タイトル: | 公開特許公報(A)_フェノール類二量体の製造方法 |
出願番号: | 2008220118 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 37/11,C07C 39/15,C07C 41/01,C07C 43/295,B01J 27/25,C07B 61/00 |
大久保 尚人 東村 秀之 JP 2009073824 公開特許公報(A) 20090409 2008220118 20080828 フェノール類二量体の製造方法 住友化学株式会社 000002093 特許業務法人原謙三国際特許事務所 110000338 大久保 尚人 東村 秀之 JP 2007226356 20070831 C07C 37/11 20060101AFI20090313BHJP C07C 39/15 20060101ALI20090313BHJP C07C 41/01 20060101ALI20090313BHJP C07C 43/295 20060101ALI20090313BHJP B01J 27/25 20060101ALI20090313BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090313BHJP JPC07C37/11C07C39/15C07C41/01C07C43/295 BB01J27/25 ZC07B61/00 300 5 1 OL 12 4G169 4H006 4H039 4G169AA06 4G169BB12A 4G169BB12B 4G169BC43A 4G169BC43B 4G169BE17A 4G169BE17B 4G169CB46 4G169DA02 4H006AA02 4H006AC23 4H006AC43 4H006BA08 4H006BA34 4H006BB14 4H006BB16 4H006BC18 4H006FC52 4H006FE13 4H006GN02 4H006GP06 4H006GP12 4H039CA41 4H039CA61 4H039CD10 4H039CL11 本発明は、フェノール類二量体の製造方法に関するものである。 フェノール等のフェノール類の酸化カップリングにより得られるフェノール類二量体は、エンジニアリングプラスチック、エポキシ樹脂、フォトレジスト、酸化防止剤等の合成原料として幅広い分野に応用されている。 フェノール類の酸化カップリング法としては、一般に遷移金属化合物を用いる方法が安価で有用な方法である。この方法では、遷移金属化合物は酸化剤又は触媒として使用される。しかし、フェノール類二量体の製造においては、一般に生成したフェノール類二量体がフェノール類よりも酸化され易く、従って、フェノール類二量体が生成してもすぐに高分子量化してしまうという問題がある。 かかる問題を解決するために、特許文献1には、有機溶媒と水との二相系混合溶媒を用い、有機溶媒にフェノール類を溶解させると共に、水に遷移金属化合物であるCe(NH4 )2 (NO3 )6 を溶解させ、これら両溶媒を攪拌してフェノール類を酸化カップリングする方法が開示されている。また、同文献には、メタノールと水との均相系混合溶媒を用いると、フェノール類二量体の収率が低くなることも開示されている。特開2000−239203号公報(2000年9月5日公開)(表2) しかしながら、均相系混合溶媒を用いた場合においても、フェノール類二量体の収率を向上させることができるフェノール類二量体の製造方法を、開発することが望まれている。 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、均相系の混合溶媒を用いた場合においてもフェノール類二量体の収率を向上させることができるフェノール類二量体の製造方法を実現することにある。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、フェノール類と遷移金属化合物とを或る特定の方法で混合して反応させることにより、フェノール類二量体の収率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、上記課題を解決するために、下記式(I)で表されるフェノール類を含む第一の溶液を供給する第一ラインと、遷移金属化合物を含む第二の溶液を供給する第二ラインと、上記第一ライン及び上記第二ラインから供給された溶液を排出する排出ラインとを少なくとも備えた内部衝突型ミキサーを用いて、上記第一の溶液と上記第二の溶液とを混合する工程を含むことを特徴としている。(式(I)中、R1 〜R5 は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、R1 、R3 およびR5 のうちの少なくとも1つの基は水素原子である) また、本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、上記混合する工程が、上記排出ラインにおける流速をuout(m/s)、上記排出ラインの流路の内径をd(m)とした場合に、下記式(a)を充足する条件で混合する工程であることを特徴としている。 uout /d ≧ 10,000(s−1 ) …(a) また、本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、上記第一の溶液及び上記第二の溶液のうちの少なくとも一方が水を含む溶液であることを特徴としている。 また、本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、上記第一の溶液が、炭素数1〜3のアルコール及びアセトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒を含む溶液であることを特徴としている。 また、本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、上記遷移金属化合物が、Ce(NH4 )2 (NO3 )6 であることを特徴としている。 本発明に係るフェノール類二量体の製造方法によれば、フェノール類二量体の収率を向上させることができるという効果を奏する。 以下、本発明について詳しく説明する。尚、本明細書では、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上、B以下であることを示す。また、本明細書中における「均相系」とは、反応に用いる溶媒が相分離を生じておらず均一な相を形成している反応系を意味する。 また、本明細書中で用いるフェノール類二量体の反応率とは、 反応率(%)={1−(未反応フェノール類量[mol]/仕込みフェノール類量[mol])}×100を意味し、フェノール類二量体の選択率とは、 選択率(%)=(2×生成したフェノール類二量体量[mol]/反応したフェノール類量[mol])×100を意味する。 図1は、本発明に係る製造方法で用いる反応装置の概略の構成を示す模式図である。また、図2は、上記反応装置における内部衝突型ミキサー1の中心を紙面方向から切断した断面図である。 本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、遷移金属化合物の存在下、式(I)で表されるフェノール類(以下、単に「フェノール類」と記す場合がある)を酸化カップリング反応させる方法であり、上記フェノール類を含む第一の溶液を供給する第一ラインと、上記遷移金属化合物を含む第二の溶液を供給する第二ラインと、上記第一ライン及び上記第二ラインから供給された溶液を排出する排出ラインとを少なくとも備えた内部衝突型ミキサーを用いて、上記第一の溶液と上記第二の溶液とを混合する工程を含んでいる。 より具体的には、図1及び図2に示すように、内部衝突型ミキサー1は、1つの出口1cと、2つの入口1a及び1bとを少なくとも備えている。上記入口1aには、ポンプ2aにより所定の流速で第一の溶液が供給されるようになっている。上記入口1bには、ポンプ2bにより所定の流速で第二の溶液が供給されるようになっている。供給された上記第一の溶液及び上記第二の溶液は、内部衝突型ミキサー1の内部で混合され、出口1cから排出ライン(出口側流路)へと排出される。排出された溶液は、排出ラインを通じて反応容器5に導かれる。つまり、内部衝突型ミキサー1は、入口1a・1bから流入する各溶液を内部で衝突させ、出口1cから反応容器5に流出するようになっている。 ここで、上記内部衝突型ミキサーは、上記排出ラインにおける流速をuout(m/s)、上記排出ラインの流路の内径をd(m)とした場合に、下記式(a)を充足することがより好ましい。 uout /d ≧ 10,000(s−1 ) …(a) ここで、「排出ラインの流路の内径」とは、排出ラインの流路の断面形状が円形である場合はその直径を指し、円形でない場合には水力相当直径(=4×流れの断面積/浸辺長[流れの断面積のぬれ縁の長さ])を指す(例えば、「化学機械の理論と計算(第2版)」(水科、桐栄編、p48、1975年出版、産業図書)を参照)。尚、図2では、例として挙げた内部衝突型ミキサー1の分岐部分における出口側流路の内径を、Dで示している。 上記流速uout /dは、より好ましくは10,000〜100,000(s−1 )の範囲内であり、更に好ましくは10,000〜70,000(s−1 )の範囲内であり、特に好ましくは20,000〜50,000(s−1 )の範囲内である。 上記内部衝突型ミキサーにおける2つの入口から流入する各液体が衝突する角度は、45〜180°の範囲内が好ましく、90〜180°の範囲内が更に好ましく、150〜180°の範囲内であることが特に好ましい。尚、図1及び図2においては、2つの入口から流入する各液体が衝突する角度が180°である内部衝突型ミキサーを例示している。 内部衝突型ミキサーとしては、具体的には、例えば、内部衝突タイプのマイクロミキサー、T字管、IMM社のStandard Slit Interdigital Micro Mixer, Chem. Eng. Technol. 2005, 28, No.3, p324-330に記載の中心衝突型ミキサー、Swagelok製のT−ユニオン、(株)ミューカンパニーリミテドのミューミキサー等が挙げられる。 上記ポンプ2a及びポンプ2bとしては、従来公知のポンプを使用することができ、具体的には、例えば、脈動の無いKd Scientific社製のマイクロシリンジポンプや、脈動は少しあるものの、高圧で大流量を供給可能な大量分取用高速液体クロマトグラフ用ユニットを挙げることができる。 上記第一の溶液中におけるフェノール類の濃度は、通常、0.01〜500g/Lの範囲内であることが好ましく、0.05〜300g/Lの範囲内であることがより好ましく、0.1〜200g/Lの範囲内であることが更に好ましい。 また、上記第二の溶液中における遷移金属化合物の濃度は、自ら酸化剤となり得る遷移金属化合の場合には、内部衝突型ミキサーの内部で混合されたときに、通常、フェノール類1モルに対して、0.5〜3モルの範囲内となる濃度であることが好ましく、0.6〜2モルの範囲内となる濃度であることがより好ましく、0.7〜1.5モルの範囲内となる濃度であることが更に好ましい。 上記第一の溶液と上記第二の溶液との混合時の温度は、これら両溶液が何れも液体である温度であればよく、有機溶媒又は水の沸点以上の温度である場合には、加圧下で混合(反応)を行えばよい。温度範囲は0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは5〜80℃であり、さらに好ましくは10〜60℃である。 上記第一の溶液と上記第二の溶液との混合比(流速比)は、通常、遷移金属化合物とフェノール類とが好ましい上記モル比の範囲内となるように設定される。 本実施の形態では、上記フェノール類を含む第一の溶液と遷移金属化合物を含む第二の溶液とを混合する工程を行った(経由した)後、当該溶液を反応容器5に受け、反応容器5内で一定の時間、無攪拌下(静置)若しくは攪拌下で熟成させることにより反応を完結させることがより好ましい。熟成する時間は、通常、0.1〜24時間程度の範囲内で行われ、より好ましくは1〜5時間の範囲内で行う。 静置する際の温度は、例えば、10〜60℃の範囲内で行うことができる。攪拌する際の温度は、例えば、10〜60℃の範囲内で行うことができる。 本実施の形態に係るフェノール類二量体の製造方法では、遷移金属化合物を用いて、式(I)で表される上記フェノール類の酸化カップリング反応を行う。 本発明に用いられるフェノール類は前記式(I)で表され、式(I)中、R1 〜R5 は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。ここで、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基等の環状構造を持つ炭素数3〜10程度のシクロアルキル基;エテニル基、プロペ−1−ニル基、プロペ−2−ニル基、プロペ−3−ニル基、3−ブテ−1−ニル基、2−ブテ−1−ニル基、2−ペンテ−1−ニル基、2−ヘキセ−1−ニル基、2−ノネ−1−ニル基等の炭素数2〜10程度のアルケニル基;エチニル基、プロピ−1−ニル基、プロピ−2−ニル基、3−ブチ−1−ニル基、2−ブチ−1−ニル基、2−ペンチ−1−ニル基、2−ヘキシ−1−ニル基、2−ノニ−1−ニル基等の炭素数2〜10程度のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基等の炭素数6〜10程度のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−フェニル−3−プロピル基、1−フェニル−4−ブチル基等の炭素数7〜10程度のアラルキル基が挙げられる。該炭化水素基として、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。 また、R1 、R3 およびR5 のうちの少なくとも1つの基は水素原子であることが好ましく、より好ましくはR3 が水素原子である。 上記フェノール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール等が挙げられる。 本発明に用いられる遷移金属化合物としては、例えば、特開2000−239203号公報(特許文献1)に記載されている遷移金属化合物、並びに、自ら酸化剤となり得る遷移金属化合物等を用いることができる。尚、遷移金属化合物は酸化剤又は触媒として作用する。ここで、遷移金属とは、周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第3〜12族の元素を指し、遷移金属化合物とは、これら遷移金属の化合物を指す。 上記遷移元素としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、セリウム、白金、金等を例示することができる。 上記遷移金属化合物としては、上記フェノール類を酸化する能力があればよく、通常、標準酸化還元電位(25℃)が0V以上であればよい。具体的には、日本化学会編「改訂4版化学便覧基礎編II」P465−468,表12・40記載の水溶液中における標準電極電位(25℃)が0V以上である遷移金属化合物、及び遷移金属イオンを含む化合物等が挙げられる。 好ましい具体例としては、5価バナジウムイオン、3価マンガンイオン、3価鉄イオン、3価コバルトイオン、2価銅イオン、1価銀イオン、1価金イオン、4価セリウムイオン等の遷移金属イオンと、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等のカウンターアニオンと、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン等のカウンターカチオンとからなる遷移金属化合物が挙げられる。 上記遷移金属化合物の標準酸化還元電位(25℃)は、好ましくは0.01V以上であり、より好ましくは0.05V以上であり、更に好ましくは0.1V以上である。 遷移金属化合物としては、自ら酸化剤となり得る遷移金属化合物がより好ましく、Ce(NH4 )2 (NO3 )6 が特に好ましい。 上記遷移金属化合物の使用量は、自ら酸化剤となり得る遷移金属化合の場合には、通常、上記フェノール類1モルに対して、0.5〜3モルの範囲内が好ましく、0.6〜2モルの範囲内がより好ましく、0.7〜1.5モルの範囲内が更に好ましい。 上記遷移金属化合物の使用量は、触媒として用いる場合には、通常、上記フェノール類1モルに対して0.000001〜1.0モルの範囲内が好ましく、0.00001〜0.3モルの範囲内がより好ましく、0.0001〜0.2モルの範囲内が更に好ましい。 触媒として用いられる遷移金属化合物としては、例えば、特開平10−53649号公報に記載の単座配位子/遷移金属錯体;特開平10−168179号公報に記載の二座配位子/遷移金属錯体;特開平9−144449号公報、特開平10−45904号公報、特開平9−324040号公報に記載の三座配位子/遷移金属錯体;特開平9−324042号公報に記載の四座又は五座配位子/遷移金属錯体;特開平9−324043号公報に記載の六座以上の配位子/遷移金属錯体;特開平9−324045号公報に記載のメタロセン錯体等が挙げられる。 上記遷移金属化合物を触媒として用いる場合には、通常の酸化剤を共存させて反応を行う。尚、自ら酸化剤となり得る上記遷移金属化合物を用いる場合にも、通常の酸化剤を共存させて反応を行ってもよい。つまり、本実施の形態に係る方法では、上記遷移金属化合物に加えて、通常の酸化剤を共存させて反応を行ってもよい。 共存させる上記酸化剤としては、酸素又はパーオキサイドが挙げられる。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。 上記酸化剤の使用量は、酸素を用いる場合には上記フェノール類1モルに対して、通常、0.15モル以上過剰に使用し、パーオキサイドを用いる場合には上記フェノール類1モルに対して、通常、0.3〜1モルの範囲内で使用する。 本発明に係る製造方法は、フェノール類を含む第一の溶液と遷移金属化合物を含む第二の溶液とを混合する工程を含む。上記第一の溶液の溶媒(以下、「第一の溶媒」と記す)は、上記フェノール類及び上記遷移金属化合物に対し不活性であり、混合する工程(反応温度)において液体であり、上記フェノール類を溶解することができる溶媒である。より好ましくは、第一の溶媒は、上記第二の溶液の溶媒(以下、「第二の溶媒」と記す)と混合した際に相分離を生じることなく均一に混ざり合う溶媒である。 また、第二の溶媒は、上記フェノール類及び上記遷移金属化合物に対し不活性であり、混合する工程(反応温度)において液体であり、上記遷移金属化合物を溶解することができる溶媒である。より好ましくは、第二の溶媒は、上記第一の溶媒と混合した際に相分離を生じることなく均一に混ざり合う溶媒である。 上記第一の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クメン、1−ブチルベンゼン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭素数5〜10程度の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数5〜10程度の脂環式炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等の炭素数1〜10程度のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等の炭素数2〜10程度のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等の炭素数3〜10のケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;水等が挙げられる。これらは単独或いは混合物として使用することができる。これらの中では、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の炭素数1〜3のアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン等の、水を多く含有しても均一化する極性溶媒が好ましく、炭素数1〜3のアルコール及びアセトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒が特に好ましい。 上記第二の溶媒としては、通常、水が挙げられる。上記水には、水を多く含有しても均一化する極性溶媒、例えば、炭素数1〜3のアルコール及びアセトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒が含まれていてもよい。また、上記第二の溶媒として、炭素数1〜3のアルコール及びアセトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒を用いることもできる。 また、上記第一の溶媒は、水を含んでいることが更に好ましい。つまり、上記第一の溶媒及び上記第二の溶媒のうち、少なくとも一方は水を含む溶液であることが特に好ましい。 本発明に係る製造方法においては、上記第二の溶媒が好ましくは水を含んでいるので、溶媒の揮発や飛散等を低減することができ、より安全にフェノール類二量体を製造することができる。 本発明に係る製造方法によって、フェノール類二量体を高収率で得ることができる。当該フェノール類二量体としては、例えば、p,p’−ビフェノール、p,o’−ビフェノール、o,o’−ビフェノール等のビフェノール類(ジオキシビフェニル類)、及び、o−フェノキシフェノール、p−フェノキシフェノール等のフェノキシフェノール類が挙げられる。フェノール類二量体の相互の分離は、従来公知の方法により、即ち、例えば蒸留、昇華、再沈殿化、抽出、クロマトグラフィー等の精製法を単独又は組み合わせて行うことによって行うことができる。 本発明に係る製造方法によれば、フェノール類を含む第一の溶液と、遷移金属化合物を含む第二の溶液とを激しく衝突させて混合する工程を行うため、フェノール類二量体をより高い選択性及び収率で製造することができる。 以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例の各反応は特に断りの無い限り、常圧下、室温(約25℃)で行った。 〔フェノール類の反応率及びフェノール類二量体の選択率〕 反応混合物に、メタノール100mlを加え、不溶物をろ過し、そのろ液を高速液体クロマトグラフィー(製品名:LC−10A、島津製作所(株)製、検出波長:278nm、カラム:YMC社製ODS−AM(AM−304)、展開溶媒:メタノール/水)で分析した。 本実施例におけるフェノール類の反応率は、予め作成した、フェノール及びビフェニルの各検量線に基づき、反応混合物中のビフェニルを内部標準として求めた。 同様に、フェノール類二量体の選択率は、予め作成した、5種類のフェノール類二量体(p,p’−ビフェノール、p,o’−ビフェノール、o,o’−ビフェノール、o−フェノキシフェノール、p−フェノキシフェノール)の各検量線及び上記ビフェニルの検量線に基づいて、反応混合物中のビフェニルを内部標準として求めた。 フェノール類二量体の収率は、上記反応率および選択率から計算により求めた。 〔実施例1〕 クロマトグラフ用T字型継手(商品名:ロー・デッド・ボリューム型ユニオン・ティー、型番:SS−1F0−3GC、分岐部分における内径:0.33mm、Swagelok社製)を内部衝突型ミキサーとして用い、対向する2つの流路を入口用流路(第一ライン、第二ライン)として用い、残りの1つの流路を出口用流路(排出ライン)として用いた。 フェノール類としてフェノール376.4mg(4.00mmol)及び内部標準物質としてビフェニル100mgを、第一の溶媒としてメタノール100mlに溶解させ、第一の溶液を作製した。また、遷移金属化合物としてCe(NH4 )2 (NO3 )6 1.93g(3.52mmol)を、第二の溶媒として蒸留水20mlに溶解させ、第二の溶液を作製した。そして、第一の溶液を50ml/minの流速で、第二の溶液を10ml/minの流速で、それぞれ大量分取用液体クロマトグラフ用送液ポンプユニット(島津製作所(株)製、例えば、LC−8A、LC−10A、LC−11A等)を用いて流し、各溶液を混合させ、当該混合液を24時間、無攪拌下で静置した。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例2〕 第一の溶液におけるメタノールをテトラヒドロフラン(THF)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例3〕 第一の溶液におけるメタノールをアセトンに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例4〕 第二の溶液における蒸留水をメタノールに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例5〕 第一の溶液の流速を15ml/minに、第二の溶液の流速を3ml/minに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例6〕 第一の溶液の流速を100ml/minに、第二の溶液の流速を20ml/minに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例7〕 第一の溶液の流速を5ml/minに、第二の溶液の流速を1ml/minに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 〔実施例8〕 第一の溶液の流速を10ml/minに、第二の溶液の流速を2ml/minに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、フェノール類の二量化反応を行った。得られた混合液の分析結果を表1に示す。 本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。 本発明に係るフェノール類二量体の製造方法によれば、フェノール類二量体の収率を向上させることができる。つまり、フェノール類二量体を高収率で製造することができる。また、本発明に係るフェノール類二量体の製造方法は、フェノール類二量体の選択性にも優れている。このため、ラボスケールからプラントスケールまでの様々なフェノール類二量体の製造に適用することができる。本実施の形態の製造方法で用いる反応装置の概略の構成を示す模式図である。図1に示す反応装置における内部衝突型ミキサーの中心を紙面方向から切断した断面図である。符号の説明 1 内部衝突型ミキサー 1a 入口 1b 入口 1c 出口 D 例として挙げた内部衝突型ミキサーの分岐部分における出口側流路の内径(d) 下記式(I)で表されるフェノール類を含む第一の溶液を供給する第一ラインと、遷移金属化合物を含む第二の溶液を供給する第二ラインと、上記第一ライン及び上記第二ラインから供給された溶液を排出する排出ラインとを少なくとも備えた内部衝突型ミキサーを用いて、上記第一の溶液と上記第二の溶液とを混合する工程を含むことを特徴とするフェノール類二量体の製造方法。(式(I)中、R1 〜R5 は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、R1 、R3 およびR5 のうちの少なくとも1つの基は水素原子である) 上記混合する工程が、上記排出ラインにおける流速をuout(m/s)、上記排出ラインの流路の内径をd(m)とした場合に、下記式(a)を充足する条件で混合する工程であることを特徴とする請求項1に記載のフェノール類二量体の製造方法。 uout /d ≧ 10,000(s−1 ) …(a) 上記第一の溶液及び上記第二の溶液のうちの少なくとも一方が水を含む溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェノール類二量体の製造方法。 上記第一の溶液が、炭素数1〜3のアルコール及びアセトンからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒を含む溶液であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のフェノール類二量体の製造方法。 上記遷移金属化合物が、Ce(NH4 )2 (NO3 )6 であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のフェノール類二量体の製造方法。 【課題】均相系の混合溶媒を用いた場合においてもフェノール類二量体の収率を向上させることができるフェノール類二量体の製造方法を提供する。【解決手段】下記式(I)で表されるフェノール類を含む第一の溶液を供給する第一ラインと、遷移金属化合物を含む第二の溶液を供給する第二ラインと、上記第一ライン及び上記第二ラインから供給された溶液を排出する排出ラインとを少なくとも備えた内部衝突型ミキサー1を用いて、上記第一の溶液と上記第二の溶液とを混合する工程を含む方法。(式(I)中、R1〜R5は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、R1、R3およびR5のうちの少なくとも1つの基は水素原子である)【選択図】図1