生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_新規菌株及びそれを用いた浄化方法
出願番号:2008177539
年次:2010
IPC分類:C12N 1/20,B09C 1/10,C02F 3/34,A62D 3/02,A62D 101/04,A62D 101/22,A62D 101/28


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松本 えみ子 川中 洋平 JP 2010017086 公開特許公報(A) 20100128 2008177539 20080708 新規菌株及びそれを用いた浄化方法 株式会社環境管理センター 593171422 野村 健一 100107870 間山 世津子 100098121 松本 えみ子 川中 洋平 C12N 1/20 20060101AFI20091225BHJP B09C 1/10 20060101ALI20091225BHJP C02F 3/34 20060101ALI20091225BHJP A62D 3/02 20070101ALI20091225BHJP A62D 101/04 20070101ALN20091225BHJP A62D 101/22 20070101ALN20091225BHJP A62D 101/28 20070101ALN20091225BHJP JPC12N1/20 AB09B3/00 EC02F3/34 ZA62D3/02C12N1/20 DC12N1/20 FA62D101:04A62D101:22A62D101:28 8 6 OL 11 4B065 4D004 4D040 4B065AA01X 4B065AC12 4B065AC20 4B065BA23 4B065BB01 4B065BC03 4B065BC26 4B065BC31 4B065BC41 4B065BC50 4B065CA54 4B065CA56 4D004AA41 4D004AA50 4D004AB06 4D004AC07 4D004CA19 4D004CC01 4D004CC07 4D004DA03 4D004DA10 4D040DD03 本発明は、残留性有機汚染物質(POPs)であるディルドリン、エンドリンなどのドリン系農薬化合物を分解できる菌株、及びそれを用いた環境の浄化方法に関する。 ディルドリンおよびエンドリンは、1954年に農薬登録されて以降、有機塩素系殺虫剤として広く用いられた。しかしその後、発癌性などの高い毒性が確認され、1970年代以降は製造・輸入・使用が禁止されている。にもかかわらずこれらは難分解性のため、長期にわたり土壌や底質に残留し、食物連鎖を通じた生物濃縮によって、現在も人の健康や生態系に深刻な影響を与えている。実際に、使用から30年以上経た今日も、ディルドリンおよびエンドリンが環境管理指針値や食品基準値を超える濃度で、農地や作物からしばしば検出される(橋本良子(2003)土壌、作物におけるドリン系農薬の残留.第26回残留分析研究会講演要旨集:92-97、近藤治美,天川映子,佐藤寛,安田和男,大貫憲一,秋葉美智子,金谷和明(2003)多摩地域産きゅうりにおけるディルドリン検出に関する事例研究.東京健安研セ年報.54:132-135、Hashimoto Y (2005) Dieldrin residue in the soil and cucumber from agricultural field in Tokyo. J Pestic Sci 30:397-402)。また2001年のPOPs条約において、これらはPCBやダイオキシンとともに残留性有機汚染物質に指定され、国際的に対策が必要とされている。 ディルドリンやエンドリンのように汚染が広範囲におよぶ物質の浄化方法として、物理化学的方法よりコスト安となる、バイオレメディエーションの実用化が期待されている。 近年のディルドリンおよびエンドリンの微生物分解に関する研究では、高濃度に汚染された底質に生育する嫌気性微生物の脱塩素反応が着目されている(非特許文献1、2)。その一方で、ディルドリンとエンドリンを分解する好気性微生物の情報は少なく、1980年代以降ほとんど報告されていない(非特許文献3)。そのため比較的低濃度の残留ではあるが、農地土壌の表層のように好気的な環境の浄化方法は、いまだ確立されていない。ゆえに農地土壌においてこれらの残留が認められた際の対応は、ディルドリンやエンドリンを吸収し難い作物を栽培するという消極的な手法に留まっている。Maule A, Plyte S, Quirk AV (1987) Dehalogenation of organochlorine insecticides by mixed anaerobic microbial populations. Pestic Biochem Physiol 27:229-236Baczynski TP, Grotenhuis T, Knipscheer P (2004) The dechlorination of cyclodiene pesticides by methanogenic granular sludge. Chemosphere 55:653-659Khan SU (1980) Pesticides in the soil environment. Elsevier scientific publishing company, Amsterdam-Oxford-New York 従って本発明は、ディルドリンおよびエンドリンを分解できる好気性細菌の菌株を提供することによって、農地土壌の表層のように好気的な環境での汚染を浄化することを目的とするものである。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討重ねた結果、ディルドリンおよびエンドリンに対して高い分解能を持つ2つの菌株を見出した。この2菌株は好気性であり、一方はカプリアビダス属に属し、他方はバークホルデリア属に属する。前述したように、ディルドリンおよびエンドリン分解菌は非特許文献1〜3に記載されている。しかし、非特許文献1及び2に記載されている微生物は嫌気性の微生物である。また、非特許文献3には、トリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属に属する微生物について記載されているが、カプリアビダス(Cupriavidus)属、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物について何も記載されていない。従って、カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ディルドリン及びエンドリンを分解する微生物は、従来全く知られておらず、本発明者によって初めて見出されたものである。以上の知見に基づき本発明は完成されたものである。 即ち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供するものである。(1)カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ドリン系農薬化合物分解能を有する菌株。(2)配列番号1に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなる16SrDNA、又は配列番号2に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなる16SrDNAを有することを特徴とする(1)に記載の菌株。(3)配列番号1に示す塩基配列又は配列番号2に示す塩基配列からなる16SrDNAを有することを特徴とする(1)に記載の菌株。(4)受託番号NITE P-574で寄託されたカプリアビダス属MED-5株。(5)受託番号NITE P-575で寄託されたバークホルデリア属MED-7株。(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の菌株で、ドリン系農薬化合物で汚染された環境を浄化することを特徴とする環境の浄化方法。(7)ドリン系農薬化合物が、ディルドリン又はエンドリンであることを特徴とする(6)に記載の環境の浄化方法。(8)汚染された環境が、好気的環境であることを特徴とする(6)又は(7)に記載の環境の浄化方法。 本発明は、ディルドリン、エンドリンなどのドリン系農薬化合物を分解できる菌株を提供する。この菌株により、ドリン系農薬化合物などにより汚染された表層土壌などを効率的に浄化することが可能になる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の菌株は、カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ドリン系農薬化合物分解能を有するものである。ここで「ドリン系農薬化合物」とは、ディルドリン及びエンドリンのほか、アルドリンなども含む。 本発明の菌株の具体例としては、カプリアビダス属MED-5及びバークホルデリア属MED-7を挙げることができる。これらの菌株は、本発明者によって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、それぞれ受託番号NITE P-574及びNITE P-575として寄託されている(受託日:2008年5月28日)。MED-5はディルドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのディルドリンを16%分解する。また、エンドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのエンドリンを23%分解する。一方、1,2-エポキシシクロヘキサンを炭素源として与えた場合は、14日間で400ppbのディルドリンを38%、400ppbのエンドリンを40%分解する。MED-7はディルドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのディルドリンを18%分解する。また、エンドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのエンドリンを19%分解する。一方、1,2-エポキシシクロヘキサンを炭素源として与えた場合は、14日間で400ppbのディルドリンを49%、400ppbのエンドリンを51%分解する。 MED-5又はMED-7の16SrDNAに対して高い相同性を示す16SrDNAを有する菌株も本発明の菌株に含まれる。このような菌株は、MED-5又はMED-7と近縁の菌株であると考えられ、MED-5及びMED-7と同様にドリン系農薬化合物に対する分解能を有すると予想される。ここで、「高い相同性」とは、MED-5については、95%以上の相同性、好ましくは97%以上の相同性、更に好ましくは99%%以上の相同性、最も好ましくは100%の相同性を意味し、MED-7については、95%以上の相同性、好ましくは97%以上の相同性、更に好ましくは99%以上の相同性、最も好ましくは100%の相同性を意味する。 本発明の菌株の培養方法は特に限定されず、カプリアビダス属又はバークホルデリア属の微生物に一般的に適用されている方法によって培養することができる。培地としては、例えば、標準寒天培地、R2A培地、LB培地などを使用することができる。培養温度は特に限定されないが、25〜37℃とするのが好ましく、25〜30℃とするのが更に好ましい。 本発明の微生物は、ドリン系農薬化合物に汚染された環境の浄化に利用することができる。ここでいう「環境」とは、主として土壌を意味するが、水、浚渫物なども含む。本発明の菌株は、好気性の菌株なので、浄化対象とする環境は、好気的環境であることが好ましい。ここでいう「好気的環境」は、例えば、表層土壌、表層水、浚渫物(底質など)、土壌や水などに酸素供給剤等を用いて強制的に作り上げた好気的環境などをいう。 環境の浄化は、微生物の培養液、あるいは、微生物を凍結乾燥処理した乾燥粉末を汚染環境に散布することにより行われる。この際、乾燥粉末と増殖を補助する無機塩類を混合・造粒し、粉末状及び顆粒状等に製剤化したものを汚染環境に散布しても良い。処理に用いる微生物の量は、環境の汚染状況等に応じ、任意に定めることができるが、通常、汚染土壌100m2に培養液であれば10L、乾燥菌体であれば50g程度である。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。〔実施例1〕 微生物の単離 単離源となる土壌の選定は次のように行った。試験土壌として非汚染の畑表層土壌3種と森林表層土壌1種を用いた。これらを500ml容のガラス瓶に100g(乾燥重量)とり、ディルドリンとエンドリンをそれぞれ1ppmとなるよう添加した。この土壌マイクロコズムを25℃の暗所で静置培養し、2週間ごとに蓋をはずすことで好気条件を保った。土壌中のディルドリンとエンドリンの残留量は、培養開始時と3、7、14、30週目に、ガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。その結果、森林表層土壌において高い分解が認められた(図1)ため、この土壌を分離源と決定した。 森林表層土壌を用いて次のように集積培養を行った。試験管に入れたRM2+培地(表1)10mlに、上記の森林表層土壌マイクロコズム0.5g(湿重量)を接種した。ここに1,2-エポキシシクロヘキサン0.1%(wt/vol)を添加し、25℃の暗所で振とう培養した。1,2-エポキシシクロヘキサンはディルドリンおよびエンドリンの構造類似体であり、分解菌へ有利な炭素源となりうる。この培養液を、同条件で一度植え継いだ後、1,2-エポキシシクロヘキサン0.1%(wt/vol)を添加したMS培地(表1)へ、7〜10日ごとに繰り返し植え継いだ。この培養液を分解菌の集積培養系とした。 集積培養系の分解能は次のように評価した。植え継ぎから7日目の集積培養系0.5mlを、試験管に入れたMS培地9.5mlに接種した。ここに1,2-エポキシシクロヘキサン0.1%(wt/vol) および、ディルドリンとエンドリンをそれぞれ400ppbになるよう添加し、25℃の暗所で振とう培養した。培養14日目に、培養液中のディルドリンとエンドリンの残留量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、32%以上の分解が認められた。(図2) 集積培養系からの分解菌の単離は次のように行った。標準寒天平板培地またはR2A平板培地(表1)へ、上記で分解能を確認した集積培養液を塗抹し、純粋分離した。その結果、ディルドリンおよびエンドリンの分解能を有する菌株としてMED-5とMED-7が単離された。また、集積培養液から16SrDNAを抽出し変性剤濃度勾配ゲル電気泳動に供したところ、優位に生育している細菌は数株にまで集積しており、それらはMED-5とMED-7と一致した(図3)。〔実施例2〕 微生物の同定 MED-5及びMED-7の16SrDNA塩基配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。この塩基配列を公知の微生物の配列と比較することによってMED-5はCupriavidus sp.、MED-7はBurkholderia sp.と同定した。MED-5と最も近縁な菌はCupriavidus necatorであり相同率は99.0%、MED-7と最も近縁な菌はBurkholderia terraeであり相同率は98.9%であった。また、NJ(近接接合)法により作成したMED-5及びMED-7の系統樹をそれぞれ図4及び図5に示す。MED-5およびMED-7は既知の病原性微生物とは97.0%以下の相同率であり、安全な微生物であることが確認された。 本発明で提供する菌株の位相差顕微鏡写真(1000倍)を図6に示す。MED-5は球桿菌でありカプリアビダス(Cupriavidus)属の特徴と一致した。また、MED-7は桿菌でありバークホルデリア(Burkholderia)属の特徴と一致した。〔実施例3〕 液体培地中でのディルドリンおよびエンドリンの分解 前培養は次のように行った。試験管に入れたR2A培地に、R2A寒天平板培地からコロニー1白金耳を接種し、25℃の暗所で各菌の対数増殖期後期まで振とう培養した。培養液より遠心分離機を用いて菌体を収集し、MS培地で洗浄および懸濁した。 本発明で提供する菌株の液体培地中での分解能は次のように評価した。菌体濃度を均一にするため、分光光度計を用いて吸収波長600nmの吸光度を測定した。試験管に入れたMS培地へ、OD600=0.005になるように、前培養液を接種した。ここにディルドリンとエンドリンを400ppbとなるよう添加し、25℃の暗所で振とう培養した。この液体培地中においてディルドリンとエンドリンは唯一の炭素源である。培養14日目に、培養液中のディルドリンとエンドリンの残留量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、MED-5で16%以上、MED-7で18%以上の分解が認められた。(図7)〔実施例4〕 1,2-エポキシシクロヘキサンを添加した液体培地中のディルドリンおよびエンドリンの分解 実施例3と同様に調整し、試験管に入れたMS培地へ前培養液を接種した。さらに1,2-エポキシシクロへキサン0.2%(wt/vol)および、ディルドリンとエンドリンを400ppbとなるよう添加し、25℃の暗所で振とう培養した。この液体培地中において、炭素源はディルドリンとエンドリンおよび1,2-エポキシシクロヘキサンのみである。培養14日目に、培養液中のディルドリンとエンドリンの残留量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、MED-5で38%以上、MED-7で49%以上の分解が認められた。(図8)土壌中のディルドリン又はエンドリン残留量の経時的変化を示す図。培養液中のディルドリン又はエンドリン濃度の経時的変化を示す図。集積培養液から抽出した16SrDNAの変性剤濃度勾配ゲル電気泳動の結果を示す図。NJ法により作成したMED-5の系統樹を示す図。NJ法により作成したMED-7の系統樹を示す図。MED-5及びMED-7の位相差顕微鏡写真。MED-5又はMED-7のディルドリン又はエンドリンに対する分解能を示す図。1,2-エポキシシクロヘキサンを含む培地で培養した場合のMED-5又はMED-7のディルドリン又はエンドリンに対する分解能を示す図。 カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ドリン系農薬化合物分解能を有する菌株。 配列番号1に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなる16SrDNA、又は配列番号2に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなる16SrDNAを有することを特徴とする請求項1に記載の菌株。 配列番号1に示す塩基配列又は配列番号2に示す塩基配列からなる16SrDNAを有することを特徴とする請求項1に記載の菌株。 受託番号NITE P-574で寄託されたカプリアビダス属MED-5株。 受託番号NITE P-575で寄託されたバークホルデリア属MED-7株。 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の菌株で、ドリン系農薬化合物で汚染された環境を浄化することを特徴とする環境の浄化方法。 ドリン系農薬化合物が、ディルドリン又はエンドリンであることを特徴とする請求項6に記載の環境の浄化方法。 汚染された環境が、好気的環境であることを特徴とする請求項6又は7に記載の環境の浄化方法。 【課題】 ディルドリンおよびエンドリンを分解できる好気性細菌の菌株を提供することによって、農地土壌の表層のように好気的な環境での汚染を浄化する。【解決手段】 カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ドリン系農薬化合物分解能を有する菌株、及びこの菌株で、ドリン系農薬化合物で汚染された環境を浄化することを特徴とする環境の浄化方法。【選択図】 図6配列表


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特許公報(B2)_新規菌株及びそれを用いた浄化方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規菌株及びそれを用いた浄化方法
出願番号:2008177539
年次:2013
IPC分類:C12N 1/20,B09C 1/10,C02F 3/34,A62D 3/02,A62D 101/04,A62D 101/22,A62D 101/28


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松本 えみ子 川中 洋平 JP 5243866 特許公報(B2) 20130412 2008177539 20080708 新規菌株及びそれを用いた浄化方法 株式会社環境管理センター 593171422 野村 健一 100107870 間山 世津子 100098121 松本 えみ子 川中 洋平 20130724 C12N 1/20 20060101AFI20130704BHJP B09C 1/10 20060101ALI20130704BHJP C02F 3/34 20060101ALI20130704BHJP A62D 3/02 20070101ALI20130704BHJP A62D 101/04 20070101ALN20130704BHJP A62D 101/22 20070101ALN20130704BHJP A62D 101/28 20070101ALN20130704BHJP JPC12N1/20 AB09B3/00 EC02F3/34 ZA62D3/02C12N1/20 DC12N1/20 FA62D101:04A62D101:22A62D101:28 C12N 1/00− 1/38 C12N 15/00−15/90 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq WPI 第13回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集(2007)p.S4-22 日本農芸化学会大会講演要旨集(2006)p.193(3Q09a07) 日本農芸化学会大会講演要旨集(2005)p.166(29L048β) Science,Vol.156(1967)p.959-961 J.Agric.Food Chem.,Vol.19,No.1(1971)p.27-31 Environ.Sci.Technol.,Vol.42(Jun.2008)p.4099-4105 Arch.Microbiol.,Vol.185(2006)p.47-54 G.M.Savage et al.[ed], Waste Science Series, Chapter 8 Bioremediation, 2007, p.159-175 5 NPMD NITE P-574 NPMD NITE P-575 2010017086 20100128 11 20110303 三原 健治 本発明は、残留性有機汚染物質(POPs)であるディルドリン、エンドリンなどのドリン系農薬化合物を分解できる菌株、及びそれを用いた環境の浄化方法に関する。 ディルドリンおよびエンドリンは、1954年に農薬登録されて以降、有機塩素系殺虫剤として広く用いられた。しかしその後、発癌性などの高い毒性が確認され、1970年代以降は製造・輸入・使用が禁止されている。にもかかわらずこれらは難分解性のため、長期にわたり土壌や底質に残留し、食物連鎖を通じた生物濃縮によって、現在も人の健康や生態系に深刻な影響を与えている。実際に、使用から30年以上経た今日も、ディルドリンおよびエンドリンが環境管理指針値や食品基準値を超える濃度で、農地や作物からしばしば検出される(橋本良子(2003)土壌、作物におけるドリン系農薬の残留.第26回残留分析研究会講演要旨集:92-97、近藤治美,天川映子,佐藤寛,安田和男,大貫憲一,秋葉美智子,金谷和明(2003)多摩地域産きゅうりにおけるディルドリン検出に関する事例研究.東京健安研セ年報.54:132-135、Hashimoto Y (2005) Dieldrin residue in the soil and cucumber from agricultural field in Tokyo. J Pestic Sci 30:397-402)。また2001年のPOPs条約において、これらはPCBやダイオキシンとともに残留性有機汚染物質に指定され、国際的に対策が必要とされている。 ディルドリンやエンドリンのように汚染が広範囲におよぶ物質の浄化方法として、物理化学的方法よりコスト安となる、バイオレメディエーションの実用化が期待されている。 近年のディルドリンおよびエンドリンの微生物分解に関する研究では、高濃度に汚染された底質に生育する嫌気性微生物の脱塩素反応が着目されている(非特許文献1、2)。その一方で、ディルドリンとエンドリンを分解する好気性微生物の情報は少なく、1980年代以降ほとんど報告されていない(非特許文献3)。そのため比較的低濃度の残留ではあるが、農地土壌の表層のように好気的な環境の浄化方法は、いまだ確立されていない。ゆえに農地土壌においてこれらの残留が認められた際の対応は、ディルドリンやエンドリンを吸収し難い作物を栽培するという消極的な手法に留まっている。Maule A, Plyte S, Quirk AV (1987) Dehalogenation of organochlorine insecticides by mixed anaerobic microbial populations. Pestic Biochem Physiol 27:229-236Baczynski TP, Grotenhuis T, Knipscheer P (2004) The dechlorination of cyclodiene pesticides by methanogenic granular sludge. Chemosphere 55:653-659Khan SU (1980) Pesticides in the soil environment. Elsevier scientific publishing company, Amsterdam-Oxford-New York 従って本発明は、ディルドリンおよびエンドリンを分解できる好気性細菌の菌株を提供することによって、農地土壌の表層のように好気的な環境での汚染を浄化することを目的とするものである。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討重ねた結果、ディルドリンおよびエンドリンに対して高い分解能を持つ2つの菌株を見出した。この2菌株は好気性であり、一方はカプリアビダス属に属し、他方はバークホルデリア属に属する。前述したように、ディルドリンおよびエンドリン分解菌は非特許文献1〜3に記載されている。しかし、非特許文献1及び2に記載されている微生物は嫌気性の微生物である。また、非特許文献3には、トリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属に属する微生物について記載されているが、カプリアビダス(Cupriavidus)属、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物について何も記載されていない。従って、カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ディルドリン及びエンドリンを分解する微生物は、従来全く知られておらず、本発明者によって初めて見出されたものである。以上の知見に基づき本発明は完成されたものである。 即ち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供するものである。(1)カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ドリン系農薬化合物分解能を有する菌株。(2)配列番号1に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなる16SrDNA、又は配列番号2に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなる16SrDNAを有することを特徴とする(1)に記載の菌株。(3)配列番号1に示す塩基配列又は配列番号2に示す塩基配列からなる16SrDNAを有することを特徴とする(1)に記載の菌株。(4)受託番号NITE P-574で寄託されたカプリアビダス属MED-5株。(5)受託番号NITE P-575で寄託されたバークホルデリア属MED-7株。(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の菌株で、ドリン系農薬化合物で汚染された環境を浄化することを特徴とする環境の浄化方法。(7)ドリン系農薬化合物が、ディルドリン又はエンドリンであることを特徴とする(6)に記載の環境の浄化方法。(8)汚染された環境が、好気的環境であることを特徴とする(6)又は(7)に記載の環境の浄化方法。 本発明は、ディルドリン、エンドリンなどのドリン系農薬化合物を分解できる菌株を提供する。この菌株により、ドリン系農薬化合物などにより汚染された表層土壌などを効率的に浄化することが可能になる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の菌株は、カプリアビダス属又はバークホルデリア属に属し、ドリン系農薬化合物分解能を有するものである。ここで「ドリン系農薬化合物」とは、ディルドリン及びエンドリンのほか、アルドリンなども含む。 本発明の菌株の具体例としては、カプリアビダス属MED-5及びバークホルデリア属MED-7を挙げることができる。これらの菌株は、本発明者によって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、それぞれ受託番号NITE P-574及びNITE P-575として寄託されている(受託日:2008年5月28日)。MED-5はディルドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのディルドリンを16%分解する。また、エンドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのエンドリンを23%分解する。一方、1,2-エポキシシクロヘキサンを炭素源として与えた場合は、14日間で400ppbのディルドリンを38%、400ppbのエンドリンを40%分解する。MED-7はディルドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのディルドリンを18%分解する。また、エンドリンを唯一の炭素源として、14日間で400ppbのエンドリンを19%分解する。一方、1,2-エポキシシクロヘキサンを炭素源として与えた場合は、14日間で400ppbのディルドリンを49%、400ppbのエンドリンを51%分解する。 MED-5又はMED-7の16SrDNAに対して高い相同性を示す16SrDNAを有する菌株も本発明の菌株に含まれる。このような菌株は、MED-5又はMED-7と近縁の菌株であると考えられ、MED-5及びMED-7と同様にドリン系農薬化合物に対する分解能を有すると予想される。ここで、「高い相同性」とは、MED-5については、95%以上の相同性、好ましくは97%以上の相同性、更に好ましくは99%%以上の相同性、最も好ましくは100%の相同性を意味し、MED-7については、95%以上の相同性、好ましくは97%以上の相同性、更に好ましくは99%以上の相同性、最も好ましくは100%の相同性を意味する。 本発明の菌株の培養方法は特に限定されず、カプリアビダス属又はバークホルデリア属の微生物に一般的に適用されている方法によって培養することができる。培地としては、例えば、標準寒天培地、R2A培地、LB培地などを使用することができる。培養温度は特に限定されないが、25〜37℃とするのが好ましく、25〜30℃とするのが更に好ましい。 本発明の微生物は、ドリン系農薬化合物に汚染された環境の浄化に利用することができる。ここでいう「環境」とは、主として土壌を意味するが、水、浚渫物なども含む。本発明の菌株は、好気性の菌株なので、浄化対象とする環境は、好気的環境であることが好ましい。ここでいう「好気的環境」は、例えば、表層土壌、表層水、浚渫物(底質など)、土壌や水などに酸素供給剤等を用いて強制的に作り上げた好気的環境などをいう。 環境の浄化は、微生物の培養液、あるいは、微生物を凍結乾燥処理した乾燥粉末を汚染環境に散布することにより行われる。この際、乾燥粉末と増殖を補助する無機塩類を混合・造粒し、粉末状及び顆粒状等に製剤化したものを汚染環境に散布しても良い。処理に用いる微生物の量は、環境の汚染状況等に応じ、任意に定めることができるが、通常、汚染土壌100m2に培養液であれば10L、乾燥菌体であれば50g程度である。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。〔実施例1〕 微生物の単離 単離源となる土壌の選定は次のように行った。試験土壌として非汚染の畑表層土壌3種と森林表層土壌1種を用いた。これらを500ml容のガラス瓶に100g(乾燥重量)とり、ディルドリンとエンドリンをそれぞれ1ppmとなるよう添加した。この土壌マイクロコズムを25℃の暗所で静置培養し、2週間ごとに蓋をはずすことで好気条件を保った。土壌中のディルドリンとエンドリンの残留量は、培養開始時と3、7、14、30週目に、ガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。その結果、森林表層土壌において高い分解が認められた(図1)ため、この土壌を分離源と決定した。 森林表層土壌を用いて次のように集積培養を行った。試験管に入れたRM2+培地(表1)10mlに、上記の森林表層土壌マイクロコズム0.5g(湿重量)を接種した。ここに1,2-エポキシシクロヘキサン0.1%(wt/vol)を添加し、25℃の暗所で振とう培養した。1,2-エポキシシクロヘキサンはディルドリンおよびエンドリンの構造類似体であり、分解菌へ有利な炭素源となりうる。この培養液を、同条件で一度植え継いだ後、1,2-エポキシシクロヘキサン0.1%(wt/vol)を添加したMS培地(表1)へ、7〜10日ごとに繰り返し植え継いだ。この培養液を分解菌の集積培養系とした。 集積培養系の分解能は次のように評価した。植え継ぎから7日目の集積培養系0.5mlを、試験管に入れたMS培地9.5mlに接種した。ここに1,2-エポキシシクロヘキサン0.1%(wt/vol) および、ディルドリンとエンドリンをそれぞれ400ppbになるよう添加し、25℃の暗所で振とう培養した。培養14日目に、培養液中のディルドリンとエンドリンの残留量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、32%以上の分解が認められた。(図2) 集積培養系からの分解菌の単離は次のように行った。標準寒天平板培地またはR2A平板培地(表1)へ、上記で分解能を確認した集積培養液を塗抹し、純粋分離した。その結果、ディルドリンおよびエンドリンの分解能を有する菌株としてMED-5とMED-7が単離された。また、集積培養液から16SrDNAを抽出し変性剤濃度勾配ゲル電気泳動に供したところ、優位に生育している細菌は数株にまで集積しており、それらはMED-5とMED-7と一致した(図3)。〔実施例2〕 微生物の同定 MED-5及びMED-7の16SrDNA塩基配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。この塩基配列を公知の微生物の配列と比較することによってMED-5はCupriavidus sp.、MED-7はBurkholderia sp.と同定した。MED-5と最も近縁な菌はCupriavidus necatorであり相同率は99.0%、MED-7と最も近縁な菌はBurkholderia terraeであり相同率は98.9%であった。また、NJ(近接接合)法により作成したMED-5及びMED-7の系統樹をそれぞれ図4及び図5に示す。MED-5およびMED-7は既知の病原性微生物とは97.0%以下の相同率であり、安全な微生物であることが確認された。 本発明で提供する菌株の位相差顕微鏡写真(1000倍)を図6に示す。MED-5は球桿菌でありカプリアビダス(Cupriavidus)属の特徴と一致した。また、MED-7は桿菌でありバークホルデリア(Burkholderia)属の特徴と一致した。〔実施例3〕 液体培地中でのディルドリンおよびエンドリンの分解 前培養は次のように行った。試験管に入れたR2A培地に、R2A寒天平板培地からコロニー1白金耳を接種し、25℃の暗所で各菌の対数増殖期後期まで振とう培養した。培養液より遠心分離機を用いて菌体を収集し、MS培地で洗浄および懸濁した。 本発明で提供する菌株の液体培地中での分解能は次のように評価した。菌体濃度を均一にするため、分光光度計を用いて吸収波長600nmの吸光度を測定した。試験管に入れたMS培地へ、OD600=0.005になるように、前培養液を接種した。ここにディルドリンとエンドリンを400ppbとなるよう添加し、25℃の暗所で振とう培養した。この液体培地中においてディルドリンとエンドリンは唯一の炭素源である。培養14日目に、培養液中のディルドリンとエンドリンの残留量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、MED-5で16%以上、MED-7で18%以上の分解が認められた。(図7)〔実施例4〕 1,2-エポキシシクロヘキサンを添加した液体培地中のディルドリンおよびエンドリンの分解 実施例3と同様に調整し、試験管に入れたMS培地へ前培養液を接種した。さらに1,2-エポキシシクロへキサン0.2%(wt/vol)および、ディルドリンとエンドリンを400ppbとなるよう添加し、25℃の暗所で振とう培養した。この液体培地中において、炭素源はディルドリンとエンドリンおよび1,2-エポキシシクロヘキサンのみである。培養14日目に、培養液中のディルドリンとエンドリンの残留量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果、MED-5で38%以上、MED-7で49%以上の分解が認められた。(図8)土壌中のディルドリン又はエンドリン残留量の経時的変化を示す図。培養液中のディルドリン又はエンドリン濃度の経時的変化を示す図。集積培養液から抽出した16SrDNAの変性剤濃度勾配ゲル電気泳動の結果を示す図。NJ法により作成したMED-5の系統樹を示す図。NJ法により作成したMED-7の系統樹を示す図。MED-5及びMED-7の位相差顕微鏡写真。MED-5又はMED-7のディルドリン又はエンドリンに対する分解能を示す図。1,2-エポキシシクロヘキサンを含む培地で培養した場合のMED-5又はMED-7のディルドリン又はエンドリンに対する分解能を示す図。 受託番号NITE P-574で寄託されたカプリアビダス属MED-5株。 受託番号NITE P-575で寄託されたバークホルデリア属MED-7株。 請求項1又は2に記載の菌株で、ドリン系農薬化合物で汚染された環境を浄化することを特徴とする環境の浄化方法。 ドリン系農薬化合物が、ディルドリン又はエンドリンであることを特徴とする請求項3に記載の環境の浄化方法。 汚染された環境が、好気的環境であることを特徴とする請求項3又は4に記載の環境の浄化方法。配列表


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