タイトル: | 再公表特許(A1)_組換えDNAの調製方法 |
出願番号: | 2008064482 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/09 |
永井 健治 小寺 一平 JP WO2009025209 20090226 JP2008064482 20080812 組換えDNAの調製方法 国立大学法人北海道大学 504173471 小林 浩 100092783 片山 英二 100095360 鈴木 康仁 100104282 永井 健治 小寺 一平 JP 2007215238 20070821 C12N 15/09 20060101AFI20101029BHJP JPC12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20101125 2009529010 28 4B024 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA04 4B024CA09 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA20 本発明は、組換えDNAの調製方法に関し、さらに詳しくは、ベクターDNAに目的DNA断片を簡略化された手段で効率よく挿入する組換えDNAの調製方法に関する。 遺伝子を組換える技術は、1970年代に実用化されたものの、現在も依然として当時と同等の方法が広く用いられている。すなわち、プラスミドと呼ばれる遺伝子のベクター(媒介体)を制限酵素で切断し、目的の遺伝子をDNA連結酵素で連結させる方法である。この方法により、遺伝子の組換えが広範囲に可能となり、様々な分野に大きな影響を与えた。 目的の遺伝子を組換えるためには、まず、目的の遺伝子とベクターを、PCR法や大腸菌、λファージなどを用いて大量調製する必要がある。次に目的遺伝子とベクターの両端を制限酵素で処理し、それぞれの両端が相補的に結合できる形にする。ベクターの自己連結を防ぐ目的で、ベクターDNAの脱リン酸化を行うこともある。この後、電気泳動法などにより目的のサイズのDNA断片のみを分離し精製する。こうして得られたDNA断片とベクターとを試験管内で一定のモル比で混ぜ合わせ、DNA連結酵素を作用させることでベクターと目的DNA断片が結合した環状のDNAが得られる。この環状DNAを用いて大腸菌などの宿主細胞を形質転換し、大腸菌コロニーをスクリーニングすることで、目的の遺伝子が組み込まれた大腸菌を特定する。こうして得られた組換え大腸菌を培養し、そこからプラスミドDNAを精製することにより、目的の遺伝子が組み込まれたプラスミドが得られる。 しかしながら、上記のような従来法においては、操作が複雑かつ煩雑なため熟練するまでに時間を要するものであった。また、従来法においては、大部分が手作業によるため、遺伝子組換えを要する研究においては、研究者の時間の多くを遺伝子組換え作業に費やさざるをえなかった。 なお最近、制限酵素によって生成された核酸断片の方向性を制御して、方向性のあるクローニングを行なうためのベクターを作製する方法が報告されている(例えば、特開2007−508012号公報参照)。特開2007−508012号公報 上記従来技術の問題点を考慮し、簡略化され、かつ効率が改善されたDNA組換え方法の開発が望まれていた。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の制限酵素とDNA連結酵素とを組み合わせて用いることにより、多段階の工程を簡略化することができ、簡便で効率良くDNAの組換えを行うことができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下に記載の組換えDNAの調製方法を提供するものである。(1)(i) ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、 (a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAとを同時に切断する反応と、 (b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応を、同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含む、組換えDNAの調製方法。(ii) ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、 (a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAの両端とを同時に切断する反応と、 (b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応を、同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含む、組換えDNAの調製方法。(2)前記制限酵素が、前記DNA認識部位から所定の距離離れた部位を前記DNA切断部位として認識して切断するものである上記(1)に記載の方法。(3)前記制限酵素が、ClassIIS制限酵素である上記(1)に記載の方法。(4)前記目的DNA断片がそれぞれ異なる配列を持つ複数のDNA断片であり、前記ベクターDNAに該複数の目的DNA断片を同時に挿入することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。(5)PCRによって増幅した目的DNA断片を含むDNAと、PCRによって増幅したベクターDNAとを含むPCR溶液にDNAポリメラーゼ阻害剤を添加してなる溶液を用いて、上記(a)および(b)の反応を行う、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。 本発明はさらに次のような方法も提供する。(6)前記制限酵素が4塩基以上のDNA認識部位を認識する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。(7)前記制限酵素が7塩基以上のDNA認識部位を認識する上記(6)に記載の方法。(8)前記ClassIIS制限酵素が、LguI、BfuAI、FokI、BsmAI、BsmFI、SfaNI、またはBbvIである上記(3)〜(5)のいずれかに記載の方法。(9)前記ClassIIS制限酵素が、LguIである上記(8)に記載の方法。(10)前記ClassIIS制限酵素が、BfuAIである上記(8)に記載の方法。(11)前記DNA連結酵素が、T4 DNAリガーゼ、E. coli DNAリガーゼまたはT7 DNAリガーゼである、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。(12)前記ベクターDNAがプラスミドベクターDNAである上記(1)〜〜(11)のいずれかに記載の方法。(13)前記ベクターDNA、前記目的DNA断片を含むDNA、前記制限酵素および前記DNA連結酵素を、同一反応容器内で同時に接触させる、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。(14)前記目的DNA断片が遺伝子を含む上記(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。(15)前記ポリメラーゼ阻害剤がアフィディコリンである上記(5)〜(14)のいずれかに記載の方法。 また、本発明は以下の方法も提供する。(16)前記ベクターDNAおよび前記目的DNA断片を含むDNAが、前記制限酵素のDNA認識部位を含む上記(1)〜(15)のいずれかに記載の方法。(17)前記ベクターDNAおよび前記目的DNA断片を含むDNAが、互いに相補的な前記制限酵素のDNA切断部位を含む上記(1)〜(16)のいずれかに記載の方法。 上記構成からなる本発明によるDNA組換え方法によれば、DNA組換えの作業時間と労力を大幅に削減することができる。また、本発明により、効率的にDNAを組換えることができる。また、本発明の好ましい態様によれば、従来の方法では非常に困難であった、複数のDNA断片を同時にベクターに挿入することも容易に実現できるという効果も奏する。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明における、用語「組換え」は、ある個体の中に外部から特定のDNAを注入することによって個体の遺伝情報を変異させる技術をいう。本明細書で用いる「組換えDNA」という用語は、自然界で通常は一緒には見出されない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含む、ハイブリッドDNA分子を指す。 本発明の第1の態様は、ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、以下の反応(a)および(b)を同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含むことを特徴とするものである。 (a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAとを同時に切断する反応 (b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応 反応(a)は、DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAとを同時に切断する反応である。反応(a)で切断される該目的DNA断片を含むDNAの切断部位は、当該DNAの両端であってもよい。 ここで、「制限酵素」という用語は、DNAの特定の塩基配列を認識して切断する酵素をいう。 ここでいう、DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素とは、制限酵素がDNA認識部位または、認識ヌクレオチド配列と称する特定の二本鎖DNA配列と結合するものの、その特定の認識部位では、DNAを切断せずに、少なくとも1bp離れた部位(好ましくは、所定の距離離れた部位)の配列をDNA切断部位として認識し二本鎖DNAを切断する酵素を意味する。本発明で使用される制限酵素の種類は、このような性質をもっていれば特に限定されないが、II型制限酵素が好ましく、なかでも特に、DNA認識部位が4塩基以上、5塩基以上、6塩基以上、特に7塩基以上のものが好ましく、好ましくは、20塩基以下、18塩基以下、16塩基以下、14塩基以下、12塩基以下のものが好適である。また、II型制限酵素の切断様式としては、平滑末端を生じる制限酵素または付着末端を生じる制限酵素でもよいが、付着末端を生じる型が好ましい。本発明で使用される制限酵素は、特にDNA認識部位とは離れた部位を切断する機能を有し、切断断片は一定の配列ではない数個(2〜6個)の塩基の付着末端を有することを特徴とする、例えばClassIIS制限酵素が好ましい。ClassIIS制限酵素は、その非対称認識部位から最大20bp離れた一定の距離離れた切断部位で二本鎖DNAを切断する(Szynbalski, W., Gene, 40:169, 1985)ことが知られている。 本発明で用いられる「ClassIIS制限酵素」の例としては、特に限定されないが、具体的には以下に示すものがあげられる。以下の例ではClassIIS制限酵素を、その切断によって生成する塩基配列断片の突出付着末端の型によって分類する。(ClassIIS制限酵素の例)1塩基突出付着末端型:AsuHPI, BciVI, BfiI, BfuI, BmrI, BmuI, Hin4II, HphI, HpyAV, MboII, MnlI, NcuI, AclWI, AlwI, BccI, BcefI, BinI, BspPI, BstH9I, Bst31TI, EacI, HpyC1I, PleI, PpsI2塩基突出付着末端型:AcuI, Asp26HI, Asp27HI, Asp35HI, Asp36HI, Asp40HI, Asp50HI, Bce83I, BcgI, BcgI, BmaHI, BpmI, BpuEI, BsaMI, BscCI, Bse1I, Bse3DI, BseGI, BseMI, BseMII, BseNI, BseRI, BsgI, BsmI, BspCNI, BspKT5I, BsrI, BsrDI, BsrSI, Bst11I, BstF5I, BtsI, BtsCI, CspCI, CspCI, CstMI, EciI, Eco57I, Eco57MI, GsuI, MmeI, Mva1269I, NmeAIII, PctI, TaqII, TaqII, TsoI, Tsp1I, TspDTI, TspGWI, Tth111II, AciI, BceAI, Bme585I, BscAI, BspACI, Bst19I, BstFZ438I, FauI, SmuI, SsiI3塩基突出付着末端型:BsaXI, BsaXI, RleAI, AbeI, BbvCI, Bco5I, Bco116I, BcoKI, Bpu10I, BpuDI, BseZI, BspQI, BssIMI, Bst6I, Bsu6I, Eam1104I, EarI, Ksp632I, LguI, PciSI, SapI, SimI, VpaK32I4塩基突出付着末端型AarI, Acc36I, AceIII, Alw26I, AlwXI, BauI, Bbr7I, BbsI, BbvI, BbvII, Bbv16II, BfuAI, Bli736I, BpiI, BpuAI, BpuSI, BsaI, Bsc91I, BseKI, BseXI, BseYI, BsiI, BslFI, BsmAI, BsmBI, BsmFI, Bso31I, BsoMAI, Bsp423I, BspBS31I, BspIS4I, BspLU11III, BspMI, BspST5I, BspTNI, BspTS514I, BssSI, Bst12I, Bst71I, Bst2BI, BstBS32I, BstGZ53I, BstMAI, BstOZ616I, BstTS5I, BstV1I, BstV2I, BtgZI, BveI, Eco31I, EcoA4I, EcoO44I, Esp3I, FaqI, FokI, GdiII, LweI, PhaI, SfaNI, Sth132I, StsI5塩基突出付着末端:AjuI, AjuI, AloI, AloI, BaeI, BaeI, Bsp24I, Bsp24I, Hin4I, Hin4I, PpiI, PpiI, PsrI, PsrI, TstI, TstI, CseI, HgaI6塩基突出付着末端型:CjeI, CjeI, CjePI, CjePI また、ClassIIS制限酵素として、上記のイソシゾマーをここで用いることができる。 これらの中では、LguI(コスモバイオ製(Fermentas))、BfuAI、FokI(宝酒造製)、BsmAIまたはBsmFI(バイオラボ製)、SfaNIまたはBbvIを好適に用いることができる。 工程(a)の反応は、当業者に公知の条件で行うことができる(文献:Gene. 1985;40(2-3):169-73. Universal restriction endonucleases: designing novel cleavage specificities by combining adapter oligodeoxynucleotide and enzyme moieties.)。ここで用いられる反応溶液としては、制限酵素を反応させるのに適切なバッファー、例えば、Tris-HCl、Tris-acetate, K-acetate、MgCl2、Mg-acetate、DTT、2-mercaptoethanol、BSAまたはATPなどを好適に組み合わせて用いることができる。この反応系の温度は、例えば、15〜90℃、好ましくは25〜50℃の範囲である。 本明細書において、「目的DNA断片」とは、通常、それによってコードされるタンパク質を発現させるために、ベクターに挿入するターゲットとなるものをいう。目的DNA断片は、遺伝子を含むDNAであることが好ましいが、また遺伝子以外のDNA断片、例えばプロモーター、イントロン、RNAi用ベクターなどであっても良い。目的DNA断片は、さらに付着末端配列、ベクターへの挿入や遺伝子の読み枠の調製に必要なリンカー配列、遺伝子の適切な発現に必要な配列(例えば、コザック配列、SD配列、ターミネーター)を有することもできる。 目的DNA断片は、反応(a)において、制限酵素により目的DNA断片を含むDNAを切断することにより、生成される。 上記遺伝子等の目的DNA断片を含む核酸(DNA)は、当業者であれば、一般的な遺伝子組換え技術を利用して容易に作製することができる(例えば、Molecular Cloning: A laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 2001など参照)。たとえば、増幅したい核酸を含むように設計されたプライマーを使用して、PCRまたはRT-PCR等を行うことによって増幅することができる。テンプレートとして、これらの遺伝子を発現している細胞由来のRNAまたはcDNAなど、あるいは目的DNA断片を含む組換えベクターを使用することができる。また、目的DNA断片を含むDNAは、大腸菌、λファージなどを用いて作製することもできる。 さらに、本発明の反応(a)では、目的DNA断片を含む組換えベクターを、目的DNA断片を含むDNAとして、ベクターに含まれた形態のまま利用することもできる。 本発明においてDNAを迅速に組換えるために、当該ベクターはPCRによって増幅したベクター、すなわちPCR産物であることが好ましい。本発明の反応(a)においてPCRで増幅したベクターを、目的DNA断片を含むDNAとして用いる場合、PCR溶液に含まれる残りのテンプレートDNAをDpnIで切断し、予めPCR溶液から排除しておくことが好ましい。DpnIはメチル化DNAのみを特異的に切断する制限酵素である。 目的DNA断片を含むDNAの分離精製は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、アガロースゲルを用いる電気泳動法などの一般的な分離精製技術を用いることができる。 なお、コンタミネーションを除く、精製が必要な場合は従来公知の方法で行うことができる。例えば市販されている精製キットなどを使用して行うことができる。 該目的DNA断片を含むDNAの長さは特に限定されないが、50〜20000塩基、より好ましくは、100〜10000塩基、さらに好ましくは500〜5000塩基(末端部分を含む)のものが好適である。付着末端部分の長さも特に限定されないが、1〜8塩基、好ましくは2〜4塩基が好適である。 本発明に用いられる該目的DNA断片は、一種類であっても、また異なる配列を持つ2種類以上の複数の遺伝子であっても良いが、効率的に組換えを行なうためには、用いられる目的DNA断片は4種類以下が好ましい。ただし、異なる目的DNA断片は、いずれも該目的DNA断片を含むDNAを同一の制限酵素で切断されて得られるものであり、目的DNA断片同士が連結できるようにその両端の付着末端が、互いに相補的な関係にあり、さらに、ベクターDNAと連結する目的DNA断片の付着末端が当該反応において同時に作製されるベクターDNAの付着末端と相補的なものが好ましい。ベクターDNAに複数の目的DNA断片を同時に挿入するには、反応(a)で用いられる目的DNA断片を含む複数のDNAが、互いに相補的な制限酵素のDNA切断部位を有していればよく、さらに、当該DNAの中、ベクターDNAと連結する目的DNA断片を含むDNAは、ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と相補的なDNA切断部位を有していればよい。 本発明において用いることのできるベクターDNAとしてはいかなるものでも良く例えば、プラスミドベクターDNA、ファージミドベクター、λファージなどのバクテリオファージおよびレトロ ウィルス、ワクシニアウィルスなどの動物ウィルス、あるいはコスミド等の自己環状化できる核酸などが挙げられるが、例えば大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来プラスミド(例えば、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例えば、pSH19,pSH15)などのプラスミドベクターを用いることが好ましい。 また、ベクターDNAは、市販のベクターを用いてもよいし、当業者であれば、一般的な遺伝子組換え技術を使用して容易に作製することができる。具体的には、上記目的DNA断片を含むDNAを調製する方法と同様の方法、例えばPCR法などによる増幅、電気泳動法による分離精製や、その他の方法を用いることができる。 PCRで増幅したベクターDNAを用いる場合、メチル化DNAのみを特異的に切断するDpnIでPCR溶液に含まれる残りのテンプレートDNAを切断し、予めPCR溶液から排除することが好ましい。PCR反応液をDpnIで処理することにより、より迅速にDNAを組換えることが可能になる。 該ベクターDNAの長さは特に限定されないが、500〜20000塩基(付着末端部分を含む)、より好ましくは、1000〜10000塩基、さらに好ましくは2000〜5000塩基が好適である。付着末端部分の長さも特に限定されないが、1〜8塩基、好ましくは2〜4塩基が好適である。ただし、制限酵素の種類や、形質転換効率などを考慮して当該ベクターの選定は適切に行なわれるべきである。 本発明における、ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位とは、該目的DNA断片を挿入するために調製されるベクターDNA部位のことをいう。本発明の好ましい態様では、反応(a)で用いるベクターDNAおよび目的DNA断片を含むDNAが、互いに相補的なDNA切断部位を有するため、ベクターDNAをClass IIS制限酵素のように付着末端を生じる断片を生じる制限酵素を用いて、該目的DNA断片を含むDNAと同時に切断すれば、ベクターDNAの付着両端は、該DNA断片の両端とそれぞれ相補的になるように調製することができる。 ここで、本発明の反応(a)において、「目的DNA断片を含むDNA」および「ベクターDNA」は制限酵素により同時に切断されるため、これらのDNAは反応(a)で使用される制限酵素のDNA認識配列を有する必要がある。 また、付着末端を生じる制限酵素を用いる場合は、反応(b)において目的DNA断片とベクターDNAとをDNA連結酵素により連結させるため、反応(a)において該制限酵素により同時に作製されるベクターDNAの付着末端と目的DNA断片の付着末端とは、互いに相補的である必要がある。このためには、目的DNA断片を含むDNAおよびベクターDNAが、互いに相補的な前記制限酵素のDNA切断部位を含んでいればよい。 具体的には、目的DNA断片を含むDNAは、該制限酵素によるDNA認識配列に加えて、同酵素でベクターDNAの目的DNA断片の挿入部位を切断して生じる付着末端と相補的な付着末端配列を含む必要がある。 また、ベクターDNAも、該制限酵素によるDNA認識配列に加えて、同酵素で目的DNA断片を含むDNAを切断して生じる付着末端と相補的な付着末端配列を含む必要がある。 このようなDNA認識配列および付着末端配列は、PCR法などの公知の技術を利用して目的DNA断片を含むDNAおよびベクターDNAに導入することができる。例えば、DNA認識配列と付着末端配列のいずれかまたは両方を含むように設計されたプライマーを使用してPCR法を行うことにより、これらの配列を含む目的DNA断片を含むDNAまたはベクターDNAを増幅することができる。当業者であれば、プライマーのDNA認識配列と付着末端配列との間の塩基数は、用いる制限酵素の性質に従って適宜設定することができる。 あるいは、このようなDNA認識配列および付着末端配列は、目的DNA断片を含むDNAおよびベクターDNAに、もともと含まれている配列や、これらのDNAを調製する際に利用されるベクターDNAに含まれている配列等を利用することもできる。 上記のように調製したDNA認識配列および付着末端配列を含む、目的DNA断片を含むDNAおよびベクターDNAを、該制限酵素に接触させることにより、互いに相補的な付着両端を有する目的DNA断片およびベクターDNAを同時に調製することができる。 次に、反応(b)は、該目的DNA断片を発現させるために、DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を、該ベクターDNAに挿入する反応である。反応(b)は、反応(a)で得られた該目的DNA断片およびベクターDNAを、DNA連結酵素に接触させることにより行うことができる。 本明細書で用いるDNA連結酵素(DNAリガーゼ)とは、DNAの2本鎖の切断部分を連結させる酵素であり、隣接したDNA鎖の5’-リン酸末端と3’-OH末端をホスホジエステル結合で結合させるのに働く酵素である。本明細書において、DNA連結酵素とは、反応(a)で得られる該目的DNA断片とベクターDNAの目的DNA断片挿入部位とを連結させ得るものであればどのようなものでもよい。本発明で使用されるDNA連結酵素は、例えば、T4 DNA ligase、T7 DNA ligase、E. coli DNA ligase、Ampligase(Epicentre Biotechnologies)、Pfu ligase(Stratagene)、Rma DNA ligase(Prokaria)、Tsc DNA ligase(Prokaria)、Tth DNA ligase(Eurogenetec)、Taq ligase(NEB)等があげられるが、これら以外の酵素でもATPまたはNAD+要求性のリガーゼで、かつ二本鎖特異的であれば本技術で用いることが可能である。 これらの中ではT4 DNAリガーゼ、E. coli DNAリガーゼまたはT7 DNAリガーゼなどを好適に使用できる。 本発明においては、反応(a)および(b)を、同一の反応場所において実質的に同時に行う。例えば、一つの反応容器内において、反応(a)および(b)を同時に行なう。「実質的に同時」とは、実際には、反応(a)の切断反応が先に起こり、反応(b)の挿入反応がその直後に起こることを意味している。具体的には、前記ベクターDNA、前記目的DNA断片を含むDNA、前記制限酵素および前記DNA連結酵素を、同一反応容器内で同時に接触させる。より具体的には、反応(a)および(b)は、該目的DNA断片を含むDNA、ベクターDNA、制限酵素およびDNA連結酵素の四成分を適切な溶液中で混合して行なわれる。 また、遺伝子配列の異なる該目的DNA断片をベクターに挿入するために、2種類以上の該目的DNA断片を含むDNAを、同時に混合して用いることもできる。 ここで用いられる反応溶液としては、制限酵素および連結酵素に適切なバッファー、例えば、Tris-HCl, Tris-acetate, K-acetate, MgCl2, Mg-acetate, DTT, 2-mercaptoethanol, BSA, ATP、または市販の制限酵素や連結酵素用の調整済みバッファーなどを好適に組み合わせて用いることができる。反応系の温度は、例えば、4〜50℃、好ましくは4〜37℃の範囲であり、具体的には、制限酵素、連結酵素の至適な反応温度の範囲において反応させることが好ましい。 反応容器は、特に限定しないが、耐熱、耐酸性を有するものであって、パイレックス(登録商標)や試験管などのガラス容器、またはポリプロピレンなどのプラスチック容器を好適に用いることができる。 目的DNA断片を含むDNA、ベクターDNA、制限酵素およびDNA連結酵素の四成分を溶液中で混合する場合、各物質の濃度は特に限定されないが、例えば、目的DNA断片を含むDNAは10 pM〜10 nM、ベクターDNAは10 pM〜10 nM、制限酵素は0.1〜100 ユニット/ml、好ましくは0.1〜10ユニット/ml、DNA連結酵素は0.1〜100 ユニット/ml、好ましくは0.1〜10ユニット/ml、程度の濃度になるように混合するのが好ましい。 反応時間は特に限定しないが、10分〜3時間、好ましくは1時間〜2時間とするのが好ましい。 ここで、図面を参照して本発明の組換えDNAの調製方法を説明する。 図1は、本発明の組換えDNAの調製方法における各反応工程を説明する図である。ここで、点線の長方形の枠はClassIIS制限酵素LguIのDNA認識部位、階段状の実線はDNA切断部位、細い線で囲まれた枠はテンプレートDNAに特異的に結合する配列を示す。 まず、反応容器(例えば、試験管)内において、目的DNA断片(ここでは、EGFP)を含むDNAに制限酵素(ここではClassIISに分類されるLguI)を作用させると、目的DNA断片を含むDNAの両端が切断され、付着末端を有する目的DNA断片が得られる(反応II)。また同時に、同一試験管内において、ベクターDNA(ここではプラスミドベクター)に同一の制限酵素を作用させることによって、目的DNA断片を挿入できる部位(目的DNA断片挿入部位)を持つ直鎖化ベクターが作製される(反応I)。 この時、同時にDNA連結酵素(ここではligase)も同じ試験管内に存在させると、制限酵素による切断(反応IおよびII)と、DNA連結酵素による連結(ライゲーション;反応IおよびIIの逆反応)が同時に進行し、すなわち切断と連結を繰り返す平衡反応が起こる。 このとき、該直鎖化ベクターが上記DNA断片の付着末端に相補的な付着末端を有している場合は、DNA連結酵素により、該直鎖化ベクターと上記DNA断片とが連結し(反応III)、目的DNA断片が組み込まれた環状のベクターDNAが生成する反応も進行し得る。しかし、当該環状の組換えベクターDNAには、もはやClassIIS制限酵素の認識部位が存在しないため、生成した組換えベクターDNAがClass IIS制限酵素による切断を受けることはない。このため、反応IIIにおいては、DNA連結酵素による、連結反応のみが不可逆的に進行することになる。このため、反応IまたはIIでの平衡は切断反応側に移動するために平衡反応はもはや起こらず、最終目的産物である組換えDNAへの一方向の反応のみが起こる。 したがって、本方法(FASTR法:Fully Automatic Single Tube Recombination)(旧REMDI法:Restriction Enzyme=Mediated DNA Incorporation)を利用すれば、目的DNA断片とベクターDNAを得るために、制限酵素によって別々にそれぞれを反応させる工程、それぞれの反応物について電気泳動法等を用いて分離精製する工程、脱リン酸化反応などのDNA断片を加工する工程、また両者を適切なモル比を調整して混合して連結させる工程等という、煩雑な多段階の工程を省略でき、目的の組換えDNAを効率よく作成することが可能となる。 また当該方法において、異なる配列を持つ目的DNA断片を含むDNAを複数存在させて、複数の目的DNA断片を同時にベクターDNAに挿入することもできる。目的DNA断片が互いに連結するために、各目的DNA断片の両端に位置する付着末端が別の目的DNA断片の付着末端と相補的な関係にあり、さらに、挿入される目的DNA断片がベクターDNAと連結するために、ベクターと連結する目的DNA断片の付着末端が、これらを組み込む直鎖化ベクターDNAの両端の付着末端と相補的な関係にあればよい。また、複数の目的DNA断片が正しい順列で結合するためには、それぞれの断片の付着末端が正しい連結部位のみにおいて相補的であればよい。用いるDNAがこれらの配列を有することにより、一度の操作で複数の目的DNA断片を同時にそれぞれ、ベクターDNAに導入して、組換えDNAを得ることも可能であり、大幅に従来の工程を省力化させることが可能となる。 なお、目的DNA断片を含むDNA、該目的DNA断片を挿入するベクターDNAをPCRで増幅を行なうと、PCR後のそれぞれのPCR溶液には熱耐性を持つDNAポリメラーゼの活性が残存しており、当該増幅断片の突出末端が平滑化され得る。したがって、上記反応(a)および(b)の前処理として、事前にそれぞれのPCR溶液からDNA増幅断片を精製することが好ましい。 しかし、この方法では増幅された目的DNA断片を含むDNAと増幅されたベクターDNAを用いて、目的DNA断片をベクターDNA断片に挿入する前に、増幅産物の精製工程が必要となり効率が悪い。そこで本発明者は、そのような精製工程を省略し得る方法を検討した結果、DNAポリメラーゼ阻害剤等を用いることにより精製工程を省略し、DNA組換えを迅速化する方法を見出した。 すなわち、本発明の好ましい態様によれば、目的DNA断片を含むDNAおよび目的DNA断片を挿入するベクターDNAをPCRにより増幅した後、ポリメラーゼ阻害剤等でDNAポリメラーゼ活性を阻害させたそれぞれのPCR溶液に対して、そのまま上記反応(a)および(b)を行なうことにより、DNAの組換えをより効率的に行なうことができる。 なお、本明細書中において用いられる「阻害する」とは、好適にはPCR後のポリメラーゼ活性を完全に不可逆的に失わせることを意味するが、該活性を完全に失わせることができなくても、例えば、PCR後において、増幅断片の突出末端を平滑化するような残存するDNAポリメラーゼ活性による副反応を防止する目的で、DNAポリメラーゼ活性の機能の一部を一時的に抑制させるという意味も含んで用いられる。 ここで、上記の熱耐性DNAポリメラーゼを阻害する、ポリメラーゼ阻害剤の化学的分子の例としては、アフィディコリン(aphidicolin)、アクチノマイシン D、マイトマイシン C、リファンピシン 2, 3-ジデオキシチミジン 5- 3リン酸(d2TTP)、1-β-D-アラビノフラノシルシトシン5- 3リン酸(araCTP)、ミカノライド、L-ホモセリルアミノエタノール、ケンフェロール 3-O-(6"-アセチル)-β-グルコピラノシド(KAG)、ケルセチン3-O-(6"-アセチル)-β-グルコピラノシド(QAG)等を挙げることができるが、DNAポリメラーゼの活性を特異的に阻害する化合物であればどのような化合物でも用いることが可能である。 また、上記DNAポリメラーゼの活性を一時的に中和する、DNAポリメラーゼ阻害剤として、抗DNAポリメラーゼ抗体が挙げられる。このような抗体は、主に、PCRのホットスタート法において用いられるものであるが、本発明においても利用が可能である。 本発明でポリメラーゼ阻害剤として好適に用いられる市場で入手可能な抗体としては、例えばタックDNAポリメラーゼモノクロナール抗体(AppliChem GmbH)、アンチタックモノクロナール抗体(eEnzyme LLC)、プラチナタック抗体(Invitrogen)、タック抗体(Novagen)、JumpStart(登録商標)タック抗体 (Sigma-Aldrich)およびタックポリメラーゼモノクロナール抗体(Takara)等があげられるが、これらに限定はされない。また、PCRで用いるポリメラーゼやその一部のペプチドをエピトープとして作製した抗体もDNAポリメラーゼ阻害剤として用いることができる。 さらに、その他の物理的な方法でポリメラーゼを特異的に破壊する方法も用いることができる。PCRに用いられるポリメラーゼは、一般に耐熱性に優れているため、熱による処理だけでは十分に失活されない場合が多い。しかし、DNAの安定的な性質から、長時間の高温処理により上記ポリメラーゼの活性のみを特異的に阻害することは可能である。またpHを変動させることや、その他の中和可能な薬剤を用いることによって上記ポリメラーゼ活性のみを不可逆的に阻害させることも可能である。 なお、PCRにより増幅した目的DNA断片を含むDNAとベクターDNAを含むそれぞれの溶液中にはテンプレートDNA(通常はプラスミドDNA)が混入しており、そのままの溶液を用いてDNA組換えを行なうと、目的とするDNA組換え体を含む大腸菌の出現頻度が著しく低下する。しかし、テンプレートDNAとして使用されるプラスミドDNAはヘミメチル化されているので、例えば認識される塩基配列がメチル化されている場合のみ切断反応が起こるDpnIのような酵素によってテンプレートDNAのみを消化することができる。このように、DpnIのような酵素によって反応液中に残存するテンプレートDNAを消化することにより、効率よく目的とするDNA組換え体を形質転換に用いることができる。 本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1:LguIによるDNAの組換え1.PCR法による、目的DNA断片とベクターDNA断片の増幅 目的DNA断片としては図2に示すように、EGFP配列を、ベクターとしてはpRSET-B(Invitrogen)をそれぞれ用いた。反応溶液(120 mM Tris-HCl, 1 mM dNTP, 1.5 mM MgSO4, 10 mM KCl, 6 mM (NH4)2SO4, 0.1% TitonX-100, 0.1 mg/ml BSA)にKOD plus DNAポリメラーゼ(Toyobo)を加えた。テンプレートにはEGFP増幅用としてpcDNA3-EGFPを、pRSET-B増幅用としてpRSET-Bを用いた。プライマーの組み合わせは図2のとおりである。 ここで、図2において普通大文字は順方向、上下反転大文字は逆方向のプライマー配列をそれぞれ示す。小文字はそれぞれの相補鎖配列を便宜的に示す。点線の長方形の枠はClassIIS制限酵素LguIの認識部位、階段状の実線は切断部位、細い線で囲まれた枠はテンプレートDNAに特異的に結合する配列を示す。また、AはpRSET-Bに対するプライマーセット(配列番号8および配列番号9)、BはEGFPに対するプライマーセット(サンプル1:配列番号11および配列番号14、サンプル2:配列番号11および配列番号28、配列番号29および配列番号16)をそれぞれ示す。 反応サイクルは94℃2分を1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒を35サイクル、68℃5分を1サイクル行った。サンプル1ではEGFP1断片を、サンプル2では付着末端配列の異なるEGFPを2断片増幅した。2.電気泳動法による、反応産物の分離精製 PCR産物をアガロースゲル(1%アガロース、1×TAE(40mM Tris-acetate(pH8.3)、1mM EDTA))で分離し、それぞれの断片を精製した(QIAquick、Invitrogen)。PCR産物の電気泳動結果を図3に示す。ここで、1〜2レーンはpRSETベクター、3〜5レーンはEGFP断片をそれぞれ示す。また、MはDNAマーカー(2-log DNA marker, NEB)を示す。3.組換えベクターDNAの作製 上記2.で精製したそれぞれのDNA断片と制限酵素およびDNA連結酵素とを混ぜ合わせ、室温にて静置した。具体的には、反応溶液(25 mM Tris-HCl, 16 mM Tris-acetate, 33 mM K-acetate, 5 mM MgCl2, 5 mM Mg-acetate, 5 mM DTT, 50μM 2-mercaptoethanol, 60μg/ml BSA, 0.5 mM ATP)にDNA断片とDNA連結酵素(1μl, T4 DNA Ligase, NEB)と制限酵素(5μl, LguI, Fermentas)を加え、室温で2時間静置した。4.組換えベクターDNAの大腸菌での発現 上記3.で作製した組換えベクターDNAを含む反応液5μlをコンピテント大腸菌(XL10 Gold, Stratagene)に加え、氷上で10分間静置した後、42℃で45秒熱処理した。大腸菌に200μlのLB培地を加え37℃で1時間培養した後、1×LBプレート(100μg/ml アンピシリン含有)に散布し、37℃で15時間培養した。 大腸菌コロニーをそれぞれのサンプル(サンプル1およびサンプル2)から8個ずつ合計16個選択し、各コロニーの一部をPCR溶液(1×GoTaqプレミックス(Promega)、T7フォワードプライマー、pRSETリバースプライマー)に懸濁し、コロニーダイレクトPCRを行った。5.組換えDNAの特定 上記のPCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、PCR産物の断片長を計測した。 図4にコロニーダイレクトPCRの結果を示す。1〜8レーンはサンプル1、9〜16レーンはサンプル2由来のコロニーから増幅した断片を示す。1〜8レーンのバンド950bpはサンプル1の断片が組み込まれたことを示している。また、9〜16レーンでは、サンプル2で示される2断片が連結して同時に組み込まれているため、1断片サンプルの約2倍長のバンド(1650bp)が検出されている。MはDNAサイズマーカー(2-log DNA marker, NEB)を示す。それぞれのサンプルにおいて、8コロニー中8個の陽性クローンを得た。6.クローン配列の解読 T7フォワードプライマーとpRSETリバースプライマーにより、目的DNA断片とベクター間の結合部位付近の塩基配列を解読した結果を図5に示す。塩基配列を解読した結果、原理通りの結合が形成されていることが確認できる。実施例2:BfuAIによるDNAの組換え1.PCR法による、目的DNA断片とベクターDNA断片の増幅 目的DNA断片としてはEGFP配列を、ベクターとしてはpRSET-B(Invitrogen)をそれぞれ用いた。反応溶液(120 mM Tris-HCl, 1 mM dNTP, 1.5 mM MgSO4, 10 mM KCl, 6 mM (NH4)2SO4, 0.1%TitonX-100, 0.1 mg/ml BSA)にKOD plus DNAポリメラーゼ(Toyobo)を加えた。反応サイクルは94℃2分を1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒を35サイクル、68℃5分を1サイクル行った。テンプレートにはEGFP増幅用としてpcDNA3-EGFPを、pRSET-B増幅用としてpRSET-Bを用いた。プライマーの組み合わせは図6のとおりである。 ここで、図6において普通大文字は順方向、上下反転大文字は逆方向のプライマー配列をそれぞれ示す。小文字はそれぞれの相補鎖配列を便宜的に示す。点線の長方形の枠はClassIIS制限酵素BfuAIの認識部位、階段状の実線は切断部位、細い線で囲まれた枠はテンプレートDNAに特異的に結合する配列を示す。また、AはpRSET-Bに対するプライマーセット(配列番号20および配列番号21)、BはEGFPに対するプライマーセット(サンプル1:配列番号23および配列番号26、サンプル2:配列番号23および配列番号32、配列番号33および配列番号36)をそれぞれ示す。サンプル2では、異なる付着末端配列を含むEGFPを2断片増幅した。2.電気泳動法による、反応産物の分離精製 PCR産物をアガロースゲル(1%アガロース、1xTAE)で分離し、それぞれの断片を精製した(QIAquick、QIAGEN)。3.組換えベクターDNAの作製 上記2.で精製したそれぞれのDNA断片と制限酵素およびDNA連結酵素とを混ぜ合わせ、室温にて静置した。具体的には、反応溶液(25 mM Tris-HCl, 16 mM Tris-acetate, 33 mM K-acetate, 5 mM MgCl2, 5 mM Mg-acetate, 5 mM DTT, 50μM 2-mercaptoethanol, 60μg/ml BSA, 0.5 mM ATP)にDNA断片とDNA連結酵素(1μl, T4 DNA Ligase, NEB)と制限酵素(5μl, BfuAI, NEB)を加え、室温で2時間静置した。その後、反応溶液を熱失活させた。4.組換えベクターDNAの大腸菌での発現 上記3.で作製した組換え用ベクターDNAを含む反応液5μlをコンピテント大腸菌(XL10 Gold, Stratagene)に加え、氷上で10分間静置した後、42℃で45秒熱処理した。大腸菌に200μlのLB培地を加え37℃で1時間培養した後、1×LBプレート(100μg/ml アンピシリン含有)に散布し、37℃で15時間培養した。 大腸菌コロニーをそれぞれのサンプル(サンプル1およびサンプル2)から8個ずつ合計16個選択し、各コロニーの一部をPCR溶液(1x GoTaqプレミックス(Promega)、T7フォワードプライマー、pRSETリバースプライマー)に懸濁し、コロニーダイレクトPCRを行った。5.組換えDNAの特定 上記のPCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、PCR産物の断片長を計測した。 図7にコロニーダイレクトPCRの結果を示す。1〜8レーンはサンプル1、9〜16レーンはサンプル2由来のコロニーから増幅した断片を示す。950bp付近のバンドは、サンプル1の断片(EGFP)が組み込まれたことを示している。また1650bp付近のバンドは、1断片サンプル(950bp)の約2倍長のバンドであるが、これはサンプル2で示される2断片(EGFP×2)が連結して同時に組み込まれていることを示している。MはDNAサイズマーカー(2-log DNA marker, NEB)を示す。サンプル1では8コロニー中8個の陽性クローンを、サンプル2では8コロニー中5個の陽性クローンをそれぞれ得た。実施例3:ポリメラーゼ阻害剤によるDNA組換えの迅速化1.PCR法による、目的DNA断片とベクターDNA断片の増幅 実施例1と同じように、PCR法で、目的遺伝子とベクターのそれぞれのDNA断片を増幅した。目的遺伝子としてはEGFP配列を、ベクターとしてはpRSET-B(LguI部位欠損型,Invitrogen)をそれぞれ用いた。反応溶液(120 mM Tris-HCl, 1 mM dNTP, 1.5 mM MgSO4, 10 mM KCl, 6 mM (NH4)2SO4, 0.1%TitonX-100, 0.1 mg/ml BSA)にKOD plus DNAポリメラーゼ(Toyobo)を加えた。プライマーの組み合わせは図2のとおりである。反応サイクルはとしては、94℃2分を1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃90秒を45サイクル、68℃5分を1サイクルとして反応を行った。テンプレートにはEGFP増幅用としてpcDNA3-EGFPを、pRSET-B増幅用としてpRSET-Bを用いた。2.組換えベクターDNAの作製 反応溶液(25 mM Tris-HCl, 16 mM Tris-acetate, 33 mM K-acetate, 5 mM MgCl2, 5 mM Mg-acetate, 5 mM DTT, 50μM 2-mercaptoethanol, 60μg/ml BSA, 0.5 mM ATP)に、上記1.においてそれぞれ個別に増幅した、目的DNA断片を含む溶液およびベクターDNA断片を含む溶液を加え、これにDNA連結酵素(1μl, T4 DNA Ligase, NEB)、制限酵素(5μl, LguI, Fermentas)およびポリメラーゼ阻害剤(5 mM, aphidicolin, コスモバイオ)を加え、室温で2時間静置した。 さらに、上記の反応溶液に1μlのDpnI(NEB)を加えて37℃で30分間静置し、テンプレートDNAのみを消化した。3.組換えベクターDNAの大腸菌での発現 上記2.で作製した組換えベクターDNAを含む反応溶液2.5μlを25μlのJM109コンピテント大腸菌(Stratagene)にトランスフォームし、LBプレート上に散布した。 翌日、LBプレートをイメージアナライザ(LAS-1000, 富士フィルム)で蛍光撮影し、画像解析ソフトウエア(MetaMorph,モレキュラデバイス)を用いて全コロニー数と蛍光コロニー数をそれぞれ計測した。図8において、大腸菌コロニーとして全コロニー、またEGFP陽性として蛍光コロニーをそれぞれ示している。 1断片組換えの場合(図2:サンプル1)で3735コロニー中2769個が、2断片組換えの場合(図2:サンプル2)で936コロニー中688個が、それぞれEGFP陽性となり、組換え効率はそれぞれ、74.1%と73.5%であった。 以上の実験によって、ポリメラーゼの残存活性を薬剤などで阻害することにより、PCR産物を直接組換え反応に使用可能であることが分かった。 本発明によれば、簡略化され、かつ効率が改善されたDNA組換え方法を提供することができる。このような本発明のDNA組換え方法を用いることによって、各種酵素およびインターフェロンやインターロイキンなどのサイトカインや、ホルモンなどの有用タンパク質を効率よく生産することができる。図1は、本発明の目的DNA断片をベクターDNAに組み込んでなる組換えDNAを作製する方法を説明する図である。図2は、実施例1における、LguIを用いたDNA組換えの模式図とプライマーの配列を示す。図3は、実施例1において得られたPCR産物の電気泳動結果を示す。図4は、実施例1において得られたコロニーダイレクトPCRの結果を示す。図5は、実施例1において得られたDNAシーケンシングによる結合部位付近の塩基配列の解読結果を示す。図6は、実施例2における、BfuAIを用いたDNA組換えの模式図とプライマーの配列を示す。図7は、実施例2において得られたコロニーダイレクトPCRの結果を示す。図8は、実施例3において得られた組換えベクターDNAの大腸菌での発現効率の結果を示す。 配列番号1〜36:合成DNA ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、 (a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAとを同時に切断する反応と、 (b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応を、同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含む、組換えDNAの調製方法。 ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、 (a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAの両端とを同時に切断する反応と、 (b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応を、同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含む、組換えDNAの調製方法。 前記制限酵素が、前記DNA認識部位から所定の距離離れた部位を前記DNA切断部位として認識して切断するものである請求項1または2に記載の方法。 前記制限酵素が、ClassIIS制限酵素である請求項1または2に記載の方法。 前記目的DNA断片がそれぞれ異なる配列を持つ複数のDNA断片であり、前記ベクターDNAに該複数の目的DNA断片を同時に挿入することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 PCRによって増幅した目的DNA断片を含むDNAと、PCRによって増幅したベクターDNAとを含むPCR溶液にDNAポリメラーゼ阻害剤を添加してなる溶液を用いて、上記(a)および(b)の反応を行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 【課題】 本発明の課題は、簡略化され、かつ効率が改善されたDNA組換え方法を提供することにある。 【解決手段】 上記課題は、ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、(a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAとを同時に切断する反応と、(b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応を、同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含む、組換えDNAの調製方法によって解決される。【選択図】図1配列表20090618A16333請求項13 ベクターDNAに目的DNA断片を挿入する組換えDNAの調製方法であって、 (a)DNA認識部位とDNA切断部位とが異なる制限酵素の存在下、該ベクターDNAの目的DNA断片挿入部位と該目的DNA断片を含むDNAとを同時に切断する反応と、 (b)DNA連結酵素の存在下、該目的DNA断片を該ベクターDNAに挿入する反応を、 PCRによって増幅した目的DNA断片を含むDNAと、PCRによって増幅したベクターDNAとを含むPCR溶液にDNAポリメラーゼ阻害剤を添加してなる溶液を用いて、同一の反応場所において実質的に同時に行う工程を含む、組換えDNAの調製方法。 A16333請求項63 上記PCR溶液にさらにテンプレートDNAを消化するDpnIを添加する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。