タイトル: | 公開特許公報(A)_水素脆化の検査方法 |
出願番号: | 2008221079 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 27/72,G01N 27/90 |
橋本 光男 末次 秀彦 JP 2010054414 公開特許公報(A) 20100311 2008221079 20080829 水素脆化の検査方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 坂元 徹 100151909 橋本 光男 末次 秀彦 G01N 27/72 20060101AFI20100212BHJP G01N 27/90 20060101ALI20100212BHJP JPG01N27/72G01N27/90 3 OL 6 2G053 2G053AA01 2G053AA11 2G053AB21 2G053AB27 2G053BA12 2G053BA23 2G053BA26 2G053BB11 2G053BC02 2G053BC14 2G053CA03 2G053CB26 2G053CB30 2G053CC04 2G053DA03 2G053DA07 本発明は、金属材料の水素脆化の検査方法に関する。詳しくは、金属材料の水素脆化を渦流探傷法で容易に検査する方法に関する。 チタンを腐食環境で長時間使用した場合に、腐食に伴って発生した水素を吸収し、チタンの水素化物が析出し、伸びが低下し、強度が低下する場合がある。この現象はチタンの水素脆化と呼ばれている。チタンは石油精製プラント、石油化学プラント等の熱交換器のチューブの他、クラッド鋼板等として使用されている。水素脆化が見られる金属材料としては、チタンのみならず、ジルコニウムやタンタルが挙げられる。 これらの水素脆化を検出し、その状況を把握することは、設備の点検時期および設備の更新時期を決定する上で重要である。 金属材料の水素脆化を検査する方法として渦流探傷法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。水素脆化を渦流探傷法で検査する際には、校正するために、水素脆化を起し、吸蔵水素量が判っている基準試験材が必要である。 しかしながら、渦流探傷法は非破壊検査であり、好ましい方法であるが、人工的に水素脆化を制御して所定の吸蔵水素量の試験材とすることは困難であり、従って水素脆化を渦流探傷法で検査する際に、基準試験材が入手し難く、誰でも容易に検査し難いという問題点を有している。石油学会規格 JPI-8R-13-2003 63〜68頁 本発明は、金属材料の水素脆化を渦流探傷法で検査する際に必要な基準試験材を容易に入手可能とし、水素脆化を容易に検査する方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、渦流探傷シミュレーションによって基準となる吸蔵水素量の水素脆化部のリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す欠陥の形状を求め、この形状の人工欠陥を設けた試験材を作製し、基準試験材として検査に用いることによって、水素脆化を容易に検査できることを見出し、本発明に至った。 すなわち本発明は、金属材料の水素脆化を渦流探傷法で検査する方法において、渦流探傷シミュレーションによって基準となる吸蔵水素量の水素脆化部のリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す欠陥の形状を求め、この形状の人工欠陥を設けた試験材を作製し、基準試験材として検査に用いることを特徴とする水素脆化の検査方法である。 本発明の方法によって、基準試験材の入手が容易になり、水素脆化を渦流探傷法で容易に検査することができる。 金属材料に水素脆化が発生し、吸蔵水素量が増大すると伸び特性や絞り特性が低下し、さらに大量の水素を吸蔵するとクラック発生の原因となることが知られている。吸蔵水素量が増大すると比抵抗が上昇(導電率が低下)する(図1および表1参照。)(特開平1−316659号公報)。吸蔵水素量が600ppmまでは変化は見られないが、約1000ppmを超えると急激に上昇している。従って、吸蔵水素量が1000ppm以上である場合には金属材料の更新などを検討する必要がある。 %IACS:焼鈍した純銅の導電率を100%として表示。 また、実際に使用したチタン管で確認された水素脆化部の形状は、管外表面から深さが約0.8mmで直径が約1.6mmφの半球状であった。本発明においては簡単化し、水素脆化部の形状としては、この半球状の体積と同等の直径1.6mmφで深さ0.6mmdの円柱状とする。 上記のことから基準となる吸蔵水素量の水素脆化部は、大きさが1.6mmφ×0.6mmdの円柱状で吸蔵水素量が1000ppmとする。 本発明においては、シミュレーションによって、上記基準の水素脆化部について求めたリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す欠陥形状を求める。 渦流探傷シミュレーションの方法は公知であり、シミュレーションソフトが市販されている。その例として、Vic−3D(Victor technologies製)が挙げられる。 シミュレーションに際しては(A)試験材料の情報、(B)欠陥の情報および(C)コイルの情報を入力して行う。 (A)試験材料の情報としては、形状(伝熱管の場合、外径、内径、肉厚)、電磁気特性(導電率、透磁率、誘電率)が挙げられる。 (B)欠陥の情報としては形状(円柱か直方体(立方体)か、き裂は直方体形状で幅をき裂幅として小さく設定)、電磁気特性(導電率、透磁率、誘電率、欠陥部が割れやボイド等の空洞か材質変化(水素脆化など)なのか)、向き(管に対してき裂や欠陥の発生方向(軸方向、周方向など))が挙げられる。 (C)コイルの情報としては、形状(外径、内径、巻幅、巻数、円形か方形か)、向き(コイルの設置方向(周方向、軸方向など)、管の中心軸からのズレ量(リフトオフ))、試験周波数が挙げられる。 シミュレーションによって、基準の水素脆化部について求めたリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す欠陥形状は、トライアンドエラーによって求める。すなわち、類似の種々の大きさの欠陥形状についてリサージュ波形を求め、基準の水素脆化部について求めたリサージュ波形と同等のものを求める。 この形状の人工欠陥を設けた試験材を作製し、基準試験材として検査に用いる。 上記の基準の水素脆化部について求めた同等の人工欠陥の例は、実施例で示すとおり、0.25mmφ×0.6mmdの平底穴となる。これに限定されるものでなく、これより直径が大きく、深さが浅いものでも該当する形状がある。 金属材料の水素脆化を渦流探傷法で検査する際には、欠陥に対してコイル幅が大きく、金属材料に広く近接して配置可能な励磁コイル、いわゆる一様渦電流コイルと呼ばれる励磁コイルを有する一様渦電流プローブを用いて行うのが良い。このことによって吸蔵水素量が高くなくても水素脆化を検出できる。 金属材料について渦流探傷して得られたリサージュ波形が、人工欠陥(0.25mmφ×0.6mmdの平底穴)を設けた基準試験材について渦流探傷して得られたリサージュ波形と同等またはそれ以上の大きさである場合には、少なくとも吸蔵水素量が約1000ppm以上、または水素脆化の形状が大きくなっている可能性があり、更新などの検討が必要となる。 基準試験材は一種でなく、吸蔵水素量を変えて求めた人工欠陥を設けた複数の基準試験材を用いて検査するのも良い。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 渦流探傷シミュレーションソフトVic−3D(Victor technologies製)を用いて、基準となる吸蔵水素量(1000ppm)の水素脆化部を有するチタン製伝熱管についてシミュレーションし、これらの水素脆化部と同等の欠陥形状を求めた。なお、5000ppmの吸蔵水素量の水素脆化部についても同様に行った。 シミュレーションに際しての入力情報は以下のとおりである。(1)伝熱管形状 外径:19.0mmφ、内径:16.6mmφ、肉厚:1.2mm(2)伝熱管健全部の電磁気特性 導電率:3.65(IACS%)、透磁率:1(−)、誘電率:1(−)(3)コイルの形状 外径:15.5mmφ、内径:14.5mmφ、巻幅:1mm、巻数:60回、ボビ ン型(4)コイルの向き 周方向に巻いてあり、管の中心とコイルの中心が同じ。1mm間隔で2個配置。(5)コイル試験周波数:100kHz(6)水素脆化部形状 1.6mmφ×0.6mmdの円柱状で、円柱の高さ方向が管の肉厚方向と同じ。(7)水素脆化部の電磁気特性 ・吸蔵水素量が1000ppm 導電率:3.51(IACS%)、透磁率:1(−)、誘電率:1(−) ・吸蔵水素量が5000ppm 導電率:3.08(IACS%)、透磁率:1(−)、誘電率:1(−)(8)欠陥の電磁気特性 導電率:0(IACS%)、透磁率:1(−)、誘電率:1(−) シミュレーションした結果、形状が1.6mmφ×0.6mmdで吸蔵水素量が1000ppmの水素脆化部のリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す欠陥形状の例は、0.25mmφ×0.6mmdの平底穴であった。吸蔵水素量が5000ppmの場合は、0.5mmφ×0.6mmdの平底穴であった。得られたリサージュ波形を図2、図3に示す。 人工欠陥を設けたチタン製伝熱管について渦流探傷試験を行った。 図4にこの試験の模式図を示す。外径19.0mmφ、肉厚1.2mmのチタン製伝熱管1の外表面には0.25mmφ×0.6mmdの平底穴の人工欠陥が設けられている。伝熱管内をプローブ3を走査して試験した。プローブには励磁コイル4および検出コイル5が設けられている。プローブの励磁コイルは発信器(図示していない。)に接続され、周波数75kHzで励起し、検出コイルは渦流探傷器(図示していない。)に接続されている。 励磁コイルおよび検出コイルの仕様を表2に示す。この励磁コイルは、欠陥に対してコイル幅が広く、伝熱管内面に広く近接しており、いわゆる一様渦電流コイルと呼ばれるものである。 結果を図5に示す。図5は得られたリサージュ波形のラインデータ(X軸、Y軸の振幅信号)であり、人工欠陥が検出されている。 実際の伝熱管について、上記と同様に試験して、図5に示すと同程度またはそれ以上の振幅変化を示す場合には、吸蔵水素量が1000ppm以上の水素脆化が発生している可能性があり、更新などの検討が必要である。吸蔵水素量と比抵抗との関係を示す図である。吸蔵水素量1000ppmの場合のシミュレーション結果を示す図である。吸蔵水素量5000ppmの場合のシミュレーション結果を示す図である。人工欠陥についての渦流探傷試験を説明するための模式図である。人工欠陥についての渦流探傷試験の結果を示す図である。符号の説明1 チタン製伝熱管2 人工欠陥3 プローブ4 励磁コイル5 検出コイル 金属材料の水素脆化を渦流探傷法で検査する方法において、渦流探傷シミュレーションによって基準となる吸蔵水素量の水素脆化部のリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す欠陥の形状を求め、この形状の人工欠陥を設けた試験材を作製し、基準試験材として検査に用いることを特徴とする水素脆化の検査方法。 基準となる吸蔵水素量が1000ppmであることを特徴とする請求項1記載の水素脆化の検査方法。 一様渦電流プローブを用いて検査を行うことを特徴とする請求項1記載の水素脆化の検査方法。 【課題】金属材料の水素脆化を渦流探傷法で検査する際に必要な基準試験材を容易に入手可能とし、水素脆化を容易に検査する方法を提供する。【解決手段】金属材料の水素脆化を渦流探傷法で検査する方法において、渦流探傷シミュレーションによって基準となる吸蔵水素量の水素脆化部のリサージュ波形と同等のリサージュ波形を示す人工欠陥の形状を求め、この形状の人工欠陥を設けた試験材を作製し、基準試験材として検査に用いることを特徴とする。【選択図】なし