タイトル: | 公開特許公報(A)_モノクローナル抗体、ハイブリドーマ、免疫原の製造方法 |
出願番号: | 2008118237 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07K 16/18,C12N 5/10,C12P 21/06,C12P 21/08,A61K 39/395,A61P 43/00,A61P 29/00,A61P 37/06,A61P 31/12,A61P 31/22,A61P 35/00,A61P 35/04 |
菅原 一幸 山田 修平 JP 2009263318 公開特許公報(A) 20091112 2008118237 20080430 モノクローナル抗体、ハイブリドーマ、免疫原の製造方法 国立大学法人 北海道大学 504173471 辻丸 光一郎 100115255 中山 ゆみ 100129137 吉田 玲子 100146064 伊佐治 創 100154081 菅原 一幸 山田 修平 C07K 16/18 20060101AFI20091016BHJP C12N 5/10 20060101ALI20091016BHJP C12P 21/06 20060101ALI20091016BHJP C12P 21/08 20060101ALN20091016BHJP A61K 39/395 20060101ALN20091016BHJP A61P 43/00 20060101ALN20091016BHJP A61P 29/00 20060101ALN20091016BHJP A61P 37/06 20060101ALN20091016BHJP A61P 31/12 20060101ALN20091016BHJP A61P 31/22 20060101ALN20091016BHJP A61P 35/00 20060101ALN20091016BHJP A61P 35/04 20060101ALN20091016BHJP JPC07K16/18C12N5/00 BC12P21/06C12P21/08A61K39/395 NA61P43/00 105A61P29/00A61P37/06A61P43/00 101A61P43/00 111A61P31/12A61P31/22A61P35/00A61P35/04 10 OL 31 4B064 4B065 4C085 4H045 4B064AG27 4B064CA20 4B064DA01 4B064DA13 4B065AA90X 4B065AB02 4B065BA08 4B065CA25 4B065CA44 4B065CA46 4C085AA14 4C085BB12 4C085CC23 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045DA76 4H045EA20 4H045EA50 4H045FA72 4H045FA74 本発明は、モノクローナル抗体、ハイブリドーマ、および免疫原の製造方法に関する。 グリコサミノグリカン(GAG)などの糖鎖は、生体内において、皮膚、結合組織、脳などの様々な組織あるいは器官内に存在する重要な物質である。例えば、コンドロイチン硫酸(CS)、デルマタン硫酸(DS)、ヘパラン硫酸(HS)、ヘパリン(Hep)などのGAGは、細胞増殖、分化、個体発生、組織の形態形成などに係わり、生体に必須の機能性分子である(非特許文献1〜2等)。これら糖鎖は、通常、いわゆる糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの形態で生体内に存在する。糖タンパク質は、前記糖鎖と、コアタンパク質と呼ばれるタンパク質と、結合領域とを含み、前記糖鎖とコアタンパク質とが結合領域を介して結合された構造をしている(非特許文献3等)。 糖タンパク質、特にプロテオグリカンは、前述のとおり、生体組織もしくは器官の形成物質として、または生物活性物質として、重要な役割を果たしている。このために、研究用ツールとして、あるいは医薬等への応用を目的として、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンを認識する抗体が種々開発されている(非特許文献4、生化学工業株式会社カタログ等)。しかしながら、糖タンパク質およびプロテオグリカンの生物活性等についてはいまだ不明な点が多く、基礎医学、応用医学、創薬等の各分野において、さらなる研究が要求されている。Esko, J. D., and Selleck, S. B. (2002) Order out of chaos: assembly of ligand binding sites in heparan sulfate. Annu. Rev. Biochem., 71, 435-471.Sugahara, K., Mikami, T., Uyama, U., Mizuguchi, S., Nomura, K., Kitagawa, H. (2003) Recent advances in the structural biology of chondroitin sulfate and dermatan sulfate. Curr. Opin. Struct. Biol., 13, 612-620.「コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸による神経突起形成の調節」(「実験医学」Vol.25、No.7(増刊)第990〜997頁、2007年発行、水元秀二、菅原一幸)Sugahara, K., Mikami, T. (2007) Chondroitin/dermatan sulfate in the central nervous system. Curr. Opin. Struct. Biol., 17, 536-545. 前述のように、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンは、結合領域を含み、この結合領域により糖鎖とコアタンパク質が結合されていることが特徴である。したがって、この結合領域を特異的に認識する抗体を用いれば、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの構造、生物活性等の研究のために、または、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの有する生物活性に関連する用途への応用のために有用となることが考えられる。 しかし、従来、糖タンパク質またはプロテオグリカンの結合領域を特異的に認識する(結合領域に対し特異的に反応する)抗体は存在しなかった。例えば、非特許文献4に記載されている抗体は、コンドロイチン硫酸の糖鎖部分における繰り返し二糖領域を認識する抗体であり、結合領域を特異的に認識する抗体ではない。 そこで、本発明は、糖タンパク質の結合領域を特異的に認識する抗体の提供を目的とする。 前記課題を解決するために、本発明のモノクローナル抗体は、糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合領域に対し特異的に反応するモノクローナル抗体である。 また、本発明は、前記本発明の抗体を産生するハイブリドーマをも提供する。さらに、本発明は、糖タンパク質を原料として免疫原を製造する方法であって、前記糖タンパク質をプロテアーゼで消化し、アルカリ加水分解処理をしないことを特徴とする製造方法をも提供する。 本発明のモノクローナル抗体は、前述のとおり、糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合領域に対し特異的に反応するモノクローナル抗体である。すなわち、本発明のモノクローナル抗体によれば、糖タンパク質の結合領域を特異的に認識することができる。このため、本発明のモノクローナル抗体は、基礎研究および応用の両面において、種々の製品、薬学的組成物、医薬等のあらゆる用途に用いることが可能である。 本発明によれば、例えば、前記本発明の製造方法により製造される免疫原を提供することができる。さらに、本発明は、免疫原により動物を免疫する方法であって、前記免疫原が前記本発明の製造方法により製造される免疫原(以下、「本発明の免疫原」ということがある)であることを特徴とする免疫方法をも提供することができる。 さらに、本発明によれば、例えば、 免疫原により動物を免疫する免疫工程と、 免疫した前記動物の抗体産生細胞またはそのハイブリドーマからモノクローナル抗体を抽出する工程とを含む、モノクローナル抗体の製造方法であって、 前記免疫原が前記本発明の免疫原であることを特徴とする製造方法を提供することができる。 さらに、本発明によれば、例えば、 免疫原により動物を免疫する免疫工程と、 免疫した前記動物から抗体産生細胞を採取する抗体産生細胞採取工程とを含む、抗体産生細胞の製造方法であって、 前記免疫原が前記本発明の免疫原であることを特徴とする製造方法を提供することができる。 さらに、本発明によれば、例えば、 免疫原により動物を免疫する免疫工程と、 免疫した前記動物から抗体産生細胞を採取する抗体産生細胞採取工程と、 前記抗体産生細胞を他の細胞と融合させる融合工程とを含む、ハイブリドーマの製造方法であって、 前記免疫原が前記本発明の免疫原であることを特徴とする製造方法を提供することができる。 さらに、本発明によれば、例えば、前記本発明のモノクローナル抗体、または前記本発明の製造方法により製造されるモノクローナル抗体を含み、糖タンパク質結合領域認識試薬、腫瘍マーカー認識プローブ、糖鎖認識プローブ、糖鎖マーカー認識プローブ、神経突起伸長阻害剤、ニューロン染色剤、腫瘍細胞染色剤、または免疫組織染色剤として使用される製品を提供することができる。 さらに、本発明によれば、例えば、前記本発明のモノクローナル抗体、または前記本発明の製造方法により製造されるモノクローナル抗体を含み、遺伝病、炎症、自己免疫疾患、神経細胞接着、神経突起伸長、増殖因子結合、ウィルス感染阻害、ヘルペスウィルス感染阻害、デングウィルス感染阻害、細胞増殖阻害、細胞死誘導、腫瘍細胞増殖阻害、腫瘍細胞浸潤阻害、腫瘍細胞転移阻害、腫瘍細胞遊走阻害、および腫瘍細胞死誘導からなる群から選択される少なくとも一つに関する用途に使用される薬学的組成物を提供することができる。 さらに、本発明によれば、例えば、前記本発明のモノクローナル抗体、または前記本発明の製造方法により製造されるモノクローナル抗体を含み、遺伝病、炎症、自己免疫疾患、神経細胞接着、神経突起伸長、増殖因子結合、ウィルス感染阻害、ヘルペスウィルス感染阻害、デングウィルス感染阻害、および細胞の増殖からなる群から選択される少なくとも一つに関する疾患の治療、診断、症状の軽減および予防からなる群から選択される少なくとも一つの用途に使用される医薬を提供することができる。 以下、本発明の実施形態についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。[モノクローナル抗体] 前述のとおり、本発明のモノクローナル抗体は、糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合領域に対し特異的に反応するモノクローナル抗体である。これ以外には、本発明のモノクローナル抗体は特に制限されないが、例えば、前記糖タンパク質の糖鎖部分およびコアタンパク質部分に反応しないことが好ましい。本発明のモノクローナル抗体は、結合領域にのみ反応し糖鎖部分およびコアタンパク質部分に反応しないことで、例えば、種々の生体物質の中から糖タンパク質のみを特異的に検出することが可能である。または、例えば、結合領域の構造が異なる種々の糖タンパク質の中から特定の糖タンパク質を特異的に検出することが可能である。しかし、本発明のモノクローナル抗体はこれに限定されず、例えば、前記糖タンパク質の糖鎖部分またはコアタンパク質部分に反応する抗体でもよい。 また、本発明において、抗体が、ある特定の抗原(免疫原)に対し「特異的に反応する」または「特異的に認識する」とは、前記特定抗原に対して反応性があることが明らかであれば良い。前記特定抗原に対し「特異的に反応する」または「特異的に認識する」とは、他の抗原に全く反応しない場合も含むが、他の抗原に対し反応する場合も含む。例えば、本発明のモノクローナル抗体が「糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合領域に対し特異的に反応する」という場合、例えば、本発明のモノクローナル抗体は、前記結合領域のみに反応しても良いが、前記糖タンパク質の他の部分(糖鎖部分、コアタンパク質部分等)に対する反応性を有していても良い。従来、糖タンパク質の結合領域に対する反応性を有する抗体は確認されていなかったが、本発明のモノクローナル抗体は、糖タンパク質(例えばプロテオグリカン等)の結合領域に対する反応性を有する。また、本発明において、前記特定抗原に対し特異的に反応する(特異的に認識する)抗体が他の抗原にも反応する場合、前記特定抗原に対する反応性と他の抗原に対する反応性が明確に異なることが好ましい。例えば、本発明のモノクローナル抗体が、糖タンパク質の結合領域に対する反応性に加え、糖タンパク質の他の部分(糖鎖部分、コアタンパク質部分等)に対する反応性をも有する場合、結合領域に対する反応性と他の部分に対する反応性が明確に異なることが好ましい。 また、本発明において、糖タンパク質の「結合領域」とは、糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合部およびその付近の全部または一部をいう。以下、本発明における、糖タンパク質(例えばプロテオグリカン)の「結合領域」の構造の例を具体的に説明する。ただし、以下の説明は例示であって、前記「結合領域」の構造は、これらに限定されない。例えば、前記「結合領域」は、糖およびアミノ酸の両方を含んでいても良いし、いずれか一方のみを含んでいても良い。また、プロテオグリカンの場合、例えば、糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合部に、糖鎖部分の繰り返し二糖単位とは異なるオリゴ糖構造を含む場合がある(非特許文献3等)。前記オリゴ糖構造は、特に制限されないが、例えば、GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylの四糖構造でもよい。この結合部の四糖構造は、CS、デルマタン硫酸(DS)、HS、ヘパリン(Hep)などのGAG糖鎖において共通に見られる。本発明において、プロテオグリカンの「結合領域」とは、このオリゴ糖構造(例えば前記四糖構造)の一部または全部を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。また、プロテオグリカンの「結合領域」とは、ペプチドを含んでいても良いし、含んでいなくても良い。例えば、プロテオグリカンの「結合領域」は、前記オリゴ糖構造(例えば前記四糖構造)の一部または全部であっても良いし、前記ペプチドであっても良いし、前記オリゴ糖構造(例えば前記四糖構造)の一部または全部にペプチドが結合した糖ペプチドであっても良い。また、例えば、プロテオグリカンをコンドロイチナーゼABC等の糖鎖分解酵素で徹底消化すると、前記オリゴ糖構造に、糖鎖部分の繰り返し二糖単位が一つ付加した構造が残る場合がある。すなわち、前記オリゴ糖構造が前記四糖構造であれば、これに二糖単位が付加した六糖構造となる。本発明において、プロテオグリカンの「結合領域」とは、前記オリゴ糖構造に、糖鎖部分の繰り返し二糖単位が一つ付加した構造(例えば、前記六糖構造)を含んでいても良いし、含んでいなくてもよいし、さらに、この構造にペプチドが付加していても良いし、付加していなくても良い。また、また、本発明において、プロテオグリカンの「結合領域」とは、例えば、前記オリゴ糖構造に、単糖が一つ付加した構造(例えば、前記四糖構造に単糖が一つ付加した五糖構造)を含んでいても良いし、含んでいなくてもよいし、さらに、この構造にペプチドが付加していても良いし、付加していなくても良い。前記オリゴ糖構造に、単糖が一つ付加した構造(例えば、前記四糖構造に単糖が一つ付加した五糖構造)は、例えば、前記オリゴ糖構造に、糖鎖部分の繰り返し二糖単位が一つ付加した構造(例えば、前記六糖構造)を酢酸水銀等で処理して単糖(不飽和ウロン酸)を一つ切断することにより調製できる。本発明において、糖タンパク質の「結合領域」は、例えば前記四糖構造のように、糖タンパク質の他の部分とは異なる特徴的な構造を含むことが好ましいが、含んでいなくても良い。また、後述するように、本発明の免疫原は、糖タンパク質の「結合領域」の全部を含んでいても良いし、一部のみを含んでいても良い。 本発明のモノクローナル抗体が認識可能な前記糖タンパク質は、特に制限されないが、例えば、プロテオグリカンであることが好ましく、グリコサミノグリカン(GAG)から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンであることがより好ましい。また、例えば、前記プロテオグリカンの糖鎖部分が繰り返し二糖単位を有し、前記結合領域が、前記繰り返し二糖単位とは異なるオリゴ糖構造を有し、本発明のモノクローナル抗体が前記結合領域のオリゴ糖構造に対し特異的に反応することがさらに好ましい。なお、前述のように、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンは、結合領域を含み、この結合領域により糖鎖とコアタンパク質が結合されていることが特徴である。本発明において、「糖タンパク質」とは、プロテオグリカンを含み、「プロテオグリカン」とは、糖タンパク質の一種である。本発明において、「プロテオグリカン」とは、特に制限されないが、例えば、糖鎖部分が主に二糖単位の繰り返し構造から形成されている糖タンパク質である。前記糖タンパク質は、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、またはこれらと類似の構造を有する多糖鎖もしくはオリゴ糖鎖から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンであることがさらに好ましい。また、前記糖タンパク質が、CS-A、CS-B、CS-C、CS-D、CS-E、CS-K、またはCS-H(DS-E)から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンであることが特に好ましい。ただし、これらは例示であって、本発明のモノクローナル抗体が認識可能な前記糖タンパク質は、これらに限定されない。なお、コンドロイチン硫酸H(CS-H)は、IdoAを構成単位とするiE二糖単位を多く含む。iE二糖単位の硫酸化パターンは、E二糖単位と同じである。CS-Hの構成単位であるIdoAは、デルマタン硫酸(DSまたはCS-Bとも呼ばれる)と共通する。このため、CS-Hはデルマタン硫酸の一種であると考えることもできる。したがって、本発明では、コンドロイチン硫酸H(CS-H)を、デルマタン硫酸E(DS-E)とも呼ぶことがある。 また、本発明のモノクローナル抗体が認識可能な前記糖タンパク質は、例えば、腫瘍細胞由来の糖タンパク質であることが好ましい。これによれば、本発明のモノクローナル抗体を、例えば、腫瘍に関する用途に用いることができる。前記腫瘍に関する用途は特に制限されないが、例えば、腫瘍マーカー認識プローブ、抗腫瘍剤等があげられる。なお、本発明において、「腫瘍」とは、特に制限されないが、例えば、癌、肉腫等があげられる。また、前記腫瘍細胞は特に制限されないが、例えば、前記腫瘍細胞が、脳腫瘍、頭頚部癌、神経芽細胞腫、副鼻孔癌、咽頭癌、食道癌、肺癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、胆道癌、膵癌、前立腺癌、膀胱癌、精巣癌、乳癌、子宮癌、子宮筋腫、子宮頚癌、卵巣癌、急性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、赤血球増加症、真正多血症、本態性血小板増多症、骨髄腫、骨肉腫、絨毛癌、ホジキン病、非ホジキン病、膠芽種、星状細胞腫、または軟組織肉腫の病巣に由来する細胞であることが好ましい。 なお、本発明のモノクローナル抗体として、特に好ましくは、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2008年2月22日付で寄託されており、受託番号がNITE P−503、NITE P−504、NITE P−505、NITE P−506、NITE P−507、またはNITE P−508であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体があげられる。ただし、本発明のモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではない。[モノクローナル抗体の製造方法等] 本発明のモノクローナル抗体の製造方法は特に制限されないが、例えば、以下のようにして製造することができる。 まず、免疫原を準備する。この免疫原は、どのような方法により製造してもよいが、例えば、前記本発明の製造方法により製造することができる。本発明の免疫原の製造方法は、糖タンパク質をプロテアーゼで消化し、アルカリ加水分解処理をしない以外は特に限定されないが、例えば以下のとおりである。すなわち、まず、糖タンパク質を含む生体組織をアセトン抽出により脱水および脱脂し、風乾してアセトンパウダーを調製する。前記生体組織は、特に制限されず、目的とする糖タンパク質の種類等により適宜選択すればよいが、例えば、イカ軟骨、ヌタウナギ脊索、サメ軟骨、クジラ軟骨、カブトガニ軟骨、ブタ皮膚、ウシ軟骨、ブタ軟骨、ニワトリ軟骨、サケ鼻軟骨、種々の魚類軟骨等があげられる。次に、このアセトンパウダーを水に懸濁させてスラリー状にし、加熱してタンパク質分解酵素を不活性化させる。それをプロテアーゼで徹底消化し、遠心分離、エタノール沈殿法、ゲル濾過クロマトグラフィー等の適宜な方法で精製し、免疫原を得る。各反応物質の濃度、反応温度、反応時間等は、特に制限されず、適宜選択することができる。また、各工程は、適宜変更が可能である。例えば、前記生体組織からプロテオグリカンを抽出する際に、アセトンを用いずに熱水抽出等の方法を用いてもよい。なお、本発明において、前記「アルカリ加水分解処理をしない」とは、タンパク質が加水分解される程度の強い条件によるアルカリ処理をしないことをいう。また、本発明においては、例えば、アルカリ加水分解処理をしないことに加え、酸加水分解処理をしないことがより好ましい。前記「酸加水分解処理をしない」とは、タンパク質が加水分解される程度の強い条件による酸処理をしないことをいう。具体的には、本発明において、例えば、前記糖タンパク質に対し、酸またはアルカリによる処理を全く行わなくても良いが、タンパク質が加水分解されない程度の弱い条件であれば、酸処理、アルカリ処理等をしても良い。本発明では、例えば、酸処理、アルカリ処理等の条件を、糖タンパク質の結合領域が分解されない程度に抑えることが好ましい。 上記本発明の製造した本発明の免疫原により本発明のモノクローナル抗体を得ることができるメカニズムは必ずしも明らかでないが、例えば、アルカリ加水分解処理をしないことにより糖タンパク質の結合領域が加水分解されずに残り、前記結合領域に対し特異的に反応するモノクローナル抗体ができると考えられる。また、本発明の免疫原の製造方法において、例えば、前記糖タンパク質を、さらに糖鎖分解酵素で消化することがより好ましい。このようにすれば、例えば、糖タンパク質のコアタンパク質のみならず糖鎖をも分解し、結合領域のみが残るため、前記結合領域に対する特異性がさらに高まると考えられる。ただし、この説明は、推定可能な機構の一例であり、本発明を限定しない。なお、本発明の免疫原の製造方法において、前記糖タンパク質を糖鎖分解酵素で消化する場合は、その後、加熱により糖鎖分解酵素を不活性化する工程をさらに含むことが一層好ましい。また、本発明において「糖鎖分解酵素」とは、糖鎖を分解することが可能な酵素全般をいう。本発明において、糖鎖分解酵素は特に制限されず、分解しようとする糖鎖の種類等に応じて適宜選択すればよい。前記糖鎖分解酵素としては、例えばグリコサミノグリカン分解酵素が挙げられる。前記グリコサミノグリカン分解酵素は、特に制限されないが、例えば、各種のコンドロイチン硫酸分解酵素、ヘパラン硫酸分解酵素などが挙げられる。 前記本発明の免疫原は、糖タンパク質の結合領域に由来する構造を含むことが好ましい。この場合、前記本発明の免疫原は、前記結合領域由来構造のみからなっていても良いが、他の構造、例えば、糖タンパク質の糖鎖部分等を含んでいてもよい。また、本発明の免疫原は、例えば、前記結合領域由来のペプチド構造およびオリゴ糖構造のいずれか一方のみを含んでいても良く、両方を含んでいても良いが、オリゴ糖構造を含むことがより好ましい。また、本発明の免疫原は、例えば前記オリゴ糖構造の全部を含んでいても良いが、一部のみを含んでいても良い。例えば、サメ軟骨由来CS-Cを原料として免疫原を調製する場合、サメ軟骨を前述のようにプロテアーゼおよび糖鎖分解酵素で徹底消化し、残った六糖ペプチドを本発明の免疫原として用いてもよい。また、前記六糖ペプチドを、さらに、酢酸水銀処理、コンドロ一ナーゼAC-IやAC-IIによる消化等の適宜な方法で処理して末端の糖を除去し、五糖ペプチド、四糖ペプチドなどに変換した後、本発明の免疫原として用いてもよい。また、他の糖タンパク質、例えば各種コンドロイチン硫酸等のプロテオグリカンを原料として免疫原を製造する場合も、前記サメ軟骨の場合に準じてもよい。 前記免疫原の原料となる糖タンパク質は、特に制限されないが、例えば、プロテオグリカンであることが好ましく、グリコサミノグリカン(GAG)から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンであることがより好ましい。前記糖タンパク質は、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、またはこれらと類似の構造を有する多糖鎖もしくはオリゴ糖鎖から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンであることがさらに好ましい。また、前記糖タンパク質が、CS-A、CS-B、CS-C、CS-D、CS-E、CS-K、またはCS-H(DS-E)から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンであることが特に好ましい。 また、例えば、前記免疫原の原料となる糖タンパク質が、腫瘍細胞由来の糖タンパク質であることが好ましい。これを用いて免疫原を製造すれば、腫瘍細胞由来糖タンパク質の結合領域に特異的に反応するモノクローナル抗体を製造可能になると考えられるためである。前記腫瘍細胞は、特に制限されないが、例えば、脳腫瘍、頭頚部癌、神経芽細胞腫、副鼻孔癌、咽頭癌、食道癌、肺癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、胆道癌、膵癌、前立腺癌、膀胱癌、精巣癌、乳癌、子宮癌、子宮筋腫、子宮頚癌、卵巣癌、急性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、赤血球増加症、真正多血症、本態性血小板増多症、骨髄腫、骨肉腫、絨毛癌、ホジキン病、非ホジキン病、膠芽種、星状細胞腫、または軟組織肉腫の病巣に由来する細胞であることがより好ましい。 次に、前記免疫原により動物を免疫する。免疫方法は、前記本発明の免疫原を用いる以外は特に制限されず、例えば、公知の免疫方法等を適宜参考にしてもよい。前記動物は、特に制限されないが、例えば、マウス、またはラットが好ましい。 さらに、免疫した前記動物から抗体産生細胞を採取する。この細胞から直接モノクローナル抗体を抽出してもよいが、他の細胞と融合させてハイブリドーマとした後に、前記ハイブリドーマからモノクローナル抗体を抽出することが好ましい。ハイブリドーマの製造方法、モノクローナル抗体の抽出方法等の条件は、特に制限されず、適宜設定することができる。例えば、公知のハイブリドーマの製造方法、モノクローナル抗体の抽出方法等を適宜参考にしてもよい。 本発明のハイブリドーマは、上記のように、本発明の免疫原を用いて製造することにより、本発明のモノクローナル抗体を産生することができる。本発明のハイブリドーマは、特に制限されないが、例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されており、受託番号がNITE P−503、NITE P−504、NITE P−505、NITE P−506、NITE P−507、またはNITE P−508であるハイブリドーマが特に好ましい。なお、これら6種のハイブリドーマの寄託日は、前述の通り、いずれも、2008年2月22日である。[用途] 本発明のモノクローナル抗体の用途は、特に制限されず、どのような用途に用いてもよいが、より具体的には、例えば、以下のとおりである。 第一に、本発明のモノクローナル抗体は、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの生合成メカニズムの基礎研究に極めて有用な試薬となる。生体内の糖鎖は、前述のとおり、糖タンパク質、あるいはプロテオグリカンの形態で存在する。一方、タンパク質の側から見ても、通常生体内のタンパク質の50%以上は糖鎖を共有結合した糖タンパク質、あるいはプロテオグリカンとして存在している。このため、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの生合成メカニズムの研究は、生物学上、非常に重要である。糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの生合成の詳しいメカニズムは不明であるが、例えば、以下のように考えられる。すなわち、まず、糖鎖をもたない単純タンパク質が合成され、結合領域オリゴ糖が構築された後に、コンドロイチン硫酸(CS)に成熟するかヘパラン硫酸(HS)になるかの決定が行われる。その際、例えば、細胞内のゴルジ装置の異なるコンパートメントを経由する可能性が考えられ、また、結合領域の硫酸化修飾が関与している可能性がある。本発明のモノクローナル抗体は、糖鎖とペプチドの結合領域を特異的に認識し、前記結合領域は、コンドロイチン硫酸やヘパラン硫酸等の糖タンパク質の生合成の開始点である。このため、本発明のモノクローナル抗体は、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンの生合成メカニズムを解明するための非常に有用なツールとなり得る。 第二に、ある種の分子病(遺伝病)においては、前記硫酸化修飾の異常のために糖鎖合成不全が病因となっている可能性がある。本発明のモノクローナル抗体は、そのような遺伝病の診断に使える糖鎖認識プローブとなり得る。 また、例えば、本発明のモノクローナル抗体が特定の糖タンパク質の結合領域を特異的に認識する場合、前記特定の糖タンパク質を他の糖タンパク質と識別するために用いることができる。前述のようにコンドロイチン硫酸とヘパラン硫酸が細胞内で異なるゴルジコンパートメントに局在し、本発明のモノクローナル抗体がコンドロイチン硫酸の結合領域を特異的に認識する場合は、本発明のモノクローナル抗体は、コンドロイチン硫酸の細胞内局在検出試薬として用いることができる。 プロテオグリカンの生合成メカニズムの研究については、より詳しくは、例えば以下のとおりである。まず、CS、デルマタン硫酸(DS)、HS、ヘパリン(Hep)などのGAG糖鎖は繰り返し二糖単位から構成され、CSとDSはGlcAβ1-3GalNAcかIdoAα1-3GalNAc、HSとHepはGlcAβ1-4GlcNAcかIdoAα1-4GlcNAcを構成二糖単位とする。これらの二糖は、様々に硫酸化修飾されて多糖鎖中に存在する。硫酸化修飾の異なるそれらの二糖の組み合わせからなる特有の配列が前記多糖鎖の活性発現の構造的基盤であり、多糖鎖ごとに異なる配列を有する。このように、これらの4種類のGAG鎖は異なる構造と活性を有するが、各々のコアタンパク質に結合している付け根(結合領域)には、GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylという、共通の特徴的四糖構造をもつ。本発明のモノクローナル抗体は、プロテオグリカンの結合領域を特異的に認識することにより、異なる構造と活性をもつ多糖鎖が同じオリゴ糖構造(結合領域)の上に構築される生合成の分子メカニズムを詳しく研究するためのツールとなり得る。 プロテオグリカンの結合領域の構造研究については、より詳しくは、例えば以下のとおりである。まず、CSとDSの結合領域のGal残基には、HSとHepでは見られない硫酸化構造が存在する(下記文献(i)〜(iv))。CSとDSを両方もつハイブリッド型プロテオグリカンについても、CSとHSを同時に分析すると、CSにはGlcAβ1-3Gal(4-O-sulfate) β1-3Galβ1-4Xylという修飾構造が見いだされたが、HSにはGalの硫酸化構造は見いだされなかったという研究がある(下記文献(v))。また、この硫酸化修飾構造は、CSの構造異性体であるDSにも存在するが(下記文献(vi))、HSの構造類似体であるHepでは見いだされていない(下記文献(vii))。従って、Galの硫酸化修飾は、二糖繰り返し構造中にGlcNAcではなくGalNAcを含むCSとDSに特徴的な構造と考えられる。この硫酸化修飾構造が果たす役割は必ずしも明らかではないが、例えば、プロテオグリカンの生合成の仕分け、すなわち、CSもしくはDSを生成するか、またはHSもしくはHepの分岐に関与する可能性がある。すなわち、プロテオグリカンの生合成メカニズムの詳細は明らかではないが、まず糖鎖をもたない単純タンパク質が合成され、次に結合領域オリゴ糖をもつ糖タンパクとなり、さらにCSやDSやHSへと成熟し、様々な機能をもつ糖鎖へと仕分けられると考えられる。本発明のモノクローナル抗体においては、免疫原等を適切に選択することで、例えば前記結合領域の硫酸化構造など、構造のわずかな相違を識別することも可能である。そのような抗体は、前述のようなプロテオグリカンの生合成メカニズムの解明に有用な試薬となり得る。(i)Sugahara, K., and Kitagawa, H. (2000) Recent advances in the study of the biosynthesis and functions of sulfated glycosaminoglycans. Curr. Opin. Struct. Biol., 10 (5), 518-527.(ii)Sugahara, K., Yamashina, I., De Waard, P., Van Halbeek, H. and Vliegenthart, J. F. G. (1988) Structural studies on sulfated glycopeptides from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin 4-sulfate proteoglycans of Swarm rat chondrosarcoma. Demonstration of the structure, Gal (4-O-Sulfate) β1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Ser. J. Biol. Chem., 263 (21), 10168-10174.(iii)Sugahara, K., Ohi, Y., Harada, T., de Waard, P. and Vliegenthart, J. F. G. (1992) Structural studies on sulfated oligosaccharides derived from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin 6-sulfate proteoglycans of shark cartilage. I. Six compounds containing 0 or 1 sulfate and/or phosphate residue. J. Biol. Chem., 267 (9), 6027-6035.(iv)de Waard, P., Vliegenthart, J. F. G., Harada, T. and Sugahara, K. (1992) Structural studies on sulfated oligosaccharides derived from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin 6-sulfate proteoglycans of shark cartilage. II. Seven compounds containing 2 or 3 sulfate residues. J. Biol. Chem., 267 (9), 6036-6044.(v)Ueno, M., Yamada, S., Zako, M., Bernfield, M., and Sugahara, K. (2001) Structural characterization of heparan sulfate and chondroitin sulfate of syndecan-1 purified from normal murine mammary gland epithelial cells. Common phosphorylation of xylose and differential sulfation of galactose in the protein linkage region tetrasaccharide sequence. J. Biol. Chem., 276 (31), 29134-29140.(vi)Sugahara, K., Masuda, M., Harada, T. and Yamashina, I. (1991) Structural studies on sulfated oligosaccharides derived from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin sulfate proteoglycans of whale cartilage. Eur. J. Biochem., 202 (2), 805-811.(vii)Sugahara, K., Ohkita, Y., Shibata, Y., Yoshida, K. and Ikegami, A. (1995) Structural studies on the hexasaccharide alditols isolated from the carbohydrate-protein linkage region of dermatan sulphate proteoglycans of bovine aorta. Demonstration of iduronic acid-containing components. J. Biol. Chem., 270 (13), 7204-7212.(viii)Sugahara, K. (1998) http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/proteoglycan/ PGA06E.html.(ix)Sugahara, K., Yamada, S., Yoshida, K., de Waard, P. and Vliegenthart, J. F. G. (1992) A novel sulfated structure in the carbohydrate-protein linkage region isolated from porcine intestinal heparin. J. Biol. Chem., 267 (3), 1528-1533. 本発明のモノクローナル抗体の用途は、上記以外にも種々の用途に使用可能であり、例えば、前述のような様々な製品、薬学的組成物または医薬に用いることができる。例えば、本発明のモノクローナル抗体が、糖タンパク質の結合領域に反応し、糖鎖部分に反応しない場合、結合領域を含む糖タンパク質と含まない糖タンパク質の識別に用いることができる。具体的には、例えば、糖鎖を含む試料(食品等)に用いれば、前記糖鎖が、結合領域を含まない(すなわち、アルカリ加水分解処理等の人工的処理をした)糖鎖を混入させているか否か、識別可能である。また、本発明により提供される医薬については、前述のとおり、遺伝病、炎症、自己免疫疾患、神経細胞接着、神経突起伸長、増殖因子結合、ウィルス感染阻害、ヘルペスウィルス感染阻害、デングウィルス感染阻害、および細胞の増殖からなる群から選択される少なくとも一つに関する疾患の治療、診断、症状の軽減および予防からなる群から選択される少なくとも一つの用途に使用される。前記細胞の増殖に関する疾患は、特に制限されないが、例えば、脳腫瘍、頭頚部癌、神経芽細胞腫、副鼻孔癌、咽頭癌、食道癌、肺癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、胆道癌、膵癌、前立腺癌、膀胱癌、精巣癌、乳癌、子宮癌、子宮筋腫、子宮頚癌、卵巣癌、急性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、赤血球増加症、真正多血症、本態性血小板増多症、骨髄腫、骨肉腫、絨毛癌、ホジキン病、非ホジキン病、膠芽種、星状細胞腫、および軟組織肉腫からなる群から選択される少なくとも一つの疾患である。また、本発明により提供される医薬は、例えば、抗腫瘍剤、抗癌剤、制癌剤、抗転移剤、および腫瘍マーカー検出剤からなる群から選択される少なくとも一つの用途に使用されることが好ましいが、これらには限定されない。このように、本発明は、基礎医学、応用医学、創薬等の各分野において多大な産業上利用可能性を有する。さらに、本発明のモノクローナル抗体は、これらに限定されることなくあらゆる用途に用いることができる。 次に、本発明の実施例について説明する。[実施例1〜11] サメ軟骨由来CS(コンドロイチン硫酸)の「付け根」、すなわち糖鎖とコアタンパク質とをつなぐ糖-タンパク質結合領域は、Galの4位や6位の水酸基が硫酸化されているという特徴的な構造を有する(下記参考文献1および2、下記参考文献3)。すなわち、GlcA-Gal-Gal(6-O-sulfate)-XylやGlcA-Gal(4-O-sulfate)-Gal(6-O-sulfate)-XylやGlcA-Gal(6-O-sulfate)-Gal(6-O-sulfate)-Xylという構造である(下記参考文献4)。(参考文献1) Sugahara, K., Ohi, Y., Harada, T., de Waard, P. and Vliegenthart, J. F. G. (1992) Structural studies on sulfated oligosaccharides derived from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin 6-sulfate proteoglycans of shark cartilage. I. Six compounds containing 0 or 1 sulfate and/or phosphate residue. J. Biol. Chem., 267 (9), 6027-6035.(参考文献2) de Waard, P., Vliegenthart, J. F. G., Harada, T. and Sugahara, K. (1992) Structural studies on sulfated oligosaccharides derived from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin 6-sulfate proteoglycans of shark cartilage. II. Seven compounds containing 2 or 3 sulfate residues. J. Biol. Chem., 267 (9), 6036-6044.(参考文献3)Sugahara, K., and Kitagawa, H. (2000) Recent advances in the study of the biosynthesis and functions of sulfated glycosaminoglycans. Curr. Opin. Struct. Biol., 10 (5), 518-527.(参考文献4)Sugahara, K., Masuda, M., Harada, T. and Yamashina, I. (1991) Structural studies on sulfated oligosaccharides derived from the carbohydrate-protein linkage region of chondroitin sulfate proteoglycans of whale cartilage. 本実施例では、サメ軟骨由来CS(コンドロイチン硫酸)をプロテアーゼおよびコンドロイチナーゼで徹底消化することにより、コアタンパク質および糖鎖(コンドロイチン硫酸)部分を分解して結合領域を残し、これを免疫原としてモノクローナル抗体を製造した。この免疫原は、ペプチドに短い糖鎖(オリゴ糖)が結合した糖ペプチド構造を有する。また、このようにして製造したモノクローナル抗体の反応性を測定し、糖タンパク質の結合領域を特異的に認識することを確認した。 以下に、本実施例の操作を具体的に示す。なお、化学物質は、特に示さない限り、全て試薬級であり、市販品として購入することができる。また、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC-I、コンドロイチナーゼAC-IIは生化学工業株式会社の商品名であり、アクチナーゼ Eは科研製薬株式会社の商品名である。アクチナーゼ Eは、単に「アクチナーゼ」とも呼ばれる場合があるが、「アクチナーゼ E」と「アクチナーゼ」は同一物である。(1.抗体産生のための免疫原の調製) サメ軟骨を破砕後、徹底的にプロテアーゼで消化して、タンパク成分を除去するとともに、CSプロテオグリカンのコアタンパク質も分解し、CSペプチド画分を得た。このようにして調製したCSペプチド画分には、CSがXylを介して結合しているSer残基以外に平均5〜6個のアミノ酸からなるペプチドが含まれている(前記参考文献1)。 プロテアーゼによる徹底消化は、以下のように行った。すなわち、まず、サメ軟骨を破砕し、アセトン抽出により脱水および脱脂し、風乾してアセトンパウダーを調製した。このアセトンパウダーを、下記参考文献5に記載の方法に従い、アクチナーゼ E(科研製薬)で徹底消化した後に、未精製のグリコサミノグリカン(GAG)−ペプチド画分を抽出した。具体的には、まず、前記アセトンパウダーを水に懸濁させてスラリー状にし、沸騰水浴で30分間加熱してタンパク質分解酵素を不活性化させた。加熱後のスラリーに、ホウ酸-NaOH緩衝液およびCaCl2を、それぞれ最終濃度0.1Mおよび10mMで加えた。それを、プロテアーゼ(アクチナーゼ E、前記スラリーに対し2質量%)により、60℃で24時間消化した。その直後、すなわち消化開始から24時間後に、新しいアクチナーゼ E(前記スラリーに対し1質量%)を追加し、消化を続けた。さらに24時間後、すなわち消化開始から48時間後に、再度、新しいアクチナーゼ E(前記スラリーに対し1質量%)を追加し、消化を続けた。全95時間の消化後、50質量%濃度トリクロロ酢酸水溶液を、最終濃度5質量%となるまで加えた。この混合物を遠心分離し、得られた沈殿を5質量%トリクロロ酢酸水溶液に再懸濁させ、再度遠心分離した。このようにして得られた上清を集め、過剰のトリクロロ酢酸をジエチルエーテル抽出で除去した。トリクロロ酢酸を除去した前記上清に、80質量%エタノール水溶液(5質量%の酢酸ナトリウムを含む)を4倍体積加え、4℃で終夜静置してGAGを沈殿させた。その後、前記沈殿を遠心分離で回収し、乾燥させて未精製コンドロイチン硫酸(CS)−ペプチド画分を得た。(参考文献5)Nandini, C. D., Itoh, N., and Sugahara, K. (2005) J. Biol. Chem. 280, 4058-4069. 次に、この未精製コンドロイチン硫酸(CS)−ペプチド画分を、バクテリア由来のコンドロイチナーゼABCで徹底消化し、多糖鎖の二糖繰り返し領域を分解して除去し、結合領域における前記糖ペプチド構造を残した。これをゲルろ過クロマトグラフィーにかけて糖ペプチド画分を回収した。この画分に含まれるオリゴ糖鎖は六糖骨格(ΔHexA-GalNAc-GlcA-Gal-Gal-Xyl、ここでΔHexAはコンドロイチナーゼによる脱離反応で生成した不飽和ウロン酸を示す)を有し、末端の不飽和ウロン酸が強い抗原性を有することが知られているので、これを酢酸水銀で化学的に除去し、五糖ペプチドとした。具体的な操作としては、前記オリゴ糖鎖(六糖ペプチド)を含む糖ペプチド画分を、10mM酢酸水銀を含む130mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中に加え、室温で5時間半反応させた(Ludwigs U, Elgavish A, Esko JD, Meezan E, Roden L. “Reaction of unsaturated uronic acid residues with mercuric salts. Cleavage of the hyaluronic acid disaccharide 2-acetamido-2-deoxy-3-O-(beta-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-D-glucose.” Biochem J. 1987 Aug 1;245(3):795-804.参照)。反応後、目的の五糖ペプチドを含む画分をゲルろ過クロマトグラフィーで回収した。なお、前記コンドロイチナーゼABC消化直後の糖ペプチド画分(不飽和六糖ペプチド画分)およびウロン酸を除去した五糖ペプチド画分の構造は、機器分析値(MS、NMR等)を分析値と比較して確認した。こうして得た五糖ペプチド画分をキャリアータンパク質であるKLH(keyhole limpet hemocyanin)に共有結合させて免疫原とした。具体的には、0.3%グルタルアルデヒドを含むリン酸緩衝液(pH7.4)生理食塩水中で、前記五糖ペプチド画分とKLHとの質量比が1:100となるように混合し、室温で一晩反応させ、目的とする免疫原を得た。この免疫原を用いてbalbCマウスを免疫した。(2.マウスの免疫および採血) 常法に従って、マウスを追加免疫し、血中の抗体価の測定を行った。より具体的には以下の通りである。(2−1.準備) マウス(BALB/c ♂ 6週齢 4匹使用)、FCA、FIA、PBS(-)、1ml注射筒、26G×1/2注射針、超音波ホモジナイザー、マウス保定器、アルコール綿、ニッパー、ヘマトクリット毛細管、マイクロシリンジおよびマイクロチューブを準備した。その他、前記免疫原等、必要な試薬および器具を準備した。マウスは、日本クレア株式会社から購入し、順化飼育1週間後に使用した。状態の悪いマウスは使用対象から除去した。(2−2.免疫) 以下の手順により、前記マウスを免疫した。すなわち、まず、免疫原(前記五糖ペプチド画分)をリン酸緩衝生理食塩水に溶かし、250mg/L溶液とした。この免疫原溶液に、等量のアジュバントを加え、1ml注射筒に入れ、超音波ホモジナイザーにてエマルジョン化して免疫用注射液とした。なお、前記混合およびエマルジョン化は、免疫原の活性を損なわないために冷却しながら行った。また、前記アジュバントとしては、初回免疫用にはFCA(フロイント完全アジュバント)を用い、2回目以降の免疫用にはFIA(フロイント不完全アジュバント)を用いた。次に、前記1ml注射筒に26G×1/2注射針を装着させ、マウス背部皮下(アルコール綿で消毒後)に前記免疫用注射液を分散投与した。免疫原の投与量は25μg/匹・回を標準とし、液量は200μl/匹とした。免疫は、0w、2w、4w、6wの4回実施した。なお、「0w」とは、初回の免疫投与時を指し、2w、4w、6wとは、初回免疫投与時から2週間後、4週間後および6週間後にそれぞれ免疫投与したことを示す。(2−3.採血) 4回免疫した前記マウスを保定器に入れ、尾部をアルコール綿で軽く擦り、血管を怒張させた。次に、ニッパーで針先部分を抜いた26G×1/2注射針を、前記マウスの尾静脈に刺入した。出てきた血液をヘマトクリット毛細管で採取した(2本/匹)。この血液を、1時間のインキュベート(約37℃)後、室温において8,000r.p.mで20分間遠心分離した。遠心分離後、血清をマイクロシリンジで採取し、マイクロチューブ内に移した。それを、使用時まで−20℃フリーザで保管した。なお、採血は、0w、5w、7w時にそれぞれ実施した。「0w」とは、前記と同様、初回の免疫投与時を指し、5w、7wとは、それぞれ初回免疫投与時から5週間後および7週間後を示す。(2−4.プラスチックプレートを用いたELISA法による抗体価測定) 前記マウスから採取した各血清の抗体価を、プラスチックプレート(商品名Maxisorpプレート、Nunc社)を用いたELISA法により、定法にしたがって測定した。すなわち、まず、前記サメ軟骨コンドロイチン硫酸結合領域由来の不飽和六糖ペプチド画分を直接プラスチックプレート(前記Maxisorpプレート)に塗布して固定化した。このウェルを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックし、前記血清(一次抗体を含む)を0.1% BSA/PBSで5,000倍に希釈したものを用いて37℃で1時間インキュベートし、続いて、二次抗体としてアルカリホスファターゼで標識したヤギの抗マウスIgG/IgMで処理した。そして、パラニトロフェニルフォスフェートを基質として加え、遊離したパラニトロフェノールの415nmの吸収を測定することで抗体価を評価した。(3.ハイブリドーマの製造) 前記ELISA法により特に高い抗体価を示したマウス個体(1匹)の脾臓をミエローマ細胞と常法に従って融合させ、ハイブリドーマを作成し、前記と同様のELISA法でスクリーニングを行い,結合領域由来の不飽和六糖ペプチドと反応する3種類の陽性細胞画分(4E1, 3F11, 1B5)を得た。ハイブリドーマの製造は、以下のようにして行った。なお、マウス屠殺3日前に、前記免疫用注射液を用い、免疫原10μg/匹・回をマウスに注射して最終ブーストした。(3−1.準備) マウス(前記最終ブーストから3日後のもの)、ビーカー(300ml・1個)、滅菌シャーレ(1枚)、ピンセット(大・小(有鈎・無鈎)・数本)、ハサミ(大・小)、ステンレスバット(2枚)、滅菌ガーゼ、ステンレスメッシュ(数個)、薬さじ(1本)、ボルテックスミキサー、滅菌ピペット(1、2、5、10ml)、マウスミエローマ(SP2)、PBS(−)、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)、RPMI1640培地(血清無し)、滅菌50ml遠心管、PEG、滅菌ピペットチップ(〜200μl)、96well培養プレート、オクタピペット、クライオチューブ(2ml)、吸引ビンセット、血球計算盤、およびその他必要なものを準備した。(3−2.細胞融合およびハイブリドーマの培養) 細胞融合およびハイブリドーマの培養は、以下のようにして行った。すなわち、まず、最終ブーストから3日後のマウスを頚椎脱臼し屠殺後、エタノール噴霧消毒した。次に、前記マウスの全身をエタノールに浸け込み消毒後、背筋をハサミで切り、脾臓を摘出した。摘出した脾臓を滅菌シャーレ内のステンレスメッシュの上に置き、適当量のPBSを添加し、有鈎ピンセットを用いて脾臓に数カ所穴を開け、薬さじを用いてすりこむように粉砕した。前記ステンレスメッシュおよび滅菌シャーレをPBSで洗い、脾細胞を含むPBSを回収し、50ml遠心管に移した。PBSを回収した遠心管を室温において1,300rpmで5分間遠心分離にかけた後、上清を廃棄し、新たなPBSを入れ、ピペッティングし、再度同条件で遠心して洗浄した。 一方、準備した前記脾細胞とミエローマ細胞を5:1の比率で混合し、PBSを加え、室温において、1,300rpmで5分間遠心した。上清を廃棄後、50%PEG法により細胞融合を実施し、ハイブリドーマとした。このハイブリドーマに10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を50ml添加して懸濁させた。滅菌ピペット2mlを用い、あらかじめ準備した96well培養プレート5枚の各wellに、前記ハイブリドーマ懸濁液を100μlずつ播種した。5日後に、オクタピペットを用い、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)を各wellに100μlずつ添加した。その後、コロニーの大きさおよび培地の色の観察を続け、培地添加からさらに7日後に、コロニーの成長がスクリーニングに十分な程度に達したと判断したので、スクリーニングを実施した。(4.スクリーニングおよびクローニング) 上記3種類の細胞画分からクローンを得るために、さらにクローニングしたところ、4E1からのみクローンが得られ、合計11種類のクローン(A4, A8, A9, B6, B11, C6, C11, D6, D12, F4, H4)を得た。これらのハイブリドーマおよびモノクローナル抗体を、それぞれ実施例1(A4)、実施例2(A8)、実施例3(A9)、実施例4(B6)、実施例5(B11)、実施例6(C6)、実施例7(C11)、実施例8(D6)、実施例9(D12)、実施例10(F4)、および実施例11(H4)とする。ハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングは、具体的には以下のようにして行った。(4−1.準備) ELISA用器具、器材、試薬、96well培養プレート(細胞入り)、オクタピペット、滅菌ピペットチップ(〜200μl)、ピペットチップ廃棄用容器・滅菌ピペット(1,2,5,10ml)、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)、RPMI1640培地(血清無し)滅菌50ml遠心管、96well培養プレート、24well培養プレート、セルバンカー、クライオチューブ(2ml)、吸引ビンセット、血球計算盤、25cm2培養フラスコ、PBS(−)、およびその他必要なものを準備した。なお、前記「96well培養プレート(細胞入り)」としては、前述の「3.ハイブリドーマの製造」において培養したハイブリドーマのコロニーを含む96well培養プレートをそのまま用いた。(4−2.スクリーニング) 前述の「2−4.プラスチックプレートを用いた抗体価測定」と同様のELISA法により、ハイブリドーマのスクリーニングを行った。すなわち、まず、前記不飽和六糖ペプチド画分(抗原)をプラスチックプレート(96well ELISAプレート)上に固定(固相化)した。このウェルを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。一方、オクタピペットを用い、前記ハイブリドーマを含む「96well培養プレート(細胞入り)」から、抗体を含む培養上清を抽出した。この培養上清を、抗原を固相化してBSAでブロックした前記プラスチックプレート(96well ELISAプレート)の各ウェルに、1wellあたり50μl分注した。これを37℃で1時間インキュベートした後、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIg(G+M)で処理した。酵素活性は、p-ニトロフェニルリン酸を用いて検出し、吸光度は415nmで測定した。(4−3.クローニング) 細胞融合後の前記スクリーニングで陽性と判断されたwell中のハイブリドーマを、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を1wellあたり1ml分注した24well培養プレートに採取した。数日間培養後、11種類のハイブリドーマを選び、1stクローニングを実施した。すなわち、まず、あらかじめ準備した新しい96well培養プレートに、限界希釈法により、1wellあたり4個になるように前記ハイブリドーマを播種した。限界希釈法の溶媒としては、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を使用し、1wellあたり100μlを播種した。なお、1種類のハイブリドーマにつき96well培養プレート0.5枚を使用した(2種類で1枚使用)。播種から5日後に、オクタピペットを使用し、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)を各プレート1wellあたり100μl分注した。数日間培養し、コロニーが肉眼で確認でき、培地の色が薄い黄色になってきた時点でスクリーニングを実施した。スクリーニングの方法は、前述と同様である。 一方、あらかじめ準備しておいた新しい24well培養プレートに、10%FBSRPMI1640培地(HAT入り)を1wellあたり1ml分注した。ここに、前記1stクローニング後のスクリーニングで得られた陽性wellにおける11種類のハイブリドーマをそれぞれ添加した。数日間培養し、ある程度細胞が増えたら2ndクローニングを実施した。すなわち、まず、あらかじめ準備した新しい96well培養プレートに、限界希釈法により、1wellあたり1個になるように前記ハイブリドーマを播種した。限界希釈法の溶媒としては、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を使用し、1wellあたり100μlを播種した。なお、1種類のハイブリドーマにつき96well培養プレート0.5枚を使用した(2種類で1枚使用)。さらに、オクタピペットを使用し、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)を各プレート1wellあたり100μl分注した。約10日間培養し、コロニーが肉眼で確認でき、培地の色が薄い黄色になってきた時点でスクリーニングを実施した。スクリーニングの方法は、前述と同様である。 前記2ndクローニング後のスクリーニングで得られた陽性wellのハイブリドーマ11種類を、それぞれ、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を1wellあたり1ml分注した24well培養プレートに採取した。数日間培養し、ある程度細胞が増えたら、各細胞を、1種類につき25cm2培養フラスコ2個に移した。なお、各培養フラスコには、あらかじめ、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)各5mlを入れておいた。各細胞において、前記2個の25cm2培養培養フラスコのうち、1個は、ハイブリドーマを10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)で培養出来る様に馴化培養を実施した。残りの1個は凍結ストックした。馴化培養したハイブリドーマは、10%FBS RPMI1640培地で培養可能になり、コンフルエントに近づいた時点で、細胞凍結保存液(商品名セルバンカー)を含むクライオチューブ中3本に凍結ストックした。なお、ハイブリドーマ1種につき前記クライオチューブを3本用いた。この時点でクローン確立(11クローン)とした。前述の通り、これら11種類のクローンを、それぞれA4, A8, A9, B6, B11, C6, C11, D6, D12, F4, H4と名づけた。これらのハイブリドーマおよびそれにより産生されるモノクローナル抗体を、それぞれ実施例1(A4)、実施例2(A8)、実施例3(A9)、実施例4(B6)、実施例5(B11)、実施例6(C6)、実施例7(C11)、実施例8(D6)、実施例9(D12)、実施例10(F4)、および実施例11(H4)とする。(5.腹水採取) 上記11種類のクローンのうち、実施例1(A4)、実施例2(A8)、実施例4(B6)、実施例5(B11)、実施例6(C6)、および実施例8(D6)の6種類のハイブリドーマをマウス腹腔内に接種して腹水を採取した。腹水の採取方法は、以下の通りである。(5−1.準備) マウス(BALB/c ♂ 6週齢)、プリスタン、2.5ml注射筒、5ml注射筒、25G×5/8注射針、18G×11/2注射針、15ml遠心管(または50ml遠心管)、EDTA 2K水溶液(80mg/ml)、アルコール綿およびその他必要なものを準備した。(5−2.腹水採取) 1週間馴化飼育したマウスに、25G×5/8の注射針付2.5ml注射筒でプリスタンを1匹あたり0.5ml投与した。プリスタン投与してから1週間以上経過した後に、実施例1(A4)、実施例2(A8)、実施例4(B6)、実施例5(B11)、実施例6(C6)、および実施例8(D6)のいずれかのハイブリドーマを懸濁させたPBS(−)を、25G×5/8の注射針付2.5ml注射筒で1匹あたり1ml投与した。マウス1匹あたりの細胞投与数は、約5×106個とした。細胞投与後、経過を観察し、約10日後から腹水を採取した。具体的には、18G×11/2の注射針をマウスの腹部に刺し、EDTA 2K溶液(腹水1mlあたり2mg)の入った15ml遠心管(または50ml遠心管)に腹水を滴下して採取した。可能な場合は、数日後、再度腹水を採取(2〜3回)採取した。採取した腹水を、4℃において3,500r.p.m,で10分間遠心分離し、遠心管に入れたまま凍結保存した。なお、腹水採取までの上記日数は、ハイブリドーマの性質、マウスの性質、飼育条件等により若干異なる場合がある。(6.モノクローナル抗体の性質) 前記3種類の細胞画分(4E1, 3F11, 1B5)が産生する培養上清は、結合領域由来の不飽和六糖ペプチド画分だけでなく、それから酢酸水銀処理によって調製したGalNAc-GlcA-Gal-Gal-Xyl骨格を含む五糖ペプチド画分、さらに不飽和六糖ペプチドをコンドロイチナーゼAC-IとAC-IIの混合液で処理して調製したΔHexA-Gal-Gal-Xyl骨格を含む不飽和四糖ペプチド画分とも反応した。しかし、これら3種類の抗体は、クジラ軟骨からサメ軟骨の場合と同様にして調製したCS結合領域由来の不飽和六糖ペプチド画分とは反応しなかった。なお、酢酸水銀処理の具体的な方法は前記の通りである。また、前記不飽和四糖ペプチド画分の調製方法は、具体的には、約1nmolの基質(前記不飽和六糖ペプチド画分)に対し、各5mIUの酵素(コンドロイチナーゼAC-IとAC-IIの混合液)を用い、50mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.3)中において37℃で1時間インキュベートして調製した。目的とする不飽和四糖ペプチド画分は、ゲル濾過クロマトグラフィーで回収した。なお、サメ軟骨由来CSの結合領域とクジラ軟骨由来CSの結合領域の構造の相違は、例えば、下記参考文献6および参考文献7等に詳しく記載されている。(参考文献6)菅原一幸、http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/proteoglycan/PGA06J.html(参考文献7)Sugahara, K., Ohkita, Y., Shibata, Y., Yoshida, K. and Ikegami, A. (1995) Structural studies on the hexasaccharide alditols isolated from the carbohydrate-protein linkage region of dermatan sulphate proteoglycans of bovine aorta. Demonstration of iduronic acid-containing components. 前記3種類のモノクローナル抗体がサメ軟骨由来CS結合領域を特異的に認識し、クジラ軟骨由来CS結合領域を認識しないことの機構は必ずしも明らかではないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、まず、クジラ軟骨のCSの結合領域にはサメの結合領域の硫酸化修飾構造とは異なる構造(GlcA-Gal(4-O-sulfate)-Gal-Xyl)が存在するので(前記参考文献8)、前記3種類のモノクローナル抗体は、ガラクトースの硫酸化構造の違い、またはペプチド配列の違いを認識している可能性がある。また、CSは、HSと同様、結合領域のXylにおける2位がリン酸化修飾を受け得るため、抗体の認識機構にリン酸化修飾が係っている可能性もある。ただし、これらは、推測可能な機構の一例であって、本発明を何ら限定しない。 さらに、前記細胞画分4E1から得られた実施例1(A4)、実施例2(A8)、実施例3(A9)、実施例4(B6)、実施例5(B11)、実施例6(C6)、実施例7(C11)、実施例8(D6)、実施例9(D12)、実施例10(F4)、および実施例11(H4)の11種類のモノクローナル抗体について、サメ軟骨由来CS結合領域およびクジラ軟骨由来CS結合領域に対する反応性を、前述と同様に、ELISA法により試験した。すなわち、まず、サメ軟骨CSの結合領域由来の六糖ペプチド画分、五糖ペプチド画分、四糖ペプチド画分あるいはクジラ軟骨のCSの結合領域から調製した六糖ペプチド画分または五糖ペプチド画分をMaxisorpプレートに固相化した。次に、実施例1〜11の11種類のハイブリドーマクローンのうちいずれかの培養上清をそれぞれ加えた。さらに、ヤギの抗マウスIgG/IgE抗体(アルカリフォスファターゼ標識)を加え、基質であるパラニトロフェニルフォスフェートを加え、37℃で8分間反応させた。遊離したパラニトロフェノールの量を、波長415nmの吸光度測定により検出し、各モノクローナル抗体と各糖ペプチド画分との反応性を評価した。図1の棒グラフに、その結果を示す。同図中において、縦軸は、波長415nmにおける吸光度(相対値)であり、すなわちモノクローナル抗体の反応性の指標である。「A4」は、実施例1のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「A8」は、実施例2のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「A9」は、実施例3のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「B6」は、実施例4のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「B11」は、実施例5のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「C6」は、実施例6のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「C11」は、実施例7のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「D6」は、実施例8のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「D12」は、実施例9のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「F4」は、実施例10のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「H4」は、実施例11のモノクローナル抗体の測定結果を示す。Blankは、1次抗体(モノクローナル抗体)を加えなかった場合の測定結果を示す。各実施例のモノクローナル抗体およびBlankにおいて、各バーは、左側から順に、下記(1)〜(6)の場合の吸光度を示す。(1)サメ軟骨由来不飽和六糖ペプチド画分と反応させた場合(hexa lk re peptide(sh.))(2)サメ軟骨由来五糖ペプチド画分と反応させた場合(penta lk re peptide(sh.))(3)サメ軟骨由来四糖ペプチド画分と反応させた場合(tetra lk re peptide(sh.))(4)クジラ軟骨由来不飽和六糖ペプチド画分と反応させた場合(hexa lk re peptide(wh.))(5)クジラ軟骨由来五糖ペプチド画分と反応させた場合(penta lk re peptide(sh.))(6)抗原を加えなかった場合(no Antigen) 図示のとおり、実施例1〜11の11種類のクローンは、もとの4E1と同様、すべてサメの結合領域由来の六糖ペプチド画分、五糖ペプチド画分、四糖ペプチド画分とも反応したが、クジラ軟骨のCS由来の六糖ペプチド画分や五糖ペプチド画分とは全く反応しなかった。サメ軟骨由来ペプチド画分については、五糖から四糖に削ると反応性が低下したことから、削られたGalNAcが認識されていると判断できる。また、四糖ペプチド画分についても、六糖ペプチド画分および五糖ペプチド画分と比較すると反応性は弱くなるが、有意な反応性を示した。このことから、実施例1〜11のクローンは、サメ軟骨CS由来結合領域のGalNAc構造のみならず、それ以外の部分の構造をも特異的に認識することが確認された。なお、必ずしも明らかでないが、前記のような結合領域の糖鎖の修飾構造のみならず、ペプチドのアミノ酸配列の相違をも認識している可能性が考えられる。このように、実施例1〜11のモノクローナル抗体は、サメ軟骨CS由来結合領域に対し、きわめて特異的な反応性を示す抗体であった。11種類のクローンの反応性は極めて類似していた。なお、抗原の糖ペプチドを加えてないwellとは反応しなかったことから、非特異的な吸着はないことが確認された。 上記11種類のクローンのうち、実施例1(A4)、実施例2(A8)、実施例4(B6)、実施例5(B11)、実施例6(C6)、および実施例8(D6)の6種類のハイブリドーマをマウス腹腔内に接種して腹水を採取した。腹水の採取方法は、前述の通りである。そして、得られた腹水について,さらにELISA法により反応性を確認した。ELISA法は、図1の場合と同様にして行った。図2の棒グラフに、その結果を示す。同図中において、縦軸は、波長415nmにおける吸光度(相対値)であり、すなわちモノクローナル抗体の反応性の指標である。「A4」は、実施例1のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「A8」は、実施例2のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「B6」は、実施例4のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「B11」は、実施例5のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「C6」は、実施例6のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「D6」は、実施例8のモノクローナル抗体の測定結果を示す。「no primary Ab」は、1次抗体(モノクローナル抗体)を加えなかった場合の測定結果を示す。各実施例のモノクローナル抗体および「no primary Ab」において、各バーは、左側から順に、下記(1)〜(4)の場合の吸光度を示す。(1)サメ軟骨由来不飽和六糖ペプチド画分と反応させた場合(shark hexa)(2)サメ軟骨由来四糖ペプチド画分と反応させた場合(shark tetra)(3)クジラ軟骨由来不飽和六糖ペプチド画分と反応させた場合(whale hexa)(4)抗原を加えなかった場合(no GAGs) 図示のとおり、腹水から得られたモノクローナル抗体も、ハイブリドーマ培養上清から得られたモノクローナル抗体と同様の反応性を示した。すなわち、サメのCS由来の四糖、五糖、六糖ペプチド画分と反応性を示したが、クジラ軟骨のCS由来の結合領域由来の糖ペプチド画分とは反応性を示さなかった。抗原の糖ペプチドを加えてないwell(no GAGs)とは反応せず、1次抗体無しのblank(no primary Ab)でも非特異的な吸着は見られなかった。6種類の腹水の反応性は極めて類似していた。 さらに、実施例1〜11のモノクローナル抗体を用い、ヒトおよびマウスの細胞について、癌細胞の染色、腫瘍組織の染色、および癌細胞の転移阻害効果をそれぞれ確認することができた。[実施例12〜17] 本実施例では、E二糖単位を60%も含むイカ軟骨から抽出および精製したコンドロイチン硫酸Eタイプを免疫原とし、マウスを免疫して得た脾臓細胞を用いて、常法に従い、ハイブリドーマを作製した。また、そのハイブリドーマをマウス腹腔に注射し、腹水も作成した。そして、前記ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の反応性を確認した。 以下に、本実施例の操作を具体的に示す。なお、化学物質は、特に示さない限り、全て試薬級であり、市販品として購入することができる。(1.抗体産生のための免疫原の調製) 下記参考文献8および9の方法に従って、イカの頭蓋軟骨をタンパク分解酵素であるアクチナーゼ Eで徹底消化後、エタノールで多糖(CS-Eすなわちコンドロイチン硫酸E)を沈殿させ、Dowex 1カラムを用いたイオン交換クロマトグラフィーで精製して、3.0M NaClで溶出された主要な画分を免疫原とした。(参考文献8)Kawai, Y., Seno, N., Anno, K. (1966) The Journal of Biochemistry, Vol. 60, No. 3, 317-321(参考文献9)Nandini, C. D., Mikami, T., Ohta, M., Itoh, N., Akiyama-Nambu, F., and Sugahara, K. (2004) J. Biol. Chem. 279, 50799-50809 前記免疫原(イカ軟骨由来CS-E)の調製方法は、より具体的には以下のとおりである。すなわち、まず、スルメイカ(Ommastrephes sloani pacificus)頭蓋軟骨から他の組織を除去し、1.5倍体積の水を加え、ホモジナイザー(商品名Waring blender)でホモジナイズした。得られた懸濁液を沸騰水浴で1時間加熱し、冷却後、2質量%のNaOH水溶液を加え、4〜5℃で24時間攪拌してGAGを抽出した。得られた抽出物を遠心分離し、酢酸を加えてpH7.8に調整し、アクチナーゼ E[EC class 3.4.4]をタンパク質1gあたり5mg加え、40℃で24時間インキュベートして消化した。その後、前記の半分の量のアクチナーゼ Eを追加し、さらに24時間インキュベートを続けて徹底消化した。消化終了後、10質量%濃度のトリクロロ酢酸を加え、遠心分離および透析後、得られた透明な溶液を減圧濃縮した。そのようにして得られたムコ多糖混合物に、3倍体積のエタノール(1質量%酢酸ナトリウムを含む)を加えて沈殿させた。沈殿したGAG混合物を、Dowex 1-Cl-カラム(ダウ・ケミカル社の商品名)により分離した。分離は、NaCl濃度を徐々に増加させて各成分を順に溶出させることにより行った。3.0M NaCl溶出により得られたフラクションをキャラクタライズし、新たに調製した亜硝酸水溶液(pH 1.5)を加える、いわゆるShivelyとConradの方法により、ヘパラン硫酸(HS)を除去した。その後、0.5M Na2CO3水溶液を加えて亜硝酸を中和し、Sephadex G-50カラム(商品名、56×1cm)を通してCS-EとHSとを分離した。溶出液としては、50mMピリジン酢酸塩緩衝液(pH 5.0)を用い、溶出速度は0.6ml/minとした。このようにしてHSを除いたCS-E画分を、さらにC18 cartridge(商品名、C18結合型シリカゲルを含むカートリッジ)を通して疎水性ペプチドを除去した。このようにして得たCS-E調製物を免疫原とした。 また、前記CS-E調製物は、下記参考文献10の記載にしたがい、アニオン交換クロマトグラフィーで精製後、ビオチン化CS-E画分を調製した。このビオチン化CS-E画分は、抗体産生状況をモニターするために用いた。(参考文献10)Deepa, S. S., Umehara, Y., Higashiyama, S., Itoh N., and Sugahara , K. (2002) J. Biol. Chem. 277, 43707-43716[ビオチン化CS-Eの調製] 前記CS-E調製物を、100mM MES(N-モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液(pH5.5)に2mg/ml濃度で溶解させた。一方、50mMビオチン-LC-ヒドラジド(Pierce社)のDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液を新たに調製し、そこに、前記CS-E溶液を混合した。このとき、CS-HまたはCS-Eと、ビオチン-LC-ヒドラジドとの質量比が20:1となるようにした。この混合物に、前記と同じ緩衝液(100mM MES(モルホリノエタンスルホン酸)水溶液(pH5.5))に溶かした0.5M EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)塩酸塩水溶液を加えた。このとき、CS-Eと、EDACとの質量比が8:1となるようにした。この溶液を室温で終夜穏やかに攪拌すると、標識反応が起こった。この反応混合物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)により、室温で24時間透析した。透析は、分子量カットオフ値3,500DaのSpectra/Pormolecular多孔質膜(Spectrum Medical Industries, Inc.社の商品名、カナダ国Laguna Hills)を用いて行った。各調製物中のヘキスロン酸は、GlcUAを標準物質として用い、通常のカルバゾール法により定量した。CS-Eに対するビオチンの結合比(mol/mol)は、HABA色素(2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸)とアビジンとが複合体を形成することを利用した、いわゆるprotocol of Greenにより定量した。具体的には、10mM HABA水溶液60μlを、1mgのアビジンを含む100mMリン酸ナトリウム水溶液(150mM NaClを含む、pH7.2)1.94mlに加えて測定を行った。次に、この試薬溶液の吸光度を、500nmで測定した。さらに、10μlのビオチン化CS-E水溶液(1.7mg/ml)または10μlのCS-H水溶液(2.1mg/ml)を上記試薬溶液90μlに加えたところ、ビオチンがHABAで置換されたことによる吸光度の減少が観測された。これにより、CS-Eに対するビオチンの結合比(mol/mol)を定量したところ、約4.2%のヘキスロン酸基がビオチン標識化されていた。(2.マウスの免疫および採血) マウスの免疫および採血は、以下のようにして行った。(2−1.準備) マウス(BALB/c ♂ 6週齢 4匹使用)、FCA、FIA、PBS(-)、1ml注射筒、26G×1/2注射針、超音波ホモジナイザー、マウス保定器、アルコール綿、ニッパー、ヘマトクリット毛細管、マイクロシリンジおよびマイクロチューブを準備した。その他、前記免疫原等、必要な試薬および器具を準備した。マウスは、日本クレア株式会社から購入し、順化飼育1週間後に使用した。状態の悪いマウスは使用対象から除去した。(2−2.免疫) 以下の手順により、前記マウスを免疫した。すなわち、まず、免疫原(前記イカ軟骨由来CS-E)をリン酸緩衝生理食塩水に溶かし、2000mg/L溶液とした。この免疫原溶液に、等量のアジュバントを加え、1ml注射筒に入れ、超音波ホモジナイザーにてエマルジョン化して免疫用注射液とした。なお、前記混合およびエマルジョン化は、免疫原の活性を損なわないために冷却しながら行った。また、前記アジュバントとしては、初回免疫用にはFCA(フロイント完全アジュバント)を用い、2回目以降の免疫用にはFIA(フロイント不完全アジュバント)を用いた。次に、前記1ml注射筒に26G×1/2注射針を装着させ、マウス背部皮下(アルコール綿で消毒後)に前記免疫用注射液を分散投与した。免疫原の投与量は200μg/匹・回を標準とし、液量は200μl/匹とした。免疫は、0w、2w、4w、6wの4回実施した。なお、「0w」とは、初回の免疫投与時を指し、2w、4w、6wとは、初回免疫投与時から2週間後、4週間後および6週間後にそれぞれ免疫投与したことを示す。(2−3.採血) 4回免疫した前記マウスを保定器に入れ、尾部をアルコール綿で軽く擦り、血管を怒張させた。次に、ニッパーで針先部分を抜いた26G×1/2注射針を、前記マウスの尾静脈に刺入した。出てきた血液をヘマトクリット毛細管で採取した(2本/匹)。この血液を、1時間のインキュベート(約37℃)後、室温において8,000r.p.mで20分間遠心分離した。遠心分離後、血清をマイクロシリンジで採取し、マイクロチューブ内に移した。それを、使用時まで−20℃フリーザで保管した。なお、採血は、0w、5w、7w時にそれぞれ実施した。「0w」とは、前記と同様、初回の免疫投与時を指し、5w、7wとは、それぞれ初回免疫投与時から5週間後および7週間後を示す。(2−4.ストレプトアビジンプレートを用いたELISA法による抗体価測定) 前記マウスから採取した各血清の抗体価を、ストレプトアビジンプレートを用いたELISA法により、定法にしたがって測定した。すなわち、まず、前述の通りビオチン化したCS-E画分を前記ストレプトアビジンプレート(96well ELISAプレート)上に固定した。このウェルを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックし、前記血清(一次抗体を含む)を0.1% BSA/PBSで5,000倍に希釈したものを用いて37℃で1時間インキュベートし、続いてアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIg(G+M)で処理した。酵素活性は、p-ニトロフェニルリン酸を用いて検出し、吸光度は415nmで測定した。(3.ハイブリドーマの製造) 前記ELISA法による評価で抗体価が特に高かったマウス1匹を選択し、その脾細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを製造した。なお、マウス屠殺3日前に、前記免疫用注射液を用い、免疫原100μg/匹・回をマウスに注射して最終ブーストした。(3−1.準備) マウス(前記最終ブーストから3日後のもの)、ビーカー(300ml・1個)、滅菌シャーレ(1枚)、ピンセット(大・小(有鈎・無鈎)・数本)、ハサミ(大・小)、ステンレスバット(2枚)、滅菌ガーゼ、ステンレスメッシュ(数個)、薬さじ(1本)、ボルテックスミキサー、滅菌ピペット(1、2、5、10ml)、マウスミエローマ(SP2)、PBS(−)、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)、RPMI1640培地(血清無し)、滅菌50ml遠心管、PEG、滅菌ピペットチップ(〜200μl)、96well培養プレート、オクタピペット、クライオチューブ(2ml)、吸引ビンセット、血球計算盤、およびその他必要なものを準備した。(3−2.細胞融合およびハイブリドーマの培養) 細胞融合およびハイブリドーマの培養は、以下のようにして行った。すなわち、まず、最終ブーストから3日後のマウスを頚椎脱臼し屠殺後、エタノール噴霧消毒した。次に、前記マウスの全身をエタノールに浸け込み消毒後、背筋をハサミで切り、脾臓を摘出した。摘出した脾臓を滅菌シャーレ内のステンレスメッシュの上に置き、適当量のPBSを添加し、有鈎ピンセットを用いて脾臓に数カ所穴を開け、薬さじを用いてすりこむように粉砕した。前記ステンレスメッシュおよび滅菌シャーレをPBSで洗い、脾細胞を含むPBSを回収し、50ml遠心管に移した。PBSを回収した遠心管を室温において1,300rpmで5分間遠心分離にかけた後、上清を廃棄し、新たなPBSを入れ、ピペッティングし、再度同条件で遠心して洗浄した。 一方、準備した前記脾細胞とミエローマ細胞を5:1の比率で混合し、PBSを加え、室温において、1,300rpmで5分間遠心した。上清を廃棄後、50%PEG法により細胞融合を実施し、ハイブリドーマとした。このハイブリドーマに10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を50ml添加して懸濁させた。滅菌ピペット2mlを用い、あらかじめ準備した96well培養プレート5枚の各wellに、前記ハイブリドーマ懸濁液を100μlずつ播種した。5日後に、オクタピペットを用い、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)を各wellに100μlずつ添加した。その後、コロニーの大きさおよび培地の色の観察を続け、培地添加からさらに7日後に、コロニーの成長がスクリーニングに十分な程度に達したと判断したので、スクリーニングを実施した。(4.スクリーニングおよびクローニング) ハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングは、以下のようにして行った。(4−1.準備) ELISA用器具、器材、試薬、96well培養プレート(細胞入り)、オクタピペット、滅菌ピペットチップ(〜200μl)、ピペットチップ廃棄用容器・滅菌ピペット(1,2,5,10ml)、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)、RPMI1640培地(血清無し)滅菌50ml遠心管、96well培養プレート、24well培養プレート、セルバンカー、クライオチューブ(2ml)、吸引ビンセット、血球計算盤、25cm2培養フラスコ、PBS(−)、およびその他必要なものを準備した。なお、前記「96well培養プレート(細胞入り)」としては、前述の「3.ハイブリドーマの製造」において培養したハイブリドーマのコロニーを含む96well培養プレートをそのまま用いた。(4−2.スクリーニング) 前述の「2−4.ストレプトアビジンプレートを用いた抗体価測定」と同様のELISA法により、ハイブリドーマのスクリーニングを行った。すなわち、まず、前述の通りビオチン化したCS-E画分(抗原)をストレプトアビジンプレート(96well ELISAプレート)上に固定(固相化)した。このウェルを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。一方、オクタピペットを用い、前記ハイブリドーマを含む「96well培養プレート(細胞入り)」から、抗体を含む培養上清を抽出した。この培養上清を、抗原を固相化してBSAでブロックした前記ストレプトアビジンプレート(96well ELISAプレート)の各ウェルに、1wellあたり50μl分注した。これを37℃で1時間インキュベートした後、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIg(G+M)で処理した。酵素活性は、p-ニトロフェニルリン酸を用いて検出し、吸光度は415nmで測定した。(4−3.クローニング) 細胞融合後の前記スクリーニングで陽性と判断されたwell中のハイブリドーマを、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を1wellあたり1ml分注した24well培養プレートに採取した。数日間培養後、6種類のハイブリドーマを選び、1stクローニングを実施した。すなわち、まず、あらかじめ準備した新しい96well培養プレートに、限界希釈法により、1wellあたり4個になるように前記ハイブリドーマを播種した。限界希釈法の溶媒としては、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を使用し、1wellあたり100μlを播種した。なお、1種類のハイブリドーマにつき96well培養プレート0.5枚を使用した(2種類で1枚使用)。播種から5日後に、オクタピペットを使用し、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)を各プレート1wellあたり100μl分注した。数日間培養し、コロニーが肉眼で確認でき、培地の色が薄い黄色になってきた時点でスクリーニングを実施した。スクリーニングの方法は、前述と同様である。 一方、あらかじめ準備しておいた新しい24well培養プレートに、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を1wellあたり1ml分注した。ここに、前記1stクローニング後のスクリーニングで得られた陽性wellにおける6種類のハイブリドーマをそれぞれ添加した。数日間培養し、ある程度細胞が増えたら2ndクローニングを実施した。すなわち、まず、あらかじめ準備した新しい96well培養プレートに、限界希釈法により、1wellあたり1個になるように前記ハイブリドーマを播種した。限界希釈法の溶媒としては、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を使用し、1wellあたり100μlを播種した。なお、1種類のハイブリドーマにつき96well培養プレート0.5枚を使用した(2種類で1枚使用)。さらに、オクタピペットを使用し、10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)を各プレート1wellあたり100μl分注した。約10日間培養し、コロニーが肉眼で確認でき、培地の色が薄い黄色になってきた時点でスクリーニングを実施した。スクリーニングの方法は、前述と同様である。 前記2ndクローニング後のスクリーニングで得られた陽性wellのハイブリドーマ6種類を、それぞれ、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)を1wellあたり1ml分注した24well培養プレートに採取した。数日間培養し、ある程度細胞が増えたら、各細胞を、1種類につき25cm2培養フラスコ2個に移した。なお、各培養フラスコには、あらかじめ、10%FBS RPMI1640培地(HAT入り)各5mlを入れておいた。各細胞において、前記2個の25cm2培養フラスコのうち、1個は、ハイブリドーマを10%FBS RPMI1640培地(HAT無し)で培養出来る様に馴化培養を実施した。残りの1個は凍結ストックした。馴化培養したハイブリドーマは、10%FBS RPMI1640培地で培養可能になり、コンフルエントに近づいた時点で、細胞凍結保存液(商品名セルバンカー)を含むクライオチューブ中3本に凍結ストックした。なお、ハイブリドーマ1種につき前記クライオチューブを3本用いた。この時点でクローン確立(6クローン)とした。これらのクローンを、それぞれ、1C7(C3)、1C7(H10)、1C7(B7)、2A2(A8)、1C7(D4)、2A2(F9)と名付けた。各クローンを、マウスに投与できる細胞数(5×106個/匹)まで培養した。回収したハイブリドーマはPBS(−)にて懸濁し、マウスに投与できる状態にした。 なお、前記6つのクローン(ハイブリドーマ)およびそれにより産生されるモノクローナル抗体を、それぞれ実施例12〜17とする。実施例12〜17により製造したハイブリドーマは、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている。寄託日は、いずれも2008年2月22日である。下記表1に、実施例番号、ハイブリドーマ名称および受託番号の関係を示す。[表1]実施例番号 ハイブリドーマ名称 受託番号 実施例12 1C7(C3) NITE P−503実施例13 1C7(H10) NITE P−504実施例14 1C7(B7) NITE P−505実施例15 2A2(A8) NITE P−506実施例16 1C7(D4) NITE P−507実施例17 2A2(F9) NITE P−508(5.腹水採取) 前記6つのクローンを用い、以下のようにして腹水を採取した。(5−1.準備) マウス(BALB/c ♂ 6週齢)、プリスタン、2.5ml注射筒、5ml注射筒、25G×5/8注射針、18G×11/2注射針、15ml遠心管(または50ml遠心管)、EDTA 2K水溶液(80mg/ml)、アルコール綿およびその他必要なものを準備した。(5−2.腹水採取) 1週間馴化飼育したマウスに、25G×5/8の注射針付2.5ml注射筒でプリスタンを1匹あたり0.5ml投与した。プリスタン投与してから1週間以上経過した後に、実施例18〜23のいずれかのハイブリドーマを懸濁させたPBS(−)を、25G×5/8の注射針付2.5ml注射筒で1匹あたり1ml投与した。マウス1匹あたりの細胞投与数は、約5×106個とした。細胞投与後、経過を観察し、約10日後から腹水を採取した。具体的には、18G×11/2の注射針をマウスの腹部に刺し、EDTA 2K溶液(腹水1mlあたり2mg)の入った15ml遠心管(または50ml遠心管)に腹水を滴下して採取した。可能な場合は、数日後、再度腹水を採取(2〜3回)採取した。採取した腹水を、4℃において3,500r.p.m,で10分間遠心分離し、遠心管に入れたまま凍結保存した。なお、腹水採取までの上記日数は、ハイブリドーマの性質、マウスの性質、飼育条件等により若干異なる場合がある。(6.モノクローナル抗体の反応性) モノクローナル抗体を含む前記腹水を用いて、実施例12〜17のモノクローナル抗体とCS-EおよびCS-H(DS-E)との反応性を確認した。さらに、市販の様々なコンドロイチン硫酸(クジラ軟骨由来のCS-A、サメ軟骨由来のCS-CおよびCS-D)、ブタ皮膚由来のデルマタン硫酸(CS-Bとも呼ばれる)、およびブタ小腸由来のヘパリンとの反応性も同様に確認した。 抗原のCS-Eは、前述のとおり調製したビオチン化CS-Eを用いた。一方、CS-Hは、前記参考文献9(Nandini, C. D., Mikami, T., Ohta, M., Itoh, N., Akiyama-Nambu, F., and Sugahara, K. (2004) J. Biol. Chem. 279, 50799-50809)の方法を参照してヌタウナギ(Eptatretus burgeri)脊索から単離し、精製した。すなわち、まず、前記脊索からCS-Eをアセトンにより抽出した後、(アクチナーゼ E)で徹底消化した。タンパク質は、20%トリクロロ酢酸水溶液を加えて沈殿させることにより除去した。その後、そのGAG水溶液に、2倍体積のエタノール(2.5質量%酢酸カルシウムと0.25M 酢酸を含む)を加えてGAGを沈殿させた。沈殿したGAG混合物を、Dowex 1-Cl-カラム(ダウ・ケミカル社の商品名)により分離した。分離は、NaCl濃度を徐々に増加させて各成分を順に溶出させることにより行った。2.0M NaCl溶出により得られたフラクションをキャラクタライズし、新たに調製した亜硝酸水溶液(pH 1.5)を加える、いわゆるShivelyとConradの方法により、ヘパラン硫酸(HS)を除去した。その後、0.5M Na2CO3水溶液を加えて亜硝酸を中和し、Sephadex G-50カラム(商品名、56×1cm)を通してCS-HとHSとを分離した。溶出液としては、50mMピリジン酢酸塩緩衝液(pH 5.0)を用い、溶出速度は0.6ml/minとした。さらに、C18 cartridge(商品名、C18結合型シリカゲルを含むカートリッジ)を通して疎水性ペプチドを除去し、目的とするCS-H調製物を得た。また、CS-H調製物を前記CS-Eと同様の方法でビオチン化し、モノクローナル抗体の反応性を確認するための抗原として用いた。さらに、CS-A、CS-B、CS-C、CS-Dは、市販品を同様にビオチン化して用いた。ブタ小腸から精製した市販のヘパリンも同様にビオチン化して用いた。 実施例12〜17のモノクローナル抗体と前記各GAG(CS-A、CS-B、CS-C、CS-D、CS-E、CS-Hおよびヘパリン)との反応性は、前述と同様のELISA法により確認した。すなわち、まず、ビオチン化した前記各種GAGサンプルを、ストレプトアビジンをコートしたプラスチックプレートに固相化した。そこに、実施例12〜17のいずれかのモノクローナル抗体を含む腹水(抗血清)を0.1% BSA/PBSで100倍に希釈した希釈液を加えて反応させた。そこに二次抗体を加えて発色させ、結合した1次抗体を検出し、抗体価を測定した。ELISA法のさらに具体的な操作は、前述の通りである。なお、反応時間(インキュベート時間)は60分間とした。 図3A〜図3Fの棒グラフに、前記ELISA法により確認された実施例1〜6のモノクローナル抗体と前記各GAGとの反応性を示す。図3Aは、実施例12(1C7(C3))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図3Bは、実施例13(1C7(H10))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図3Cは、実施例14(1C7(B7))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図3Dは、実施例15(2A2(A8))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図3Eは、実施例16(1C7(D4))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図3Fは、実施例17(2A2(F9))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。各図中において、縦軸は、波長415nmにおける吸光度(相対値)であり、すなわちモノクローナル抗体の反応性(抗体価)の指標である。各図中の各バーは、前記各GAGをそれぞれモノクローナル抗体と反応させた場合の吸光度を示す。なお、一番右側の「Background」は、GAGを何も加えなかった場合の吸光度を示す。 図示のとおり、実施例12〜14の3種類のハイブリドーマ(1C7(C3)、1C7(H10)、1C7(B7))は、CS-E(E二糖単位を多く含む)およびCS-H(iE二糖単位を多く含む)の両方と反応した。また、ブタ小腸由来の硫酸化程度の非常に高いヘパリンとも反応した。一方、実施例15〜17の3種類のハイブリドーマ(2A2(A8)、1C7(D4)、2A2(F9))は、CS-Hに対する反応性が特に高く、CS-Eおよびヘパリンとは反応性が弱かった。また、実施例12〜17のいずれのモノクローナル抗体も、CS-A、CS-B、CS-C、およびCS-Dとはほとんど反応せず、また、糖鎖をコートしてないwell(Background)に対する非特異的結合は見られなかった。 なお、E二糖単位は、コンドロイチン硫酸E(CS-E)に多く含まれる構造であり、GlcAを構成単位とし、[GlcA-GalNAc(4-O-sulfate, 6-O-sulfate)]で表される。iE二糖単位は、コンドロイチン硫酸H(CS-H)に多く含まれる構造であり、IdoAを構成単位とし、[IdoA-GalNAc(4-O-sulfate, 6-O-sulfate)]で表され、E二糖単位と同じ硫酸化パターンを有する(非特許文献3等)。E二糖単位およびiE二糖単位は、いずれも、生物活性上、重要な構造である。特に、E二糖単位については、マウス肺がん細胞の肺への転移などの試験結果から、腫瘍転移等への関連性が確認されている。このため、E二糖単位またはiE二糖単位を認識する抗体に関する研究開発も進められている(特開2007−256217号公報等)。 前述の通り、実施例12〜17のモノクローナル抗体は、CS-Eを免疫原として調製したが、CS-Hおよびヘパリンに対しても反応性を示した。一方、市販のCS-A、CS-B、CS-C、およびCS-Dに対しては反応性を示さなかった。このことは、実施例12〜17のモノクローナル抗体は、CS-E、CS-Hおよびヘパリンに共通する構造である結合領域の四糖構造(GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xyl)を認識していることを示唆する。図3で用いたCS-E、CS-Hおよびヘパリンは、酸加水分解処理およびアルカリ加水分解処理をせずアクチナーゼ Eで徹底消化したため、市販のCS-AおよびCS-Cと異なり、結合領域が残っていると考えられるためである。一方、市販のCS-A、CS-B、CS-C、およびCS-Dは、アルカリ加水分解処理により結合領域が分解されているので、実施例12〜17のモノクローナル抗体とは反応しなかったと考えられる。ただし、これらの考察は、推定可能な反応機構の一例であって、本発明を何ら限定しない。 さらに、腹水(抗血清)の希釈倍率を、10倍、50倍、100倍、400倍および1600倍に種々変化させる以外は図3と同様の方法で、実施例12〜17のモノクローナル抗体と前記各種GAGとの反応性を確認した。図4A〜図4Fの折れ線グラフに、CS-EおよびCS-Hとの反応性を示す。図4Aは、実施例12(1C7(C3))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図4Bは、実施例13(1C7(H10))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図4Cは、実施例14(1C7(B7))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図4Dは、実施例15(2A2(A8))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図4Eは、実施例16(1C7(D4))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。図4Fは、実施例17(2A2(F9))のモノクローナル抗体の反応性を示すグラフである。各図中において、縦軸は、波長415nmにおける吸光度(相対値)であり、すなわちモノクローナル抗体の反応性(抗体価)の指標である。横軸の数値(Dilution)は、腹水(抗血清)の希釈倍率を示す。各図中の折れ線「CS-E」および「CS-H」は、CS-EおよびCS-Hをそれぞれモノクローナル抗体と反応させた場合の吸光度を示す。「Background」は、GAGを何も加えなかった場合の吸光度を示す。図示のとおり、実施例12〜14の各モノクローナル抗体は、CS-EおよびCS-Hの両方に対し高い反応性を示した。一方、実施例15〜17の各モノクローナル抗体は、CS-Hと特異的に反応し、CS-Eとの反応性は非常に弱かった。これらは、図3の結果と一致した。また、実施例12〜17の各モノクローナル抗体は、腹水(抗血清)の希釈倍率を高くしても、CS-EおよびCS-Hに対する前述の反応性(抗体価)および反応特異性を維持していた。 さらに、図3で用いたものと同じCS-E、CS-HおよびヘパリンをコンドロイチナーゼABCで徹底消化して六糖ペプチドとし、図3と同様のELISA法で反応性を確認したが、反応性は消失しなかった。この六糖ペプチドは、前記四糖構造(GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xyl)に、それぞれのGAG糖鎖に特有の二糖単位(例えばCS-EにおけるE二糖単位、CS-HにおけるiE二糖単位)が一つ付加した六糖単位を有し、さらにその六糖単位にペプチドが結合している。また、さらに、前記六糖ペプチドをコンドロイチナーゼAC−IとAC−IIの混合液で消化し、前記四糖構造に四糖ペプチドが結合した四糖ペプチドとしたが、実施例12〜17のモノクローナル抗体に対する反応性は消失しなかった。なお、酵素消化の具体的な操作は前記と同様である。 図5に、CS-Eを用いた前記反応性確認試験の結果を示す。同図中において、縦軸は、波長415nmにおける吸光度(相対値)であり、すなわちモノクローナル抗体の反応性(抗体価)の指標である。各バーは、CS-Eまたはその消化物をそれぞれモノクローナル抗体と反応させた場合の吸光度を示す。なお、図5において、CS-Eは、前記イカ軟骨由来のものと、市販のものをそれぞれ用いた。図中、各バーは、各CS-Eまたはその消化物(ビオチン化したもの)を実施例のモノクローナル抗体と反応させた際の吸光度を示す。すなわち、「CS-E(S)」は、イカ軟骨から調製した前記CS-Eの吸光度を示す。「CS-E(S)+ABC」は、イカ軟骨から調製した前記CS-EをコンドロイチナーゼABCで徹底消化したものの吸光度を示す。「CS-E(S)+ACI+AC2」は、イカ軟骨から調製した前記CS-EをコンドロイチナーゼABCで徹底消化後、さらにコンドロイチナーゼAC−IとAC−IIの混合液で徹底消化したものの吸光度を示す。「CS-E(C)」は、市販のCS-Eの吸光度を示す。「CS-E(C)+ABC」は、前記市販のCS-EをコンドロイチナーゼABCで徹底消化したものの吸光度を示す。「CS-E(C)+ACI+AC2」は、前記市販のCS-EをコンドロイチナーゼABCで徹底消化後、さらにコンドロイチナーゼAC−IとAC−IIの混合液で徹底消化したものの吸光度を示す。なお、一番右側の「Background」は、抗原(GAG)を何も加えなかった場合の吸光度を示す。各抗原における3本のバーは、左側から順に、実施例13(1C7(H10))のモノクローナル抗体と反応させた際の吸光度、実施例17(2A2(F9))のモノクローナル抗体と反応させた際の吸光度、および、一次抗体を加えなかった場合(Blank)の吸光度を示す。図示の通り、イカ軟骨由来(自家調製)CS-Eおよび市販のCS-Eのいずれも、コンドロイチナーゼABCで徹底消化しても実施例13(1C7(H10))および実施例17(2A2(F9))のモノクローナル抗体との反応性はほとんど変化しなかった。さらにコンドロイチナーゼAC−IとAC−IIの混合液で徹底消化すると、反応性は若干低くなるが、依然として反応性が残っていた。なお、糖鎖をコートしてないwell(Background)に対する非特異的結合は見られなかった。また、ヘパリンについても同様に、酵素消化しても反応性が残ることを確認した。CS-Hについては、コンドロイチナーゼABCで徹底消化した場合、およびさらにコンドロイチナーゼAC−IとAC−IIの混合液で徹底消化した場合、またはさらにコンドロイチナーゼBで徹底消化した場合のいずれも、酵素消化しない場合より反応性が低下したが、やはり反応性が残っていた。 図5のように、GAG糖鎖を酵素消化しても反応性が消失しなかったことからも、実施例12〜17のモノクローナル抗体は、前記四糖構造(GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xyl)を認識していることが示唆された。ただし、前述の通り、前記六糖ペプチドは、前記四糖構造のみならず、それぞれのGAG糖鎖に特有の二糖単位をも含む。その二糖単位をコンドロイチナーゼAC−IとAC−IIの混合液で徹底消化すると、反応性が若干低下した。このことから、実施例12〜17のモノクローナル抗体は、前記四糖構造のみならず、前記二糖単位をも認識していることが考えられる。このことは、図3において、CS-E、CS-Hおよびヘパリンに対する反応性がそれぞれ異なることからも示唆される。ただし、これらの考察は、推定可能な反応機構の一例であって、本発明を何ら限定しない。 さらに、実施例13〜27のモノクローナル抗体を用いて癌細胞の転移阻害を行い、強い阻害効果を確認することができた。 以上説明した通り、本発明によれば、糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合領域に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を提供することができる。すなわち、本発明のモノクローナル抗体によれば、糖タンパク質の結合領域を特異的に認識することができる。このため、本発明のモノクローナル抗体は、基礎研究および応用の両面において、前述のような種々の製品、薬学的組成物、医薬等のあらゆる用途に用いることが可能である。例えば、前述の糖タンパク質の生合成メカニズム研究等において、これまでにないユニークな基礎研究用の試薬として用いることができる可能性がある。また、抗体を使った疾病の血清診断法、例えば遺伝病、炎症、自己免疫疾患をはじめとする各種の疾病の診断にも応用可能であると考えられる。このように、本発明は、基礎医学、応用医学、創薬等の各分野において多大な産業上利用可能性を有する。さらに、本発明の用途は上記に制限されず、種々の応用が可能であり、どのような用途に用いてもよい。図1は、本発明の実施例のモノクローナル抗体において、サメ軟骨由来コンドロイチン硫酸の結合領域およびクジラ軟骨由来コンドロイチン硫酸の結合領域との反応性を示すグラフである。図2は、図1の実施例において、マウス腹水から採取したモノクローナル抗体の、サメ軟骨由来コンドロイチン硫酸の結合領域およびクジラ軟骨由来コンドロイチン硫酸の結合領域との反応性を示すグラフである。図3Aは、本発明の実施例のモノクローナル抗体と種々のグリコサミノグリカン(GAG)との反応性を示すグラフである。図3Bは、別の実施例のモノクローナル抗体と種々のグリコサミノグリカン(GAG)との反応性を示すグラフである。図3Cは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と種々のグリコサミノグリカン(GAG)との反応性を示すグラフである。図3Dは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と種々のグリコサミノグリカン(GAG)との反応性を示すグラフである。図3Eは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と種々のグリコサミノグリカン(GAG)との反応性を示すグラフである。図3Fは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と種々のグリコサミノグリカン(GAG)との反応性を示すグラフである。図4Aは、本発明の実施例のモノクローナル抗体と、コンドロイチン硫酸E(CS-E)およびコンドロイチン硫酸H(CS-H)との反応性を示すグラフである。図4Bは、別の実施例のモノクローナル抗体と、コンドロイチン硫酸E(CS-E)およびコンドロイチン硫酸H(CS-H)との反応性を示すグラフである。図4Cは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と、コンドロイチン硫酸E(CS-E)およびコンドロイチン硫酸H(CS-H)との反応性を示すグラフである。図4Dは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と、コンドロイチン硫酸E(CS-E)およびコンドロイチン硫酸H(CS-H)との反応性を示すグラフである。図4Eは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と、コンドロイチン硫酸E(CS-E)およびコンドロイチン硫酸H(CS-H)との反応性を示すグラフである。図4Fは、さらに別の実施例のモノクローナル抗体と、コンドロイチン硫酸E(CS-E)およびコンドロイチン硫酸H(CS-H)との反応性を示すグラフである。図5は、実施例のモノクローナル抗体とコンドロイチン硫酸E(CS-E)との反応において、コンドロイチン硫酸E(CS-E)をコンドロイチナーゼで消化した場合と消化しない場合との反応性を示すグラフである。 糖タンパク質の糖鎖部分とコアタンパク質部分との結合領域に対し特異的に反応するモノクローナル抗体。 前記糖タンパク質が、プロテオグリカンである請求項1記載のモノクローナル抗体。 前記糖タンパク質の糖鎖部分およびコアタンパク質部分に反応しない請求項1または2記載のモノクローナル抗体。 前記糖タンパク質が、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、またはこれらと類似の構造を有する多糖鎖もしくはオリゴ糖鎖から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンである請求項1から3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。 受託番号がNITE P−503、NITE P−504、NITE P−505、NITE P−506、NITE P−507、またはNITE P−508であるハイブリドーマにより産生される請求項1から4のいずれかに記載のモノクローナル抗体。 請求項1から5のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。 受託番号がNITE P−503、NITE P−504、NITE P−505、NITE P−506、NITE P−507、またはNITE P−508である請求項6記載のハイブリドーマ。 糖タンパク質を原料として免疫原を製造する方法であって、前記糖タンパク質をプロテアーゼで消化し、アルカリ加水分解処理をしないことを特徴とする製造方法。 前記糖タンパク質が、プロテオグリカンである請求項8記載の製造方法。 前記糖タンパク質が、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、またはこれらと類似の構造を有する多糖鎖もしくはオリゴ糖鎖から形成された糖鎖部分を有するプロテオグリカンである請求項8または9記載の製造方法。 【課題】 糖タンパク質の結合領域を特異的に認識する抗体を提供する。 【解決手段】 前記糖タンパク質をプロテアーゼで消化し、アルカリ加水分解処理をしないで免疫原を製造する。この免疫原により動物を免疫し、抗体産生細胞を採取し、この抗体産生細胞またはそのハイブリドーマからモノクローナル抗体を抽出する。本発明は、例えば、糖タンパク質結合領域認識試薬、腫瘍マーカー認識プローブ、糖鎖認識プローブ等の種々の用途に応用可能であり、基礎医学、応用医学、創薬等の各分野において多大な産業上利用可能性を有する。【選択図】 なし