タイトル: | 公開特許公報(A)_DMSO含有排水の処理方法及び装置 |
出願番号: | 2008178123 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C02F 1/44,B01D 61/16,B01D 61/58,C02F 3/28,C12M 1/107 |
小松 和也 深瀬 哲朗 百崎 勝彦 JP 2010017615 公開特許公報(A) 20100128 2008178123 20080708 DMSO含有排水の処理方法及び装置 栗田工業株式会社 000001063 重野 剛 100086911 小松 和也 深瀬 哲朗 百崎 勝彦 C02F 1/44 20060101AFI20091225BHJP B01D 61/16 20060101ALI20091225BHJP B01D 61/58 20060101ALI20091225BHJP C02F 3/28 20060101ALI20091225BHJP C12M 1/107 20060101ALI20091225BHJP JPC02F1/44 FB01D61/16B01D61/58C02F3/28 ZC12M1/107 4 1 OL 8 4D006 4D040 4D006GA03 4D006GA06 4D006GA07 4D006HA21 4D006HA41 4D006HA61 4D006KA01 4D006KA52 4D006KA55 4D006KA57 4D006KA63 4D006KA72 4D006KB14 4D006KB24 4D006MA02 4D006MA03 4D006PA01 4D006PB08 4D006PB14 4D006PC01 4D006PC63 4D040AA02 4D040AA24 4D040AA63 本発明は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む排水を嫌気性消化処理する方法及び装置に関し、特に、DMSO含有排水を嫌気性消化処理して純水製造用の原料として利用するDMSO含有排水の処理方法及び装置に関する。 半導体製造、液晶製造等の電子産業工場のように、純水を使用してその排水を排出する設備では、DMSOなどの、プロセス工程で洗浄剤、剥離剤などとして使用される有機物を含む排水を生物処理し、その処理水を純水製造の原料として用いる水回収が進んでいる。生物処理水を純水製造に再利用する場合、処理水を固液分離処理して微生物体を分離した後、逆浸透(RO)膜分離装置で脱塩処理することが行われている(例えば、特許文献1)。 DMSOは馴養された菌体を用いることで生物分解が可能であり、好気性処理が可能である。また、特許文献2では、嫌気条件で中間体の硫化ジメチル(DMS)への転換を促進し、DMSを好気性処理する排水処理法が記載されている。しかし、中間体として生成するDMSやメチルメルカプタン(MM)は悪臭物質であり、好気性処理における曝気により揮散して臭気の問題を引き起こしやすい。また、好気性処理ではSO4が生成してpHが低下するため、生物反応を効率よく進めるために、NaOHなどのアルカリを添加して中和する必要がある。その結果、生物処理液中の塩濃度が増加し、後段のRO膜による脱塩処理の負荷が高くなる問題があった。特開2007−175582号公報特開平6−91289号公報 本発明は、DMSO含有排水を生物処理し、生物処理水を固液分離して分離水をRO膜で脱塩処理することにより水回収を図るDMSO含有排水の処理において、臭気の問題を引き起こすことなく、またRO膜の負荷を抑えて効率的な処理を行う方法及び装置を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、DMSOを含む排水を嫌気性条件下でメタン発酵処理し、その処理液を好気性処理することなく限外濾過濾過(UF)膜又は精密濾過(MF)膜で固液分離し、その分離水を好気性生物処理することなくRO膜で処理すると共に、濃縮水をメタン発酵処理工程へ戻すことにより、上記課題を解決することができることを見出した。即ち、DMSOは適宜馴養された菌体により嫌気性条件下でメタン発酵処理され、CH4、CO2、H2Sにまで分解される。メタン発酵処理でも、DMSやMMなどの中間体が生成されるが、これらが分解されない限りガスが発生することはないため、好気性処理のように曝気により中間体が水系から放出されることはなく、臭気の問題が少ない。メタン発酵により生成するH2Sは大部分がガス中に排出され、生物処理水から分離されるため、UF膜又はMF膜で固液分離した分離水には、SO4がないのに加え、中和用のアルカリも添加されていないため、RO膜の塩類負荷を大幅に低減することができる。 本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。[1] ジメチルスルホキシドを含有する排水をメタン発酵処理する嫌気性消化工程と、該嫌気性消化工程の処理水を好気性生物処理することなく限外濾過膜分離処理又は精密濾過膜分離処理する固液分離工程と、該固液分離工程で分離された分離水を好気性生物処理することなく逆浸透膜分離処理する脱塩工程と、前記固液分離工程で分離された濃縮水を前記嫌気性消化工程に返送する返送工程とを有することを特徴とするDMSO含有排水の処理方法。[2] [1]において、前記メタン発酵処理を20〜35℃で行うことを特徴とするDMSO含有排水の処理方法。[3] ジメチルスルホキシドを含有する排水をメタン発酵処理する嫌気性消化槽と、該嫌気性消化槽の処理水を好気性生物処理することなく固液分離する限外濾過膜分離装置又は精密濾過膜分離装置と、該限外濾過膜分離装置又は精密濾過膜分離装置で分離された分離水を好気性生物処理することなく脱塩処理する逆浸透膜分離装置と、前記限外濾過膜分離装置で分離された濃縮水を前記嫌気性消化槽に返送する返送手段とを有することを特徴とするDMSO含有排水の処理装置。[4] [3]において、前記メタン発酵処理を20〜35℃で行うことを特徴とするDMSO含有排水の処理装置。 本発明によれば、DMSO含有排水を生物処理し、生物処理水を固液分離して分離水をRO膜で脱塩処理することにより水回収を図るDMSO含有排水の処理において、DMSやMM等の悪臭物質に起因する臭気の問題を引き起こすことなく、また、RO膜の負荷を高くすることなく、効率的に処理することができる。 即ち、本発明では、好気性処理を行わないため、従来法の好気性処理における曝気でDMSO分解で生成する中間体としてのDMSやMM等の悪臭物質の揮散による臭気の問題がない。また、好気性処理によるSO4の生成もないため、中和のためのアルカリが不要であることから、生物処理水の塩類濃度の増加の問題もなく、RO膜負荷を低減することができる。 なお、UF膜又はMF膜で膜分離した濃縮水を嫌気性消化工程(槽)に返送して循環処理することにより、嫌気性消化工程(槽)での汚泥滞留時間を極めて長くすることができる。これにより、嫌気性消化工程(槽)において、このようなDMSOをも分解し得る微生物が馴養され、DMSOを嫌気性消化工程(槽)で効率的に分解することができるようになる。 本発明によれば、電子産業工場排水のように、DMSOと同様に洗浄剤、剥離剤として利用されるモノエタノールアミン(MEA)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イソプロピルアルコール(IPA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DBG)などの有機物が含まれている場合においても、それらの分解で発生するガス量は総じて好気性処理での曝気量に比べ遥かに少ないため、臭気の揮散が問題となることは少ない。 本発明において、メタン発酵処理は、20〜35℃で行うことが好ましい。即ち、一般にメタン発酵処理には、35〜37℃に活性のピークがある中温メタン発酵と、53〜55℃に活性のピークがある高温メタン発酵とが知られているが、DMSOの分解で生成する中間体のDMSは沸点が37℃前後と沸点の低い物質であるため、本発明では、20〜35℃でメタン発酵を行って、DMSの揮散を防止することが好ましい(請求項2,4)。 本発明によれば、半導体製造、液晶製造等の電子産業工場のように、純水を使用してその排水を排出する設備において、排出されたDMSOを含む排水を含む排水を生物処理し、その処理水を効率的に水回収して純水製造の原料として用いることができる。 以下に、図面を参照して本発明のDMSO含有排水の処理方法及び装置の実施の形態を詳細に説明する。 図1は本発明のDMSO含有排水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。 図1においては、図1に示す如く、DMSO含有排水を原水として、嫌気性消化槽1で原水をメタン発酵処理し、処理水を好気性生物処理することなくUF膜分離装置2で固液分離し、分離水を好気性生物処理することなくRO膜分離装置3で脱塩処理して、透過水を処理水として取り出す。また、UF膜分離装置2の濃縮水の一部又は全部は嫌気性消化槽1に返送して循環処理する。 本発明において、原水として処理するDMSO含有排水としては、半導体製造、液晶製造等の電子産業工場等で排出される、プロセス工程で洗浄剤、剥離剤などとして使用されるDMSOを含む排水が挙げられ、例えば、DMSOを50〜1,000mg/L程度含む、CODCr50〜1,000mg/L、TOC15〜300mg/L程度のDMSO含有排水が挙げられる。 前述の如く、本発明によればMEA、TMAH、IPA、DBGなどの有機物が含む排水であっても、良好な効果を得ることができるため、本発明は、DMSOと共に、これらの有機物を含む排水にも有効に適用可能である。 このような原水は、嫌気性消化槽1内でメタン生成菌群を主体とする嫌気性生物処理でメタン発酵処理されてDMSO及びその他の有機物が分解除去される。前述の如く、嫌気性消化槽1でのメタン発酵処理は、低沸点のDMSの揮散を防止するために20〜35℃、特に25〜30℃で行うことが好ましい。また、槽内液のpHを7.0〜8.0とすることにより、メタン生成菌群の活性が高く維持されるため、好ましい。 嫌気性消化槽1からの処理水には微生物が含まれるため、UF膜分離装置2で固液分離した後、固形分が除去された水(分離水)をRO膜分離装置3で脱塩処理し、処理水(RO膜透過水)は、純水原料等として取り出される。 UF膜分離装置2のモジュール形式は特に限定されないが、嫌気性消化槽1から送液される汚泥がUF膜分離装置2の内部で閉塞又は滞留しにくいように構成されていることが好ましく、例えばチューブラ形式や平膜形式を好適に使用できる。また、嫌気性消化槽1の処理水中の液分と固形分とを分離するUF膜は、本実施形態のように嫌気性消化槽1外に設ける、いわゆる槽外型とすれば膜面流速のコントロールが容易であるため、膜面の汚れ防止の観点から好ましい。 なお、UF膜分離装置2には図示しないガス排管が接続されており、嫌気性消化槽1からの処理水と共に生成ガスがUF膜分離装置2に送られる。このガスは、UF膜分離装置2内の被処理水流路に沿って移動しながら分離膜を曝気洗浄する。 本発明では、このUF膜分離装置1で分離された濃縮水は、嫌気性消化槽1に返送される。 なお、嫌気性消化槽1におけるメタン生成菌群は好気性微生物に比べて増殖速度が遅いが、このように濃縮水の返送を行って嫌気性消化槽1内の汚泥(MLSS)濃度を6,000〜15,000mg/L程度に維持し、嫌気性消化槽1の水理学的滞留時間を2〜8時間程度にすることにより、好気性の活性汚泥による好気性生物処理を行う場合と同程度の分解効率でDMSOを分解除去することが可能となる。この嫌気性消化槽1からは、図示しない排泥管を介して適宜、余剰汚泥を引き抜くことにより、嫌気性消化槽1内の汚泥濃度を調整する。 UF膜分離装置2の分離水を脱塩処理するRO膜分離装置3の分離膜には特に制限はなく、平膜、チューブラ、スパイラルなど任意の膜形式のものを用いることができる。 このRO膜分離装置3で処理され、塩類が除去された透過水は処理水として取り出される。この処理水は、純水製造用の原水等として利用できる。具体的には、RO膜分離装置3の後段に脱炭酸装置やイオン交換装置、紫外線殺菌装置等の純水製造装置を構成する機器類を配置し、これら機器類を用いてRO膜分離装置3から取り出した透過水を処理することで純水が製造できる。 RO膜分離装置3から排出される、塩類が濃縮された濃縮水は系外へ排出される。 なお、図1では、嫌気性消化槽1からの処理水をUF膜分離装置で固液分離しているが、嫌気性消化槽1からの処理水の固液分離は、UF膜の他、MF膜を用いても良く、この場合、MF膜分離装置の形式等については、前述のUF膜分離装置におけると同様である。 本発明では、UF膜分離装置又はMF膜分離装置で、DMSO含有排水のメタン発酵処理水を好気性生物処理することなく固液分離し、分離された濃縮水を循環処理することにより、未分解物質をUF膜又はMF膜で阻止すると共に、これを嫌気性消化槽で分解除去して系内蓄積を防止する。このように好気性生物処理を行うことなく、嫌気性消化処理のみでDMSOを分解することにより、臭気の問題を引き起こすことなく、RO膜の負荷を低減して長期に亘り安定かつ効率的な処理を行える。 以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。[実施例1] 以下の水質の排水を原水として、図1に示す本発明のDMSO含有排水の処理装置により処理を行った。<原水水質> CODCr:440mg/L TOC:130mg/L T−N:25mg/L T−S:125mg/L T−P:3mg/L 原水の組成: ジメチルスルホキシド:300mg/L モノエタノールアミン:100mg/L (K、Ca、Mg、PO4−Pを微量金属とともに別途添加) 下水消化汚泥(VSS5,500mg/L)を種汚泥とする嫌気性消化槽(実容量5L)の温度は30℃、pHは7.5、水理学的滞留時間は6時間とし、原水流量は0.83L/hrとし、槽内MLSSが10,000〜12,000mg/Lを維持するように汚泥を引き抜いた。 膜分離装置には、平膜形式のMF膜(旭化成ケミカルズ社製、マイクローザMF UMP−153、孔径:0.2μm、膜面積:0.08m2)を配置し、嫌気性消化槽からの処理水を槽内のガスとともに流入させ、濃縮水とガスは嫌気性消化槽に返送した。循環ガス量は5m3/m2・日、透過水量(フラックス)は0.3m/日とした。[比較例1] 槽容量1.5Lの嫌気槽と槽容量3.5Lの好気槽とを用い、実施例1で処理したものと同じ原水を嫌気、好気生物処理した。好気槽はDO2mg/L以上となるように0.2L/minの流量で曝気し、2N NaOH水溶液を添加してpH7に調整した。種汚泥としては下水処理場の余剰汚泥(VSS5,500mg/L)を用いた。処理水温は30℃、水理学的滞留時間は6hr、原水流量は0.83L/hrとした。 好気槽の処理液をMF(旭化成ケミカルズ社製マイクローザMF UMP−153)で膜分離し、分離水を得た。MF膜の濃縮液は好気槽に返送すると共に、好気槽からは別途処理液を原水流量の2倍の流量で嫌気槽に返送した。 実施例1及び比較例1ともに、運転開始後15〜20日でDMSOの分解が認められ、処理水(MF膜分離水)のTOC濃度は3mg/L以下(除去率97%以上)に、残留DMSは検出下限値以下となった。この処理水を平膜セル型RO膜分離装置(呼び径32A、日東電工(株)製RO膜ES−20を使用)により750kPaで10日間脱塩処理したところ、透過水量は、期間を通じて実施例1の方が18〜23%高い値で推移した。 処理水の導電率は、比較例1の101mS/mに対し、実施例1では20.5mS/mであった。 実施例1における透過水量の増加は、DMSOの分解により生成するH2Sが水系から除去され、RO膜の塩類負荷が低減されているためと考えられた。 このように、本発明によって、DMSOを含有する排水の処理を臭気の問題を引き起こすことなく処理することができる。また、処理水をRO膜で処理して純水製造の原水として利用する場合に、従来の好気性処理ではDMSOの分解で生じるSO4、及び、SO4が生成される過程でのpH低下を抑制するためのアルカリによる塩類濃度の増加が問題となるのに対して、本発明で採用するメタン発酵ではH2Sがガスとして水系から除去されるため起こらず、RO膜の負荷を低減することができる。本発明のDMSO含有排水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。符号の説明 1 嫌気性消化槽 2 UF膜分離装置 3 RO膜分離装置 ジメチルスルホキシドを含有する排水をメタン発酵処理する嫌気性消化工程と、 該嫌気性消化工程の処理水を好気性生物処理することなく限外濾過膜分離処理又は精密濾過膜分離処理する固液分離工程と、 該固液分離工程で分離された分離水を好気性生物処理することなく逆浸透膜分離処理する脱塩工程と、 前記固液分離工程で分離された濃縮水を前記嫌気性消化工程に返送する返送工程とを有することを特徴とするDMSO含有排水の処理方法。 請求項1において、前記メタン発酵処理を20〜35℃で行うことを特徴とするDMSO含有排水の処理方法。 ジメチルスルホキシドを含有する排水をメタン発酵処理する嫌気性消化槽と、 該嫌気性消化槽の処理水を好気性生物処理することなく固液分離する限外濾過膜分離装置又は精密濾過膜分離装置と、 該限外濾過膜分離装置又は精密濾過膜分離装置で分離された分離水を好気性生物処理することなく脱塩処理する逆浸透膜分離装置と、 前記限外濾過膜分離装置で分離された濃縮水を前記嫌気性消化槽に返送する返送手段とを有することを特徴とするDMSO含有排水の処理装置。 請求項3において、前記メタン発酵処理を20〜35℃で行うことを特徴とするDMSO含有排水の処理装置。 【課題】DMSO含有排水を生物処理し、生物処理水を固液分離して分離水をRO膜で脱塩処理することにより水回収を図るDMSO含有排水の処理において、臭気の問題を引き起こすことなく、またRO膜の負荷を抑えて効率的な処理を行う。【解決手段】DMSO含有排水を嫌気性消化槽1でメタン発酵処理し、処理水を好気性生物処理することなくUF膜分離装置2で固液分離し、分離水を好気性生物処理することなくRO膜分離装置3で脱塩処理する。UF膜分離装置2の濃縮水は嫌気性消化槽1に返送する。【選択図】図1