タイトル: | 公開特許公報(A)_核内受容体PPARα、PPARδ並びにRXRの賦活剤 |
出願番号: | 2008272317 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 35/20,A61P 3/00,A61P 3/06,A61P 3/10,A61P 3/04,A61P 29/00,A61P 25/28,A23L 1/30 |
忍 和歌子 奥澤 亜美 小出 秀之 中野 智 高乗 仁 JP 2010100551 公開特許公報(A) 20100506 2008272317 20081022 核内受容体PPARα、PPARδ並びにRXRの賦活剤 株式会社セラバリューズ 507186687 岩城 全紀 100106954 忍 和歌子 奥澤 亜美 小出 秀之 中野 智 高乗 仁 A61K 35/20 20060101AFI20100409BHJP A61P 3/00 20060101ALI20100409BHJP A61P 3/06 20060101ALI20100409BHJP A61P 3/10 20060101ALI20100409BHJP A61P 3/04 20060101ALI20100409BHJP A61P 29/00 20060101ALI20100409BHJP A61P 25/28 20060101ALI20100409BHJP A23L 1/30 20060101ALN20100409BHJP JPA61K35/20A61P3/00A61P3/06A61P3/10A61P3/04A61P29/00A61P25/28A23L1/30 A 5 OL 13 4B018 4C087 4B018LB08 4B018LB10 4B018MD16 4B018MD71 4B018ME03 4B018ME04 4B018ME14 4B018MF01 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB39 4C087CA07 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA16 4C087ZA70 4C087ZB11 4C087ZC33 4C087ZC35 本発明は、乳脂肪を含む乳汁または乳汁画分を含有する、核内受容体の賦活剤に関する。より詳しくは、本発明は、乳脂肪を含む乳汁または乳汁画分を含有する、PPAR(ペルオキシソーム増殖剤受容体)α、PPARδ並びにRXR(レチノイドX受容体)の賦活剤に関する。 牛乳は乳牛より採取、調製される代表的な酪農産品であり、古来より種々の機能性が報告されている。牛乳の成分構成は、水分(約87質量%)と全固形分(約13質量%)から成り、全固形分は、タンパク質(主にカゼイン)2.9〜3.9質量%、脂質3.3〜5.3質量%、糖質4.4〜4.7質量%、無機質(ミネラル)0.7〜0.8質量%により構成されている。牛乳の各成分は特徴的であり、牛乳の機能性がこれらの牛乳成分に由来することが近年解明されてきている。牛乳の各種成分に由来する薬理作用として、牛乳成分であるカルシウムに依存しての骨粗鬆症の予防作用、牛乳成分であるムチン複合体、ラクトアルブミンおよび抗体に依存しての感染防御効果、牛乳成分であるミルク蛋白質に依存しての運動能力の向上および抗疲労効果、牛乳成分である共役リノール酸に依存する脂質低下作用、牛乳成分であるカルシウムおよびトリプトファンに依存する抗不眠症効果などが報告されている(非特許文献1〜9)。Lefebvre P.ら、J.Clin.Investig.、第116巻、p.571−580、2006年Wang Y.X.ら、Cell.、第113巻、p.159−170、2003年Devchand P.R.ら、Nature、第384巻、p.39−43、1996年Tan N.S.ら、Genes Dev.、第15巻、3263−3277、2001年Michalik L.ら、Nat.Rev.Cancer、第4巻、p.61−70、2004年Bragt M.C.ら、Physiol.Behav.、第94巻、p.187−197、2008年Walczak Rら、J.Lipid Res.、第43巻、p.177−186、2002年Tachibana K.ら、PPAR Res.2008、ID 102737、2008年Jiang Q.ら、CNS Drugs、第22巻、p.1−4、2008年 牛乳の薬理作用に関して、その作用機序は一定の解明がなされてきているが、未だ全面的な解明がされているとは言い難く、今後も牛乳中の新規機能成分の同定、新規の薬理作用およびその作用機序の解明が求められていくと考えられる。本発明は、牛乳の薬理作用をその作用点の同定から解明し、作用機序から演繹される牛乳の適切な予防、治療の対象となる疾患を特定し、牛乳を特定された疾患の予防、治療を目的として利用することを課題とする。 本発明者らは、近年解明されてきている核内受容体の薬理作用に注目した。牛乳の核内受容体に対する直接的作用の検討については、系統的な検討も含めて報告されていない。本発明者らは、牛乳の生活習慣病に関連する核内受容体に対する賦活作用を鋭意検討した。その結果、牛乳はPPARおよびRXRに対して、賦活作用を示すことを明らかにすることが出来た。また、牛乳が示した本作用は、既知の薬理作用を説明することが出来るものであると共に、従来知られていない薬理作用も推定させるものである。また、その作用は、乳脂肪画分に強く認められることをあきらかに知見した。本発明者らは、これら知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、[1]乳脂肪を含む乳汁または乳汁画分を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤、[2]核内受容体が、PPARα、PPARδおよびRXRから選択される少なくとも1の受容体である前記[1]に記載の賦活剤、[3]高脂血症、糖尿病または肥満、あるいはメタボリックシンドロームの予防、治療または改善用である前記[1]または[2]に記載の賦活剤、[4]炎症の予防、治療または改善用である前記[1]または[2]に記載の賦活剤、および[5]アルツハイマー症候群の予防、治療または改善用である前記[1]または[2]に記載の賦活剤、に関する。 本発明に係る賦活剤は、脂質代謝、糖代謝を制御するPPARのサブタイプαおよびδを賦活させることができる。また、本発明に係る賦活剤は、PPARαあるいはPPAR δとヘテロダイマーを形成して、PPAR機能を補助し、更に細胞増殖、分化を制御する機能を有するRXRαを賦活させることができる。 本発明に係る賦活剤のPPARに対する賦活作用は、脂肪細胞の分化誘導、脂肪細胞由来分泌因子であるアディポネクチンの産生増強、TNFαの産生抑制、アディポステロイド合成酵素11βHSD1の産生抑制、脂肪代謝関連酵素LPL、FATPの産生増強、糖代謝関連酵素グリセロールキナーゼ、PEPCK−Cの産生増強などを介して、高脂血症、糖尿病、肥満あるいはこれらを複合したメタボリックシンドロームの予防、治療に有用であることを含む。また、本発明に係る賦活剤のPPARに対する賦活作用は、転写因子NFκBなどの活性阻害を介して抗炎症作用を有することを含む。更に最近のPPARδ賦活剤がアルツハイマー症候群の予防、治療に有用であることが示されていることから、本発明に係る賦活剤もアルツハイマー症候群の予防、治療に有用であることを含む。さらに、PPARに対する本発明に係る賦活剤の賦活作用は以下の作用を介して、皮膚機能の改善に有用であることを含む。すなわち、PPARδの賦活作用は架橋酵素トランスグルタミナーゼ−1(transglutaminase−1)、架橋蛋白インボルクリン(involucrin)やCD36の産生を増強し、またPPARαの賦活作用は表皮セラミドを産生増強し、表皮透過障壁機能の増強による皮膚保湿に有用であることを含む。 本発明に係る賦活剤のRXRαに対する賦活作用は、ヘテロダイマー形成を介するPPARに対する補助作用を通じて、PPARの各種薬理作用を増強することを含む。また、RXRαに対する賦活作用は、細胞増殖作用の阻害、アポトーシスの誘導を介して抗癌作用を有することを含む。更に、本発明に係る賦活剤のRXRα賦活に基づく皮膚に対する作用として、皮膚表皮の増殖抑制、分化誘導および抗炎症作用を有することを含む。 以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。 乳脂肪は、例えば、牛乳などの哺乳類の乳に含まれる脂肪成分をいう。乳脂肪には、飽和脂肪酸(例えば、酪酸、パルミン酸など)、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、K)およびカロチンなどが含まれる。乳脂肪を含む乳汁としては、哺乳類の乳汁、例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳などが挙げられる。中でも生乳、牛乳が好ましい。乳脂肪を含む乳汁画分としては、例えば上記乳汁を原料として製造される乳脂肪を含む酪農製品などが好ましく挙げられる。酪農製品には、例えば、全粉乳、濃縮乳、アイスクリーム、生クリーム、バターまたはヨーグルトなどが含まれる。中でも生クリームが好ましい。生クリームは、例えば、牛乳から分離したクリームが挙げられ、通常、乳脂肪を約10質量%以上、好ましくは約30質量%以上含む。生クリームの製造方法は、例えば、牛乳(好ましくは、搾乳直後の生乳)を低温(約5℃)〜加温下、好ましくは加温下で、遠心分離機にかけ、乳脂肪を凝縮させ、分離する過程を含む。加温は、約35〜60℃が好ましい。分離された乳脂肪は、生クリームとしてそのまま使用され得るが、殺菌され、次いで急冷、熟成されることが好ましい。殺菌は低温加温下で公知の方法でおこなうことができる。急冷温度は、約3〜13℃が好ましい。熟成に要する時間は、通常約5時間以上、約8〜12時間程度が好ましい。バターは、例えば、牛乳中の脂肪を集めて、かたまりにしたもので、有塩バター、無塩バターまたは発酵バターなどが含まれる。 乳脂肪を含む乳汁画分は、例えば、牛乳(好ましくは、生乳)を静置して自然分離させる方法、遠心分離により、分離させる方法、溶媒を用いて抽出する方法などが挙げられる。遠心分離は、乳脂肪を含む乳汁画分を分離できる遠心分離機、例えば乳脂肪分離用遠心機などを用いることにより実施することができる。遠心分離は、加温下((約35〜60℃)で実施されることが好ましい。溶媒抽出における溶媒としては、例えば、油脂、ヘキサン、酢酸エチル、アセトンまたはアルコールなどが挙げられる。アルコールは限定されないが、メタノール、エタノールおよびプロパノールを含む。溶媒は、1種でもよく、または2種以上を混合して用いることもできる。溶媒は水を含んでいてもよい。この場合、含水量は、溶媒に対して約20容量%未満が好ましい。溶媒抽出後の抽出液は、溶媒除去することが好ましい。溶媒除去は公知の方法、例えば、加熱濃縮、減圧濃縮、凍結乾燥などにより実施できる。また、これらの抽出物は、核内受容体アゴニスト活性を失わない範囲内で脱臭、精製などの操作を加えることが出来る。溶媒除去した抽出物は、そのまま、または適切な溶媒や担体で希釈などして用いることができる。 核内受容体としては、PPARα、δ、 γ、LXRα、 β 、FXR(ファーネソイドX受容体)、RAR(レチノイン酸受容体)γ、RXR(レチノイドX受容体)α、ERα、 VDR(ビタミンD受容体)、TR(甲状腺ホルモン受容体)α、TRβ、PXR(Pregnane X Receptor)およびNrf−2などが挙げられるが、好ましくはPPARα、PPARδおよびRXRαである。 本発明係る賦活剤は生理学的に許容される添加物とともに種々の組成物とすることができる。組成物の形態は限定されず、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)や健康食品などの飲食品、医薬品、医薬部外品などとして用いることが出来る。組成物は、例えば、飲食用もしくは動物用が含まれる。 該組成物は、「予防剤」、「改善剤」、「飲食用組成物」、「飲料」、「食品」または「飼料」などと表記することもできる。 本発明に係る賦活剤は、生理学的に許容される添加物、例えば、担体、賦形剤、あるいは希釈剤などと混合し、組成物として経口、あるいは非経口的に投与することができる。経口用組成物としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤などの剤型とすることができる。非経口用組成物としては、外用薬剤などの剤型を選択することができる。外用薬剤としては、経鼻投与剤、あるいは軟膏剤、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、パップ剤などを挙げることができる。上記剤型は、公知の製剤技術を使用して製造できる。 例えば、経口投与用の錠剤は、賦形剤、崩壊剤、結合剤および滑沢剤などを加えて混合し、圧縮整形することにより製造することができる。賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、あるいはマンニトールなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、炭酸カルシウムやカルボキシメチルセルロースカルシウムなどが挙げられる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、あるいはポリビニルピロリドンなどが挙げられる。滑沢剤としては、タルクやステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。 錠剤は、マスキングや、腸溶性製剤とするために、白糖などによる糖衣や公知のコーティングを施すことができる。コーティング剤には、例えば、エチルセルロースやポリオキシエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどを用いることができる。 本発明に係る賦活剤の投与量は、投与方法、病状、患者の年齢などによって変化し得るが、通常、乳脂肪として、成人の場合、通常約0.01〜1g/kg体重程度であり、約0.1〜0.5g/kg体重が好ましい。これを牛乳として摂取する場合、その摂取量は成人1日当たり通常約0.3〜20mL/kg体重であり、約3〜10mL/kg体重が好ましい。 また、本発明に係る賦活剤は、種々の形態の飲料、スナック類、乳製品、調味料、でんぷん加工製品、加工肉製品などあらゆる食品に適宜配合することができる。 本発明の飲食品としては、例えば、飲料が好ましく挙げられる。飲料としては、茶系飲料、清涼飲料、果実飲料、野菜飲料、発泡性飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、またはアルコール性飲料などを挙げることができる。また、本発明の飲食品としては、液状、固形状、粉末状の嗜好飲料類、調味料および香辛料類、もしくは調理加工食品、および、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品などを挙げることができる。本発明に係るPPAR賦活剤を含む飲食品は、上述の各種疾患、症状または病態を予防または改善し得る。 飲食品には、その種類に応じて種々の添加物を配合することができる。添加物としては、食品衛生上許容される成分であれば特に制限されず、例えば、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤、還元型アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、還元型グルタチン、トコトリエノール、カロチン、カロチノイド、リコピン、カテキン、イソフラボン、フラボノイド類、ポリフェノール、コウジ酸、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ナイアシン、パントテン酸、葉酸カルシウム、アルブミン、エイコサペンタエン酸(EPA)、イヌリン、オリゴ糖、オルニチン、果糖、L−カルニチン、還元麦芽糖、乳酸オリゴマー、γ−アミノ酪酸、絹タンパク、グルコマンナン、クレアチン、ゲルマニウム、コエンザイムQ10、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、植物繊維、食物繊維、ゼラチン、チオクト酸、デキストリン、ドコサヘキサエン酸(DHA)、乳清、乳糖、ホスファチジルセリン、リノール酸またはリノレン酸などの食品添加物、マグネシウム、亜鉛、クロム、セレン、カリウムなどが挙げられる。 本発明に係る賦活剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、飲食品に対して、乳脂肪として約0.1〜100質量%であるのが好ましい。 また本発明は、本発明に係る賦活剤もしくは上記組成物を個体(例えば、患者など)へ投与する工程を含む、上述の各種疾患の予防または改善方法を提供する。 本発明の予防または改善方法の対象となる個体は、上述の各種疾患を発症し得る生物であれば特に制限されないが、好ましくはヒトである。 以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 なお、実施例において、略語は以下を意味する。 PPAR:ペルオキシソーム増殖剤受容体(peroxisome proliferator-activated receptor) RXR:レチノイドX受容体(retinoid X receptor) DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地(Doulbecco’s modified Eagle’s Medium) FBS:ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum) PBS:リン酸緩衝生理食塩水 CMV:サイトメガロウイルス(cytomegarovirus) VDR:ビタミンD受容体(Vitamin D Receptor) ER:エストロゲン受容体(Estrogen Receptor) TR:甲状腺ホルモン受容体(thyroid hormone receptor) T3:3,3’,5−トリヨード-L-チロニン(3,3’,5-triiodo-L-thyronine) 9cRA:9−シスレチノイン酸(9-cis-retinoic acid) UCP2:脱共役蛋白質2(uncouplingprotein 2) VitD3:1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1α,25-dihydroxy-vitamin D3) DNA:デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid) cDNA:相補的デオキシリボ核酸 RNA:リボ核酸(ribonucleic acid) mRNA:メッセンジャーRNA siRNA:スモールインターフェリングRNA(small interfering RNA) DNase:デオキシリボヌクレアーゼ(deoxyribonuclease) PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction) GAPDH:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3- phosphate dehydrogenase) Tm:融解温度(melting temperature) %は、特に明記しない場合は質量%を示す。 PPARα、δおよびγ賦活試験: PPAR α、δおよびγ賦活作用はPPAR α、δあるいはγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、サル由来CV−1細胞を2×105細胞/wellとなるよう6穴プレートに播種し、DMEM10%FBS中で1日培養した。次いで、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびPPAR α、δ、あるいはγのリガンド結合ドメイン(PPAR−LBD)が結合したキメラタンパクの発現プラスミド(pGal4DBD/PPAR−LBD)、Gal4応答配列(配列番号:CGGAGGACAGTACTCCG)およびホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド(pG5−Luc)、およびウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流にCMVプロモーターを連結したコントロールプラスミド(pGL4.75hRluc−CMV;Promega社製)を同時に各々1μg、0.9μg、0.1μg/wellとなるようトランスフェクション試薬(FuGENE HD;Roche社製)と共に加え、前記培養した細胞にプラスミドを導入した。その後形質転換細胞をトリプシンによりはがし、細胞をPBSにて洗浄後、1.6×104細胞/wellとなるよう96穴プレートに再度播種しなおした。この際、培養液を、被験物質を含むDMEM培地に交換し、さらに48時間培養した。PBSにて細胞を洗浄後、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社製)を用いてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を各々測定した。すなわち細胞溶解液で細胞を溶解し、ルシフェリンを含む基質溶液を加え、ルミノメーターにてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光量を各々測定した。なお、PPARα、δ、およびγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)は下記式のように定義した。式1 PPARα、δあるいはγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性) 上記に示すPPARα、δおよびγ賦活試験を用い、牛乳(日本ミルクコミュニティ株式会社製)添加時のPPARα、δおよびγ依存的なルシフェラーゼ活性を測定した。牛乳は原液および水希釈液を原液が0.005、0.05および0.5%(v/v)の濃度となるよう培地に添加した。陰性対照(ネガティブコントロール)として蒸留水を添加した群を、また陽性対照(ポジティブコントロール)としてPPARα、δおよびγ夫々に対してWY14643(Tocris Bioscience社製)、GW501516(Alexis Biochemicals社製)、およびピオグリタゾン(Pioglitazone;Alexis Biochemical社製)を夫々100μM、1μMおよび10μMとなるよう添加した群をそれぞれ作成した。 評価の結果を、図1に示す。牛乳はPPARαおよびPPAR δ に対して濃度依存的な賦活作用を示し、牛乳0.5%存在下では、夫々、コントロールに比して3.2および11.5倍の賦活作用を示した。なお、各ルシフェラーゼ活性値は、ネガティブコントロールにおけるルシフェラーゼ活性を1とし、それに対する相対値で示す。 賦活作用は実施例1に記載したPPAR 賦活作用の測定法と同様にして、各種酪農製品〔アイスクリーム(森永乳業株式会社製)、バター(雪印乳業株式会社製)、ヨーグルト(明治乳業株式会社製)〕および対照品として植物性クリーム(日本ミルクコミュニティ株式会社製)のPPAR 賦活作用を検討した。 各種酪農製品は原液あるいは蒸留水による希釈液を原液が0.005、0.05、0.5%の濃度となるよう培地に添加した。陰性対照として蒸留水を添加した群を、また陽性対照としてPPARα、δおよびγ夫々に対してWY14643、GW501516およびピオグリタゾンを夫々100μM、1μMおよび10μMとなるよう添加した群を作成した。 評価の結果を、図2に示す。各種酪農製品はPPARγに対しては何れも無作用であったが、PPARαおよびPPARδに対して濃度依存的な賦活作用を示した。一方、植物性クリームはPPARαには賦活作用を示さずPPARδにのみ活性を示した。各種酪農製品0.5%存在下では、PPARαに対してアイスクリーム、バターおよびヨーグルト夫々、陰性対照に比して2.3、1.8および1.5倍の賦活作用を示した。また、PPARδに対しては、アイスクリーム、バターおよびヨーグルト夫々、陰性対照に比して12.2、8.1および8.3倍の賦活作用を示した。 牛乳のPPAR 賦活作用に対する脱脂効果を検討するために、脱脂牛乳と牛乳のPPAR賦活作用を比較した。PPAR賦活作用は実施例1に記載したPPAR 賦活作用の測定法と同様にして検討した。 脱脂牛乳および牛乳(日本ミルクコミュニティ株式会社製)は原液あるいは蒸留水による希釈液を、原液が0.02、0.1、0.5%となるよう培地に添加した。陰性対照として蒸留水を添加した群を、また陽性対照としてPPARα、δおよびγ夫々に対してWY14643、GW501516およびピオグリタゾンを夫々100μM、1μMおよび10μMとなるよう添加した群を作成した。 図3に示すように、脱脂は牛乳のPPAR賦活作用を低減する効果を示したが、その効果はPPARαよりもPPARδにおいてより大きかった。脱脂牛乳および牛乳は0.5%存在下で、PPARaに対して、陰性対照に比し、夫々2.2、3.0倍の賦活作用を示し、PPARδに対しては、陰性対照に比し、夫々2.2、6.8倍の賦活作用を示した。 牛乳および生クリームの各種核内受容体に対する賦活作用を評価した。PPARα、PPARδ、PPARγ、VDR、ERα、ERβ、TRα、TRβおよびRXRαに対する賦活試験は実施例1に記載したPPAR 賦活作用の測定と同様にして、PPARα、PPARδ、PPARγ、VDR、ERα、ERβ、TRα、TRβおよびRXRα依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。 牛乳および生クリーム(日本ミルクコミュニティ株式会社製)は原液および蒸留水による希釈液を夫々、0.1%および0.5%の濃度で培地に添加した。陰性対照として蒸留水を添加した群を、また陽性対照として、PPARα、PPARδ、PPARγ、VDR、ER(α、β)、TR(α、β)およびRXRαに対して、WY14643、GW501516、ピオグリタゾン、VitD3(フナコシ社製)、β−エストラジオール(β−estradiol;和光純薬工業株式会社製)、T3(Sigma社製)および9cRAを夫々100μM、1μM、10μM、0.1μM、1μM、1μMおよび0.1μMとなるよう添加した群を作成した。 図4に示すように、牛乳および生クリームは共にPPARγ、VDR、ERα、ERβ、TRαおよびTRβに対しては賦活作用を示さなかった。一方、牛乳および生クリームはPPARα、PPARδおよびRXRαに対して賦活作用を示した。牛乳並びに生クリームの0.5%における、PPARα、PPARδおよびRXRαに対する賦活作用は、陰性対照に比し、夫々2.4、5.3および1.8倍並びに3.7、20.1および10.0倍であった。 UCP2mRNA合成増強作用評価試験には、ラット筋芽細胞L6を用いた。L6細胞を2×105/wellとなるよう6穴プレートに播種し、DMEM−10%FBS中で1日培養した。培養液を、被験物質を含むDMEM−10%FBSに交換した。被験物質(牛乳および生クリーム(日本ミルクコミュニティ株式会社製)は各々終濃度0.05%、0.5%となるように添加した。またPPAR−δ賦活剤の陽性対照としてGW501516(0.5μM)をDMSO終濃度0.2%となるように添加した。48時間培養後、PBSにて細胞を洗浄し、回収した。 回収した細胞からのトータルRNAの抽出はRNAqueous−4PCR(Ambion社製)のプロトコルに従って行った。調製後、DNase処理により混入したゲノムDNAを分解した。DNaseはDNase Removal Reagentにより除去した。 トータルRNAは0.2μg/μL濃度に調製し、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(ABI社製)のプロトコルにしたがって逆転写反応を行った。プライマーはランダムプライマーを使用した。この操作により、100ng/μL濃度のcDNAを得た。 牛乳および生クリームのPPARδ標的遺伝子であるUCP2のmRNA合成増強作用は、リアルタイムPCR法により評価した。100ngのcDNAにプライマー(5μM)およびSYBR Green PCR master mix(Qiagen社製)を加え、リアルタイムPCR装置(Applied Biosystems社製)にて反応を行った。アニール温度はプライマーのTm値に設定した。対照としてマウスGAPDHの発現も同時に測定し、補正値をグラフ化した。 図5に示すように、牛乳および生クリームは濃度依存的にラットUCP2のmRNA合成を増強し、0.5%において夫々陰性対照の1.7および3.5倍の増強作用を示した。 牛乳および生クリームのUCP2mRNA合成増強作用がそれらのPPARδ賦活作用に基づくものであることを確認するために、ラットUCP2に対するsiRNAノックダウン処理が牛乳および生クリームのUCP2mRNA合成増強作用に及ぼす影響を検討した。 牛乳および生クリームUCP2mRNA合成増強作用評価試験には、ラット筋芽細胞L6を用いた。L6細胞を1×105/wellとなるよう6穴プレートに播種し、DMEM−10%FBS中で1夜培養した。培養液を新鮮培地と交換した後、50pmol/wellのラットPPARδ-siRNA(カクテル、B−Bridge)あるいはcontrol−siRNA(B−Bridge社製)とFu GENE HD(Roche社製)との混合液を添加し、6時間培養した。細胞をトリプシン処理により剥して1本のチューブに集め、遠心後、新鮮培地に懸濁し、6−穴プレートに均等分播種し、一夜培養した。培養液を、被験物質を含むDMEM−10%FBS培地に交換した。被験物質〔牛乳および生クリーム(日本ミルクコミュニティ株式会社製)〕は夫々終濃度0.5%となるように添加した。またPPARδ賦活剤の陽性対照としてGW501516(0.5μM)をDMSO終濃度0.2%となるように添加した。48時間培養後、PBSにて細胞を洗浄し、回収した。 回収した細胞からのトータルRNAの抽出、逆転写反応によるcDNA合成およびリアルタイムPCR法によるmRNAの定量は実施例5と同様にして行った。 図6に示すように、使用したラットsiRNAは予備実験により、PPARδを約60%ノックダウンすることを先に確認している。PPARδ−siRNAは陽性対照のGW501516によるUCP2mRNA合成を61%阻害し、UCP2−mRNAの合成増強がPPARδに依存することを示している。PPARδ−siRNAは牛乳および生クリームによるUCP2−mRNAの合成増強を夫々55%および36%阻害し、このことは、牛乳および生クリームによるUCP2−mRNAの合成増強もPPARδに依存することを示すものである。 本発明に係る賦活剤は、核内受容体、とりわけPPARα、PPARδおよびRXRαを賦活させる作用を有するので、核内受容体、とりわけPARα、PPARδまたはRXRαが関与する疾患、例えば、高脂血症、糖尿病、肥満あるいはこれらを複合したメタボリックシンドローム、炎症、アルツハイマー症候群、皮膚機能障害(皮膚乾燥症および皮膚炎症)を予防、治療または改善に有用である。図1は、牛乳のPPAR賦活作用を示す図である。(実施例1)図2は、アイスクリーム、バターおよびヨーグルトのPPAR賦活作用を示す図である。(実施例2)図3は、脱脂牛乳のPPAR 賦活作用を示す図である。(実施例3)図4は、各種核内受容体に対する牛乳および生クリームの賦活作用を示す図である。(実施例4)図5は、UCP2遺伝子発現増強作用に対する牛乳および生クリームの効果を示す図である。(実施例5)図6は、UCP2遺伝子発現増強作用に対するsiRNAの効果に及ぼす牛乳および生クリームの作用を示す図である。(実施例6) 乳脂肪を含む乳汁または乳汁画分を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤。 核内受容体が、PPARα、PPARδおよびRXRから選択される少なくとも1の受容体である請求項1に記載の賦活剤。 高脂血症、糖尿病または肥満、あるいはメタボリックシンドロームの予防、治療または改善用である請求項1または2に記載の賦活剤。 炎症の予防、治療または改善用である請求項1または2に記載の賦活剤。 アルツハイマー症候群の予防、治療または改善用である請求項1または2に記載の賦活剤。 【課題】牛乳の薬理作用をその作用点の同定から解明し、作用機序から演繹される牛乳の適切な予防、治療の対象となる疾患を特定し、牛乳を特定された疾患の予防、治療を目的として利用すること。【解決手段】乳脂肪を含む乳汁または乳汁画分を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤。【選択図】なし配列表