タイトル: | 公開特許公報(A)_一般生菌数測定用培地 |
出願番号: | 2008249789 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12Q 1/04 |
石垣 明美 鴻巣 正幸 JP 2010075145 公開特許公報(A) 20100408 2008249789 20080929 一般生菌数測定用培地 三愛石油株式会社 390019518 五十嵐 和壽 100080115 石垣 明美 鴻巣 正幸 C12Q 1/04 20060101AFI20100312BHJP JPC12Q1/04 2 OL 11 4B063 4B063QA01 4B063QQ06 4B063QR48 4B063QR49 4B063QR69 本発明は、牛由来成分を含有しない一般生菌数測定用培地に関するものであり、この培地は、細菌の選択性を示さず、一般生菌数を測定することができる。 従来、食品、化粧品、一般工業材料等の分野における一般生菌数の測定においては、ブレインハートインフュージョン寒天培地、ハートインフュージョン寒天培地、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地(CASO寒天培地)、標準寒天培地、及び普通寒天培地が広く用いられている。 生菌数の測定において、例えば、食品衛生法で規定されている食品衛生検査指針においては、その測定対象となる菌種により、細かく検査方法が明記されている。その菌種の分類は、一般生菌数、大腸菌群・大腸菌、サルモネラ属薗、黄色ブドウ球薗、腸炎ビブリオ・カンピロバクター及び真菌となっている。 一般生菌数測定においては、通常、混釈法が用いられており、試験検体を滅菌希釈水で順次10倍に希釈し、これを1ml又は1gシャーレに加えた検体液に、滅菌溶解して45℃に保持されている標準寒天培地を注ぎ、寒天が固化した後、36℃に維持されている恒温槽中で培養し、生育したコロニー(集落)数を計測して、検体1ml又は1g中の生菌数としている。 また、化粧品において、一般生菌数測定は、第十四改正日本薬局法・微生物限度試験法に規定されており、メンブランフィルター法、寒天平板法、寒天平板表面塗抹法及び液体培地段階希釈法の4つの方法が明記されている。寒天平板法は、食品衛生検査指針に記載されている方法と試験方法は基本的に同様である。メンブランフィルター法、寒天平板法、寒天平板表面塗抹法で規定されている培地は、CASO寒天培地が使用されている。 これらを含めた一般生菌数測定用培地は、表1に示す組成となっており、いずれも牛由来成分を多量に含有している。そして、牛由来成分を含有する培養培地は高品質のタンパク質を含み、細菌の選択性が無く、細菌の発育が良好な培地である。 ところが、現在のウシ海綿状脳症の問題から、牛肉をはじめとして牛由来部位の輸入が制限され、あるいは輸出制限が各国でなされており、供給が安定しておらず、入手できない成分が存在し、望ましい状態の培養培地を得ることが難しい状態にある。また、このような状況から全世界で共通の成分からなる培地を共用できないのが、現状である。 このような状況に鑑み、本発明は、牛由来成分を含有せずに、細菌の選択性が無く、細菌の発育が良好である一般生菌数測定用培養培地を提供することを目的とする。 本発明者らは、牛由来成分を含有せずに、各種の成分を組み合わせて培地を調製し、種々の細菌群での発育効果を評価した結果、細菌の選択性が無く、発育良好な組成を見出し、本発明に至った。 すなわち、第1の発明は、牛由来成分を含有せずに、大豆ペプトン及び酵母エキスを必須成分とし、ブドウ糖、リジン及び魚肉エキスのうち少なくとも1種類含有してなることを特徴とする一般生菌数測定用培地である。 また、第2の発明は、第1の発明において、精製水1,000ml中に以下の成分を含有するものであることを特徴とする一般生菌数測定用培地である。 大豆ペプトン 10g 酵母エキス 1g ブドウ糖 1〜10g リジン 1〜3g 魚肉エキス 3〜10g 寒天 15〜18g 本発明の牛由来成分を含有しない一般生菌数測定用培地は、従来使用されている牛由来成分を含有するブレインハートインフュージョン寒天培地、ハートインフュージョン寒天培地、CASO寒天培地、標準寒天培地、及び普通寒天培地における各菌種の発育特性及び検出感度に比べて遜色ない培地であり、その成分も輸出入の問題もなく、安定して供給されているもので、どこでも入手可能となり、望ましい状態の培地を得ることができて非常に有用である。また、全世界で共用することができる。 本発明における一般生菌数測定用培地は、従来使用していた牛由来成分を含有せずに、大豆ペプトン及び酵母エキスを必須成分とし、ブドウ糖、リジン及び魚肉エキスのうち少なくとも1種類含有してなる。そして、その成分としては下記成分組成からなる培地が好ましいもとして挙げられる。 大豆ペプトン 10g 酵母エキス 1g ブドウ糖 1〜10g リジン 1〜3g 魚肉エキス 3〜10g 寒天 15〜18g 精製水 1,000ml 本発明における一般生菌数測定用培地は、前記成分からなる溶液を調製し、pHを7.0〜7.2となるように調整し、溶液を滅菌し、容器に分注し、室温で固化させて、調製される。前記溶液のpHが7.0〜7.2であれば調整しなくてもよいが、そうでない場合は水酸化ナトリウム水溶液もしくは塩酸水溶液を用いて調整する。例えば、1N−水酸化ナトリウム水溶液を0.1〜1ml、もしくは1N−塩酸水溶液を0.1〜1ml添加して調整することが好ましい。また、滅菌は、例えば、オートクレーブ等で、日本薬局法で決められている121℃、1.3kpaで15〜20分間滅菌する。さらにシャーレ等の容器に分注し、室温で固化させて培地を調製する。 培地への試験検体である菌の接種は、菌を、固化する前の培地に、加えて固化させるか、培地が固化した後、滅菌コンラージ棒などで均一に伸ばして接種する。菌の接種は、例えば103[cfu/ml]及び105[cfu/ml]に調整した菌含有液を、培地に1ml接種するのが好ましい。 その後、25〜35℃に調整した恒温槽で24〜120時間培養し、菌の発育状態を観察し、生育したコロニー(集落)数を計測して、接種した検体1ml又は1g中の生菌数に対する数値を求めて、評価する。本発明ではコロニー数の計測は目視で行い、その評価は、本発明の一般生菌数測定用培地での一般細菌の生育状態と、従来の牛由来成分を含有する培地での一般生菌の生育状態とを比較して評価した。 そして、本発明の一般生菌数測定用培地での一般細菌の生育状態は、従来の牛由来成分を含有する培地での一般生菌の生育状態と比較して遜色のないものであり、また、一般に発育が良くないヨーグルト菌を本発明の培地で培養した生育状態も良好である。 大豆ペプトン、酵母エキス及び寒天を、大豆ペプトン:10g、酵母エキス:1g、寒天:18gを蒸留水1,000mlに添加し、この液に、ブドウ糖、リジン及び魚肉エキスの各成分0g、1g、3gをそれぞれ添加し、表2に示す成分組成からなる各種培地用の溶液を調製した。溶液のpHは、7.0〜7.2となるように、1N−水酸化ナトリウム水溶液を0.1ml添加して調整した。調製した培地を、オートクレーブを用いて、121℃、1.3kpaで20分間かけて滅菌し、シャーレに20mlずつ分注し、室温(25℃)で固化させた。これに試験菌培養液を滅菌生理食塩水で希釈して、103[cfu/ml]又は105[cfu/ml]にそれぞれなるように調整したものを、先に調製した培地に1ml加え、滅菌コンラージ棒で均一に伸ばして接種した。その後、30±2℃に調整した恒温槽で2日間培養し、菌の発育状態を観察した。試験結果を表2に示す。 試験菌としては、Escherichia Coli(NBRC3972)、pseudomonas aeruginosa(NBRC12689)、グラム陽性薗としてStaphylococcus aureus(NBRC12732)、Bacillus subtilis(NBRC13719)、市販ヨーグルトダノンBio(ダノン製)、ソフィール(ヤクルト製)から単離した細菌を用いた。これら試験菌は、滅菌した普通ブイヨン培養液(栄研化学製)にて前培養したものである。 培地成分としては次のものを用いた。 大豆ペプトン:ポリペプトンS、日本製薬(株)製 酵母エキス:オリエンタル酵母工業(株)製 ブドウ糖:関粛化学(株)製試薬特級 リジン:和光純薬工業(株)製 魚肉エキス:エルリッヒカツオエキス(極東製薬エ簑(株)製) 寒天:和光純薬工轟(株)製試薬特級 表2及び以下に示す表3及び表4において、Soy-pepton は大豆ペプトンを示し、YeastExtractは酵母エキスを示し、Agarは寒天を示す。また、E.ColiはEscherichia Coliを示し、P.aeruginosaはpseudomonas aeruginosaを示し、S.aureusはStaphylococcus aureusを示し、B.subtilisはBacillus subtilisを示す。 表2から、ブドウ糖、リジン、魚肉エキスの含有量がそれぞれ高い組成の培地において、発育が良いことが確認され、大豆ペプトン、酵母エキスの他に少なくともブドウ糖、リジン、魚肉エキスが1種以上添加された組成の培地では、発育性能が高いことが明らかとなった。 表3に示すように培地成分の添加量をブドウ糖:2、3、4、5、10g、リジン:1、2、3g、魚肉エキス:3、4、5、10gとする以外は実施例1と同様にして培地を調製し、調製した培地に、試験菌を接種し、菌の発育状態を観察した。その結果を表3に示す。 表3から、ブドウ糖、魚肉エキスが多い組成の培地は、菌の発育が良好なことが確認でき、発育性能が高いことが明らかとなった。(比較例) 前述した一般的に使用される培地を用いて、試験菌の発育特性の確認を行った。 実施例1及び実施例2と同じ試験菌を用いて、同様な操作で実施した。 培地として、ブレインハートインフュージョン寒天培地、ハートインフュージョン寒天培地、CASO寒天培地、標準寒天培地、及び普通寒天培地の5種類を用いた。これらのその成分組成は表1に示されている。 結果を表4に示す。ここで用いた使用培地について次に示す。すなわち ブレインハートインフュージョン寒天培地は極東製薬工業(株)製 ハートインフュージョン寒天培地は極東製薬工業(株)製、 CASO寒天培地はトリプトソーヤ寒天培地(極東製薬工業(株)製) 標準寒天培地は栄研化学(株)製 普通寒天培地は栄研化学(株)製をそれぞれ用いた。 表4から、一般に使用される一般生菌数測定用培地は、菌の発育性が高いことが確認された。 また、表2〜4から、本発明の一般生菌数測定用培地は、従来使用されている牛由来成分を含有する培地と比べて各菌種の発育特性に遜色ない発育特性及び検出感度を示すものであった。 牛由来成分を含有せずに、大豆ペプトン及び酵母エキスを必須成分とし、ブドウ糖、リジン及び魚肉エキスのうち少なくとも1種類含有してなることを特徴とする一般生菌数測定用培地。 精製水1,000ml中に以下の成分を含有するものであることを特徴とする請求項1記載の一般生菌数測定用培地。 大豆ペプトン 10g 酵母エキス 1g ブドウ糖 1〜10g リジン 1〜3g 魚肉エキス 3〜10g 寒天 15〜18g 【課題】ウシ海綿状脳症の問題から安定供給の難しい、牛由来成分を含有せずに、細菌の選択性が無く、細菌の発育が良好である一般生菌数測定用培養培地を提供する。【解決手段】牛由来成分を含有せずに、大豆ペプトン及び酵母エキスを必須成分とし、ブドウ糖、リジン及び魚肉エキスのうち少なくとも1種類含有してなる一般生菌数測定用培地。【選択図】なし