タイトル: | 公開特許公報(A)_3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法 |
出願番号: | 2008179194 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 319/06,C07C 323/20 |
田中 宗明 山本 幹生 藤田 浩司 JP 2010018531 公開特許公報(A) 20100128 2008179194 20080709 3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法 住友精化株式会社 000195661 田中 宗明 山本 幹生 藤田 浩司 C07C 319/06 20060101AFI20091225BHJP C07C 323/20 20060101ALI20091225BHJP JPC07C319/06C07C323/20 1 OL 8 4H006 4H006AA02 4H006AB84 4H006AC63 4H006TA04 4H006TB42 本発明は、3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法に関する。さらに詳しくは、免疫抑制剤等の医薬品等の製造中間体として有用な3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法に関する。 3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法に関して、種々の方法が知られている。 例えば、下記式に示すように、3−ベンジルオキシアニリンに亜硝酸ナトリウムを反応させてジアゾ化合物を得て、それとジチオ炭酸O−エチルカリウムとを反応させた後、リチウムアルミニウムハイドライドを用いて還元する方法(特許文献1参照)、DMSO溶媒中にて3−ベンジルオキシフェノールに水素化ナトリウムとジメチルチオカルバモイルクロリドとを加えてO−(3−ベンジルオキシ)フェニルジメチルチオカルバメートを得た後、減圧下(4.53kPa)、高温で撹拌することにより、S−(3−ベンジルオキシ)フェニルジメチルチオカルバメートに熱転移させて、これをアルカリ加水分解する方法(特許文献2参照)などが知られている。 しかしながら、これらの製造方法には、種々の不具合な点がある。例えば、特許文献1に記載の方法によると、前記ジアゾ化合物は不安定な爆発性化合物であるために実用性に乏しく、リチウムアルミニウムハイドライドも同様に取り扱いが困難である。また、特許文献2に記載の方法によると、高温で反応させる必要があるため製造コストが高くなる。国際公開第2005/087731号パンフレット国際公開第2006/041019号パンフレット 本発明の課題は、3−ベンジルオキシベンゼンチオールを安全で容易に製造する方法を提供することにある。 本発明は、以下に示すとおりの、3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法に関する。 すなわち、本発明は、式(1)で表されるビス−(3−フェニル)ジスルフィドとベンジルハライドとを反応させて式(2);で表されるビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドとなし、これを還元することを特徴とする式(3);で表される3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明に用いられるビス−(3−フェニル)ジスルフィドは、下記式(1)で表される化合物である。 前記ビス−(3−フェニル)ジスルフィドは、例えば、下記式(4)で表される3−メルカプトフェノールを酸化する方法等により製造することができる。 3−メルカプトフェノールを酸化してビス−(3−フェニル)ジスルフィドを製造する方法としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液中において3−メルカプトフェノールをナトリウム塩とし、酸素ガスや過酸化水素等を用いて酸化する方法等を挙げることができる。 本発明において、下記式(2)で表されるビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドは、前記式(1)で表されるビス−(3−フェニル)ジスルフィドとベンジルハライドとを、例えば、塩基存在下、反応溶媒中で反応させることにより得ることができる。 ベンジルハライドとしては、例えば、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等を挙げることができる。 ベンジルハライドの使用割合は、特に制限されるものではないが、経済性および収率向上の観点から、ビス−(3−フェニル)ジスルフィド1モルに対して、2.0〜3.0モルであることが好ましく、2.2〜2.8モルであることがさらに好ましい。 ビス−(3−フェニル)ジスルフィドとベンジルハライドとの反応に用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等の無機塩基並びにトリエチルアミン等の有機塩基を挙げることができる。中でも、経済性の観点から、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが好ましく用いられる。なお、これらの塩基は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。 塩基の使用割合は、特に制限されるものではないが、経済性の観点から、ビス−(3−フェニル)ジスルフィド1モルに対して、1.0〜4.0モルであることが好ましく、1.0〜2.5モルであることがさらに好ましい。 前記反応溶媒としては、当該反応に対して不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えば、アセトン、メタノールおよびジメチルホルムアミド等の有機溶媒を挙げることができる。 反応溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、ビス−(3−フェニル)ジスルフィド100重量部に対して、150〜600重量部であることが好ましい。 反応温度としては、反応溶媒種等によっても異なるが、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がさらに好ましい。また、反応時間は、反応温度により異なるが、通常2〜15時間である。 かくして得られるビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドは、例えば、当該反応溶液を冷却して晶析する方法、または蒸留して反応溶媒を留去する方法等により、容易に単離することができる。また、前記反応溶媒を留去等の後、トルエン、モノクロロベンゼン等の有機溶媒と水とを加えて、油層を分取し、当該油層から溶媒を留去することで精製することができる。なお、ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドの精製に使用したトルエン、モノクロロベンゼン等の有機溶媒は、前記分液後、留去することなく、後述するビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドの還元反応の反応溶媒として使用してもよい。 本発明において、下記式(3)で表される3−ベンジルオキシベンゼンチオールは、前記式(2)で表されるビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドを還元することにより得ることができる。 ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドの還元に用いられる還元剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、NaBH4(水素化ホウ素ナトリウム)、KBH4(水素化ホウ素カリウム)、B2H6(ジボラン)、NaBH3CN(シアノホウ素ナトリウム)等の水素化ホウ素化合物、トリフェニルホスフィン等のリン−炭素結合を有する第3ホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト等のリン−酸素結合を有する第3ホスファイト、亜鉛および鉄等の金属並びに水素ガス等を挙げることができる。これらの中でも、安全性の観点から、亜鉛および鉄等の金属が好ましく用いられる。なお、これら還元剤は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。 前記還元剤の使用割合としては、特に制限されるものではないが、経済性の観点からビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィド1モルに対して、0.5〜5モルであることが好ましく、1.0〜2.5モルであることがさらに好ましい。 なお、還元剤として金属を用いる場合、塩酸や硫酸等、酸の水溶液を加えることにより還元反応を円滑に行うことができる。酸の使用割合としては、ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィド1モルに対して、2〜10モルであることが好ましい。 ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドの還元反応に用いられる反応溶媒としては、当該還元反応に対して不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えば、トルエンおよびモノクロロベンゼン等の有機溶媒を挙げることができる。 反応溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、前記ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィド100重量部に対して、100〜500重量部であることが好ましい。 前記還元反応の反応温度は、還元剤種等によっても異なるが、40〜70℃が好ましく、50〜60℃がさらに好ましい。反応時間は、通常、0.5〜8時間である。 かくして得られた3−ベンジルオキシベンゼンチオールは、例えば、前記還元反応において、水を加えた場合、還元反応の終了後に油層を分取した後、反応溶媒を留去する方法等により単離することができる。 さらに、前記反応溶媒を留去した後、メタノール等の低級アルコールを加え、さらに水を加えて再結晶させる方法等により精製することができる。 本発明によれば、3−ベンジルオキシベンゼンチオールを安全で容易に製造することができる。 以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではない。 製造例1 撹拌機、温度計および還流冷却管を備えた1L容の四つ口フラスコに、10重量%水酸化ナトリウム水溶液440g(1.1モル)および3−メルカプトフェノール126.2g(1.0モル)を仕込んだ。この溶液を10℃まで冷却した後、35重量%過酸化水素水溶液53.1g(0.55モル)を5時間かけて滴下し、次いで、ビス−(3−フェニル)ジスルフィドのナトリウム塩を中和するため、35重量%塩酸114g(1.1モル)を1時間かけて滴下した。その後、当該溶液を分液し、脱水留去することにより、ビス−(3−フェニル)ジスルフィド115.1g(0.46モル)を得た。 実施例1 撹拌機、温度計および還流冷却管を備えた1L容の四つ口フラスコに、製造例1で得られたビス−(3−フェニル)ジスルフィド115.1g(0.46モル)、メタノール340gおよび炭酸カリウム79.5g(0.57モル)を仕込んだ。この溶液を64℃まで昇温した後、撹拌下、ベンジルクロライド145.6g(1.15モル)を1時間かけて滴下し、引き続き同温度にて10時間撹拌した。反応終了後、5℃まで冷却して晶析した。得られた結晶をトルエン290gと水267gの混合溶液に加え、50℃に昇温した後、分液し、トルエンを留去することにより、ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィド172.2g(0.40モル)を得た。ビス−(3−フェニル)ジスルフィドに対する収率は87%であった。 これとは別に、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた1L容の4つ口フラスコに、上記ビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィド172.2g(0.40モル)、トルエン290gおよび35重量%塩酸水溶液388g(3.7モル)を仕込んだ。この溶液を50℃まで昇温した後、撹拌下、亜鉛粉末55.18g(0.84モル)を5時間かけて少量ずつ添加し、引き続き50℃で1時間攪拌した。反応終了後、分液し、トルエンを留去して濃縮した。この濃縮液にメタノール556gを加えて撹拌し、さらに水370gを滴下して結晶化させた後、ろ過、乾燥することにより、白色結晶の3−ベンジルオキシベンゼンチオール129.8g(0.60モル)を得た。得られた3−ベンジルオキシベンゼンチオールの収率は、ビス−(3−フェニル)ジスルフィドに対して75%であった。 式(1);で表されるビス−(3−フェニル)ジスルフィドとベンジルハライドとを反応させて式(2);で表されるビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドとなし、これを還元することを特徴とする式(3);で表される3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法。 【課題】免疫抑制剤等の医薬品等の製造中間体として有用な3−ベンジルオキシベンゼンチオールを安全で容易に製造する方法を提供すること。【解決手段】式(1)で表されるビス−(3−フェニル)ジスルフィドとベンジルハライドとを反応させて式(2)で表されるビス−(3−ベンジルオキシフェニル)ジスルフィドとなし、これを還元することを特徴とする式(3)で表される3−ベンジルオキシベンゼンチオールの製造方法。【選択図】なし