生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法
出願番号:2008161822
年次:2010
IPC分類:C07D 307/89


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行方 毅 伊藤 育夫 JP 2010001250 公開特許公報(A) 20100107 2008161822 20080620 p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法 エア・ウォーター株式会社 000126115 広瀬 章一 100081352 行方 毅 伊藤 育夫 C07D 307/89 20060101AFI20091204BHJP JPC07D307/89 Z 3 OL 7 4C037 4C037RA11 本発明は、無水トリメリット酸を酸クロリド化反応して得られる無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させて、ポリイミド樹脂等の原料として有用なp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を効率よく製造する方法に関する。 従来、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法として、ヒドロキノンを無水酢酸でジアセチル化したのちこれを無水トリメリット酸と250〜300℃で反応しエステル交換してp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下、「TMHQ」と略称することがある。)を製造する方法が提案されている(非特許文献1、特許文献1)。また、無水トリメリット酸および脂肪族ジオール類を210〜230℃で脱水エステル化して無水トリメリット酸エステル類を製造する方法も提案されている(特許文献2)。しかし熱的に安定でないジオール類をこのような高温にさらすのは得策ではなく、高純度のTMHQを製造する方法として工業的に採用するのは難しい。 一方、上記のような高温にさらすことなくトリメリット酸エステル無水物を製造する方法として、無水トリメリット酸クロリドとジオール類とを原料として脱塩酸する方法が提案されている。 例えば特許文献3には、無水トリメリット酸クロリドおよびビスフェノールAを原料として2,2−ビス(トリメリットキシフェニル)プロパンを製造する方法が開示されている。この方法では、溶媒としてテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略称する。)を用い、塩酸捕捉剤としてピリジンを添加して脱塩酸することで2,2−ビス(トリメリットキシフェニル)プロパンを合成し、反応後副生するピリジン塩酸塩を濾過して除去後、THFを留去して得られた生成物を無水酢酸で再結晶してTMHQを製造している。しかしながら、この方法で無水トリメリット酸クロリドとヒドロキノンを反応させてTMHQを製造すると、溶液中にはTMHQのみならず、ピリジンを含む物質も残留してしまう。このため、当該文献の実施例に記載されるように無水酢酸で再結晶する必要があるが、この方法では副生物は適切に除去されず、製品純度は高まらない。 また、特許文献4では無水トリメリット酸クロリドおよびヒドロキノンを原料としてTMHQを製造している。この方法では、溶媒としてトルエンを用い、塩酸捕捉剤としてピリジンを使用し還流下で反応後、濾過して固形物を分離し、水洗したのち乾燥して粗製物を得ている。ついでこの粗製物を無水酢酸で加熱処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略称する。)で再結晶してTMHQを製造している。しかしながら、この製造方法では、反応において副生するピリジン塩酸塩はTMHQとともに反応液中に析出するため、固形物を水洗してピリジン塩酸塩のみを除去する必要がある。このため、生成したTMHQの一部が加水分解してしまう。この加水分解物を元に戻すためには無水酢酸による加熱処理が必要となり、合理的な方法とは言いがたい。 特許文献5には、アセトニトリルを溶媒として、ピリジンを添加し、3,5,6−トリクロロ−4−クロロホルミルフタル酸無水物をヒドロキノンと反応させて3,5,6−トリクロロ−4−クロロホルミルフタル酸無水物ヒドロキノンを製造する方法が提案されている。この方法では、−18℃で反応を行わせ、生成物を濾過して分離し、クロロホルムで数回洗浄後乾燥して、光通信用モノマーとしての3,5,6−トリクロロ−4−クロロホルミルフタル酸無水物ヒドロキノンを製造している。しかし、当該文献は、この方法による生成物の純度が記載されていないため、生産性に優れた方法であるか否かは不明である。また、洗浄に環境負荷の大きなクロロホルムを使用すること、反応温度が−18℃であること等、実用的ではなく工業的に満足できる製法ではない。 ここで、TMHQ等の酸二無水物は、空気中の水分によって加水分解する場合があるため、加水分解を抑制すべく、あるいは加水分解物を元に戻すべく、無水酢酸で再結晶する方法や無水酢酸と酢酸等の混合液で再結晶する方法が提案されている(特許文献3、非特許文献2)。これらは、より合理的な方法ではあるが製造工程は煩雑で、且つ高純度品を製造することは難しい。特開平11−199578号公報特公昭52−46940号公報特許第2605453号公報特開平10−70157号公報特許第3490010号公報Journal of Polymer Science :Part A:Polymer Chemistry,Vol.37(1999)211-218Pure Appl.Chem.,A39(8)(2002)815-824 本発明の目的は、より経済的に効率よく、高純度のTMHQを製造する方法を提供することにある。 本発明者らは、無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、これまでに多く提案されている製造方法における煩雑な操作、すなわち副生するピリジン塩酸塩を水洗して除去する操作、および水洗のために生成する加水分解物の処理操作を必要としない簡便な方法を鋭意検討した。 また、TMHQは加水分解しやすいため、これを防止するための精製法として合理的と考えられる無水酢酸による再結晶方法や無水酢酸と酢酸等との混合液による再結晶方法では高純度化できない原因を調査した。 その結果、TMHQは無水酢酸中で容易に加溶媒分解して、溶媒洗浄や再結晶等の精製法で除去できない不純物として、以下の式(1)で示される構造のアセトキシフェニルトリメリット酸エステルを生成することを見出した。すなわち、従来合理的と考えられていた無水酢酸を主体とする溶媒を用いた再結晶方法では当該エステルが生成するため、高純度化を実現することは本質的に不可能であるとの新たな知見を得た。 なお、この不純物はLCMS分析結果に基づき同定した。 上記の不純物であるエステルを生成させないためには、無水酢酸を主体とする溶媒を反応後使用してはならないのであり、そうすると、反応により得られた濾過物を水洗してピリジン塩酸塩を溶解させる操作を避ける必要がある。したがって、反応溶媒には、TMHQを溶解させにくく、かつピリジン塩酸塩を溶解しやすいものが求められることになる。 この観点で検討したところ、無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させる際の溶媒にアセトニトリルを使用することで、上記課題を解決することができ、特別な精製操作(水洗、無水酢酸を主体とする溶媒による加熱)をすることなく、高純度TMHQが製造できることを見出した。 以上の知見に基づき完成された本発明は、無水トリメリット酸クロリドを塩基の存在下、ヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、反応溶媒にアセトニトリルを使用することを特徴とするp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法である。 上記の製造方法における好ましい態様は次のとおりである。 塩基がピリジンである。 無水トリメリット酸クロリドとヒドロキノンとの反応は、反応容器中の無水トリメリット酸クロリドのアセトニトリル溶液中に、系内温度を10〜40℃に維持しつつヒドロキノンのアセトニトリル溶液を滴下し、この滴下終了後、系内温度を15〜40℃に保持することで行われる。 本発明によれば、水洗操作を行うことなく副生する塩酸塩は除去されるため、加水分解物を元に戻すための処理操作(例えば無水酢酸を主成分とする溶媒中での加熱操作)を必要としない。このため、上記式(1)に示す精製で除去しにくい不純物が生成せず、工業的に有利にTMHQを製造することが実現される。 以下、本発明に係るp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)の製造方法について詳細に説明する。 本発明においては、無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させてTMHQを製造する方法において、反応溶媒としてアセトニトリルを使用する。 アセトニトリルの使用量は、無水トリメリット酸クロリドおよびヒドロキノンを溶解し得る量で有れば良い。無水トリメリット酸クロリドを溶解するのに使用するアセトニトリル量は、通常、無水トリメリット酸クロリド仕込み重量の1.0〜3.0倍、好ましくは1.5〜2.0倍である。また、ヒドロキノンを溶解するのに使用するアセトニトリル量は、通常、ヒドロキノン仕込み重量の7.0〜12.0倍、好ましくは9.0〜10.0倍である。 アセトニトリルの使用量がこの範囲よりも少ないと反応で副生する塩酸塩が溶解しにくくなるため製品品質が低下することが懸念される。逆にその使用量がこの範囲よりも多ければ経済的に不利となる。塩酸捕捉剤として使用する塩基は従来公知の塩基であって塩酸塩がアセトニトリルに溶解するものであれば良く、ピリジンが特に好ましい。塩基はヒドロキノンのアセトニトリル溶液中に混合すればよい。 なお、無水トリメリット酸クロリドのヒドロキノンに対する比率は、モル比として、2.0〜2.4とすることが好ましい。また、塩基の無水トリメリット酸クロリドに対する比率は、モル比として、1.0〜1.2とすることが好ましい。 溶解した無水トリメリット酸クロリドのアセトニトリル溶液中にヒドロキノンのアセトニトリル溶液を滴下することで反応を開始させるが、滴下時は系内の温度を10〜40℃、好ましくは15〜25℃にすることが好ましい。滴下時間に制約はなく、所定温度を保時できる滴下速度でよい。 滴下終了後は、系内の温度を15〜40℃、好ましくは20〜30℃で1〜10時間反応させる。 反応終了後、生成したTMHQの固形物を濾過して回収する。副生した塩酸塩、好ましい態様ではピリジン塩酸塩はアセトニトリルに溶解するため、反応液を濾過するのみでTMHQから除去される。 次に、この固形物を有機溶媒に加温して溶解する。有機溶媒としてはTMHQを可溶媒分解させないものであれば特に制限されず、DMFもしくはN,N−ジメチルアセトアミドまたはそれらの任意の混合液を用いることが好ましい。使用する有機溶媒量はTMHQ固形物の2.5〜5.0重量倍、好ましくは3.0〜4.0重量倍である。 ここで、一般的に、これらの有機溶媒は、工業レベルで入手可能なものの場合には、少量の水分を含有していることが多く、この水分によって少量の加水分解物が生成する可能性がある。しかしながら、少量の加水分解物であれば再結晶時に濾液に移って除去できるため製品品質には影響しない。むしろ、収率を高める観点のみから脱水品を使用すると、経済的に不利となる場合もある。したがって、工業レベルで入手される有機溶媒を使用しつつ、これらの有機溶媒中に脱水剤として無水酢酸を1重量%程度添加したものを使用することが好ましい。この程度であれば、上記式(1)に示される副生成物が生成しても、純度に与える影響は軽微であり、収率と純度とを高いレベルで両立することが実現される。 有機溶媒によるTMHQの溶解温度は60〜110℃、好ましくは70〜85℃である。温度が高い場合には着色が懸念される。一方、温度が低いと溶解しにくくなるため、良好な精製効果を得ることが困難となる。 有機溶媒にTMHQを溶解させたら、その溶液を冷却してTMHQを晶析させる。冷却する温度は−10〜30℃、好ましくは5〜25℃である。温度が低すぎると結晶の移送が困難となりハンドリング上好ましくない。温度が高すぎると製品収率が低下して経済的に不利である。 析出した固形物を濾過してTMHQを分離する。分離したTMHQの固形物は有機溶媒で洗浄する。この洗浄のための有機溶媒としては、脂肪族ケトン類、エーテル類、芳香族炭化水素類が使用される。例えば、脂肪族ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル等、芳香族炭化水素類としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。 この洗浄したTMHQを80℃で24時間程度減圧乾燥することで、高純度TMHQが製造される。 以下に実施例、比較例等によって本発明をより具体的に説明をするが、これらの例により本発明は何ら制限されるものではない。 なお、以下の実施例等において濃度は面積%を示し、収率はモル%を示す。また、分析は試料を無水メタノールに加温溶解し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって下記条件で行った。 カラム:ジーエルサイエンス(株)製 Intertsil ODS−80A 長さ250mm、内径4.2mm 移動相:アセトニトリル/0.1%リン酸水 (混合容積比1:1を開始から20分経過時に0:1とするグラジェント) 検出器:UV(254nm) (参考例) 還流冷却器、温度測定管および電磁攪拌機を備えた2Lのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、無水トリメリット酸300g(1.56mol)、トルエン550gおよびN,N−ジメチルホルムアミド0.5gを仕込んだ。内温を80℃に昇温したのち、塩化チオニル204.3g(1.71mol)を30分間かけて添加した。その後、この温度で9時間反応させた。反応後、残存する塩化チオニルおよび溶媒のトルエンをエバポレーターで留去し、純度95%の無水トリメリット酸クロライドを375g得た。 (実施例1) 参考例で得た無水トリメリット酸クロライド125gとアセトニトリル193g(無水トリメリット酸クロライドの1.5重量倍)とを還流冷却器、温度測定管および電磁攪拌機を備えた1Lのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下仕込み、溶解して内温を15℃に冷却した。ついで、ヒドロキノン29.9g(0.27mol)をアセトニトリル290g(ヒドロキノンの9.7重量倍)に溶解し、さらにピリジン45g(0.57mol)を添加した溶液を、滴下ロートにより内温を15℃に保ちながら、1時間かけて反応容器内のアセトニトリル溶液に滴下した。滴下終了後、内温15℃〜25℃で5時間攪拌して得られた反応液中の固体生成物を濾取し、この固形物を30gのアセトニトリルで洗浄して白色固体を得た。この白色固体をHPLCで分析した結果、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)は96.2%、ピリジン2.4%であった。 この白色固体を、無水酢酸3.1gを含有するDMF556gに加熱溶解(80℃)したのち再結晶し、析出した結晶を濾過して、アセトン200gで洗浄した。洗浄した結晶を5mmHgの減圧下、80℃で24時間乾燥し、純度99.8%、ピリジン0%、上記式(1)で示す不純物がHPLCレベルでは検出されない白色のTMHQ79gを得た。無水トリメリット酸基準の収率は66%であった。 (比較例1) 参考例で得た無水トリメリット酸クロライド125gとトルエン214gとを還流冷却器、温度測定管および電磁攪拌機を備えた1Lのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下仕込み、溶解して内温を80℃に昇温した。ついで、ヒドロキノン31.8g(0.29mol)をトルエン255gに溶解し、さらにピリジン45gを添加した溶液を、滴下ロートにより内温80℃を保ちながら2.5時間かけて反応容器内のトルエン溶液に滴下した。滴下終了後、内温110℃で2時間攪拌した。反応液は室温まで冷却して、析出した固形物を濾取した。この固形物は、TMHQを53.2%、ピリジンを38.7%含有していた。この固形物を水735gの中に入れ、0.5時間攪拌したのち濾別した。得られた固形物を再度水735gの中に入れ、同様に0.5時間攪拌したのち濾別した。この二度の水洗により得られた固形物を5mmHgの減圧下、80℃で16時間乾燥して、135gを得た。 2L反応容器にこの固形物および無水酢酸295gを入れ、還流下で2時間攪拌して溶解後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。その後、得られた結晶をDMF460gで加熱溶解(80℃)し、室温まで冷却して再結晶を行った。析出した結晶を濾別し、得られた結晶をトルエン200gで洗浄して80℃で24時間乾燥した。こうして、純度99.4%、ピリジン0%、上記式(1)で示す不純物0.4%を含有する、淡黄色味のある白色TMHQ57gを得た。無水トリメリット酸基準の収率は48%であった。 特許文献4を追試した比較例では、副生したピリジン塩酸塩を含有する固形物(ピリジン濃度で38.7%)を水洗して該塩酸塩を除いたため、この過程で生成した加水分解物を元に戻すために無水酢酸による加熱処理を行った。このため上記式(1)で示す不純物が生成し、精製後のTMHQにも残存した。 無水トリメリット酸クロリドを塩基の存在下、ヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、反応溶媒にアセトニトリルを使用することを特徴とするp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法。 前記塩基がピリジンである請求項1記載の製造方法。 無水トリメリット酸クロリドとヒドロキノンとの反応は、反応容器中の無水トリメリット酸クロリドのアセトニトリル溶液中に、系内温度を10〜40℃に維持しつつヒドロキノンのアセトニトリル溶液を滴下し、当該滴下終了後、系内温度を15〜40℃に保持することで行われる請求項1または2に記載の製造方法。 【課題】より経済的に効率よく、高純度のTMHQを製造する方法を提供する。【解決手段】無水トリメリット酸クロリドを塩基の存在下、ヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、反応溶媒にアセトニトリルを使用する。このため、副生する塩酸塩を除去するための水洗操作が不要となり、加水分解物を元に戻すための処理操作も不要となる。したがって、高純度化を阻害する不純物が生成しない。【選択図】なし


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特許公報(B2)_p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法
出願番号:2008161822
年次:2013
IPC分類:C07D 307/89


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行方 毅 伊藤 育夫 JP 5280115 特許公報(B2) 20130531 2008161822 20080620 p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法 エア・ウォーター株式会社 000126115 早川 裕司 100108833 大窪 克之 100135183 村雨 圭介 100162156 行方 毅 伊藤 育夫 20130904 C07D 307/89 20060101AFI20130815BHJP JPC07D307/89 Z C07D 307/89 CAPLUS/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平11−199578(JP,A) 特開昭51−54528(JP,A) 特開平4−29986(JP,A) 特開平10−70157(JP,A) 特開平11−263785(JP,A) 米国特許第4649189(US,A) 3 2010001250 20100107 8 20110513 清水 紀子 本発明は、無水トリメリット酸を酸クロリド化反応して得られる無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させて、ポリイミド樹脂等の原料として有用なp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を効率よく製造する方法に関する。 従来、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法として、ヒドロキノンを無水酢酸でジアセチル化したのちこれを無水トリメリット酸と250〜300℃で反応しエステル交換してp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下、「TMHQ」と略称することがある。)を製造する方法が提案されている(非特許文献1、特許文献1)。また、無水トリメリット酸および脂肪族ジオール類を210〜230℃で脱水エステル化して無水トリメリット酸エステル類を製造する方法も提案されている(特許文献2)。しかし熱的に安定でないジオール類をこのような高温にさらすのは得策ではなく、高純度のTMHQを製造する方法として工業的に採用するのは難しい。 一方、上記のような高温にさらすことなくトリメリット酸エステル無水物を製造する方法として、無水トリメリット酸クロリドとジオール類とを原料として脱塩酸する方法が提案されている。 例えば特許文献3には、無水トリメリット酸クロリドおよびビスフェノールAを原料として2,2−ビス(トリメリットキシフェニル)プロパンを製造する方法が開示されている。この方法では、溶媒としてテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略称する。)を用い、塩酸捕捉剤としてピリジンを添加して脱塩酸することで2,2−ビス(トリメリットキシフェニル)プロパンを合成し、反応後副生するピリジン塩酸塩を濾過して除去後、THFを留去して得られた生成物を無水酢酸で再結晶してTMHQを製造している。しかしながら、この方法で無水トリメリット酸クロリドとヒドロキノンを反応させてTMHQを製造すると、溶液中にはTMHQのみならず、ピリジンを含む物質も残留してしまう。このため、当該文献の実施例に記載されるように無水酢酸で再結晶する必要があるが、この方法では副生物は適切に除去されず、製品純度は高まらない。 また、特許文献4では無水トリメリット酸クロリドおよびヒドロキノンを原料としてTMHQを製造している。この方法では、溶媒としてトルエンを用い、塩酸捕捉剤としてピリジンを使用し還流下で反応後、濾過して固形物を分離し、水洗したのち乾燥して粗製物を得ている。ついでこの粗製物を無水酢酸で加熱処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略称する。)で再結晶してTMHQを製造している。しかしながら、この製造方法では、反応において副生するピリジン塩酸塩はTMHQとともに反応液中に析出するため、固形物を水洗してピリジン塩酸塩のみを除去する必要がある。このため、生成したTMHQの一部が加水分解してしまう。この加水分解物を元に戻すためには無水酢酸による加熱処理が必要となり、合理的な方法とは言いがたい。 特許文献5には、アセトニトリルを溶媒として、ピリジンを添加し、3,5,6−トリクロロ−4−クロロホルミルフタル酸無水物をヒドロキノンと反応させて3,5,6−トリクロロ−4−クロロホルミルフタル酸無水物ヒドロキノンを製造する方法が提案されている。この方法では、−18℃で反応を行わせ、生成物を濾過して分離し、クロロホルムで数回洗浄後乾燥して、光通信用モノマーとしての3,5,6−トリクロロ−4−クロロホルミルフタル酸無水物ヒドロキノンを製造している。しかし、当該文献は、この方法による生成物の純度が記載されていないため、生産性に優れた方法であるか否かは不明である。また、洗浄に環境負荷の大きなクロロホルムを使用すること、反応温度が−18℃であること等、実用的ではなく工業的に満足できる製法ではない。 ここで、TMHQ等の酸二無水物は、空気中の水分によって加水分解する場合があるため、加水分解を抑制すべく、あるいは加水分解物を元に戻すべく、無水酢酸で再結晶する方法や無水酢酸と酢酸等の混合液で再結晶する方法が提案されている(特許文献3、非特許文献2)。これらは、より合理的な方法ではあるが製造工程は煩雑で、且つ高純度品を製造することは難しい。特開平11−199578号公報特公昭52−46940号公報特許第2605453号公報特開平10−70157号公報特許第3490010号公報Journal of Polymer Science :Part A:Polymer Chemistry,Vol.37(1999)211-218Pure Appl.Chem.,A39(8)(2002)815-824 本発明の目的は、より経済的に効率よく、高純度のTMHQを製造する方法を提供することにある。 本発明者らは、無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、これまでに多く提案されている製造方法における煩雑な操作、すなわち副生するピリジン塩酸塩を水洗して除去する操作、および水洗のために生成する加水分解物の処理操作を必要としない簡便な方法を鋭意検討した。 また、TMHQは加水分解しやすいため、これを防止するための精製法として合理的と考えられる無水酢酸による再結晶方法や無水酢酸と酢酸等との混合液による再結晶方法では高純度化できない原因を調査した。 その結果、TMHQは無水酢酸中で容易に加溶媒分解して、溶媒洗浄や再結晶等の精製法で除去できない不純物として、以下の式(1)で示される構造のアセトキシフェニルトリメリット酸エステルを生成することを見出した。すなわち、従来合理的と考えられていた無水酢酸を主体とする溶媒を用いた再結晶方法では当該エステルが生成するため、高純度化を実現することは本質的に不可能であるとの新たな知見を得た。 なお、この不純物はLCMS分析結果に基づき同定した。 上記の不純物であるエステルを生成させないためには、無水酢酸を主体とする溶媒を反応後使用してはならないのであり、そうすると、反応により得られた濾過物を水洗してピリジン塩酸塩を溶解させる操作を避ける必要がある。したがって、反応溶媒には、TMHQを溶解させにくく、かつピリジン塩酸塩を溶解しやすいものが求められることになる。 この観点で検討したところ、無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させる際の溶媒にアセトニトリルを使用することで、上記課題を解決することができ、特別な精製操作(水洗、無水酢酸を主体とする溶媒による加熱)をすることなく、高純度TMHQが製造できることを見出した。 以上の知見に基づき完成された本発明は、無水トリメリット酸クロリドを塩基の存在下、ヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、反応溶媒にアセトニトリルを使用することを特徴とするp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法である。 上記の製造方法における好ましい態様は次のとおりである。 塩基がピリジンである。 無水トリメリット酸クロリドとヒドロキノンとの反応は、反応容器中の無水トリメリット酸クロリドのアセトニトリル溶液中に、系内温度を10〜40℃に維持しつつヒドロキノンのアセトニトリル溶液を滴下し、この滴下終了後、系内温度を15〜40℃に保持することで行われる。 本発明によれば、水洗操作を行うことなく副生する塩酸塩は除去されるため、加水分解物を元に戻すための処理操作(例えば無水酢酸を主成分とする溶媒中での加熱操作)を必要としない。このため、上記式(1)に示す精製で除去しにくい不純物が生成せず、工業的に有利にTMHQを製造することが実現される。 以下、本発明に係るp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)の製造方法について詳細に説明する。 本発明においては、無水トリメリット酸クロリドをヒドロキノンと反応させてTMHQを製造する方法において、反応溶媒としてアセトニトリルを使用する。 アセトニトリルの使用量は、無水トリメリット酸クロリドおよびヒドロキノンを溶解し得る量で有れば良い。無水トリメリット酸クロリドを溶解するのに使用するアセトニトリル量は、通常、無水トリメリット酸クロリド仕込み重量の1.0〜3.0倍、好ましくは1.5〜2.0倍である。また、ヒドロキノンを溶解するのに使用するアセトニトリル量は、通常、ヒドロキノン仕込み重量の7.0〜12.0倍、好ましくは9.0〜10.0倍である。 アセトニトリルの使用量がこの範囲よりも少ないと反応で副生する塩酸塩が溶解しにくくなるため製品品質が低下することが懸念される。逆にその使用量がこの範囲よりも多ければ経済的に不利となる。塩酸捕捉剤として使用する塩基は従来公知の塩基であって塩酸塩がアセトニトリルに溶解するものであれば良く、ピリジンが特に好ましい。塩基はヒドロキノンのアセトニトリル溶液中に混合すればよい。 なお、無水トリメリット酸クロリドのヒドロキノンに対する比率は、モル比として、2.0〜2.4とすることが好ましい。また、塩基の無水トリメリット酸クロリドに対する比率は、モル比として、1.0〜1.2とすることが好ましい。 溶解した無水トリメリット酸クロリドのアセトニトリル溶液中にヒドロキノンのアセトニトリル溶液を滴下することで反応を開始させるが、滴下時は系内の温度を10〜40℃、好ましくは15〜25℃にすることが好ましい。滴下時間に制約はなく、所定温度を保時できる滴下速度でよい。 滴下終了後は、系内の温度を15〜40℃、好ましくは20〜30℃で1〜10時間反応させる。 反応終了後、生成したTMHQの固形物を濾過して回収する。副生した塩酸塩、好ましい態様ではピリジン塩酸塩はアセトニトリルに溶解するため、反応液を濾過するのみでTMHQから除去される。 次に、この固形物を有機溶媒に加温して溶解する。有機溶媒としてはTMHQを可溶媒分解させないものであれば特に制限されず、DMFもしくはN,N−ジメチルアセトアミドまたはそれらの任意の混合液を用いることが好ましい。使用する有機溶媒量はTMHQ固形物の2.5〜5.0重量倍、好ましくは3.0〜4.0重量倍である。 ここで、一般的に、これらの有機溶媒は、工業レベルで入手可能なものの場合には、少量の水分を含有していることが多く、この水分によって少量の加水分解物が生成する可能性がある。しかしながら、少量の加水分解物であれば再結晶時に濾液に移って除去できるため製品品質には影響しない。むしろ、収率を高める観点のみから脱水品を使用すると、経済的に不利となる場合もある。したがって、工業レベルで入手される有機溶媒を使用しつつ、これらの有機溶媒中に脱水剤として無水酢酸を1重量%程度添加したものを使用することが好ましい。この程度であれば、上記式(1)に示される副生成物が生成しても、純度に与える影響は軽微であり、収率と純度とを高いレベルで両立することが実現される。 有機溶媒によるTMHQの溶解温度は60〜110℃、好ましくは70〜85℃である。温度が高い場合には着色が懸念される。一方、温度が低いと溶解しにくくなるため、良好な精製効果を得ることが困難となる。 有機溶媒にTMHQを溶解させたら、その溶液を冷却してTMHQを晶析させる。冷却する温度は−10〜30℃、好ましくは5〜25℃である。温度が低すぎると結晶の移送が困難となりハンドリング上好ましくない。温度が高すぎると製品収率が低下して経済的に不利である。 析出した固形物を濾過してTMHQを分離する。分離したTMHQの固形物は有機溶媒で洗浄する。この洗浄のための有機溶媒としては、脂肪族ケトン類、エーテル類、芳香族炭化水素類が使用される。例えば、脂肪族ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル等、芳香族炭化水素類としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。 この洗浄したTMHQを80℃で24時間程度減圧乾燥することで、高純度TMHQが製造される。 以下に実施例、比較例等によって本発明をより具体的に説明をするが、これらの例により本発明は何ら制限されるものではない。 なお、以下の実施例等において濃度は面積%を示し、収率はモル%を示す。また、分析は試料を無水メタノールに加温溶解し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって下記条件で行った。 カラム:ジーエルサイエンス(株)製 Intertsil ODS−80A 長さ250mm、内径4.2mm 移動相:アセトニトリル/0.1%リン酸水 (混合容積比1:1を開始から20分経過時に0:1とするグラジェント) 検出器:UV(254nm) (参考例) 還流冷却器、温度測定管および電磁攪拌機を備えた2Lのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、無水トリメリット酸300g(1.56mol)、トルエン550gおよびN,N−ジメチルホルムアミド0.5gを仕込んだ。内温を80℃に昇温したのち、塩化チオニル204.3g(1.71mol)を30分間かけて添加した。その後、この温度で9時間反応させた。反応後、残存する塩化チオニルおよび溶媒のトルエンをエバポレーターで留去し、純度95%の無水トリメリット酸クロライドを375g得た。 (実施例1) 参考例で得た無水トリメリット酸クロライド125gとアセトニトリル193g(無水トリメリット酸クロライドの1.5重量倍)とを還流冷却器、温度測定管および電磁攪拌機を備えた1Lのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下仕込み、溶解して内温を15℃に冷却した。ついで、ヒドロキノン29.9g(0.27mol)をアセトニトリル290g(ヒドロキノンの9.7重量倍)に溶解し、さらにピリジン45g(0.57mol)を添加した溶液を、滴下ロートにより内温を15℃に保ちながら、1時間かけて反応容器内のアセトニトリル溶液に滴下した。滴下終了後、内温15℃〜25℃で5時間攪拌して得られた反応液中の固体生成物を濾取し、この固形物を30gのアセトニトリルで洗浄して白色固体を得た。この白色固体をHPLCで分析した結果、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)は96.2%、ピリジン2.4%であった。 この白色固体を、無水酢酸3.1gを含有するDMF556gに加熱溶解(80℃)したのち再結晶し、析出した結晶を濾過して、アセトン200gで洗浄した。洗浄した結晶を5mmHgの減圧下、80℃で24時間乾燥し、純度99.8%、ピリジン0%、上記式(1)で示す不純物がHPLCレベルでは検出されない白色のTMHQ79gを得た。無水トリメリット酸基準の収率は66%であった。 (比較例1) 参考例で得た無水トリメリット酸クロライド125gとトルエン214gとを還流冷却器、温度測定管および電磁攪拌機を備えた1Lのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下仕込み、溶解して内温を80℃に昇温した。ついで、ヒドロキノン31.8g(0.29mol)をトルエン255gに溶解し、さらにピリジン45gを添加した溶液を、滴下ロートにより内温80℃を保ちながら2.5時間かけて反応容器内のトルエン溶液に滴下した。滴下終了後、内温110℃で2時間攪拌した。反応液は室温まで冷却して、析出した固形物を濾取した。この固形物は、TMHQを53.2%、ピリジンを38.7%含有していた。この固形物を水735gの中に入れ、0.5時間攪拌したのち濾別した。得られた固形物を再度水735gの中に入れ、同様に0.5時間攪拌したのち濾別した。この二度の水洗により得られた固形物を5mmHgの減圧下、80℃で16時間乾燥して、135gを得た。 2L反応容器にこの固形物および無水酢酸295gを入れ、還流下で2時間攪拌して溶解後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。その後、得られた結晶をDMF460gで加熱溶解(80℃)し、室温まで冷却して再結晶を行った。析出した結晶を濾別し、得られた結晶をトルエン200gで洗浄して80℃で24時間乾燥した。こうして、純度99.4%、ピリジン0%、上記式(1)で示す不純物0.4%を含有する、淡黄色味のある白色TMHQ57gを得た。無水トリメリット酸基準の収率は48%であった。 特許文献4を追試した比較例では、副生したピリジン塩酸塩を含有する固形物(ピリジン濃度で38.7%)を水洗して該塩酸塩を除いたため、この過程で生成した加水分解物を元に戻すために無水酢酸による加熱処理を行った。このため上記式(1)で示す不純物が生成し、精製後のTMHQにも残存した。 無水トリメリット酸クロリドを塩基の存在下、ヒドロキノンと反応させてp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を製造する方法において、反応溶媒にアセトニトリルを使用することを特徴とするp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の製造方法。 前記塩基がピリジンである請求項1記載の製造方法。 無水トリメリット酸クロリドとヒドロキノンとの反応は、反応容器中の無水トリメリット酸クロリドのアセトニトリル溶液中に、系内温度を10〜40℃に維持しつつヒドロキノンのアセトニトリル溶液を滴下し、当該滴下終了後、系内温度を15〜40℃に保持することで行われる請求項1または2に記載の製造方法。


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