生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_チオール基を修飾する方法
出願番号:2008186556
年次:2010
IPC分類:C07K 1/13,C07B 45/06,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

呉 育偉 蔡 郁恵 JP 2010024174 公開特許公報(A) 20100204 2008186556 20080717 チオール基を修飾する方法 台北医学大学 508217973 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 井上 隆一 100142929 大関 雅人 100114340 呉 育偉 蔡 郁恵 C07K 1/13 20060101AFI20100108BHJP C07B 45/06 20060101ALN20100108BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100108BHJP JPC07K1/13C07B45/06C07B61/00 300 10 OL 15 特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年1月18日、インターネットアドレス http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6X0P−4RM7N0Y−5&_user=10&_coverDate=02%2F15%2F2008&_rdoc=28&_fmt=high&_orig=browse&_srch=doc−info(%23toc%237220%232008%23991369998%23680338%23FLA%23display%23Volume)&_cdi=7220&_sort=d&_docanchor=&_ct=29&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=4919c0027da0b677ae362ecdec388836に発表。 4H006 4H039 4H045 4H006AA02 4H006AC63 4H039CA61 4H039CD60 4H045AA20 4H045FA53 本発明はチオール基の修飾に関し、より詳細には銅(II)イオンの存在下におけるスルフヒドリル基とチオ尿素基との間の可逆的なジスルフィド結合の形成に関する。 チオ尿素(Tu)およびその誘導体は、化学、農業、冶金、および製薬産業で広く利用されている(非特許文献1)。人および動物のTu含有化合物への曝露は、環境リスク要因であると考えられており、例えば甲状腺過形成、肺水腫、胸水、腫瘍など様々な疾患を引き起こす可能性がある(非特許文献2;非特許文献3)。生理学的には、Tuは人および動物の消化管から吸収され、大部分がそのまま尿中に排泄される(非特許文献4)。しかしながら、ラットの実験において、放射標識したTuの蓄積が主に甲状腺組織に見られ、そしてそれよりも少ない程度で、腎臓、血球、肺、および肝臓にも見出された(非特許文献4;非特許文献5)。Tuの代謝は甲状腺と肝臓とで極めて異なることが研究により示されている。甲状腺では、Tuは先ず甲状腺ペルオキシダーゼに酸化されて、後にシアナミド、硫黄、およびTuに分解されるジチオホルムアミジン(dithioformamidine)(Tu-S-S-Tu)を形成する。Tuおよびシアナミドはいずれも甲状腺ペルオキシダーゼの阻害剤であり、最終的に甲状腺の機能障害を引き起こすこともある(非特許文献6)。肝臓では、Tuは、ミクロソームのフラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)が触媒するS-酸素化によって代謝され、ホルムアミジンスルフェナートおよびホルムアミジンスルフィナートとなる(非特許文献7)。さらに、放射標識したTuが甲状腺および肺のタンパク質に非酵素的に共有結合することも見出されている(非特許文献8;非特許文献9)。本発明者らは、タンパク質の分子内ジスルフィド架橋によるTuのチオール間のチオール-ジスルフィド交換がタンパク質-S-S-Tu複合体を形成し、これによってTuを甲状腺タンパク質に結合させると推測した。その後、この複合体は、タンパク質-S-SHと尿素とに加水分解されうる。 Tuは、スルフヒドリル含有化合物、例えばシステインまたはグルタチオンとインビトロで相互作用することが知られている(非特許文献10;非特許文献11)。システインの酸化は、酸性溶液中、過酸化水素の存在下でTuにより触媒される。Cys-S-S-Tu複合体の形成は、システインと等モルまたは過剰量のジチオホルムアミジン(Tu-S-S-Tu)との反応において見出される。Cys-S-S-Tuはまた、システインとTuとの反応によっても生成される。最終的にはCys-S-S-Tuは自発的に加水分解し得る。しかし、Cys-S-S-Tuの形成は実質的に時間がかかる(およそ数時間から数日)だけでなく、Tu-S-S-Tuの濃度がCys-SHの濃度を上回るときにしか起こらない。あるいは、Cys-S-S-Tuは、チオール-ジスルフィド交換化学反応であるシステインとTuとの反応によっても生成される。このチオール-ジスルフィド交換反応も同様に時間がかかる。このように、Cys-S-S-Tuは生成しにくい。 さらに、チオール物質にマーカーで標識するために、例えばヨード酢酸、5-I-Aedans、N-エチルマレイミド、および3-ブロモプロピルアミンなどのいくつかの試薬を用いてチオール基を修飾する。しかし、これらの薬剤はスルフヒドリル基と不可逆的共有結合を形成するため、標識されたマーカーを取り除いて再利用することはできない。 したがって、当該分野に必要なのは、チオール基を修飾して可逆的ジスルフィド結合を形成し、それと同時に短い反応時間および高い費用効果性という利点を提供する方法である。IPCS(2003)Thiourea, in CICADs 49 (2003 IPCS, Ed.) WHO, GenevaEnviron. Health Perspect. 85, 43-50Toxicology 197, 81-91J. Biol. Chem. 183, 215-221Drug Metab Dispos. 2, 521-525Endocrinology 104, 919-924Biochem. Soc. Trans. 6, 94-96J. Biol. Chem. 236, 1689-1692Toxicol. Lett. 52, 1-5Biochem. J. 27, 1181-1188J. Biol. Chem. 120, 297-313 本発明の目的は、チオール基を修飾する方法を提供することである。 本発明は、少なくとも1つのスルフヒドリル基を含有する第1の物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基を含有する第2の物質を提供する工程;および銅(II)イオンの存在下で第1の物質と第2の物質とを反応させて第1の物質と第2の物質との間にジスルフィド結合を形成する工程を含む、チオール基を修飾する方法を提供する。 本発明は、少なくとも1つのスルフヒドリル基またはチオ尿素基を含有する物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基またはスルフヒドリル基をそれぞれ含有するタグを提供する工程;および銅(II)イオンの存在下で、少なくとも1つのジスルフィド結合により前記物質をタグで標識する工程を含む可逆的標識の方法であって、前記物質またはタグのうちいずれか一方がスルフヒドリル基を含有し、他方がチオ尿素基を含有する、方法を提供する。 本発明は、少なくとも1つのスルフヒドリル基またはチオ尿素基を含有するマーカー;および銅(II)イオン溶液を含むキットをさらに提供する。 添付の図面を参照しながら、以下の態様において詳細な説明を示す。 より具体的には、本発明は以下を提供する:(1)少なくとも1つのスルフヒドリル基を含有する第1の物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基を含有する第2の物質を提供する工程;および銅(II)イオンの存在下で第1の物質のスルフヒドリル基と第2の物質のチオ尿素基とを反応させて、第1の物質と第2の物質との間にジスルフィド結合を形成する工程を含む、チオール基の可逆的修飾の方法;(2)ジスルフィド結合の形成が、銅(II)イオンの濃度に対し正の相関関係で用量に依存する、(1)の方法;(3)第1の物質と第2の物質とを約6.0から約8.0の範囲のpHで反応させる、(1)の方法;(4)第1の物質と第2の物質とを反応させる段階において銅(I)イオンが放出される、(1)の方法;(5)銅(I)キレート剤を反応に加えることにより、第1の物質と第2の物質との間の結合反応が増強される、(1)の方法;(6)ジスルフィド結合がチオール還元剤によって切断される、(1)の方法;(7)ジスルフィド結合が25℃を超える温度で切断される、(1)の方法;(8)ジスルフィド結合が酸性pH(<6.0)または塩基性pH(>8.0)で切断される、(1)の方法;(9)ジスルフィド結合が7.0より低いpHで銅(I)イオンにより切断される、(1)の方法;(10)第1および/または第2の物質がそれぞれ、核酸、脂質、脂肪酸、糖質、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、天然および合成ポリマー、アイソトープ、または蛍光色素を含む化学物質を含む、(1)の方法。 本発明は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明および実施例を読むことで、より十分に理解することができる。 本発明は、チオール基を修飾する方法を提供する。 以下の記載は本発明を実施する最良の形態である。この記載は本発明の一般原理を説明することを目的としたものであり、限定の意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによって最も良く決定される。 一局面において、本発明は、以下の工程を含む、チオール基を修飾する新規な方法を提供する:少なくとも1つのスルフヒドリル基を含有する第1の物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基を含有する第2の物質を提供する工程;および銅(II)イオンの存在下で第1の物質と第2の物質とを反応させて第1の物質と第2の物質との間にジスルフィド結合を形成する工程。 本発明における「スルフヒドリル基」とは、硫黄原子および水素原子で構成される官能基(-SH)を含有する化合物である。この官能基は、チオール基またはスルフヒドリル基と呼ばれる。より旧式には、チオールはメルカプタンと呼ばれることもある。塩基の存在下でチオールアニオンが形成される。該基およびその対応するアニオンは試薬によって容易に酸化されて、有機ジスルフィド(R-S-S-R)が生じる。 本発明における「チオ尿素基」とは、式CSN2H4または(NH2)2CSを持つ、炭素、窒素、硫黄、および水素の有機化合物である。これは、酸素原子が硫黄原子で置換されていること以外は、尿素と同様である。尿素とチオ尿素の性質は、硫黄と酸素の相対的な電気陰性度に起因して有意に異なる。チオ尿素は、有機合成において用途の広い試薬である。「チオ尿素」は、一般構造(R1R2N)(R3R4N)C=Sを持つ広範な化合物のクラスを表す。 本発明の方法は、可逆的なジスルフィド結合を形成する新規な反応を提供し、該化学反応はチオ尿素の式、R-SH+Cu(II) → チオ尿素-S-S-R +Cu(I)+2H+で示される。本発明において、銅(II)イオンは、チオ尿素基とスルフヒドリル基の反応を触媒する酸化剤として用いられる。 本発明の方法により形成されるジスルフィド結合は可逆的な共有結合であり、還元剤によって還元または切断され得る。還元剤の例としては、限定はされないが、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ジチオスレイトール(DTT)、トリ(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP) 、ジチオエリスリトール(DTE)、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸カルシウム、またはその他のジスルフィド切断試薬が挙げられる。 本発明において、ジスルフィド結合を、チオール-ジスルフィド交換と比較して、銅(II)イオンの存在下でより速やかに形成させることができる。銅(II)イオンはスルフヒドリル基およびチオ尿素基を酸化する酸化剤として用いられ、これによってジスルフィド結合が形成される。さらに、銅(II)イオンが還元されて銅(I)イオンが形成される。このように、本発明の方法は従来のチオール-ジスルフィド交換とは異なり、本発明におけるジスルフィド結合の形成の方が有意に速い。加えて、ジスルフィド結合の形成は、銅の含有量に対し正の相関関係で用量に依存するため、銅(II)の濃度を高めることによりジスルフィド結合の形成を誘導および増加することができる。一態様では、ジスルフィド結合は1分間未満で形成される。別の態様では、ジスルフィド結合の形成時間は約5〜30分である。銅(II)の濃度に特に制限はなく、当業者は反応物質の量に応じて適切な濃度を選択する。本発明においてジスルフィド結合の形成は銅(II)イオンの濃度に対し、正の相関関係で用量に依存する。 さらに、本発明のジスルフィド結合は、(a)例えばジチオスレイトールなどのチオール還元剤;(b)(25℃を超える)高温;(c)酸性pH(<6.0)または塩基性pH(>8.0);(d)7.0を下回るpHでの銅(I)イオンによって、切断され得る。 本発明のジスルフィド結合の安定性は、様々な温度およびpH値に応じて変化する。一態様において、本発明のジスルフィド結合は、pH約5.0から9.0で、好ましくはpH約6.0から8.0で、最も好ましくはpH約7.0で、安定であるようである。別の態様において、本発明のジスルフィド結合は25℃で安定であるが、25℃を超える温度、例えば約37〜45℃では不安定となり得る。また別の態様において、DTT、NAC、システイン、Tu、およびANTUなどのチオール含有薬剤の存在は、ジスルフィド結合を還元させうる。 さらに、可逆的ジスルフィド結合の形成は、銅(I)キレート剤が添加されると、著しく増強されてプラトーに達する。銅(I)キレート剤として、限定はされないが、NCP、バトクプロイン、またはビシンコニン酸が挙げられる。 スルフヒドリル基またはチオ尿素基を含有する物質は、任意の適切な物質であってもよい。該物質の例として、限定はされないが、核酸、脂質、脂肪酸、糖質、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、 天然および合成ポリマー、アイソトープ、蛍光色素などを含む化学物質、またはその誘導体が挙げられる。さらに、該物質は、例えばチオ尿素イソキシル(thiourea isoxyl)、カルビマゾール、メチマゾールまたはプロピルチオウラシル、 6-n-プロピルチオウラシル(PTU)、フェノキシエチル-チオ尿素-ピリジン(phenoxyethyl-thiourea-pyridines)などの薬物であってもよい。また、該物質は、例えば蛍光タンパク質、抗体、またはシグナルペプチドなどのタンパク質であってもよい。一態様において、スルフヒドリル基またはチオ尿素基は、例えばチオ尿素薬物である該物質に固有であってもよい。別の態様においては、スルフヒドリル基またはチオ尿素基は、さらなる化学的または物理的プロセスを用いて該物質に結合させてもよい。 別の局面において、本発明は、少なくとも1つのスルフヒドリル基またはチオ尿素基を含有する物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基またはスルフヒドリル基をそれぞれ含有するタグを提供する工程;および、銅(II)イオンの存在下で少なくとも1つのジスルフィド結合により基質をタグで標識する工程を含む、スルフヒドリル基とチオ尿素基の可逆的な標識方法であって、前記基質またはタグのうちいずれか一方がスルフヒドリル基を含有し、他方がチオ尿素基を含有する方法を、さらに提供する。 上述のように、ジスルフィド結合を銅(II)イオンの存在下で形成または生じさせて、タグと物質とを結合させることができる。ジスルフィド結合の形成を増強するため、銅(I)イオンキレート剤を加えてもよい。さらに、還元剤を用いてジスルフィド結合を還元してもよい。一態様において、該タグは特異的プローブ(例えばアイソトーププローブ、蛍光プローブ、ペプチドプローブなど)で標識されたチオ尿素含有分子であってよく、該物質はスルフヒドリル含有タンパク質であってよい。銅(II)イオンで処理した後、タグおよび物質はジスルフィド架橋の形成によって架橋して、特異的な「プローブ標識タンパク質」を形成する。この結合反応は、銅(I)キレート剤を使用することで促進することができる。さらに、還元剤を用いてジスルフィド結合を還元し、標的タンパク質からプローブを取り除くことができる。別の態様においては、該物質はチオ尿素基を含有する薬物であってよく、該タグはスルフヒドリル基を含有する薬物送達物質(drug deliverer)であってよい。銅(II)イオンで処理した後、この薬物送達物質は前記薬物と結合して、前記薬物の送達効率を高める。 さらに別の局面において、本発明は、少なくとも1つのスルフヒドリル基またはチオ尿素基を含有するマーカー、および銅(II)イオンを含むキットをさらに提供する。該マーカーは、核酸、脂質、脂肪酸、糖質、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、または合成ポリマー、アイソトープ、蛍光色素などを含む化学物質であってもよい。本発明のマーカーは物質を容易に結合または標識するために用いられ、物質またはマーカーのうちいずれか一方がスルフヒドリル基を含有し、他方がチオ尿素基を含有する。実施例1:本発明におけるチオール基を修飾する方法 この実施例ではメルカプトアルブミン(Alb-Cys34-SH) を用いた。メルカプトアルブミンの調製は、先行文献(Int. J. Pept. Protein Res. 24, 96-103)から改変した。簡単に説明すると、リン酸ナトリウム緩衝液(0.1M Na2PO4、pH6.86、0.3M NaCl、および1mM EDTA)中の1mM ヒト血清アルブミン(HSA)(Swampscott, MA, U.S.A.)を5mM DTTにより25℃で45分間処理した。次いで、透析により試料のリン酸緩衝液をHBS緩衝液(10mM Hepes pH7.0、0.15M NaCl) 4℃でに交換した。Ellman法(Arch. Biochem. Biophys. 82, 70-77)により、1モルのアルブミンが1モルの遊離チオールを含有することを確認した。 実施例1では、先行文献から改変したハイスループットのCFA法を用いて、アルブミンと、フルオレセイン-5-イソチオシアネートカダベリン(fluorescein-5-isothiocyanate cadaverine;FTC)、ダンシルカダベリン(dansylcadaverine;DC)、フルオレセイン-5-カルボキサミドカダベリン(fluorescein-5-carboxamide cadaverine;FCC)、またはα-ナフチルチオ尿素(α-naphthylthiourea;ANTU)との結合能を分析した(J. Biomol. Screen. 11, 836-843)。典型的には、HBS緩衝液(10mM Hepes pH7.0、0.15M NaCl)中に溶解したタンパク質サンプル(特に指定のない限り2μM HSA)を、4℃にてマイクロプレートに1ウェルあたり30μlずつ加えた。新たに調製した試薬-A(100mM Hepes pH7.0、 0.2mM CuCl2、および6μM FTC)30μlを各ウェルに添加した後、37℃の加湿したインキュベーターにマイクロプレートを入れて10分間インキュベートすることにより反応を開始させ、試薬-B(2mM EDTA、0.5M Hepes pH8.0; 4℃)60μlを添加することによって反応を停止させた。次いで、懸濁したMD-チャコール(MD-Charcoal)(1ウェルあたり200μl) を加えて室温で5分間インキュベートし、遊離蛍光色素をすべて除去した。懸濁したMD-チャコールを磁石により1分間沈殿させた後、マイクロプレートリーダー(Plate Chameleon, Hidex Oy, Finland) により、励起波長485nm、発光波長535nm(Ex485/Em535)、ゲイン35で、各ウェルの蛍光強度を測定した。沈殿したMD-チャコールは上清中の蛍光に影響しないので、蛍光のカウントのために上清を新たなプレートに移す必要はなかった。タンパク質サンプルをHBS緩衝液に置き換えることによって蛍光強度のバックグラウンドレベルを測定した。蛍光色素に対するアルブミンの結合能は、1反応あたりの正味の蛍光強度(蛍光)または相対的蛍光強度として表した。実験は全て各データポイントにつき三連で行い、データを平均値±SDで表した。 図1A〜1Bを参照すると、銅が添加された場合以外、色素はHSAに結合しなかった。さらに、全てのDCおよびFCCがチオ尿素官能基(Tu基)を有するわけではないので、DCおよびFCCはHSAに結合しなかった。対照的に、類似するTu官能基を持つANTUおよびFTCはHSAに結合した。このことは、Tu基が銅の誘導によりアルブミンと相互作用することを示している。実施例2: HSA、FTC、および銅(II)イオンの用量の影響 HSA、FTC、および銅の濃度を変えたこと以外、実施例1で行ったのと同じ手順を繰り返した。FTCを、後のHSAの結合分析のために選んだ。図2A〜2Cを参照すると、結合反応はHSA、FTC、および銅の含有量に対し、用量依存的に正の相関関係を示している。実施例3:Tu基とシステインとの間におけるジスルフィド架橋の形成 HSAとFTCとの間の結合のタイプを同定するため、精製したHSA-FTC複合体をNaCl、尿素、DTT、およびSDSでそれぞれ処理した。図3Aを参照すると、尿素処理およびSDS処理により最高で40%の複合体が損傷し、DTT処理によりタンパク質画分の蛍光シグナルはほぼ消失した(>90%)。しかし、高濃度の塩(1M NaCl)はHSA-FTC複合体の安定性に有意な影響を与えなかった。このことは、HSAとFTCとの間の結合がジスルフィド結合であることを示している。 さらに、Cys34修飾アルブミン、Cys-HA1、Cys-HA2、またはAlk-HAを反応に用いた。アルブミンのアルキル化(Alk-HA)は、Glowackiら(J. Biol. Chem. 279, 10864-10871)に従い、変更を加えて行った。アルブミンのシステイン化(cysteinylation)は次のとおりに行った。工程1:チオール-ジスルフィド交換 ― 50μM ヒトメルカプトアルブミン、1mM L-システイン、0.1M Hepes pH7.5、および0.1mM EDTAを含有する反応混合物を37℃で21時間インキュベートした。30Kの限外濾過ユニット(Amicon Ultra-15)を用いて、得られた緩衝生成物(Cys-HA)をHBS緩衝液に交換した。工程2:アルキル化 ― 次いで、50μM Cys-HAを1mM IAN、0.1M Hepes pH7.5、および0.1mM EDTAと37℃で3時間インキュベートすることによって、アルブミンの未反応の-SH基をアルキル化した。得られた緩衝生成物(Cys-HA1)を工程1で述べたようにHBS緩衝液に交換した。工程3:還元 ― 次に、Cys-HA1(165mM)を5mM DTTで室温にて45分処理した。同様に、得られた緩衝生成物(Cys-HA2)を工程1で述べたようにHBS緩衝液に交換した。Cys-HA1およびCys-HA2の遊離チオール含有量を計算したところ、それぞれ0.08および0.50(M/M)であった。図3Bを参照すると、FTCはシステイン化アルブミン(Cys-HA1、Cys-HA2) またはアルキル化アルブミン(Alk-HA)と相互作用しなかった。このことは、Cys-HA1、Cys-HA2、またはAlk-HAへのFTCの結合能が、HSAへの結合能と比較して、遊離チオール含有量により対応しているということを示している。 さらに、ジスルフィド架橋形成におけるFTCのTu基の関与を確認するために、Tuビーズも使用し、ここで、Cysビーズを対照として使用した。TuビーズおよびCysビーズは、各リガンドをNHS活性化セファロース4マトリクスに結合させることによって調製した。詳しくは、PBS緩衝液(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4、pH7.4)に溶解したTu(0.1M)またはシステイン(0.1M)を、等量のNHS活性化セファロース4 Fast Flow培養液と25℃にて2時間絶えず振とうしながら混合した。得られたマトリクスを塩基性緩衝液(0.5M Tris、pH9.0、0.5M NaCl)で洗浄し、次に酸性緩衝液(0.1M アセテート、0.5M NaCl、pH4.0)で洗浄し、これを3サイクル繰り返した。最後に、ビーズをHBS緩衝液で洗浄し、4℃で保存した。Cysビーズは使用前に10mM DTTにより25℃で30分処理した。Cysビーズのアルキル化(Alk-Cysビーズ)は、ビーズを等量の10mM ヨードアセトアミドと37℃にて1時間振とうしながらインキュベートすることにより行った。続いて該ビーズをHBS緩衝液で洗浄し、4℃で保存した。TuビーズまたはCysビーズを等量の5mM CuCl2と25℃で15分間絶えず振とうしながら混合し、銅で前処理したTuビーズまたはCysビーズを形成した。20mM EDTAを加えた後、該ビーズをHBS緩衝液で洗浄し、使用するまで4℃で保存した。 図3Cを参照すると、銅の存在下で、HSAがTuビーズともジスルフィド結合を形成することが見出された。Cysビーズについても同様の現象が観察された。しかし、銅の非存在下では、銅で前処理したCysビーズのみがHSAと結合することができた。銅により誘導されるシステイン化の機序は、銅に依存するHSAのチオ尿素化の機序とは異なると思われる。実施例4:チオ尿素化反応に対する金属イオンの影響 CFA法を用いて、CuCl、CuCl2、CoCl2、NiCl2、CaCl2、MgCl2、ZnCl2、MnCl2、FeCl2、およびFeCl3を含む様々な金属イオン(反応中濃度0.1mM)をAlb-FTC複合体の形成に関してテストした。図4を参照すると、様々な金属イオンのうち、銅(II)のみがチオ尿素化反応を誘導し、銅(I)により誘導される反応の小振幅(small amplitude)は、物質の調製時における銅(I)から銅(II)への酸化の結果であったと思われる。実施例5:チオ尿素化反応に対するpHの影響 実施例1で述べたタンパク質と試薬との反応混合物を、様々なpHにおいて37℃で10分間インキュベートし、HSA-FTC複合体の形成に対するpHの影響を評価した。図5Aを参照すると、銅により誘導されるHSA-FTC複合体の形成は、反応溶液のpHに大きく影響されていた。反応に最適なpHはpH6.5であった。pH6.5を超える反応では、pHが上昇するにつれて反応は次第に減少し、pHが8.0を超えると完全に止まった。図5Bを参照すると、様々なpHにおける反応の相対的初期反応速度定数(relative initial reaction rate constant)も計算され、その動的データ(kinetic data)は図5Aに示した観察結果を裏付けている。 図5Cを参照すると、アルブミンの非存在下で、FTCと銅(II)との間の相互作用もまたpHの影響を受けた。銅(II)の添加により、FTCの蛍光強度は急激に消光した(ΔQ)。しかし、pHが7.5を超えると、FTC-銅(II)混合物の蛍光は、銅の非存在下で観察されたもの(ΔH2)に比べ、大幅に増大した(ΔH1)。高pHでの蛍光強度(ΔH1)の増加は、銅(II)イオンからFTCが解離した結果であると推測される。実施例6:チオ尿素化反応に対する銅(I)キレート剤の影響 実施例1で述べた反応混合物を、NCPの存在下または非存在下で、指示される時間間隔で37℃にてインキュベートした。NCPを特異的な銅(I)キレート剤として用いて、銅(I)の形成を確認した。図6Aを参照すると、NCPの存在下では、NCPの非存在下で観察された場合と比較して、HSA-FTCの形成が大幅に増強され、10分以内にプラトーに達した。同様に、図6Bに示されるように、(Cysビーズにより評価した)FTCのシステインとの架橋も、NCP処理によって増加した。さらに、銅(I)の添加によって銅(II)に誘導されるHSA-FTC複合体の形成が減少した。この結果は、銅(I)がアルブミンのCys34の銅(II)誘導チオ尿素化に付随する副産物であり、かつ放出された銅(I)が元に戻ってチオ尿素化を阻害することを示している。実施例7:チオ尿素化生成物の安定性 実施例1で精製したHSA-FTC複合体を用いて安定性の評価を行った。HSA-FTC複合体を様々な温度、pH値、ならびにDTT、NAC、システイン、およびTu、ANTUを含むチオール含有薬剤で処理した。図7Aを参照すると、HSA-FTC複合体は、25℃、pH7.0で1時間以内は安定を示したが、より高い温度では不安定であった。図7Bを参照すると、HSA-FTC複合体はpH6.0 〜8.0、25℃において安定であったが、酸性または塩基性条件下では有意に分解した。図7Cに示されるように、酸性条件下で、銅(I)はHSA-FTC複合体を還元する能力があった。さらに、図7Dを参照すると、DTT、NAC、システイン、およびTu、ANTUを含むチオール含有薬剤の存在によって、FTCがHSA-FTC複合体から遊離した。しかし、システインおよびGSSGはHSA-FTCの結合を還元しなかった。実施例8:ジスルフィド架橋の形成によるペプチドのタンパク質との結合 実施例1で行われたのと同じ手順を繰り返した。ここでは、インスリンまたはペプチドKY15をFITCで標識し/標識せずに、「チオ尿素含有ペプチド」を形成した。図8Aに示されるように、CFA法を用いて、銅依存性反応によってFTC、FITC-インスリン、およびFITC-KY15がHSAと抱合している(「スルフヒドリル含有タンパク質」)ことが見出された。 さらに、FITC標識分子がHSAと正しく結合していることを確かめるために、上清に残った、得られた抱合生成物をELISAウェルに塗布し、次いで抗インスリン抗体で処理した。図8Bを参照すると、FITC-インスリンのみが検出された。この結果により、FITC標識インスリンがアルブミンと抱合することが示された。 実施例によりおよび好適な態様の面から本発明を説明してきたが、本発明は開示された態様には限定されないと理解されるべきである。むしろ(当業者にとって明らかであるような)様々な変更および類似のアレンジの範囲に及ぶことが意図される。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような変更および類似のアレンジがすべて包含されるように、最も広い意味に解釈されるべきである。本発明による銅誘導結合の分析を示す。本発明による銅誘導結合の分析を示す。アルブミンのチオ尿素化におけるHSA、FTC、および銅(II)イオンへの用量依存性を示す。アルブミンのチオ尿素化におけるHSA、FTC、および銅(II)イオンへの用量依存性を示す。アルブミンのチオ尿素化におけるHSA、FTC、および銅(II)イオンへの用量依存性を示す。HSA-FTC複合体に損傷を与える尿素処理、SDS処理、およびDTT処理を示す。FTCがシステイン化アルブミン(Cys-HA1、Cys-HA2) またはアルキル化アルブミン(Alk-HA)と相互作用しないことを示す。本発明による銅誘導結合の方法を示す。銅(II)のみがチオ尿素化反応を誘導することを示す。銅が誘導するHSA-FTC複合体の形成が、反応溶液のpHにより大きな影響を受けることを示す。反応の相対的初期反応速度定数が様々なpHにより影響を受けることを示す。アルブミンの非存在下で、FTCと銅(II)間の相互作用がpHにより影響を受けることを示す。NCPがHSA-FTC複合体の形成を増強することを示す。NCPがCys-S-S-FTC複合体の形成を増強することを示す。HSA-FTC複合体が25℃、pH7.0で1時間以内安定であることを示す。HSA-FTC複合体がpH6.0〜8.0、25℃で安定であるが、より酸性または塩基性の条件下では有意に分解したことを示す。銅(I)がAlb-FTC複合体を還元する能力を持つことを示す。チオール含有薬剤がHSA-FTC複合体からFTCを遊離させることを示す。本発明による銅依存反応により、FTC、FITC-インスリン、およびFITC-KY15がHSAと抱合することを示す。本発明による銅依存反応により、FTC、FITC-インスリン、およびFITC-KY15がHSAと抱合することを示す。 チオール基の可逆的修飾の方法であって、少なくとも1つのスルフヒドリル基を含有する第1の物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基を含有する第2の物質を提供する工程;および銅(II)イオンの存在下で第1の物質のスルフヒドリル基と第2の物質のチオ尿素基とを反応させて、第1の物質と第2の物質との間にジスルフィド結合を形成する工程を含む方法。 ジスルフィド結合の形成が、銅(II)イオンの濃度に対し正の相関関係で用量に依存する、請求項1記載の方法。 第1の物質と第2の物質とを約6.0から約8.0の範囲のpHで反応させる、請求項1記載の方法。 第1の物質と第2の物質とを反応させる段階において銅(I)イオンが放出される、請求項1記載の方法。 銅(I)キレート剤を反応に加えることにより、第1の物質と第2の物質との間の結合反応が増強される、請求項1記載の方法。 ジスルフィド結合がチオール還元剤によって切断される、請求項1記載の方法。 ジスルフィド結合が25℃を超える温度で切断される、請求項1記載の方法。 ジスルフィド結合が酸性pH(<6.0)または塩基性pH(>8.0)で切断される、請求項1記載の方法。 ジスルフィド結合が7.0より低いpHで銅(I)イオンにより切断される、請求項1記載の方法。 第1および/または第2の物質がそれぞれ、核酸、脂質、脂肪酸、糖質、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、天然および合成ポリマー、アイソトープ、または蛍光色素を含む化学物質を含む、請求項1記載の方法。 【課題】本発明の目的は、チオール基を修飾する方法を提供することである。【解決手段】本方法は、少なくとも1つのスルフヒドリル基を含有する第1の物質を提供する工程;少なくとも1つのチオ尿素基を含有する第2の物質を提供する工程;および銅(II)イオンの存在下で第1の物質と第2の物質とを反応させてスルフヒドリル基とチオ尿素基との間に容易に還元することができるジスルフィド結合を短時間で形成する工程を含む。【選択図】なし


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