タイトル: | 公開特許公報(A)_硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物およびその製造方法 |
出願番号: | 2008214897 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 321/20,C07C 319/24 |
横山 優介 JP 2010047547 公開特許公報(A) 20100304 2008214897 20080825 硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物およびその製造方法 荒川化学工業株式会社 000168414 横山 優介 C07C 321/20 20060101AFI20100205BHJP C07C 319/24 20060101ALI20100205BHJP JPC07C321/20C07C319/24 2 OL 7 4H006 4H006AA01 4H006AA02 4H006AC63 4H006BB11 4H006BB14 4H006BB31 4H006TA04 4H006TB71本発明は、硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物およびその製造方法に関する。近年、電子材料、光学材料の分野では、各種性能を向上させるべく、種々の新規材料が検討されている。特に、ノルボルネン化合物については、電子材料、光学材料等の分野で優れた特性が期待できるため、盛んに研究開発が行われている。また、ノルボルネンなどの脂環構造を有するモノマーを原料とするポリマーは透明性、耐熱性、寸法安定性などの物理的、化学的特性に優れていることが知られている。そして、一般式(A):で表される酸素原子を含有するノルボルネン化合物を単独で、または他のノルボルネン化合物と混合し、遷移金属触媒を用いた開環メタセシス重合などにより重合して得られた重合物を、レンズ、光導波路の材料とすることが提案されている(非特許文献1および特許文献1参照)。また、一般式(A)で表される酸素原子を含有するノルボルネン化合物とp−メトキシベンゾフェノンとをルテニウム触媒を用いて縮合することにより、縮合物を得る方法が提案されている(非特許文献2)。当該ノルボルネン化合物は、一般式(B):(X=OMs)で表される化合物を二量化させることにより製造する方法、X=OMsまたはOTsで表される化合物をX=OHで表される化合物とカップリングさせる方法が提案されているが(非特許文献1〜3参照)、いずれの方法においても、収率が低いという問題があった。また、化合物中に硫黄原子を導入することで、酸素原子を含有するノルボルネン化合物を用いたポリマーに比べ高い屈折率を付与することが期待される(例えば、非特許文献4参照)。J.Org.Chem.69、3319−3329(2004)Acta Polymer.47、391−398(1996)J.Chemical and Engineering Data 9(2)、240(1964)「透明ポリマーの屈折率制御」、日本化学会編、学会出版センター、IV−15、179(1998)特開2006−330119号公報本発明は、硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物を提供することおよび当該新規なノルボルネン化合物を安価かつ高収率で製造する方法を提供することを目的とする。本発明者は、かかる目的を解決すべく鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有するノルボルネン化合物と硫化試剤を反応させることにより、新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物を、簡便かつ高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1):で表される硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物;一般式(2):(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)で表される化合物を、二硫化物の存在下で反応させることを特徴とする、一般式(1):で表される硫黄原子を含有するノルボルネン化合物の製造方法に関する。本発明の新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物は、重合性官能基を複数有しているため、硬化性樹脂の原料として好ましく使用できる。また硫黄原子を含有するため高い屈折率を有し、特に光学用途に好ましく使用できる。さらに、当該新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物は、従来の電子材料、光学材料、成形品、複合材料、接着剤、塗料等の様々な用途に応用することができ、極めて有用である。本発明の新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物は、一般式(1):で表される。本願発明の化合物は、例えば、一般式(2):(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)で表される化合物を、二硫化物の存在下で反応させることにより得られる。なお、反応性の点からは、Xが臭素原子であるものが好ましい。一般式(2)で表わされる化合物は、例えば、シクロペンタジエンとアリルハライドをディールスアルダー反応させることにより得られる。当該反応に用いられる二硫化物としては特に限定されず、二硫化ナトリウム、二硫化リチウム等公知のものを用いることができるが、二硫化ナトリウムが、調製が容易になるため好ましい。二硫化物の使用量は特に限定されないが、通常、一般式(2)で表わされる化合物100モル部に対し、25〜100モル部程度、好ましくは、40〜60モル部用いれば良い。当該反応は、各成分を必要に応じて溶媒の存在下、加熱することにより行う。具体的には、通常、一般式(2)で表される化合物、二硫化物を混合して、50〜100℃程度に加熱すればよい。反応に使用できる溶媒としては、一般式(2)で表される化合物、二硫化物を溶解し、かつこれらに対し不活性なものであれば特に限定されず公知のものを使用できる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン、MEKなどのケトン類などが挙げられる。また、反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが、副反応を抑制することができるため好ましい。なお、本願発明の化合物は、例えば、一般式(3):で表される化合物を、酸化剤の存在下で反応させることによっても得られる。一般式(3)で表される化合物は、例えば、Xが塩素、臭素、ヨウ素である化合物とマグネシウムから調製したグリニャール試薬と硫黄と反応させるなど、公知の方法に従って調製することができるが、市販のものをそのまま用いてもよい。酸化剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、空気中の酸素、ヨウ素、過酸化水素水、過マンガン酸カリウム、硫酸銅、二酸化鉛、鉄(III)錯体、NO、N2O4、NO2などの窒素酸化物、ジメチルスルホキシドなど対称なジスルフィド構造を構築できる化合物などが挙げられる。 一般式(3)で表される化合物と酸化剤の使用量は特に限定されないが、通常は、一般式(3)で表される化合物100モル部に対して、酸化剤を50〜500モル部程度用いればよい。 当該反応は、各成分を必要に応じて溶媒の存在下、加熱することにより行う。具体的には、通常、一般式(3)で表される化合物、酸化剤を混合して、25〜100℃程度に加熱すればよい。反応に使用できる溶媒としては、一般式(3)で表される化合物、酸化剤を溶解し、かつこれらに対し不活性なものであれば特に限定されず公知のものを使用できる。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン、MEKなどのケトン類などが挙げられる。また、反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが、副反応を抑制することができるため好ましい。 前述の方法で得られた反応物は、公知の方法で精製することで、本発明の一般式(1)で表される化合物が得られる。精製方法としては、例えば、抽出、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。以下に、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが本発明はこれらの実施例のみに何ら限定されるものではない。また新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物のスペクトル、分子量の測定には次の装置を使用した。NMR:VARIAN社製 GEMINI−300IR:Nicolet社製 FT−IR Avatar360ガスクロマトグラフィー(GC):GC―17A(島津製作所製)融点測定器:Mettler製 FP82 Hot Stage実施例1 攪拌子、冷却管、滴下漏斗、温度計、窒素バルーンを備えた丸底フラスコ(200mL)に窒素雰囲気下、25℃にて硫化ナトリウム九水和物[6.44g(26.8mmol) 関東化学(株)製 鹿1級]、硫黄[0.86g(26.8mmol)和光純薬製]、エタノール(25mL)を導入し、攪拌を開始した。油浴により反応容器を加熱し、緩やかに還流させながら(内温が76℃であった)、攪拌を30分継続させた。水浴により25℃まで冷却し、一般式(2)で表される化合物(Xが=Br)[10.0g(53.5mmol) エンド/エキソ組成比=79/21 GC分析より算出した]を滴下漏斗より、攪拌を継続しながら滴下した。油浴により反応容器を加熱し、緩やかに還流させながら(内温が77℃であった)、攪拌を2時間継続させた。水浴にて25℃まで冷却し、反応混合物に水、ヘキサンを加えて抽出した。下層を除去した後、得られた有機層を水洗した後、得られたヘキサン溶液を60℃、2kPaで減圧濃縮することにより、7.8gの油状物質を得た。これを減圧蒸留(主留分:144〜145℃/0.8mmHg)することにより、5.6gの無色透明な油状物質を得た。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、5.0gの無色透明な油状物質を得た。収率67%、GC純度97.4%であった。なお20℃付近に冷却すると、上記の無色透明な油状物質は白色結晶へと変化した。この無色透明な樹脂状の固体は1H−NMR、13C−NMR、IR、により同定し、目的の化合物(1)であることを確認した。1H−NMR(300MHz CDCl3):δ=0.63(m,1.6H)、1.20〜1.42(m,3.2H)、1.45(m,1.8H)、1.52(m,0.2H)、1.75(m,0.3H)、1.93(ddd,J=3.8Hz,8.6Hz,11.7Hz,1.8H)、2.34〜2.54(m,5.3H)、2.55〜2.57(m,0.1H)、2.71(br s,0.4H)、2.76(s,0.3H),2.77(s,0.1H),2.78〜2.86(m,2.4H)、2.92(br s,1.8H)、5.96(dd,J=2.6Hz,5.2Hz,1.7H)、6.07(dd,J=2.6Hz,5.2Hz,0.3H)、6.11(dd,J=2.6Hz,5.2Hz,0.3H)、6.17(dd,J=2.6Hz,5.2Hz,1.7H)。13C−NMR(75.5Hz CDCl3):δ=32.5,33.2,38.4,38.5,42.0,42.7,44.2,44.3,45.3,45.8,45.9,49.6,132.1,136.4,136.7,137.7。IR(neat):2964,2865,1346,1329,1274,1254,833,822,784cm−1。屈折率 nD25=1.5652本発明の化合物は、透明性、耐熱性、耐水性にすぐれるために、電子材料、光学材料、成形品、複合材料、接着剤、塗料等の様々な用途に応用することができる。特に、分子中に脂環構造と硫黄原子を有することから、高屈折率の光学材料としても有望である。また、本発明の化合物は、分子中に2つの二重結合を有するため、架橋性モノマー(クロスリンカー)としても使用することができる。一般式(1):で表される硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物。一般式(2):(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)で表される化合物を、二硫化物の存在下で反応させることを特徴とする、一般式(1):で表される硫黄原子を含有するノルボルネン化合物の製造方法。 【課題】電子材料、光学材料、成形品、複合材料、接着剤、塗料等の様々な用途に応用することができる、透明性、耐熱性、耐水性にすぐれた、硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物およびその製造方法を提供する。【解決手段】特定のハロゲン化ノルボルネン化合物を二硫化物の存在下で反応させることを特徴とする硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物の製造方法を用いる。【選択図】なし