タイトル: | 公開特許公報(A)_ユーカリ抽出物の調製方法 |
出願番号: | 2008157919 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A23L 1/221,A61K 36/18,A61K 31/11,A61P 31/12,A61P 43/00,A61P 1/02,A23L 1/30,A23G 3/34 |
前田 裕一 成瀬 敦 菊池 紗奈恵 大澤 謙二 JP 2009296988 公開特許公報(A) 20091224 2008157919 20080617 ユーカリ抽出物の調製方法 株式会社ロッテ 307013857 浜田 治雄 100064012 前田 裕一 成瀬 敦 菊池 紗奈恵 大澤 謙二 A23L 1/221 20060101AFI20091127BHJP A61K 36/18 20060101ALI20091127BHJP A61K 31/11 20060101ALN20091127BHJP A61P 31/12 20060101ALN20091127BHJP A61P 43/00 20060101ALN20091127BHJP A61P 1/02 20060101ALN20091127BHJP A23L 1/30 20060101ALN20091127BHJP A23G 3/34 20060101ALN20091127BHJP JPA23L1/221 ZA61K35/78 CA61K31/11A61P31/12A61P43/00 111A61P1/02A23L1/30 BA23G3/00 101 4 OL 13 4B014 4B018 4B047 4C088 4C206 4B014GB06 4B014GB07 4B014GB13 4B014GK12 4B018MD61 4B018ME09 4B018MF01 4B047LB08 4B047LF09 4B047LG06 4B047LG12 4B047LP01 4C088AB12 4C088AC05 4C088BA08 4C088BA32 4C088CA05 4C088CA08 4C088MA57 4C088ZA67 4C088ZB33 4C206CB08 4C206KA01 4C206KA05 4C206ZA67 4C206ZB33 4C206ZC20 4C206ZC55 本発明は、ユーカリ抽出物の調製方法に関するものであり、詳しくは、ユーカリ属植物より精油成分を除去し、その残渣を水または有機溶媒水溶液で抽出して得られた抽出残渣をさらに有機溶媒水溶液または有機溶媒で抽出することにより、高収率のマクロカルパール類を得る、新規なユーカリ抽出物の調製方法に関する。 ユーカリ属植物は、オーストラリア,ニュージーランド原産の高木で、日本でも各地で栽培されている。葉から得られる精油(ユーカリ油)は清涼感があり、薬用として鼻カタル,気管支カタルに用いられるほか、パップ剤,歯磨き,虫避けなどに用いられている。また、本植物は生育速度が極めて早いことが特徴であり、物質生産には適している。従来、ユーカリの抽出物より有効な生理活性物質を単離し、その部分化学構造を決定し、マクロカルパール類と命名し、ユーカリ属植物より採取することを特徴とする新規なマクロカルパール類およびその製造方法が開示されている(特許文献1)。また、う蝕、歯周病両者の予防、治療に有効な成分を抽出するにあたり、ユーカリ属植物から精油成分(ユーカリ油)を除去した残渣を極性溶媒で抽出した抽出物およびこれに含まれるフロログルシノール誘導体がう蝕、歯周病の各原因菌に対して非常に強い抗菌活性を有すること、さらには歯周病原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスの産生するコラゲナーゼ阻害効果をも併せ持つことが明らかにされている(特許文献2)。 このようにユーカリ抽出物は抗菌効果や、抗炎症効果の他にもセラミド産生促進効果、髪質改善剤等の多様な効果を有する一方で、ユーカリ抽出物は特有の臭いを有し、その臭いは抽出物の配合量が微量でも臭いを感じることが出来る位強いものであることから、化粧品や医薬品、医薬部外品等の用途で使用する際には効果の面で十分な量を配合することができなかった問題に対しても種々の取り組みがなされてきた。例えば、ユーカリ抽出物の製造方法に関して、ユーカリ特有の臭いの原因物質である、1,8−シネオール(1,8−cineole)とマクロカルパールAの比をコントロールすることにより臭いを減少させる製造方法が開示されており(特許文献3)、またユーカリ属植物を極性溶媒により抽出した抽出物溶液を、吸着剤を添加して色および臭いを除去する方法(特許文献4)が開示されている。一方、植物原料の有効成分を高収率にするために、ユーカリ属植物原料を低温で水抽出した残渣をアルカリ液で再抽出した抽出液と先の低温水抽出液に吸着剤を添加して処理した液とを混合してポリフェノール類を製造する方法(特許文献5)が開示されている。 このようにユーカリ抽出物を調製する方法は各種開示されているが、有効成分として高濃度のマクロカルパール類を得るための簡便な工程且つ高収率に得ることは難しく、また、得られた抽出物に対しても呈味や外観、物性面において不十分で汎用性に乏しいものであった。特許第3365782号公報特許第2804232号公報特開2006−036672号公報特開2001−348307号公報特開2000−256345号公報 本発明は飲食品に対する用途に適した、ユーカリ特有の呈味(苦味、渋み)を減少させつつ生理活性物質として有効な成分を高純度且つ高収率で得られるユーカリ抽出物の調製方法を提供するものである。 上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ユーカリ属植物より精油成分を除去し、その残渣を水または有機溶媒水溶液で抽出して得られた抽出残渣をさらに有機溶媒水溶液または有機溶媒で抽出することにより、高収率のマクロカルパール類を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち本発明は、主に以下の構成を有する。(1)ユーカリ属植物より精油成分を除去し、その残渣を水または有機溶媒水溶液で抽出する第一工程、第一工程で得られた抽出残渣を有機溶媒水溶液または有機溶媒で抽出する第二工程からなることを特徴とするユーカリ抽出物の調製方法。(2)上記(1)に記載の第一工程で使用する水または有機溶媒水溶液は30重量%濃度以下の溶液であり、第二工程で使用する有機溶媒水溶液または有機溶媒は30重量%濃度を超える有機溶媒溶液であることを特徴とするユーカリ抽出物の調製方法。(3)上記(1)または(2)で得られた抽出物は、マクロカルパールA、BおよびCを有効成分として含有することを特徴とするユーカリ抽出物の調製方法。(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法で得られたユーカリ抽出物を配合することを特徴とする飲食品。 本発明により、ユーカリ中に含まれる生理活性物質であるマクロカルパールA、BおよびCを従来の抽出方法と比較して高含有量にて調製できるため、製品に応用する際にユーカリ抽出物の添加量を減らすことが可能となり、生産率を向上させることができる。また、マクロカルパール類以外の成分が少なくなることから呈味や外観、物性面で非常に良好な抽出物を調製することが可能となる。更に、本発明の調製方法は溶剤抽出のみであり、カラムなど特別な分離精製手段を使用する必要がなく、簡便で高純度に調製できるため時間的、コスト的に非常に有利となる。 以下に、本発明の調製方法について詳細に説明する。 本発明に用いる、ユーカリ属植物の原料としては、フトモモ科ユーカリ属植物であれば特に限定されないが、単独或いは2種以上を組み合わせて用いられる。抽出する植物体の部位としては、特に限定されないが、採取が容易な枝葉が好ましく、特に葉が好ましい。また、これらは新鮮材料でも乾燥品でもよく、磨砕などの処理を行ってもよい。 先ず、ユーカリ属植物、例えばユーカリ葉を粉砕機等の適当な粉砕手段で粉砕し、好ましくは通常精油抽出で使用する水蒸気蒸留装置を用いて精油成分を除去する。この精油成分の除去はn−ヘキサン、石油エーテル等の低極性溶媒を用いて常温で抽出することもできる。 このようにして得られた脱精油済みの精油抽出残渣に対して、水または有機溶媒水溶液を第一抽出溶媒として適用して第一の抽出工程を実施する。この第一抽出溶媒として、水と共に用いられる有機溶媒としては、例えば、石油エーテル、n−ヘキサン、トルエン、ジクロロエタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられ、炭素数1〜5の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等)が好ましい。また使用する水または有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度は、30重量%以下の濃度であり、好ましくは0〜20重量%の低濃度である。また、抽出条件としては、脱精油抽出残渣に対して2〜100倍量の有機溶媒水溶液を、20〜100℃で10分〜24時間、浸漬あるいは加熱還流することができ、好ましくは加熱還流する。 次に、これを吸引ろ過等により固液分離を行い、ろ液を取り除いて得られた抽出残渣に対して、さらに第二抽出溶媒として有機溶媒水溶液または有機溶媒を適用して第二の抽出工程を実施する。この第二抽出溶媒としては、第一抽出溶媒に使用される有機溶媒水溶液と同様な有機溶媒が使用できる。ただし、この第二工程の有機溶媒水溶液または有機溶媒の濃度は30重量%を超える濃度であり、好ましくは40〜100重量%の高濃度であり、より最適には50〜80重量%濃度である。 また、抽出条件としては、第一抽出工程にて用いた条件と同一であり、第一抽出物残渣に対して2〜100倍量の有機溶媒水溶液または有機溶媒を、20〜100℃で10分〜24時間、浸漬あるいは加熱還流することができ、好ましくは加熱還流する。 得られた抽出液を吸引ろ過等により再度固液分離を行い、有機溶媒を除去した後凍結乾燥等を行うことにより目的の抽出物を得る。なお、二回の抽出工程における抽出温度は20℃を下回るとマクロカルパール類が十分に抽出されず収率が悪くなるので好ましくない。同様に、第一抽出溶媒の濃度を30重量%を超える高濃度にすると、マクロカルパール類以外の不純物が混じることから精製の目的から好ましくなく、同様に、第二抽出溶媒の濃度を30重量%以下の低濃度にすると、マクロカルパール類の収率が低下するため好ましくない。 上記工程によりユーカリ葉から生理活性物質であるマクロカルパール類を高収率で得ることができる。 得られるマクロカルパール類の具体例としては、次の構造式のものが挙げられる。 このマクロカルパールA、BおよびCは、抗ウイルス作用、HIV逆転写酵素阻害作用の他に、抗う蝕、歯周病効果についても有効であることは公知である。本発明の抽出物の調製方法を用いることにより、マクロカルパールA、BおよびCは従来の抽出方法、たとえば60重量%エタノール抽出による一回の有機溶媒抽出方法と比較しておよそ3〜5重量%と倍以上の高濃度で得られる。 本発明の調製方法で得られた高収率で有効成分を含む抽出物の用途については種々考えられるが、香り、呈味性に優れ、安全性が高いことからチューインガム、キャンディ、錠菓、含そう剤、練り歯磨等の食品および衛生用品に配合する等の日常的な利用が可能である。本発明で得られた抽出物を食品または衛生用品に配合する場合、0.001〜10重量%の割合になるように添加するのが好適である。 以下に比較例、実施例および試験例、応用例を挙げて説明するが、これらの例は本発明の範囲を制限するものではない。<比較例> ユーカリ葉は水蒸気蒸留により脱精油後、乾燥させた葉を粉砕し、乾燥葉粉末10gに対して水あるいは10〜100重量%エタノール水溶液を100ml添加し、60〜90℃で約1時間還流しながら抽出した。得られた抽出液をろ別し、抽出液の有機溶剤を除去した後に凍結乾燥することにより、抽出物を調製した。抽出物を溶解させて、以下のHPLC条件により、定量分析を行った。HPLC分析条件:I.マクロカルパールA、B カラム:Cadenza CD−C18 (4.6×250mm,3μm,インタクト社) 移動相:A 0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液 B 0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液 A:B = 75:25 流速:1.0 ml/min カラム温度:40℃ 検出器:UV(275nm) 注入量:20μlII.マクロカルパールC 移動相:A 0.5%(v/v)酢酸メタノール溶液 B 0.5%(v/v)酢酸水溶液 A:B = 88:12 その他条件はIと同じ 比較例の調製方法で抽出する際に、有機溶媒水溶液の濃度を変化させたユーカリ抽出物1〜9におけるマクロカルパール類の含量の比較結果を以下の表1に示す。 表1の結果から、30重量%以下のエタノール濃度で抽出してもユーカリ葉にほとんどのマクロカルパールA,BおよびCが残存していることが確認された。<実施例1> ユーカリ葉は水蒸気蒸留により脱精油後、乾燥させた葉を粉砕し、乾燥葉粉末10gに対して水あるいは30重量%エタノール水溶液(第一抽出溶媒)を100ml添加し、70〜90℃で約1時間還流しながら抽出した。その後、ろ別して抽出液を取り除き、得られた抽出残渣に対してさらに、40〜100重量%エタノール水溶液またはエタノール(第二抽出溶媒)を100ml添加し、70〜90℃で約1時間還流しながら抽出した。抽出液をろ別して、有機溶剤を除去した後に凍結乾燥することにより、抽出物を調製した。抽出物を溶解させて、先に示したHPLC条件により、定量分析を行った。 実施例1の調製方法で抽出する際に、有機溶媒水溶液の濃度を変化させたユーカリ抽出物10〜18におけるマクロカルパール類の含量の比較結果を以下の表2に示す。 表2から、第一抽出溶媒において0〜30重量%の水またはエタノール水溶液で抽出した後の残渣に対して、第二抽出溶媒で50〜100重量%のエタノール水溶液あるいはエタノールを添加して、さらに抽出することにより調製したユーカリ抽出物に、マクロカルパールA,BおよびCが多く含有していることが確認できた。<試験例> 比較例及び実施例1で調製した各抽出物を用いてガム及びキャンディの試作を行い、加工特性及び呈味の評価を行った。その結果を以下の表3に示す。ユーカリ抽出物については口腔内で抗菌活性を示すことが確認されている濃度の0.2重量%を目安としてガムに配合した。1.ガム試作 キシリトール 45重量% マルチトール 33 ガムベース 14 香料 1 各抽出物 0.2 その他 残量 合計 100重量%2.キャンディ試作 砂糖 50重量% 水飴 33 クエン酸 14 香料 1 各抽出物 0.2 水 残量 合計 100重量% ガムやキャンディ、錠菓等大きさが限られている食品形態の場合、効果成分がより高濃度であることが非常に有用である。 表3から、実施例1における第一抽出溶媒において0〜30重量%の水またはエタノール水溶液で抽出した残渣を、さらに第二抽出溶媒において50〜80重量%エタノール水溶液で調製した抽出物がユーカリ抽出物中のマクロカルパール量が多く含まれ、且つユーカリ特有の呈味(苦味、渋み)を抑えることができ、食品、特にガムやキャンディ、錠菓への加工特性、呈味の面から最適であると推測された。<応用例> 実施例1の方法により調製したユーカリ抽出物(抽出物11、13、16、17)を用いて、次の処方によりガム、キャンディ、錠菓を製造した。 ガム1の処方 キシリトール 45重量% マルチトール 33 ガムベース 14 香料 1 抽出物11 0.2 その他 残量 合計 100重量% ガム2の処方 キシリトール 45重量% マルチトール 33 ガムベース 14 香料 1 抽出物13 0.3 その他 残量 合計 100重量% キャンディの処方 砂糖 50重量% 水飴 33 クエン酸 14 香料 1 抽出物16 0.5 水 残量 合計 100重量% 錠菓の処方 砂糖 76.1重量% グルコース 19.0 ショ糖脂肪酸エステル 0.2 香料 0.2 抽出物17 0.5 水 残量 合計 100重量% 本発明により、ユーカリ抽出物は生理活性物質のマクロカルパール類を従来方法より高含有量で調製でき、且つユーカリ特有の呈味が抑制されるため、特に規格に制限のある飲食品に配合するのに有効である。 ユーカリ属植物より精油成分を除去し、その残渣を水または有機溶媒水溶液で抽出する第一工程、第一工程で得られた抽出残渣を有機溶媒水溶液または有機溶媒で抽出する第二工程からなることを特徴とするユーカリ抽出物の調製方法。 請求項1に記載の第一工程で使用する水または有機溶媒水溶液は30重量%濃度以下の溶液であり、第二工程で使用する有機溶媒水溶液または有機溶媒は30重量%濃度を超える溶液であることを特徴とするユーカリ抽出物の調製方法。 請求項1または2で得られた抽出物は、マクロカルパールA、BおよびCを有効成分として含有することを特徴とするユーカリ抽出物の調製方法。 請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で得られたユーカリ抽出物を配合することを特徴とする飲食品。 【課題】ユーカリ特有の臭いを減少させつつ生理活性物質として有効な成分を高純度且つ高収率で得られるユーカリ抽出物の調製方法を提供する。【解決手段】ユーカリ属植物より精油成分を除去し、その残渣を水または有機溶媒水溶液で抽出して得られた抽出残渣をさらに有機溶媒水溶液または有機溶媒で抽出することにより、ユーカリ中に含まれる生理活性物質であるマクロカルパールA、B及びCを従来の抽出方法よりも高含有量で調製し、呈味や外観、物性面で良好な抽出物を調製する。【選択図】なし