単独過剰摂取による栄養バランスの喪失を防ぎ、吸収効率の向上も期待することができる。このようにシスチンの有する特性を付与した素材は有用なものであるが、その開発は進んでおらず、特に解毒作用・毛髪の保護・改善・発育作用等の特性を付加した素材が求められている。 また、ケラチンの有する特性を利用した医薬品・医薬部外品・飲食品用の素材として、例えば、ケラチンの生理活性に着目した抗酸化作用・抗癌プロモーション作用・抗発癌作用に優れる美容と健康の維持のために有用な生理活性作用組成物(特許文献1)、美爪用飲食品(特許文献7)、発毛・育毛用栄養補助食品(特許文献8)が提供されているが、それらの多くはケラチン加水分解物と他の蛋白質分解物・植物抽出物等の配合物であり、ケラチン加水分解物を他の機能性素材と複合化させて何らかの相乗効果を実現する方法は飲食品の分野では見られない。化粧品・繊維の分野においてシスチンとケラチンを結合させた素材が開発されており、化粧品への利用可能性が示されているが(特許文献2)、シスチンのジスルフィド結合による毛髪・皮膚への高い吸着性を付与したケラチンを製造し、毛髪への艶・潤いの付与作用を有するシスチン導入ペプチドとして提供している。しかしながら飲食品の分野での利用は考慮されておらず、かつ化粧品への利用としても複雑な化学合成を経て製造される。従って飲食品の分野で利用できるシスチンとケラチンの両者の特性を併せ持つ素材と、それを簡便な方法で製造する技術が待たれている。特開平11−139985号公報特開平10−287697号公報特開平11−269045号公報特開平11−269047号公報特開平6−80935号公報特表平9−503490号公報特開2001−321125号公報特開2007−236383号公報繊維と工業 Vol.62, No.11 (2006)「ケラチン繊維の機能−ジスルフィド結合の役割−」Ajico News 食と健康の情報誌 シリーズ“アミノ酸”No.13「毛髪とアミノ酸」 味の素株式会社発行 本発明の目的は、シスチンの作用とケラチンの作用とを共に有するシスチン‐ケラチン加水分解物複合体及びその製造方法、ならびに前記複合体を含有する飲食品及び化粧品を提供することにある。 本発明者らは、上記の事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、複雑な化学合成を経ないでも、摂取可能なシスチンとケラチンとの複合体が製造できることを見出し、毛髪および爪の保護・改善作用を併せ持つ素材として提供することをもって、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明の要旨は、(1)ケラチン加水分解物とシスチンとを含有することを特徴とするシスチン‐ケラチン加水分解物複合体、(2)シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、得られたシスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合し、pHを10未満に調整して得られる前記(1)記載のシスチン-ケラチン加水分解物複合体、(3)ケラチン加水分解物に対して2倍量までのシスチンを含有する前記(1)又は(2)記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体、(4)シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなる前記(1)〜(3)いずれかに記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法、(5)前記(1)〜(3)いずれかに記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有する飲食品、(6)前記(1)〜(3)いずれかに記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有する化粧品に関する。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体を飲食品等に添加して摂取することで、シスチンの有するメラニン色素の出現防止効果による美白作用とケラチン加水分解物の有する毛髪・爪の増強作用の両者における相乗効果を期待することができ、その結果として毛髪・爪・皮膚の損傷を防止し、損傷した毛髪・爪・皮膚を回復し、艶・なめらかさを付与することにおいて、これまで以上に効果を期待できる。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、ケラチン加水分解物とシスチンとを含有することを特徴とする。かかる特徴を有することで、シスチンの作用とケラチンの作用とを共に有する複合体を得ることができる。 本発明で使用するケラチン加水分解物の原料としては、獣毛、羽毛、爪、角、ひづめなどが挙げられるが、特に羊毛・羽毛等から調製した蛋白質を用いることが好ましい。前記ケラチン加水分解物の製造法としては、前記ケラチン原料をアルカリ分解、無機酸・有機酸による酸化分解、還元剤による還元分解及び酵素による酵素分解又はバイオリアクター法による分解により製造することができる。アルカリ分解、酸化分解、還元分解、酵素分解、バイオリアクター法による分解の条件としては、特に限定はなく、公知の条件であればよい。 ケラチン加水分解物としては、分子量300〜5000程度であればよい。 本発明で使用するシスチンとは、含硫アミノ酸であるシステイン2分子がS−S結合(ジスルフィド結合)を介してつながった構造を持ち、天然に多く存在するL体を用いるが、特にL体とD体の混合物あるいはD体のみでも複合体を製造することが可能であるが、これに制限されない。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法としては、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程(第1工程)と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程(第2工程)を含むことを特徴とする。 前記第1工程において、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する際には、シスチンとpH10以上のアルカリ溶液とをpH10以上に調整しながら混合したり、シスチンを強アルカリ性の水溶液中に混合し、pH調製剤等を添加してpH10付近に調整する等、種々の方法を行うことができる。 本発明で使用するアルカリとは、pH10以上の水溶液として用いることができ、例えば、炭酸カリウム・水酸化カリウム・炭酸ナトリウム・水酸化ナトリウムを用いることができるが、飲食品・化粧品の製造の観点からは炭酸カリウム・炭酸ナトリウムを使用することが好ましい。溶媒は水であればよい。アルカリ溶液中におけるアルカリの量としては、pH10以上となる量であれば特に限定はない。なお、pH10未満では十分に溶解することができず、本発明に用いることは好ましくない。 前記シスチンとアルカリ溶液とを混合する際には、アルカリ溶液は加熱しておけば速やかに溶解することができるので好ましい。 次いで、前記第2工程において第1工程で得られたシスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌する。 前記ケラチン加水分解物溶液は、ケラチン加水分解物の水溶液であればよい。ケラチン加水分解物を水又は温水中に混合して調製される。得られるシスチン溶液中におけるシスチンの含有量としては、2重量%以上が好ましい。シスチン溶液のpHは10以上である。 前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・攪拌は、室温で行えばよい。なお、混合液のpHが10以下となるようにすることで複合体が形成される。複合体が形成されることは混合液が白濁することで確認することができる。なお、本発明においては、シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液の混合は一度に行ってもよいが、いずれかを少量ずつ混合していくのが好ましい。また、攪拌速度は適当であればよい。 白濁が生じた混合液は、室温で静置することで複合体の形成を促進させることができる。 静置している混合液は、pH調整剤を添加して、pHを7付近まで低減させてもよい。静置時間は、特に限定はないが、30〜60分が好ましい。 白濁が生じた懸濁状態の混合液中に生成しているシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、遠心分離、ろ過等の公知の手段により、溶媒と分離して得ることができる。 得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体、水、緩衝液等の溶媒で洗浄することができるし、さらに乾燥することで固体状にすることができる。 上記のようにして得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、例えば、前記特許文献2などのように、従来の複雑な化学合成を経ることなく、合成過程で使用する試薬を除去して精製する必要がないので、飲食品・化粧品等の安全性への留意を要する製品にも容易に添加することができ、また、沈殿物として回収することにより、溶液以外の形でも容易に使用することのできるシスチン‐ケラチン加水分解物複合体である。 したがって、本発明は、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、得られたシスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合し、pHを10未満に調整して得られる請求項1記載のシスチン-ケラチン加水分解物複合体に関する。 なお、本発明のシスチン-ケラチン加水分解物複合体では、前記のような製造方法により得られることで、シスチンとケラチンか水分解物とが複合体を形成していることは後述の実施例に記載の結果より確認することができる。前記複合体の構造としては、明らかではないものの、本発明のシスチン-ケラチン加水分解物は、ケラチン加水分解物とシスチンとが共有結合などの強固な結合が形成されていないため、両者が分離し易く、ケラチンとシスチンとの性質が共に奏され易いと考える。 また、本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、原料として飲食品又は化粧品に添加することでシスチン特有の作用とケラチン特有の作用を共に付与した飲食品又は化粧品を調製することができる。 次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお以下の実施例などにおいて、溶液などの濃度を示す%は特にその単位を付記していないかぎり重量%である。実施例1 シスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、L−シスチンをまず90℃において、pH10以上の炭酸カリウム溶液に溶解して2%シスチン溶液を作製した。これを室温(25℃)に戻し、それにケラチン加水分解物の50%水溶液を徐々に添加して撹拌した。用いるケラチン加水分解物溶液としては、分子量300〜5000のケラチン加水分解物(一丸ファルコス社製)の33%水溶液を作製し、上記の2%シスチン溶液に添加した。室温(25℃)において、2%シスチン溶液10gに上記ケラチン加水分解物(一丸ファルコス社製)の33%溶液30gを徐々に混合・攪拌して、pHを7付近まで下げたところ、白濁を生じた。その後60分間続けて室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mリン酸緩衝液7.5gを添加してpHを7に調整した。この反応液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mリン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の沈殿物を得た。比較例 実施例1の対照として、室温(25℃)において、2%シスチン‐2%炭酸カリウム溶液5gに対して、1Mリン酸ニ水素ナトリウム溶液2.0gを混合・攪拌して、pHを下げたところ、白濁を生じた。その後30分間続けて室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mリン酸緩衝液5.5gを添加してpHを7に調整し、分子量300〜5000のケラチン加水分解物の33%溶液30gを徐々に混合・攪拌した。この反応液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mリン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチンの沈殿物を得た。試験例1 実施例1で得られた沈殿物の一部をダーラム管に取り、脱気して150℃1時間、酸加水分解した後、アミノ酸分析機でアミノ酸組成分析を行ったところ、シスチンとシステインの残基数の合計量がハーフシスチンとして33.7%検出された。さらに本発明でケラチン加水分解物として使用したケラチンSHパウダー(一丸ファルコス株式会社製)を特徴付けるアミノ酸であるアスパラギン酸・グルタミン酸・セリン・グリシン・プロリンは、各々12%・17%・19%・13%・11%検出された。対照とした比較例で得られた沈殿物の一部をダーラム管に取り、脱気して150℃1時間、酸加水分解した後、アミノ酸分析機でアミノ酸組成分析を行ったところ、グルタミン酸・セリン・アスパラギン酸・グリシン・プロリンほとんど検出されなかった。 実施例1及び比較例で得られた結果から算出した、遊離のアミノ酸を除外した、シスチンとの反応による沈殿物中のペプチドのアミノ酸組成を、人毛ケラチン・羊毛ケラチンのアミノ酸組成(非特許文献2)とともに、アミノ酸含有率として図1に示す。原料のケラチン加水分解物中のシスチン・メチオニン等のアミノ酸の割合はほとんど含まれていないため表示していない。 図1から明らかなようにシスチン‐ケラチン加水分解物反応実験で得られた沈殿物において、シスチン以外にケラチン加水分解物由来のアスパラギン酸・グルタミン酸・セリン・グリシン・プロリン等のアミノ酸が検出された。人毛ケラチン・羊毛ケラチンのアミノ酸組成と比較したところ、類似性も確認された。以上よりpHの変化を伴う反応により形成された沈殿物において検出されたケラチン加水分解物は、シスチンと複合体を形成していることが明らかになった。試験例2 実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の機能性(肌・毛髪・爪への効き目)について、10名のモニターを対象として、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有するコラーゲンペプチド飲料(30mg相当の前記シスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有する)を配布し、1日1本の試飲を2週間継続して摂取してもらった。2週間の3日目、7日目、10日目、14日目の各時期に、肌・毛髪・爪への効き目を実感したかどうかに関する質問(改善項目)に答えてもらい、5段階評価で効き目を定量した。数値は5が最大で効き目が最も高く、1が最小で効き目が最も低いことを示す。その結果を図2〜4に示す。図2〜4におけるコントロールとはシスチンとケラチンの混合物を含有する飲料を摂取してもらう実験を意味する。図2〜4におけるプラセボとはコラーゲンペプチドのみを含有する飲料を摂取してもらう実験を意味する。図中の評価は平均値である。図2〜4の結果から、本発明品であるシスチン‐ケラチン加水分解物複合体には、シスチンに特有の機能である美白作用とケラチンに特有の機能である毛髪や爪の保護・改善作用とがともに実感できるものであり、シスチンとケラチン加水分解物の混合物を摂取する場合よりも効果が実感されることがわかった。 なお、コントロールで使用したシスチンとケラチンの混合物は、シスチンをアルカリ溶液に溶解することなくケラチンと混合することで調製した。実施例2下記の処方により各成分を混合して、飲料を作製した。実施例3 下記の処方により各成分を混合して、化粧料(クリーム)を作製した。実施例4 下記の処方により各成分を混合して、化粧料(養毛・育毛クリーム)を作製した。 また、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体におけるシスチン含量の臨界性に関して試験をしたところ、シスチン200mgに対して過剰量のケラチン加水分解物(分子量300〜5000程度)10gを添加混合して得た複合体をアミノ酸組成分析した結果に基づいて計算すると、シスチンとケラチン加水分解物は、シスチン:ケラチン加水分解物=2:1(重量比)の比率で複合体を形成している。これより、本発明の製造方法では、シスチン及びケラチン加水分解物の混合比により、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体に含有されるシスチン及びケラチン加水分解物の量は変化しうるものの、或る分子量分布のケラチン加水分解物に対して多くとも2倍量のシスチンが吸着されると考える。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、前記のようにシスチンとケラチン加水分解物の機能と共に備えた機能性に優れるものであるため、皮膚のカサツキ防止・保水・毛髪や爪の増強、シミ・そばかすの原因となるメラニンの生成抑制・排出、抗酸化作用、活性酸素の不活性化、肝機能改善を目的として、飲食品に有効成分として好適に使用することができる。図1は、実施例1及び比較例で得られたシスチンと反して沈殿したケラチン加水分解物中のアミノ酸組成を、人毛ケラチン・羊毛ケラチンのアミノ酸組成とともに、アミノ酸残基の含有率として示したグラフである。図2は、実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体とコントロール及びプラセボの毛髪への効き目を評価した結果を示すグラフである。図3は、実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体とコントロール及びプラセボの爪への効き目を評価した結果を示すグラフである。図4は、実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体とコントロール及びプラセボの肌への効き目を評価した結果を示すグラフである。 ケラチン加水分解物とシスチンとを含有することを特徴とするシスチン‐ケラチン加水分解物複合体。 シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、得られたシスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合し、pHを10未満に調整して得られる請求項1記載のシスチン-ケラチン加水分解物複合体。 ケラチン加水分解物に対して2倍量までのシスチンを含有する請求項1又は2記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体。 シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなる請求項1〜3いずれか記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法。 請求項1〜3いずれかに記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有する飲食品。 請求項1〜3いずれかに記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有する化粧品。 【課題】睡眠誘発作用を有するトリプトファンの機能を向上させるトリプトファン−アガロオリゴ糖複合体及びその製造方法、ならびに前記複合体を含有する飲食品を提供すること。【解決手段】ケラチン加水分解物とシスチンとを含有することを特徴とするシスチン‐ケラチン加水分解物複合体。該シスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程を経て製造される。【選択図】図1


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特許公報(B2)_シスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法

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タイトル:特許公報(B2)_シスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法
出願番号:2008277294
年次:2014
IPC分類:C07K 1/12,C07K 14/78,A61K 8/65,A61K 8/44,A61Q 7/00,A61Q 19/00,A23J 3/04,A23J 3/30,A23L 1/305


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木藤 良沢 鈴木 潔 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 JP 5391649 特許公報(B2) 20131025 2008277294 20081028 シスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法 ユーハ味覚糖株式会社 390020189 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 木藤 良沢 鈴木 潔 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 20140115 C07K 1/12 20060101AFI20131219BHJP C07K 14/78 20060101ALI20131219BHJP A61K 8/65 20060101ALN20131219BHJP A61K 8/44 20060101ALN20131219BHJP A61Q 7/00 20060101ALN20131219BHJP A61Q 19/00 20060101ALN20131219BHJP A23J 3/04 20060101ALN20131219BHJP A23J 3/30 20060101ALN20131219BHJP A23L 1/305 20060101ALN20131219BHJP JPC07K1/12C07K14/78A61K8/65A61K8/44A61Q7/00A61Q19/00A23J3/04A23J3/30A23L1/305 C07K 1/00−19/00 A23L 1/30−1/305 PubMed JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII) 特開2007−236383(JP,A) 特開2004−347405(JP,A) 内藤幸雄、外1名,毛髪へのケラチン加水分解物の吸着とその効果,日本化粧品技術者会誌,1987年 9月,Vol.21,No.2,p.146−155 Journal of biochemistry. 1965, Vol.58, No.4, p.348-356 2 2010105931 20100513 11 20110801 清水 晋治 本発明はケラチン加水分解物に新たな性質を付加することに関し、さらに詳しくはケラチン加水分解物に含硫アミノ酸であるシスチンを付与し、pH依存的に沈殿物を形成するシスチン‐ケラチン加水分解物複合体であり、従来ケラチン加水分解物を原料として製造してきた素材の代わりに用いることができる、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体に関する。 ケラチンは、毛髪・爪といった部位に対する保護作用・改善効果・発育効果を期待しやすいことから、健康食品・サプリメント市場において消費者に広く認知されている。原料としては羊毛・羽毛・角・鱗などが挙げられる。ケラチン加水分解物は、羊毛・羽毛等から調整したケラチンを、酵素や酸/アルカリで加水分解し、精製を行ったものである。ケラチン加水分解物は分子量数千程度であることが多く、300〜5000程度の大きさをもったペプチドの集合体である。最終製品は乾燥させた粉末・顆粒や溶液の形で提供される。 ケラチン加水分解物の元となるケラチンはヒトを含めた多細胞動物の角質組織に最も多量に含まれる繊維状タンパク質である。硬い毛髪・爪など角質組織の主要構成成分であり、毛髪・爪は硬ケラチン、柔らかい皮膚角質層は軟ケラチンと呼ばれるアミノ酸組成の若干異なるケラチンから構成される。 ケラチンの機能性は物理的機能と生理的機能に大別される。物理的機能としては酸化・還元機能・難生分解性が挙げられる。ケラチン中の含硫アミノ酸であるシステインのチオール基(−SH)の強い還元性によりジスルフィド(−SS−)結合が形成され、羊毛・毛髪の弾力性や強靭性といった優れた力学的特性が発現する。また、羊毛は綿・麻・絹と比べると難生分解性繊維であり土壌中での分解速度はかなり遅いことがわかっている(非特許文献1)。生理的特性としては、栄養素としての働きや、生理活性・生体調節機能としての働きが挙げられる。栄養学的特性は、アミノ酸組成として約18種類のアミノ酸から構成され、絹や繊維など他のタンパク質にはほとんど含まれないCys(システイン/シスチン)が14〜18%と多く含まれるという特徴をもつ。また塩基性アミノ酸のヒスチジン・リジン・アルギニンの比が1:3:10という特徴をもつ(非特許文献2)。生理活性としては、抗酸化作用をはじめ、抗癌プロモーション作用・抗発癌作用を有する(特許文献1)。 シスチンは含硫アミノ酸の一種であり、毛髪を構成する蛋白質ケラチンの主要成分として知られている。生体内では必須アミノ酸であるメチオニンから5つの段階を経てシステインとなり、2分子のシステインがチオール基(−SH)の酸化により生成するS−S結合(ジスルフィド結合)を介してつながった構造をもつアミノ酸となる。ポリペプチド中のシステイン間のジスルフィド結合はタンパク質の2次構造の維持に必要であり、毛髪においては、ケラチン中のシステイン間のジスルフィド結合が巻き髪の度合いを決める。さらには、毛髪に存在する硬ケラチンは、爪にも存在し、そのアミノ酸組成は毛髪と類似しており、シスチンを多く含有する。毛髪においては、ケラチン繊維中のシステイン残基間でジスルフィド結合が形成されてシスチンとなり、毛髪の弾力性・強靭性の向上に寄与することが知られている。また体内で代謝されると硫黄を発生し、他の物質と反応することで解毒する働きがあり、有毒金属や喫煙、飲酒などで生じる活性酸素や放射線などの害から体を守ることができると言われている。 そこで毛髪用化粧品の分野ではシスチンの有する特性を付加したシスチン導入ペプチドが開発されており(特許文献2)、その技術を用いて毛髪の損傷を防止し損傷した毛髪を回復させるための毛髪保護剤(特許文献3)や、パーマネントウェーブ時の毛髪の損傷を防止し、毛髪に優れたウェーブを付与でき、処理後の毛髪に艶・潤いなどを付与することができるパーマネントウェーブ用第1剤(特許文献4)が提供されている。また組織工学並びにバイオテクノロジーの分野で、インプラント等の生体材料への応用を目的として、チオール基の付加等の修飾によるコラーゲンの改質を行い、ジスルフィド結合を介して架橋可能なコラーゲン誘導体(特許文献5)が開発されている。一方ではチオール基を有する有機化合物(特許文献6)が開発され、縫合糸・生体代用物・接着剤として提供されている。上記の通り毛髪化粧品および組織工学並びにバイオテクノロジーの分野ではシスチンの有する特性を付加した素材の開発において進展が見られるが、それ以外の飲食品等の分野ではほとんど見られない。シスチンは前述したようにケラチンの主要成分であり、生体内では必須アミノ酸であるメチオニンから合成されるが、何らかの理由により体内のメチオニンが欠乏した場合にはシスチンの合成が相対的に減るため、ケラチンの量も低下し、毛髪や爪が脆弱になる。シスチンは毛髪や爪の成長に伴って消費されることを考えると、その質の改善のためには飲食品として摂取することが有効と考えられる。またシスチンをケラチンと併せて摂取することで、アミノ酸の単独過剰摂取による栄養バランスの喪失を防ぎ、吸収効率の向上も期待することができる。このようにシスチンの有する特性を付与した素材は有用なものであるが、その開発は進んでおらず、特に解毒作用・毛髪の保護・改善・発育作用等の特性を付加した素材が求められている。 また、ケラチンの有する特性を利用した医薬品・医薬部外品・飲食品用の素材として、例えば、ケラチンの生理活性に着目した抗酸化作用・抗癌プロモーション作用・抗発癌作用に優れる美容と健康の維持のために有用な生理活性作用組成物(特許文献1)、美爪用飲食品(特許文献7)、発毛・育毛用栄養補助食品(特許文献8)が提供されているが、それらの多くはケラチン加水分解物と他の蛋白質分解物・植物抽出物等の配合物であり、ケラチン加水分解物を他の機能性素材と複合化させて何らかの相乗効果を実現する方法は飲食品の分野では見られない。化粧品・繊維の分野においてシスチンとケラチンを結合させた素材が開発されており、化粧品への利用可能性が示されているが(特許文献2)、シスチンのジスルフィド結合による毛髪・皮膚への高い吸着性を付与したケラチンを製造し、毛髪への艶・潤いの付与作用を有するシスチン導入ペプチドとして提供している。しかしながら飲食品の分野での利用は考慮されておらず、かつ化粧品への利用としても複雑な化学合成を経て製造される。従って飲食品の分野で利用できるシスチンとケラチンの両者の特性を併せ持つ素材と、それを簡便な方法で製造する技術が待たれている。特開平11−139985号公報特開平10−287697号公報特開平11−269045号公報特開平11−269047号公報特開平6−80935号公報特表平9−503490号公報特開2001−321125号公報特開2007−236383号公報繊維と工業 Vol.62, No.11 (2006)「ケラチン繊維の機能−ジスルフィド結合の役割−」Ajico News 食と健康の情報誌 シリーズ“アミノ酸”No.13「毛髪とアミノ酸」 味の素株式会社発行 本発明の目的は、シスチンの作用とケラチンの作用とを共に有するシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法を提供することにある。 本発明者らは、上記の事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、複雑な化学合成を経ないでも、摂取可能なシスチンとケラチンとの複合体が製造できることを見出し、毛髪および爪の保護・改善作用を併せ持つ素材として提供することをもって、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明の要旨は、(1)分子量300〜5000のケラチン加水分解物とシスチンとを含有するするシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法であって、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合および撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなるシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法、(2)前記シスチン‐ケラチン加水分解物複合体が分子量300〜5000のケラチン加水分解物に対して2倍量までのシスチンを含有する前記(1)記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法、に関する。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体を飲食品等に添加して摂取することで、シスチンの有するメラニン色素の出現防止効果による美白作用とケラチン加水分解物の有する毛髪・爪の増強作用の両者における相乗効果を期待することができ、その結果として毛髪・爪・皮膚の損傷を防止し、損傷した毛髪・爪・皮膚を回復し、艶・なめらかさを付与することにおいて、これまで以上に効果を期待できる。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、ケラチン加水分解物とシスチンとを含有することを特徴とする。かかる特徴を有することで、シスチンの作用とケラチンの作用とを共に有する複合体を得ることができる。 本発明で使用するケラチン加水分解物の原料としては、獣毛、羽毛、爪、角、ひづめなどが挙げられるが、特に羊毛・羽毛等から調製した蛋白質を用いることが好ましい。前記ケラチン加水分解物の製造法としては、前記ケラチン原料をアルカリ分解、無機酸・有機酸による酸化分解、還元剤による還元分解及び酵素による酵素分解又はバイオリアクター法による分解により製造することができる。アルカリ分解、酸化分解、還元分解、酵素分解、バイオリアクター法による分解の条件としては、特に限定はなく、公知の条件であればよい。 ケラチン加水分解物としては、分子量300〜5000程度であればよい。 本発明で使用するシスチンとは、含硫アミノ酸であるシステイン2分子がS−S結合(ジスルフィド結合)を介してつながった構造を持ち、天然に多く存在するL体を用いるが、特にL体とD体の混合物あるいはD体のみでも複合体を製造することが可能であるが、これに制限されない。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法としては、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程(第1工程)と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程(第2工程)を含むことを特徴とする。 前記第1工程において、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する際には、シスチンとpH10以上のアルカリ溶液とをpH10以上に調整しながら混合したり、シスチンを強アルカリ性の水溶液中に混合し、pH調製剤等を添加してpH10付近に調整する等、種々の方法を行うことができる。 本発明で使用するアルカリとは、pH10以上の水溶液として用いることができ、例えば、炭酸カリウム・水酸化カリウム・炭酸ナトリウム・水酸化ナトリウムを用いることができるが、飲食品・化粧品の製造の観点からは炭酸カリウム・炭酸ナトリウムを使用することが好ましい。溶媒は水であればよい。アルカリ溶液中におけるアルカリの量としては、pH10以上となる量であれば特に限定はない。なお、pH10未満では十分に溶解することができず、本発明に用いることは好ましくない。 前記シスチンとアルカリ溶液とを混合する際には、アルカリ溶液は加熱しておけば速やかに溶解することができるので好ましい。 次いで、前記第2工程において第1工程で得られたシスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・撹拌する。 前記ケラチン加水分解物溶液は、ケラチン加水分解物の水溶液であればよい。ケラチン加水分解物を水又は温水中に混合して調製される。得られるシスチン溶液中におけるシスチンの含有量としては、2重量%以上が好ましい。シスチン溶液のpHは10以上である。 前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合・攪拌は、室温で行えばよい。なお、混合液のpHが10以下となるようにすることで複合体が形成される。複合体が形成されることは混合液が白濁することで確認することができる。なお、本発明においては、シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液の混合は一度に行ってもよいが、いずれかを少量ずつ混合していくのが好ましい。また、攪拌速度は適当であればよい。 白濁が生じた混合液は、室温で静置することで複合体の形成を促進させることができる。 静置している混合液は、pH調整剤を添加して、pHを7付近まで低減させてもよい。静置時間は、特に限定はないが、30〜60分が好ましい。 白濁が生じた懸濁状態の混合液中に生成しているシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、遠心分離、ろ過等の公知の手段により、溶媒と分離して得ることができる。 得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体、水、緩衝液等の溶媒で洗浄することができるし、さらに乾燥することで固体状にすることができる。 上記のようにして得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、例えば、前記特許文献2などのように、従来の複雑な化学合成を経ることなく、合成過程で使用する試薬を除去して精製する必要がないので、飲食品・化粧品等の安全性への留意を要する製品にも容易に添加することができ、また、沈殿物として回収することにより、溶液以外の形でも容易に使用することのできるシスチン‐ケラチン加水分解物複合体である。 したがって、本発明は、シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解し、得られたシスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合し、pHを10未満に調整して得られる請求項1記載のシスチン-ケラチン加水分解物複合体に関する。 なお、本発明のシスチン-ケラチン加水分解物複合体では、前記のような製造方法により得られることで、シスチンとケラチンか水分解物とが複合体を形成していることは後述の実施例に記載の結果より確認することができる。前記複合体の構造としては、明らかではないものの、本発明のシスチン-ケラチン加水分解物は、ケラチン加水分解物とシスチンとが共有結合などの強固な結合が形成されていないため、両者が分離し易く、ケラチンとシスチンとの性質が共に奏され易いと考える。 また、本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、原料として飲食品又は化粧品に添加することでシスチン特有の作用とケラチン特有の作用を共に付与した飲食品又は化粧品を調製することができる。 次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお以下の実施例などにおいて、溶液などの濃度を示す%は特にその単位を付記していないかぎり重量%である。実施例1 シスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、L−シスチンをまず90℃において、pH10以上の炭酸カリウム溶液に溶解して2%シスチン溶液を作製した。これを室温(25℃)に戻し、それにケラチン加水分解物の50%水溶液を徐々に添加して撹拌した。用いるケラチン加水分解物溶液としては、分子量300〜5000のケラチン加水分解物(一丸ファルコス社製)の33%水溶液を作製し、上記の2%シスチン溶液に添加した。室温(25℃)において、2%シスチン溶液10gに上記ケラチン加水分解物(一丸ファルコス社製)の33%溶液30gを徐々に混合・攪拌して、pHを7付近まで下げたところ、白濁を生じた。その後60分間続けて室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mリン酸緩衝液7.5gを添加してpHを7に調整した。この反応液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mリン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の沈殿物を得た。比較例 実施例1の対照として、室温(25℃)において、2%シスチン‐2%炭酸カリウム溶液5gに対して、1Mリン酸ニ水素ナトリウム溶液2.0gを混合・攪拌して、pHを下げたところ、白濁を生じた。その後30分間続けて室温で放置して反応させ、反応終了後、1Mリン酸緩衝液5.5gを添加してpHを7に調整し、分子量300〜5000のケラチン加水分解物の33%溶液30gを徐々に混合・攪拌した。この反応液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去した後、残存する上清と沈殿物を0.1Mリン酸緩衝液で洗浄し、縣濁液を49000xg(20000rpm)で遠心分離して上清を除去し、乾燥させてシスチンの沈殿物を得た。試験例1 実施例1で得られた沈殿物の一部をダーラム管に取り、脱気して150℃1時間、酸加水分解した後、アミノ酸分析機でアミノ酸組成分析を行ったところ、シスチンとシステインの残基数の合計量がハーフシスチンとして33.7%検出された。さらに本発明でケラチン加水分解物として使用したケラチンSHパウダー(一丸ファルコス株式会社製)を特徴付けるアミノ酸であるアスパラギン酸・グルタミン酸・セリン・グリシン・プロリンは、各々12%・17%・19%・13%・11%検出された。対照とした比較例で得られた沈殿物の一部をダーラム管に取り、脱気して150℃1時間、酸加水分解した後、アミノ酸分析機でアミノ酸組成分析を行ったところ、グルタミン酸・セリン・アスパラギン酸・グリシン・プロリンほとんど検出されなかった。 実施例1及び比較例で得られた結果から算出した、遊離のアミノ酸を除外した、シスチンとの反応による沈殿物中のペプチドのアミノ酸組成を、人毛ケラチン・羊毛ケラチンのアミノ酸組成(非特許文献2)とともに、アミノ酸含有率として図1に示す。原料のケラチン加水分解物中のシスチン・メチオニン等のアミノ酸の割合はほとんど含まれていないため表示していない。 図1から明らかなようにシスチン‐ケラチン加水分解物反応実験で得られた沈殿物において、シスチン以外にケラチン加水分解物由来のアスパラギン酸・グルタミン酸・セリン・グリシン・プロリン等のアミノ酸が検出された。人毛ケラチン・羊毛ケラチンのアミノ酸組成と比較したところ、類似性も確認された。以上よりpHの変化を伴う反応により形成された沈殿物において検出されたケラチン加水分解物は、シスチンと複合体を形成していることが明らかになった。試験例2 実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の機能性(肌・毛髪・爪への効き目)について、10名のモニターを対象として、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有するコラーゲンペプチド飲料(30mg相当の前記シスチン‐ケラチン加水分解物複合体を含有する)を配布し、1日1本の試飲を2週間継続して摂取してもらった。2週間の3日目、7日目、10日目、14日目の各時期に、肌・毛髪・爪への効き目を実感したかどうかに関する質問(改善項目)に答えてもらい、5段階評価で効き目を定量した。数値は5が最大で効き目が最も高く、1が最小で効き目が最も低いことを示す。その結果を図2〜4に示す。図2〜4におけるコントロールとはシスチンとケラチンの混合物を含有する飲料を摂取してもらう実験を意味する。図2〜4におけるプラセボとはコラーゲンペプチドのみを含有する飲料を摂取してもらう実験を意味する。図中の評価は平均値である。図2〜4の結果から、本発明品であるシスチン‐ケラチン加水分解物複合体には、シスチンに特有の機能である美白作用とケラチンに特有の機能である毛髪や爪の保護・改善作用とがともに実感できるものであり、シスチンとケラチン加水分解物の混合物を摂取する場合よりも効果が実感されることがわかった。 なお、コントロールで使用したシスチンとケラチンの混合物は、シスチンをアルカリ溶液に溶解することなくケラチンと混合することで調製した。実施例2下記の処方により各成分を混合して、飲料を作製した。実施例3 下記の処方により各成分を混合して、化粧料(クリーム)を作製した。実施例4 下記の処方により各成分を混合して、化粧料(養毛・育毛クリーム)を作製した。 また、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体におけるシスチン含量の臨界性に関して試験をしたところ、シスチン200mgに対して過剰量のケラチン加水分解物(分子量300〜5000程度)10gを添加混合して得た複合体をアミノ酸組成分析した結果に基づいて計算すると、シスチンとケラチン加水分解物は、シスチン:ケラチン加水分解物=2:1(重量比)の比率で複合体を形成している。これより、本発明の製造方法では、シスチン及びケラチン加水分解物の混合比により、シスチン‐ケラチン加水分解物複合体に含有されるシスチン及びケラチン加水分解物の量は変化しうるものの、或る分子量分布のケラチン加水分解物に対して多くとも2倍量のシスチンが吸着されると考える。 本発明のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体は、前記のようにシスチンとケラチン加水分解物の機能と共に備えた機能性に優れるものであるため、皮膚のカサツキ防止・保水・毛髪や爪の増強、シミ・そばかすの原因となるメラニンの生成抑制・排出、抗酸化作用、活性酸素の不活性化、肝機能改善を目的として、飲食品に有効成分として好適に使用することができる。図1は、実施例1及び比較例で得られたシスチンと反して沈殿したケラチン加水分解物中のアミノ酸組成を、人毛ケラチン・羊毛ケラチンのアミノ酸組成とともに、アミノ酸残基の含有率として示したグラフである。図2は、実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体とコントロール及びプラセボの毛髪への効き目を評価した結果を示すグラフである。図3は、実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体とコントロール及びプラセボの爪への効き目を評価した結果を示すグラフである。図4は、実施例1で得られたシスチン‐ケラチン加水分解物複合体とコントロール及びプラセボの肌への効き目を評価した結果を示すグラフである。 分子量300〜5000のケラチン加水分解物とシスチンとを含有するシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法であって、 シスチンをpH10以上のアルカリ溶液に溶解する工程と、前記シスチン溶液とケラチン加水分解物溶液とを混合および撹拌することによりpH10未満の溶液中で複合体を形成させる工程からなるシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法。 前記シスチン‐ケラチン加水分解物複合体が分子量300〜5000のケラチン加水分解物に対して2倍量までのシスチンを含有する請求項1記載のシスチン‐ケラチン加水分解物複合体の製造方法。


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