タイトル: | 公開特許公報(A)_置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体 |
出願番号: | 2008200435 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07F 1/12,C07D 233/58 |
藤村 整 福永 謙二 本間 貴志 町田 利一 JP 2010037244 公開特許公報(A) 20100218 2008200435 20080804 置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体 宇部興産株式会社 000000206 藤村 整 福永 謙二 本間 貴志 町田 利一 C07F 1/12 20060101AFI20100122BHJP C07D 233/58 20060101ALI20100122BHJP JPC07F1/12C07D233/58 14 OL 15 4H048 4H048AA01 4H048AA02 4H048BA92 4H048BB14 4H048BC10 4H048VA58 4H048VB10 本発明は、電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)用発光材料等として有用な置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体に関する。 有機エレクトロルミネッセンス素子は、近年、高性能平面カラーディスプレイ用表示装置として注目されているが、発光材料としては発光分子の励起1重項からの発光を利用する蛍光材料が主に用いられており、さらなる高効率を目指すために励起3重項からの発光を利用するリン光発光材料の開発が盛んに行われている。しかしながら、本発明の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は全く知られていなかった。 本発明の課題は、即ち、フルカラーディスプレイを実現するために不可欠な475nm以下の青色領域の発光を有し、電圧印加時に発生するジュール熱に耐えうる200℃以上の高い融点をもつ有機ルミネッセンス素子用発光材料等として有用な非イオン性の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体を提供することにある。 本発明は、一般式(1)(式中、Lは、含窒素へテロ環カルベン配位子を示す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環基を示す。なお、Rの炭素原子上のひとつ又は複数の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基に置換されていても良い。又、Rの炭素原子上の複数の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基で置換されている場合、隣接している基同士が結合して環を形成しても良い。)で示される置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体によって解決される。 本発明により、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料等として有用な置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体を提供することが出来る。 本発明の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Lは、含窒素へテロ環カルベン配位子を示す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環基を示す。なお、Rの炭素原子上のひとつ又は複数の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基に置換されていても良い。又、Rの炭素原子上の複数の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基で置換されている場合、隣接している基同士が結合して環を形成しても良い。 前記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。なお、これら置換基は、その異性体も含む。 前記シクロアルキル基としては炭素数3〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。 前記アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジメチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。なお、これら置換基は、その異性体も含む。 前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、インデニルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。 前記ヘテロ環基としては、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基等が挙げられる。なお、Rの炭素原子上のひとつ又は複数の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基に置換されていても良い。又、Rの炭素原子上の複数の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基で置換されている場合、隣接している基同士が結合して環を形成しても良い。 前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。 前記アルキル基としては、炭素原子数1〜20、特に1〜12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記シクロアルキル基としては、特に炭素原子数3〜7のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。 前記アルケニル基としては、炭素原子数2〜20、特に2〜12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アリール基としては、炭素原子数6〜20、特に6〜16のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジメチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、ナフチルメチル基、インデニルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。 前記アルコキシ基としては、特に炭素原子数1〜10のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンタノキシ基、ヘキサノキシ基、ヘプタノキシ基、オクタノキシ基、ノナノキシ基、デカノキシ基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アリールオキシ基としては、特に炭素原子数6〜14のアリールオキシ基が好ましく、フェノキシ基、トリロキシ基、キシリロキシ基、ナフトキシ基、ジメチルナフトキシ基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記ジアルキルアミノ基としては、特に炭素原子数2〜10のジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アルキルカルボニル基としては、特に炭素原子数2〜10のアルキルカルボニル基が好ましく、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アリールカルボニル基としては、特に炭素原子数7〜11のアリールカルボニル基が好ましく、ベンゾイル基、フルオロベンゾイル基、カーボナフチル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アルキルメルカプト基としては、炭素原子数1〜6のアルキルメルカプト基が好ましく、例えば、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基、ブチルメルカプト基、ペンチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アリールメルカプト基としては炭素原子数6〜14のアリールメルカプト基が好ましく、例えば、フェニルメルカプト基、トリルメルカプト基、キシリルメルカプト基、ナフチルメルカプト基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、その異性体を含む。 前記アルキルスルホニル基としては炭素数1〜12のアルキルスルホニル基が好ましく、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基等が挙げられる。 前記アリールスルホニル基としては炭素数6〜18のアリールスルホニル基が好ましく、例えば、フェニルスルホニル基、トリルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられる。 Rの炭素原子上の複数の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、カーボアルキル基及びカーボアリール基で置換されている場合、隣接している基同士が結合して環を形成しても良い。 前記隣接している基同士が結合して環を形成する場合の環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、ベンゼン環、ナフタレン環、テトラヒドロフラン環、ベンゾピラン環、N−メチルピロリジン環、N−メチルピペリジン環等が挙げられる。 又、含窒素へテロ環カルベン配位子は、一般式(2)又は(3)(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なっていても良く、アルキル基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基又はアリール基を示し、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシル基、ニトロ基、シアノ基又はジアルキルアミノ基を示し、隣接している基同士が結合して環を形成していても良い;なお、R1〜R6の任意の水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基又はアリールオキシル基で置換されていても良い。)で示される。 一般式(2)及び(3)において、R1及びR2は、アルキル基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基又はアリール基を示すが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、前記Rで定義したものと同義である。 前記ポリシクロアルキル基としては、炭素数6〜10のポリシクロアルキル基が好ましく、ビシクロ−[2.1.1]−ヘキシル基、ビシクロ−[2.2.1]−ヘプチル基、ビシクロ−[2.2.2]−オクチル基、ビシクロ−[3.3.0]−オクチル基、ビシクロ−[4.3.0]−ノニル基、ビシクロ−[4.4.0]−オクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。 又、R3、R4、R5及びR6は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシル基、ニトロ基、シアノ基又はジアルキルアミノ基を示すが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシル基又はジアルキルアミノ基については前記Rで定義したものと同義である。 なお、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の任意の水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基又はアリールオキシル基で置換されても良いく、これらの基も前記Xで定義したものと同義である。これらの中でも、R1及びR2としては、tert−ブチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又はアダマンチル基が好ましく、R3、R4、R5及びR6としては、水素原子又はハロゲン原子、特に塩素原子が好ましい。 本発明における含窒素へテロ環カルベン配位子(L)の具体的としては、例えば、式(4)〜(13)で示される化合物が挙げられる。 本発明の一般式(1)で示される置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は、例えば、反応工程式(1)(式中、R及びLは、前記と同義であり、Pは、単座ホスフィン配位子を示す。)で示されるように、置換エチニル金ホスフィン錯体と含窒素へテロ環カルベン配位子(L)とを反応させることによって得られる。 前記単座ホスフィン配位子(P)としては、例えば、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルホスフィン、(4−ブロモフェニル)ジフェニルホスフィン、ジアリルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジフェニル(2−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−2−フリルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(3−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(3−フルオロフェニルホスフィン)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、ベンジルジフェニルホスフィン、ビス(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ネオメンチルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、2,4,4−トリメチルペンチルホスフィン、トリ(1−ナフチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン等が挙げられる。これらは市販のものをそのまま使用することが出来る。 前記置換エチニル金ホスフィン錯体は、例えば、反応工程式(2)(式中、R及びPは、前記と同義であり、Yは、ハロゲン原子を示す。)で示されるように、金ハロゲノホスフィン錯体と置換エチンとを反応させることによっても得られる。 なお、前記金ハロゲノホスフィン錯体は、公知の方法によって合成可能である(例えば、非特許文献1〜2参照)。Journal of Chemical Society,Dalton Trans.,411頁(1986年)実験化学講座,第4版,丸善社,455頁,18巻(1991年)参照)。 前記含窒素へテロ環カルベン配位子は、市販品をそのまま用いても良いし、例えば、非特許文献3もしくは特許文献1に示されるような、公知の方法によって合成したものを使用しても良い(例えば、非特許文献3、特許文献1参照)。J.Am.Chem.Soc.,114巻,5530頁(1992年)国際公開第98/27064号公報パンフレット 前記置換エチン化合物は、市販品を用いても良いし、非特許文献4に示されるような公知の方法によって合成可能である。European Journal of Organic Chemistry,15巻,2438頁(2007年) 反応行程式(1)の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成において、含窒素へテロ環カルベン配位子の使用量は、置換エチニル金ホスフィン錯体1モルに対して、好ましくは1〜3モル、更に好ましくは1〜1.5モルである。 上記の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成において使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、フラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。 前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、置換エチニル金ホスフィン錯体1モルに対して、好ましくは1〜30L、更に好ましくは5〜20Lである。 上記の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成は、例えば、置換エチニル金ホスフィン錯体、含窒素へテロ環カルベン配位子(含窒素へテロ環ヒドロハライドと塩基との反応によって生成させる)及び溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜120℃、更に好ましくは20〜100℃であり、反応圧力は特に制限されない。 上記の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は、反応終了後、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、昇華、クロマトグラフィー等の公知の方法によって単離・生成される。また本発明の置換エチニル金ホスフィン錯体は、前記の方法以外に、反応工程式(3)で示されるハロゲン化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体と置換エチンを反応させる方法によっても得られる。(式中、R、Y及びLは、前記と同義である。) 上記反応で用いられるハロゲン化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体は市販品を用いても良いし、非特許文献(5)に示されるように簡便に合成しても良い。Organometallics,24巻,2411頁、2005年 反応行程式(3)の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成において、置換エチンの使用量は、ハロゲン化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体1モルに対して、好ましくは1〜3モル、更に好ましくは1〜1.5モルである。 上記反応行程式(3)の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成において使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、フラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類が使用される。なお、これらの溶媒は異性体を用いても良く、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。 前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、ハロゲン化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体1モルに対して、好ましくは1〜30L、更に好ましくは5〜20Lである。 上記の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成は、例えば、置換エチン、ハロゲン化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体、塩基及び溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜120℃、更に好ましくは20〜100℃であり、反応圧力は特に制限されない。上記の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の合成は、塩基の存在下に行われる。塩基としては金属アルコキシドが好ましい。特にアルカリ金属アルコキシドが好ましい。具体的にはリチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムブトキシドがあげられる。上記のアルカリ金属プロポキシド、ブトキシドに関してはアルコキシ基の異性体も含まれる。塩基の使用量は、塩化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体1モルに対して、好ましくは1〜3モル、更に好ましくは1〜1.5モルである。 上記の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は、反応終了後、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、昇華、クロマトグラフィー等の公知の方法によって単離・生成される。 本発明の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体としては、例えば、以下の式(15)〜(16)で示される化合物が挙げられる。 なお、本発明の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は、実施例に記載の物性値により、有機エレクトロルミネッセンス素子として好適に用いられることが示唆された。 次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。実施例1(アセチルエチニル[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]金 [Au(IPr)(AcE)]の合成) アルゴン雰囲気下、25mlシュレンク管に1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド(IPrH+Cl−;251mg,0.59mmol)、tert−ブトキシカリウム(85質量%品、102mg,0.77mmol)、テトラヒドロフラン(9ml)を加え、室温で15分攪拌した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。トルエン(9ml)を加え、70℃で5分間攪拌した後、反応混合物を濾過し、濾液をメチルカルボニルエチニル(トリフェニルホスフィン)金(240mg,0.46mmol)、トルエン9mlを加えた別の30mlシュレンク管に滴下した。滴下後、反応混合物を70℃で2.5時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、反応混合液にトルエンを加え、水洗しpHを7とした。硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を減圧留去した。反応粗生成物をシリカゲルをもちいたカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5/1〜3/1)によって精製し、得られた固体を酢酸エチルに溶解しヘキサンで再沈殿することにより、白色固体である目的物を0.21g得た(収率72%)。1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.53−7.45(m,2H),7.30−7.26(m,4H),7.14(s,2H),2.61−2.47(sept,4H),2.15(s,3H),1.33(d,12H),1.21(d,12H)CI−MS(M/Z):653(MH)+発光分析(CHCl3,77K,Ex240nm)λ(nm):424(max)熱分析:融点:269℃元素分析 観測値 C:56.63,H:5.90,N:4.20 理論値 C:57.05,H:6.02,N:4.29実施例2(アセチルエチニル[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]金 [Au(IPr)(AcE)]の合成) アルゴン雰囲気下、15mlシュレンク管に1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン塩化金(I)[IPrAuCl:93.2mg,0.15mmol]、アセチルエチン(11mg,0.158mmol)、エタノール(3ml)を加えた後、ナトリウムエトキシド(62μl,0.158mmol:濃度2.55mol/L(リットル)のエタノール溶液)を滴下した。室温で19時間攪拌した後、エタノールを減圧留去し塩化メチレンを加え水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を減圧留去した。得られた白色固体をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5/1〜3/1)によって精製した後、ヘキサンで洗浄濾過することにより、白色固体である目的物を0.093g得た(収率95%)。1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.53−7.45(m,2H),7.30−7.26(m,4H),7.14(s,2H),2.61−2.47(sept,4H),2.15(s,3H),1.33(d,12H),1.21(d,12H)CI−MS(M/Z):653(MH)+発光分析(CHCl3,77K,Ex240nm)λ(nm):424(max)熱分析:融点:269℃元素分析 観測値 C:56.63,H:5.90,N:4.20 理論値 C:57.05,H:6.02,N:4.29実施例3(ベンゾイルエチニル[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]金 [Au(IPr)(BzE)]の合成) アセチルエチンに換えてベンゾイルエチン(21mg,0.158mmol)を用いるほかは実施例2と同様の操作の後、得られた白色固体をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5/1〜3/1)によって精製した後、ヘキサンで洗浄濾過することにより、白色固体である目的物を0.098g得た(収率91%)。1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.71−7.25 (m, 11H), 7.14 (s, 2H), 2.65−2.50 (sept, 4H), 1.33 (d, 12H), 1.22 (d, 12H)CI−MS(M/Z):715(MH)+発光分析(CHCl3,77K,Ex240nm)λ(nm):474熱分析:融点:280℃元素分析 観測値 C:60.63,H:5.80,N:3.90 理論値 C:60.50,H:5.78,N:3.92参考例1(アセチルエチニル(トリフェニルホスフィン)金[Au(PPh3)(AcE)]の合成) アルゴン雰囲気下、30mlシュレンク管にAu(PPh3)Cl(247mg,0.50mmol)、3−ブチン−2−オン(59μL,0.75mmol),エタノール(10ml)を加えた後、ナトリウムエトキシド(208μl,0.53mmol:濃度2.55mol/L(リットル)のエタノール溶液)を滴下し、室温で17時間攪拌した。反応後エタノールを減圧留去し、得られた残留物を塩化メチレンに溶解した後、水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を減圧留去した。得られた固体をヘキサンで洗浄し、真空乾燥することにより茶色粉末として目的化合物を0.25g得た。(収率95%)1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.56−7.43(m,15H),2.35(s,3H) 実施例1〜3で合成した置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体を、りん光蛍光光度計により発光スペクトルを測定(クロロホルム中、温度77K(ケルビン)、紫外線照射下)したところ、発光極大波長431nm〜475nm、CIE色度座標(0.166,0.121)〜(0.152,0.342)の青色のリン光発光を示した。 又、熱分析の結果、本発明の当該置換フェニルエチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の融点は、全て200℃以上であり、有機エレクトロルミネッセンス素子として好適に用いられることが示唆された。 本発明は、電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)用発光材料等として有用な置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体を提供する。 一般式(1)(式中、Lは、含窒素へテロ環カルベン配位子を示す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環基を示す。なお、Rの炭素原子上のひとつ又は複数の水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基に置換されていても良い。又、Rの炭素原子上の複数の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基で置換されている場合、隣接している基同士が結合して環を形成しても良い。)で示される置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 Lが、一般式(2)又は(3)(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なっていても良く、アルキル基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基又はアリール基を示し、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシル基、ニトロ基、シアノ基又はジアルキルアミノ基を示し、隣接している基同士が結合して環を形成していても良い;なお、R1〜R6の任意の水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基又はアリールオキシル基に置換されていても良い。)で示される含窒素へテロ環カルベン配位子である請求項1記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 R1及びR2が、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜10のポリシクロアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基であり、R3、R4、R5及びR6が、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、炭素原子数6〜14のアリールオキシル基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数2〜10のジアルキルアミノ基である請求項2記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 ポリシクロアルキル基が、ビシクロ−[2.1.1]−ヘキシル基、ビシクロ−[2.2.1]−ヘプチル基、ビシクロ−[2.2.2]−オクチル基、ビシクロ−[3.3.0]−オクチル基、ビシクロ−[4.3.0]−ノニル基、ビシクロ−[4.4.0]−オクチル基又はアダマンチル基である請求項3記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 R1及びR2が、tert−ブチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又はアダマンチル基であり、R3、R4、R5及びR6が、水素原子又は塩素原子である請求項2記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 R1及びR2が、tert−ブチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又はアダマンチル基であり、R3、R4、R5及びR6が、水素原子である請求項2記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 Rが、メチル基又はフェニル基である請求項1乃至6にいずれか1項に記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体。 置換エチニル金ホスフィン錯体と含窒素へテロ環カルベン配位子を反応させる請求項1乃至7にいずれか記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の製法。 含窒素へテロ環カルベン配位子が、窒素へテロ環ヒドロハライドと塩基との反応によって得られたものである請求項8記載の製法。 反応が、置換エチニル金ホスフィン錯体1モルに対して、含窒素へテロ環カルベン配位子を1〜3モル使用する請求項8又は9記載の製法。 反応が、置換エチニル金ホスフィン錯体と含窒素へテロ環カルベン配位子を混合し、溶媒の存在下、0〜120℃の温度で攪拌することにより行われる請求項8乃至10記載にいずれか記載の製法。 有機溶媒中、ハロゲン化金(I)−含窒素へテロ環カルベン錯体と置換エチンとを塩基存在下に反応させる請求項1乃至7にいずれか記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の製法。塩基がアルカリ金属のアルコラートである請求項13記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の製法。有機溶媒がアルコール類である請求項13又は14記載の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体の製法。 【課題】フルカラーディスプレイを実現するために不可欠な475nm以下の青色領域の発光を有し、電圧印加時に発生するジュール熱に耐えうる200℃以上の高い融点をもつ有機ルミネッセンス素子用発光材料等として有用な非イオン性の置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体を提供する。【解決手段】一般式(1)(式中、Lは、含窒素へテロ環カルベン配位子を示す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環基を示す。)で示される置換エチニル金−含窒素へテロ環カルベン錯体は、課題の特性を持つ発光材料として有用である。【選択図】なし