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タイトル:公開特許公報(A)_抗体/抗原結合能を有する高感度免疫学測定用ナノ粒子
出願番号:2008269000
年次:2010
IPC分類:G01N 33/543,G01N 33/544,G01N 33/53,G01N 33/576


特許情報キャッシュ

平松 紳吾 鄭 基晩 黒田 俊一 谷澤 克行 飯嶋 益巳 JP 2010096677 公開特許公報(A) 20100430 2008269000 20081017 抗体/抗原結合能を有する高感度免疫学測定用ナノ粒子 東レ株式会社 000003159 国立大学法人大阪大学 504176911 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 平松 紳吾 鄭 基晩 黒田 俊一 谷澤 克行 飯嶋 益巳 G01N 33/543 20060101AFI20100402BHJP G01N 33/544 20060101ALI20100402BHJP G01N 33/53 20060101ALI20100402BHJP G01N 33/576 20060101ALI20100402BHJP JPG01N33/543 525EG01N33/543 525UG01N33/544 AG01N33/53 UG01N33/53 NG01N33/576 B 13 OL 29 (出願人による申告)平成19年度生物系特定産業技術研究支援センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 本発明は、該粒子の製造方法、該粒子を担体に結合させたアフィニティビーズ、該粒子と抗体/抗原が結合したものを用いて、該分子によって捕捉される測定対象物質を、ELISA法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、蛍光免疫測定法(FLISA)、細胞免疫染色法、組織免疫染色法、フローサイトメトリー法、蛍光標示式細胞分取法(FACS)、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、二面偏波式干渉法(DPI)、エリプソメトリー法、ELISPOT法、または、ウェスタンブロッティング法を用いて測定感度を上昇させる方法、および該方法に用いるプレートまたはセンサーチップに関するものである。 ELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)、酵素免疫測定法(Enzyme ImmunoAssay;EIA)、蛍光免疫測定法(Floresence−Linked Immuno Sorbant Assay; FLISA)ウェスタンブロッティング、組織染色法、フローサイトメトリー法、蛍光標示式細胞分取法(Fluorescence Activated Cell Sorting; FACS)、放射免疫測定法(Radioimmunoassay;RIA)、ELISPOT法(Enzyme−Linked Immuno−Spot)、蛍光免疫検定法(Fluorescence Immuno Assay;FIA)、固相蛍光免疫検定法(Fluorescence−Linked Immuno Sorbent Assay;FLISA)などに代表される免疫学的測定は、1941年、Coonsらによる蛍光色素を標識した抗体で形質細胞のIgGを検出した蛍光抗体法の確立から端を発しており、次いでNakane、Pierceらによる酵素抗体法の開発(1966年)を受け、peroxidase−anti−peroxidase;PAP法(1970年)、avidin−biotylated−peroxidase complex;ABC法(1981年)、labeled streptavidin biotynlated antibody;LSAB法(1984年)などが開発されてきた(非特許文献1参照)。 免疫学的測定は、抗原に対する特異抗体を反応させ、さらなる抗原・抗体反応、あるいは化学反応を巧みに組み合わせて特異抗体と標識物質の免疫複合体を形成し、最終的に標識酵素の発色反応や標識蛍光の蛍光強度によって抗原の存在を可視化・定量化する原理に基づいており、抗体を用いることでクルードなサンプル中においても抗原(検出の目的物質;タンパク質、ペプチド、核酸、糖鎖、化合物など)のみを選択的に染色することができる優れた研究手法である。これによって、検出のターゲットである抗原を精製せずしてその存在量を定量したり、細胞内における抗原の局在場所を特定することができるため、免疫学的測定技術はライフサイエンス分野やバイオ研究分野において広く普及している。 近年、ナノサイズの素材を用いて、免疫学的測定の感度を向上させる手法が研究されており、その一例として、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質が、自己組織化によって細胞内の脂質2重膜を取り込むことにより形成した中空ナノ粒子を用いた物質のセンシング方法が開示されている(特許文献1参照)。生分解性の該中空ナノ粒子の表面に抗体などの物質認識分子を提示させ、微量物質のセンシングへの適用する技術が開示されている。これは、自己組織化能を有するタンパク質が、脂質2重膜を取り込むことにより形成されるナノサイズの粒子を用いた免疫学的測定について開示している。しかしナノサイズの粒子表面に抗体を立体障害無く高密度で整列提示することが依然として課題であり、その解決方法は開示されていない。また、ナノサイズの粒子表面に抗体/抗原結合用タンパク質と抗体/抗原非結合タンパク質をともに発現させて、該粒子表面に効率よく抗体/抗原を提示させる方法は開示されていない。 微量物質の検出方法としては大別すると、目的とする物質を直接もしくは基板上に固層化した抗体/抗原などを介して捕捉し、補足した目的物質の検出を、抗原抗体反応などを利用して蛍光や発色、発光などにより行う上記免疫学的方法、あるいは物質との結合を直接感知する表面プラズモン共鳴法(Surface Plasmon Resonance;SPR)や水晶振動子法(Quartz Crystal Microbalance;QCM)、二面偏波式干渉法(Dual polarization Interferometer;DPI)、エリプソメトリー法(Ellipspometry)等によるセンシング方法がある。 SPR、QCM、DPIまたは、エリプソメトリー法において、目的とする物質を捕捉・認識可能な抗体やFc融合タンパク質を基板上に結合させる手法が用いられている。SPRは金属(誘導体)界面に局在しながら界面に沿って伝搬する電磁波である表面プラズモンを利用し、物質が結合したときの金属表面での電荷密度波の変化を測定することで物質の結合力や量を測定する方法である。QCMは水晶発振子に設置した電極上に吸着した質量に比例して基本振動数が減少することを利用し、ピコグラムレベルで物質の結合量や結合と解離の速度が測定できる方法である(非特許文献3参照)。 基板上に固層化もしくは結合する抗体/抗原やFc融合タンパク質の方向を整列させ、目的とする物質を認識できるように固層化もしくは結合させることはセンシングの感度を高めるために重要な要素であるが、抗体/抗原やFc融合タンパク質の方向を整列させることは容易でなく、抗体/抗原の種類や基板の種類、溶液のイオン強度やpH等様々な要因の影響を受けることが知られている(非特許文献3参照)。抗体/抗原の方向を整列させて基板上に固層化もしくは結合させるには、多大な労力により最適な条件を抗体/抗原やFc融合タンパク質ごとに見つけ出す必要がある上、抗体/抗原やFc融合タンパク質の種類や純度、状態によっては不可能なこともある。このため、数種類の抗体/抗原やFc融合タンパク質を個別に整列させた抗体/抗原アレイやFc融合タンパク質アレイを作製することは極めて困難であった。さらに、物理的吸着によって基板(固相)に吸着、不溶化した抗体/抗原は、センシングの過程の洗浄工程で少しずつ脱落し、さらに界面活性剤を含む溶液を用いる洗浄工程で多量に脱落することが知られている(非特許文献4参照)。 基板上に抗体/抗原の方向を整列させて固定する目的で、基板上の官能基と抗体/抗原上の特異的官能基とを反応させることにより抗体/抗原の方向を制御する方法が開示されている(特許文献2)。この方法では、抗体/抗原分子の一部分のみに特異的な官能基を作製するため、予め全ての官能基を化学反応により保護しなければならず、さらに抗体/抗原分子の一部を酵素により欠損させることや、還元剤によるジスルフィド結合の解離を行う必要もある。こうした過程は、抗体および抗原間の認識能や抗原/抗原間結合能などの機能が変化もしくは低下する危険性があり、検出の感度や精度の低下の原因となる。 さらに、基板上に固層化もしくは結合された抗体/抗原の密度も検出には重要な因子であり、目的物質の抗体による捕捉率は、単位面積あたりに固層化もしくは結合された抗体/抗原の量に依存する。 また、微量物質の検出においては非特異的なシグナルが検出精度を低下させる大きな要因となる。特に基板への非特異的な吸着や相互作用はSPR法やQCM法、DPI法または、エリプソメトリー法において目的物質の検出や相互作用の検出において重大な問題となる。基板への目的物質の非特異的相互作用を防止する目的で、アルブミンやカゼインを含む溶液でブロッキング、コーティングすることが行われているが、非特異的相互作用を完全に防止するには不充分である。 基板を有機薄膜で被覆し、有機薄膜上の複数箇所に抗体/抗原を固定したアレイについて開示されており、抗体/抗原の固定にアダプターや親和性タグを用いる手法も同時に開示されている(特許文献3参照)。しかし微量物質のセンシングにおいて重要な単位面積あたりに結合もしくは固層化された抗体/抗原量を増加させる手法、すなわち抗体/抗原の高密度な整列固定を可能にすることは達成されておらず、非特異的相互作用を防止する手法も開示されていない。 一方、B型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質を含む中空ナノ粒子の表面に抗体結合部位を介して抗体を提示した例が知られているが(ZZ粒子;特許文献4参照)、自己組織化能を有するタンパク質がすべて抗体結合能を有するタンパク質より構成されるナノサイズの粒子(ZZ粒子)においては、ZZドメイン1分子あたりおよそ0.14〜0.49個のIgG分子しか結合しないことから、効率的な抗体の提示ができない点が問題となっていた。ウリケら(Ulrike、K.et al.)、ジャーナルオブヒストケミストリアンドサイトケミストリ(Journal of Histochemistry and Cytochemistry)、2001年、第49巻、p623−630.大島ら著、ポストシーケンスタンパク質実験法3、東京化学同人、2002年、p115−137.ジョン アール クラウザー(John R. Crowther)著、メソッヅ イン モレキュラー バイオロジー149 ジ イライサ ガイドブック(Methods in Molecular Biology The ELISA Guidebook)、ヒューマナ プレス(HUMANA PRESS)、2001年、p297−299.石川 榮治 著、生化学実験法48、学会出版センター、2003年、p51、p60国際公開第2005/095968号パンフレット特開平10−182693公報特表2002−520618公報特開2004−2313号公報 以上のような状況に鑑み本発明では、1)該粒子が生分解性であり、2)該粒子表面に抗体/抗原を高効率で整列提示可能である、直径がナノサイズの粒子が抗体結合能を有する高感度免疫学的測定用ナノ粒子、並びに3)該粒子が担体に結合したアフィニティビーズ、並びに4)該粒子を用いて抗体/抗原分子を、ELISA、RIA、FIA、EIA、FLISA、細胞免疫染色、組織免疫染色、ELISPOT、フローサイトメトリー、FACS、QCM、SPR、DPI、エリプソメトリー、またはウェスタンブロッティング法により測定する方法、並びに4)該粒子を用いる上記方法の為のセンサーチップまたはプレートを提供すること課題としている。 本発明者らは、上記課題を解決する手法を鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見出し本発明に至ったものである。 本発明は、以下の抗体結合能を有する免疫学的測定用高感度ナノ粒子、該粒子を用いた免疫学的測定方法、及び、該粒子の免疫学的測定用のセンサーチップまたはプレートに関する。 項1自己組織化能を有するタンパク質が、脂質2重膜を取り込むことにより形成されるナノサイズの粒子であって、自己組織化能を有するタンパク質が、抗体/抗原結合用タンパク質及び抗体/抗原非結合タンパク質を有する、高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 2ナノサイズの粒子が、中空ナノ粒子である、項1に記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項3抗体/抗原非結合タンパク質が、抗体/抗原結合用タンパク質間の間隔を広げる機能を有しており、抗体/抗原結合用タンパク質と抗原/抗体分子との結合を促進する補助タンパク質である、項1または2に記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項4抗体/抗原結合用タンパク質が、ZZタグまたはストレプタグ(登録商標)を含む少なくとも一種類の、項1から3のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項5抗体/抗原結合用タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、またはニュートラアビジンからなる群より選ばれるアビジン物質を含む少なくとも一種類の、項1から4のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項6抗体/抗原分子が、アビジン結合能を有するビオチンで修飾されている項1から5のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項7抗体/抗原非結合タンパク質が、少なくとも1種類のタンパク質である、項1から6のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項8自己組織化能を有するタンパク質が、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質である、項1から7のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項9抗体/抗原非結合タンパク質が、Sタンパク質である、項1から8のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。 項10項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子に、抗体/抗原分子を結合させ、該分子により捕捉される測定対象物質を、ELISA法、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、蛍光免疫測定法(FLISA)、細胞免疫染色法、組織免疫染色法、フローサイトメトリー法、蛍光標示式細胞分取法FACS)、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、二面偏波式干渉法(DPI)、エリプソメトリー法、ELISPOT法またはウェスタンブロッティング法を用いて測定する方法。 項11項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子を担体に結合させた、アフィニティビーズ。 項12項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子に、抗体/抗原分子を結合させ、該分子により認識捕捉される測定対象物質を測定する為の、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、酵素免疫測定法(EIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、または蛍光免疫測定法(FLISA)用プレート。 項13項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子に、抗体/抗原分子を結合させ、該分子により認識捕捉される測定対象物質を測定する、水晶振動子マイクロバランス(QCM)用センサーチップ、表面プラズモン共鳴法(SPR)用センサーチップ、二面偏波式干渉法(DPI)、またはエリプソメトリー法用センサーチップ。 本発明の高感度免疫学的測定用ナノ粒子を、現在広く用いられているウェスタンブロッティング解析、ELISA、SPRやQCMなどの免疫学的測定に用いることにより、より高感度な免疫学的測定を行うことが可能となる。 この発明におけるその他の用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。また、この発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, 「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2001; Ausubel, F. M. et al. 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 2007等に記載されている。 本発明の、「免疫学的測定」とは目的とする物質の存在や局在などの検出において、先ず一次抗体を用い対象物質を認識した後に、前記抗体を認識する標識化された二次抗体と高感度免疫学的測定用ナノ粒子を利用して認識し、かつ検出においては標識物質の性質に応じて、吸光、発光、蛍光、放射線、呈色、濁度などの変化を利用する手法である。もしくは、センサーチップ表面に高感度免疫学的測定用ナノ粒子を利用して並べた抗体に測定対象物質が捕捉されることによって生じる表面プラズモン、基本振動数または、偏光干渉といったセンサーチップの物性変化を解析することで、測定対象物質の検出する手法である。またはセンサーチップ表面に並べた抗原に、該抗原を認識する一次抗体と該抗体を認識する二次抗体と高感度免疫学的測定用ナノ粒子が結合した複合体を用いる事によって生じる表面プラズモン、基本振動数または、偏光干渉といったセンサーチップの物性変化を解析することで、微量の一次抗体量の検出する手法である。 本発明における免疫学的測定において、測定対象物質の種類は、特に制限はなく、DNAやRNA、タンパク質、糖鎖、ビタミンなどの生体物質、細胞、ウイルス、ファージ、および化学物質などが挙げられる。例えば、DNAもしくはRNAを目的物質とする免疫学的測定の一例として、各種メンブレンもしくは樹脂包埋組織切片上の核酸にDigoxigeninやFluoresceinを結合したDNAやRNAをハイブリダイズさせ、DigoxigeninやFluoresceinに対する抗体を用いて目的とするDNAもしくはRNAを検出する工程を含むサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)やインサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization)、ノザンハイブリダイゼーション(northern hybridization)法などが挙げられる。 タンパク質を目的物質とする免疫学的測定の例としては、ウェスタンブロッティング法や免疫組織染色、免疫電子顕微鏡観察、EIA、ELISA、RIA、FIA、FLISA、ELISPOT、SPR、QCM、DPI、イムノクロマトまたはエリプソメトリー法などが挙げられる。細胞、ウイルス、ファージ、および化学物質などを目的物質とする免疫学的測定としては、上記方法のほか、フローサイトメトリー、蛍光標示式細胞分取法(FACS)などが挙げられる。 本発明における免疫学的測定は、目的に応じて、1)目的とする物質を抗体により認識し、目的物質と結合した抗体を、高感度免疫学的測定用ナノ粒子と結合した、前記抗体を認識する標識化二次抗体によって検出する間接法、2)競合法または拮抗法、3)目的とする物質を固相化した抗体により捕捉し、次いで別の標識もしくは未標識の二次抗体により認識し、さらに高感度免疫学的測定用ナノ粒子に結合した前記二次抗体を認識する標識化抗体によって検出する二抗体サンドイッチ法、4)目的とする物質を固相化した抗体により捕捉し、次いで別の抗体により目的とする物質を認識し、目的とする物質を認識した前記抗体を別の標識もしくは未標識の二次抗体により認識し、さらに高感度免疫学的測定用ナノ粒子に結合した標識化三次抗体によって検出する三抗体サンドイッチ法、5)測定対象物質を認識する抗体が結合した高感度免疫学的測定用ナノ粒子と担体が結合したアフィニティカラムを用いたイムノクロマト法、6)センサーチップ表面に、測定対象物質を認識する抗体が結合した高感度免疫学的測定用ナノ粒子を並べ、測定対象物質が前記抗体によって捕捉されることによって生じるそれぞれ表面プラズモン、基本振動数、または偏光干渉の変化を解析する、SPR、QCM、DPI、またはエリプソメトリー法。7)センサーチップ表面に、測定対象抗体を認識する抗原を並べ、該抗原を認識する抗体と高感度免疫学的測定用ナノ粒子用いる事によって生じる表面プラズモン、基本振動数または、偏光干渉といったセンサーチップの物性変化を解析する、SPR、QCM又はDPI、またはエリプソメトリー法。などが選択される。 上記1)〜6)において用いられるナノ粒子と結合させる抗体は、ナノ粒子の持つ抗体結合部位との結合力が高い抗体が望ましく、ラット由来IgG、マウス由来IgG、ウサギ由来IgG、ヒト由来IgG、イヌ由来IgG、モルモット由来IgG、ロバ由来IgG、ヤギ由来IgG、またはヒツジ由来IgGが好適に用いられる最も好ましくはマウス由来IgGである。 抗体とナノ粒子が同時に加えられる場合、高感度免疫学的測定用ナノ粒子の使用量は、粒子と結合する抗体の分子数の、0.01〜10倍量程度の分子数、好ましくは0.02〜1倍量程度の分子数を使用する。また、重量にして抗体と等量の高感度免疫学的測定用ナノ粒子を使用する。粒子と結合する抗体の量(分子数)と比べて、ナノ粒子の使用量(分子数)が少なすぎると、該粒子による感度上昇効果が少なくなり、使用量が多すぎると、測定のバックグラウンドが高くなる。 本発明において「自己組織化能を有するタンパク質」とは、疎水的相互作用などのタンパク質間相互作用により自己集合する性質をもつタンパク質である。タンパク質間相互作用により自己集合する性質をもつタンパク質であることは、タンパク質が溶解した溶液の温度やpH、塩濃度や溶媒を変化させることによりタンパク質どうしで多量体を形成することにより確認することができる。 本発明において「抗体/抗原結合部位と結合する抗体」とは、天然に産生されるか、または全体的にもしくは部分的に合成され産生される免疫グロブリンを意味する。抗原認識能を維持するその全ての誘導体や変異体も含まれる。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。また、天然から産生される抗体以外で、抗原となる物質を特異的に認識できる生体由来または人工的な化合物も指し、例えば、抗体の抗原認識部位だけを遺伝子組み替えによって改変して得られる単鎖抗体やアフィボディー、キメラ抗体、または抗体断片でもあり得る。好ましくはFc領域を持つ抗体であり、さらに好ましくはFcレセプター、protein A、Protein G、Protein A/G、protein L、ZZタグのいずれかと結合し得る抗体を示す。 本発明における抗体の標識に特に制限はなく、抗体の抗原認識能が失われておらず、かつ検出可能な標識であれば良い。例えば、アルカリフォスファターゼやペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼなどの酵素やその変異体による標識であっても良く、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、ダンシル、ルシファーイエローVS、ウンベリフェリル、希土キレート、Cy色素(登録商標)(GEヘルスケア)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、TRITC、ALEXA(登録商標)(Molecular Probe社)、量子ドット、DAPI、DyLight(登録商標)などの蛍光物質による標識であっても良い。さらに、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、金粒子、鉄粒子、磁性粒子、磁気ビーズによる標識であっても良い。様々な環境に合わせて容易に標識物質を選ぶことが可能であり、複数の標識を組み合わせて用いることも可能である。汎用性と安全性の点から、好ましくはアルカリフォスファターゼやホースラディッシュペルオキシダーゼ、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ALEXA(登録商標)、ビオチン、金粒子が用いられる。更に好ましくは、アルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ビオチンが標識されている。 本発明において「酵素」とは、免疫学的測定の検出において用いられる酵素であれば特に制限はなく、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼなどが用いられる。好ましくは西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)が用いられる。 本発明において「抗体Fc領域」とは、抗体をパパインで消化して得られる抗原認識能を持たないフラグメントであり、一般に抗体のH鎖のC末端フラグメントの2量体である。 本発明における自己組織化能を有するタンパク質と抗体/抗原との結合様式は、抗体および抗原間の認識能が失われない限りにおいて特に制限はなく、イオン結合、疎水結合、水素結合、金属結合、あるいはジスルフィド結合などの共有結合等、あるいはこれらの組み合わせであって良い。 本発明における、高感度免疫学的測定用ナノ粒子と担体との結合様式においても、抗体および抗原間の認識能及び高感度名免疫学的測定用ナノ粒子と抗体の結合能に影響を与えない限りにおいて特に制限はなく、イオン結合、疎水結合、水素結合、金属結合、あるいはジスルフィド結合などの共有結合等、あるいはこれらの組み合わせであって良い。 本発明の高感度免疫学的測定用ナノ粒子の抗体/抗原結合用部位と抗体/抗原との結合は、好ましくは免疫学的測定の過程での抗体の脱落を防止する目的から、共有結合であることが好ましく、さらに好ましくは架橋剤による共有結合である。 本発明の「担体」とは、セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体、ラテックス系担体、ポリスチレン系担体、あるいは多孔性シリカ系担体等のようなアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体を挙げることができる。 本発明の「自己組織化能を有するタンパク質」としては、種々のウイルスから得られるウイルス粒子構成タンパク質を適用することができる。具体的には、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus;HBV)やC型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus)、マイクロウイルス(Micro Virus)、ファージウイルス(Phage Virus)、アデノウイルス(Adeno Virus)、パルボウイルス(Parvo Virus)、パポバウイルス(Papova Virus)、レトロウイルス(Retro Virus)、レオウイルス(Reo Virus)、コロナウイルス(Corona Virus)、カイコ細胞質多角体病ウイルス(Bombyx Mori Cytoplasmic Polyhedrosis Virus)、レトロウイルス(Retro Virus)、レンチウイルス(Lenti Virus)、カリシウイルス、ノロウイルス、サポウイルスなどの構成タンパク質や膜タンパク質、表面抗原タンパク質、または多角体タンパク質等が例示される。 本発明の「抗体/抗原結合用タンパク質」は、抗原分子または抗体分子を直接結合することのできるタンパク質で、自己組織可能を有するナノ粒子と、抗原分子または抗体分子の複合体を形成することができるタンパク質である。 本発明の 「自己組織化能を有するタンパク質」は、例えば、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、ウイルス、ファージ、細菌類、菌類等に由来する天然タンパク質や遺伝子工学的に組み替えられたタンパク質、種々の合成タンパク質等である。自己組織化能を有するタンパク質は、好ましくは、ウイルス由来タンパク質、更に好ましくは肝炎ウイルス由来のタンパク質、更に好ましくはB型肝炎ウイルス由来のタンパク質が用いられる。最も好ましくはB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質が用いられる。このとき、自己組織能が失われない限りにおいて、種々の変異を持つ変異体であってもよく、HBsAgタンパク質のアミノ酸の一部を欠失、置換、挿入させることにより、抗体提示の効率を上昇させることができる。 本発明における自己組織化能を有するタンパク質は、抗抗体/抗原結合用タンパク質と抗体/抗原非結合タンパク質から構成されている。抗体/抗原結合用タンパク質と抗体非結合タンパク質の重量比は10:1〜1:10であり、好ましくは8:1〜1:5である、さらに好ましくは、6:1〜1:2である。最も好ましくは、抗体/抗原結合用タンパク質の重量:抗体/抗原結合非結合タンパク質の重量が4:1〜1:1の重量比である。また、本発明における粒子一つ当たり、120分子の抗体/抗原タンパク質が存在する。 本発明のナノ粒子は抗体/抗原結合用タンパク質と抗体/抗原非結合タンパク質から構成されている。これらのタンパク質は同一の宿主細胞によって産生され、宿主細胞に抗体/抗原結合用タンパク質及び抗体/抗原非結合タンパク質を発現させるDNA配列を有する、一種類のプラスミドを導入してもよく、抗体/抗原結合用結合タンパク質を発現させるDNA配列を有するプラスミドと、抗体/抗原非結合タンパク質を発現させるDNA配列を有するプラスミドをそれぞれ導入してもよく、その順序はどちらが先でもよいものとする。また、その導入の順序は同時でもよく、どちらが先でもよいものとする。使用されるプラスミドが有するプロモーターは、各々の発現させる宿主細胞に合わせて自由に選択できる。ただし、抗体/抗原結合用タンパク質と抗体/抗原非結合タンパク質の発現プロモーター組み合わせは、抗体/抗原結合用タンパク質を発現させるプロモーターのほうが抗体/抗原非結合タンパク質よりも強いことが望ましい。 特に宿主細胞が酵母細胞である場合、具体的には強いプロモーターとして(TDH3(別名、GAPDH、GAP、GLDなど)、PGK1、GAL1、GAL10等)、弱いプロモーターとして(ADH1、PHO5等)が挙げられる。 また、両タンパク質の発現量を調節するために、導入するプラスミドの量を調節することや両タンパク質を発現させるプラスミドが有するプロモーターの働きを補助するエンハンサーや転写共役因子などを用いることも可能である。 本発明のナノ粒子は、自己組織化能を有するタンパク質が約100個で1つの粒子を形成する。従って、本発明の粒子1つあたりに結合する抗体の程度は、自己組織化能を有するタンパク質1つあたりの標識量の、約100倍となる。 本発明の粒子1個あたりに含まれる抗体/抗原結合用タンパク質の量が少なすぎれば、粒子に結合される抗体の数が少なくなり、前記抗体を認識する標識化抗体の量が減少し、測定感度が低下する。一方、本発明の粒子1個あたりに含まれる抗体/抗原結合用タンパク質の量が多すぎれば、前記抗体と抗体により認識される測定対象物質の結合に影響する可能性がある。 本発明における「抗体/抗原結合部位」は、好ましくはFcレセプター、Protein A、Protein G、Protein A/G、Protein L、ZZタグ、ストレプタグ(streptag)(登録商標)またはRNase A由来のSタグからなる群より選ばれるいずれかタグの全長もしくは一部およびそれらの変異体であり、好ましくは、抗体結合部位が、ZZタグまたはストレプタグである。 本発明における「抗体と抗体/抗原結合部位」は、抗体の抗原認識部位以外の領域と結合もしくは相互作用し得るポリペプチドであり、より好ましくは抗体Fc領域との結合部位である。このとき、抗体結合能が失われない限りにおいて、種々の変異を持つ変異体であってもよい。自己組織化能を有するタンパク質が抗体/抗原結合部位としてZZタグを有しており、該自己組織化能を有するタンパク質が抗体/抗原結合タンパク質のみからなる、脂質二重膜を取り込むことにより形成せしめるナノサイズの粒子を、ZZ粒子と表記する。 本発明において「ZZタグ」とは、Z領域と呼ばれるProtein Aのもつ「抗体Fc領域との結合部位」がタンデムにならんだ領域を示す。ZZタグのアミノ酸配列は、次のような繰返し配列もしくはその変異体である。AQHDEAVDNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKVDNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK(配列番号1)。ZZタグは分子量が小さく立体障害を起こさない観点からも好ましく用いられる。自己組織化能を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列に、配列番号2のヌクレオチド配列を挿入して、適当な宿主細胞で発現させることで作製することができる。このZZ領域(ZZタグ)と呼ばれるポリペプチドもしくはその変異体を用いることで、立体障害なく、抗体を高効率で高感度免疫学的測定用ナノ粒子表面に整列提示することが可能となり、免疫学的測定をより感度よく行うことが可能となる。つまり本発明の高感度免疫学的測定用ナノ粒子では、自己組織化能を有するタンパク質がZZタグを有する抗体結合タンパク質と、抗体非結合タンパク質から構成されることにより、免疫学的測定に用いる抗体を、ナノ粒子表面に、効率よく高密度で整列固定することが可能となり、そのため高感度な免疫学的測定が可能となる。 本発明における「ストレプタグ(登録商標)」は、アビジン結合能を有するアミノ酸配列であり、次のような配列、その繰り返し配列、またはその変異体である。WSHPQFEK(配列番号3)。 ストレプタグは4量体形成するアビジン物質を介してビオチン修飾された抗体/抗原分子を結合させることができる。自己組織可能を有するナノ粒子がストレプタグを有するタンパク質のみを含むものであれば、アビジン間で立体障害を生じる。アビジン物質は、1分子あたり4箇所でストレプタグ、又はビオチンと結合することが判明している。例えば、ストレプタグ間の間隔が小さいときには、アビジン物質の2箇所でストレプタグと結合し、ビオチン修飾された抗体/抗原物質と結合する部位が残る2個所になり、3個所でストレプタグと結合すると、ビオチン修飾された抗体/抗原物質と結合する部位が残る1個所になり、効率的に抗体/抗原分子をさせることができない。ストレプタグの間隔がさら小さいときは、アビジンがすべてストレプタグと結合し、ビオチン修飾された抗体/抗原分子をさせることができないことも生じる。そこで、ストレプタグを有する抗体/抗原用タンパク質結合用タンパク質の間隔が広がっている、本発明における高感度免疫学的測定用ナノ粒子を用いる事で、免疫化学測定に用いる抗原分子を効率よく高密度で整列固定することが可能となり、そのため高感度な免疫学的測定が可能となる。このとき、抗体/抗体との結合能が失われない限りにおいて、種々の変異を持つ変異体であってもよい。 本発明における「ストレプタグ」を含む「抗原/抗体結合用タンパク質」は、自己組織化能を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列に、配列番号4のヌクレオチド配列を挿入して、適当な宿主細胞で発現させることで作製することができる。 本発明における「抗原分子とナノサイズの粒子との結合」は、ストレプタグにアビジン物質を結合させ、あらかじめビオチン修飾された抗原/抗体がアビジン物質に結合することで実現されるが、高感度免疫学的測定用ナノ粒子と抗原/抗体の複合体作製の順序は特に定めない。またストレプタグは、アビジン物質との結合能が失われない限り、その変異体も含まれる。 本発明における「アビジン物質」は、アビジンストレプトアビジン、ニュートラアビジンなどのビオチンと高い特異性と結合する物質であり、ビオチンとの結合能が失われない限り、アビジン物質に含まれる。 本発明における「ビオチン修飾」の手法に特に制限は無く、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基などを標的として標識する市販のビオチン化試薬を用いることができる。修飾する官能基は、抗体/抗原の性質によって適宜選択される。 本発明の免疫学的測定法において、高感度免疫学的測定用ナノ粒子は、抗体/抗原と同時に加えてもよく、予め抗体を該ナノ粒子の抗体/抗原結合部位に結合させた後に、従来の抗体/抗原として加えてもよく、抗体/抗原を加えた後に該ナノ粒子を加えてもよい。好ましくは抗体/抗原とナノ粒子は同時に加えるか、抗体/抗原を加える前にナノ粒子を加える。予め抗体/抗原とナノ粒子結合させる際の反応時間は、室温であれば1分〜12時間であることが好ましい。さらに好ましくは5分〜12時間、さらに好ましくは10分〜6時間、最も好ましくは30分〜2時間である。また、4℃であれば1時間〜24時間の反応時間が好ましい。さらに好ましくは6時間〜18時間。最も好ましくは8時間〜16時間である。 一方、自己組織化能を有するタンパク質が抗体/抗原結合用タンパク質と抗体/抗原非結合タンパク質から構成される高感度免疫学的測定用ナノ粒子(ZS粒子)表面上においては、抗体/抗原結合用タンパク質の間に、抗体/抗原非結合タンパク質が整列することにより、本発明における高感度免疫学的測定用ナノ粒子の表面に、自己組織化能を有するタンパク質の自己組織化効果により抗体/抗原結合部位を効率よく整列させることが可能となる。その結果免疫学的測定に用いる抗体/抗原を、ナノ粒子表面に効率よく整列固定することが可能となり、そのため高感度で高精度な免疫学的測定が可能となる。これにより免疫学的測定の感度は大きく向上する。自己組織化能を有するタンパク質がすべて抗体/抗原結合能を有するタンパク質より構成されるナノサイズの粒子(ZZ粒子)においては、ZZドメイン1分子あたりおよそ0.37〜0.47個のIgG抗体分子しか結合しないのに対し、本発明における粒子(ZS粒子)は0.80〜0.91個のIgG抗体分子が結合する。 抗体/抗原結合部位は「自己組織化能を有するタンパク質」と疎水的に結合していてもよく、化学結合などにより共有的に結合しても良い。抗体/抗原結合部位は、融合タンパク質として「自己組織化能を有するタンパク質」に融合していることが好ましい。また融合の部位は、自己組織化能を失わない限りにおいて、N末端からC末端までの全ての場所に存在し得るが、粒子を形成したときに外側に存在することが好ましい。 本発明において「抗体/抗原結合用タンパク質間の間隔を広げる機能を有しており」とは、ナノサイズの粒子表面において抗体結合タンパク質の間に抗体/抗原非結合タンパク質が入り込むことによって、抗体/抗原結合用タンパク質間に距離を生じさせることである。この作用により、抗体/抗原結合用タンパク質に効率よく抗体/抗原が結合することを可能とする。ナノサイズの粒子表面上の抗体/抗原結合用タンパク質間の距離が広がる現象は電子顕微鏡や、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)を用いて確認することができる。 本発明における自己組織化能を有するタンパク質は、ウイルス由来タンパク質であることが好ましく、ウイルス(特にB型肝炎ウイルス)の表面抗原タンパク質を用いることがより好ましい。「自己組織化能を有するタンパク質」として、ウイルス(特にB型肝炎ウイルス)の表面抗原タンパク質を用い、宿主細胞として酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞(例えばCHO細胞)などの真核細胞内で発現させることで、このタンパク質が宿主真核細胞の小胞体の脂質2重膜を取り込みながら自己組織化を起こし、物理的にも強度の強い、直径がナノサイズの粒子を効率的に作ることができる。このタンパク質を酵母内で発現させることで、数mg〜数g/L培養のナノ粒子を生産できるため、非常に高効率な粒子の生産が可能であり、さらに、宿主細胞内で発現される可溶化タンパク質の10%以上が本発明における自己組織可能を有するタンパク質であることから、粒子生産のコストを非常に低くすることができる。また、これは、産業的に該粒子を利用する上でも重要なことである(黒田ら、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー 1992年 1月 第25巻 第267(3)号 1953−1961頁)。 ウイルス表面抗原を有するタンパク質が作り出すナノ粒子は物理的に非常に安定で、60〜80℃といった高温や8Mの尿素、または種々の界面活性剤存在下でもその形態を維持できる。このような粒子の安定性は様々な免疫学的測定手法に適用が可能になるため汎用性が高い、また保存性が高く、ハンドリングしやすい、さらには、測定中に他の不純物を除去する、あるいは非特異的結合を軽減するための洗浄処理(例えば、変性剤や界面活性剤による洗浄が可能になる)を加えることが可能になるため、検出の精度を上げられる。従って、ウイルス表面抗原タンパク質が作り出すナノ粒子を使うことで、免疫学的測定手法の幅が格段に広がる効果が期待できる(山田ら ワクチン 2001年4月第30巻;第19(23−24)号:3154−3163頁)。 本発明において「脂質二重膜」とは、8〜20nmの厚さで2枚の脂質の層からなっており、それぞれの層の中で、両親媒性脂質の極性の頭が親水系の溶媒と接触しており、非極性の炭化水素の部分が2重層の内部を向いているものをいう。脂質2重膜の例としては、細胞膜や核膜、小胞体膜、ゴルジ体膜、液胞膜のような生細胞における生体膜、または人工的に作製したリポソーム等が挙げられる。中でも小胞体膜由来の脂質2重膜がより好ましい。脂質二重膜としては、真核生物、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞など由来のものが好ましく、特に好ましくは酵母由来の脂質二重膜が用いられる。 本発明において「ナノ粒子」とは、20〜500nmの粒子である。本発明のナノ粒子は、好ましくは50〜200nmの直径を持つ粒子である。最も好ましくは80〜150nmの直径を持つ粒子である。また、本発明のナノ粒子は、好ましくは内部に中空の空間を持つ中空ナノ粒子であり、その空間は必ずしも気体系の空間である必要はなく、溶液系の空間であってもよい。 本発明における高感度免疫学的測定用ナノ粒子は、好ましくは、主にタンパク質と脂質、糖を主要な構成成分とし、そのうち主要な成分はタンパク質である。 本発明において「宿主細胞」とは、真核生物、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞など由来のものが好ましく、より好ましくは酵母細胞である。より好ましくは、出芽酵母(Saccharomyce scerevisiae)であり、特に好ましくは、BY21445株、BY4708株、BY4709株、(ナショナルバイオリソースプロジェクト)またはJT007−1D株である。最も好ましくは、JT007−1D株である。 本発明において「プラスミド」とは、高感度免疫学測定用ナノ粒子を産生させる宿主細胞において発現可能であれば特に制限されず、プラスミドの変異体でもよい。たとえば、酵母細胞を宿主にする際には(pYES2)、昆虫細胞を宿主にするには(pFASTBac1)動物細胞を宿主にするには(pcDNA4/TO)などが挙げられる。 本発明においては、目的タンパク質の収率を上昇させるために、pAUR123(タカラバイオ、日本)を上記プラスミドと共に用いても良い。 抗体結合部位を持つタンパク質が自己組織化する能力を有することは、抗体の高密度整列、高密度提示を可能にし、免疫学的測定における感度の向上において重要な性質である。さらに、自己組織化する能力を有することは、自己組織化の過程で、他の夾雑タンパク質を排除することを示し、これは免疫学的測定の精度を向上(非特異的シグナルを抑制)させる上で重要な性質である。さらに、脂質二重膜を取りこむことで、非特異的吸着や相互作用を抑制し、免疫学的測定の精度を向上(非特異的シグナルを抑制)させることもできる。 本発明における自己組織化能を有するタンパク質が脂質二重膜を取り込むことにより形成されるナノサイズの粒子を生産する生物種に特に制限はなく、真核生物、原核生物いずれによる生産であっても良いが、小胞体膜を介して自己組織化能を高めるため、真核生物による生産が好ましく、さらに好ましくは酵母細胞による生産である。ウイルス、ファージなどの感染工程を含むことや、組換え体も、本発明のナノサイズの粒子を生産する生物種の範囲である。 本発明の別の用途の一例としては、検出の対象となるタンパク質や核酸等を含む試料をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)やアガロースゲル等により電気泳動した後、PVDFやセルロース性等の膜に電気的または浸透圧で転写し、転写した膜における検出対象物質を特異的に認識できる抗体などの物質認識分子、かつ、蛍光、発光、吸光、または放射線同位元素をその表面に提示している高感度免疫学的測定用ナノ粒子を含んだ緩衝液中で反応させて、該粒子と膜上に転写されたターゲットタンパク質、あるいは核酸等を結合させる。その後、結合していない該粒子を、該粒子が含まれない緩衝液で洗浄し、膜上に残った該粒子由来の蛍光、発光、吸光、または放射線同位元素の量を検出するものもある。 本発明において「センサーチップ」とは、測定対象となる微量物質を含む試料を結合させるための基板と、基板上に結合した試料から測定対象物質を特異的に検出し、物性の変化によって生じる信号を検出器に伝えるための装置である。 本発明において「プレート」とは、高感度免疫学的測定用ナノ粒子が含まれる多検体測定用マルチウェルプレートであり、その作成法に関して、例えば石川榮治編[生物化学実験法48 エンザイムアッセイはこう開発する]学会出版センター、2003、または、David Wild編[The Immunoassay Handbook Third Edition]ELSEVIER、2005などの記載を基に行うことができる。 本発明において「プレート」とは、好ましくは免疫化学測定を行うためのイムノプレートである。 本発明において「基板」とは、金属、プラスチック、有機/無機高分子材料であれば特に限定されないが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリテトラフルオロテプロン(PVDF)、セルロース、シリコン、マイカー、テフロン(登録商標)ポリメチルペンテン(PMPまたはTPX(登録商標))、ポリスチレン(PSt)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス類およびその複合体、金、銀、銅、ニッケル、コバルト等の金属およびその複合体、セラミックスおよびその複合体等が好ましく用いられる。また、その表面の全体、または少なくとも検出が行われる部分がこれらによって覆われているものが好ましい。もちろん、これらの基板材料を複数組み合わせて用いることもできる。例えば、ガラス基板を金属で被覆した組み合わせや樹脂基板の表面を金属で被覆した基板などが好ましく用いられる。また、本発明のセンサーチップは検出を容易にするため、基板表面を親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなど)によりコーティングやグラフトなどの処理を行ったものや疎水化したもの、ラジカル化したもの、これら基板を抗体などのタンパク質やDNAなどの核酸または糖などで被覆、修飾、処理した状態のものも含む。さらに基板の形状は必ずしも平面であるとか限らず、湾曲や曲面を有していてもよいものとする。 本発明におけるセンサーチップを作製する手順に特に制限はなく、高感度免疫学的測定用ナノ粒子と脂質二重膜の複合体による被覆を予め基板上に形成させた基板を作製し、これに抗体/抗原溶液を作用させることにより作製しても良い。もしくは、高感度免疫学的測定用ナノ粒子と脂質二重膜の複合体に、予め抗体/抗原もしくは抗体/抗原と架橋剤の混合溶液を作用させたものを基板に添加し作製しても良い。センサーチップを作製する際には、余分なもしくは未反応の架橋剤を失活もしくは除去する工程を含むことが望ましい。また、高感度免疫学的測定用ナノ粒子と抗体の結合性を高めるために、溶液のpH、濃度、イオン強度、界面活性剤、温度などを変化させても良い。 本発明におけるセンサーチップの形状や大きさに特に制限はなく、数ミリ角のチップ状であってもよく、直径がナノメーターからミリメーターまでのビーズ状や球状であってもよく、96穴マルチウェルプレートや384穴マルチウェルプレート、1536穴マルチウェルプレート状の形状であっても良い。また、複数の目的とする物質を測定可能にする目的で、二種類以上の複数の抗体や高感度免疫学的測定用ナノ粒子が、それぞれ別の部位に結合しているような、アレイ状のセンサーチップであっても良い。本発明におけるセンサーチップの形状は、球形が特に好ましい。 本発明における高感度免疫学的測定用ナノ粒子は、センサーチップ上においてドーム状、エンボス状、ブロック状などの構造に変化し得る。 本発明におけるこのセンサーチップを用いた具体的な用途の一例としては、ある疾患の患者の血液中に特異的に存在するタンパク質などの生理活性物質、抗体の量を測定することが可能である。高感度免疫学的測定用ナノ粒子が結合したセンサーチップ上に効率的に測定対象となるタンパク質などの生理活性物質を認識する抗体を結合させ、更に好ましくは平面膜状生体認識分子整列体を用いて効率的に整列させた状態で結合させ、患者の血液を該センサーチップに反応させることで、測定対象物質が該センサーチップ上に整列された抗体と結合することで生じる、表面プラズモン、基本振動数または、偏光干渉といったセンサーチップの物性変化を測定することで、ある疾患の患者の血液中に特異的に存在する微量の生理活性物質を確認または定量測定することが可能になる。 またはセンサーチップ表面に並べた抗原タンパク質に、該抗原タンパク質を認識する一次抗体と、該一次抗体を認識する二次抗体が結合した高感度免疫学的測定用ナノ粒子の複合体が結合することで生じる、表面プラズモン、基本振動数または、偏光干渉といったセンサーチップの物性変化を解析することで、ある疾患の患者の血液中に特異的に存在する微量の一次抗体量が確認または定量測定することが可能になる。 または高感度免疫学的測定用ナノ粒子が結合したセンサーチップ上に効率的に抗原を結合させ、更に好ましくは平面膜状生体認識分子整列体を用いて効率的に整列させた状態で結合させ、患者の血液を該センサーチップに反応させることで、測定対象抗体が該センサーチップ上に整列された抗原と結合することで生じる、表面プラズモン、基本振動数または、偏光干渉といったセンサーチップの物性変化を測定することで、ある疾患の患者の血液中に特異的に存在する微量の抗体を確認または定量測定することが可能になる。 このようなセンサーチップを用いた物質の検出系は、微量信号の増幅効果のため、特に患者特有のタンパク質がnmol以下の極微量の場合その威力を発揮する。また、環境ホルモンの測定にも利用することができ、ダイオキシンを例に挙げると、哺乳類の体内におけるダイオキシンのレセプターである「AhR」タンパク質の全長あるいはダイオキシン結合部位のみをセンサーチップ上に整列させた状態で結合させ、そこにダイオキシンの汚染が心配される土壌、河川水、母乳等から組精製した、あるいはそのままの試料をセンサーチップと反応させ、センサーチップをダイオキシンが含まれない緩衝液で洗浄後、ダイオキシン−AhR結合体に特異的に結合する核内タンパク質である「ARNT」、またはダイオキシンに対する抗体が表面に結合されている中空ナノ粒子をセンサーチップに反応させ、その表面プラズモンの変化から試料中のダイオキシンの存在有無、あるいはその量を定量することが可能である。 本発明におけるセンサーチップを用いた環境ホルモンの測定はSPR以外にも、QCMを用いる方法や、蛍光、または発光、または吸光、または放射線同位元素をその表面に提示、または内包する中空ナノ粒子を用いた検出の方法等も考えられる。この際、環境中のダイオキシンの量は非常に微量であり、一般的には定量のためには試料からダイオキシンを抽出して更に高度に濃縮するといった前処理の必要があり、数日から数週間という長い時間が必要であったが、本発明のセンサーチップにおける信号の増幅効果により、前処理無しでも、あるいはより簡単な前処理によって測定が可能になり、測定の時間も数時間から数日と短くなることが期待される。 本発明において「抗体の変異体、自己組織化能を有するタンパク質の変異体もしくは抗体結合部位の変異体、もしくはZZタグの変異体」とは、1)これらタンパク質に遺伝子工学的に点、あるいは複数のアミノ酸置換を起こしたもの、2)タンパク質の全長から一部を削り取るか、新しくタンパク質配列を付け加えたもの、3)核酸・糖・脂質・化合物等によってタンパク質の一部に修飾されたもの、であって、4)変異を起こす前の抗体と同一の物質を認識する能力を持つ抗体変異体、5)変異を起こす前の自己組織化能を有するタンパク質と同様に脂質2重膜を取りこんで自己組織化によりナノ粒子を形成する能力を有する変異体、6)変異を起こす前の抗体結合部位やZZタグまたはストレプタグと同様に、抗体のFc領域と相互作用する能力を有する変異体、である。 このような変異体を作製するには該タンパク質を発現する遺伝子を含む環状プラスミド上でアミノ酸の欠失、置換若しくは付加を行うためのプライマーとQuickChange site−directed mutagenesis kit、またはQuikChange multi site−directed mutagenesis kit、またはQuikChange XL site−directed mutagenesis kit(STRATAGENE社)等の変異を起こすためのキットを用いて12〜18サイクルのPCRを行い、その産物を制限酵素DpnIで切断し、大腸菌に形質転換することにより可能である。 さらに、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。例えばSambrook等編[Molecular Cloning−A Laboratory Manual、第2版]Cold Spring Harbor Laboratory、2001年、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988年、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。また、核酸・糖・脂質・化合物等によってタンパク質の一部に修飾を施したものとして具体的にはリン酸化酵素によるタンパク質中のセリン、またはスレオニン残基のリン酸化、糖鎖付加酵素によるアスパラギン、またはセリン、またはスレオニン残基の糖鎖付加、または還元・アルキル試薬によるシステイン残基の還元・アルキル化のようなものを例示することができ、これらのものを作製するにはタンパク質にリン酸、または糖鎖等を混ぜて、リン酸化酵素や糖鎖付加酵素を加え、その酵素が働く最適な条件(温度、pH、塩濃度等)を維持したり、タンパク質の入った溶液に還元剤であるジチオツレイトールやメルカプトエタノール等を終濃度で5 mM濃度になるように入れ、温度60 ℃付近、pH中性以上で1時間反応させ、更にアルキル化剤として5〜15 mM濃度のヨードアセトアミドを加え室温で1時間以上反応させることにより可能である。もちろん例示した上記の修飾以外にもタンパク質に対する様々な修飾が考えられる。 本発明の高感度免疫学的測定用ナノ粒子を用いる免疫学的測定方法は、各種のウェスタンブロッティングや免疫組織染色、EIA、ELISA、RIA、FIA、FLISA、ELISPOT、イムノクロマト、免疫電子顕微鏡観察、フローサイトメトリー、FACS、SPR、QCM、DPI、エリプソメトリー法などに有効である。 本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。 (実施例1:遺伝子組換え酵母によるZS粒子の発現と精製)本実施例では、遺伝子組換え酵母によるZS粒子の発現と精製を行った。(材料および方法)(酵母の改良)本実施例では、本発明者らによって報告されたジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー 1992 1月 第25巻 第267(3)号 1953−1961頁に記載の遺伝子組換え酵母(サッカロマイシス セレビジエ AH22R− (leu2−)株)と、複数の選択マーカーを持つ、サッカロマイシス セレビジエ J628(trp1−、ura3−)株との交配および7 回の戻し交配により、遺伝子組換え酵母にtrp1−、ura3−選択マーカーを新たに付与したサッカロマイシス セレビジエ JT007−1D (leu2−、trp1−、ura3−、his4−)株を作成した(図1)。(抗体非結合タンパク質(S粒子)発現プラスミドの構築) pHBV933プラスミド(オノら、ヌクレイック アシッド リサーチ 1983年 第11巻 1747−1757頁)から、S領域を、C末端側にPGKt配列を付加し、N末端側およびC末端側の両末端にSalIサイトを付加したプライマーを用いてPCR法により増幅し、PCR産物を制限酵素SalIで消化し、アガロース電気泳動で分離して約1.0 kbpの目的バンドの遺伝子断片を回収した後、pGLDLIIP39−RcTプラスミド(黒田ら、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー 1992年 1月 第25巻 第267(3)号 1953−1961頁;配列番号5) をSal Iで消化し、L遺伝子を削除したプラスミドに、上記遺伝子断片をタカラ ライゲーション キット バージョン 2(タカラ社、日本)を用いて、閉環結合させて作成した、pGLD-P25WTプラスミド(黒田ら、 ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー 1992 Jan 25; 267(3):1953−61.;配列番号6、図2)から、オリゴヌクレオチド(5’- CAGTCAGGCACCGTGTATG -3’;配列番号7)及びオリゴヌクレオチド(5’- CATAAATCGCCGTGACGATC -3’;配列番号8)の両プライマーを用いたPCR法により、S領域を増幅させた。 PCR産物を制限酵素Bam HIとSal Iで消化した後、アガロース電気泳動で分離し、約2.0 kbpの目的遺伝子断片のバンドを回収した後、pGMT20プラスミド(イハ、ツルギら、バイオテクニックス、1998年、12月、第25(6)巻、936−938頁)のBam HIとSal Iサイトとの間に、上記遺伝子断片をタカラ ライゲーション キット バージョン2 (タカラ社)を用いて、閉環結合させた。塩基配列を確認し、このプラスミドを「pGMT20-S」と命名した。(図2) (組換え酵母による高感度免疫学的測定用ナノ粒子(ZS粒子)の発現) ZZタグを提示するHBsAg Lタンパク質(抗体結合タンパク質)を発現させるpGLD−ZZ50プラスミド(特開2004−002313号公報(図3))10 μgと、上記pGMT20−Sプラスミド5 μgを酵母JT007−1D株にスフェロプラスト法により形質転換し、得られたトランスフォーマントを合成培地High−Pi(キタノら、バイオテクノロジー、1987、第5巻、281−283頁)(トリプトファンを除き、ウラシル(20 mg/L)を添加し、アスパラギンの代わりにアスパラギン酸を使用)を、3 mlにて30 ℃、2日間、続いて、8S5N−P400(ウラシル(20 mg/L)を添加し、アスパラギンの代わりにアスパラギン酸を使用)10 mlにて30℃、3日間培養し、ZZタグを提示するHBsAg Lタンパク質およびHBsAg Sタンパク質を同時に発現させた。 定常成長期(約72時間後)にある遺伝子組換え酵母から、遠心分離(3000 rpm、30分間、4℃)により全細胞抽出液を回収し、buffer A溶液(7.5 Mの尿素、0.1 Mのリン酸ナトリウム、pH 7.2、15 mMのEDTA、2 mMのPMSF、0.1%のTween80)2 mlに懸濁し、グラスビーズを用いて酵母を破砕した。破砕後、上清(1 ml)を遠心分離(3000 rpm、30分間、4℃)により回収し、12.5 %ゲルのSDS−PAGEを用いて分離し、PVDF膜上で抗HBsAg ZZモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロッティング、およびB型肝炎ウイルス表面抗原キット IMxダイナパック(ダイナボット社、米国)により試料中のHBsAgの同定を行った。 本発明者らは、ZZタグを提示するHBsAg Lタンパク質(抗体/抗原非結合用タンパク質)およびHBsAg Sタンパク質(抗体/抗原非結合タンパク質)を同時に発現する、混合粒子産生遺伝子組換え酵母を樹立した。ウェスタンブロッティング(図4)で確認されるように、分子量約48 kDa(ZZ)と約24 kDa(S)のタンパク質で、またIMx測定よりS抗原性を有することが確認された。 (組み換え酵母によるZS粒子の産生および精製) ZS粒子タンパク質を大規模でアフィニティ精製するために、上記pGLD−ZZ50プラスミドとpGMT20−Sプラスミドを保持した遺伝子組換え酵母JT007−1D株を、合成培地High−Pi(トリプトファンを除き、ウラシル(20 mg/L)を添加し、アスパラギンの代わりにアスパラギン酸を使用)50 mlにて30 ℃、2 日間、更に同組成のHigh−Piを400 mlにて30℃、1日間、続いて、8S5N−P400(ウラシル(20mg/L)を添加し、アスパラギンの代わりにアスパラギン酸を使用)を、4 Lにて30℃、3日間培養し、ZSタンパク質粒子を発現させた。 定常成長期(約72時間後)にある遺伝子組換え酵母から、遠心分離(34,780x g、30分間、4℃)により全細胞抽出液(湿重量50 g)を回収し、まず25 gをbuffer A溶液(7.5 Mの尿素、0.1 Mのリン酸ナトリウム、pH 7.2、15 mMのEDTA、2 mMのPMSF、0.1 %のtween80)200 mlに懸濁し、グラスビーズを用いてビードビーター(BEAD-BEATER)にて酵母を破砕した。破砕後、遠心分離(34,780x g、30分間、4℃)により上清(185 ml)を回収し、1 mMのEDTAを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して、4℃で5時間透析した。 透析後の試料(223 ml)を70℃で20分間熱処理し、氷冷後、遠心分離(34,780x g、30分間、4℃)を行った。 この上清(205 ml)を、ポーサイン シーラム (シグマ P9783、米国)から精製したイムノグロブリン(ポーサイン IgG)とNHS−アクチベイティッド セファロース 4 ファスト フロウ (ジーイー ヘルスケア、米国)とをカップリング反応させ、AKTA (ジーイー ヘルスケア) 精製用プラスチックカラム(φ1.6 x15 cm)に充填したポーサイン IgG クロマトグラフィーに供した。75mMのTris−HCl(pH 7.2)、10 mMのNaCl溶液で充分に洗浄し、3.5 MのNaSCN、10 mMのTris−HCl(pH 7.2)、0.5 MのNaCl、および10m MのEDTA(pH 7.2)でステップワイズ溶出した。 残りの全細胞抽出液(25 g)についても同様の精製を行った後、全ての溶出物(40 ml)を限外濾過により約2.5 mlまで濃縮した。 HBsAg画分の純度をSDS−PAGE、銀染色、および酵素免疫測定IMxにより確認した(図5)。最終的に、培地4 L由来、湿重量50 gの菌体から、約0.5 mgのHBsAg画分を得、画像解析ソフト(イメージ J)により、精製純度67.4 %(ZZ 52.8%、S 14.6%)と算出した。 (実施例2:ZZタンパク質とSタンパク質の同一粒子上での発現確認) ダイナビーズ プロテイン A[ベリタス DB10001、(日本)]100 μlを0.1 Mのナトリウム-リン酸緩衝液pH 8.0で3回洗浄した。このビーズに抗HBsAg Pre−S抗体(30 μg)を添加し、室温で20分間反応し、磁石で2分間沈降させ、上清を取り除いた後、0.1 Mのナトリウム-リン酸緩衝液(pH 8.0)0.5 mlで3回洗浄した。この抗体を結合したビーズに、精製したHBsAg画分(100 μg)を加え4℃で1時間インキュベートした後、磁石で2分間抗体結合ビーズとHBsAg画分の複合体を沈降させ、上清を取り除いた後、PBS(1 ml)で3回洗浄し、免疫沈降物を回収した。この免疫沈降物を、抗HBsAg S抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、ZZとSの発現を確認した(図6)。 図に示すように、ZZとSは共に検出されたことから、同一粒子上で発現していることが確認された。この精製HBsAg画分を「ZS粒子」と命名した。 (実施例3:ZS粒子の抗体結合量) 本実施例では、QCM法によりZS粒子と抗体結合量を測定した。(QCM)法によるZS粒子と抗体結合量の測定) ZS粒子と抗体結合量を、Quartz Crystal Microbalance (QCM)[ツイン−Q;アズワン(大阪、日本)]によって測定した(図7)。以下の反応は、撹拌筒600 rpm、25℃で行った。反応槽に500 μlのPBSを加え、周波数変化が±3 Hz、1分間以上になるまで安定させた。なお、以下の反応は、周波数変化が±3 Hz、1分間以上を安定と判定し、その点を最大結合量として測定した。 20 μgのZS粒子を添加し、周波数の安定を確認後、反応槽をPBSで3回洗浄した。次いでブロッキングバッファー(20 μgのスキムミルク[ナカライテスク(京都、日本)])を添加し、周波数の安定を確認後、20 μgの抗体[ヒューマン トータル IgG, (シグマ、セントルイス、ミズーリ州、米国)]を5回添加し、周波数の安定を確認した。 図に示すように、ZS粒子の抗体結合量は、ZZ粒子に比べ、約2倍上昇した(図8)。 (実施例4:ZS粒子を用いた抗原量の測定) 本実施例では、酵素結合免疫吸着法(ELISA法)により、ZS粒子を用いて抗原量の検出感度を測定した。 (ELISA法によるZS粒子を用いた抗原オヴァルブミン(Ovalbumin)測定の高感度化) Ovalbumin(シグマ)100 μl(15、10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125、0.1563、0.0781、0.0391、0.0195、0μg/ml PBS)を4℃で終夜固相化したNunc−Immuno Plate II [サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)] をPBST (0.05% tween 20/PBS) 200μlで3回洗浄した。1次抗体としてマウス由来抗オヴァルブミンモノクローナル抗体 IgG1[アブカム、(台湾、台北)]溶液100 μl(0.4 μg/ml希釈液(1% ブロックエース[雪印(日本)]/PBST))を室温で2時間静置反応させた。PBST 200μlで3回洗浄後、2次抗体としてウサギ由来、抗マウスIgG-HRP conjugated (シグマ) 100 μl(2 μg/ml希釈液)を室温で2時間静置反応させた。この時、予め2次抗体にZS粒子を最終濃度2 μg/mlで添加し、室温で30分静置させたZS粒子と2次抗体の複合体についても、同様に室温で2時間静置反応させた。PBSTを200 μlで3回洗浄後、HRP標識物質の検出基質TMB(ピアス[ロックフォード、イリノイ、米国])100 μlを加え室温で15分反応させ、2NのH2SO4 100 μlを添加し反応を停止させた。マルチスペクトロマイクロプレートリーダ(バリオスカン、サーモ フィッシャー サイエンティフック)を用いて、Abs 450nm(ブランクAbs 595nm)を測定した。 Abs 450−595nm=0.5を与える時の抗原濃度から検出感度の上昇倍率を算出した。HRP標識2次抗体のみを用いた場合と比較し、ZS粒子を用いることで約11倍と更に向上した。(図9) ZZタグを提示するHBsAg Lタンパク質およびHBsAg Sタンパク質を同時に発現する、混合粒子産生遺伝子組換え酵母を樹立し、精製したHBsAg 画分をZS粒子と命名した。ZS粒子の抗体に対する結合量を測定し、ZZ粒子の抗体結合量と比較検討した。従来のZZ粒子に比べ、ZS粒子の抗体結合量は約2倍上昇した。ELISA法により、ZS粒子を用いた抗原オヴァルブミン(Ovalbumin)の検出感度を測定し比較検討した。HRP標識2次抗体のみを用いた場合と比較し、ZS粒子を用いることで約11倍と更に向上した。図1は、「遺伝子組み換え酵母JT007−1Dの作製」を示す図である。図2は、「抗体/抗原非結合タンパク質(S粒子)発現プラスミドの構築」を示す図である。図3は、「抗体/抗原結合用タンパク質(Z粒子)発現プラスミドの構造」を示す図である。図4は、「ウェスタンブロッティングによる組換え酵母における高感度免疫学測定用ナノ粒子(ZS粒子)の発現」を示す図である。図5は、「組み換え酵母によるZS粒子の産生および精製」を示す図である。図6は、「免疫沈降法によるZZタンパク質とSタンパク質の同一粒子状での発現確認」を示す図である。図7は、「QCM法によるZS粒子の抗体結合量の測定」を示す図である。図8は、「ZS粒子のZZドメイン1分子あたりに結合するHuman total IgG分子量」を示す図である。図9は、「ELISA法によるZS粒子を用いた抗原測定の高感度化」を示す図である。自己組織化能を有するタンパク質が、脂質2重膜を取り込むことにより形成されるナノサイズの粒子であって、自己組織化能を有するタンパク質が、抗体/抗原結合用タンパク質及び抗体/抗原非結合タンパク質を有する、高感度免疫学的測定用ナノ粒子。ナノサイズの粒子が、中空ナノ粒子である、請求項1に記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。抗体/抗原非結合タンパク質が、抗体/抗原結合用タンパク質間の間隔を広げる機能を有しており、抗体/抗原結合用タンパク質と抗原/抗体分子との結合を促進する補助タンパク質である、請求項1または2に記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。抗体/抗原結合用タンパク質が、ZZタグまたはストレプタグ(登録商標)を含む少なくとも一種類の、請求項1から3のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。抗体/抗原結合用タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、またはニュートラアビジンからなる群より選ばれるアビジン物質を含む少なくとも一種類の、請求項1から4のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。抗体/抗原分子が、アビジン結合能を有するビオチンで修飾されている請求項1から5のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。抗体/抗原非結合タンパク質が、少なくとも1種類のタンパク質である、請求項1から6のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。自己組織化能を有するタンパク質が、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質である、請求項1から7のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。抗体/抗原非結合タンパク質が、Sタンパク質である、請求項1から8のいずれかに記載の高感度免疫学的測定用ナノ粒子。請求項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子に、抗体/抗原分子を結合させ、該分子により捕捉される測定対象物質を、ELISA法、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、蛍光免疫測定法(FLISA)、細胞免疫染色法、組織免疫染色法、フローサイトメトリー法、蛍光標示式細胞分取法(FACS)、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、二面偏波式干渉法(DPI)、エリプソメトリー法、ELISPOT法またはウェスタンブロッティング法を用いて測定する方法。請求項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子を担体に結合させた、アフィニティビーズ。請求項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子に、抗体/抗原分子を結合させ、該分子により認識捕捉される測定対象物質を測定する為の、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、酵素免疫測定法(EIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、または蛍光免疫測定法(FLISA)用プレート。請求項1から9のいずれかに記載の、高感度免疫学的測定用ナノ粒子に、抗体/抗原分子を結合させ、該分子により捕捉される測定対象物質を測定する、水晶振動子マイクロバランス(QCM)用センサーチップ、表面プラズモン共鳴法(SPR)用センサーチップ、二面偏波式干渉法(DPI)、またはエリプソメトリー法用センサーチップ。 【課題】 生分解性のナノ粒子に対して、表面に抗体を立体障害無く高密度で整列提示可能とし、高感度な免疫学的測定を可能とするツールおよびそれを用いた免疫学的測定方法を提供することを課題としている。【解決手段】 自己組織化能を有するタンパク質が脂質2重膜を取り込むことにより形成されるナノサイズの粒子であって、自己組織化能を有するタンパク質が抗体結合タンパク質と抗体非結合タンパク質から構成される、高感度免疫学的測定用粒子を用いる。【選択図】 なし配列表


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