タイトル: | 公開特許公報(A)_C.necatorにグルコース資化性を付与する方法及びそれを用いたPHAの製造方法 |
出願番号: | 2008069331 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 1/21,C12N 15/09,C12P 7/62 |
岩澤 玲子 折田 和泉 福居 俊昭 JP 2009225662 公開特許公報(A) 20091008 2008069331 20080318 C.necatorにグルコース資化性を付与する方法及びそれを用いたPHAの製造方法 株式会社カネカ 000000941 岩澤 玲子 折田 和泉 福居 俊昭 JP 2008050655 20080229 C12N 1/21 20060101AFI20090911BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090911BHJP C12P 7/62 20060101ALI20090911BHJP JPC12N1/21C12N15/00 AC12N15/00 AC12P7/62 9 OL 11 4B024 4B064 4B065 4B024AA03 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA05 4B024EA04 4B024GA11 4B064AD83 4B064CA02 4B064CA19 4B064CC24 4B064CD09 4B064CE08 4B064DA16 4B065AA01X 4B065AA01Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065AC20 4B065BA02 4B065BB15 4B065BD16 4B065CA12 本発明は生分解性プラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸生産細菌カプリアビダス ネケーター(Cupriavidus necator)にグルコース資化性を付与する方法に関する。また、グルコース資化性を付与した細菌を用いて、グルコースを炭素源として生分解性プラスチックを製造する方法に関する。より詳細には、Zymomonas mobilis由来のグルコーストランスポーター蛋白をコードした遺伝子をC.necatorに導入することによって、該細菌にグルコース資化性を付与することに関する。また、グルコースを炭素源として、該細菌を培養することを特徴とするポリヒドロキシアルカン酸製造方法に関する。 微生物の中には、糖や植物油脂といったバイオマスから、エネルギー貯蔵物質としてポリヒドロキシアルカン酸(以下、PHAと略す)を合成し、細胞内に蓄積するものが存在する。PHAは環境中の微生物によって分解される生分解性プラスチックの1種であり、現在広く使われている石油を原料としたプラスチックとは異なる環境負荷の少ないプラスチックである。 このPHAを構成するモノマー単位は一般名3−ヒドロキシアルカン酸であって、具体的には3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、あるいはよりアルキル鎖の長い3−ヒドロキシアルカン酸である。これら3−ヒドロキシアルカン酸が単重合もしくは共重合することにより、ポリマー分子が形成されている。3−ヒドロキシ酪酸(以下3HBと略す)のホモポリマーであるポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と略す)は、1925年にバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)で最初に発見され、実用化が期待され種々の研究が行われてきた。 水素細菌であるカプリアビダス ネケーター H16株(Cupriavidus necator、旧名はRalstonia eutropha、Alcaligenes eutrophus等)は代表的なPHA生産菌で、フルクトースや植物油脂を炭素源としてP(3HB)を菌体内に大量に合成するため、以前は商業的生産にも用いられてきた。しかし、これらの原料は食料供給と競合してしまうという欠点がある。そこで、木質や稲藁などの、食用に供さないソフトバイオマスに含まれるセルロースに由来するグルコース等の糖類を、炭素源として使用することができれば、食料供給と競合しないPHAの生産が可能となる。 しかし、現在のところ、C.necatorの多くはフルクトース資化性であるが、グルコース資化能を有していない。フルクトースとグルコースの一般的代謝経路から考えると、両者は比較的早い段階で同一の経路によって代謝されることから、グルコース資化性がない原因はその取り込み能がないからだと考えられる(非特許文献1)。 現在でも、少数のグルコース資化性C.necator、例えばNCIB11599株やB8562株、KCTC 10351BP株等が開発されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献2)。しかし、それらは非特異的な化学的変異剤等、突然変異誘発処理によって育種された菌株であり、目的とするグルコース資化能向上に関与する遺伝子以外の遺伝情報にも、何らかの変異が導入されている蓋然性が高い。例えばこれまでの遺伝子組換菌を利用したPHA生産では、代表的なP(3HB)非生産株であるC.necator PHB−4株(DSM No.541,以下PHB−4株)がその宿主として多く用いられてきた。PHB−4株はDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)から入手し得る。PHB−4株は1970年にC.necator(当時名ハイドロゲノモナス)の野生株であるC.necator H16株(DSM No.428、以下H16株)から変異剤処理によって作製された菌株である(非特許文献3)。H16株は前出のDSMZから入手し得る。非特異的な変異剤によって処理された株であるため、目的としたP(3HB)非生産という点だけでなくその他の遺伝子にも変異が導入されている可能性を否定できない。事実、Schlegel等によるとPHB−4株は親株H16株と比べて増殖能力やある種の生物活性が劣っていることが示されている(非特許文献3)。従って、非特異的な変異処理によって分離されたグルコース資化性のC.necatorがPHA生産株として最高の生産能力を発揮できているかどうか不明であった。 また、本来グルコース資化性である菌株、例えば大腸菌やシュードモナス(Pseudomonas)属細菌を用いてPHAを生産する方法も検討されている。しかし、大腸菌は本来P(3HB)等のPHAを産生する菌株ではないため、複数のPHA合成関連酵素遺伝子の導入を含む複雑な遺伝子操作が必要となる(非特許文献4)。Pseudomonas属細菌ではPHAの生産性がC.necatorよりも低かったりすることが指摘されている(非特許文献5)。 そこで、グルコース資化性向上に関与する遺伝子以外の遺伝情報が、野生株であるH16株と同じであることが明らかな株、すなわち、特異的操作によってグルコース資化能が付与されたC.necator菌株の開発が望まれていた。特許1888568号韓国公開公報20040046678号Kuehn等、Can.J.Microbiol.、vol.14、p1259、(1968)Volva等、Mikrobiologiia、vol.74、p788,(2005)Schlegel等、Arch.Mikrobiol.、vol.71、p283、(1970)Lim等、J.Biosci.Bioeng.、vol.93、p543、(2002)Sun等、J.Biotechnol.、vol.132、p280、(2007) 以上のように、グルコース資化性PHA生産菌株による、PHAの効率的商業生産に関して課題が存在していた。本発明の目的は、グルコース資化能に関与する遺伝子以外の遺伝情報が、野生株であるH16株と同じであることが明らかな株、すなわち特異的操作によってグルコース資化能が付与されたC.necator H16株由来グルコース資化性菌株を作製すること、及び該菌株によりグルコースを炭素源としてPHAの効率的生産方法を提供することである。 ゲノム解析(Pohlmann等、Nature Biotech.,vol.24、p1257、(2006))よりC.necator H16株にはグルコースから中央代謝に至る経路の存在が推測された。 一方、C.necator H16株がグルコース資化能を有しない理由は、グルコースの取り込み能がないからだと考えられる。グルコースの取り込みが可能になれば、グルコースからフルクトース−6−リン酸を経てフルクトースと同じ代謝経路をたどっていくため、グルコースを原料としてPHA合成が効率よく生産できるようになると考えられた。 そこで、本発明者らは鋭意研究した結果、グルコース資化能を有するエタノール発酵細菌として知られているザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)のグルコーストランスポーター蛋白をコードする遺伝子をC.necator H16株に導入することで、グルコースの取り込みが可能になり、その結果としてグルコース資化能を付与することができることを見出し、本研究を完成するに至った。 本発明によれば、木質や稲藁など含まれるセルロースからも調製しうる、安価なグルコースを炭素源としてポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を高生産できる組換え微生物株が提供され、簡便かつ大量に、しかも安価に製造することが可能となる。 本発明におけるPHAとは、以下の一般式:(式中、R1及びR2は炭素数1以上13以下であるアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。mおよびnは該PHAのモノマー単位数を表す。)で表される3−ヒドロキシアルカン酸をモノマー単位とする高重合体である。R1及びR2が共にメチル基のホモポリマーであるP(3HB)であっても良い。または、モノマー単位が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシペンタデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選択されるモノマー単位の2種以上から構成される共重合PHAであっても良い。 本発明で用いる微生物は、グルコース取り込み能が無いか低い微生物であって、PHA合成酵素遺伝子を生物種として原初的にその染色体DNA等に有し、菌体中のグルコースをPHAに変換し得る微生物であれば特に制限なく使用することができる。改変された微生物、基質モノマーの生成や取り込み能が改変された微生物、または生産を増大するように改変された微生物も含まれる。例としては、Cupriavidus属等の細菌類が含まれる。安全性及び生産性の観点から好ましくはCupriavidus necatorであり、より好ましくはCupriavidus necator H16株である。 以下にC.necator H16株にグルコース資化能付与する方法を、より具体的に例示する。 遺伝子供与体としてはエタノール発酵菌として知られているZymomonas mobilis(DSM No.424)を用いることができる。本菌は前出のDSMZから入手し得る。本菌から得られる、配列番号5に示されるZ.mobilis由来glf遺伝子は、促進拡散と呼ばれる受動輸送によりグルコースを取り込むトランスポーターをコードしていることが知られている。また3つのグルコース代謝関連遺伝子zwf遺伝子(グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、edd遺伝子(6−ホスホグルコン酸デヒドラターゼ)、glk遺伝子(グルコキナーゼ)とオペロン(glf−zwf−edd−glk)を形成していることも報告されている(Barnell等、J.Bacteriol.,vol.172、p7227,(1990))。これらの遺伝子はZ.mobilisにおけるグルコースの取り込みと、グルコース代謝経路としてEntner−Doudoroff経路の最初の3段階に関与していると考えられる。配列番号5に示される塩基配列からなる遺伝子は本発明に使用し得る。さらに、配列番号5に示される塩基配列と85%以上の配列同一性を示す塩基配列からなる遺伝子であれば、グルコーストランスポーター蛋白をコードする限りにおいては本発明に利用し得る。このとき、配列同一性は90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが、更に好ましく、98%以上であることが、更により好ましく、99%以上であることが最も好ましい。用いる遺伝子は野生型であっても、変異処理を行ったものでも、グルコーストランスポーター蛋白をコードする限りにおいては本発明に利用し得る。 遺伝子のクローニングはサザンハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、PCR法など公知の方法で行うことができるが、この菌株のグルコーストランスポーターglf遺伝子単独及びglf遺伝子を含むオペロン全体をPCRによりクローニングした。上記の遺伝子はプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位を有しているが、大腸菌などの既知のプロモーターを利用することも可能である。 クローニングした断片はC.necator細胞内で発現するよう発現ベクターや染色体に挿入しうる。発現ベクターとしては、C.necator内で自律して複製されるベクターであればどのようなベクターでも使用できるが、例えば、pJRD215由来やpBBR1由来のベクターが使用できる。それぞれの断片をlacプロモーターを持つ広宿主域ベクターpBBR1MCS3(Kovach等、Gene,vol.166、p175,(1995)、DDBJアクセッション番号;U25059)に挿入した。構築したプラスミドのC.necatorへの導入は既知の方法が利用できる。例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポーレーション法、接合伝達法などである。今回はエレクトロポーレーション法によりC.necator H16株に導入した。選択マーカーとしては例えばカナマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、アンピシリン等の抗生物質の耐性遺伝子や各種の栄養要求性を相補する遺伝子等が使用できる。pJRD215由来やpBBR1誘導体を用いた発現ベクターをC.necator H16株に導入した場合にはカナマイシンやテトラサイクリンの耐性遺伝子が好適である。 作製した形質転換体は0.5%または2%グルコースを単一炭素源とした培地中で、30℃で振とう培養して、グルコース資化性が付与されていることを確認した。ポリエステル生産確認の簡易法としては、Nileredを用いた染色法を利用できる。すなわち、組換え菌が生育する寒天培地にNileredを加え、組換え菌を1〜7日間培養し、組換え菌が赤変するか否かを観察することにより、ポリエステル生産の有無を確認できる。 本発明において、本発明の微生物をグルコース存在下で増殖させることにより、微生物菌体内にPHAを蓄積させることができる。炭素源としては、糖、油脂または脂肪酸等を用いることができる。炭素源以外の栄養源として、窒素源、無機塩類、そのほかの有機栄養源を任意に用いることができる。 糖としては、グルコースの他、例えばシュークロース、フラクトース等の炭水化物が挙げられる。油脂としては、炭素数が10以上である飽和・不飽和脂肪酸を多く含む油脂、例えばヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩等の脂肪酸誘導体が挙げられる。 窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。 無機塩類としては、例えばリン酸水素2カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。 そのほかの有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。 培養温度は、その菌が生育可能な温度であればよいが、20℃から40℃が好ましい。培養時間は、特に制限はないが、1〜10日間程度で良い。 得られた該培養菌体に蓄積されたポリエステルは公知の方法により回収することができる。例えば次のような方法により行うことができる。培養終了後、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水およびメタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてPHAを抽出する。このPHAを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてPHAを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてPHAを回収することができる。 また菌体内ポリエステルの蓄積は乾燥菌体のメタノリシス処理により生じた3−ヒドロキシアルカン酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーにより分析することによってもPHAを蓄積していることを確認できる。 以下に実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。なお全体的な遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press、(1989))の記載に準じて行うことができる。また、遺伝子操作に使用する酵素、クローニング宿主等は、市場の供給者から購入し、その説明に従い使用することができる。なお、酵素としては、遺伝子操作に使用できるものであれば特に限定されない。 (実施例1)Z.mobilisのglfオペロンの増幅 Z.mobilis(DSM No.424)から定法に従い染色体DNAを抽出した。染色体DNAを鋳型とし、配列番号1と配列番号2で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で20秒、(3)56℃で30秒、(4)68℃で6.5分、(2)から(4)を30サイクル、(5)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはKOD Plus(東洋紡製)を用いて約6.4kbp断片を増幅させた。 (実施例2)Z.mobilisのglf遺伝子の増幅 Z.mobilis(DSM No.424)の染色体DNAを鋳型とし、配列番号3と配列番号4で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で20秒、(3)58℃で30秒、(4)68℃で2分、(2)から(4)を25サイクル、(5)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはKOD Plus(東洋紡製)を用いて約1.6kbp断片を増幅させた。 (実施例3)増幅断片のサブクローニング 増幅させた各断片の大量調製及び塩基配列確認のため、pUC118にサブクローニングした。その方法は以下の通りである。まず、増幅した各断片をWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(プロメガ製)を用いて精製し、次にT4ポリヌクレオチドキナーゼ(タカラバイオ製)を用いてリン酸化した。その断片を、制限酵素HincII切断及び脱リン酸化したクローニングベクターpUC118と連結し、定法に従い大腸菌DH5αに形質転換した。X−Gal及びIPTG含有培地で白色を呈するコロニーから定法に従いプラスミドを抽出して制限酵素XbaI或いはXbaIとSalI切断により挿入方向を確認した。所望の挿入方向であったプラスミドの挿入部分について塩基配列確認を行い、それぞれglf遺伝子或いはglfオペロンであることを確認した。 (実施例4)発現ベクターの構築 glf遺伝子断片或いはglfオペロン遺伝子を連結したpUC118ベクターをそれぞれ制限酵素XbaI及びAlw44Iで切断し、それぞれglf遺伝子或いはglfオペロン遺伝子をXbaI断片として抽出・精製した。一方、pBBR1MCS−3もXbaIで切断後、脱リン酸化し、それぞれの断片と連結し、定法に従い大腸菌DH5αに形質転換した。出現したコロニーから定法に従いプラスミドを抽出して制限酵素XbaIとNcoI切断により挿入方向を確認し、所望の挿入方向であった発現ベクターをそれぞれpBBR3−glf或いはpBBR3−glf_zegと命名した。 (実施例5)形質転換体の作製 実施例4で得られた発現ベクターを導入したC.necator H16株の形質転換体を電気パルス法により作製した。遺伝子導入装置はBiorad社製のジーンパルサー Xcellを用い、キュベットは同じくBiorad社製のgap0.1cmのものを用いた。キュベットに、コンピテント細胞20μlと発現ベクターpBBR3−glf或いはpBBR3−glf_zegを1〜2μl注入してパルス装置にセットし、静電容量25μF、電圧1.8kV、抵抗値200Ωの条件で電気パルスをかけた。パルス後、キュベット内の菌液を0.8mlのSOC培地で30℃、一晩振とう培養し、選択プレート(NR培地(1%魚肉エキス、1%ポリペプトン、2%酵母エキス)、テトラサイクリン25mg/L、1.5%寒天)で、30℃にて培養して形質転換体を取得し、H16[pBBR3−glf]或いはH16[pBBR3−glf_zeg]と命名した。 同様に、pBBR1MCS3をC.necator H16株に導入して、形質転換体を作製し、H16[pBBR1MCS3]と命名した。 (実施例6)グルコース資化性の確認 実施例5で得た形質転換体H16[pBBR3−glf]及びH16[pBBR3−glf_zeg]のグルコース資化性を以下のようにして確認した。前培養として12.5mg/Lのテトラサイクリンを含む3mlのNR培地(1%魚肉エキス、1%ポリペプトン、2%酵母エキス)に、上記形質転換株と、対照としてH16[pBBR1MCS3]を、それぞれ2株ずつ植菌し、30℃で24時間振とう培養した。遠心分離により集菌し、MB培地(9g/L Na2HPO4・12H2O、1.5g/L KH2PO4、0.5g/L NH4Cl、0.2g/L MgSO4・7H2O、1ml/L 微量金属溶液(0.1N HCl中、0.218g/L CoCl2・6H2O、9.7g/L FeCl3、7.8g/L CaCl2、0.118g/L NiCl2・6H2O、0.105g/L CrCl3・6H2O、0.156g/L CuSO4・5H2O))に懸濁した。次にOD660が0.005になるようにそれぞれの懸濁液を100mlのMB培地(12.5mg/Lのテトラサイクリンを含む)に植菌し、30℃で培養した。この時、炭素源はそれぞれグルコース濃度0.5%或いは2%とした。 グルコース濃度2%時の培養結果を図1に示す。H16[pBBR3−glf]とH16[pBBR3−glf_zeg]ではその生育やPHAの蓄積に差は見られなかった。グルコース濃度が2%では0.5%の際に比べて最終的な菌体量は約2倍となり、3.2〜4.3g/Lの乾燥菌体重量が得られた。この様にZ.mobilisのglf遺伝子或いはglf−zeg遺伝子を導入したC.necator H16株では非導入のH16株に比べて有意な増殖性が認められ、同遺伝子或いはオペロンによりグルコース資化能が付与されたことが明らかになった。 (実施例7)P(3HB)生産量の測定 実施例6で培養した菌体中のP(3HB)含量を以下のようにして測定した。乾燥菌体40mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することにより、菌体内ポリエステル分解物のメチルエステルを得た。これに1mlの蒸留水を添加して激しく撹拌した。静置して二層に分離させた後、下層の有機層を取り出した。有機相0.1mlに0.1%オクタン酸メチル−クロロホルム溶液を0.1ml、ジメチルホルムアミド0.3mlとBis(trimethysilyl)trifluoroacetamide0.1mlを加え、70℃で30分間加熱して水酸基をトリメチルシリル化した。室温まで冷却し、ヘキサン1mlと精製水1mlを加えて激しく撹拌し、静置後、上層の有機層をキャピラリーガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所製GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRABOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。温度条件は、初発温度100℃から8℃/分の速度で昇温した。結果を図2に示した。菌体内P(3HB)ホモポリマーの蓄積率は、乾燥菌体重量あたり70〜80wt%に達した。これはフルクトースを炭素源とした際と同等の菌体収率およびP(3HB)蓄積率であった。2%グルコース培地におけるC.necator形質転換株の増殖性を示す。図中の横軸は培養時間、縦軸はOD660を示す。pBBR3−glfはH16[pBBR3−glf]、pBBR3−glf_zegはH16[pBBR3−glf_zeg]、pBBR1MCS3はH16[pBBR1MCS3]を指す。2及び0.5%グルコース培地におけるC.necator形質転換株の乾燥菌体重量とP(3HB)蓄積率を示す。図中のPHA蓄積率は本願ではP(3HB)蓄積率で評価した。PHA蓄積率は、乾燥菌体重量に占めるPHA蓄積量から計算し得る。2% glucoseおよび0.5% glucoseは培養時の炭素源を示す。glfはH16[pBBR3−glf]を、glf_zegはH16[pBBR3−glf_zeg]を指す。 外来遺伝子導入よりグルコース非資化性Cupriavidus属細菌にグルコース資化性を付与する方法。 外来遺伝子がグルコーストランスポーター蛋白をコードする遺伝子である請求項1記載の方法。 グルコーストランスポーター蛋白をコードする遺伝子がZymomonas mobilis由来遺伝子である請求項2に記載の方法。 グルコーストランスポーター蛋白をコードする遺伝子が、配列番号5に示される塩基配列と配列同一性85%以上を示す塩基配列からなる遺伝子である請求項2に記載の方法。 Cupriavidus属細菌がCupriavidus necatorである請求項1から4に記載の方法。 Cupriavidus necatorがCupriavidus necator H16株である請求項5に記載の方法。 請求項1から6記載の方法によってグルコース資化性が付与されたCupriavidus属細菌の形質転換体。 炭素源としてグルコースを用いて請求項7記載の形質転換体を培養することを特徴とするポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。 ポリヒドロキシアルカン酸がポリ3−ヒドロキシ酪酸である請求項8記載の製造方法。 【課題】 グルコース資化能に関与する遺伝子以外の遺伝情報が、野生株であるH16株と同じであることが明らかな株、すなわち特異的操作によってグルコース資化能が付与されたC.necator H16株由来グルコース資化性菌株を作製すること、及び該菌株によりグルコースを炭素源としてPHAの効率的生産方法を提供すること。【解決手段】 ザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)のグルコーストランスポーター蛋白をコードする遺伝子をC.necator H16株に導入することで、グルコースの取り込みが可能になり、その結果としてグルコース資化能を付与することができた。【選択図】 なし配列表